特許第6239373号(P6239373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239373
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】人工芝生試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/56 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   G01N3/56 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-265036(P2013-265036)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-121453(P2015-121453A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱本 剛
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−043081(JP,A)
【文献】 特開2001−066788(JP,A)
【文献】 特開平05−240760(JP,A)
【文献】 特開平06−184811(JP,A)
【文献】 特開平09−038012(JP,A)
【文献】 特開平11−160227(JP,A)
【文献】 特開2013−057548(JP,A)
【文献】 特開2001−020139(JP,A)
【文献】 特開2002−173906(JP,A)
【文献】 特開2013−148413(JP,A)
【文献】 特開2000−352005(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/004101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工芝生の耐摩耗性能を試験するための人工芝生試験機であって、
人工芝生の試験体へ擦り付けて該試験体の摩耗を促進する摩耗子を有し、
該摩耗子は、円周方向に回転可能で回転軸に直交する方向の断面が円形状の外周面を有する回転部と、該回転部の外周面に巻着されるシート状の摩擦体とを備え、前記摩擦体が回転しつつ該回転軸と直交する方向に移動して前記試験体へ連続的に擦り付けられるように設けられており、
前記回転部の外周面には内側へ窪む溝部が軸方向へ向かって形成され、
前記回転部へ着脱可能に取り付けられる取付部材が前記溝部に収納されて取り付けられており、
該溝部の内側へ前記摩擦体の端部が挿入されると共に、該端部が前記溝部の内面と前記取付部材の間に狭着されて、前記摩擦体が前記回転部へ取り付けられており、
前記溝部の内面は、底面と、該底面の両端からそれぞれ上方へ延設されて開口縁へ至る2個の内側面を備えると共に、前記底面から前記開口縁へ至るほど溝幅が大きくなる台形状の断面に形成されており、
前記取付部材は上面と下面と前記溝部の各内側面に対応する位置にそれぞれ形成された2個の外側面とを備える台形状の断面に形成されると共に、前記上面と下面を貫通して前記溝部の底面へ螺入するねじによって前記取付部材が前記溝部へ取り付けられていることを特徴とする人工芝生試験機。
【請求項2】
前記溝部は、前記回転部の周方向に複数配置されて形成されており、
前記摩擦体は一方の端部が前記溝部へ挿入されて取付部材により取り付けられると共に、
該溝部と異なる他の溝部に前記摩擦体の他方の端部が挿入されて取付部材により取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の人工芝生試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝生の試験体へ摩耗子を擦り付けて劣化を促進させる、人工芝生の耐摩耗性能を試験するための人工芝生試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
競技場に敷設される人工芝生は、その競技場で行われるスポーツでの使用に耐えうる耐久性を備える必要があり、その性能を試験するための試験機について種々の構成が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、試験台上に緊張して敷設された人工芝の試験片と、この人工芝の試験片に一定の負荷を作用させた状態で回転しつつ往復移動するローラからなり、このローラのリムに各種スポーツ用スパイクシューズのスパイクを直接植設可能に構成したことを特徴とする人工芝の耐久性試験機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−43081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される人工芝の耐久性試験機はサッカーなど競技用シューズにスパイクを備える種目で有効に試験できるが、テニスなどスパイクを備えないシューズを用いる種目については試験が難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、あらゆる競技での耐久性を試験できる人工芝生試験機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る人工芝生試験機は、人工芝生の耐摩耗性能を試験するための人工芝生試験機であって、
人工芝生の試験体へ擦り付けて該試験体の摩耗を促進する摩耗子を有し、
該摩耗子は、円周方向に回転可能で回転軸に直交する方向の断面が円形状の外周面を有する回転部と、該回転部の外周面に巻着されるシート状の摩擦体とを備え、前記摩擦体が回転しつつ該回転軸と直交する方向に移動して前記試験体へ連続的に擦り付けられるように設けられており、
前記回転部の外周面には内側へ窪む溝部が軸方向へ向かって形成され、
前記回転部へ着脱可能に取り付けられる取付部材が前記溝部に収納されて取り付けられており、
該溝部の内側へ前記摩擦体の端部が挿入されると共に、該端部が前記溝部の内面と前記取付部材の間に狭着されて、前記摩擦体が前記回転部へ取り付けられており、
前記溝部の内面は、底面と、該底面の両端からそれぞれ上方へ延設されて開口縁へ至る2個の内側面を備えると共に、前記底面から前記開口縁へ至るほど溝幅が大きくなる台形状の断面に形成されており、
前記取付部材は上面と下面と前記溝部の各内側面に対応する位置にそれぞれ形成された2個の外側面とを備える台形状の断面に形成されると共に、前記上面と下面を貫通して前記溝部の底面へ螺入するねじによって前記取付部材が前記溝部へ取り付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る人工芝生試験機によれば、円周方向に回転可能で回転軸に直交する方向の断面を円形状の外周面を有する形状に形成させた回転部と、この回転部の外周面に巻着させるシート状の摩擦体とを備える摩耗子を有し、前記回転部が回転しつつこの回転軸と直交する方向に移動して前記摩擦体を前記人工芝生の試験体へ連続的に擦り付けられるように設けているので、摩擦体の表面の性状に応じた摩耗を前記試験体へ与えることができ、種々の競技に対応する耐摩耗試験を行うことができる。
また、前記回転部の外周面に内側へ窪む溝部を軸方向へ向かって形成させ、取付部材を前記溝部へ収納させて着脱可能に取り付け、前記溝部の内側へ前記摩擦体の端部を挿入させると共に、この端部を前記溝部の内面と前記取付部材の間に狭着させて、前記摩擦体を前記回転部へ取り付けるので、前記取付部材を前記溝部から取り外して狭着された前記摩擦体の端部を溝部内から引き抜き取り外すことができる。そして、摩擦体を取り外した前記回転部の前記溝部へ、異なる表面性状を備える別の摩擦体の端部を前記溝部内へ挿入させて前記取付部材と溝部の内面との間に狭着させることが可能であり、種々の摩擦体を前記回転部へ容易に取り付けて耐摩耗試験を行うことができる。
【0009】
また、前記溝部を、前記回転部の周方向に複数配置させて形成させ、
前記摩擦体の一方の端部を前記溝部へ挿入させて取付部材により取り付けると共に、この溝部と異なる他の溝部に前記摩擦体の他方の端部を挿入させて取付部材により取り付ければ、一方の端部を溝部へ取り付けた後で、前記摩擦体の他方の端部を引っ張り緊張させた状態で別の溝部へ取り付けて、摩擦体にたるみが生じないように回転部へ取り付けることができるので好ましい。
【0010】
また、前記溝部の内面に、底面と、この底面の両端からそれぞれ上方へ延設させて開口縁へ至る2個の内側面を備えさせると共に、前記底面から前記開口縁へ至るほど溝幅が大きくなる台形状の断面に形成させ、
前記取付部材を上面と下面と前記溝部の各内側面に対応する位置にそれぞれ形成された2個の外側面とを備える台形状の断面に形成させると共に、前記上面と下面を貫通して前記溝部の底面へ螺入するねじによって前記取付部材が前記溝部へ取り付ければ、前記ねじを締め付けて前記取付部材を前記溝部の底面側へ近づけるほど、取付部材の前記外側面と溝部の前記内側面との隙間が狭まるようになされ、厚みの異なる種々の摩擦体をこれらの間に狭着させて容易に取り付けることができるので、好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る人工芝生試験機によれば、異なる表面性状を備える種々の摩擦体を摩耗子に取り付けて、人工芝生の耐久性を試験できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る人工芝生試験機の概要を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図である。
図2図1の摩耗子を示す平面図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4図2、3の取付部材を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
図5】摩擦体を取り付ける前の回転部を示す断面図である。
図6図5の溝部に摩擦体の一方の端部を挿入させた状態を示す図である。
図7図6の溝部に図4の取付部材を取り付けた状態を示す図である。
図8図7の摩擦体の他方の端部を溝部へ挿入させて取付部材を取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
Tは人工芝生試験機である。
本実施形態の人工芝生試験機Tは、人工芝生の試験体としての試験片Pを載置して取り付ける架台部1と、摩耗子3を有し、前記架台部1に取り付けた人工芝生の試験片Pの上方から前記摩耗子3を擦り付ける台車部2とを備えている。
前記架台部1は、人工芝生の試験片Pを取り付ける上面が平面となされたテーブル12と、このテーブル12を支持する支持部11とを備えており、前記人工芝生の試験片Pの基布p2の下面をテーブル12の上面に載置させ、基布p2に植設された芝糸p1を上方に向けて、テーブル12に取り付けるように設けている。
【0014】
本実施形態の台車部2は、2個の摩耗子3、即ち、図1における左側に配置した摩耗子3aと右側に配置した摩耗子3bを備え、この各摩耗子3a、3bを枠体21に取り付けている。
本実施形態の各摩耗子3a、3bは、円柱形状に形成された回転部5と、この回転部5の両端からそれぞれ突出する円柱形状の回転軸4とを備えており、前記回転部5はその中心からそれぞれ突出する前記各回転軸4を軸として円周方向へ回転できるように設けている。
前記各摩耗子3a、3bは、両端からそれぞれ突出させた各回転軸4を前記枠体21に軸支させてそれぞれ取り付けており、各回転軸4の軸方向を平行に配置させて並設させている。具体的には、各摩耗子3a、3bは、図1(イ)において、それぞれの回転軸4の軸方向を図中上下方向に向けて、図中左右方向に並設させている。
【0015】
前記台車部2は、前記各摩耗子3a、3bの各回転部5を、テーブル12上に取り付けた人工芝生の試験片Pの上に載置させて、前記架台部1の上方に取り付けられている。
前記台車部2は、枠体21を横方向に移動させることによって、前記各摩耗子3a、3bの回転部5を前記試験片Pの上で転がすように設けている。本実施形態の人工芝生試験機Tは、図1(イ)において、図示しない駆動源により台車部2の枠体21を図中左右方向へ往復移動させるように設けている。
尚、各摩耗子3a、3bの各回転部5の外周面には、図2以降の図面に図示する摩擦体6がそれぞれ取り付けられており、試験片Pの上で回転部5を転がすことによって前記試験片Pが摩擦体6に擦られるように設けている。
【0016】
前記磨耗子3a、3bの回転軸4には、歯車41をそれぞれ取り付けている。
具体的には、前記摩耗子3aには、回転部5から突出する一方の回転軸4に歯車41aを取り付けており、前記摩耗子3bには回転部5から突出する一方の回転軸4に歯車41bを取り付けている。
前記歯車41a、41bは、各摩耗子3a、3bを前記枠体21へ取り付けた状態で横方向に配置させており、並設させた歯車41a、41bの間に輪状の無端チェーンCを架け渡し、前記歯車41a、41bへそれぞれ巻回させている。
尚、前記磨耗子3a、3bや無端チェーンCには、磨耗子3a、3bを回転させるためのモーターなどの駆動源が接続されていない。前記磨耗子3a、3bは、台車部2の前記枠体21の往復移動によって、前記人工芝生の試験片P上で前記回転部5を転がし、円周方向へ回転するように設けている。
【0017】
前記歯車41aと、歯車41bは、それぞれの歯数が異なっており、具体的には、歯車41aは15個の歯数に形成され、歯車41bは21個の歯数に形成されている。
このような歯車41a、41bに前記無端チェーンCを取り付けることで、前記摩耗子3a、3bが回転するときに各回転部5がそれぞれ異なる回転速度で回転するようになされる。
このように各摩耗子3a、3bを設けることで、架台部1へ取り付けた人工芝生の試験片P上で前記枠体21を横方向へ移動させたときに、前記摩耗子3a、3bの一方の回転部5が前記試験片Pの上を転がり、他方の回転部5が前記無端チェーンを介した駆動によって連動して回転するのでその外周面の摩擦体6を前記試験片Pの上面で滑るように擦り付けることができる。即ち、各摩耗子3a、3bの回転部5の外周面に取り付けた摩擦体6を人工芝生の試験片Pの上面へより効率良く擦り付けることができる。
本実施形態の摩耗子3a、3bは、回転軸4に取り付けた歯車41a、41bの歯数をそれぞれ15個と21個に形成させているが、これに限るものではなく、上記以外の歯数に設けてもよい。
【0018】
本実施形態の人工芝生試験機Tは、設定した任意の速度で、前記枠体21を往復移動させることができ、例えば、0.25m/sで移動できるように設けている。
【0019】
また、本実施形態の人工芝生試験機Tの架台部1は、支持部11の上方でテーブル12を移動させ、テーブル12を前記枠体21の往復移動方向に対し直行する横方向へ往復移動できるように設けている。
即ち、本実施形態の架台部1は、図1(イ)において、テーブル12を図中上下方向へ往復移動するように設けている。
前記架台部1は、設定した任意の速度で前記テーブル12を前記のように図中上下方向に往復移動させることができ、例えば、0.015m/sで移動できるように設けている。
このようにテーブル12を設けることで、テーブル12に取り付けた人工芝生の試験片Pの上面へ、各摩耗子3a、3bの摩擦体6をより偏り無く擦り付けることができる。
【0020】
図2図1の摩耗子3aを示す平面図であり、図3図2のA−A断面図である。
摩耗子3bは、回転軸4に取り付けた歯車41bの歯数のみが摩耗子3aと異なり、他は摩耗子3aと同一の構成を備えている。
【0021】
前記回転部5の外周面には、内側へ窪む溝部51を形成させており、円柱状の回転部5の軸方向に沿って回転部5の全長に亘って同一断面形状に前記溝部51を形成させている。
前記溝部51は、底面53と、この底面53の両端から開口側へ向かう2個の内側面52を備えた矩形の断面形状に形成させており、前記底面53から各内側面52の各開口縁54へ至るほど溝幅が大きくなる台形状の断面に形成させている。
尚、前記各開口縁54は各内側面52と回転部5の外周面とが接続する角部分を溝部51の全長に亘り角丸状に形成させており、各内側面52と底面53とが接続する角部分を溝部51の全長に亘り角丸状に形成させている。
【0022】
本実施形態の回転部5には、前記溝部51を4個形成させている。具体的には、溝部51a、51bを2個1組とし、溝部51c、51dを2個1組として、2組4個の溝部51を形成させている。
前記回転部5の外周面において、前記溝部51aと溝部51bは半周より若干小さな間隔で配置させており、前記溝部51cと溝部51dは、前記溝部51a、51bの間隔と同じ大きさの間隔をあけて形成している。
また、前記回転部5の外周面において、前記溝部51aと溝部51cを半周の間隔をあけて配置させており、前記溝部51bと溝部51dを半周の間隔をあけて配置させている。
即ち、前記各溝部51a〜51dは、2個1組に形成させた各溝部51間の間隔が、異なる組の溝部51間の間隔よりも大きくなるように形成させている。具体的には、2個1組に形成させた溝部51aと溝部51bとの間隔や溝部51cと溝部51dとの間隔が、溝部51aと溝部51dとの間隔や溝部51bと溝部51cとの間隔よりも大きくなるように配置させている。
【0023】
前記回転部5に取り付ける摩擦体6は、矩形のシート状に形成させて回転部5の外周面に巻回させて取り付けている。
本実施形態の摩擦体6は、合成ゴムのシートで設けており、その表面に凹溝65を多数並設させて形成している。
尚、摩擦体6の材料は合成ゴムに限るものではなく、合成ゴム以外の合成樹脂や金属などの材料を適宜選択又は組み合わせて形成してもよく、凹溝や突起などを選択又は組み合わせてその表面に形成させてもよい。
【0024】
前記摩擦体6は、その表面を外側へ向け、裏面を回転部5へ当接させて巻回させ、回転部5の外周面へ被着させている。
本実施形態の回転部5には、2個の摩擦体6a、6bを周方向へ間隔をあけて並設させて取り付けている。
また、前記回転部5には、前記摩擦体6aと摩擦体6bを、回転部5の軸方向へそれぞれ5個並設させている。
即ち、本実施形態の回転部5には合計10個の摩擦体6を取り付けている。
【0025】
前記各摩擦体6a、6bは、前記回転部5の軸方向に沿う端部61、62を溝部51の内側へ挿入させて取り付けている。
具体的には、前記摩擦体6aは、一方の端部61を前記溝部51a内へ挿入させると共に、他方の端部62を前記溝部51aと2個1組に形成させた溝部51b内へ挿入させている。また、前記摩擦体6bは、一方の端部61を前記溝部51c内へ挿入させると共に、他方の端部62を前記溝部51cと2個1組に形成させた溝部51d内へ挿入させている。
前記摩擦体6a、6bの各端部61、62は、前記溝部51a〜51dの内側にそれぞれ取り付けた取付部材7と、前記溝部51a〜51dの内面との間に狭着されて、各溝部51a〜51dの内側から抜けないように取り付けられている。
【0026】
図4図2、3の取付部材7を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
本実施形態の取付部材7は、矩形の断面形状の長尺体に形成させており、上面74と、この上面74の両端にそれぞれ接続して下方へ延設される2個の外側面72と、各外側面72の下端に両端を接続させる下面73とを備えている。
【0027】
前記取付部材7は、2個の外側面72の間隔が、上面74から下面72へ至るほど幅狭となる台形状の断面形状に形成させている。
詳細には、前記各外側面72は、前記摩耗子3a、3bの回転部5に形成させた溝部51の2個の内側面52に対応する位置に形成させており、前記取付部材7を溝部51内に取り付けたときに、各外側面72が前記各内側面52に対してそれぞれ平行に配置されるように形成させている。
【0028】
前記取付部材7には、上面74から下面73へ貫通する円形の貫通孔71を形成させており、この貫通孔71へ挿通させたねじNを前記溝部51の底面53へ螺入させて、図3に示すように、取付部材7を溝部51へ取り付けるように設けている。
前記貫通孔71は、下部に小径部76を設け、上部に小径部76よりも孔の内径を大きく形成させた大径部75を設けており、前記小径部76へねじNの雄ねじ部分を挿通可能に形成させ、前記大径部75の内側へ前記ねじNのねじ頭部を収納可能に形成させている。
本実施形態の取付部材7には、長手方向に間隔をあけて2個の貫通孔71を形成させている。
【0029】
図5は摩擦体6を取り付ける前の回転部5を示す断面図である。
回転部5の各溝部51a〜51dの底面53には、前記ねじNが螺入可能な雌ねじを備えたねじ孔55をぞれぞれ形成させており、前記ねじ孔55は前記取付部材7に形成させた2個の貫通孔71に対応する配置で2個1組で形成させている。
尚、図2に示すように、本実施形態の回転部5は、1個の溝部51に5個の取付部材7を取り付けるように設けている。前記ねじ孔55は、1個の溝部51に5組10個形成させており、4個の溝部51a〜51dを備える回転部5全体で合計20組40個のねじ孔55を形成させている。
【0030】
図6図5の溝部51dに摩擦体6bの一方の端部62を挿入させた状態を示す図である。
図6に示すように、摩擦体6bの一方の端部62を溝部51dへ挿入させた状態で、前記取付部材7を溝部51dへ挿入させ、この取付部材7の各貫通孔71へねじNを挿通させて溝部51dのねじ孔55へそれぞれ螺入させることで、摩擦体6bの端部62を回転部5へ取り付けることができる。
【0031】
図7図6の溝部51dに図4の取付部材7を取り付けた状態を示す図である。
前記摩擦体6bは、図7に示すように、取付部材7と溝部51dの内面との間に前記端部62を狭着させて回転部5へ取り付けられており、具体的には、前記端部62は、取付部材7の外側面72と溝部51dの内側面52との間に狭着されて取り付けられている。
本実施形態の摩耗子3a、3bは、取付部材7の2個の外側面72が、各溝部51a〜51dの各内側面52に対して平行に配置されるように形成させているので、外側面72と内側面52との間に狭着させる摩擦体6bの端部62へ力が集中する箇所が生じにくく、摩擦体6bの損傷を抑制できる。
【0032】
本実施形態の摩耗子3a、3bは、溝部51dへ一方の端部62を取り付けた摩擦体6bを、2個1組で形成させた溝部51dと溝部51cとの間の回転部5の外周面に巻回させ、他方の端部61を前記溝部51cへ挿入させて取り付けるように設けている。
前記端部61の溝部51cへの取り付けは、前記端部62の溝部51dへの取り付けと同じ方法で行うものである。即ち、摩擦体6の端部61を挿入させた溝部51cへ取付部材7を挿入させ、この取付部材7の各貫通孔71へねじNを挿通させて溝部51cのねじ孔55へそれぞれ螺入させることで、端部61を回転部5へ取り付けることができる。
図8図7の摩擦体6bの他方の端部61を溝部51cへ挿入させて取付部材7を取り付けた状態を示す図である。
上記のように前記摩擦体6bは、溝部51cと溝部51dに取り付けた2個の取付部材7によってその両側の端部61、62を溝部51c、51d内から抜けないように取り付けてられており、軸方向に沿って5個並設させた摩擦体6bを10個の取付部材7によって回転部5へ取り付けている。
尚、摩擦体6aの端部61、62の溝部51a、51bへの取り付けは、前記摩擦体6bの溝部51c、51dへの取り付けと同じ方法で行うものであり、上記の方法で前記摩擦体6a、6bを回転部5へ取り付けて図2に示す構成の摩耗子3a、3bを形成するものである。
【0033】
図3に示すように、本実施形態の摩耗子3a、3bの回転部5は、外周面に巻回させて取り付けた摩擦体6の表面が径方向において最も外側に位置し、各溝部51a〜51dに取り付けた取付部材7やねじNが前記摩擦体6の表面よりも内側に位置するように設けている。
このように摩耗子3a、3bを設けることで、人工芝生の試験片Pの上面への摩擦体6以外の部材の接触を抑制させ、人工芝生の試験片Pへ与える負荷の変動を抑制させている。
【0034】
また、本実施形態の摩耗子3a、3bの回転部5は、2個の内側面52間の間隔が開口縁54に至るほど大きくなるように配置させた台形状の断面に溝部51を形成させると共に、前記取付部材7の2個の外側面72を前記各内側面52に対応する位置に形成させている。このように設けることで、ねじNを介して溝部51の内側に取り付ける取付部材7を底面53側から開口縁54側に近い位置に取り付けるほど、前記溝部51の内側面52と前記取付部材7の外側面72との隙間が大きくなるようになされるので、厚みの異なる種々の摩擦体6を前記取付部材7の外側面72と溝部51の内側面52との間に容易に狭着させて回転部5へ取り付け、試験を行うことができる。
【0035】
尚、本発明に係る人工芝生試験装置Tは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0036】
例えば、図1〜8に示す実施形態の摩耗子3a、3bは、摩擦体6a、6bの両方の端部61、62をそれぞれ異なる溝部51へ挿入させて取付部材7により取り付けているが、これに限るものではない。
例えば、回転部5に溝部51を1個だけ形成させ、外周面に巻回させた1個の摩擦体6の両端をこの溝部51へ挿入させて取付部材7により取り付けるように設けても良い。
しかしながら、人工芝生試験機Tの摩耗子3a、3bは、人工芝生の試験片Pへ与える負荷の変動を低減するために、回転部5の外周面と摩擦体6a、6bとの間にたるみによる隙間が生じないのが好ましい。
図1〜8に示す実施形態の摩耗子3a、3bのように、摩擦体6の両側の端部61、62をそれぞれ異なる溝部51へ挿入させて取り付けるように設けることで、一方の端部61を溝部51へ挿入させて取付部材7により取り付けた後、回転部5の外周面と摩擦体6との間に隙間が生じないように他方の端部62を引っ張り緊張させた状態で、他の溝部51へ挿入させて取付部材7により取り付けることができるので、摩擦体6をたるませずに容易に回転部5へ取り付けることができ、好ましい。
また、一方の端部61を溝部51へ取り付けた後、他方の端部62を他の溝部51へ挿入させて取付部材7を取り付ける作業において、取付部材7の貫通孔71へ挿入させ溝部51のねじ孔55へ螺入させたねじNを締め付けることにより、ねじNの締め付けによって移動する取付部材7と共に摩擦体6の端部62が溝部51の奥側へ引き寄せられて摩擦体6がより緊張するようになされ、摩擦体6のたるみを解消する効果が期待できる。
【0037】
また、図1〜8に示す実施形態の摩耗子3a、3bは、2個の摩擦体6a、6bを回転部5の周方向に配置させてそれぞれ取り付けているが、これに限るものではなく、1個の摩擦体6を回転部5の外周面に巻回させて取り付けてもよく、3個以上の摩擦体を回転部5の周方向に配置させてそれぞれ取り付けてもよい。
【0038】
また図1〜8に示す実施形態の摩耗子3a、3bは、回転部5とその両端からそれぞれ突出する各回転軸4とを金属製で一体的に形成させているがこれに限るものではない。例えば、回転部5を回転軸4とは別体の円柱形状や円筒形状に形成させ、回転部5へ回転軸4を取り付けて摩耗子3a、3bを形成させてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 架台部
11 支持部
12 テーブル
2 台車部
21 枠体
3a、3b 摩耗子
4 回転軸
41a 歯車
41b 歯車
5 回転部
51 溝部
52 内側面
53 底面
54 開口縁
55 ねじ孔
6 摩擦体
61 端部
62 端部
65 凹溝
7 取付部材
71 貫通孔
72 外側面
73 下面
74 上面
75 大径部
76 小径部
C 無端チェーン
N ねじ
P 試験片
p1 芝糸
p2 基布
T 人工芝生試験機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8