【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】
なお、実施例および比較例において、塩化ビニル系樹脂層と最表層との積層体の吸湿性は下記の方法で測定した。
<積層体の吸湿性(特定吸湿量)>
塩化ビニル系樹脂層と最表層との積層体の吸湿性は、温度20℃、湿度65%RHの環境下で24時間の間に吸湿する吸湿量(特定吸湿量)を測定することにより評価した。
まず、得られた表皮材を14cm×5cmの大きさに切り出し、この表皮材から基材層を剥離し、露出した塩化ビニル系樹脂層の全面に両面テープ(ニチバン社製「ナイスタック(登録商標)」:5cm幅)を用いて不透湿性アルミニウムフィルム(東レフィルム加工株式会社製「VM−CPP」)を貼り付けることにより、塩化ビニル系樹脂層を不透湿性アルミニウムフィルムで覆い隠した状態の積層体(塩化ビニル系樹脂層/最表層)を得、これを測定サンプルとした。
そして、得られた測定サンプルを絶乾状態にしてその質量(絶乾質量)を測定した後、温度20℃、湿度65%RHの環境下に24時間静置したときの質量(吸湿質量)を測定し、下記式に基づき、温度20℃、湿度65%RHの環境下における24時間の吸湿量(g/m
2)を求めた。
特定吸湿量(g/m
2)=(吸湿質量(g)−絶乾質量(g))/(0.14×0.05)
【0055】
詳しくは、絶乾質量は以下のようにして測定した。すなわち、測定サンプルを蓋付きの秤量瓶に入れ、この秤量瓶を蓋を開けた状態でデシケータの中に入れ(このとき蓋もデシケータ内に入れておいた)、このデシケータを105℃に設定したオーブン中に入れた。デシケータをオーブン内に入れてから2時間以上経過後、オーブンを開け、素早く、デシケータ内の秤量瓶に蓋(デシケータ内に入れておいた蓋)を付けた。そして蓋をした秤量瓶が入ったデシケータを密閉状態としてから、オーブンから取り出し、デシケータの外側表面が常温程度に下がるまで室温中で1時間以上放置し、その後、内部に測定サンプルを収容した蓋付き秤量瓶の質量を電子天秤にて測定し、得られた値から、予め測定しておいた秤量瓶と蓋の合計質量を差し引くことにより、測定サンプルの絶乾質量を求めた。
【0056】
吸湿質量は、絶乾質量を測定した後、内部に測定サンプルを収容した秤量瓶を蓋をした状態のままデシケータ内に入れ、このデシケータを密閉状態にしたまま、温度20℃、湿度65%RHに調整された恒温恒湿器内に入れ、1時間放置することにより調温した。その後、恒温恒湿器内で素早く、デシケータを開放状態とし、その中に収容した秤量瓶の蓋を開けた。秤量瓶の蓋を開けてから24時間経過後、恒温恒湿器内で素早く、秤量瓶に蓋をし、次いでデシケータを密閉状態とした。そして蓋をした秤量瓶が入ったデシケータを恒温恒湿器から取り出し、内部に測定サンプルを収容した蓋付き秤量瓶の質量を電子天秤にて測定し、得られた値から、予め測定しておいた秤量瓶と蓋の合計質量を差し引くことにより、測定サンプルの吸湿質量を求めた。
【0057】
<積層体の掌内湿度上昇(ΔH)>
発汗シミュレーション測定装置(東洋紡株式会社製)を用い、水供給量:140g/m
2・hr、熱板温度:37℃、試料−熱板距離:0.5cm、環境温湿度:20℃×65%RH、発汗パターン:試験開始より5分発汗を実施し、熱板と試料(表皮材の最表層側の表面)の間の空間の湿度を測定した。測定結果から、試験開始前の湿度に対する発汗1分経過時の湿度上昇(ΔH)を求めた。
なお、発汗シミュレーション装置は、発汗孔を有する基体および産熱体からなる産熱発汗機構、発汗孔に水を供給するための送水機構、産熱体の温度を制御する産熱制御機構、温湿度センサーから構成されている。基体は黄銅製で面積120cm
2であり、発汗孔が6個設けられており、面状ヒーターからなる産熱体により一定温度に制御される。送水機構はチューブポンプを用いており、一定水量を基体の発汗孔に送り出す。基体表面には、厚み0.1mmのポリエステルマルチフィラメント織物からなる模擬皮膚が貼り付けられており、これにより発汗孔から吐出された水が基体表面に広げられ、発汗状態が作り出される。基体の周囲には高さ0.5cmの外枠が設けられており、試料を基体から0.5cm離れた位置にセットできる。温湿度センサーは基体と試料との間の空間に設置され、基体が発汗状態の時の「基体と試料と外枠で囲まれた空間」の湿度を測定する。
【0058】
(実施例1)
レーヨン100%織物(東京杉本社製、品番A120−53;厚み300μm、目付け150g/m
2、密度75本/45本、繊度20番手)を基材層とし、該基材層の片面にグラビア印刷機にて接着剤(大日精化工業社製「セイカボンドE−256−40」:1液型エステル系ポリウレタン接着剤、有機溶剤系)を乾燥後の付着量が8g/m
2となるよう塗布した後、120℃で1分間乾燥して、基材層に厚み2μmの接着剤層を形成した。
【0059】
次に、下記配合組成で調製した塩化ビニル系樹脂層形成用組成物を熱溶融させ、カレンダー圧延機にて1000μmに圧延しつつ、接着剤層付き基材層の接着剤層側の面に熱圧着させて、塩化ビニル系樹脂層を形成した。このとき、カレンダー圧延機のロール温度は180℃とし、塩化ビニル系樹脂層形成用組成物の付着量(目付け)は1200g/m
2となるようした。
【0060】
[塩化ビニル系樹脂層形成用組成物の配合組成]
・ポリ塩化ビニル:PVC(大洋塩ビ社製「TH−1000(軟質用)」:重合度1000)100質量部
・アジピン酸ポリエステル系可塑剤(ジェイプラス社製「D643」)65質量部
・安定剤(カルボン酸亜鉛:カルボン酸バリウム=50:50(質量比))3質量部
・重炭酸カルシウム(三共製粉社製「エスカロン♯100」)20質量部
・顔料(日弘ビックス社製「TLカラー」)5質量部
【0061】
次いで、下記配合組成で調製した最表層形成用組成物を、上記塩化ビニル系樹脂層の上にグラビア印刷機にて乾燥後の付着量(目付け)が1.6g/m
2となるよう塗布した後、120℃で30秒間乾燥して、厚み1μmの最表層を形成した。
【0062】
[最表層形成用組成物の配合組成]
・ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(大日精化工業社製「レザロイドLu313SP」;固形分10質量%)100質量部
・吸湿性微粒子(東洋紡社製アクリル系微粒子「タフチック(登録商標)HU−720SF」;体積平均粒子径4μm)5質量部
・銀系抗菌剤(東亞合成社製「ノバロン(登録商標)AG300」)1質量部
・イミダゾール系抗菌剤(大和化学工業社製「アモルデン(登録商標)TL−20」)0.4質量部
【0063】
最後に、上記で得られた積層物(基材層/接着剤層/塩化ビニル系樹脂/最表層)を加熱して溶融させた後、表面温度が低下する前に最表層に冷却したエンボスロールを押し付けてシボ形状を転移させることにより、畳柄のエンボス処理を施して、本発明の表皮材とした。
得られた表皮材について、塩化ビニル系樹脂と最表層との積層体の吸湿性(温度20℃、湿度65%RHの環境下で24時間の間に吸湿する吸湿量:特定吸湿量)、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
【0064】
(実施例2)
最表層を形成するにあたり、最表層形成用組成物の材料として用いたポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に代え、ポリエステル系ポリウレタン樹脂(セイコー化成社製「ラックスキン(登録商標)U−3810」;固形分10質量%)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の表皮材とした。
得られた表皮材について、塩化ビニル系樹脂と最表層との積層体の吸湿性(特定吸湿量)、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
【0065】
(実施例3)
塩化ビニル系樹脂層を形成するにあたり、塩化ビニル系樹脂層形成用組成物を付着量(目付け)が2400g/m
2となるよう変更して2000μmに圧延したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の表皮材とした。
得られた表皮材について、塩化ビニル系樹脂と最表層との積層体の吸湿性(特定吸湿量)、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
【0066】
(実施例4)
最表層を形成するにあたり、最表層形成用組成物を乾燥後の付着量(目付け)が4.8g/m
2となるよう塗布し、最表層の厚みが3μmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の表皮材とした。
得られた表皮材について、塩化ビニル系樹脂と最表層との積層体の吸湿性(特定吸湿量)、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
【0067】
(実施例5)
塩化ビニル系樹脂層を形成するにあたり、塩化ビニル系樹脂層形成用組成物を付着量(目付け)が400g/m
2となるよう変更して350μmに圧延し、かつ、最表層を形成するにあたり、最表層形成用組成物を乾燥後の付着量(目付け)が3.3g/m
2となるよう塗布し、最表層の厚みが2μmとなるように変更し、さらに、積層物(基材層/接着剤層/塩化ビニル系樹脂/最表層)に対するエンボス加工を行わないよう変更したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の表皮材とした。
得られた表皮材について、塩化ビニル系樹脂と最表層との積層体の吸湿性(特定吸湿量)、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
【0068】
(実施例6)
最表層を形成するにあたり、最表層形成用組成物を乾燥後の付着量(目付け)が39.0g/m
2となるよう塗布し、最表層の厚みが24μmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の表皮材とした。
得られた表皮材について、塩化ビニル系樹脂と最表層との積層体の吸湿性(特定吸湿量)、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
なお、この実施例6で得られた表皮材は、他の実施例で得られた表皮材に比べると、やや重くごわつき感があり、用途によっては若干取扱い易さを損なうものであった。
【0069】
(実施例7)
実施例1と同様にして、レーヨン100%織物(東京杉本社製、品番A120−53;厚み300μm、目付け150g/m
2、密度75本/45本、繊度20番手)の上に、厚み2μmの接着剤層を有する接着剤層付き基材層を形成した。
【0070】
次に、下記発泡層用配合組成で調製した塩化ビニル系樹脂発泡層形成用組成物を熱溶融させ、カレンダー圧延機にて250μmに圧延しつつ、接着剤層付き基材層の接着剤層側の面に熱圧着させて、塩化ビニル系樹脂発泡層を形成し、さらにその上に下記非発泡層用配合組成で調製した塩化ビニル系樹脂非発泡層形成用組成物を熱溶融させ、カレンダー圧延機にて200μmに圧延しつつ、塩化ビニル系樹脂非発泡層を形成した。このとき、カレンダー圧延機のロール温度は180℃とし、塩化ビニル系樹脂発泡層形成用組成物の付着量(目付け)は300g/m
2となるように、塩化ビニル系樹脂非発泡層形成用組成物の付着量(目付け)は250g/m
2となるようした。
【0071】
[塩化ビニル系樹脂発泡層形成用組成物の配合組成]
・ポリ塩化ビニル:PVC(大洋塩ビ社製「TH−1000(軟質用)」:重合度1000)100質量部
・アジピン酸ポリエステル系可塑剤(ジェイプラス社製「D643」)65質量部
・安定剤(カルボン酸亜鉛:カルボン酸バリウム=50:50(質量比))3質量部
・重炭酸カルシウム(三共製粉社製「エスカロン♯100」)10質量部
・発泡剤(永和化成工業社製「ビニホールAC―2F」:アゾジカルボンアミド)3質量部
・顔料(日弘ビックス社製「TLカラー」)3質量部
[塩化ビニル系樹脂非発泡層形成用組成物の配合組成]
・ポリ塩化ビニル:PVC(大洋塩ビ社製「TH−1000(軟質用)」:重合度1000)100質量部
・アジピン酸ポリエステル系可塑剤(ジェイプラス社製「D643」)65質量部
・安定剤(カルボン酸亜鉛:カルボン酸バリウム=50:50(質量比))3質量部
・重炭酸カルシウム(三共製粉社製「エスカロン♯100」)20質量部
・顔料(日弘ビックス社製「TLカラー」)5質量部
【0072】
次いで、実施例1と同じ配合組成の最表層形成用組成物を、上記塩化ビニル系樹脂層の上にグラビア印刷機にて乾燥後の付着量(目付け)が3.3g/m
2となるよう塗布した後、120℃で30秒間乾燥して、厚み2μmの最表層を形成した。
【0073】
最後に、上記で得られた積層物(基材層/接着剤層/塩化ビニル系樹脂発泡層/塩化ビニル系樹脂非発泡層/最表層)を発泡炉において220℃で2分間加熱して、塩化ビニル系樹脂発泡層内の発泡剤(アゾジカルボンアミド)を熱分解させて、500μmの独立気泡を有する塩化ビニル系樹脂発泡層を形成した。この積層物の表面温度が低下する前に最表層に冷却したエンボスロールを押し付けてシボ形状を転移させることにより、畳柄のエンボス処理を施して、本発明の表皮材とした。
得られた表皮材について、塩化ビニル系樹脂と最表層との積層体の吸湿性(特定吸湿量)、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
【0074】
(比較例1)
最表層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の表皮材を得た。
得られた表皮材について、特定吸湿量、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
【0075】
(比較例2)
最表層を形成するにあたり、最表層形成用組成物の構成材料のうち吸湿性微粒子を使用しないようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の表皮材を得た。
得られた表皮材について、特定吸湿量、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
【0076】
(比較例3)
最表層を形成するにあたり、最表層形成用組成物の材料として用いたポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に代え、アクリル樹脂(セイコー化成社製「ラックスキン(登録商標)505」;固形分10質量%)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の表皮材を得た。
得られた表皮材について、特定吸湿量、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
【0077】
(比較例4)
塩化ビニル系樹脂層を形成するにあたり、塩化ビニル系樹脂層形成用組成物に代え、下記配合組成で調製したオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の表皮材を得た。
[オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の配合組成]
・オレフィン系熱可塑性エラストマー(住友化学社製「エスポレックス(登録商標)TPE−4552」)100質量部
・酸化防止剤(ADEKA社製「AO−60」)0.1質量部
・酸化防止剤(ADEKA社製「PEP−36」)0.1質量部
・離型剤(ADEKA社製「AP−551」)0.3質量部
・着色剤(東洋インキ社製「TEカラー」)5質量部
得られた表皮材について、特定吸湿量、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
なお、比較例4で得られた表皮材は、塩化ビニル系樹脂に比べ高価なオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用しているので、各実施例に比べ製造コストが高かった。
【0078】
(比較例5)
塩化ビニル系樹脂層を形成するにあたり、塩化ビニル系樹脂層形成用組成物に代え、下記配合組成で調製したウレタン系熱可塑性エラストマー組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の表皮材を得た。
[ウレタン系熱可塑性エラストマー組成物の配合組成]
・ウレタン系熱可塑性エラストマー(大日精化工業社製「レザミン(登録商標)P2380CLS」)100質量部
・酸化防止剤(ADEKA社製「AO−60」)0.1質量部
・酸化防止剤(ADEKA社製「PEP−36」)0.1質量部
・離型剤(ADEKA社製「AP−551」)0.3質量部
・着色剤(大日精化工業社製「SZカラー」)5質量部
得られた表皮材について、特定吸湿量、目付け、掌内湿度上昇(ΔH)は表1に示す通りであった。
なお、比較例5で得られた表皮材は、塩化ビニル系樹脂に比べ高価なウレタン系熱可塑性エラストマーを使用しているので、各実施例に比べ製造コストが高かった。
【0079】
上記実施例および比較例で得られた表皮材を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
<触感(べたつき感、サラサラ感)>
10人のモニターによる一対比較法での判定により評価した。すなわち、25℃、60%RHの環境下に制御した恒温恒湿室に2種の試料(表皮体)を設置し、各試料上にモニターの左右の掌を1分間置いた。そして、1分後のべたつき感、サラサラ感を判定した。具体的には、左右どちらの試料がよりべたつかないか、サラサラしているか、を判定し、全試料の組合せにて一対比較判定後、サーストンの一対比較法に準拠し、べたつき感、サラサラ感を−2点〜+2点で標準化して得点化し、下記の基準で評価した。なお、「べたつき感」は得点が高いほどべたつかず、「サラサラ感」は得点が高いほどサラサラする感覚が高いことを示す。
◎:1.0点以上
○:0.5点以上、1.0点未満
△:0点以上、0.5点未満
×:0点未満
【0080】
<外観>
得られた表皮材の外観(最表層側の面)を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:シワ、ムラ、疵が全く認められない。
○:シワ、ムラ、疵が殆ど認められない。
△:シワ、ムラ、疵が僅かに認められる。
×:シワ、ムラ、疵が多数認められる。
【0081】
<耐摩耗性>
得られた表皮材の最表層側の面を、JIS−K7204に記載のテーパー摩耗試験に準じ、摩耗輪として「CS−10」を用い、荷重1kgfで、1000回擦った後、得られた表皮材の外観(最表層側の面)を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:割れ、剥がれなどの異常が全く認められない。
○:割れ、剥がれなどの異常が殆ど認められない。
△:割れ、剥がれなどの異常が僅かに認められる。
×:割れ、剥がれなどの異常が多数認められる。
【0082】
【表1】
【0083】
表1から分かるように、各実施例で得られた表皮材はいずれも良好な触感を有し、しかも外観や耐摩耗性についても実用に耐えうるものであった。
これに対して、比較例1〜3で得られた表皮材は、積層体の特定吸湿量が少な過ぎるため、触感が悪いものであった。さらに、比較例1で得られた表皮材は耐摩耗性にやや劣るものであったが、これは最表層を備えていないため、表面の滑り性が低下した為と考えられる。また、比較例4で得られた表皮材は耐摩耗性に劣るものであったが、これは、塩化ビニル系樹脂に比べるとオレフィン系熱可塑性エラストマーの耐久性は低く、しかも最表層のウレタン樹脂との密着性も悪いことが起因していると考えられる。比較例5で得られた表皮材はやや外観が劣るものであったが、これは、柔らか過ぎてエンボス処理が上手く施せなかった為と考えられる。