特許第6239367号(P6239367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239367
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ワーク加工装置及びワーク切断方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 5/02 20060101AFI20171120BHJP
   B24C 5/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B24C5/02 B
   B24C5/04 A
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-258381(P2013-258381)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-112705(P2015-112705A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】牧 野 真 一
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−022047(JP,U)
【文献】 特開2009−166209(JP,A)
【文献】 特開平04−129672(JP,A)
【文献】 特開2001−121424(JP,A)
【文献】 特開2004−009283(JP,A)
【文献】 特開2004−017241(JP,A)
【文献】 米国特許第04633623(US,A)
【文献】 特開2011−115889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C1/00−11/00
H01L21/304
B26F3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる噴射口において開口する内部空間を規定するフラットノズル本体と、 前記フラットノズル本体の前記内部空間に連通するように接続された研削用粉体含有液体導入部と、
前記フラットノズル本体の前記内部空間において開口するエアジェット生成空間を規定するエアジェット形成ノズルと、
前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間に連通するように接続されたエア導入部と、
前記エア導入部のエア導入量を制御する制御装置と、
前記フラットノズル本体とワークとを、当該ワークが前記噴射口と対向する位置を通過するように、前記噴射口の長手方向と平行な向きまたは前記噴射口の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに相対移動させる移動装置と、
を備え
前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、区分部材によって前記噴射口の長手方向に区分された2つの部分空間を含んでおり、
前記エア導入部は、各部分空間にそれぞれ個別に連通するように接続された2つの単位エア導入部を有しており、
前記制御装置は、各単位エア導入部をそれぞれ個別に制御するようになっている
ことを特徴とするワーク加工装置。
【請求項2】
長手方向に延びる噴射口において開口する内部空間を規定するフラットノズル本体と、
前記フラットノズル本体の前記内部空間に連通するように接続された研削用粉体含有液体導入部と、
前記フラットノズル本体の前記内部空間において開口するエアジェット生成空間を規定するエアジェット形成ノズルと、
前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間に連通するように接続されたエア導入部と、
前記エア導入部のエア導入量を制御する制御装置と、
前記フラットノズル本体とワークとを、当該ワークが前記噴射口と対向する位置を通過するように、前記噴射口の長手方向と平行な向きまたは前記噴射口の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに相対移動させる移動装置と、
を備え、
前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、区分部材によって前記噴射口の長手方向に区分された3つ以上の部分空間を含んでおり、
前記エア導入部は、各部分空間にそれぞれ個別に連通するように接続された3つ以上の単位エア導入部を有しており、
前記制御装置は、各単位エア導入部をそれぞれ個別に制御するようになっている
ことを特徴とするワーク加工装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ワークが前記噴射口のうち各部分空間に対応する領域と対向しない時の当該部分空間へのエアの導入圧力を、当該ワークが当該領域と対向する時の当該部分空間へのエアの導入圧力より低下させるようになっている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のワーク加工装置。
【請求項4】
前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、前記噴射口の長手方向に間隔を空けて、前記区分部材の前記噴射口側の端部に対応する位置を含む複数の位置において開口しており、
前記区分部材の前記噴射口側の端部に対応する位置における開口部は、当該区分部材を介して隣り合う2つの部分空間の両方に連通されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のワーク加工装置。
【請求項5】
前記噴射口の長手方向の長さは、35mm〜90mmであり、長手方向に対して直角な幅方向の長さは、0.8mm〜2.4mmである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のワーク加工装置。
【請求項6】
前記ワークが前記噴射口のうち各部分空間に対応する領域と対向する時、当該部分空間に連通する単位エア導入部から当該部分空間へのエアの導入圧力は、0.2MPa〜0.5MPaである
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のワーク加工装置。
【請求項7】
長手方向に延びる噴射口において開口する内部空間を規定するフラットノズル本体とワークとを、当該ワークが前記噴射口と対向する位置を通過するように、前記噴射口の長手方向と平行な向きまたは前記噴射口の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに相対移動させる工程と、
前記フラットノズル本体の前記内部空間に研削用粉体を含有する液体を導入すると共に、前記フラットノズル本体の前記内部空間において開口するエアジェット生成空間を規定するエアジェット形成ノズルの当該エアジェット生成空間にエアを導入する工程と、
前記噴射口から前記ワークに向かって前記研削用粉体を含有する液体をエアと一緒に噴射させ、当該ワークを前記噴射口の長手方向と略平行な向きに切断する工程と、
を備え、
前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、区分部材によって前記噴射口の長手方向に区分された2つの部分空間を含んでおり、
前記切断する工程では、各部分空間へのエアの導入圧力をそれぞれ個別に制御する
ことを特徴とするワーク切断方法。
【請求項8】
長手方向に延びる噴射口において開口する内部空間を規定するフラットノズル本体とワークとを、当該ワークが前記噴射口と対向する位置を通過するように、前記噴射口の長手方向と平行な向きまたは前記噴射口の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに相対移動させる工程と、
前記フラットノズル本体の前記内部空間に研削用粉体を含有する液体を導入すると共に、前記フラットノズル本体の前記内部空間において開口するエアジェット生成空間を規定するエアジェット形成ノズルの当該エアジェット生成空間にエアを導入する工程と、
前記噴射口から前記ワークに向かって前記研削用粉体を含有する液体をエアと一緒に噴射させ、当該ワークを前記噴射口の長手方向と略平行な向きに切断する工程と、
を備え、
前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、区分部材によって前記噴射口の長手方向に区分された3つ以上の部分空間を含んでおり、
前記切断する工程では、各部分空間へのエアの導入圧力をそれぞれ個別に制御する
ことを特徴とするワーク切断方法
【請求項9】
前記切断する工程では、前記ワークが前記噴射口のうち各部分空間に対応する領域と対向しない時の当該部分空間へのエアの導入圧力を、当該ワークが当該領域と対向する時の当該部分空間へのエアの導入圧力より低下させる
ことを特徴とする請求項7または8に記載のワーク切断方法。
【請求項10】
前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、前記噴射口の長手方向に間隔を空けて、前記区分部材の前記噴射口側の端部に対応する位置を含む複数の位置において開口しており、
前記区分部材の前記噴射口側の端部に対応する位置における開口部は、当該区分部材を介して隣り合う2つの部分空間の両方に連通されている
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載のワーク切断方法。
【請求項11】
前記噴射口の長手方向の長さは、35mm〜90mmであり、長手方向に対して直角な幅方向の長さは、0.8mm〜2.4mmである
ことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載のワーク切断方法。
【請求項12】
前記ワークが前記噴射口のうち各部分空間に対応する領域と対向する時、当該部分空間に、0.2MPa〜0.5MPaの導入圧力でエアを導入する
ことを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載のワーク切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工装置及びワーク切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ワークの下地処理やバリ取り加工において、ドライブラストと呼ばれる加工方法がよく用いられている。ドライブラストとは、研削用粉体を圧縮空気の力を利用してワークに噴射することで当該ワークの表面処理を行う加工方法である。
【0003】
ドライブラストでは、研削用粉体からワークに作用する微小な衝撃の集積により加工が進行するため、ガラスやセラミックス等の硬脆材料の加工においてクラックやチッピング等の問題が発生しにくい。そのため、最近では、ドライブラストは、ガラスやセラミックス等の硬脆材料を切断または溝入れ加工する用途でも実用化されている。
【0004】
しかしながら、ガラス等の誘電体からなるワークに対してドライブラストを行う場合、ワークと研削用粉体との間の摩擦によって静電気が発生する。そのため、例えば、タッチパネルセンサ等の回路を含むタッチパネル用ガラス基板をドライブラストにより切断しようとすると、発生する静電気によって回路を損傷させるおそれがある。
【0005】
ところで、ワークの下地処理やバリ取り加工において、液体ホーニングと呼ばれる加工方法もよく用いられている。液体ホーニングとは、研削用粉体を含有する液体を圧縮空気の力を利用してワークに噴射することで当該ワークの表面処理を行う加工方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
液体ホーニングでも、研削用粉体からワークに作用する微小な衝撃の集積により加工が進行するため、ガラスやセラミックス等の硬脆材料の加工においてクラックやチッピング等の問題が発生しにくい。また、液体ホーニングでは、研削用粉体が液体と一緒にワークに噴射されるため、加工中の静電気の発生が防止されるという利点がある。
【0007】
しかしながら、液体ホーニングでは、ドライブラストに比べて加工力が低く、ワークを厚み方向に深く加工することが難しい。そのため、液体ホーニングは、ワークを切断または溝入れ加工する用途では実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−115889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本件発明者は、研削用粉体を含有する液体を圧縮空気の力を利用してワークに噴射することによりワークを効果的に切断または溝入れ加工できるワーク加工装置の開発を課題として鋭意研究した結果、噴射ノズルの噴射口から研削用粉体を含有する液体を噴射させると共に、ワークを噴射口と対向する位置を通過するように噴射ノズルに対して相対移動させ、噴射された研削用粉体を含有する液体をワーク上の噴射口と対向する直線状の領域に集中して連続的に衝突させることで、ワークを効果的に切断または溝入れ加工できることを知見した。
【0010】
このような知見に対して、それ自体は公知の円筒状ノズル(内径8mm〜10mm)をワークの移動方向と平行に間隔を空けて複数配置する構成も考えられるが、このような構成では、複数の円筒状ノズルを配置するために広い領域を確保する必要があり、ワークの移動距離も長くなり、スペース効率が悪くなるという不都合がある。
【0011】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、省スペースであって、研削用粉体を含有する液体を圧縮空気の力を利用してワークに噴射することによりワークを効果的に切断または溝入れ加工できるワーク加工装置及びワーク切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、長手方向に延びる噴射口において開口する内部空間を規定するフラットノズル本体と、前記フラットノズル本体の前記内部空間に連通するように接続された研削用粉体含有液体導入部と、前記フラットノズル本体の前記内部空間において開口するエアジェット生成空間を規定するエアジェット形成ノズルと、前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間に連通するように接続されたエア導入部と、前記エア導入部のエア導入量を制御する制御装置と、前記フラットノズル本体とワークとを、当該ワークが前記噴射口と対向する位置を通過するように、前記噴射口の長手方向と平行な向きまたは前記噴射口の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに相対移動させる移動装置と、を備えたことを特徴とするワーク加工装置である。
【0013】
本発明によれば、研削用粉体含有液体導入部からフラットノズル本体の内部空間に研削用粉体を含有する液体が導入されると共に、エア導入部からエアジェット形成ノズルのエアジェット生成空間にエアが導入されることで、導入された研削用粉体を含有する液体はエアの圧力を利用してフラットノズル本体の噴射口から帯状に噴射される。そして、フラットノズル本体とワークとが噴射口の長手方向と平行な向きまたは噴射口の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに相対移動されることにより、噴射口から噴射された研削用粉体を含有する液体が、ワーク上の噴射口と対向する直線状の領域に集中して連続的に衝突していく。これにより、研削用粉体を含有する液体を圧縮空気の力を利用してワークに噴射する際の比較的低い加工圧であっても、ワークは厚み方向に深く削られ得て、結果的に切断または溝入れ加工され得る。例えば、ワークがガラスやセラミックス等の硬脆材料からなる場合、研削用粉体からワークに作用する微小な衝撃の集積により加工が進行することで、クラックやチッピング等の問題の発生が防止され得る。また、研削用粉体が液体と一緒にワークに噴射されることで、加工中の静電気の発生も防止され得る。また、本発明によれば、長手方向に延びる噴射口から研削用粉体を含有する液体を帯状に噴射させるため、噴射ノズルを互いに間隔を空けて複数配置する必要が無く、省スペースである。
【0014】
好ましくは、前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、区分部材によって前記噴射口の長手方向に区分された2つの部分空間を含んでおり、前記エア導入部は、各部分空間にそれぞれ個別に連通するように接続された2つの単位エア導入部を有しており、前記制御装置は、各単位エア導入部をそれぞれ個別に制御するようになっていることを特徴とする。このような態様によれば、噴射口から噴射される研削用粉体を含有する液体の噴射圧力を、噴射口の長手方向の位置に応じて個別に制御することができる。
【0015】
あるいは、前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、区分部材によって前記噴射口の長手方向に区分された3つ以上の部分空間を含んでおり、前記エア導入部は、各部分空間にそれぞれ個別に連通するように接続された3つ以上の単位エア導入部を有しており、前記制御装置は、各単位エア導入部をそれぞれ個別に制御するようになっていてもよい。このような態様によっても、噴射口から噴射される研削用粉体を含有する液体の噴射圧力を、噴射口の長手方向の位置に応じて個別に制御することができる。
【0016】
これらの場合、更に好ましくは、前記制御装置は、前記ワークが前記噴射口のうち各部分空間に対応する領域と対向しない時の当該部分空間へのエアの導入圧力を、当該ワークが当該領域と対向する時の当該部分空間へのエアの導入圧力より低下させるようになっている。このような態様によれば、ワークの加工効率が維持されながら、全体的なエアの消費量が低減され得る。また、ワークの外側に噴射される研削用粉体を含有する液体が、装置の他の構成部材に衝突して当該他の構成部材を損傷させることが防止され得る。
【0017】
また、好ましくは、前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、前記噴射口の長手方向に間隔を空けて、前記区分部材の前記噴射口側の端部に対応する位置を含む複数の位置において開口しており、前記区分部材の前記噴射口側の端部に対応する位置における開口部は、当該区分部材を介して隣り合う2つの部分空間の両方に連通されている。このような態様によれば、エアジェット生成空間が噴射口の長手方向に間隔を空けて複数の位置において開口しているため、エアジェット生成空間からフラットノズル本体の内部空間へ長手方向に関して均一な流量でエアが導入され得る。また、区分部材の噴射口側の端部に対応する位置における開口部が当該区分部材を介して隣り合う2つの部分空間の両方に連通されているため、当該2つの部分空間が切り替わる領域において噴射される液体に乱れが生じることが防止され得る。
【0018】
具体的には、例えば、前記噴射口の長手方向の長さは、35mm〜90mmであり、長手方向に対して直角な幅方向の長さは、0.8mm〜2.4mmである。
【0019】
また、具体的には、例えば、前記ワークが前記噴射口のうち各部分空間に対応する領域と対向する時、当該部分空間に連通する単位エア導入部から当該部分空間へのエアの導入圧力は、0.2MPa〜0.5MPaである。
【0020】
また、本発明は、長手方向に延びる噴射口において開口する内部空間を規定するフラットノズル本体とワークとを、当該ワークが前記噴射口と対向する位置を通過するように、前記噴射口の長手方向と平行な向きまたは前記噴射口の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに相対移動させる工程と、前記フラットノズル本体の前記内部空間に研削用粉体を含有する液体を導入すると共に、前記フラットノズル本体の前記内部空間において開口するエアジェット生成空間を規定するエアジェット形成ノズルの当該エアジェット生成空間にエアを導入する工程と、前記噴射口から前記ワークに向かって前記研削用粉体を含有する液体をエアと一緒に噴射させ、当該ワークを前記噴射口の長手方向と平行な向きに切断する工程と、ことを特徴とするワーク切断方法である。
【0021】
本発明によれば、フラットノズル本体の内部空間に研削用粉体を含有する液体が導入されると共に、エアジェット形成ノズルのエアジェット生成空間にエアが導入されることで、導入された研削用粉体を含有する液体はエアの圧力を利用してフラットノズル本体の噴射口から帯状に噴射される。そして、フラットノズル本体とワークとが噴射口の長手方向と平行な向きまたは噴射口の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに相対移動されることにより、噴射口から噴射された研削用粉体を含有する液体が、ワーク上の噴射口と対向する直線状の領域に集中して連続的に衝突していく。これにより、研削用粉体を含有する液体を圧縮空気の力を利用してワークに噴射する際の比較的低い加工圧であっても、ワークは厚み方向に深く削られ得て、結果的に切断され得る。例えば、ワークがガラスやセラミックス等の硬脆材料からなる場合、研削用粉体からワークに作用する微小な衝撃の集積により加工が進行することで、クラックやチッピング等の問題の発生が防止され得る。また、研削用粉体が液体と一緒にワークに噴射されることで、加工中の静電気の発生も防止され得る。また、本発明によれば、長手方向に延びる噴射口から研削用粉体を含有する液体を帯状に噴射させるため、噴射ノズルを互いに間隔を空けて複数配置する必要が無く、省スペースである。
【0022】
好ましくは、前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、区分部材によって前記噴射口の長手方向に区分された2つの部分空間を含んでおり、前記切断する工程では、各部分空間へのエアの導入圧力をそれぞれ個別に制御する。このような態様によれば、噴射口から噴射される研削用粉体を含有する液体の噴射圧力を、噴射口の長手方向の位置に応じて個別に制御することができる。
【0023】
あるいは、前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、区分部材によって前記噴射口の長手方向に区分された3つ以上の部分空間を含んでおり、前記切断する工程では、各部分空間へのエアの導入圧力をそれぞれ個別に制御してもよい。このような態様によっても、噴射口から噴射される研削用粉体を含有する液体の噴射圧力を、噴射口の長手方向の位置に応じて個別に制御することができる。
【0024】
これらの場合、更に好ましくは、前記切断する工程では、前記ワークが前記噴射口のうち各部分空間に対応する領域と対向しない時の当該部分空間へのエアの導入圧力を、当該ワークが当該領域と対向する時の当該部分空間へのエアの導入圧力より低下させる。このような態様によれば、ワークの加工効率が維持されながら、全体的なエアの消費量が低減され得る。また、ワークの外側に噴射される研削用粉体を含有する液体が、装置の他の構成部材に衝突して当該他の構成部材を損傷させることが防止され得る。
【0025】
また、好ましくは、前記エアジェット形成ノズルの前記エアジェット生成空間は、前記噴射口の長手方向に間隔を空けて、前記区分部材の前記噴射口側の端部に対応する位置を含む複数の位置において開口しており、前記区分部材の前記噴射口側の端部に対応する位置における開口部は、当該区分部材を介して隣り合う2つの部分空間の両方に連通されている。このような態様によれば、エアジェット生成空間が噴射口の長手方向に間隔を空けて複数の位置において開口しているため、エアジェット生成空間からフラットノズル本体の内部空間へ長手方向に関して均一な流量でエアが導入され得る。また、区分部材の噴射口側の端部に対応する位置における開口部が当該区分部材を介して隣り合う2つの部分空間の両方に連通されているため、当該2つの部分空間が切り替わる領域において噴射される液体に乱れが生じることが防止され得る。
【0026】
具体的には、例えば、前記噴射口の長手方向の長さは、35mm〜90mmであり、長手方向に対して直角な幅方向の長さは、0.8mm〜2.4mmである。
【0027】
また、具体的には、例えば、前記ワークが前記噴射口のうち各部分空間に対応する領域と対向する時、当該部分空間に、0.2MPa〜0.5MPaの導入圧力でエアを導入する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、研削用粉体含有液体導入部からフラットノズル本体の内部空間に研削用粉体を含有する液体が導入されると共に、エア導入部からエアジェット形成ノズルのエアジェット生成空間にエアが導入されることで、導入された研削用粉体を含有する液体はエアの圧力を利用してフラットノズル本体の噴射口から帯状に噴射される。そして、フラットノズル本体とワークとが噴射口の長手方向と平行な向きまたは噴射口の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに相対移動されることにより、噴射口から噴射された研削用粉体を含有する液体が、ワーク上の噴射口と対向する直線状の領域に集中して連続的に衝突していく。これにより、研削用粉体を含有する液体を圧縮空気の力を利用してワークに噴射する際の比較的低い加工圧であっても、ワークは厚み方向に深く削られ得て、結果的に切断または溝入れ加工され得る。例えば、ワークがガラスやセラミックス等の硬脆材料からなる場合、研削用粉体からワークに作用する微小な衝撃の集積により加工が進行することで、クラックやチッピング等の問題の発生が防止され得る。また、研削用粉体が液体と一緒にワークに噴射されることで、加工中の静電気の発生も防止され得る。また、本発明によれば、長手方向に延びる噴射口から研削用粉体を含有する液体を帯状に噴射させるため、噴射ノズルを互いに間隔を空けて複数配置する必要が無く、省スペースである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態によるワーク加工装置を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1のワーク加工装置を示す概略正面図である。
図3図3は、図2のワーク加工装置におけるフラットノズル本体及びエアジェット形成ノズルを拡大して示す概略正面図である。
図4図4は、図3のフラットノズル本体及びエアジェット形成ノズルのA−A線切断断面図である。
図5図5(a)〜図5(e)は、図1のワーク加工装置を用いてワークを切断する工程を説明するための図である。
図6図6は、本発明の第2の実施の形態によるワーク加工装置を示す概略正面図である。
図7図7は、図6のワーク加工装置におけるフラットノズル本体及びエアジェット形成ノズルを拡大して示す概略正面図である。
図8図8は、図7のエアジェット形成ノズルにおいて符号Bが付された一点鎖線で囲んだ部分を拡大して示す概略図である。
図9図9(a)〜図9(e)は、図6のワーク加工装置を用いてワークを切断する工程を説明するための図である。
図10図10は、本発明の第4の実施の形態によるワーク加工装置におけるフラットノズル本体及びエアジェット形成ノズルを拡大して示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態によるワーク加工装置を示す概略斜視図である。図2は、図1のワーク加工装置を示す概略正面図である。
【0031】
図1及び図2に示すように、本実施の形態によるワーク加工装置10は、長手方向に延びる噴射口11において開口する内部空間32を規定するフラットノズル本体12と、フラットノズル本体12の内部空間32に連通するように接続された研削用粉体含有液体導入部14と、フラットノズル本体12の内部空間32において開口するエアジェット生成空間33を規定するエアジェット形成ノズル13と、エアジェット形成ノズル13のエアジェット生成空間33に連通するように接続されたエア導入部15と、エア導入部15のエア導入量を制御する制御装置16と、フラットノズル本体12とワーク20とを、当該ワーク20が噴射口11と対向する位置を通過するように、噴射口11の長手方向と平行な向きに相対移動させる移動装置18と、を備えている。
【0032】
図3は、本実施の形態のフラットノズル本体12及びエアジェット形成ノズル13を拡大して示す概略正面図である。図4は、図3のフラットノズル本体12及びエアジェット形成ノズル13のA−A線切断断面図である。
【0033】
図3及び図4に示すように、フラットノズル本体12は、図3における左右方向の両端部において開口すると共に上端部及び下端部においても開口する内部空間を規定する本体部12aと、本体部12aの下端部の開口に上端部が挿入され、本体部12aの内部空間に連通するスリット状の内部空間を規定する平面視長方形状の筒状部12bと、を有している。本実施の形態では、フラットノズル本体12の内部空間32は、本体部12aの内部空間と筒状部12bの内部空間とを含んでいる。本体部12aの下端部の内周面と筒状部12bの上端部の外周面との間の隙間には、当該隙間をシールするようにシール部材41が配置されている。
【0034】
本実施の形態では、フラットノズル本体12の噴射口11は、筒状部12bの下端部の開口から形成されている。噴射口11の長手方向の長さは、例えば35mm〜90mmであり、長手方向に対して直角な幅方向の長さは、例えば0.8mm〜2.4mmである。
【0035】
一方、図3及び図4に示すように、エアジェット形成ノズル13は、スリット状の内部空間を規定するノズル部13aと、ノズル部13aの上端部に一体に形成され、ノズル部13aの内部空間に連通すると共に図3における左右方向の両端部において開口する内部空間を規定するフランジ部13bと、を有している。本実施の形態では、エアジェット形成ノズル13のエアジェット生成空間33は、ノズル部13aの内部空間とフランジ部13bの内部空間とを含んでいる。
【0036】
本実施の形態では、図3及び図4に示すように、ノズル部13aの下端部には、噴射口11の長手方向に間隔を空けて複数の開口部35が形成されている。言い換えると、エアジェット形成ノズル13のエアジェット生成空間33は、噴射口11の長手方向に間隔を空けて、複数の位置において開口している。
【0037】
図3及び図4に示すように、エアジェット形成ノズル13のノズル部13aは、フラットノズル本体12の本体部12aの上端部の開口に挿入されており、エアジェット形成ノズル13のエアジェット生成空間33は、ノズル部13aの下端部に形成された複数の開口部35を介してフラットノズル本体12の内部空間32に連通されている。フラットノズル本体12の本体部12aの上面とエアジェット形成ノズル13のフランジ部13bの下面との間の隙間には、当該隙間をシールするようにシール部材42が配置されている。
【0038】
本実施の形態では、図3及び図4に示すように、ノズル部13aの下端部の先端は、筒状部12bの上端部の開口の内側まで延ばされている。これにより、ノズル部13aの下端部の複数の開口部35は、それぞれ、筒状部12bの内部空間を介して筒状部12bの下端部の噴射口11に向かい合うようになっている。
【0039】
図2に示すように、本実施の形態の研削用粉体含有液体導入部14は、研削用粉体を含有する液体を収容する液体収容部14aと、液体収容部14aに接続され、液体収容部14a内の液体の所定の圧力で送液する送液ポンプ14bと、を有している。
【0040】
液体収容部14a内に収容される液体としては、例えば水が用いられ、当該液体に含有される研削用粉体としては、例えば粒度#120(粒子径120μm〜200μm)〜#600(粒子径50μm〜80μm)のアルミナ粒子が用いられる。なお、液体には防錆剤が添加されてもよい。
【0041】
本実施の形態では、図2に示すように、送液ポンプ14bは、フラットノズル本体12の本体部12aの左右方向における両端部の開口に接続されており、各開口からフラットノズル本体12の内部空間32に所定の圧力で液体を導入するようになっている。送液ポンプ14bからフラットノズル本体12の内部空間32への液体の導入圧力は、大気圧程度であればよく、例えば0.1MPaである。
【0042】
図2に示すように、本実施の形態のエア導入部15は、エアを圧縮するコンプレッサ154と、コンプレッサ154に接続され、コンプレッサ154により圧縮されたエアを所定の圧力に調整するレギュレータ15aと、レギュレータ15aに接続され、当該レギュレータ15aにより圧力を調整されたエアの流路の開閉を切り替える電磁弁15bと、を有しており、電磁弁15bはエアジェット形成ノズル13のフランジ部13bの図2における左右方向の両端部の開口に接続されている。レギュレータ15aから出力されるエアの圧力は、エアジェット形成ノズル13の各開口部35においてエアジェットが形成されるように大気圧より十分大きくされており、例えば、0.2MPa〜0.5MPaである。
【0043】
制御装置16は、エア導入部15の電磁弁15bに接続されており、電磁弁15bの開閉を切り替えるようになっている。制御装置16は、例えば、制御プログラム等を記憶した記憶部を含むコンピュータシステムによって構成されている。
【0044】
本実施の形態の制御装置16は、ワーク20がフラットノズル本体12の噴射口11と対向しない時のエアジェット生成空間33へのエアの導入圧力を、ワーク20が噴射口11と対向する時のエアジェット生成空間33へのエアの導入圧力より低下させるようになっている。より詳細には、制御装置16は、ワーク20が噴射口11と対向する時、エア導入部15の電磁弁15bを開状態にし、ワーク20が噴射口11と対向しない時、エア導入部15の電磁弁15bを閉状態にするようになっている。なお、本実施の形態において、「ワーク20が噴射口11と対向する時」とは、ワーク20の少なくとも一部が噴射口11の少なくとも一部と対向する時を意味し、「ワーク20が噴射口11と対向しない時」とは、ワーク20と噴射口11との間に互いに対向する部分が存在しない時を意味する。
【0045】
図2に示すように、本実施のエア導入部15には、フラットノズル本体12の内部空間32からエアジェット形成ノズル13のエアジェット生成空間33への液体の流入を防止する逆流防止エア導入部153が設けられている。
【0046】
逆流防止エア導入部153は、具体的には、例えば、コンプレッサ154に接続され、コンプレッサ154により圧縮されたエアを所定の圧力に調整するレギュレータ153aと、当該レギュレータ153aに接続され、当該レギュレータ153aにより圧力を調整されたエアの流路の開閉を切り替える電磁弁153bと、を有しており、当該電磁弁153bは、エアジェット形成ノズル13のフランジ部13bの図2における左右方向の両端部の開口に接続されている。レギュレータ15aから出力されたエアの圧力は、エア導入部15からエアジェット生成空間33へのエアの導入圧力より小さく、かつ、研削用粉体含有液体導入部14からフラットノズル本体12の内部空間32への液体の導入圧力より大きくされており、例えば、0.15MPaである。
【0047】
図1及び図2に示すように、本実施の形態の移動装置18は、フラットノズル本体12の噴射口11と向かい合う同一の水平面内において当該噴射口11の長手方向と平行な向きに間隔を空けて配置された複数の回転ローラ18aと、各回転ローラ18aを回転駆動する回転駆動機構(例えば、モータ)と、を有している。各回転ローラ18aの中心軸線は、噴射口11の長手方向に対して直角な幅方向と平行に向けられている。
【0048】
移動装置18の回転ローラ18a上には、ワーク20を保持するチャック装置21が水平に配置されて支持されている。チャック装置21としては、例えば、それ自体は公知の真空チャックが用いられる。
【0049】
移動装置18の回転駆動機構によって各回転ローラ18aが、それぞれ、例えば図2における時計回りに回転駆動されることにより、当該回転ローラ18a上に支持されたチャック装置21は、図2における右方向であって噴射口11の長手方向と平行な向きに直線移動されるようになっている。
【0050】
本実施の形態では、制御装置16は、回転ローラ18aの回転量からチャック装置21に保持されたワーク20の移動量を算出するようになっている。
【0051】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
図1及び図2に示すように、まず、チャック装置21の上面にワーク20が載置されて保持される。ワーク20は、例えば平面視正方形状のガラス基板である。ワーク20の厚みは、例えば0.8mmであり、ワーク20の一辺の長さは、例えば80mmである。ワーク20がチャック装置21の上面に保持された状態で、ワーク20の表面と噴射口11との間の高さ方向の間隔は、例えば20mmである。
【0052】
移動装置18の回転駆動機構によって各回転ローラ18aが回転駆動されることにより、当該回転ローラ18a上に支持されたチャック装置21は、当該チャック装置21に保持されたワーク20と一緒に、噴射口11の長手方向と平行な向きに直線移動される。移動装置18によるチャック装置21の移動速度は、例えば20mm/sec〜200mm/secである。制御装置16は、回転ローラ18aの回転量から、チャック装置21に保持されたワーク20の移動量を算出する。
【0053】
研削用粉体含有液体導入部14からフラットノズル本体12の内部空間32に、例えば0.1MPaの圧力で研削用粉体を含有する液体が導入されると共に、逆流防止エア導入部153の電磁弁153bが開状態にされ、逆流防止エア導入部153からエアジェット形成ノズル13のエアジェット生成空間33に、例えば0.15MPaの圧力でエアが導入される。
【0054】
エアジェット生成空間33に導入されたエアは、エアジェット形成ノズル13の各開口部35からフラットノズル本体12の内部空間32に流入する。フラットノズル本体12の内部空間32に導入された研削用粉体を含有する液体は、エアジェット形成ノズル13の各開口部35から流入するエアの圧力を利用して、噴射口11から0.15MPa程度の弱い圧力で帯状に流出する(図5(a)参照)。
【0055】
次に、図5(b)〜図5(d)に示すように、移動装置18によるワーク20の移動中に、ワーク20が噴射口11と対向する時、制御装置16によって、エア導入部15の電磁弁15bが開状態にされ、エア導入部15からエアジェット生成空間33に、例えば0.2MPa〜0.5MPaの圧力でエアが導入される。
【0056】
エアジェット生成空間33に導入されたエアは、エアジェット形成ノズル13の各開口部35からフラットノズル本体12の内部空間32に噴出する。本実施の形態では、各開口部35が噴射口11の長手方向に間隔を空けて複数の位置において開口しているため、各エアジェット生成空間33からフラットノズル本体12の内部空間32へ長手方向に関して均一な流量でエアが噴出する。
【0057】
フラットノズル本体12の内部空間32に導入された研削用粉体を含有する液体は、エアジェット形成ノズル13の各開口部35から噴出するエアの圧力を利用して、噴射口11から0.2MPa〜0.5MPa程度の強い圧力でワーク20に向かって帯状に噴射される。
【0058】
移動装置18によるワーク20の移動中に、噴射口11から噴射された液体は、ワーク20上の噴射口11と対向する直線状の領域に集中して連続的に衝突する。液体中の研削用粉体からの衝撃の集積によりワーク20は厚み方向に深く削られ得て、結果的に、ワーク20は切断され得る。
【0059】
次に、図6(e)に示すように、移動装置18によるワーク20の移動中に、ワーク20が噴射口11と対向しなくなる時、制御装置16によって、エア導入部15の電磁弁15bが閉状態にされ、エア導入部15からエアジェット生成空間33へのエアの導入が停止される。これにより、噴射口11からの液体の噴射が停止される。この時、エアジェット生成空間33には逆流防止エア導入部153からエアが導入されるため、フラットノズル本体12の内部空間32からエアジェット生成空間33への液体の逆流は防止される。
【0060】
以上のように、本実施の形態によれば、研削用粉体含有液体導入部14からフラットノズル本体12の内部空間32に研削用粉体を含有する液体が導入されると共に、エア導入部15からエアジェット形成ノズル13のエアジェット生成空間33にエアが導入されることで、導入された研削用粉体を含有する液体はエアの圧力を利用してフラットノズル本体12の噴射口11から帯状に噴射される。そして、フラットノズル本体12とワーク20とが噴射口11の長手方向と平行な向きに相対移動されることにより、噴射口11から噴射された研削用粉体を含有する液体が、ワーク20上の噴射口11と対向する直線状の領域に集中して連続的に衝突していく。これにより、研削用粉体を含有する液体を圧縮空気の力を利用してワーク20に噴射する際の比較的低い加工圧であっても、ワーク20は厚み方向に深く削られ得て、結果的に切断または溝入れ加工され得る。ワーク20が硬脆材料のガラス基板であっても、研削用粉体からワーク20に作用する微小な衝撃の集積により加工が進行することで、クラックやチッピング等の問題の発生が防止され得る。また、研削用粉体が液体と一緒にワーク20に噴射されることで、加工中の静電気の発生も防止され得る。
【0061】
また、本実施の形態によれば、長手方向に延びる噴射口11から研削用粉体を含有する液体を帯状に噴射させるため、噴射ノズルを互いに間隔を空けて複数配置する必要が無く、省スペースである。
【0062】
次に、図6乃至図9を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図6は、本発明の第2の実施の形態によるワーク加工装置を示す概略正面図である。図7は、図6のワーク加工装置におけるフラットノズル本体及びエアジェット形成ノズルを拡大して示す概略正面図である。
【0063】
図6及び図7に示すように、第2の実施の形態によるワーク加工装置10’では、エアジェット形成ノズル13’のエアジェット生成空間33’が、区分部材17によって噴射口11の長手方向に区分された2つの部分空間(以下、第1部分空間331及び第2部分空間332という)を含んでおり、エア導入部15’が、各部分空間331、332にそれぞれ個別に連通するように接続された2つの単位エア導入部(以下、第1単位エア導入部151及び第2単位エア導入部152という)を有しており、制御装置16’は、各単位エア導入部151、152をそれぞれ個別に制御するようになっている。
【0064】
より詳細には、図7に示すように、区分部材17は、エアジェット形成ノズル13’の内部において鉛直方向に延伸するように設けられており、区分部材17の上端部は、フランジ部13bの上端部に密着固定されている。
【0065】
図8は、図7のエアジェット形成ノズルにおいて符号Bが付された一点鎖線で囲んだ部分を拡大して示す概略図である。図8に示すように、エアジェット生成空間33は、区分部材17の噴射口11側の端部(すなわち、下端部)に対応する位置においても開口しており、区分部材17の噴射口11側の端部に対応する位置における開口部35は、当該区分部材17を介して隣り合う第1部分空間331及び第2部分空間332の両方に連通されている。例えば、第1部分空間331の圧力と第2部分空間332の圧力とが異なる場合、区分部材17の噴射口11側の端部に対応する位置における開口部35からは第1部分空間331の圧力と第2部分空間332の圧力との間の圧力でエアが噴出されることになり、これにより、第1部分空間331と第2部分空間332とが切り替わる領域において噴射口11から噴射される液体に乱れが生じることが防止され得る。
【0066】
図6に示すように、各単位エア導入部151、152は、それぞれ、コンプレッサ154に接続され、コンプレッサ154により圧縮されたエアを所定の圧力に調整するレギュレータ151a、152aと、レギュレータ151a、152aに接続され、当該レギュレータ151a、152aにより圧力を調整されたエアの流路の開閉を切り替える電磁弁151b、152bと、を有している。本実施の形態では、第1単位エア導入部151の電磁弁151bが、エアジェット形成ノズル13のフランジ部13bの図6における左端部の開口に接続されており、第2単位エア導入部152の電磁弁152bが、図6における右端部の開口に接続されている。各レギュレータ151a、152aから出力されるエアの圧力は、エアジェット形成ノズル13の各開口部35においてエアジェットが形成されるように大気圧より十分大きくされており、例えば、0.2MPa〜0.5MPaである。
【0067】
図6に示すように、制御装置16’は、各単位エア導入部151、152の電磁弁151b、152bにそれぞれ個別に接続されており、各電磁弁151b、152bの開閉をそれぞれ個別に切り替えるようになっている。
【0068】
本実施の形態の制御装置16’は、ワーク20がフラットノズル本体12の噴射口11のうち各部分空間331、332に対応する領域111、112と対向しない時の当該部分空間331、332へのエアの導入圧力を、ワーク20が当該領域111、112と対向する時のエアジェット生成空間33へのエアの導入圧力より低下させるようになっている。より詳細には、制御装置16’は、ワーク20が噴射口11のうち第1部分空間331に対応する領域(以下、第1領域111という)と対向する時、第1部分空間331に連通する第1単位エア導入部151の電磁弁151bを開状態にし、ワーク20が噴射口11の第1領域111と対向しない時、第1単位エア導入部151の電磁弁151bを閉状態にするようになっている。また、制御装置16’は、ワーク20が噴射口11のうち第2部分空間332に対応する領域(以下、第2領域112という)と対向する時、第2部分空間332に連通する第2単位エア導入部152の電磁弁152bを開状態にし、ワーク20が噴射口11の第2領域112と対向しない時、第2単位エア導入部152の電磁弁152bを閉状態にするようになっている。なお、本実施の形態において、「ワーク20が第1領域111(第2領域112)と対向する時」とは、ワーク20の少なくとも一部が第1領域111(第2領域112)の少なくとも一部と対向する時を意味し、「ワーク20が第1領域111(第2領域112)と対向しない時」とは、ワーク20と第1領域111(第2領域112)との間に互いに対向する部分が存在しない時を意味する。
【0069】
その他の構成は図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同様である。図6乃至図9において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0070】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
図6に示すように、まず、チャック装置21の上面にワーク20が載置されて保持される。ワーク20は、例えば平面視正方形状のガラス基板である。ワーク20の厚みは、例えば0.8mmであり、ワーク20の一辺の長さは、例えば80mmである。ワーク20がチャック装置21の上面に保持された状態で、ワーク20の表面と噴射口11との間の高さ方向の間隔は、例えば20mmである。
【0071】
移動装置18の回転駆動機構によって各回転ローラ18aが回転駆動されることにより、当該回転ローラ18a上に支持されたチャック装置21は、当該チャック装置21に保持されたワーク20と一緒に、噴射口11の長手方向と平行な向きに直線移動される。移動装置18によるチャック装置21の移動速度は、例えば20mm/sec〜200mm/secである。制御装置16’は、回転ローラ18aの回転量から、チャック装置21に保持されたワーク20の移動量を算出する。
【0072】
研削用粉体含有液体導入部14からフラットノズル本体12の内部空間32に、例えば0.1MPaの圧力で研削用粉体を含有する液体が導入されると共に、逆流防止エア導入部153の電磁弁153bが開状態にされ、逆流防止エア導入部153からエアジェット形成ノズル13の各部分空間331、332に、例えば0.15MPaの圧力でエアが導入される。
【0073】
各部分空間331、332に導入されたエアは、エアジェット形成ノズル13の各開口部35からフラットノズル本体12の内部空間32に流入する。フラットノズル本体12の内部空間32に導入された研削用粉体を含有する液体は、エアジェット形成ノズル13の各開口部35から流入するエアの圧力を利用して、噴射口11から0.15MPa程度の弱い圧力で帯状に流出する(図9(a)参照)。
【0074】
次に、図9(b)に示すように、移動装置18によるワーク20の移動中に、ワーク20が噴射口11の第1領域111と対向する時、制御装置16’によって、第1単位エア導入部151の電磁弁151bが開状態にされ、第1単位エア導入部151から第1部分空間331に、例えば0.2MPa〜0.5MPaの圧力でエアが導入される。
【0075】
第1部分空間331に導入されたエアは、第1部分空間331に連通する各開口部35からフラットノズル本体12の内部空間32に噴出する。フラットノズル本体12の内部空間32に導入された研削用粉体を含有する液体は、第1部分空間331に連通する各開口部35から噴出するエアの圧力を利用して、噴射口11の第1領域111から0.2MPa〜0.5MPa程度の強い圧力でワーク20に向かって帯状に噴射される。
【0076】
次に、図9(c)に示すように、移動装置18によるワーク20の移動中に、ワーク20が噴射口11の第2領域と対向する時、制御装置16’によって、第2単位エア導入部152の電磁弁152bが開状態にされ、第2単位エア導入部152から第2部分空間332に、例えば0.2MPa〜0.5MPaの圧力でエアが導入される。
【0077】
第2部分空間332に導入されたエアは、第2部分空間332に連通する各開口部35からフラットノズル本体12の内部空間32に噴出する。フラットノズル本体12の内部空間32に導入された研削用粉体を含有する液体は、第2部分空間332に連通する各開口部35から噴出するエアの圧力を利用して、噴射口11の第2領域112から0.2MPa〜0.5MPa程度の強い圧力でワーク20に向かって帯状に噴射される。
【0078】
移動装置18によるワーク20の移動中に、噴射口11から噴射された液体は、ワーク20上の噴射口11と対向する直線状の領域に集中して連続的に衝突するため、液体中の研削用粉体からの衝撃の集積によりワーク20は厚み方向に深く削られ得て、結果的に、ワーク20は切断され得る。
【0079】
次に、図9(d)に示すように、移動装置18によるワーク20の移動中に、ワーク20が噴射口11の第1領域111と対向しなくなる時、制御装置16’によって、第1単位エア導入部151の電磁弁151bが閉状態にされ、第1単位エア導入部151から第1部分空間331へのエアの導入が停止される。これにより、噴射口11の第1領域111からの液体の噴射が停止される。この時、第1部分空間331には逆流防止エア導入部153からエアが導入されるため、フラットノズル本体12の内部空間32から第1部分空間331への液体の逆流は防止される。
【0080】
次に、図9(e)に示すように、移動装置18によるワーク20の移動中に、ワーク20が噴射口11の第2領域112と対向しなくなる時、制御装置16’によって、第2単位エア導入部152の電磁弁152bが閉状態にされ、第2単位エア導入部152から第2部分空間332へのエアの導入が停止される。これにより、噴射口11の第2領域112からの液体の噴射が停止される。この時、第2部分空間332には逆流防止エア導入部153からエアが導入されるため、フラットノズル本体12の内部空間32から第2部分空間332への液体の逆流は防止される。
【0081】
次に、第1の実施の形態と第2の実施形態とを用いて検証した具体的な実施例について説明する。
フラットノズル本体12として、噴射口11の長手方向の長さが90mm、幅方向の長さが1.6mmのものが使用され、ワーク20として、一辺の長さが80mmのものが使用された。移動装置18により、ワーク20は25mm/secの移動速度で移動された。
【0082】
第1の実施の形態において、ワーク20が噴射口11と対向していない時、エア導入部15からエアジェット生成空間33に0.1MPaの圧力でエアが導入され、当該エアの消費量は18L/secであった。また、ワーク20が噴射口11と対向している時、エア導入部15からエアジェット生成空間33に0.3MPaの圧力でエアが導入され、当該エアの消費量は46L/secであった。
【0083】
ワーク20が噴射口11と対向している時間は、(ワーク20の長さ+噴射口11の長さ)/移動速度=6.8秒であった。従って、ワーク20が噴射口11と対向している時間に消費されるエアの合計量は、46×6.8=312.8Lであった。
【0084】
一方、第2の実施の形態において、ワーク20が噴射口11の第1領域111と対向していない時、第1単位エア導入部151から第1部分空間331に0.1MPaの圧力でエアが導入され、当該エアの消費量は9L/secであった。また、ワーク20が噴射口11の第1領域111と対向している時、第1単位エア導入部151から第1部分空間331に0.3MPaの圧力でエアが導入され、当該エアの消費量は23L/secであった。また、ワーク20が噴射口11の第2領域112と対向していない時、第2単位エア導入部151から第2部分空間332に0.1MPaの圧力でエアが導入され、当該エアの消費量は9L/secであった。また、ワーク20が噴射口11の第2領域112と対向している時、第2単位エア導入部152から第2部分空間332に0.3MPaの圧力でエアが導入され、当該エアの消費量は23L/secであった。
【0085】
図9(b)に示すようにワーク20が第1領域111と対向しているが第2領域112とは対向していない時間は、第1領域の長さ/移動速度=1.8秒であり、ここでのエアの消費量は、(23+9)×1.8=57.6Lであった。また、図9(c)に示すようにワーク20が第1領域111及び第2領域112の両方と対向している時間は、ワークの長さ/移動速度=3.2秒であり、ここでのエアの消費量は、(23+23)×3.2=147.2Lであった。また、図9(d)に示すようにワーク20が第2領域112とは対向しているが第1領域111とは対向していない時間は、第2領域の長さ/移動速度=1.8秒であり、ここでのエアの消費量は、(23+9)×1.8=57.6Lであった。従って、ワーク20が噴射口11と対向している時間(すなわち、図9(b)〜図9(d)に示す工程)に消費されるエアの合計量は、262.4Lであった。
【0086】
以上の検証結果から、ワーク20が噴射口11と対向している時間のエアの消費量は、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に比べて、262.4/312.8×100=約83%に低減されることが確認された。
【0087】
すなわち、以上のような第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる他、ワーク20の加工効率が維持されながら、全体的なエアの消費量が低減され得る。また、ワーク20の外側に噴射される研削用粉体を含有する液体が、ワーク加工装置10’の他の構成部材(例えば、移動装置18の回転ローラ18a)に衝突して当該他の構成部材を損傷させることが防止され得る。
【0088】
なお、以上のような第2の実施の形態では、図6及び図7に示すように、エアジェット形成ノズル13’のエアジェット生成空間33’が、区分部材17によって噴射口11の長手方向に区分された2つの部分空間331、332を含んでおり、エア導入部15’が、各部分空間331、332にそれぞれ個別に連通するように接続された2つの単位エア導入部151、152を有しており、制御装置16’が、各単位エア導入部151、152をそれぞれ個別に制御するようになっていたが、これに限定されず、図10に示すように、エアジェット形成ノズル13’’のエアジェット生成空間が、区分部材171、172によって噴射口11の長手方向に区分された3つ以上の部分空間331、332、333を含んでおり、エア導入部15’’が、各部分空間331、332、333にそれぞれ個別に連通するように接続された3つ以上の単位エア導入部151、152、152’を有しており、制御装置16’’は、各単位エア導入部151、152、152’をそれぞれ個別に制御するようになっていてもよい(第3の実施の形態)。この場合も、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる他、全体的なエアの消費量が第2の実施の形態に比べて一層低減され得る。
【0089】
なお、以上のような第1乃至第3の実施の形態では、移動装置18は、ワーク20を噴射口11の長手方向と平行な向きに移動させるように構成されていたが、これに限定されず、ワーク20を噴射口11の長手方向に対して所定の鋭角だけ傾斜した向きに移動させるように構成されていてもよい。噴射口11の長手方向に対するワーク20の移動方向の傾斜角度が大きくなるほど、噴射口11から噴射される液体の衝突位置が分散するため、ワーク20の厚み方向の加工速度が低下する。そのため、噴射口11の長手方向に対するワーク20の移動方向の傾斜角度は、小さい方が好ましく、実用的には15°以下であることが好ましい。
【0090】
また、以上のような第1乃至第3の実施の形態では、移動装置18として複数の回転ローラ18aと当該回転ローラ18aを回転駆動する回転駆動機構とが用いられていたが、これに限定されず、例えば、移動装置18としてボールネジ送り装置が用いられていてもよい。この場合、制御装置16は、ボールネジ軸の回転量からワーク20の移動量を算出するようになっていてもよい。
【0091】
また、以上のような第1乃至第3の実施の形態では、移動装置18は、静止状態のフラットノズル本体12に対してワーク20を直線移動させるように構成されていたが、これに限定されず、静止状態のワーク20に対してフラットノズル本体12を直線移動させるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 ワーク加工装置
10’ ワーク加工装置
11 噴射口
111 第1領域
112 第2領域
12 フラットノズル本体
12a 本体部
12b 筒状部
13 エアジェット形成ノズル
13’ エアジェット形成ノズル
13a ノズル部
13b フランジ部
14 研削用粉体含有液体導入部
14a 液体収容部
14b 送液ポンプ
15 エア導入部
15’ エア導入部
15’’ エア導入部
151 単位エア導入部
152 単位エア導入部
152’ 単位エア導入部
153 逆流防止エア導入部
16 制御装置
16’ 制御装置
16’’ 制御装置
17 区分部材
171 区分部材
172 区分部材
18 移動装置
18a 回転ローラ
20 ワーク
21 チャック装置
32 内部空間
33 エアジェット生成空間
33’ エアジェット生成空間
33’’ エアジェット生成空間
331 部分空間
332 部分空間
333 部分空間
35 開口部
41 シール部材
42 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10