(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連続的に搬送されるアルミニウム製又はアルミニウム合金製のストリップの表面に亜鉛皮膜を形成するジンケート処理装置と、前記亜鉛皮膜を形成した前記ストリップの表面に金属メッキを施すメッキ処理装置とを有する連続メッキ処理設備であって、
前記ジンケート処理装置は、前記ストリップの表面とは隙間を有して対向配置される処理液ガイド部材と、ジンケート処理液を前記ストリップと前記処理液ガイド部材との間の前記隙間に噴射する処理液噴射手段とを有し、
前記ジンケート処理装置の上流側にはエッチング処理装置が設けられ、該エッチング処理装置は、前記ストリップの表面とは第2の隙間を有して対向配置されるエッチング処理液ガイド部材と、硫酸水溶液からなるエッチング処理液を前記ストリップと前記エッチング処理液ガイド部材との間の前記第2の隙間に噴射するエッチング処理液噴射手段とを有することを特徴とする連続メッキ処理設備。
請求項1記載の連続メッキ処理設備において、前記処理液ガイド部材は、前記ストリップが通過する搬送路を内部に備える処理槽を形成し、該処理槽の前記ストリップの搬出口に前記処理液噴射手段を設け、前記搬出口から前記処理槽の前記ストリップの搬入口へ向けてジンケート処理液を流すことを特徴とする連続メッキ処理設備。
請求項2記載の連続メッキ処理設備において、前記処理槽の前記搬送路の長さを、前記ストリップのジンケート処理液による処理時間に基づいて設定したことを特徴とする連続メッキ処理設備。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る連続メッキ処理設備(以下、単に処理設備ともいう)10は、アルミニウム製(Al製)又はアルミニウム合金製(Al合金製)のストリップ11の搬送方向の上流側から下流側へかけて順次配置された脱脂処理装置12、エッチング処理装置13、スマット除去処理装置14、ジンケート処理装置15、メッキ処理装置16、及び乾燥処理装置17を有し、連続的に搬送されるストリップ11の表面に金属メッキを施す設備である。以下、詳しく説明する。
【0020】
脱脂処理装置12は、脱脂処理液18を貯留する処理槽19と、この処理槽19内の脱脂処理液18中にストリップ11を浸漬させる複数の浸漬ロール20とを有している。これにより、コイル状となった未処理のストリップ(表面未処理基材)11を、サポートロール21を用いて巻き戻し、ロール22を介して浸漬ロール20により脱脂処理液18中に浸漬させ、ストリップ11の表面に付着している油分を除去できる。
なお、脱脂処理装置12で処理されたストリップ11は、水洗槽23にて水洗処理され、エッチング処理装置13へ搬送される。
【0021】
エッチング処理装置13は、エッチング処理液24を貯留する処理槽25と、この処理槽25内のエッチング処理液24中にストリップ11を浸漬させる複数の浸漬ロール26とを有している。これにより、脱脂処理後のストリップ11を、ロール27を介して浸漬ロール26によりエッチング処理液24中に浸漬させ、ストリップ11の表面に形成された酸化皮膜層を除去できる。
なお、エッチング処理装置13で処理されたストリップ11は、水洗槽28にて水洗処理され、スマット除去処理装置14へ搬送される。
【0022】
スマット除去処理装置14は、スマット除去処理液29を貯留する処理槽30と、この処理槽30内のスマット除去処理液29中にストリップ11を浸漬させる複数の浸漬ロール31とを有している。これにより、エッチング処理後のストリップ11を、ロール32を介して浸漬ロール31によりスマット除去処理液29中に浸漬させ、エッチング処理時にストリップ11の表面に浮き出たスマットを除去できる。
なお、スマット除去処理装置14で処理されたストリップ11は、水洗槽33にて水洗処理され、ジンケート処理装置15へ搬送される。
【0023】
ジンケート処理装置15は、
図1、
図2(A)〜(C)に示すように、処理槽34と、この処理槽34内にジンケート処理液を噴射する薬液供給ヘッダー(処理液噴射手段の一例)35、36とを有している。
処理槽34は、連続的に搬送されるストリップ11が、水平状態で通過する搬送路37を内部に備える断面矩形状(断面長方形)の槽である。この処理槽34には、ストリップ11の搬送方向上流側に、ストリップ11が送り込まれる搬入口38が、ストリップ11の搬送方向下流側に、ストリップ11が送り出される搬出口39が、それぞれ設けられている。
【0024】
ここで、ストリップ11の厚み方向両側に位置する処理槽34の側壁40、41はそれぞれ、ストリップ11の表面(即ち、上面42と下面43)と隙間44、45を有して平行に対向配置されている。このように、処理槽34は、側壁40、41となる処理液ガイド部材により形成される。
また、処理槽34の搬入口38側と搬出口39側(ストリップ11の搬送方向上流側と搬送方向下流側)には、それぞれサポートロール46、47が設けられ、ストリップ11が、水平状態で処理槽34内を通過するようにしている。
なお、処理槽の断面形状は、処理槽の側壁がストリップの表面と隙間を有して対向配置されれば、上記した形状に限定されるものではない。
【0025】
薬液供給ヘッダー35、36は、ジンケート処理液を噴出可能な噴出口が、長手方向に渡ってスリット状(細い矩形状)に形成された管状のものである。この薬液供給ヘッダー35、36は、ストリップ11の厚み方向両側に配置され、しかも、処理槽34の搬出口39に、その幅方向(ストリップ11の搬送方向に直交する方向)に沿ってそれぞれ設けられている。
これにより、ジンケート処理液を、ストリップ11の上面42と処理槽34の側壁40との間の隙間44に、また、ストリップ11の下面43と処理槽34の側壁41との間の隙間45に、処理槽34の搬出口39側から搬入口38側へ向けて噴射できる。この隙間44、45の各間隔は、ジンケート処理液を噴射可能な間隔を有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、1cm以上5cm以下程度である。
【0026】
なお、薬液供給ヘッダー35、36の設置位置は、上記した位置に限定されるものではなく、例えば、薬液供給ヘッダーを、処理槽の搬入口に、その幅方向に沿って設けてもよく、場合によっては、ストリップの幅方向両側に位置する側壁に孔を形成し、この側壁(ストリップの搬送方向)に沿って設けることもできる。
また、ストリップ11が処理槽34の搬送路37を通過している時間が、ジンケート処理液による処理時間となるため、処理槽34の搬送路37(搬送方向の側壁40、41)の長さLは、ストリップ11のジンケート処理液による処理時間に基づいて設定することが好ましい。
【0027】
以上の構成により、スマット除去処理後のストリップ11を、ロール48を介してサポートロール46、47により処理槽34内に搬入させ、ストリップ11の表面に亜鉛皮膜を形成できる。そして、ジンケート処理装置15で処理されたストリップ11は、水洗槽49にて水洗処理され、メッキ処理装置16へ搬送される。
なお、ここでは、ジンケート処理装置15を、1台のみ設けた場合について説明したが、必要に応じて2台以上(10台以下、更には5台以下程度)の複数台設けることもできる。
また、ジンケート処理に使用されたジンケート処理液は、処理槽34の下方に配置された薬液受槽50により回収され、薬液排出口51を介して循環使用できる。
【0028】
図1に示すように、メッキ処理装置16は、メッキ処理液52を貯留する処理槽53と、この処理槽53内のメッキ処理液52中にストリップ11を浸漬させる複数の浸漬ロール54とを有している。また、処理槽53の上方には、通電ロール55が配置され、処理槽53内(メッキ処理液52中)には、メッキ電極56が配置されている。
これにより、ジンケート処理後のストリップ11を、通電ロール55を介して浸漬ロール54によりメッキ処理液52中に浸漬させ、亜鉛皮膜を形成したストリップ11の表面に金属メッキを電気メッキすることができる。なお、ストリップ11の表面の金属メッキは、電気メッキに限定されるものではなく、無電解メッキ、例えば、無電解ニッケルメッキや無電解銅メッキとしてもよい。この場合は、メッキ処理液52として無電解メッキ液を使用し、通電ロール55やメッキ電極56への通電を行わないか、あるいは、通電ロール55をサポートロールに変更すると共に、メッキ電極56をメッキ処理装置16から取り外せばよい。
このメッキ処理装置16で処理されたストリップ11は、水洗槽57にて水洗処理され、乾燥処理装置17へ搬送される。
【0029】
乾燥処理装置17は、メッキ処理後に水洗処理されたストリップ11の表面を乾燥させるものであれば、特に限定されるものではない。
このように、乾燥処理装置17で乾燥処理した処理済みのストリップ11(表面処理済み基材)を、ロール58を介してコイル状に巻き取る。
以上に示したように、連続メッキ処理設備10は、ジンケート処理装置15において、ストリップ11を水平方向に搬送しながらジンケート処理しているが、この設備構成に限定されるものではなく、例えば、
図3に示す連続メッキ処理設備60のように、ジンケート処理装置64において、ストリップ11を上下方向に搬送しながらジンケート処理する設備構成でもよい。
【0030】
以下、連続メッキ処理設備60について説明するが、前記した連続メッキ処理設備10と同一部材には同一番号を付し、詳しい説明を省略する。
図3に示すように、連続メッキ処理設備(以下、単に処理設備ともいう)60は、ストリップ11の搬送方向の上流側から下流側へかけて順次配置された脱脂処理装置61、エッチング処理装置62、スマット除去処理装置63、ジンケート処理装置64、メッキ処理装置65、及び乾燥処理装置17を有し、連続的に搬送されるストリップ11の表面に金属メッキを施す設備である。なお、これらの各処理装置は、前記した連続メッキ処理設備10の各処理装置と同様の機能を有するものであるため、以下、簡単に説明する。
【0031】
脱脂処理装置61は、脱脂処理液18を貯留する処理槽66と、この処理槽66内の脱脂処理液18中にストリップ11を浸漬させる浸漬ロール20とを有している。
エッチング処理装置62は、エッチング処理液24を貯留する処理槽67と、この処理槽67内のエッチング処理液24中にストリップ11を浸漬させる浸漬ロール26とを有している。
スマット除去処理装置63は、スマット除去処理液29を貯留する処理槽68と、この処理槽68内のスマット除去処理液29中にストリップ11を浸漬させる浸漬ロール31とを有している。
なお、上記した各処理槽66〜68はそれぞれ、前記した各処理槽19、25、30より、深さが深く(高さが高く)、ストリップ11の搬送方向の長さ(幅)が狭い。
【0032】
ジンケート処理装置64は、
図3、
図4(A)、(B)に示すように、処理槽69、70と、ストリップ11の搬送方向上流側に配置される処理槽69内に、ジンケート処理液を噴射する薬液供給ヘッダー(処理液噴射手段の一例)71、72と、ストリップ11の搬送方向下流側に配置される処理槽70内に、ジンケート処理液を噴射する薬液供給ヘッダー(処理液噴射手段の一例)73、74とを有している。
なお、処理槽69と処理槽70は、前記した処理槽34と略同様の構成であり、また薬液供給ヘッダー71、72と薬液供給ヘッダー73、74も、前記した薬液供給ヘッダー35、36と略同様の構成であるため、簡単に説明する。
【0033】
一方の処理槽69は、連続的に搬送されるストリップ11が、サポートロール75、76により、上方から下方へかけて垂直状態で通過する搬送路77を内部に備える断面矩形状の槽である。また、他方の処理槽70は、連続的に搬送されるストリップ11が、サポートロール76、78により、下方から上方へかけて垂直状態で通過する搬送路79を内部に備える断面矩形状の槽である。
この各処理槽69、70には、ストリップ11の搬送方向上流側に、ストリップ11が送り込まれる搬入口80が、ストリップ11の搬送方向下流側に、ストリップ11が送り出される搬出口81が、それぞれ設けられている。
また、ストリップ11の厚み方向両側に位置する処理槽69、70の各側壁82、83はそれぞれ、ストリップ11の表面(即ち、一面84と他面85)と隙間86、87を有して平行に対向配置されている。このように、各処理槽69、70はそれぞれ、側壁82、83となる処理液ガイド部材により形成される。
【0034】
薬液供給ヘッダー71、72(薬液供給ヘッダー73、74も同様)は、ジンケート処理液を噴出可能な噴出口が、長手方向に渡ってスリット状(細い矩形状)に形成された管状のものである。この薬液供給ヘッダー71、72は、ストリップ11の厚み方向両側に配置され、しかも、各処理槽69、70の搬出口81に、その幅方向(ストリップ11の搬送方向に直交する方向)に沿ってそれぞれ設けられている。
これにより、ジンケート処理液を、ストリップ11の一面84と処理槽69の側壁82との間の隙間86に、また、ストリップ11の他面85と処理槽69の側壁83との間の隙間87に、処理槽69の搬出口81側から搬入口80側へ向けて噴射できる。
なお、薬液供給ヘッダー71、72の設置位置は、上記した位置に限定されるものではなく、例えば、薬液供給ヘッダーを、処理槽の搬入口に、その幅方向に沿って設けてもよく、場合によっては、ストリップの幅方向両側に位置する側壁に孔を形成し、この側壁(ストリップの搬送方向)に沿って設けることもできる。
【0035】
また、ジンケート処理に使用されたジンケート処理液は、ストリップ11の搬送方向上流側(処理槽69の上部、処理槽70の下部)に設けられた薬液受槽88により回収され、薬液排出口89を介して循環使用される。
以上の構成により、スマット除去処理後のストリップ11を、サポートロール75、76により処理槽69内に搬入させ、更に、サポートロール76、78により処理槽70内に搬入させて、ストリップ11の表面に亜鉛皮膜を形成できる。
【0036】
図3に示すように、メッキ処理装置65は、メッキ処理液52を貯留する処理槽90と、この処理槽90内のメッキ処理液52中にストリップ11を浸漬させる複数の浸漬ロール54とを有している。なお、処理槽90は、前記した処理槽53より、深さが深く(高さが高く)、ストリップ11の搬送方向の長さ(幅)が狭い。
また、処理槽90の上方には、通電ロール55が配置され、処理槽90内(メッキ処理液52中)には、メッキ電極56が配置されている。
以上に示したように、連続メッキ処理設備60は、ジンケート処理装置64において、ストリップ11を上下方向に搬送しながらジンケート処理する設備構成であるので、前記した連続メッキ処理設備10よりも、設置スペースの省スペース化を図ることができる。
【0037】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る連続メッキ処理方法について説明する。なお、前記した連続メッキ処理設備10と連続メッキ処理設備60は、設備を構成するジンケート処理装置において、ジンケート処理する際のストリップ11の搬送方向が異なるのみであり、ストリップ11に対して行う処理は実質的に同じであるため、以下、
図1、
図2(A)〜(C)、及び
図5を参照しながら説明する。
図1に示すメッキ処理を行うストリップ11は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製である。ここで、アルミニウム合金としては、例えば、1100、1085や1N30等の1000番(純アルミ)系や、3000番(Al−Mn合金)系、5000番(Al−Mn合金)、8000番(Al−Fe合金)系等がある。
【0038】
(脱脂処理工程)
コイル状となった未処理のストリップ11を、サポートロール21を用いて巻き戻し、脱脂処理装置12へ送る。そして、ストリップ11を、ロール22を介して浸漬ロール20により脱脂処理液18中に浸漬させ、ストリップ11の表面に付着している油分を除去する。なお、脱脂処理の処理条件(温度や時間等)は、従来の条件で実施でき、また、脱脂処理液18も、従来使用されている脱脂処理液(例えば、日本パーカラインジグ(株)製のFC−4477M等)を使用できる。
(水洗処理工程)
上記した脱脂処理装置12で処理されたストリップ11を、水洗槽23にて水洗処理し、エッチング処理装置13へ搬送する。
【0039】
(エッチング処理工程)
脱脂処理後のストリップ11を、ロール27を介して浸漬ロール26によりエッチング処理液24中に浸漬させ、ストリップ11の表面に形成された酸化皮膜層を除去する。なお、エッチング処理の処理条件(温度や時間等)は、従来の条件で実施でき、また、エッチング処理液24も、従来使用されているエッチング処理液(例えば、NaOH(好ましくは、グルコン酸ナトリウムのような錯化剤を添加)等)を使用できる。
(水洗処理工程)
上記したエッチング処理装置13で処理されたストリップ11を、水洗槽28にて水洗処理し、スマット除去処理装置14へ搬送する。
【0040】
(スマット除去処理工程)
エッチング処理後のストリップ11を、ロール32を介して浸漬ロール31によりスマット除去処理液29中に浸漬させ、エッチング処理時にストリップ11の表面に浮き出たスマットを除去する。なお、スマット除去処理の処理条件(温度や時間等)は、従来の条件で実施でき、また、スマット除去処理液29も、従来使用されているスマット除去処理液(例えば、日本表面化学(株)製のRK−455等)を使用できる。
(水洗処理工程)
上記したスマット除去処理装置14で処理されたストリップ11を、水洗槽33にて水洗処理し、ジンケート処理装置15へ搬送する。
【0041】
(ジンケート処理工程)
スマット除去処理後のストリップ11を、ロール48を介してサポートロール46、47により処理槽34内に搬入させ、ストリップ11の表面に、アルミニウムの溶解に対して亜鉛(Zn)を置換析出させて亜鉛皮膜を形成する。なお、ジンケート処理液には、従来使用されているジンケート処理液(例えば、日本表面化学(株)製のZ−1716等)を使用できる。
この亜鉛皮膜の形成は、一方の薬液供給ヘッダー35により、ストリップ11の上面42と処理槽34の側壁40との間の隙間44に、また、他方の薬液供給ヘッダー36により、ストリップ11の下面43と処理槽34の側壁41との間の隙間45に、それぞれジンケート処理液を噴射することで(噴流下で)行われる。
【0042】
このように、ジンケート処理液を噴射(噴流下で処理)することで、従来よりも短時間で、ストリップ11の表面に亜鉛皮膜を形成できる。これは、以下の理由によるものと推定される。
ストリップを構成するアルミニウム表面の酸化皮膜の厚み分布や合金成分の分布は、表面全体で一様ではない。このため、従来のような、ストリップの単純な浸漬や、スターラーによる緩やかな撹拌条件下では、酸化皮膜の薄い箇所が優先的に溶解するため、結果として溶解し易い箇所に亜鉛が析出し易い。
一方、上記したジンケート処理液を噴射する条件下では、ある程度、酸化皮膜の分布が変動していても、アルミニウムの溶解と亜鉛の析出が加速促進され、表面全体で微細な亜鉛を析出できる。
【0043】
従って、ジンケート処理の時間短縮には、ジンケート処理液を噴射することが有効であると考えられるが、より具体的には、各薬液供給ヘッダー35、36から噴射するジンケート処理液のストリップ11に対する相対速度を0.25m/秒以上(更には、0.5m/秒以上)にすることが好ましい。
なお、上記した相対速度は、各薬液供給ヘッダー35、36から噴射されるジンケート処理液の噴射速度と、連続的に搬送されるストリップ11の搬送速度との差である。従って、ジンケート処理液の噴射速度は、ストリップ11の搬送速度に応じて調整するのがよい。
【0044】
ここで、相対速度が0.25m/秒未満である場合、相対速度が遅過ぎて、上記した効果が充分に得られず、ストリップ表面の全体に渡って微細な亜鉛を析出できないと考えられる。
一方、相対速度が速くなれば、上記した効果が得られると考えられるため、上限値については規定していない。しかし、相対速度が速くなるに伴い、例えば、ジンケート処理液を噴射するためのポンプが大掛かりとなって設備コストがかかると共に、ジンケート処理液の流れが乱れ、表面性状に悪影響を及ぼすおそれがあるため、例えば、1.5m/秒程度がよい。
【0045】
なお、ジンケート処理装置15のように、各薬液供給ヘッダー35、36が処理槽34の搬出口39に設けられている場合、ジンケート処理液は、処理槽34の搬出口39側から搬入口38側へ向けて、即ちストリップ11の搬送方向とは対向する方向へ向けて噴射される(対向流で処理される)。
このように、ジンケート処理液を、ストリップ11の搬送方向とは対向する方向から噴射する場合、これ以外の方向から噴射する場合(例えば、ストリップ11の搬送方向と同じ方向から噴射する場合)と比較して、薬液供給ヘッダーから噴射するジンケート処理液の噴射速度を遅くできるため、例えば、上記したポンプを小型化でき、設備コストの低減が図れる。
【0046】
上記したジンケート処理液による処理時間は、従来より短時間であり、例えば、3秒以上10秒未満(更には、5秒以下)程度である。
以上のことから、ジンケート処理装置15によるジンケート処理は、1回のみ行うことで、充分に、従来と同程度の品質が得られるが、例えば、2回以上(10回以下、更には5回以下程度)の複数回行うことで、従来よりも、より高品質の製品を得ることもできる。なお、このように、ジンケート処理装置による処理を複数回行ったとしても、1回あたりの処理時間を従来よりも短くできるため、生産性の向上は図れる。
【0047】
(水洗処理工程)
上記したように、ジンケート処理装置15で処理されたストリップ11を、水洗槽49にて水洗処理し、メッキ処理装置16へ搬送する。
【0048】
(メッキ処理工程)
ジンケート処理後のストリップ11を、通電ロール55を介して浸漬ロール54によりメッキ処理液52中に浸漬させ、亜鉛皮膜を形成したストリップ11の表面に金属メッキ(例えば、ニッケル(Ni)メッキや銅(Cu)メッキ)を電気メッキする。なお、電気メッキの処理条件(温度や時間、メッキ厚等)は、従来の条件で実施できる。
(水洗処理工程)
上記したように、メッキ処理装置16で処理されたストリップ11を、水洗槽57にて水洗処理し、乾燥処理装置17へ搬送する。
【0049】
(乾燥処理工程)
メッキ処理後に水洗処理されたストリップ11の表面を乾燥させる。
このように、乾燥処理装置17で乾燥処理した処理済みのストリップ11を、ロール58を介してコイル状に巻き取る。
これにより、メッキ製品が得られる。
【0050】
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る連続メッキ処理設備(以下、単に処理設備ともいう)91は、本発明の第1の実施の形態に係る連続メッキ処理設備10と比較して、エッチング処理装置13、水洗槽28、及びスマット除去処理装置14を、エッチング処理液をストリップ11に噴射してエッチング処理を行うエッチング処理装置92に置き換えたことが特徴となっている。このため、連続メッキ処理設備10と同一の装置、同一の構成部材には同一の符号を付して説明を省略し、エッチング処理装置92についてのみ詳細に説明する。
【0051】
ジンケート処理装置15の上流側に設けられたエッチング処理装置92は、
図6、
図7(A)〜(C)に示すように、第2の処理槽93と、この第2の処理槽93内に硫酸水溶液からなるエッチング処理液を噴射するエッチング薬液供給ヘッダー(エッチング処理液噴射手段の一例)94、95とを有している。
そして、第2の処理槽93は、連続的に搬送されるストリップ11が、水平状態で通過する第2の搬送路96を内部に備える断面矩形状(断面長方形)の槽である。この第2の処理槽93には、ストリップ11の搬送方向上流側に、ストリップ11が送り込まれる第2の搬入口97が、ストリップ11の搬送方向下流側に、ストリップ11が送り出される第2の搬出口98が、それぞれ設けられている。
これにより、脱脂処理後のストリップ11を、ロール27を介して第2の搬入口97により第2の処理槽93内に進入させ、ストリップ11の表面に形成された酸化皮膜層を除去できる。なお、エッチング処理装置92で処理されたストリップ11は、水洗槽33にて水洗処理され、ジンケート処理装置15へ搬送される。
【0052】
ここで、ストリップ11の厚み方向両側に位置する第2の処理槽93の第2の側壁99、100はそれぞれ、ストリップ11の表面(即ち、上面42と下面43)と第2の隙間101、102を有して平行に対向配置されている。このように、第2の処理槽93は、第2の側壁99、100となるエッチング処理液ガイド部材により形成される。
また、第2の処理槽93の第2の搬入口97側と第2の搬出口98側(ストリップ11の搬送方向上流側と搬送方向下流側)には、それぞれサポートロール103、104が設けられ、ストリップ11が、水平状態で第2の処理槽93内を通過するようにしている。
なお、第2の処理槽の断面形状は、第2の処理槽の第2の側壁がストリップの表面と第2の隙間を有して対向配置されれば、上記した形状に限定されるものではない。
【0053】
エッチング薬液供給ヘッダー94、95は、エッチング処理液を噴出可能な噴出口が、長手方向に渡ってスリット状(細い矩形状)に形成された管状のものである。このエッチング薬液供給ヘッダー94、95は、ストリップ11の厚み方向両側に配置され、しかも、第2の処理槽93の第2の搬出口98に、その幅方向(ストリップ11の搬送方向に直交する方向)に沿ってそれぞれ設けられている。
これにより、エッチング処理液を、ストリップ11の上面42と第2の処理槽93の第2の側壁99との間の第2の隙間101に、また、ストリップ11の下面43と第2の処理槽93の第2の側壁100との間の第2の隙間102に、第2の処理槽93の第2の搬出口98側から第2の搬入口97側へ向けて噴射できる。この第2の隙間101、102の各間隔は、エッチング処理液を噴射可能な間隔を有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、1cm以上5cm以下程度である。
【0054】
なお、エッチング薬液供給ヘッダー94、95の設置位置は、上記した位置に限定されるものではなく、例えば、エッチング薬液供給ヘッダーを、第2の処理槽の第2の搬入口に、その幅方向に沿って設けてもよく、場合によっては、ストリップの幅方向両側に位置する第2の側壁に孔を形成し、この第2の側壁(ストリップの搬送方向)に沿って設けることもできる。
また、ストリップ11が第2の処理槽93の第2の搬送路96を通過している時間が、エッチング処理液による処理時間となるため、第2の処理槽93の第2の搬送路96(搬送方向の第2の側壁99、100)の長さMは、ストリップ11のエッチング処理液による処理時間に基づいて設定することが好ましい。
【0055】
次に、第2の変形例に係る連続メッキ処理設備105について説明するが、連続メッキ処理設備105は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る連続メッキ処理設備60と比較して、エッチング処理装置62、水洗槽28、及びスマット除去処理装置63を、エッチング処理液をストリップ11に噴射してエッチング処理を行うエッチング処理装置106に置き換えたことが特徴となっている。このため、連続メッキ処理設備60と同一の装置、同一の構成部材には同一の符号を付して説明を省略し、エッチング処理装置106についてのみ詳細に説明する。
【0056】
エッチング処理装置106は、
図8、
図9(A)、(B)に示すように、第2の処理槽107、108と、ストリップ11の搬送方向上流側に配置される第2の処理槽107内に、硫酸水溶液からなるエッチング処理液を噴射するエッチング薬液供給ヘッダー(エッチング処理液噴射手段の一例)109、110と、ストリップ11の搬送方向下流側に配置される第2の処理槽108内に、エッチング処理液を噴射するエッチング薬液供給ヘッダー(エッチング処理液噴射手段の一例)111、112とを有している。
なお、第2の処理槽107と第2の処理槽108は、前記した第2の処理槽93と略同様の構成であり、またエッチング薬液供給ヘッダー109、110とエッチング薬液供給ヘッダー111、112も、前記したエッチング薬液供給ヘッダー94、95と略同様の構成であるため、簡単に説明する。
【0057】
一方の第2の処理槽107は、連続的に搬送されるストリップ11が、サポートロール113、114により、上方から下方へかけて垂直状態で通過する第2の搬送路115を内部に備える断面矩形状の槽である。また、他方の第2の処理槽108は、連続的に搬送されるストリップ11が、サポートロール114、116により、下方から上方へかけて垂直状態で通過する第2の搬送路117を内部に備える断面矩形状の槽である。
この各第2の処理槽107、108には、ストリップ11の搬送方向上流側に、ストリップ11が送り込まれる第2の搬入口118が、ストリップ11の搬送方向下流側に、ストリップ11が送り出される第2の搬出口119が、それぞれ設けられている。
また、ストリップ11の厚み方向両側に位置する第2の処理槽107、108の各第2の側壁120、121はそれぞれ、ストリップ11の表面(即ち、一面84と他面85)と第2の隙間122、123を有して平行に対向配置されている。このように、各第2の処理槽107、108はそれぞれ、第2の側壁122、123となるエッチング処理液ガイド部材により形成される。
【0058】
エッチング薬液供給ヘッダー109、110(エッチング薬液供給ヘッダー111、112も同様)は、エッチング処理液を噴出可能な噴出口が、長手方向に渡ってスリット状(細い矩形状)に形成された管状のものである。このエッチング薬液供給ヘッダー109、110は、ストリップ11の厚み方向両側に配置され、しかも、各第2の処理槽107、108の第2の搬出口119に、その幅方向(ストリップ11の搬送方向に直交する方向)に沿ってそれぞれ設けられている。
これにより、エッチング処理液を、ストリップ11の一面84と第2の処理槽107の第2の側壁120との間の第2の隙間122に、また、ストリップ11の他面85と第2の処理槽107の第2の側壁121との間の第2の隙間123に、第2の処理槽107の第2の搬出口119側から第2の搬入口118側へ向けて噴射できる。
なお、エッチング薬液供給ヘッダー109、110の設置位置は、上記した位置に限定されるものではなく、例えば、エッチング薬液供給ヘッダーを、第2の処理槽の第2の搬入口に、その幅方向に沿って設けてもよく、場合によっては、ストリップの幅方向両側に位置する第2の側壁に孔を形成し、この第2の側壁(ストリップの搬送方向)に沿って設けることもできる。
【0059】
また、エッチング処理に使用されたエッチング処理液は、ストリップ11の搬送方向上流側(第2の処理槽107の上部、第2の処理槽108の下部)に設けられたエッチング薬液受槽124により回収され、エッチング薬液排出口125を介して循環使用される。
以上の構成により、脱脂処理後のストリップ11を、サポートロール113、114により処理槽107内に搬入させ、更に、サポートロール114、116により処理槽108内に搬入させて、ストリップ11の表面の酸化皮膜層を除去できる。
【0060】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係り、連続メッキ処理設備91(105)を用いた連続メッキ処理方法について説明する。
図10に示すように、連続メッキ処理設備91(105)による連続メッキ処理方法は、本発明の第1の実施の形態に係る連続メッキ処理設備10(60)による連続メッキ処理方法と比較して、エッチング処理工程において硫酸水溶液からなるエッチング処理液をストリップ11に噴射すること、エッチング処理工程の後に行うスマット除去処理工程が不要であることが特徴となっており、他の処理工程においてストリップ11に対して行う処理は実質的に同じである。このためエッチング処理工程についてのみ詳細に説明する。
【0061】
脱脂処理後に水洗処理されたストリップ11を、ロール27を介してエッチング処理装置92(106)の第2の処理槽93(107、108)内に搬入すると、ストリップ11の上面42(84)と第2の処理槽93(107、108)の第2の側壁99(120)との間の第2の隙間101(122)及びストリップ11の下面43(85)と第2の処理槽93(107、108)の第2の側壁100(121)との間の第2の隙間102(123)に、それぞれエッチング処理液が噴射されて、エッチング処理液の噴流下でエッチング処理が行われる。
【0062】
アルミニウムはいわゆる両性金属であり、アルカリと酸の両方に溶解するが、アルカリへの溶解力の方が大きいことと薬品が比較的安価であることから、エッチングには一般的にアルカリが使用されている。一方、エッチング処理液を硫酸水溶液とした場合は、アルカリと比較して溶解力が小さくなるが、エッチング処理液をストリップ11に噴射することによりストリップ11の表面ではエッチング処理液の流れが生じているので、アルミニウムとの反応で発生した反応物を、エッチング処理液の流れに巻き込んで除去することができ、アルミニウムに新鮮なエッチング処理液を常に接触させることができる。
これにより、エッチング処理液(硫酸水溶液)とアルミニウムとの反応が促進され、アルカリエッチング処理液と比較してアルミニウムとの反応性が小さい硫酸水溶液をエッチング処理液として使用しても、効率的なエッチング処理を行うことができる。
【0063】
一方、エッチング処理液が硫酸水溶液なので、アルミニウムがエッチング処理される際、アルミニウム中に含まれる、例えば、銅、マグネシウム等からなる化合物も硫酸水溶液と反応し溶解するためスマットが形成されない。このため、スマット除去処理工程が不要になって、処理時間の短縮に伴う生産性の向上と、処理設備長の短縮に伴う設備コストの低減を図ることができる。更に、エッチング処理液が硫酸水溶液であって、従来の酸性エッチング処理液のように毒性が強い酸性ふっ化アンモンを含まないため、エッチング処理液の管理や廃エッチング処理液の無害化処理が容易となるとともに、陽極酸化処理の電解液として使用される硫酸水溶液をエッチング処理液として流用することによるランニングコストの低減も可能となる。
【0064】
エッチング処理の時間短縮には、エッチング薬液供給ヘッダー94、95(109、110、111、112)から噴射するエッチング処理液のストリップ11に対する相対速度を0.25m/秒以上(更には、0.5m/秒以上)にすることが好ましい。
なお、上記した相対速度は、各エッチング薬液供給ヘッダー94、95(109、110、111、112)から噴射されるエッチング処理液の噴射速度と、連続的に搬送されるストリップ11の搬送速度との差である。従って、エッチング処理液の噴射速度は、ストリップ11の搬送速度に応じて調整するのがよい。
【0065】
ここで、相対速度が0.25m/秒未満である場合、相対速度が遅過ぎて、上記した効果が充分に得られず、効率的なエッチング処理を行うことができないと考えられる。
一方、相対速度が速くなれば、上記した効果が得られると考えられるため、上限値については規定していない。しかし、相対速度が速くなるに伴い、例えば、エッチング処理液を噴射するためのポンプが大掛かりとなって設備コストがかかると共に、エッチング処理液の流れが乱れ、表面性状に悪影響を及ぼすおそれがあるため、例えば、1.5m/秒程度がよい。
【0066】
また、エッチング処理液である硫酸水溶液の濃度は、5質量%以上30質量%以下であり、温度は60℃以上80℃以下である。
硫酸水溶液の濃度が5質量%未満では、エッチング処理液のストリップ11に対する相対速度を0.25m/秒以上としても、アルミニウム基材に対する溶解能力が低下するため好ましくなく、硫酸水溶液の濃度が30質量%を超えると、エッチング処理装置からの硫酸水溶液のドラッグアウト量(持ち出し量)が多くなり、ランニングコストの増加を招くため好ましくない。
硫酸水溶液の温度が60℃未満では、エッチング処理液のストリップ11に対する相対速度を0.25m/秒以上とし、かつ硫酸水溶液の濃度を5質量%以上30質量%以下としても、アルミニウム基材に対する溶解能力を高めることができず、効率的なエッチング処理を行うことができない。
一方、硫酸水溶液の温度が80℃を超えると、アルミニウム基材に対する溶解能力は高くなるが、硫酸水溶液中の水分の蒸発が激しく、硫酸水溶液の濃度管理が困難となったり、設備的に高度な熱対策が必要となるため好ましくない。
【実施例】
【0067】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、JIS記号A1100のアルミニウム製の板材の表面に、種々の条件で金属メッキを施し、その評価を行った。
試験条件と評価結果を、表1にそれぞれ示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、評価は、メッキの密着性と生産性の2点について行った。
ここで、密着性の評価は、碁盤目試験と180°密着曲げ試験の2つの方法で行った。
碁盤目試験は、塗料一般試験方法において付着性(クロスカット試験)を評価するJIS K5600−5−6(1999年)に準じて行った。これは、試験片のメッキ面に対し、カッターで碁盤目状の切り込みを入れた上で、テープを貼って剥がし、碁盤目が剥離しないかを確認する試験方法である。
また、180°密着曲げ試験は、曲げた部分が密着するように試験片を2つ折りにし、この2つ折りした部分にテープを貼って剥がし、メッキに剥離がないかを確認する試験方法である。
【0070】
表1に示す従来例1は、従来法により、アルミニウム製の板材の表面に金属メッキを施した結果である(
図13参照)。具体的には、スターラーを用いて10秒の第一ジンケート処理を行った後、析出させた亜鉛の剥離処理を行い、更にスターラーを用いて10秒の第二ジンケート処理を行った。
この結果、密着性については、碁盤目試験と180°密着曲げ試験のいずれも、良好な結果が得られた(○)。しかし、生産性については、10秒のジンケート処理を2回行う必要があり、また亜鉛の剥離処理を行う必要があったため、処理時間に60秒程度を要し、悪かった。
【0071】
スターラーを用いて第一ジンケート処理を行うと、
図11(A)に示すように、アルミニウムの素地上に、糸状、粒子状の亜鉛粒子が、疎らに析出した。そこで、析出させた亜鉛の剥離処理を行った後、スターラーを用いて第二ジンケート処理を行うことで、
図11(B)に示すように、第一ジンケート処理で析出した亜鉛粒子よりも小さな亜鉛粒子が、素地全面に析出した。なお、
図11(A)、(B)の各顕微鏡写真は、SEM写真(×10000倍)である。
つまり、従来例1は、10秒のジンケート処理を2回行うことで、亜鉛粒子を素地全面に析出させ、メッキの密着性を高めているが、この方法では、処理時間を短縮できない。
【0072】
そこで、従来例1の評価を基準として、試験条件を変更した従来例2、3、及び、実施例1、2について、それぞれ評価した。
従来例2は、従来例1と同じ処理を、従来例1よりも短い5秒で行い、更に2回のジンケート処理に用いるスターラーの撹拌を、従来例1よりも遅い500rpm(回/分)で行った結果である。
この結果、生産性については、従来例1よりも処理時間を短縮でき、良好な結果が得られた。しかし、2回のジンケート処理の時間を短くしたため、碁盤目試験については良好な結果が得られたが(○)、180°密着曲げ試験についてはメッキの剥離が発生した(×)。
従って、総合評価は「×」だった。
【0073】
従来例3は、従来例1と同じ処理を、従来例1よりも短い5秒で行い、更に2回のジンケート処理に用いるスターラーの撹拌を、従来例2よりも速い1500rpm(回/分)で行った結果である。
この結果、生産性については、従来例1よりも処理時間を短縮でき、良好な結果が得られた。しかし、スターラーの撹拌速度を速くしても、2回のジンケート処理の時間を短くしたため、碁盤目試験については良好な結果が得られたが(○)、180°密着曲げ試験についてはメッキの剥離が発生した(×)。
従って、総合評価は「×」だった。
【0074】
実施例1、2は、
図1、
図2に示す連続メッキ処理設備を使用し、各処理を、従来例1よりも短い5秒で行い、更にジンケート処理を1回のみ行った結果である。なお、噴射されるジンケート処理液のストリップに対する相対速度は、0.25m/秒と1.5m/秒の2条件に設定した。
この結果、密着性については、碁盤目試験と180°密着曲げ試験のいずれも、良好な結果が得られた(○)。これは、ジンケート処理液の噴流下でジンケート処理を行うことにより、第一ジンケート処理の段階(1回のみのジンケート処理)で、
図12に示すように、従来例1の2回のジンケート処理で析出した亜鉛粒子よりも小さな亜鉛粒子が、素地全面に析出したことによる。なお、
図12の顕微鏡写真は、SEM写真(×10000倍)である。
【0075】
また、生産性については、上記したように、5秒のジンケート処理を1回のみ行えばよく、また、これに伴って亜鉛剥離処理も不要となるため、処理時間は20秒となり、良好であった。
従って、総合評価は「○」だった。
以上のことから、本発明の連続メッキ処理設備及び連続メッキ処理方法を用いることで、良好な品質のアルミニウムのメッキ製品を、経済的に、かつ、生産性よく製造できることを確認できた。
【0076】
実施例3−1、3−2は、実施例1においてエッチング処理に5%硫酸水溶液(温度を60℃と80℃の2条件に設定)を使用しスマット除去処理を行わなかった場合、実施例4−1、4−2は、実施例1においてエッチング処理に30%硫酸水溶液(温度を60℃と80℃の2条件に設定)を使用しスマット除去処理を行わなかった場合である。
実施例3−1、3−2、4−1、4−2の試験条件と評価結果を、表2にそれぞれ示す。なお、噴射されるジンケート処理液のストリップに対する相対速度は、0.25m/秒と1.5m/秒の2条件に設定した。
【0077】
【表2】
【0078】
表2に示すように、密着性については、碁盤目試験と180°密着曲げ試験のいずれも、良好な結果が得られた(○)。また、生産性については、スマット除去処理を行わなかったため、処理時間は15秒となった。
従って、総合評価は「○」だった。
以上のことから、本発明の連続メッキ処理設備及び連続メッキ処理方法を用いることで、良好な品質のアルミニウムのメッキ製品を、経済的に、かつ、生産性よく製造できることを確認できた。
【0079】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の連続メッキ処理設備及び連続メッキ処理方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、処理液ガイド部材が処理槽を形成した場合について説明したが、処理液ガイド部材は、ストリップの表面とは隙間を有して対向配置され、しかも、この隙間にジンケート処理液を噴射できる構成であれば、これに限定されるものではなく、例えば、板状のものでもよい。