特許第6239447号(P6239447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239447蒸気タービンにおける低体積流量の不安定性の制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239447
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】蒸気タービンにおける低体積流量の不安定性の制御
(51)【国際特許分類】
   F01D 1/04 20060101AFI20171120BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F01D1/04
   F01D25/24 C
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-124549(P2014-124549)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-1228(P2015-1228A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2014年6月17日
【審判番号】不服2016-7462(P2016-7462/J1)
【審判請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】13172223.3
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ロバート ホーラー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー スティーヴン ライス
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 金澤 俊郎
【審判官】 松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−75655(JP,A)
【文献】 特開平9−88893(JP,A)
【文献】 実開平4−30203(JP,U)
【文献】 特開平4−308301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00 - 5/02
F01D 5/04 - 15/12
F01D 23/00 - 25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静翼支持体(1)によって囲まれた動翼(2)が回転する蒸気タービンの最終段の構成部(10)であって、複数の通路(20)が、最終段静翼の円周方向外側を通って、上流からの流体が前記通路(20)から前記動翼(2)の上流側に吹き付けられるように前記静翼支持体(1)に配置されており、かつ前記蒸気タービンが低体積流量条件で作動しているとき、前記動翼(2)における回転流の不安定性が減じられるように、前記動翼(2)の回転に対して−45度〜−75度の噴射角度(翼の基部から先端に向かう角度が90度、翼の先端から基部に向かう角度が−90度となる)で前記動翼(2)に入射する流れを形成するように配置されていることを特徴とする、構成部(10)。
【請求項2】
前記通路(20)は、前記動翼(2)の基部から先端に関して、前記最終段動翼(2)の高さの約80%の位置に向けて流体を吹き付けるように構成かつ配置されている、請求項1記載の構成部(10)。
【請求項3】
前記複数の通路(20)は、前記静翼支持体(1)において周方向に等間隔に配置されている、請求項1記載の構成部(10)。
【請求項4】
前記静翼支持体(1)において周方向に等間隔に配置されている前記複数の通路(20)の数が8である、請求項3記載の構成部(10)。
【請求項5】
前記静翼支持体(1)において周方向に等間隔に配置されている前記複数の通路(20)の数が12である、請求項3記載の構成部(10)。
【請求項6】
前記通路(20)は、前記静翼支持体(1)において、周方向に複数形成されている、請求項1記載の構成部(10)。
【請求項7】
前記噴射角度は、約−60度である、請求項1記載の構成部(10)。
【請求項8】
前記通路(20)から噴射される前記流れは、前記動翼(2)と前記静翼支持体(1)とを通って循環する主流流れの最大10%である、請求項1記載の構成部(10)。
【請求項9】
前記通路(20)から噴射される前記流れは、前記動翼(2)と前記静翼支持体(1)とを通って循環する前記主流流れの約10%である、請求項1記載の構成部(10)。
【請求項10】
前記通路(20)から吹き付けられる前記流体は蒸気である、請求項1記載の構成部(10)。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の最終段構成部(10)を備えた、蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンが低体積流量条件で動作しているとき、特に始動および低負荷条件時に、最終段動翼における回転流の不安定性を制御するための、蒸気タービンにおける最終段の構成部に関する。
【背景技術】
【0002】
失速は、流れを受ける断面に作用する負荷の急激な減少に基づいた周知の現象である。蒸気タービンでは、失速現象によって、動翼、特に最終段動翼において、回転流の不安定性が引き起こされる。
【0003】
蒸気タービンにおいて、始動および低負荷条件時(設計質量流量の最大約10%)に、流れ構造は、特に蒸気タービンの低圧段において非常に乱れており、この流れは、動翼において半径方向外向きの遠心力を受け。低負荷条件においては、大流量が最終段動翼に入射し、それによって、動翼表面からの流れの剥離と流れの不安定性とを引き起こすことがあるこのとき、流れ場には、大きな渦環構造も形成されている。この回転不安定性は、動翼の固有振動数と結びつき、望ましくない振動効果を発生させることがある。
【0004】
従来技術において周知であるいくつかの解決策では、最終段の低圧通路をなくし、多くは多孔板を備えている新設計の部分と置き換えることによって、この問題を最小限に抑えている。しかし、蒸気タービンの効率は著しく損なわれ、かつ非常にコストがかかる。さらに、回転流の不安定性が上流側に移動し、蒸気タービンの別の段が機能しなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、これらの問題を解消することを指向としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は特に始動および低負荷条件時に、蒸気タービンにおける流れの不安定性を制御するための構成部に関する。本発明の構成部は、蒸気タービンの低圧段の最終段静翼支持体に配置された複数の通路を備えている。これらの通路は、静翼支持体の所定の位置に配置されている。これらの通路から流体が動翼に吹き付けられ。通路の数およびその所定の位置は、吹き付けられた流体が動翼に向けられ、かつ励振を防ぐように形成されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの実施の形態によれば、通路は、各通路の周方向範囲を広げるために、周方向に形成されている。
【0008】
通路から動翼に吹き付けられた流体は、動翼に入射する射角度が、0度〜−90度の角度を形成するようになっている。軸に平行な方向は0度を向いている。軸方向/半径方向平面では、噴流は、外側流れ境界から半径方向外側及び軸方向前側から半径方向内側及び軸方向後側に向かう方向に向けられている。
【0009】
本発明の構成部によって、動翼振動をほぼ完全になくすことができる。
【0010】
本発明の上述した目的および多くの付随する利点は、添付の図面とともに以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解することで、より容易に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】蒸気タービンにおける低流量の特徴を示した図である。貫流の半径方向移動が、発生している再循環領域とともに示されている。
図2】通路が、設けられた各通路に関して、流れ範囲が大きくなるように周方向に形成されている、本発明の実施の形態の図である。
図3】タービンが低体積条件で作動しているときに蒸気タービンの最終段動翼における流れの不安定性を制御するための、本発明による構成部の模式図である。
図4a】部分速度および振動振幅と体積流量との関係への、旋回噴射角度の影響を示した図である。
図4b】部分速度および振動振幅と体積流量との関係への、旋回噴射角度の影響を示した図である。
図4c】部分速度および振動振幅と体積流量との関係への、旋回噴射角度の影響を示した図である。
図5】質量流量の吹き付けによる動的翼応力への影響を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、タービンが低体積条件で作動しているとき、特に始動および低負荷条件時に、蒸気タービンの最終段動翼2における流れの不安定性を制御するための構成部10に関する。構成部10は、複数の通路20が、蒸気タービンの最終段の静翼支持体1に配置されるように構成されており、これらの通路20は、静翼支持体1の周方向の所定の位置に配置されている。これらの通路20から流体が動翼2に吹き付けられる。通路20の数およびその所定の位置は、通路20から吹き付けられた流体が動翼2に向けられ、最終段動翼2において望ましくない振動効果を発生させる、最終段動翼2における回転安定性の問題を防ぐように規定されている。
【0013】
図1は、始動および低負荷条件時(設計質量流量の最大約10%)における、最終段の低圧の静翼支持体1における流れパターンを示しており、流れ構造が非常に乱れていることを示している。静翼支持体1における貫流は、図1に示されているとおり、波形であり、大きな渦環構造30を形成している。最終段の低圧の静翼支持体1は、実際にはラジアルポンプとして機能しており、正味エネルギがその段に投入されている。周知の従来技術によれば、1つの解決策は、排気ディフューザに噴射される水噴霧を使用して、排気ケーシングの静翼支持体壁部と最終段翼とを冷却することである。しかし、この解決策が、信頼性があるとは分かっていない。
【0014】
本発明の構成部10の目的は、蒸気タービンの始動および低負荷条件時に、最終段動翼2における回転流の不安定性をなくすように通路20を設計することである。
【0015】
最終段動翼2の上流側における通路20の位置は、噴射流が、最終段静翼支持体1を通って、翼の基部から先端まで測定した場合に最終段翼の高さの約80%の位置に向かい、動翼2の先端領域の上流側に通常形成される渦環30に吹き付けられるようになっている。
【0016】
図4a〜図4cの一連の図は、負の噴射角度の場合、共振がなく、より安定かつ一定の剥離流になるという驚くべき効果を示す一連の試験を示している。試験は、3分の1の縮尺模型の低圧蒸気タービンで、質量流量および復水器圧力の範囲にわたって実施した。試験時に、最終段翼の表面に配置したひずみゲージを使用して最終段翼応力を測定した。この測定の結果を、図4a〜図4cにおいて、振動振幅を示す線として示している。
【0017】
翼の振動を引き起こし得る回転事象の形成を検出するために、マイクロホンとして機能する追加の動的圧力センサを流れのなかに追加的に配置した。部分速度に転換することができる周波数を圧力信号から測定し、それを球体として図4a〜図4cに示した。次いで、圧力センサからの振幅を図4a〜図4cで使用して、各グラフにおける灰色の球体のサイズを規定した。
【0018】
次いで、図4aに示される+60度での噴射のケース、図4bに示される噴射なしのケースおよび図4cに示される−60度での噴射のケースのそれぞれに関して、部分速度および振動振幅と体積流量との関係のグラフを作成した。体積流量は、最終段を出る平均軸方向流速を翼根元部の速度で割ったものとして規定されている。
【0019】
それぞれのケースにおいて、測定された高い振動振幅事象は、高い動的圧力振幅およびその周波数散乱の損失と一致することが分かった。+60度における噴射は、図4aに示されるとおり、図4bに示される噴射なしのケースと比べると、振動振幅を悪化させているように思われる。−60度の噴射角度では、図4cに示されるように、翼振動をなくすことができた
【0020】
実施の形態によれば、通路20から噴射した好ましくは蒸気である流体は、動翼2に入射する噴射角度が、0度〜−90度の角度を形成するようになってる。本発明の別の実施の形態によれば、好ましい噴射角度の範囲は−45度〜−75度であり、最も好ましい噴射角度は−60度である。本発明のまた別の実施の形態によれば、通路20から噴射される流れは、主流流れの最大10%である。
【0021】
動翼2の数に関連した通路20の数は、回転事象が十分安定するように設定されている。所与の試験結果の場合、12個の通路が使用されている。本発明の別の実施の形態によれば、十分な安定化を得るために、異なる数の通路を使用してもよい。
【0022】
本発明の実施の形態では、通路は周方向で等間隔に配置されている。別の実施の形態では、通路は、性能の向上のためまたは実用上の配慮から、周方向に不均等な間隔で配置されている。
【0023】
噴射角度と同様に、動翼2に吹き付けられる流体の速度も重要である。
【0024】
そのため、以下のパラメータが、本発明の構成部10の性能に影響する。そのパラメータとは、通路20から吹き付けられる流体の軌道長さをできるだけ短く維持することと、噴射された流体の速度をできるだけ速く維持することと、静翼支持体1の通路20の周方向範囲を最大化することである。
【0025】
上述のパラメータを量るのは難しい。そのため、異なる最適噴射角が存在し、個別ケースごとに計算する必要がある。
【0026】
本発明の1つの実施の形態によれば、通路20は、図2に示されるように、静翼支持体1において周方向範囲を広げるために周方向に形成されている。
【0027】
本発明の構成部10によって、動翼2の振動と動翼2の重大な共振とが大幅に最小化される。さらに、回転流の不安定性を制御するために通路20を使用することによって、流れ不安定性の回転問題を制御する手段が形成され、かつ設計全負荷条件において効率の損失を引き起こさない。
【0028】
本発明は、好ましい実施の形態と関連して全体を記載したが、変形をその範囲内で導入してもよく、その範囲は、実施の形態によって限定されているとは見なされず、以下の請求項の内容によって限定されるということが明らかである。
【符号の説明】
【0029】
1 最終段静翼支持体
2 動翼
10 流れの不安定性を制御するための構成部
20 通路
30 静翼支持体における渦環
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5