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出力低下制御は、前記複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力の半分の出力から前記複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力まで漸増することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のVAV空調システムの制御方法。
出力低下制御は、出力0から前記複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力まで漸増することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のVAV空調システムの制御方法。
【背景技術】
【0002】
空調システムの制御方式には、例えば、変風量単一ダクト方式がある。この変風量単一ダクト方式は、空調すべき空間を複数のゾーンに分け、基本的に中央空調機から給気温度を調整されて送給される給気を前記複数のゾーンに分岐して送り、各ゾーンの熱負荷に応じて分岐風量を調整して、各ゾーンに設定された室温を維持するように制御する方式である。
【0003】
図6を参照しながら、この変風量単一ダクト方式の空調システム1について説明する。このVAV空調システム1は、インバータ15の出力に応じた風量を給気ダクト3へ給気する中央空気調和機(以下、空調機2と略称する)を備えている。
【0004】
給気ダクト3は、下流側で流路が分岐して空調機2と各ゾーン5を接続する。そして、分岐した後の流路(以下、分岐流路3aという)には、変風量制御装置(以下、VAVユニット4という)がそれぞれに配置されている。
【0005】
VAVユニット4(4a,4b,4c,4d)は、分岐流路3aに連続する自身風路に内蔵された風速センサ22で計測した風速データをVAVコントローラ23に入力し、記憶している風路通気面積を元に分岐流路3aを通過する風量を算出する。そして各ゾーン5に設置される温度センサ25によりゾーンの温度を計測し、計測温度信号をVAVコントローラ23に入力し設定温度と計測温度との偏差によって要求風量を算出する。そして、VAVコントローラ23は、要求風量と分岐流路3aを通過する風量とを比較しながらダンパ21の開度を調整して風量を調整するとともに、ゾーンコントローラ8へ要求風量とダンパ開度を送信する。
【0006】
ゾーンコントローラ8は、各ゾーン5のVAVユニット4から送信された要求風量の和から総要求風量を求めるとともに、各VAVユニット4のうちから最大ダンパ開度を求め、総要求風量と最大ダンパ開度を空調機コントローラ10へ送信する。
【0007】
そして、空調機コントローラ10は、総要求風量からインバータ15の基本出力を算出し、最大ダンパ開度からインバータ15の補正出力を算出する。そして、空調機コントローラ10は、基本出力と補正出力からインバータ15の出力を決定する。空調機2は、この空調機コントローラ10で決定されたインバータ15の出力によって給気ファン14を回転させて給気ダクト3へ給気する。
【0008】
以上に説明したVAV空調システム1は、VAVユニット4の最大ダンパ開度によってインバータ15の出力が補正されている。すなわち、各ゾーン5のVAVユニット4(4a,4b,4c,4d)のうち一台でも風量不足によって開度が100%のVAVユニット4dが存在すると、インバータ15の出力が増方向に補正されることとなる。
【0009】
このとき、各ゾーン5のVAVユニット4のうち、空調機2の補正前給気量で要求風量を満足しているVAVユニット(4a,4b,4c)は、空調機2の給気ファンインバータ出力上昇で送風量が上がると風量が過剰となるため、ダンパ21が閉方向に動作して、結果給気ダクト3の抵抗を大きくしてしまう。このように、1台のVAVユニットだけが開度100%になる(このこと自体は、抵抗極小で室内負荷をきちんと処理しているかもしれないのに)だけで、給気ダクト3の全体送風抵抗を上昇させてまで空調機給気ファンのインバータ15の出力を上昇させ、消費電力をいたずらに増加させていた。
【0010】
すなわち、VAV空調システム1は、一台のVAVユニット4dの風量不足によって給気ファン14のインバータ15の出力が上昇し、他のVAVユニット(4a,4b,4c)のダンパ開度が閉方向に動作し、無駄に電力を消費して運転している場合があった。
【0011】
特許文献1に記載の従来技術のVAV空調システム(以下、従来のVAV空調システムという)では、さらに、VAVユニットからの要求風量が小さくなると空調機給気温度を上昇させるリセット制御に注目し、各ゾーンのうち重要でないゾーンを特定対象域とし、その特定対象域ではVAVユニットにおけるダンパ開度のゾーンコントローラでの最小開度計算から取り扱いを制限したり無視したりすることで、給気温度リセット制御をあまり激しく行わず、それにより高重要度のゾーンの温度変動を防止するようにしている。この考え方を応用すると、特定対象域のVAVユニットにおけるダンパ開度の取り扱いをダンパ開度最大値の演算に制限したり無視したりすると、特定対象域のVAVユニットが風量不足でもインバータの出力が増方向に補正されない制御が考え付く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来
図6に示す技術では、前記のようにVAVユニットのうち1台でも風量不足、すなわち開度が大きいVAVユニットが存在すると、インバータの出力が増方向に補正され、給気ダクトの全体送風抵抗を上昇させてまで空調機給気ファンのインバータの出力を上昇させ、消費電力をいたずらに増加させることになる。
従来のVAV空調システムでも、熱負荷によりどこがダンパ最大開度になるのかの予測が難しいので、特定対象域をどのVAVユニットにするかはペリメータ負荷程度でしか決められず、内部の発熱増減が激しい室などが存在すると特定対象域以外で、特異なダンパ最大開度のVAVユニットが現れて、従来
図6の技術と変わらなくなってしまう。
【0014】
そこで、多数のVAVユニットの中一台のVAVユニットだけが風量不足になるため空調機給気ファンのインバータ出力を上げて総給気量が増大し、他のVAVユニットのダンパ開度が閉方向に動作することで全体の給気系消費電力の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、給気ファンのインバータ出力に応じた給気を供給する空気調和機と、前記空気調和機からの給気を分岐させて複数の空調するゾーンへ導く分岐流路を有した給気ダクトと、前記給気ダクトの分岐流路にそれぞれ配置され、各々の前記ゾーンの負荷状況に応じて流量調整手段を制御して給気流量を調整する複数のVAVユニットと、複数のVAVユニットから送信された情報に基づいて前記給気ファンのインバータ出力を決定する制御手段と、を備えたVAV空調システムの制御方法に関し、前記制御手段は、複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力よりも小さい値をインバータ出力として決定し、その後、前記複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力まで、所定間隔で漸増させる制御を所定インターバル時間で繰り返す出力低下制御を行うことを特徴としている。
【0016】
前記VAVユニットは、前記制御手段に対して要求風量と、流量調整手段のダンパ開度に相当する要求風量比率と、を送信し、前記制御手段は、複数の前記VAVユニットからの要求風量の和を演算して求め、ゾーン全体の熱負荷がピーク負荷に近いか否かを判断する総要求風量設定値と比較演算し、前記要求風量の和が総要求風量設定値以下の場合に、前記出力低下制御を行い、前記要求風量の和が総要求風量設定値よりも大きい場合には、出力低下制御を禁止し、複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力を継続出力することが好ましい。
【0017】
前記ゾーンから前記空気調和機へ空気を還気する還気ダクトと、前記還気ダクトのCО
2濃度を計測するCО
2濃度計測手段と、を備え、前記制御手段は、前記出力低下制御を行う際に、前記CO
2濃度計測手段によって計測したCO
2濃度が設定値よりも高い場合、前記出力低下制御の所定間隔よりも短い間隔で前記複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力まで漸増させる制御を前記所定インターバル時間で行うことが好ましい。
【0018】
出力低下制御は、前記複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力の半分の出力から前記複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力まで漸増することができる。
【0019】
出力低下制御は、出力0から前記複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力まで漸増することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、多数のVAVユニットの中一台のVAVユニットだけが風量不足になるため空調機給気ファンのインバータ出力を上げて総給気量が増大し、他のVAVユニットのダンパ開度が閉方向に動作することで起こる全体の給気系消費電力の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態例(以下、実施例と略称する)を、
図1〜
図5を参照しながら説明する。
図1は、本発明のVAV空調システム1を示す模式図である。
図2は、VAV空調システム1の制御ブロック図である。
【0023】
VAV空調システム1は、中央空気調和機(以下、空調機2と略称する)と、給気ダクト3と、複数のVAVユニット4と、複数の空調されるゾーン5と、制御手段6と、還気ダクト7と、を備えている。制御手段6は、ゾーンコントローラ8と、空調機コントローラ10と、を有している。
【0024】
空調機2は、外気を吸入口11から吸入し、冷却コイル12、加熱コイル13によって所望の温度に調整する。そして、調整された空気は、給気ファン14によって給気ダクト3へ給気される。この給気ファン14は、インバータ15の出力に応じた回転速度で給気を供給する。そして、インバータ15の出力は、空調機コントローラ10で決定される周波数によって決まる。
【0025】
また、空調機2は、還気ファン16によって還気ダクト7から還気を取り込み、空調機内ダンパ17の操作によって還気と排気との分配を調整しながら、空調機内ダンパ17を介して還気の一部を給気ファン14側の流路へ導き、還気の残部を、排気口18を介して大気中へ排出している。また、還気ダクト7には,CO2濃度センサ20(CO2濃度計測手段)が配置されている。このCO2濃度センサ20は、各ゾーン5の室内に配置されていても良い。また、排気口18や吸入口11は図示しないダクトを介して建屋外壁のガラリに接続されている。還気ファン16や空調機内ダンパ17を内蔵した空調機2の他に、還気ファン16や空調機内ダンパ17を備えず、給気ファン14で外気と還気とを吸入し、別途排気口18に接続される排気ファンで還気の一部を排気する空調機であっても良い。
【0026】
給気ダクト3は、空調機2からの給気を下流側の分岐流路3aによって分岐させて複数のゾーン5へ導く流路である。そして、この分岐流路3aには、それぞれVAVユニット4が配置されている。
【0027】
このVAVユニット4は、分岐流路3aへ分配された給気の流量を調整するダンパ21(流量調整手段)と、分岐流路3aを流れる給気の風量をVAVユニット4内の風路内風速を計測して求める風速センサ22と、このダンパ開度(後述する要求風量比率で表現される)を制御するVAVコントローラ23と、を有している。
【0028】
VAVコントローラ23は、各ゾーン5の負荷状況に応じてダンパ21を制御して、対応するゾーン5への給気流量を調整する。
図2に示すとおり、VAVコントローラ23は、室温設定器24から設定温度を予め入力しておき、各ゾーン5に設置される温度センサ25により計測されたゾーンの計測温度信号が入力されて設定温度と計測温度との偏差によって要求風量を算出する要求風量算出部26を有する。また、内蔵された風速センサ22で計測した風速データが入力され、記憶している風路通気面積を元に分岐流路3aを通過する風量を算出する風量算出部27を有する。また、要求風量と分岐流路3aを通過する風量とを比較しながらダンパ開度を演算するダンパ開度算出部28を有している。そして、VAVコントローラ23は、ダンパ開度算出部28で演算されたダンパ開度である要求風量比率により、ダンパ21の開度を調整して風量を調整するとともに、ゾーンコントローラ8へ要求風量とダンパ開度とを、情報として出力(送信)する。
【0029】
要求風量算出部26は、設定温度と計測温度が入力される。そして、要求風量算出部26は、設定温度と計測温度との偏差を求めてPI制御、又は比例制御等の公知技術を用いて、温度偏差がゼロになるような要求風量を算出する。そして、要求風量算出部26は、算出した要求風量を、ダンパ開度算出部28とゾーンコントローラ8へ出力する。
【0030】
風量算出部27は、風速センサ22から出力された給気の風速(m/s)に、ダクトの断面積(m
2)を乗じて給気の風量(m
3/h)を算出する。そして、風量算出部27は、算出した給気の風量をダンパ開度算出部28へ出力する。
【0031】
ダンパ開度算出部28は、要求風量算出部26で算出した要求風量と、風量算出部27で算出した給気の風量と、が入力される。ダンパ開度算出部28は、空調されるゾーン5への給気の風量が要求風量を満たすようなダンパ開度を算出する。そして、ダンパ開度算出部28は、ゾーンコントローラ8へそのダンパ開度を出力する。
【0032】
ゾーンコントローラ8は、各VAVコントローラ23から要求風量とダンパ開度が入力され、空調機コントローラ10へ総要求風量と最大ダンパ開度を出力する。また、ゾーンコントローラ8は、総要求風量算出部30と、最大ダンパ開度決定部31と、を有している。
【0033】
総要求風量算出部30は、各VAVコントローラ23から入力された要求風量を足して総要求風量を算出する。そして、総要求風量算出部30は、算出した総要求風量を空調機コントローラ10へ出力する。
【0034】
最大ダンパ開度決定部31は、各VAVコントローラ23から入力されたダンパ開度のうちから最も大きいダンパ開度を最大ダンパ開度として決定する。そして、最大ダンパ開度決定部31は、決定した最大ダンパ開度を空調機コントローラ10へ出力する。
【0035】
空調機コントローラ10は、ゾーンコントローラ8から総要求風量と最大ダンパ開度と、CO
2濃度センサ20からCO
2濃度と、CO
2濃度設定器32から設定濃度と、が入力され、インバータ15へ出力を決定する周波数を出力する。また、空調機コントローラ10は、インバータ基本出力算出部33と、インバータ補正出力算出部34と、出力低下制御判定部35と、インバータ出力算出部36と、を有している。
【0036】
インバータ基本出力算出部33は、総要求風量算出部30から入力された総要求風量を、最大風量設定値で除算した値にインバータ15の最大周波数を乗じてインバータ基本出力を算出する。そして、インバータ基本出力算出部33は、算出したインバータ基本出力を出力低下制御判定部35とインバータ出力算出部36に出力する。
【0037】
ここで、インバータ基本出力とは、各ゾーン5にあるVAVユニット4から送られてくる総要求風量に応じた風量を給気ファンに吐出させるために設定される周波数のことをいう。また、インバータ15の最大周波数とは、給気ファン14のモータが許容する電源周波数のことをいい、通常は商用定格の50Hzや60Hzである。又、最大風量設定値とは、各VAVユニット4の定格最大風量の和のことをいう。また、空調機2の給気ファンのインバータ15は、最大の周波数のときに最大風量設定値の風量を給気ダクトへ給気するように給気ファンと共に設計されている。
【0038】
例えば、要求風量900(m
3/h)、最大風量設定値1000(m
3/h)、インバータ15の最大周波数が50(Hz)の場合のインバータ基本出力は、(900/1000)・50=45Hzである。
【0039】
このインバータ補正出力算出部34は、総要求風量というマクロ的には給気が足りるはずである給気量に、さらに各ゾーンの要求を細かく拾って総合計では足りていても局所的に足りない風量を補足して給気を決める補正を行う目的で、総要求風量から求めたインバータ基本出力を、実際に各ゾーン5をそれぞれ過不足なく空調するために必要なインバータ15の出力(複数の空調するゾーン全体を空調するために必要なインバータ出力、以下、必要インバータ出力と略称する)に近づけるための補正であり、短期間の周期で、例えば3分ごとに実行される。
【0040】
インバータ補正出力算出部34は、最大ダンパ開度決定部31から入力された最大ダンパ開度が大きい場合、増補正をインバータ出力算出部36に出力する。また、インバータ補正出力算出部34は、最大ダンパ開度が小さい場合、減補正をインバータ出力算出部36に出力する。
【0041】
インバータ補正出力算出部34は、例えば、最大ダンパ開度が95%以上の場合、2%増をインバータ出力算出部36に出力する。また、最大ダンパ開度が70%以下の場合は、2%減をインバータ出力算出部36に出力する。インバータ基本出力が45Hzで増補正の場合は、1(Hz)加算される。減補正の場合は、1(Hz)減算される。
【0042】
出力低下制御判定部35は、総要求風量算出部30から入力された総要求風量と、CO
2濃度センサ20から入力されたCO
2計測濃度と、CO
2濃度設定器32から入力された設定濃度と、に基づいて出力低下制御を行うか否かの信号をインバータ出力算出部36に出力する。
【0043】
出力低下制御とは、必要インバータ出力、すなわち、インバータ基本出力に対してインバータ補正出力算出部34で求めた補正がなされた値よりも小さい値を、意図的にインバータ15の出力として決定し、その後、必要インバータ出力まで漸増させることを所定インターバル時間で繰り返す制御のことをいう。
【0044】
以下、出力低下制御を、
図3〜
図5を参照しながら説明する。
図3は、出力低下制御判定部35の判定方法を示すフロー図である。
図4(A)は、出力低下制御(通常制御)の係数と時間との関係を示すグラフである。(B)は、出力低下制御(通常制御)をした際のダンパ開度と時間との関係を示すグラフである。
図5(A)は、出力低下制御(高濃度制御)の係数と時間の関係を示すグラフである。
図5(B)は、出力低下制御(高濃度制御)のダンパ開度と時間の関係を示すグラフである。
【0045】
図3を参照しながら、具体的な判定方法を説明する。出力低下制御判定部35は、ステップS1において、総要求風量が禁止設定値以下か否かを判断し、総要求風量が禁止設定値以下の場合、ステップS2へ進む。総要求風量が禁止設定値よりも大きい場合は、ステップS5において禁止の信号をインバータ出力算出部36へ出力して処理を終了する。ここで、禁止設定値とは、例えば、最大風量設定値の90%の値である。
【0046】
出力低下制御判定部35は、続くステップS2において、CO
2計測濃度が設定濃度以下か否かを判断し、CO
2計測濃度が設定濃度以下の場合、ステップS3において通常制御の信号をインバータ出力算出部36へ出力して処理を終了する。また、CO
2計測濃度が設定濃度よりも大きい場合は、ステップS4において高濃度制御の信号をインバータ出力算出部36へ出力して処理を終了する。ここで、設定濃度とは、例えば、800ppmである。設定濃度は、建築物における衛生的環境の確保に関する法律において、CO
2濃度が1000ppm以下と定められているため、この値よりも小さい値が設定される。
【0047】
インバータ出力算出部36は、インバータ基本出力算出部33から入力されたインバータ基本出力と、インバータ補正出力算出部34から入力されたインバータ補正出力と、出力低下制御判定部35から出力された制御信号と、に基づいてインバータ出力を算出してインバータ15へ周波数を出力する。
【0048】
インバータ出力算出部36は、先ず必要インバータ出力を算出する。必要インバータ出力とは、インバータ基本出力にインバータ補正出力を加えた値である。例えば、インバータ基本出力が45(Hz)でインバータ補正出力が−1(Hz)である場合、44(Hz)が必要インバータ出力である。次に、インバータ出力算出部36は、この必要インバータ出力を、制御信号に基づいて意図的に小さい値とし、その後、必要インバータ出力まで漸増させる処理を行う。
【0049】
図4(A)を参照しながら、出力低下制御判定部35から入力された制御信号が通常制御である場合で説明する。インバータ出力算出部36は、ts時に出力低下制御を開始し、t1まで3分間、必要インバータ出力に係数k=0.5を乗じた値をインバータ15へ出力し、その後、t2〜t6まで2分間隔で5回、kを0.1ずつ増加させるとともに、そのkを必要インバータ出力に乗じ、その値をその都度インバータ15へ出力する。以上の通常制御時の出力低下制御の1周期は、13分(所定インターバル時間)である。
【0050】
図4(B)を参照しながら、通常制御の場合において、複数のVAVユニット4のうち送風抵抗を与えているVAVユニット、すなわち、風量が足りておりダンパ開度が閉じ気味のVAVユニットの挙動を説明する。このVAVユニットは、
図4(B)の例では、この日の負荷状態では必要インバータ出力での給気ファン14からの分岐給気では、ゾーン負荷に対して多すぎて、50%以下のダンパ開度として風量を絞る必要がある。それが、出力低下制御されているts〜t5時において、インバータ15の出力が必要インバータ出力よりも小さくされると、分岐給気も減少しゾーン負荷に対して必要風量に足りない風量不足となって、すぐに風速センサ22が計測風速を減じ、風速計測値に基づき風量算出部27により算出された風量と、要求風量との比較をダンパ開度算出部で行って、要求風量比率であるダンパ開度増加が発生し、ダンパ開度を開方向へ動作させる。そして、前記係数kが0.1ずつ増加すると、急激に給気ファン14で吐出給気量が増大することから、分岐給気量が急激に増加し、そのためすぐに風速センサ22が、風速が増加したと出力し風量算出部27で風量が多すぎるとして少しダンパ開度を閉方向へ動作させる。しかし全体の絶対給気量が少なく、分岐給気量も結局少ないので、ダンパ開度を開方向へ動作させてダンパ開度を100%に増加させる。k=0.8程度まではダンパ開度が全開になるような動作に落ち着くが、k=0.9つまり9割の給気量を供給するとさすがに分岐風量も足りてくるので、t4から後はダンパ開度が閉じ気味になっていく。しかし、ts〜t6までの経過時間を見ても、ダンパ開度は、必要インバータ出力での50%未満の開度に比べ、圧倒的に開放され、
図4(B)で見るとその期間では平均80%以上の開度になっている。つまり、ダンパでの送風抵抗は明らかに減少している。
【0051】
図5(A)を参照しながら、出力低下制御判定部35から入力された制御信号が高濃度制御である場合を説明する。インバータ出力算出部36は、ts時に出力低下制御を開始しt1まで3分間、必要インバータ出力に係数k=0.5を乗じた値をインバータ15へ出力し、その後t2〜t6まで、通常制御の間隔よりも短い間隔である1分間隔で5回、kを0.1ずつ増加させるとともに、そのkを必要インバータ出力に乗じ、その値をその都度インバータへ出力する。そして、t5〜t6までの5分間は、インバータ15の出力を必要インバータ出力で維持する。この高濃度制御時の出力低下制御の1周期は、通常制御の1周期と同じ13分(所定インターバル時間)となっている。
【0052】
図5(B)を参照しながら、高濃度制御の場合において、複数のVAVユニット4のうち送風抵抗を与えているVAVユニットの挙動を説明する。このVAVユニットも、
図5(B)の例では、この日の負荷状態では必要インバータ出力での給気ファン14からの分岐給気では、ゾーン負荷に対して多すぎて、50%以下のダンパ開度として風量を絞る必要がある。それが、出力低下制御されているts〜t5時において、インバータ15の出力が必要インバータ出力よりも小さくされると、分岐給気も減少しゾーン負荷に対して必要風量に足りない風量不足となって、すぐに風速センサ22が計測風速を減じ、風速計測値に基づき風量算出部27により算出された風量と、要求風量との比較をダンパ開度算出部で行って、要求風量比率であるダンパ開度増加が発生し、ダンパ開度を開方向へ動作させる。そして、前記係数kが0.1ずつ増加すると、急激に給気ファン14で吐出給気量が増大することから、分岐給気量が急激に増加し、そのためすぐに風速センサ22が、風速が増加したと出力し風量算出部27で風量が多すぎるとして少しダンパ開度を閉方向へ動作させる。しかし全体の絶対給気量が少なく、分岐給気量も結局少ないので、ダンパ開度を開方向へ動作させてダンパ開度を100%に増加させる。k=0.8程度まではダンパ開度が全開になるような動作に落ち着くが、k=0.9つまり9割の給気量を供給するとさすがに分岐風量も足りてくるので、t4から後はダンパ開度が閉じ気味になっていく。ここまでは
図4(B)と同様ではある(縦軸方向の変化)。しかし、ts〜t5までの経過時間をそれぞれ短くし、t5〜t6までの時間を長くして通常制御のときよりも補正値k値が小さい時間を短くしたので、ダンパ開度は、必要インバータ出力での50%未満の開度に比べ、多く開放されるが、ts〜t6の期間では平均70%程度の開度になっている。通常制御時と比較すると、出力が必要インバータ出力となっている時間が多く、風量を低下させる時間を通常制御時よりも短くすることで、空調機2の給気量も還気量も通常制御時よりも増大させ、ゾーン5からの還気としての排出速度も、空調機2での排気口での排気風量も増大させ、各ゾーン5内の空気がより換気されるようになっている。
【0053】
最後に、出力低下制御判定部35から入力された制御信号が禁止である場合を説明する。この場合は、必要インバータ出力をそのままインバータ15へ継続出力する。そして、インバータ出力算出部36は、以上の通常制御、高濃度制御、禁止の制御を、空調機2の運転が停止されるか別の制御信号が入力されるまで繰り返すようになっている。
【0054】
本発明のVAV空調システムの制御方法によれば、必要インバータ出力よりも小さい値を意図的にインバータ出力として決定し、その後、必要インバータ出力まで所定間隔で漸増させる制御を繰り返すように制御される。以上によって、VAVユニット4は、要求風量を満たそうとしてダンパ開度を開方向に動作させ、これによって給気ダクト3の送風抵抗が小さくなり、給気ダクト3の送風抵抗によるインバータ15の余分な電力の消費を抑えることができる。すなわち、本発明のVAV空調システムの制御方法は、1台のVAVユニット4のダンパ開度が原因で給気ファン14のインバータ15の出力が上昇し、全体のダンパ開度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0055】
ここで、一般的にVAVコントローラ23は、メーカーの大量生産品のため、その制御ロジックを修正することは困難である。これに対し、空調機コントローラは、空調システムに応じて製作されるため修正を行い易くなっている。よって、本発明のVAV空調システム1は、解決したい課題を解決するためにVAVコントローラ23の制御ロジックを修正したのと同等の効果が得られるよう空調機コントローラ10の制御ロジックを修正するようにしている。また、一般的にVAVユニット4は設置台数が多いためVAVコントローラ23のソフトを変更することは、多大なコストが必要となる。以上によって、本発明のVAV空調システムの制御方法によれば、VAVユニット4の変更が不要で空調機コントローラ10のプログラムの変更のみで済むため低コストで省エネを図ることができる。
【0056】
また、この出力低下制御は、各VAVユニット4からの要求風量の和を演算して求め、ゾーン全体の熱負荷がピーク負荷に近いか否かを判断する総要求風量設定値と比較演算し、要求風量の和が総要求風量設定値以下の場合に、出力低下制御を行い、要求風量の和が総要求風量設定値よりも大きい場合には実行されない。これによって、各ゾーン5の熱負荷が大きい場合は、出力低下制御が行われず計測温度と設定温度が乖離して快適性が損なわれることがない。本発明のVAV空調制御システムの制御方法は、特に、中間期のようにVAVユニット4毎の要求風量が一様でない場合に効果が大きくなる。
【0057】
また、この出力低下制御は、実行される際にCO
2濃度センサ20によって計測したCO
2濃度が設定値よりも高い場合、出力低下制御通常の間隔よりも短い間隔でインバータ15の出力を漸増させるように制御される。これによって、CO
2濃度が高い場合は、換気性能を確保した上で省エネを図ることができる。
【0058】
この出力低下制御は、必要インバータ出力の半分の出力から必要インバータ出力まで漸増させている。これによって、出力低下に伴う設定温度と計測温度の乖離を抑えつつも省エネを図ることができる。
【0059】
この出力低下制御は、必要インバータ出力の0%、すなわち、給気ファン14を停止してから必要インバータ出力まで漸増させてもよい。給気ファン14を停止すると、各VAVユニット4のダンパ21は、停止時間中、確実に電力消費量を削減できることは勿論のこと、ダンパ開度が確実に100%となり、必要インバータ出力の半分の出力から漸増させた場合よりもさらに省エネを図ることができる。この場合は、人が快適性を損なわないように、出力増加の間隔が調整されることが好ましい。
【0060】
ここで、出力低下制御禁止の運転状態を通常運転、出力0の運転状態を停止運転、出力0から必要インバータ出力までインバータ15の出力を漸増させる運転状態を漸増運転と定義する。そして、通常運転状態での各ゾーン5に居る特定の複数の被験者が申告した段階的表示の温冷感レベルの平均値を求めるとともに、停止運転と漸増運転を繰り返す出力低下制御を、停止時間と漸増運転の時間を変えて複数回行いこの複数の出力低下制御の各ゾーン5に居る特定の複数の被験者が申告した段階的表示の温冷感レベルの平均値を求める。最後に、複数の出力低下制御での温冷感レベルの平均値のうちで通常運転時の温冷感レベルの平均値と同程度の温冷感レベルの平均値を有する停止時間と漸増運転の時間の組み合わせを選択するようにする。これによって、快適性を損なわずに消費電力を低減させることができる。
【0061】
なお、本発明のVAV空調システムの制御方法は、上述の実施例にのみ限定されない。例えば、本実施例では、一部屋に一つのゾーン5が対応する構成で説明したがこれに限定されない。一部屋が複数のゾーン5を有する構成でも良い。また、制御手段は、ゾーンコントローラ8と空調機コントローラ10を有した構成で説明したがこれに限定されない。ゾーンコントローラ8と空調機コントローラ10は、一つのコントローラの構成にしても良い。また、出力低下制御において、始めに必要インバータ出力の50%とする時間を3分間で例示したがこれに限定されない。一般にVAVユニット4のダンパ開度が0から100%となるまでの時間は、その時間が長いメーカーのもので150秒程度であり、150秒以上の値で任意の値が設定される。
【0062】
また、必要インバータ出力を50%にする構成で説明したがこれは説明のための一例であって、この値に限定されるものではない。例えば、必要インバータ出力の0%から漸増させる構成にしても良い。熱負荷にもよるが必要インバータ出力の50%までの低下であれば、快適性にさほど影響を与えないことから50%の値を例示している。インバータ出力は、0%以上100%よりも小さい値にすることできる。すなわち、係数kは、0以上で1よりも小さい値をとる。その他、出力を増加させる間隔、13分の1周期も例示の値であり、例示した値に限定されない。
【0063】
本発明のVAV空調システムの制御方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更できる。