(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水が流入する水流入口と、泡消火薬剤が流入する薬剤流入口と、前記水流入口から流入する水と前記薬剤流入口から流入する泡消火薬剤とを混合して泡水溶液を生成する混合部と、前記混合部が生成する泡水溶液が流出する流出口とを有する泡消火設備用の混合器であって、前記水流入口から前記混合部に流入する水の量を制御する水用調整弁部を有すると共に、前記薬剤流入口から前記混合部に流入する泡消火薬剤の量を制御する薬剤用調整弁部を有する比例弁と、前記薬剤流入口と連通する連通口を有すると共に、前記混合部と連通し、前記薬剤用調整弁部が挿通される開口を有するシリンダ部とを備え、前記比例弁が移動することにより、前記水流入口から前記混合部に流入する水の量に応じて前記薬剤流入口から前記シリンダ部を介して前記混合部に流入する泡消火薬剤の量を調整する混合比調整機構を更に有する泡消火設備用の混合器において、
前記シリンダ部の開口の閉鎖と開放とをする薬剤阻止弁を備え、監視時は前記薬剤阻止弁が前記シリンダ部の開口を閉鎖して、前記薬剤流入口から前記シリンダ部を介して泡消火薬剤が前記混合部に流入するのを阻止し、火災時は前記薬剤阻止弁が前記シリンダ部の開口を開放して、前記薬剤流入口から前記シリンダ部を介して泡消火薬剤が前記混合部に流入するのを許容する薬剤阻止機構を設けたことを特徴とする泡消火設備用の混合器。
水が流入する水流入口と、泡消火薬剤が流入する薬剤流入口と、前記水流入口から流入する水と前記薬剤流入口から流入する泡消火薬剤とを混合して泡水溶液を生成する混合部と、前記混合部が生成する泡水溶液が流出する流出口とを有する泡消火設備用の混合器において、
前記薬剤流入口から前記混合部に流入する泡消火薬剤の量を制御する薬剤用調整弁部を設け、
また、前記薬剤流入口と前記混合部との間の開口の閉鎖と開放とをする薬剤阻止弁を備え、監視時は前記薬剤阻止弁が前記薬剤流入口と前記混合部との間の開口を閉鎖して、前記薬剤流入口から泡消火薬剤が前記混合部に流入するのを阻止し、火災時は前記薬剤阻止弁が前記薬剤用調整弁部に押圧されて移動し、前記薬剤流入口と前記混合部との間の開口を開放して、前記薬剤流入口から泡消火薬剤が前記混合部に流入するのを許容する薬剤阻止機構を設けたことを特徴とする泡消火設備用の混合器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、泡消火設備において、混合器が設けられている給水側の配管は常時所定の圧力で充水状態が保たれているが、湿式と称される設備の場合、閉鎖型の放出ヘッドが設けられている放出側の配管も常時所定の圧力で充水状態が保たれている。そのような湿式の泡消火設備において、監視時、放出側の配管内の充水圧力が所定の充水圧力よりも高くなった際に(原因としては環境温度の上昇等がある。)、充水圧力を下げるために放出側の配管内に充水されている泡水溶液を排出することがある(例えば、前記特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、放出側の配管内に充水されている泡水溶液を排水して配管内の充水圧力を下げる場合に、その充水圧力を所定の圧力よりも下げてしまうことがある(例えば、環境温度が上昇したときに放出側の配管内に充水されている泡水溶液を排水して、その後、環境温度が低下したとき、配管内の充水圧力は所定の圧力よりも低くなる。)。そうなった場合でも、貯水槽からの加圧水が補助加圧装置等の加圧手段によって配管内に補充され、一旦下がった充水圧力を所定の圧力まで上げることができるようになっており、それにより配管内の充水圧力は所定の圧力に保たれるようになってはいるが、前記の通り、混合器が、水がその流入口から流入すれば、泡消火薬剤がその流入口から流入し、内部で混合されて泡水溶液となって流出口から流出する構造になっていることで、配管内の充水圧力を所定の圧力に保つために貯水槽から加圧水が補充される際には薬剤タンクから泡消火薬剤も併せて補充されるようになっている。
【0007】
このため、従来の混合器を備えた泡消火設備においては、監視時、配管内の充水圧力を所定の圧力に保つために貯水槽から加圧水が補充される際に薬剤タンクから泡消火薬剤も併せて補充されてしまい、有限である薬剤タンク内の泡消火薬剤を減らしてしまうという問題があった。そして、この問題は、水の量が変化しても水と泡消火薬剤とを一定の比率で混合することができるようになっているものにおいても同様に存在していた。尚、配管内の充水圧力が低下する現象は、前記のように配管内の泡水溶液を意図的に排水する場合だけでなく、配管からの泡水溶液の意図しない漏れ等によっても生じ得る。
【0008】
この発明は、前記の事情に鑑み、監視時に泡消火薬剤を減らすのを防ぐことができる泡消火設備用の混合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、水が流入する水流入口と、泡消火薬剤が流入する薬剤流入口と、前記水流入口から流入する水と前記薬剤流入口から流入する泡消火薬剤とを混合して泡水溶液を生成する混合部と、前記混合部が生成する泡水溶液が流出する流出口とを有する泡消火設備用の混合器
であって、前記水流入口から前記混合部に流入する水の量を制御する水用調整弁部を有すると共に、前記薬剤流入口から前記混合部に流入する泡消火薬剤の量を制御する薬剤用調整弁部を有する比例弁と、前記薬剤流入口と連通する連通口を有すると共に、前記混合部と連通し、前記薬剤用調整弁部が挿通される開口を有するシリンダ部とを備え、前記比例弁が移動することにより、前記水流入口から前記混合部に流入する水の量に応じて前記薬剤流入口から前記シリンダ部を介して前記混合部に流入する泡消火薬剤の量を調整する混合比調整機構を更に有する泡消火設備用の混合器において、
前記シリンダ部の開口の閉鎖と開放とをする薬剤阻止弁を備え、監視時は前記薬剤阻止弁が
前記シリンダ部の開口を閉鎖して、前記薬剤流入口から
前記シリンダ部を介して泡消火薬剤が前記混合部に流入するのを阻止し、火災時は前記薬剤阻止弁が
前記シリンダ部の開口を開放して、前記薬剤流入口から
前記シリンダ部を介して泡消火薬剤が前記混合部に流入するのを許容する薬剤阻止機構を設けたことを特徴とする泡消火設備用の混合器である。
【0010】
又、この発明は、水が流入する水流入口と、泡消火薬剤が流入する薬剤流入口と、前記水流入口から流入する水と前記薬剤流入口から流入する泡消火薬剤とを混合して泡水溶液を生成する混合部と、前記混合部が生成する泡水溶液が流出する流出口とを有する泡消火設備用の混合器において、
前記薬剤流入口から前記混合部に流入する泡消火薬剤の量を制御する薬剤用調整弁部を設け、また、前記薬剤流入口と前記混合部との間の開口の閉鎖と開放とをする薬剤阻止弁を備え、監視時は前記薬剤阻止弁が
前記薬剤流入口と前記混合部との間の開口を閉鎖して、前記薬剤流入口から泡消火薬剤が前記混合部に流入するのを阻止し、火災時は前記薬剤阻止弁が
前記薬剤用調整弁部に押圧されて移動し、前記薬剤流入口と前記混合部との間の開口を開放して、前記薬剤流入口から泡消火薬剤が前記混合部に流入するのを許容する薬剤阻止機構を設けたことを特徴とする泡消火設備用の混合器である。
【0012】
又、この発明は、前記薬剤阻止弁は、監視時、前記薬剤用調整弁部との間に所定の空間が形成されるように位置決めされていることを特徴とする泡消火設備用混合器である。
【0014】
又、この発明は、
前記薬剤流入口と連通する連通口を有すると共に、前記混合部と連通し、前記薬剤用調整弁部が挿通される開口を有するシリンダ部を設け、前記薬剤阻止弁は、その着座部が前記シリンダ部の周囲に設けられている弁座部に密着しつつ着座し、それにより前記シリンダ部の開口を密封するように閉鎖することを特徴とする泡消火設備用の混合器である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、火災時には混合部内に薬剤流入口から泡消火薬剤が流入するようにしつつ、監視時には薬剤阻止弁によって混合部内に薬剤流入口から泡消火薬剤が流入するのを阻止することができる。
【0018】
従って、この発明によれば、火災時に混合器を正常に機能するようにしつつ、監視時に泡消火薬剤を減らすのを防ぐことができる泡消火設備用の混合器を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の混合器の実施形態について、水と泡消火薬剤とを所定の比率で混合して泡水溶液を生成する混合器であって、水の流量が変化しても、水と泡消火薬剤との混合の比率を一定に保つように構成された所謂比例混合式の混合器に適用する場合を例に説明する。
【0021】
先ず、この発明の第1の実施形態の混合器1−1について
図1乃至
図5を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は混合器1−1の全体を示したものである(詳細は
図2を参照。)。同図に示したように、混合器1−1は、その本体2が全体としてエルボ状に形成され、その本体2に水が流入する水流入口3と、泡消火薬剤が流入する薬剤流入口4と、水流入口3から流入する水と薬剤流入口4から流入する泡消火薬剤とを混合して泡水溶液を生成する混合部5と、混合部5が生成する泡水溶液が流出する流出口6とを有している。
【0023】
又、混合器1−1は、前記の通り比例混合式の混合器であり、水流入口3と薬剤流入口4との間に設けられた混合比調整機構7であって、シャフト8の一方の端部に水流入口3から混合部5に流入する水の量を制御する水用調整弁部9を有すると共に、他方の端部に薬剤流入口4から混合部5に流入する泡消火薬剤の量を制御する薬剤用調整弁部10を有する比例弁11と、薬剤流入口4と連通する連通口12dを有すると共に、混合部5と連通し、薬剤用調整弁部10が挿通される開口12cを有するシリンダ部12とを備え、水流入口3から混合部5に流入する水の量に応じて比例弁11が進退移動し、それにより薬剤流入口4からシリンダ部12を介して混合部5に流入する泡消火薬剤の量を調整する混合比調整機構7を更に有している。
【0024】
そして、混合器1−1は、監視時に泡消火薬剤を減らすのを防ぐことできるように、シリンダ部12の内部に設けられた薬剤阻止機構15であって、シリンダ部12の開口12cの閉鎖と開放をする薬剤阻止弁16を備え、監視時は薬剤阻止弁16がシリンダ部12の開口12cを閉鎖して、薬剤流入口4からシリンダ部12を介して泡消火薬剤が混合部5に流入するのを阻止している。一方、火災時には、混合器1−1は、薬剤阻止弁16がシリンダ部12の開口12cを開放して、薬剤流入口4からシリンダ部12を介して泡消火薬剤が混合部5に流入するのを許容する薬剤阻止機構15も更に有している。
【0025】
ここで、本実施形態において、前記の混合比調整機構7は、比例弁11の薬剤用調整弁部10として、シリンダ部12の開口12cに挿通され、シリンダ部12の内部に進入する側の一方の端部が閉鎖され、他方の混合部5の内部に位置する側の端部が開放された筒状の弁体であって、側部に軸方向に延在するように形成された細長の略矩形の孔であるスリット10aを有する弁体によって構成されたものを用いている。
【0026】
この混合比調整機構7において、比例弁11は、水用調整弁部9を閉鎖方向に付勢する付勢部材(例えばコイルばね)13によって常に付勢されており、監視時は、水流入口3からの水の流入がなければ、付勢部材13の付勢力によって、水用調整弁部9を水流入口3を閉鎖する位置に維持すると共に、薬剤用調整弁部10をスリット10aがシリンダ部12の内部に臨まない位置に維持するようになっている。一方、火災時には、比例弁11は、水流入口3からの水の流入があると、付勢部材17の付勢力に抗して、水用調整弁部9を混合部5側の水流入口3を開放する位置(
図1における右側方向)に移動させると共に、薬剤用調整弁部10をシリンダ部12側のスリット10aがシリンダ部12の内部に臨む位置に移動させるようになっている。
【0027】
尚、火災時、比例弁11における薬剤用調整弁部10のスリット10aがシリンダ部12の内部に臨む位置にあると、薬剤流入口4からの泡消火薬剤は、シリンダ部12を介して薬剤用調整弁部10のスリット10aからその内部に流入することになるが、その泡消火薬剤は、薬剤調整弁部10内に流入した後、その開放端から比例弁11の付勢部材13を支持すると共に薬剤用調整弁部10を内部に収容する筒状の支持部材23内に流出し、更に支持部材23の開口部23aから混合部5内に流出するようになっている。つまり、本実施形態においては、火災時、薬剤流入口4から供給される泡消火薬剤は、シリンダ部12、薬剤用調整弁10及び支持部材23を順次介して混合部5内に流入するようになっている。そして、混合部5内で水流入口3から流入する水と混合し、泡水溶液となって本体2内の混合部5から流出口6を介して外部に流出するようになっている。
【0028】
又、本実施形態において、前記の薬剤阻止機構15は、薬剤阻止弁16として、シリンダ部12の開口12cを内方から薬剤用調整弁部10のシリンダ部12側の閉鎖端部側を覆いつつ閉鎖し、そして開放するものを用いており、又、形状が全体としてキャップ状(蓋状)をなし、その周壁の開放側の端部にシリンダ部12の開口12cの周囲に形成された弁座部12eに着座する着座部16aを有し、比例弁11の薬剤用調整弁部10の移動方向に沿う方向に進退移動してシリンダ部12の開口12cの開閉をするものを用いている。又、火災時、前記の薬剤阻止機構15は、比例弁11の薬剤用調整弁部10がシリンダ部12側に移動した際に、閉鎖側の端壁の内面に薬剤用調整弁部10の押圧部10bが当接する受圧部16bを有するものを用いている。それにより火災時には、薬剤阻止機構15は、薬剤用調整弁部10に押圧されて移動してシリンダ部12の開口12cを開放される。一方、監視時には、薬剤阻止機構15は、その受圧部16bと薬剤用調整弁部10の押圧部10bとの間に空間が形成されるように位置決めされ、その空間がある分、薬剤調整用弁部10がシリンダ部12側に移動したとしても、シリンダ部12の開口12cを閉鎖している状態を維持している。
【0029】
この薬剤阻止機構15において、薬剤阻止弁16は、それを閉鎖方向に付勢する付勢部材(例えばコイルばね)17によって常に付勢されている。そして、薬剤阻止弁16は、監視時は、付勢部材17の付勢力によって、シリンダ部12の開口12cを閉鎖する位置に維持され、火災時は、付勢力19の付勢力に抗して、薬剤用調整弁部10に押圧されて移動してシリンダ部12の開口12cを開放するものとなっている。
【0030】
図2は混合器1−1の薬剤阻止機構15を含む 部分の拡大図であり、監視時、泡消火設備の配管が所定の圧力で充水されている平常の状態にあり、水流入口3からの水の流入がない場合の状態を示したものである。
【0031】
図2に示したように、監視時、泡消火設備の配管が所定の圧力で充水されている平常の状態にあり、水流入口3からの水の流入がない場合、混合器調整機構7における比例弁11の薬剤用調整弁部10のスリット10aがシリンダ部12の内部に臨まない位置にあり、又、薬剤阻止機構15における薬剤阻止弁16がシリンダ部12の開口12cを閉鎖する位置にある。即ち、混合器調整機構7における比例弁11の薬剤用調整弁部10は、閉鎖側の端部側がシリンダ部12の開口12cに挿通されている状態にあるものの、スリット10aがシリンダ部12の内部までは至っておらず、その内部には臨んでいない位置にある。そして、薬剤阻止機構15における薬剤阻止弁16は、その着座部16aがシリンダ部12の開口12cの周囲にある弁座部12eに着座し、シリンダ部12の開口12cを閉鎖している位置にある。
【0032】
これにより、監視時、平常の状態にあれば、泡消火薬剤は、図面中に連続する矢印で示したように、薬剤流入口4からシリンダ部12の連通口12dを介してシリンダ部12内までは至るものの、シリンダ部12の開口12cを閉鎖している状態にある薬剤阻止弁16から先には至らないようになっている。
【0033】
尚、平常の監視時においては、前記の状態が、薬剤用調整弁部10については付勢部材13によって維持され、薬剤阻止弁16については付勢部材17によって維持されるが、薬剤阻止弁16の受圧部16bと薬剤用調整弁部10の押圧部10bとの間に形成される空間の間隔もそのまま維持される。
【0034】
図3も同じ部分の拡大図であり、監視時の状態を示したものであるが、
図3は、監視時、例えば泡消火設備の補助加圧装置等の加圧水の補充手段が起動した場合等、加圧水の補給があり、それによる水の流入があった場合の状態を示したものである。
【0035】
図3に示したように、監視時、加圧水の補給があり、それによる水の流入が水流入口3からあると、比例弁11の薬剤用調整弁部10はシリンダ部12側に移動して、僅かではあるもののスリット10aがシリンダ部12の内部に臨む位置にある状態となるが、薬剤用調整弁部10の押圧部10bと薬剤阻止弁16の受圧部16bとの間の空間が間隔は狭くなるものの当接はしておらず、空間としては維持される。つまり、薬剤阻止弁10の押圧部10bが薬剤阻止弁16の受圧部16bを開放側に押圧して移動させない限り、薬剤阻止弁10はシリンダ部12の開口を閉鎖している状態が維持されることとなる。
【0036】
これにより、監視時、加圧水の補給があり、それによる水の流入が水流入口3からあった場合でも、
図2に示した平常の監視時と同様、薬剤流入口4から流入する泡消火薬剤は、図面中に連続する矢印で示したように、薬剤流入口4からシリンダ部12の連通口12dを介してシリンダ部12内までは至るものの、シリンダ部12の開口12cを閉鎖している状態にある薬剤阻止弁16から先には至らないようになっている。
【0037】
図4も同じ部分の拡大図であるが、
図4は、火災時、泡消火設備のメインの加圧送水装置が起動して、低流量の水の供給があり、それによる水の流入があった場合の状態を示したものである。
【0038】
図4に示したように、火災時、低流量の水の流入が水流入口3からあると、その低流量の分、比例弁11の薬剤用調整弁部10はシリンダ部12側に移動することによって、スリット10aがシリンダ部12の内部に臨む位置にある状態となると共に、薬剤用調整弁部10の押圧部10bが薬剤阻止弁16の受圧部16bに当接しつつ薬剤阻止弁16を押圧して開放側に移動させ、薬剤阻止弁16がシリンダ部12の開口12cを開放する位置にある状態となる。
【0039】
これにより、火災時、低流量の水の流入が水流入口からあれば、薬剤流入口4に供給される泡消火薬剤は、図面中に連続する矢印で示したように、薬剤流入口4からシリンダ部12の連通口12dを介してシリンダ部12内まで至り、シリンダ部12の開口12cを開放している状態にある薬剤阻止弁16を越えて、シリンダ部12の内部に薬剤用調整弁部10のスリット10aからそれにより量を制限されつつ、薬剤用調整弁部10の内部に至り、そして混合部5内に至るようになっている。
【0040】
図5も同じ部分の拡大図であり、火災時の状態を示したものであるが、
図5は、火災時、泡消火設備のメインの加圧送水装置が起動して、大流量の水の供給があり、それによる水の流入があった場合の状態を示したものである。
【0041】
図5に示したように、火災時、大流量の水の流入が水流入口3からあると、その大流量の分、比例弁11の薬剤用調整弁部10はシリンダ部12側に移動することによって、スリット10aがシリンダ部12の内部に臨む位置にある状態となると共に、薬剤用調整弁部10の押圧部10bが薬剤阻止弁16の受圧部16bに当接しつつ薬剤阻止弁16を押圧して開放側に移動させ、薬剤阻止弁16がシリンダ部12の開口12cを開放する位置にある状態となる。尚、
図5に示した状態においては、水流入口3から流入する水の量が大流量である分、それが低流量である
図4に示したものに比べて、比例弁11の薬剤用調整弁部10シリンダ部12側に大きく移動しており、スリット10aをシリンダ部12の内部に大きく臨ませている。
【0042】
これにより、火災時、大流量の水の流入が水流入口からあれば、薬剤流入口4に供給される泡消火薬剤は、図面中に連続する矢印で示したように、
図4で示したのと同様に混合部5内まで至るようになっているが、水流入口3から流入する水の量が大流量である分、薬剤用調整弁部10のスリット10aを介して
図4で示したものに比べて多い量のものが混合部5に至るようになっている。
【0043】
以上説明したように、この発明の混合器1−1は、監視時は薬剤阻止弁16がシリンダ部12の開口12cを閉鎖して、薬剤流入口4からシリンダ部12を介して泡消火薬剤が混合部5に流入するのを阻止し、火災時は薬剤阻止弁16がシリンダ部12の開口12cを開放して、薬剤流入口4からシリンダ部12を介して泡消火薬剤が混合部5に流入するのを許容する薬剤阻止機構15を備えている。これにより、火災時には混合部5内に薬剤流入口4から泡消火薬剤が流入するようにしつつ、監視時には薬剤阻止弁16によって混合部5内に薬剤流入口4から泡消火薬剤が流入するのを阻止することができるものとなっており、火災時に混合器として必要な機能を確保しつつ、監視時に泡消火薬剤を減らすのを防ぐことができるものとなっている。
【0044】
本実施形態の混合器1−1について、更に詳細に説明する。
【0045】
本実施形態において、シリンダ12部は、エルボ状の本体2の角部近傍の水流入口3に対向する側壁より比例弁11の軸方向に沿って外方に延出するように設けられた筒状の延出部20(
図1及び
図2参照)の内部に設けられており、その軸が比例弁11の軸と同一軸上に位置するように設けられている。
【0046】
又、本実施形態において、シリンダ部12は、開口20aに螺合により固定される支持部材21によって支持されて延出部20内に組み付けられるものとなっているが、支持部材21に対してはそれを貫通する貫通ネジ部12fによって螺合されるものとなっており、貫通ネジ部12fを回すことにより延出部20内で軸方向に進退移動可能に設けられている。これにより、シリンダ部12は比例弁11の薬剤用調整弁10との軸方向の位置関係を調整することができるようになっており、薬剤用調整弁部10の押圧部10bと薬剤阻止弁16の受圧部16bとの間の間隔の長さや、薬剤用調整弁部10のスリット10aがシリンダ部12の内部に臨む長さを調整することができるようになっている。尚、22は、支持部材21を貫通して外部に露出する貫通ネジ部12fの頭部を覆うためのキャップである。
【0047】
又、本実施形態において、シリンダ部12は、内側シリンダ部12aと外側シリンダ部12bとの2ピースからなり、内側シリンダ部12aに開口12cが設けられ、外側シリンダ部12bに連通口12dと貫通ネジ部12fとが設けられている。シリンダ部12が2ピースからなるものとなっていることで、内部への薬剤阻止弁16等の薬剤阻止機構15の組み付けが容易にできるようになっている。
【0048】
又、本実施形態において、シリンダ部12は、薬剤阻止弁16等の薬剤阻止機構15を内部に組み付けて組品とし、その状態で延出部20の開口20aから内部に挿入して支持部材21によって螺合により組み付けることができるようになっている。これによりシリンダ部12に係る部分の組み立てが容易にできるようになっており、逆にその分解も容易にできるようになっている。
【0049】
又、本実施形態において、薬剤阻止弁16は、閉鎖側の端壁に前方に突出する突状部16cが設けられており、その突出部16cの側壁に沿うように付勢部材17が設けられている。又、薬剤用調整弁部10の閉鎖側端部にはその取り付け用のねじが設けられているが、薬剤阻止弁16の突出部16cの内部には空間が形成されており、薬剤用調整弁10の閉鎖型端部にねじが設けられていても、
図4又は
図5に示したように薬剤用調整弁10の押圧部10bを薬剤阻止弁16の受圧部16bに当接させることができるようになっている。
【0050】
次に、この発明の第2の実施形態の混合器1−2について
図6を参照しつつ説明する。
【0051】
第2の実施形態の混合器1−2は、薬剤用調整弁10の閉鎖側端部に前方に突出するガイドロッド10cを更に設けると共に、薬剤阻止弁16の突出部16cの内部にガイド孔16dを更に設けたものであり、その他の構成は第1の実施形態の混合器1−1と同じである。
【0052】
具体的には、本実施形態において、薬剤用調整弁10のガイドロッド10cは、薬剤用調整弁10の移動に伴って薬剤阻止弁16のガイド孔16d内を摺動するようになっており、薬剤用調整弁10が移動して薬剤阻止弁16を開閉させる際に薬剤阻止弁16の軸がずれるのを防ぐことができるようになっている。
【0053】
次に、この発明の第3の実施形態の混合器1−3について
図7を参照しつつ説明する。
【0054】
第3の実施形態の混合器1−3は、比例弁11における薬剤用調整弁部10に代えて、円錐形状の弁体によって構成された薬剤用調整弁部14を設けたものである。その他の構成は第1の実施形態の混合器1−1と同じである。
【0055】
本実施形態においても、監視時における薬剤阻止機構15の薬剤阻止弁16の機能を第1の実施形態の混合器1−1と同様のものとしつつ、薬剤用調整弁部14の例えばシリンダ部12側の端部を薬剤阻止弁16の受圧部16bを押圧する押圧部14aとすることにより、火災時における機能も第1の実施形態の混合器1−1と同様のものとすることができる。
【0056】
尚、本実施形態の円錐形状の弁体によって構成された薬剤調整用弁部14は、流入する水の量に応じて、シリンダ部12の開口12c内を円錐形状の弁体が進退移動することでシリンダ部12の開口12cとの間に形成される環状の間隙の面積が変化し、それにより混合部5内に流入する泡消火薬剤の量を調整することができるものである。
【0057】
最後に、この発明の混合器が用いられる泡消火設備のシステム構成の一例について
図8を参照しつつ簡単に説明する。尚、
図8に示した泡消火設備100は閉鎖型の放出ヘッド101が設けられている流水検知装置102の二次側の放出側配管103の内部を監視時から充水状態にしておく所謂湿式の設備である。
【0058】
泡消火設備100は、閉鎖型の放出ヘッド101が設けられている二次側配管103の基端の流水検知装置102の一次側配管104に基端側より貯水槽105と、貯水槽105内の水を加圧して送水するポンプ106と、ポンプ104の起動用の水圧開閉装置107と、一次側配管104及び二次側配管103内の常時の充水圧力が所定の圧力よりも下がった際に起動してそれら配管内の充水圧力を加圧する補助加圧ポンプ108と、泡消火薬剤が貯蔵される薬剤タンク109と、そして貯水槽105からの水と薬剤タンク109からの泡消火薬剤とを混合して泡水溶液を生成する混合器であって、この発明の混合器を適用することができる混合器110等とを備えている。尚、この泡消火設備100は、電気系統として、ポンプ106を制御するためのポンプ制御盤111や、流水検知装置102からの流水信号を受信し、ポンプ制御盤111にポンプ106の起動信号を送信する火災受信機112や、警報ベル113等を更に備えている。
【0059】
湿式の泡消火設備100において、監視時、二次側配管103内は所定の圧力で充水状態に保たれており、二次側配管103内の充水圧力が所定の圧力よりも下がると、補助加圧ポンプ108が起動して、一次側配管104内が加圧され、混合器110に加圧水が補給されることになる。しかしながら、混合器110としてこの発明の混合器を用いていれば、混合器110に加圧水が補給されたとしても、その薬剤阻止機構の薬剤阻止弁により混合部内に泡消火薬剤が流入するのを阻止することができる。
【0060】
一方、泡消火設備100において、火災時、メインの加圧送水装置であるポンプ106が起動した場合、混合器110としてこの発明の混合器を用いていても、薬剤阻止機構の薬剤阻止弁は火災時には混合部内に泡消火薬剤が流入するのを許容し、正常に混合部内に泡消火薬剤を流入させることができる。
【0061】
つまり、泡消火設備100において、混合器110としてこの発明の混合器を用いていれば、火災時に混合器110が正常に機能するようにしつつ、監視時に有限である薬剤タンク109内の泡消火薬剤が減るのを防ぐことができる。
【0062】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、この発明の混合器は、比例混合式ではない混合器にも適用が可能である。具体例の図示は省略するが、上記の実施形態の構成部分を引用して説明すれば、比例弁11に係る構成部分のないものとしても、付勢部材17等の付勢力を調整することにより、薬剤流入口4と混合部5との間の開口12cの閉鎖と開放とをする薬剤阻止弁16を補助加圧装置等による加圧水の流入による流水圧力では開放せず、メインの加圧送水装置による加圧水の流入による流水圧力では開放するようにすれば(電動で開放するものとしてもよい。)、監視時は薬剤阻止弁16により薬剤流入口4と混合部5との間の開口12cを閉鎖して、薬剤流入口4から泡消火薬剤が混合部5に流入するのを阻止させ、火災時はメインの加圧送水装置による加圧水の流入により薬剤流入口4と混合部5との間の開口12cを開放し、薬剤流入口4から泡消火薬剤が混合部5に流入するのを許容させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1−1:混合器(第1の実施形態) 1−2:混合器(第2の実施形態)
1−3:混合器(第3の実施形態) 2:本体 3:水流入口
4:薬剤流入口 5:混合部 6:流出口 7:混合比調整機構
8:シャフト 9:水用調整弁部 10:薬剤用調整弁部 10a:スリット
10b:押圧部 10c:ガイドロッド(第2の実施形態) 11:比例弁
12:シリンダ部 12a:内側シリンダ部 12b:外側シリンダ部
12c:開口 12d:連通口 12e:弁座部 12f:貫通ネジ部
13:付勢部材(比例弁用) 14:薬剤用調整弁部(第3の実施形態)
14a:押圧部(第3の実施形態) 15:薬剤阻止機構 16:薬剤阻止弁
16a:着座部 16b:受圧部 16c:突出部
16d:ガイド孔(第2の実施形態) 17:付勢部材(薬剤阻止弁用)
20:延出部 20a:開口 21:支持部材 22:キャップ
23:支持部材 23a:開口 100:泡消火設備 101:放出ヘッド
102:流水検知装置
103:二次側配管 104:一次側配管 105:貯水槽 106:ポンプ
107:水圧開閉装置 108:補助加圧ポンプ 109:薬剤タンク
110:混合器 111:ポンプ制御盤 112:火災受信機
113:警報ベル