特許第6239432号(P6239432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239432
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】内燃機関の動弁機構
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/00 20060101AFI20171120BHJP
   F01L 13/08 20060101ALI20171120BHJP
   F01L 1/053 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F01L13/00 301S
   F01L13/08
   F01L13/08 J
   F01L1/053
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-80582(P2014-80582)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-200244(P2015-200244A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】前迫 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘毅
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−089816(JP,U)
【文献】 特開昭60−113005(JP,A)
【文献】 特開2013−217230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00
F01L 1/053
F01L 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース円(15)とノーズ(16)とを含むカム(14)が設けられたカムシャフト(10)を備え、カム(14)でバルブ(8)を駆動する内燃機関の動弁機構において、
カムシャフト(10)を径方向に平行移動させる平行移動装置(40)を備え、
内燃機関をモータで始動させる始動時を含む所定時があり、
前記所定時以外の通常時には、平行移動装置(40)でカムシャフト(10)を所定の通常位置(p1)に配することで、ベース円(15)ではバルブ(8)を開かない通常状態にし、
前記所定時には、平行移動装置(40)でカムシャフト(10)を所定の圧抜位置(p2)に配することで、ベース円(15)でもバルブ(8)を開く圧抜状態にして圧縮抵抗又は膨張抵抗を抑えることを特徴とする内燃機関の動弁機構。
【請求項2】
平行移動装置(40)は、カムシャフト(10)を回転可能に支持するとともに、該カムシャフト(10)の回転中心線(X)から平行に離間した位置に自身の回動中心線(Xo)を備えた偏心部材(41)と、該偏心部材(41)を前記回動中心線(Xo)を中心に回動させる回動装置(45)とを含み構成された請求項1記載の内燃機関の動弁機構。
【請求項3】
回動装置(45)は、偏心部材(41)よりもその径方向側に設けられて、該偏心部材(41)の回動中心線(Xo)と平行に自身の回動中心線(Xi)を備えたコントロールシャフト(46)と、該コントロールシャフト(46)に設けられて該コントロールシャフト(46)と共に回動する第一ギア(47)と、該第一ギア(47)と噛み合う、偏心部材(41)に設けられて該偏心部材(41)と共に回動する第二ギア(48)と、コントロールシャフト(46)を回動させる軸動装置とを含み構成された請求項2記載の内燃機関の動弁機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内燃機関のバルブを駆動する動弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
動弁機関の中には、特許文献1〜3に示す可変動弁機構がある。それらの可変動弁機構は、いずれも、ベース円とノーズとを含むカムで介在部材を介してバルブを駆動し、その介在部材を操作することでバルブのリフト量及び開放時間(作用角)を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−371816号公報
【特許文献2】特開2002−371819号公報
【特許文献3】特開2003−106123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の可変動弁機構によれば、カムのノーズがバルブに作用するノーズ作用時におけるバルブのリフト量及び開放時間は変更することができるが、ベース円がバルブに作用するベース円作用時におけるバルブのリフト量及び開放時間は、零から変更することができない。そのため、次に示す課題は、解決することができない。
【0005】
すなわち、吸気側及び排気側ともバルブが閉じた状態(すなわち、圧縮行程や膨張行程や各上死点や各下死点等)でエンジン停止した気筒では、気筒内が密閉されるため、次のエンジン始動時には、気筒内での圧縮抵抗や膨張抵抗が大きくなってしまう。そのため、エンジンの始動性が低下する。また、そのエンジン始動時にモータで加えるべき負荷も大きくなり、燃費悪化に繋がる。そして、このような気筒内の密閉は、具体的には、吸気側及び排気側とも動弁機構がベース円作用時のときにエンジン停止することで起きるため、ベース円作用時にバルブを開かない限りは、解決することはできない。よって、該気筒内の密閉は、上記のとおり、ノーズ作用時におけるリフト量等は変更できてもベース円時におけるリフト量等は変更できない上記の可変動弁機構では、解決することができない。
【0006】
そして、このような始動時における気筒内の密閉は、4気筒のエンジンで特に問題となる。その理由は、次の通りである。すなわち、4気筒のエンジンでは、2気筒が下死点で停止し、他の2気筒が上死点で停止することで、4気筒全てが密閉されてしまうことがある。この場合、次のエンジン始動時には、下死点で停止している2気筒では、バルブから排気されることなく気筒内の空間が縮小することで圧縮抵抗が大きくなり、上死点で停止している他の2気筒では、バルブから吸気されることなく気筒内の空間が拡大することで膨張抵抗が大きくなる。よって、4気筒のエンジンでは、このように、4気筒全てが密閉されて、4気筒全てで圧縮抵抗や膨張抵抗が大きくなることがあるからである。
【0007】
また、更に、このような始動時における気筒内の密閉は、ハイブリッドエンジンや、アイドルストップ等を行うエンジンでも、特に問題となる。その理由は、次の通りである。すなわち、このようなエンジンでは、モータでエンジンを始動させる頻度が多いため、始動時に気筒内が密閉されれば、その都度、モータで多くの電流(電力)が消費されてしまうからである。
【0008】
そして、更に、このような気筒内の密閉は、エンジンの始動時以外でも、回避した方が好ましい時(例えば、低速回転時や減速回転時等)があることが考えられる。
【0009】
そこで、始動時を含む所定時には、ベース円でもバルブを開くことで、気筒内が密閉されないようにして、圧縮抵抗や膨張抵抗を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、本発明の内燃機関の動弁機構は、ベース円とノーズとを含むカムが設けられたカムシャフトを備え、カムでバルブを駆動する動弁機構において、カムシャフトを径方向に平行移動させる平行移動装置を備え、内燃機関をモータで始動させる始動時を含む所定時があり、前記所定時以外の通常時には、平行移動装置でカムシャフトを所定の通常位置に配することで、ベース円ではバルブを開かない通常状態にし、前記所定時には、平行移動装置でカムシャフトを所定の圧抜位置に配することで、ベース円でもバルブを開く圧抜状態にして圧縮抵抗又は膨張抵抗を抑えることを特徴とする。
【0011】
この動弁機構は、吸気用のバルブに対して設置しても、排気用のバルブに対して設置してもよい。よって、前記バルブは、吸気用のバルブであっても排気用のバルブであってもよい。また、この動弁機構は、吸気用又は排気用のいずれか一方のバルブに対して設置すれば効果が得られるが、より効果を高める目的で、両方のバルブに対してそれぞれ設置してもよい。
【0012】
前記始動時を含む所定時は、次のa,bの態様も含む
(a)内燃機関が低速で回転する低速回転時を含む態様。
(b)内燃機関の回転数を落とす減速回転時を含む態様。
【0013】
この動弁機構を設置する内燃機関は、特に限定されないが、効果をより発揮できる点で、ハイブリッドエンジンや、アイドルストップ等を行うエンジンであることが好ましい。そのようなエンジンでは、エンジンをモータで始動させる頻度が多いからである。
【0014】
圧抜状態では、バルブが常時開放されることが好ましいが、動弁機構がクリアランスを自動で埋めるラッシュアジャスタを備えている場合には、そのラッシュアジャスタのプランジャが圧抜状態のときに過度に沈み込むのを抑える目的で、次のような態様にしてもよい。すなわち、カムは、ベース円の外周面の周方向の一区間に径方向に凹む凹部を備え、圧抜状態では、該凹部が作用するタイミングにバルブが閉じる態様である。該タイミングに、ラッシュアジャスタのボディからプランジャが繰り出すようになるからである。そして、この場合でも、該凹部が作用してバルブが閉じるタイミングが、吸気側又は排気側の他方のバルブが開くタイミング内に納まるようにすれば、吸気用及び排気用のバルブが同時に閉じることはなく、よって、気筒内は常時開放されるようになる。
【0015】
前記平行移動は、特に限定されないが、カムシャフトの回転中心線を移動前の状態に対して平行に保ちながら、カムシャフトを径方向に曲線状(回動方向等)に移動させる場合や、該平行を保ちながらカムシャフトを径方向に直線状(上下方向等)に移動させる場合を例示する。
【0016】
平行移動装置は、特に限定されないが、次のa,bの態様を例示する。但し、カムシャフトをより安定に支持できる点でaの態様が好ましい。
(a)平行移動装置は、カムシャフトを回転可能に支持するとともに、該カムシャフトの回転中心線から平行に離間した位置に自身の回動中心線を備えた偏心部材と、該偏心部材を前記回動中心線を中心に回動させる回動装置とを含み構成された態様。
(b)平行移動装置は、カムシャフトを回転可能、かつ、上下方向に平行移動可能に支持したガイドと、該ガイドに沿ってカムシャフトを上下方向に平行移動させる昇降装置とを含み構成された態様。
【0017】
前記aの態様(回動)において、通常状態と圧抜状態との切換時に偏心部材を回動させる回動角度は、特に限定されないが、30°、60°、90°、120°、150°、180°等を例示する。すなわち、カムシャフトの平行移動量を大きくしたい場合は、該回動角度を180°にすればよい。その一方、カムシャフトの平行移動量をいくらか犠牲にしても、素早く切り換わるようにしたい場合には、その分だけ該回動角度を180°よりも小さくすればよい。
【0018】
前記aの態様(回動)において、回動装置は、特に限定されないが、次のa1,a2の態様を例示する。
(a1)回動装置は、偏心部材よりもその径方向側に設けられて、該偏心部材の回動中心線と平行に自身の回動中心線を備えたコントロールシャフトと、該コントロールシャフトに設けられて該コントロールシャフトと共に回動する第一ギアと、該第一ギアと噛み合う、偏心部材に設けられて該偏心部材と共に回動する第二ギアと、コントロールシャフトを回動させる軸動装置とを含み構成された態様。
(a2)回動装置は、偏心部材をその回動方向の一方に押圧し、及びその押圧を解除する押圧装置と、偏心部材をその回動方向の他方に付勢するリターンスプリングとを含み構成された態様。
【0019】
前記a1の態様において、軸動装置は、特に限定されないが、電磁力や油圧や空気圧等でコントロールシャフトを回動させる態様を例示する。また、前記a2の態様において、押圧装置は、特に限定されないが、電磁力や油圧や空気圧等で偏心部材を押圧する態様を例示する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、所定時には、ベース円でもバルブを開く圧抜状態にするので、気筒内が密閉されなくなり、圧縮抵抗や膨張抵抗が抑えられる。また、通常状態と圧抜状態との切換は、カムシャフトを径方向に平行移動させて行うので、カムシャフトを長さ方向に移動させて行う場合に比べて、熱膨張の影響が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1の動弁機構を示す斜視図である。
図2】実施例1の動弁機構を示す、(a)は平面図、(b)は側面断面図である。
図3】実施例1の動弁機構において、(a)は圧抜状態を示す側面断面図、(b)は通常状態を示す側面断面図である。
図4】実施例1の動弁機構において、内燃機関の回転角度とバルブのリフト量との関係を示すグラフである。
図5】実施例2の動弁機構を示す側面断面図である。
図6】実施例2の動弁機構において、内燃機関の回転角度とバルブのリフト量との関係を示すグラフである。
図7】実施例3の動弁機構において、(a)は圧抜状態を示す側面断面図、(b)は通常状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の内燃機関の動弁機構を図面を参照に説明する。なお、以下では、カムシャフト10の長さ方向の一方を左方といい、他方を右方という。また、ロッカアーム20の長さ方向の一方を前方といい、他方を後方という。
【実施例1】
【0023】
[全体構成]
図1図4に示す本実施例1の動弁機構1は、吸気用のバルブ8に対して設置されている。この動弁機構1は、ベース円15とノーズ16とを含むカム14が設けられたカムシャフト10を備え、カム14でバルブ8を駆動する。この動弁機構1は、カムシャフト10を径方向に平行移動させる、すなわち、カムシャフト10の回転中心線Xを移動前の状態に対して平行に保ちながら、カムシャフト10を径方向に移動させていく平行移動装置40を備えている。その平行移動の方向は、曲線方向であって、具体的には、後述する偏心部材41の回動中心線Xoを中心とした回動方向である。そして、所定時以外の通常時には、図2及び図3(b)に示すように、平行移動装置40でカムシャフト10を所定の通常位置p1に配することで、ベース円15ではバルブ8を開かない通常状態にする。その一方、前記所定時には、図3(a)に示すように、平行移動装置40でカムシャフト10を所定の圧抜位置p2に配することで、ベース円15でもバルブ8を開く圧抜状態にする。そして、その所定時は、内燃機関をモータで始動させる始動時と、その前後の時期とを含んでいる。
【0024】
具体的には、この動弁機構1は、次に示す、カムシャフト10と、ロッカアーム20と、ラッシュアジャスタ30と、平行移動装置40とを含み構成されている。そして、バルブ8に対しては、該バルブ8を閉じる方向に付勢するバルブスプリング9が取り付けられている。
【0025】
[カムシャフト10]
カムシャフト10は、左右方向に延びるシャフトであって、内燃機関の回転に従い回転する。そして、このカムシャフト10の各バルブ8,8・・に隣接する部位には、カム14,14・・が設けられている。そのカム14は、断面形状が円形のベース円15と、該ベース円15から突出したノーズ16とを含み構成されている。そして、このカムシャフト10に回転力を伝えるタイミングベルトを支持したスプロケットのいくつかは、カムシャフト10が平行移動した際にタイミングベルトの張力が増減しないように、カムシャフト10の平行移動に同調して所定の方向に移動するようになっている。
【0026】
[ロッカアーム20]
ロッカアーム20は、カム14とバルブ8との間に介装されたアームである。このロッカアーム20は、後端部がラッシュアジャスタ30のプランジャ32に揺動可能に支持されている。そして、長さ方向中間部にカム14に当接するローラ21を回転可能に支持している。そして、前端部がバルブ8に当接している。
【0027】
[ラッシュアジャスタ30]
ラッシュアジャスタ30は、カム14とロッカアーム20との間のクリアランスを自動で埋めるための装置である。このラッシュアジャスタ30は、上方に開口した有底筒状のボディ31と、下部がボディ31に挿入されて上端部でロッカアーム20の後端部を支持したプランジャ32とを含み構成されている。そして、カム14とロッカアーム20との間にクリアランスが発生すると、ボディ31からプランジャ32が繰り出すことでクリアランスを埋める。また、ロッカアーム20からプランジャ32に下方に負荷が加わるとボディ31にプランジャ32が退入する。
【0028】
詳しくは、プランジャ32の退入時には、ボディ31の内部にある高圧油室内の油がプランジャ32の内部にある低圧油室にリーク路からリークすることで流動抵抗が生じる。そのため、ボディ31にプランジャ32が徐々にゆっくりと退入する。また、プランジャ32の繰出し時には、ボディ31の内部にあるバネの復元力でボディ31からプランジャ32が繰り出される。このとき、プランジャ32内の低圧油室の油は、ボディ31内の高圧油室に、リーク路よりも広くて逆止弁のついた流路から流れ込む。そのため、プランジャ32の退入時ほどの流動抵抗は生じず、ボディ31からプランジャ32が速やかに繰り出す。
【0029】
[平行移動装置40]
平行移動装置40は、偏心部材41と回動装置45とを含み構成されている。その偏心部材41は、カムシャフト10を回転可能に支持するとともに、該カムシャフト10の回転中心線Xから平行に離間した位置に自身の回動中心線Xoを備えている。また、回動装置45は、偏心部材41を前記回動中心線Xoを中心に回動させるように構成されている。
【0030】
詳しくは、偏心部材41は断面形状が円形の部材であって、シリンダヘッドの立壁部7に貫設された断面形状が円形の第一貫通孔7aに挿通されることで、該立壁部7に回動可能に支持されている。そして、この偏心部材41には、断面形状が円形の支持孔42が貫設されている。その支持孔42の中心線は、偏心部材41の回動中心線Xoからその径方向に平行に離間している。その支持孔42に、カムシャフト10が挿通されることで、偏心部材41にカムシャフト10が相対回動可能に支持されている。
【0031】
また、回動装置45は、コントロールシャフト46と第一ギア47と第二ギア48と軸動装置とを含み構成されている。そのコントロールシャフト46は、偏心部材41よりもその径方向側(前方)に設けられて、該偏心部材41の回動中心線Xoと平行に自身の回動中心線Xiを備えている。そのコントロールシャフト46は、シリンダヘッドの立壁部7に貫設された断面形状が円形の第二貫通孔7bに挿通されることで、該立壁部7に回転可能に支持されている。また、第一ギア47は、コントロールシャフト46に設けられて該コントロールシャフト46と共に回動するように構成されている。また、第二ギア48は、偏心部材41に設けられて該偏心部材41と共に回動するように構成されており、第一ギア47と噛み合っている。また、軸動装置は、コントロールシャフト46を回動させるように構成されている。
【0032】
そして、通常状態から圧抜状態に切り換えるときには、図3(a)に示すように、軸動装置でコントロールシャフト46をその回動方向の一方(図では右回り)に回動させることで、第一ギア47及び第二ギア48を介して、偏心部材41をその回動方向の他方(図では左回り)に90°回動させる。これにより、カムシャフト10が通常位置p1から、それよりもロッカアーム20側(下側)の圧抜位置p2に平行移動して、ベース円15でもバルブ8を開くようになる。よって、このとき、カム14は、ベース円15でもノーズ16でもバルブを開くことで、図4の「圧抜状態」に示すように、バルブ8を常時開放するようになる。
【0033】
また、圧抜状態から通常状態に切り換えるときには、図3(b)に示すように、軸動装置でコントロールシャフト46をその回動方向の他方(図では左回り)に回動させることで、第一ギア47及び第二ギア48を介して、偏心部材41をその回動方向の一方(図では右回り)に90°回動させる。これにより、カムシャフト10が圧抜位置p2から通常位置p1に平行移動して、ベース円15ではバルブ8を開かないようになる。よって、このとき、カム14は、ベース円15ではバルブ8を開かず、ノーズ16ではバルブ8を開くことで、図4の「通常状態」に示すように、バルブ8を開閉するようになる。
【0034】
本実施例1によれば、次のA〜Cの効果を得ることができる。
[A]所定時には、ベース円15でもバルブ8を開く圧抜状態にするので、気筒内が密閉されなくなり、圧縮抵抗や膨張抵抗が抑えられる。そして、その所定時は、内燃機関の始動時を含むので、始動性が向上するとともに、始動時にモータで加えるべき負荷も減り、燃費向上に繋がる。
【0035】
[B]通常状態と圧抜状態との切換は、カムシャフト10を径方向に平行移動させて行うので、カムシャフト10を長さ方向に移動させて行う場合に比べて、熱膨張の影響が少ない。
【0036】
[C]平行移動装置40は、第二ギア48が設けられた偏心部材41と、第一ギア47が設けられたコントロールシャフト46と、軸動装置とを設けるだけで追加することができるので、本実施例1は、少ない部品変更で実施することができる。
【実施例2】
【0037】
図5,6に示す本実施例2の動弁機構2は、実施例1と比較して、次の点で相違し、その他の点で同様である。すなわち、カム14は、ベース円15の外周面の周方向の一区間に径方向に凹む凹部17を備えている。そして、圧抜状態では、該凹部17が作用するタイミングにバルブ8が閉じるように構成されている。そのバルブ8が閉じるタイミングは、図6の「圧抜状態」に示すように、排気側のバルブが開くタイミング内に納まっている。本実施例2によれば、実施例1に記載のA〜Cの効果に加え、次のDの効果を得ることができる。
【0038】
[D]圧抜状態が長く続いても、凹部17が作用するタイミングの度にラッシュアジャスタ30のボディ31からプランジャ32が繰り出されるので、ボディ31にプランジャ32が過度に深く沈み込む心配がない。また、この場合でも、凹部17が作用して吸気用のバルブ8が閉じるタイミングは、排気側のバルブが開くタイミング内に納まっているので、吸気用のバルブ8と排気用のバルブとが同時に閉じることはなく、よって、気筒は常時開放される。
【実施例3】
【0039】
図7に示す本実施例3の動弁機構3は、実施例1と比較して、カムシャフト10を平行移動させる方向が、曲線方向(回動方向)ではなく、直線方向(上下方向)である点で相違している。構造的には、実施例1と比較して、次の点で相違し、その他の点で同様である。すなわち、シリンダヘッドの立壁部7には、実施例1でいう第一貫通孔7a及び第二貫通孔7bは貫設されていない。そして、平行移動装置40は、シリンダヘッドの立壁部7に設けられてカムシャフト10を回転可能、かつ、上下方向に平行移動可能に支持した、上下方向に延びる長孔状のガイド孔44と、該ガイド孔44に沿ってカムシャフト10を上下方向に平行移動させる昇降装置とを含み構成されている。本実施例3によれば、実施例1に記載のA,Bの効果に加え、次のC'の効果を得ることができる。
【0040】
[C']平行移動装置40は、ガイド孔44と昇降装置とを設けるだけで追加できるので、本実施例3は、少ない部品変更で実施することができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもでき、例えば、次の変更例1,2のように変更してもよい。
[変更例1]動弁機構を、吸気用ではなく排気用のバルブに対して設置してもよい。
[変更例2]ロッカアームを可変機能を備えた揺動部材等に変更することで、動弁機構を可変動弁機構に変更してもよい。
【0042】
1 動弁機構(実施例1)
2 動弁機構(実施例3)
3 動弁機構(実施例4)
8 バルブ
10 カムシャフト
14 カム
15 ベース円
16 ノーズ
40 平行移動装置
41 偏心部材
45 回動装置
46 コントロールシャフト
47 第一ギア
48 第二ギア
X カムシャフトの回転中心線
Xo 偏心部材の回動中心線
Xi コントロールシャフトの回動中心線
p1 通常位置
p2 圧抜位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7