(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、各実施形態(および各変形例)で同様に機能する構成には同一符号を付す。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、照明装置の第1の実施形態であるLED電球100を部分的に破断した斜視図であり、
図2は、このLED電球100を管軸に沿って2つに切断した断面図である。
【0012】
本実施形態のLED電球100は、複数個の発光素子1を実装した円環状の基板2と、この基板2の裏面を接触させて取り付けた表面4a(第1面)を有するベース部材4と、このベース部材4の表面4a側で上記発光素子1に対向して配置された光学レンズ6と、ベース部材4の裏面4b(第2面)側に配置された放熱部材8と、を有する。また、このLED電球100は、この他に、筒部材10と、透明部材12と、カバー部材14と、電源部16と、口金18と、を有する。
【0013】
ベース部材4は、円環板状のベース板21、および長筒22を一体に有する。ベース板21は、その中央に、表面4aおよび裏面4bを連絡した円形の貫通孔23を有する。長筒22は、略円筒形であり、その一端(図中下端)がベース板21の貫通孔23の周りに一体に連結されている。つまり、貫通孔23の内径と長筒22の内径は同じである。長筒22の他端(図中上端)は、放射状に拡開している。このベース部材4は、LED電球100の管軸を中心にした回転対称形である。
【0014】
ベース板21の裏面4b側であって長筒22の外側には、複数枚の板状の放熱フィン24が管軸を中心に放射状に設けられている。各放熱フィン24の1つの端辺(図中下端辺)は、ベース板21の裏面4bに接触している。また、この端辺に隣接する各放熱フィン24の別の端辺(内側の端辺)は、長筒22の外面に接触している。つまり、各放熱フィン24は、ベース部材4のベース板21および長筒22に対して熱的に接触している。
【0015】
また、各放熱フィン24のさらに別の端辺は、長筒22の他端に沿って外側に傾斜している。そして、各放熱フィン24の残りの端辺は、カバー部材14の内面に沿って湾曲してカバー部材14に接触している。ベース部材4のベース板21の外周縁とカバー部材14の内面との間には、円環板状の透明部材12が設けられている。つまり、ベース板21および透明部材12は、LED電球100の管球内部の空間を管軸方向に2つに区画している。
【0016】
ベース部材4の長筒22および複数枚の放熱フィン24は、放熱部材8として機能する。つまり、複数個の発光素子1から放射された熱は、基板2を介してベース部材4のベース板21に伝えられ、長筒22、および複数枚の放熱フィン24を介して放熱される。このとき、複数枚の放熱フィン24を介してカバー部材14にも熱が伝えられる。各放熱フィン24と透明部材12とは接触していない。
【0017】
光学レンズ6は、その中心に、上述したベース部材4の貫通孔23に外気を導入するための通風路として機能する開口部25を有する。光学レンズ6は、管球の外面の一部を構成するようにカバー部材14の外面になだらかに連続した湾曲面31を有する。湾曲面31の内側は、開口部25の内面につながる。また、光学レンズ6は、貫通孔23の周りに配置された複数個の発光素子1に対向する、湾曲面31に連続した円環状の入射面32を有する。また、光学レンズ6は、その外周端に管軸に沿った射出面33を有する。さらに、光学レンズ6は、入射面32を介して入射された光を湾曲面31との間で全反射させて射出面33へ導くための反射凹面34を有する。つまり、光学レンズ6の表面は、湾曲面31、入射面32、射出面33、および反射凹面34を連続させたものである。
【0018】
筒部材10は、比較的短い円筒であり、光学レンズ6の開口部25内に配置される。筒部材10の内径も、ベース部材4の内径と同じである。なお、基板2の中央にある開口部の径は、筒部材10の外径より僅かに大きい。筒部材10の一端(図中上端)はベース部材4のベース板21の表面4aに当接する。筒部材10の外面は、光学レンズ6の開口部25の内面に接触する。そして、光学レンズ6の射出面33の一部が、カバー部材14の端面14aに接触する。光学レンズ6の射出面33には、カバー部材14と接触しない段部26が設けられている。光学レンズ6の湾曲面31は、光を全反射させるだけではなく、それと同時に開口25に空気を良好に流通させることが可能な流線形状になっている。つまり、光学レンズ6は、配光制御とともに、放熱特性の向上の機能も合わせ持つ。また、段部26を設けることにより、段部26に導かれた光がカバー部材14に入射してさらに導光されることを防ぐ効果がある。これにより、導光による光損失を低減することができる。
【0019】
筒部材10を光学レンズ6に接触させて開口部25内に挿入配置すると、複数個の発光素子1を囲む空間が形成される。つまり、この空間は、光学レンズ6の入射面32、反射凹面34、段部26、カバー部材14の内面の一部、透明部材12の表面、ベース板21の表面4a、および筒部材10の外周面の一部によって囲まれている。このため、開口部25を介して導入される外気が発光素子1に接触することがなく、発光素子1が埃で汚れる心配もない。
【0020】
なお、電源部16の管球側の端部(図中下端)は、球状に湾曲されている。これにより、開口部25の筒部材10および長筒22を介して管球内部に導入された外気が、カバー部材14の収束した一端(図中上端)側のもう1つの開口部27を介して排気される際の空気抵抗を低くすることができ、LED電球100の内部に空気を良好に流通させることができ、放熱性能を高めることができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係るLED電球200を管軸に沿って2つに切断した断面図である。
図3は、第1の実施形態の説明に用いた
図2に対応する。本実施形態のLED電球200は、上述した第1の実施形態のLED電球100と基本的に同じ構造および機能を有する。
【0022】
LED電球200は、複数個の発光素子1を環状に実装した基板2を接触させて配置した表面4aを有する円環板状のベース部材41を有する。本実施形態のベース部材41は、第1の実施形態のベース部材4とは異なり、長筒22に相当する構成を有していない。代わりに、ベース部材4は、その裏面4b側で貫通孔23の周りに、複数枚の放熱フィン24の一部をそれぞれ受け入れる複数の溝42を有する。また、ベース部材41の外周縁はカバー部材14の内面まで達している。つまり、本実施形態のLED電球200は、第1の実施形態の透明部材12に相当する構成も有していない。
【0023】
ベース部材41の表面4aには、複数個の発光素子1を実装した円環状の基板2を収容配置するための凹部43が設けられている。凹部43の外径は基板2の外径より僅かに大きい。そして、凹部43の外周縁と基板2の外周縁との間の円環状の隙間には、光学レンズ44の外周縁からベース部材41に向けて突出した円筒部分45が挿入配置される。
【0024】
光学レンズ44は、発光素子1に対向した入射面46、入射面46の内縁から連続した湾曲面47、および入射面46の外縁および湾曲面47の外縁をつなげた射出面48を有する。射出面48は、内側に屈曲した形状をしている。湾曲面47と射出面48の境界部分49aで、光学レンズ44は、カバー部材14の内面に接触している。
【0025】
筒部材51は、略円筒形であり、その一端(図中上端)が、貫通孔23の周りでベース部材41の表面4aに当接している。筒部材51の内面は、その他端(図中下端)側に向けて拡開している。筒部材51の外面には、円弧状に湾曲して凹んだ環状のミラー面52(反射面)が設けられている。ミラー面52の湾曲の中心は光学レンズ44の入射面46と湾曲面47との間の境界部分49bである。光学レンズ44の湾曲面47と筒部材51のミラー面52との間にはギャップが設けられている。つまり、光学レンズ44と筒部材51は接触していない。これにより、光学レンズ44と筒部材51が熱的に分離され、光学レンズ44の昇温による劣化を防ぐことができる。ただし、構成はこの限りではなく、光学レンズ44と筒部材51は接していてもよい。接している場合は、光学レンズ44をしっかりと固定することが可能となる。
【0026】
カバー部材14は、図中下端近くの中央部に、筒部材51の内面とつながる傾斜面15aを有する折り返し部15を有する。折り返し部15の先端縁は、筒部材51の他端(図中下端)に当接している。つまり、カバー部材14の内面の一部、折り返し部15の内面、筒部材51の外面、およびベース部材41の表面4aで囲まれた空間に光学レンズ44と発光素子1が配置されている。これにより、本実施形態でも、発光素子1が、筒部材51の内側を通して導入される外気に触れることがない。
【0027】
本実施形態のLED電球200は、ベース部材の長筒を有していないため、折り返し部15および筒部材51を介してベース部材41の貫通孔23に導かれた外気は、複数枚の放熱フィン24に接触して流れる。そして、複数枚の放熱フィン24の間を流れた外気が、電極部16の球面とカバー部材14の一端(図中上端)との間の円環状の開口部27を通して排気される。
【0028】
なお、複数枚の放熱フィン24と電源部16の間には、連結ボルト61が設けられている。この連結ボルト61は、カバー部材14を電源部16に対して回転させることで電源部16と放熱フィン24を締結するものである。このため、連結ボルト61のネジの方向は、口金18のネジの方向と同じ方向に設計されている。これにより、LED電球200を図示しないソケットに螺合して取り付ける際に、電源部16と管球が分離する不具合を生じることがない。
【0029】
以下、上述した第1および第2の実施形態のLED電球100、200における機能や効果についてより詳細に説明する。なお、以下の説明では、各実施形態に固有の機能や効果について説明する場合を除いて、2つの実施形態に共通の機能および効果として説明する。
【0030】
光学レンズ6は、PC(Polycarbonate)やPMMA(Poly−methyl−methacrylate)等の透過率の高い物質で構成され、指向性の高い発光素子1から射出される光を広配光にする。光学レンズ6は、回転対称形であってもよく、また、その回転対称軸が管軸と一致していてもよい。光学レンズ6が複数存在することもあり得る。発光素子1は環状に複数個配置されてもよい。お互いの色温度が異なる発光素子1を複数用いれば、調光機能を持たせることができ、LED電球100の発光色を変えることもできる。
【0031】
仮に、発光素子1としてSMD(Surface Mount Device:表面実装)タイプのLEDを用い、それを環状に複数個配置すると、光学レンズ6の管軸に沿った高さはLED発光面の寸法に比例する。一般的なLEDの一辺の長さは1.5mmであるが、この場合、光学レンズ6の高さは約9mmで設計可能である。市販されているE26型のLED電球のレンズ高さは30〜50mmが殆どであるため、本実施形態によれば、発光部の管軸方向の寸法を小さくでき、より多くの領域を放熱のために利用できる。
【0032】
第2の実施形態の光学レンズ6は、湾曲面47で規定される空洞と、この空洞を囲うように配置された射出面46と、発光素子1に対向する入射面46を備え、入射面46上の第1の点P1から、湾曲面47上の第2の点P2に引いた直線と、第2の点P2における法線の成す角度θについて、
sinθ>1/n
n:レンズを構成する材料の屈折率
の関係を満たすことで、湾曲面47に到達する光を光の吸収ロスがない全反射によって射出面48に導く。つまり、発光素子1から発せられる光を、光学レンズ6の側面方向に効率よく導き、外部に射出させる。以上より、高効率で広配光な光学レンズ6を提供できる。
【0033】
さらに、光学レンズ6の射出面48に内側に屈曲した部分を設けることで、屈曲した面に入射する光束は広い範囲に屈折透過されて射出されるため、さらに広配光化が可能となる。或いは、光学レンズ6に射出面を設けずに、光学レンズ6をカバー部材14の内面と一体にすることで、カバー部材14との間の空気の層を無くすことができ、反射ロスを低減できる。このとき、カバー部材14は曲率一定な領域を持つ面で構成されるため、光学レンズ6の射出面を曲率一定面にする、と言い換えることもできる。
【0034】
光学レンズ6の湾曲面47は、光を全反射させるだけではなく、それと同時に貫通孔23に空気を良好に流通させることが可能な流線形状になっている。つまり、光学レンズ6は、配光制御とともに、放熱特性の向上の機能も合わせ持つ。
【0035】
ベース部材4(41)と基板2の間に放熱グリスや熱伝導性両面テープ等のTIM(Thermal Interface Material)を設けることで接触熱抵抗を低減することもできる。ベース部材4(41)は、アルミ等の熱伝導率が高い物質で形成されている。基板2をベース部材4(41)と別体にすることで、基板2に発光素子1を実装し、ベース部材4(41)に複雑な形状の機械加工を施すことができる。基板2は、ねじ止め等によりベース部材4(41)に固定される。
【0036】
筒部材10(51)は、ベース部材4(41)の表面4aに熱的に接続される。筒部材10(51)は、光学レンズ6に対して、線または点で接触してもよい。筒部材10(51)の断面は円筒型や多角形型等、様々な形状が考えられる。筒部材10(51)を空気の流入側に設けることで、LED電球100(200)の内側に放熱面を設けることができる。また、第1の実施形態では、ベース部材4の長筒22の内面も放熱面として機能する。
【0037】
また、筒部材10(51)を金属やセラミック等の比較的熱伝導率の高い部材で形成することで、空気の流入口付近の温度を高くすることができる。それにより、煙突効果により空気が流入しやすくなる。また、第1の実施形態のように、光学レンズ6の一部が空気の流入口に露出している場合、この部分を湾曲させることで、流入口での圧力損失を低減できる。この曲面は、発光素子1から発せられた光を、全反射して光学レンズ6の内部に導光させる効果もある。これにより、光を広配光に導くことが可能となる。
【0038】
図3に示す第2の実施形態のように、筒部材51の外壁にミラー面52を設けることで、ミラー面52に向かう光を効率よく光学レンズ44の湾曲面47に入射させることができる。仮に、ミラー面52の曲率の中心にある光学レンズ44の境界部分49bから光線が射出されたと仮定すると、この光線は全て境界部分49bに戻る。この点から考えると、境界部分49bより図中上方から射出された光線は、ミラー面52によって、光学レンズ44の湾曲面47に向けて反射される。これにより、広配光が実現できる。
【0039】
また、見方を変えると、ミラー面52の曲率の中心を、光学レンズ44の湾曲面47上の点で、発光素子1に最も近い点(すなわち、境界部分49b)とすることで、発光素子1から射出された光がミラー面52によって発光素子1へ戻される成分を0に出来る。これにより、発光効率を高めることができる。
【0040】
また、管球の内部に外気を流す流路が長いほど、煙突効果により放熱性能向上が見込める。煙突効果の駆動力である流入口内外の圧力差ΔPは、以下の式で表せられる。
【数1】
【0041】
ここで、ρ:密度、T:温度、g:重力加速度、h:煙突高さ、添え字o:外部、添え字i:内部、である。外部との温度差が大きいほど、または、煙突が長いほど、駆動力は大きくなるため、効果が期待できる。
【0042】
カバー部材14は、ベース部材4(41)、筒部材10(51)、発光素子1、放熱フィン24を内包し、かつ管軸を中心とした回転体の形状を有する。また、カバー部材14は、球形状であったり円筒形状、多角形形状であったりと、様々な形状でもよい。さらに、カバー部材14の一部が立体角2[Sr]以上である球形状を有していてもよい。
【0043】
第1の実施形態のように透明部材12を設ける場合には、透明部材12をカバー部材14と一体に成型してもよい。透明部材12は、PC(Polycarbonate)やPMMA(Poly−methyl−methacrylate)等の透過率の高い物質で構成されることが望ましい。しかし、発光素子1から射出される光は、光学レンズ6により配光されるため、カバー部材14は、PC(Polycarbonate)、PMMA、ガラスなどの屈折率が十分高い素材でなくともよい。例えば、カバー部材14の材料として、和紙などの紙やタコ糸等の多孔体を用いてもよく、用途に合わせたデザインを用いることができる。
【0044】
また、LED電球100(200)の放熱性を高めるため、光学レンズ6(44)から射出される光の1/2配光角の範囲外にある部材を金属やセラミック等の熱伝導率が高い素材や、放射率が高い素材にすることができ、放熱性能をさらに向上させることができる。
【0045】
第1の実施形態のように、光学レンズ6の射出面33にカバー部材14と接触しない段部26を設けることで、射出面33から射出される光の一部を段部26を介してカバー部材14の内面に照射できる。これにより、カバー部材14の端面から導光させる光の他に、カバー部材14に直接入射しない光を射出でき、器具効率を向上させることができる。つまり、この場合、カバー部材14を導光する光の吸収や反射を減らすことができ、吸収ロスや反射ロスを少なくでき、LED電球100の発光効率を向上させることができる。
【0046】
また、上述した各実施形態のように、発光素子1を、ベース部材4(41)、光学レンズ6、カバー部材14、筒部材10(51)などで覆う構造とすることで、発光素子1に外気が接触することを防止でき、埃等の侵入を防ぐことができる。また、例えば、
図4に示すように、光学レンズ6の射出面33と反射凹面34との間の境界部分49cをベース板21の表面4aに接触させることでも、発光素子1、光学レンズ6の反射凹面34、および入射面32を外気に触れないようにすることもできる。
【0047】
第1の実施形態のように、光学レンズ6から射出される光の1/2配光角の範囲にベース部材4や放熱フィン24を設けない工夫をすることにより、高い器具効率を達成することができる。つまり、第1の実施形態では、ベース板21の外周縁とカバー部材14との間に透明部材12を配置することで、光学レンズ6から射出された光の略全てをカバー部材14に導くことができる。
【0048】
また、この構成により、ベース部材4(41)を境界に、口金18側に放熱機能を持たせて、発光素子1側に発光機能を持たせることができ、熱と光の領域を分離でき、放熱性能および発光性能を両立する上でのトレードオフの問題を解消することができる。これにより、放熱フィン24が光の遮蔽物とならないため、フィン形状を複雑化することができ、設計の自由度を高めることができる。
【0049】
放熱フィン24は、アルミ等の熱伝導率が高い物質で構成される。放熱フィン24の表面を鏡面にすることで反射率を高めることも可能である。または、放熱フィン24の表面を塗装することにより放射率を高めることも可能である。放熱フィン24に穴等を形成することも可能である。これにより、管軸を水平にした姿勢でLED電球100(200)を取り付けた場合であっても、自然対流により上昇した空気を放熱フィン24に設けた空隙に通過させることができ、放熱性能の低下を防ぐことができる。放熱フィン24は様々な形状が考えられ、放射状に扁平な放熱フィン24が配置されるとは限らない。
【0050】
また、放熱フィン24に回転機構を設けて、強制空冷にすることも可能である。例えば、LED電球100(200)の内部に管軸に沿った回転軸を配置し、この回転軸に対して複数枚の放熱フィン24を回転可能、或いは管軸とともに複数枚の放熱フィン24を回転可能にすることで、管球内部に空気の速い流れを形成し、放熱フィン24を効率よく放熱することができる。また、管球内部の空気の質量流量を多くすることで、放熱フィン24近傍の空気の温度を下げることができる。或いは、排気側の開口部27の近くにファンなどの回転体を設けてもよく、強制排気の機能を付加することでも、放熱フィン24による放熱量を増加させることができる。また、回転体自体をアルミなどの熱伝導率が高い材料で形成することで、回転体からの放熱量を多くすることもできる。
【0051】
ここで、比較例として、従来のLED電球の一例を
図10に示す。この比較例のLED電球では、LED101での発熱の殆どを熱伝導により基板102およびベース103を介して放熱体105に伝え、そこから自然対流および輻射で環境中に放熱している。なお、
図10において、符号104はカバーを示し、符号108は電源部を示し、符号109は口金を示す。この比較例においては、熱伝導性を良くするためにベース103、放熱体105は熱伝導率の高い金属またはセラミックを使用する。さらに放熱体105の表面積の拡大(フィン構造)による自然対流による熱伝達量の増加や、特殊なコーティングによる放射率の向上で輻射熱の伝達量の増加を図っている。
【0052】
これに対して、本実施形態では、カバー部材14の内部で放熱を行うことが可能であるため、金属やセラミックを露出することなく要求された放熱性能を小型で達成することが可能である。したがって、比較例の放熱体105のような部位は必要なく、白熱電球のフォルムにより近づけることが可能である。
【0053】
電源部16は、図示しない電源ケースや電源回路を有し、光学レンズ6から射出される光の1/2配光角の範囲外に設置される。電源回路は電源ケースに内包され、電源ケースは外部から電流を取り込む口金18と接続される。電源回路の熱を電源ケースへ伝えるために、樹脂や熱伝導グリスを電源ケース内に充填することも可能である。電源部16と、ベース部材4(41)、放熱フィン24、筒部材10(51)、あるいはカバー部材14と、の接触を極力避けることにより、発光素子1の発熱の影響が電源回路に影響しないようにすることが好ましい。さらに、電源ケースの形状を電源回路の形状に沿うように成形することで、カバー部材14の内部の空気が流出、流入しやすいようにすることが可能である。
【0054】
また、上述した各実施形態において、樹脂により形成した部品と、金属等の線膨張率が著しく異なる部品と、の間にOリングやシリコン等の弾性体を挟むことにより、熱応力を低減させることができる。
【0055】
以上説明したように、第1および第2の実施形態によれば、発光素子1に対する防塵を確保した上で、出力を大きくすることができるとともに、高い発光効率を維持することができ、器具のサイズが大きくなるのを抑制することができる、LED電球を提供することが可能となる。
【0056】
(変形例)
以下、上述した実施形態の変形例について説明する。
図5に示す第1の変形例では、カバー部材14に複数の通気開口71を設けた。これにより、管球内部を流れる空気の量(流入量および流出量)を増加することができる。通気開口71の位置、大きさ、個数などはこれに限定されない。放熱フィン24の近傍を開口することで内部構造を目視しにくくし、デザイン性を維持した上で、放熱性能を向上させることができる。なお、
図5に示す例では、電源部16側のカバー部材14の端部の近くに通気開口71を設けたため、カバー部材14の端部を電源部16のフランジ部16aまで延ばすことができ、外観を良好にできる。
【0057】
また、
図6に示す第2の変形例のように、カバー部材14にスリット状の複数の細長い通気開口72を設けることにより、LED電球の内部構造をより見え難くすることができる。この際、通気開口72を放熱フィン24の近傍に設けることで、放熱性能を向上させることもできる。
【0058】
上述した第1および第2の実施形態では、カバー部材14の中心を開口させて外気を導入するようにしたが、
図7に示す第3の変形例のように、カバー部材14の中央に大きな開口部を設ける代わりに多数の孔73を設けて、外気を導入するようにしてもよい。この場合、カバー部材14の内部へ虫等が侵入する不具合を防止することができる。
【0059】
また、
図8に示すように、複数枚の放熱フィン24をカバー部材14の内面に接触させることで、カバー部材14に放熱フィン24の熱を伝えることができ、放熱性能を向上させることができる。あるいは、
図9に示すように、カバー部材14と放熱フィン24の間に隙間を設けることで、カバー部材14の外側から放熱フィン24の影を見え難くすることができる。
【0060】
また、
図11に示すように、第2の実施形態のLED電球200のベース部材41の代わりに、長筒22を有する構成を採用しても良い。この場合、複数枚の放熱フィン24の端縁を受け入れる複数のスリット22aを長筒22に設けても良い。また、
図13に示すように、複数枚の放熱フィン24の他の端縁を受け入れる複数のスリット21aをベース板21に設けても良い。いずれの構成も、接触熱抵抗を減少させることができ、放熱フィン24の熱をベース部材に良好に伝える機能を提供できる。さらに、上記のように、ベース部材に放熱フィン24を取り付けるためのスリット21a、22aを設けることで、組立性を良好にできる。
図12に示すように、カバー部材14を管軸方向に分割することで、組立性を良好にできる。
【0061】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の照明装置によれば、ベース部材4(41)の表面4a側に発光素子1を設けるとともにベース部材4(41)の裏面4b側に放熱構造22、24を設けたため、発光効率を高めることができ、放熱性を良好にできる。
【0062】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0063】
例えば、上述した実施形態では、カバー部材14側に設けた開口部25を介して外気を導入して反対側の開口部27を介して排気する例について説明したが、これに限らず、LED電球100(200)を逆さにして取り付けた場合には、空気の流れは逆になる。つまり、この場合、口金18側の開口部27を介して導入した外気をカバー部材14側の開口部25を介して排気することになる。いずれの場合であっても、発光性能を低下させることなく、十分な放熱を可能にする。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
発光素子と、
この発光素子を保持した第1面、この第1面と反対の第2面、および上記第1面と上記第2面を連絡した貫通孔を有するベース部材と、
このベース部材の上記第1面側で上記発光素子に対向して配置され、上記貫通孔に外気を導入するための通風路を有する光学レンズと、
上記ベース部材の上記第2面側で上記ベース部材に熱的に接触して配置され、上記通風路および上記貫通孔を介して導入される外気に接触して熱交換する放熱部材と、
を有する照明装置。
[2]
上記光学レンズの上記通風路内に配置されて上記ベース部材の上記貫通孔を囲むように上記ベース部材の上記第1面に接触した筒部材をさらに有する、
[1]の照明装置。
[3]
上記筒部材は、上記光学レンズの上記通風路の内面に接触して配置される、
[2]の照明装置。
[4]
上記筒部材は、上記光学レンズに隙間を介して対向した反射面を有する、
[2]の照明装置。
[5]
上記通風路を介して導入される外気を上記発光素子に接触させないように上記貫通孔へ導くための筒部材をさらに有する、
[1]の照明装置。
[6]
上記光学レンズは、回転対称形である、
[1]乃至[5]のいずれかの照明装置。
[7]
前記光学レンズは、
湾曲面で規定される空洞と、
前記空洞を囲うように配置された射出面と、
前記発光素子に対向する入射面と、を備え、
前記入射面上の第1の点から、前記湾曲面上の第2の点に引いた直線と、前記第2の点における法線の成す角度θについて、
sinθ>1/n
n:レンズを構成する材料の屈折率
の関係を満たすことを特徴とする[6]の照明装置。
[8]
前記光学レンズの前記射出面は、段部を有することを特徴とする[7]の照明装置。
[9]
前記光学レンズの前記射出面は、曲率一定面であることを特徴とする[7]または[8]の照明装置。
[10]
前記光学レンズの上記通風路の中心軸が回転対称の対称軸と一致していることを特徴とする[6]乃至[9]のいずれかの照明装置。
[11]
前記筒部材は、ミラー面を有し、
前記ミラー面の断面は、前記光学レンズの湾曲面上の点のうち前記発光素子に最も近い第3の点を中心とする円弧となる、
ことを特徴とする[7]乃至[10]記載の照明装置。
[12]
前記ベース部材と前記発光素子を内包するカバー部材をさらに備え、
前記カバー部材は、前記光学レンズの上記通風路を前記カバー部材の外の空間と連通させる開口部を有する、
ことを特徴とする[1]乃至[11]記載の照明装置。
[13]
上記放熱部材は、上記ベース部材の上記第2面に熱的に接続された放熱フィンを備えることを特徴とする[1]乃至[12]記載の照明装置。
[14]
上記ベース部材の上記第2面側に位置し、外部から電力を取り込む口金と、
上記口金と接続された電源と、
を備えた[1]乃至[13]記載の照明装置。
[15]
上記ベース部材と上記カバー部材が光を透過する部材で接続されていることを特徴とする[12]乃至[14]記載の照明装置。
[16]
上記光学レンズの外縁が上記ベース部材の上記第1面と接触することを特徴とする[1]乃至[15]記載の照明装置。