特許第6239455号(P6239455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239455
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】PC鋼より線の巻き取り装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20171120BHJP
   E01D 4/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   E01D21/00 Z
   E01D4/00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-147450(P2014-147450)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-23449(P2016-23449A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】592182573
【氏名又は名称】オックスジャッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100177895
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 一範
(72)【発明者】
【氏名】金子 隆
(72)【発明者】
【氏名】影山 信和
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−127396(JP,A)
【文献】 特開2001−226913(JP,A)
【文献】 特開平07−137943(JP,A)
【文献】 米国特許第04471651(US,A)
【文献】 米国特許第05810277(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 4/00−21/00
B65H 49/00−49/38
B65H 75/34−75/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャッキ式吊り上げ機械のジャッキ先端から押し出されるPC鋼より線をリールに巻き取るPC鋼より線の巻き取り装置において、
前記リールは、略円筒形で、内周面をPC鋼より線収納部となし、一側面にPC鋼より線を案内する開口部を形成し、内部にPC鋼より線固着部を設け、このリールを受け台に回転自在に設置し、
前記ジャッキ式吊り上げ機械によるPC鋼より線が押し出される前記ジャッキ先端位置と前記リールとの間に、このPC鋼より線を移送する補助駆動装置を設け、前記リールに、PC鋼より線の押し出し量に対応して回転するモータを設け、
前記ジャッキ式吊り上げ機械のジャッキ先端から押し出されるPC鋼より線を、前記開口部を経て前記リールの内部に誘導して前記PC鋼より線固着部に固着し、PC鋼より線の太くて堅い性質を利用してジャッキ先端から押し出される分だけ前記PC鋼より線収納部に内巻きに収納することを特徴とするPC鋼より線の巻き取り装置。
【請求項2】
リールは、中心から放射状に棒材を組み込み、この放射状の棒材の先端部をU字形に折曲してPC鋼より線収納部としたことを特徴とする請求項1記載のPC鋼より線の巻き取り装置。
【請求項3】
ジャッキ式吊り上げ機械によるPC鋼より線が押し出されるジャッキ先端位置に臨ませて、このPC鋼より線を挿通して湾曲する湾曲用ガイド管を設け、この湾曲用ガイド管の他端部に、PC鋼より線を、開口部を経てリールの内部に誘導するための誘導用ガイド管を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のPC鋼より線の巻き取り装置。
【請求項4】
レールにジャッキ式吊り上げ機械を横引き機として固定し、前記レールの上に滑り装置を介して重量物を載せ、この重量物に連結したPC鋼より線を前記ジャッキ式吊り上げ機械で横移送することを特徴とする請求項1、2又は3記載のPC鋼より線の巻き取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁等の重量物をジャッキ式吊り上げ機械で吊り上げたり、移送したりするための太くて堅いPC鋼より線を迅速に、かつ、安全に巻き取ることのできるPC鋼より線の巻き取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図14に示すように、従来から橋桁12は、橋脚10の上端に架け渡したメインケーブル11に一定間隔でハンガー14を吊り下げ、このハンガー14に桁ブロック(重量物)13を順次継ぎ足して構築する方法が知られている(特許文献1)。この橋桁12は、メインケーブル11に据え付けた2台のワイヤ巻き上げ機15からそれぞれワイヤ18を繰り出して台船17で運ばれてきた桁ブロック13を吊り上げ、ハンガー14の下端部に取り付けつつ既設の橋桁12に連結して構築する。桁ブロック13の連結が終了すると、台船17で再度桁ブロック13を運び、かつ、メインケーブル11の上のワイヤ巻き上げ機15を移動してワイヤ18を再度繰り出して同様の作業を順次繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−54448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような橋桁12の構築において、桁ブロック13の連結が終了すると、台船17は、桁ブロック13を建造する製作ヤードまで引き返し、台船17で再びワイヤ巻き上げ機15の下に運搬してくる。次の桁ブロック13の連結のためにワイヤ巻き上げ機15をメインケーブル11上で次の吊り上げ位置まで移動する。このとき、台船17の停止する位置が一般の船舶の水上航路21である場合には、水上航路21の水上交通に支障をきたすので、できるだけ早くワイヤ18を台船17の位置まで繰り出して桁ブロック13を吊り上げることが要求される。
上記巻き上げ機15には、一般に、歯車などを利用して回転させるドラムにワイヤロープなどを巻きつけて物の上げ下げや運搬などを行う機械であって、別名ウインチと呼ばれるものが使用される。
ウインチは、ドラムに巻かれたワイヤを電動モータ等を動力に歯車でドラムを減速回転させ、ワイヤを巻き取りまたは繰り出し、その先端に接続された重量物を移動させる汎用機械である。通常、能力5t〜10tのものが使用されるので、前述のような橋桁ブロック等100t超が対象となれば、台数を増やし、複数の動滑車を用いた煩雑な段取り作業となるばかりか余分な作業スペースも必要となり非効率であった。
【0005】
そこで、ダブルツイン(登録商標)ジャッキなどのジャッキ式吊り上げ機械が用いられている。ジャッキ式吊り上げ機械は、種類も豊富で、PC鋼より線等の吊り材を介してジャッキの伸縮により重量物を直引きするものであるから、小型でありながら大きな重量物の移送が可能であり、現場条件にもよるがウインチより有効である場合が多い。
ところが、ジャッキ式吊り上げ機械において、吊り材にPC鋼より線を使用する場合、吊り上げ移送作業に伴いジャッキ先端から出てくる無張力だが太くて堅いPC鋼より線を効率よく整理・整頓する方法がなく、場合によっては、作業毎に切断廃棄していた。
【0006】
本発明は、ジャッキ式吊り上げ機械で作業中にジャッキ先端から押し出される無張力のPC鋼より線の太くて堅いその性質を利用してリールに巻き取ることのできる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のPC鋼より線の巻き取り装置は、ジャッキ式吊り上げ機械のジャッキ先端から押し出されるPC鋼より線をリールに巻き取るPC鋼より線の巻き取り装置において、前記リールは、略円筒形で、内周面をPC鋼より線収納部となし、一側面にPC鋼より線を案内する開口部を形成し、内部にPC鋼より線固着部を設け、このリールを受け台に回転自在に設置し、前記ジャッキ式吊り上げ機械のジャッキ先端から押し出されるPC鋼より線を、前記開口部を経て前記リールの内部に誘導して前記PC鋼より線固着部に固着し、PC鋼より線の太くて堅い性質を利用してジャッキ先端から押し出される分だけ前記PC鋼より線収納部に巻きつくようにしたものである。
【0008】
リールは、中心から放射状に棒材を組み込み、この放射状の棒材の先端部をU字形に折曲してPC鋼より線収納部として軽量化を図っている。
【0009】
ジャッキ式吊り上げ機械によるPC鋼より線が押し出されるジャッキ先端位置に臨ませて、このPC鋼より線を挿通して湾曲する湾曲用ガイド管を設け、この湾曲用ガイド管の他端部に、PC鋼より線を開口部を経てリールの内部に誘導するための誘導用ガイド管を設けて太くて堅いPC鋼より線を円滑に巻きつくように誘導している。
ジャッキ式吊り上げ機械は、ダブルツイン(登録商標)ジャッキなどの主としてセンターホールジャッキからなり、移送するためのワイヤは、PC鋼より線からなるものが主流である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ジャッキ式吊り上げ機械のジャッキ先端から押し出されるPC鋼より線をリールに巻き取るPC鋼より線の巻き取り装置において、前記リールは、略円筒形で、内周面をPC鋼より線収納部となし、一側面にPC鋼より線を案内する開口部を形成し、内部にPC鋼より線固着部を設け、このリールを受け台に回転自在に設置し、前記ジャッキ式吊り上げ機械によるPC鋼より線が押し出される前記ジャッキ先端位置と前記リールとの間に、このPC鋼より線を移送する補助駆動装置を設け、前記リールに、PC鋼より線の押し出し量に対応して回転するモータを設け、前記ジャッキ式吊り上げ機械のジャッキ先端から押し出されるPC鋼より線を、前記開口部を経て前記リールの内部に誘導して前記PC鋼より線固着部に固着し、PC鋼より線の太くて堅い性質を利用してジャッキ先端から押し出される分だけ前記PC鋼より線収納部に内巻きに収納したので、吊り上げや移送に使用したPC鋼より線は、切断する必要がなく、PC鋼より線を有効に使用することができるだけでなく、引き出されたPC鋼より線が現場作業の邪魔にならない。また、巻き上げのための特別な装置を必要とせず、安価に提供でき、さらに、太くて堅いPC鋼より線でも巻き上げと繰り出しが迅速に、かつ、安全に行うことができる。ジャッキ式吊り上げ機械は、ウインチ式に比較して同一重量物を吊り上げや移送をするのにほぼ半数の台数で処理でき、また、PC鋼より線の長さは、約10分の1で済み、さらに、ジャッキ式は、PC鋼より線の巻き取り装置を加えても、ウインチを用いた装置に比較して数分の一のスペースで据え付けできる。また、PC鋼より線を移送する補助駆動装置を設けたことにより、ジャッキ式吊り上げ機械とリールとの間が離れていても押し出されたPC鋼より線が弛んで他の作業の邪魔をするような事がなく、整然と巻き取り処理される。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、リールは、中心から放射状に棒材を組み込み、この放射状の棒材の先端部をU字形に折曲してPC鋼より線収納部としたので、軽量なリールとすることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、ジャッキ式吊り上げ機械によるPC鋼より線が押し出されるジャッキ先端位置に臨ませて、このPC鋼より線を挿通して湾曲する湾曲用ガイド管を設け、この湾曲用ガイド管の他端部に、PC鋼より線を開口部を経てリールの内部に誘導するための誘導用ガイド管を設けたので、ジャッキ式吊り上げ機械から押し出されたPC鋼より線をまず湾曲にし、次いで、リールまでを円滑に誘導して巻き取ることができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、レールにジャッキ式吊り上げ機械を横引き機として固定し、前記レールの上に滑り装置を介して重量物を載せ、この重量物に連結したPC鋼より線を前記ジャッキ式吊り上げ機械で横移送するようにしたので、このような構成においても、このジャッキ式吊り上げ機械から押し出されたPC鋼より線がリールに内巻きに収納することができる。特に、ジャッキ式吊り上げ機械とリールの距離が長いときには、補助駆動装置を介在してPC鋼より線をリールに送り込むことによりリールへの巻き取りが円滑になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるPC鋼より線の巻き取り装置を実施するためのジャッキ式吊り上げ機械22とリール23をアーチ部材20の上に据え付けた状態の側面図である。
図2図1におけるジャッキ式吊り上げ機械22とリール23をアーチ橋16に据え付けた平面図である。
図3図2の正面図である。
図4図1におけるジャッキ式吊り上げ機械22とリール23の側面図である。
図5図1及び図2におけるジャッキ式吊り上げ機械22の一部を切り欠いた側面図である。
図6図4におけるジャッキ式吊り上げ機械22の一部を切り欠いた正面図と油圧回路及び電気回路のブロック図である。
図7】(a)は、ブレーキ装置32の一部切り欠いた斜視図、(b)は、ブレーキ装置32におけるブレーキ盤40の斜視図である。
図8】本発明によるリール23を示すもので、(a)は、正面図、(b)は、側面図である。
図9】本発明によるリール23のPC鋼より線固着部57の拡大図である。
図10】本発明におけるリール23のガイド管33の組立図である。
図11】ジャッキ式吊り上げ機械22とリール23を用いて重量物13として屋根鉄骨を吊り上げる第2実施例の正面図である。
図12】ジャッキ式吊り上げ機械兼移送装置22とリール23を用いて重量物13を横移送する第3実施例の正面図である。
図13】本発明によるリール23の他の実施例を示すもので、(a)は、正面図、(b)は、側面図である。
図14】従来の橋桁12の構築状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ジャッキ式吊り上げ機械のジャッキ先端から押し出されるPC鋼より線26をリール23に巻き取るPC鋼より線の巻き取り装置において、前記リール23は、略円筒形で、内周面をPC鋼より線収納部60となし、一側面にPC鋼より線26を案内する開口部61を形成し、内部にPC鋼より線固着部57を設け、このリール23を受け台52に回転自在に設置し、前記ジャッキ式吊り上げ機械22のジャッキ先端から押し出されるPC鋼より線26を、前記開口部61を経て前記リール23の内部に誘導して前記PC鋼より線固着部57に固着し、PC鋼より線26の太くて堅い性質を利用してジャッキ先端から押し出される分だけ前記PC鋼より線収納部60に内巻きに収納する。
【0016】
リール23は、中心から放射状に棒材を組み込み、この放射状の棒材の先端部をU字形に折曲してPC鋼より線収納部60とする。
ジャッキ式吊り上げ機械22によるPC鋼より線26が押し出されるジャッキ先端位置に臨ませて、このPC鋼より線26を挿通して湾曲する湾曲用ガイド管33aを設け、この湾曲用ガイド管33aの他端部に、PC鋼より線26を開口部61を経てリール23の内部に誘導するための誘導用ガイド管33bを設ける。
【0017】
ジャッキ式吊り上げ機械22とリール23との間が離れているときは、ジャッキ式吊り上げ機械22によるPC鋼より線26が押し出される位置とリール23との間に、このPC鋼より線26を移送する補助駆動装置66を設け、前記リール23に、PC鋼より線26が押し出される量に対応して回転するモータ69を設ける。
ジャッキ式吊り上げ機械22は、ダブルツイン(登録商標)ジャッキなどの主としてセンターホールジャッキからなり、移送するためのワイヤは、PC鋼より線26からなるものが主流である。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1を図面に基づき説明する。
本発明の実施例1は、PC鋼より線の巻き取り装置を図1図2及び図3に示すアーチ橋16に応用した例に基づき説明する。
これらの図において、アーチ橋16のアーチ部材20には、所定間隔でハンガー14が吊り下げられ、両岸から桁ブロック(重量物)13を順次連結して橋桁12を構築するものとする。前記アーチ部材20は、図1及び図2に示すように、中央部でやや狭くなるような間隔で左右2本設けられ、これらの左右のアーチ部材20の上には、所定間隔で架台24が固着され、この架台24の上にジャッキ式吊り上げ機械22とリール23が据え付けられる。前記4台1組のジャッキ式吊り上げ機械22からそれぞれ大口径(例えば、28.6φ)のPC鋼より線26が1本ずつ繰り出される場合を例として説明する。
下端部桁ブロック13は、これらのPC鋼より線26にて吊り上げられる。この桁ブロック13は、図示しない製作ヤードで組み立てられ、台船17でアーチ橋16の下まで運ばれてくる。
前記リール23は、PC鋼より線26を、巻き取るときは巻き取りリールとして作用し、繰り出すときは繰り出しリールとして作用する。
【0019】
前記ジャッキ式吊り上げ機械22を中心とした全体の段取りを説明すると、図1及び図2に示すように、左右のアーチ部材20の上に架台24が設けられ、この架台24の両側部のそれぞれの台座36に、ブレーキ装置32を介してジャッキ式吊り上げ機械22が設けられ、このジャッキ式吊り上げ機械22の傍に回動可能なリール23が据え付けられている。前記ジャッキ式吊り上げ機械22によって引き上げられたり繰り出されたりしたPC鋼より線26は、その一例として下端部のアンカー31が直接桁ブロック側のアンカーブロック31aに連結されるか、吊り桁25を介して連結され、桁ブロック13が吊り上げられる。
前記ジャッキ式吊り上げ機械22とリール23の間で巻き取られたり、繰り出されたりするPC鋼より線26は、湾曲用ガイド管33aで湾曲にされ、誘導用ガイド管33bでリール23に案内される。
前記架台24の台座36には、図1に示すようにウインチ27が設置され、このウインチ27のウインチワイヤ29が滑車28を介して前記アンカー31に連結され、PC鋼より線26を下方に所定速度で繰り出すときに吊り桁25とPC鋼より線26の荷重を保持する。このウインチ27には、ウインチワイヤ29の引き出し量を検出して出力するエンコーダ等が内蔵している。
【0020】
前記ジャッキ式吊り上げ機械22とブレーキ装置32の詳細を、図5図6及び図7に基づき説明する。
前記台座36の上には、ブレーキ装置32が取り付けられ、このブレーキ装置32の上の上部支持体59には、ダブルツイン(登録商標)ジャッキなどからなる公知のジャッキ式吊り上げ機械22が取り付けられている。
【0021】
前記ブレーキ装置32は、図7(a)(b)に示すように、底板35と左右の反力板43とで4角形の枠組みがなされ、両側の反力板43の間には、2枚のブレーキ盤40、40と、さらに一方ブレーキ盤40と反力板43との間にブレーキ用ジャッキ42が配置されている。前記2枚のブレーキ盤40,40の互いに向き合った面の略中央に前記PC鋼より線26の半径よりやや浅いブレーキ溝41が垂直に形成されている。これらのブレーキ溝41の両端部には、端部に向かって径の大きくなるガイド溝が形成されている。前記ブレーキ溝41は、前記PC鋼より線26を挾持するためのものであり、また、ブレーキ溝41の内面には、PC鋼より線26を挾持しているときの滑りを防止するため、ねじ山のような凹凸を形成してもよい。
このように構成されたブレーキ装置32の上部支持体59には、前記PC鋼より線26を挿通する貫通孔が穿設されている。
【0022】
図5及び図6において、前記上部支持体59には、180度の間隔をおいて2個の第1ジャッキ38aのシリンダ側が固定的に取付けられ、また、これらと90度の間隔をおいた交差する位置に2個の第2ジャッキ38bのラム側が固定的に取付けられている。前記第1ジャッキ38aのラム側に連結する第1連結枠37aの中央には、1本のPC鋼より線26を挾持する3つ割りされた円錐形状のウエッジを主体とする上部チャック39aが設けられて、ラム駆動ジャッキとして動作する。また、前記第2ジャッキ38bのシリンダ側を連結する第2連結枠37bの中央には、前記1本のPC鋼より線26を挾持する下部チャック39bが設けられて、シリンダ駆動ジャッキとして動作する。
【0023】
次に、図6において、電動ポンプユニット44は、油圧制御盤45に連結され、この油圧制御盤45には、ジャッキ用圧力変換器46とブレーキ用圧力変換器47が接続されている。前記ジャッキ用圧力変換器46には、2台の前記第1ジャッキ38a、38aと、2台の第2ジャッキ38b、38bとが連結され、前記ブレーキ用圧力変換器47には、前記ブレーキ用ジャッキ42に連結されている。前記ブレーキ用圧力変換器47は、プログラマブルコントローラ50に接続され、さらに、このプログラマブルコントローラ50は、操作盤51を介して前記油圧制御盤45に接続されている。
【0024】
次にリール23の詳細を図8図9及び図10に基づいて説明する。
前記台座36の上には、前記ジャッキ式吊り上げ機械22とともに、その側部にリール23が取り付けられる。このリール23は、PC鋼より線26が大口径(例えば、28.6φ)で堅いPC鋼より線からなるので、外巻タイプのリールに巻きつけようとすれば過大な動力と大型のドラムを必要とする。そこでジャッキ式吊り上げ機械22による吊り上げ時にPC鋼より線26を上方に押し出す力とその太くて堅い性質を利用してリール23の内側に巻き付けるタイプとする。前記リール23は、直径が60mm程度の鉄等の棒材54を、中心の回転軸34から45度の間隔で放射状に伸ばし、先端部を半径250mm程度の半円形に湾曲し、外周を外周補強部材63で補強して直径が2.0〜2.3mの籠状に形成する。この棒材54の先端の半円形の内側がPC鋼より線収納部60となる。このリール23の一側面は、PC鋼より線26が出入りするための開口部61であり、この開口部61の中心部には、前記棒材54の放射線部分とに間に軸支持部材62を介在して回転軸34が取り付けられる。このリール23は、出来るだけ軽量化するために、外周の外周補強部材63は、一部を省略してもよい。また、この外周補強部材63には、図9に示すように、PC鋼より線26の先端部を固着するためのPC鋼より線固着部57が回動支点58で回動自在に設けられている。
【0025】
前記回転軸34の両端部は、台座36に取り付けた受け台52のU字形に切り欠いた軸受56に嵌め込まれ、PC鋼より線26の巻き取りと繰り出しに際してリール23が回動するようになっている。
前記ジャッキ式吊り上げ機械22とリール23の間の上部には、ジャッキ式吊り上げ機械22から押し出されたPC鋼より線26をリール23に案内するためのガイド管33が設けられる。このガイド管33は、ジャッキ式吊り上げ機械22とリール23の上にリール23と略同一径の半円形に湾曲するための湾曲用ガイド管33aと、さらに、リール23の開口部61に臨ませた誘導用ガイド管33bとからなり、支柱55で台座36に保持される。
以上のように、台座36に、ブレーキ装置32、ジャッキ式吊り上げ機械22、リール23、ガイド管33等が取り付けられて1つの吊り上げ機械となるが、全てを含めた装置の設置スペース及び段取り手間は、現場条件にもよるが、ウインチ式に比べて有利である。
【0026】
以上のような構成による作用を説明する。
アーチ橋16への据え付けに先立って、工場からドラムに外巻きされて入荷したPC鋼より線26を一度バラして人力でリール23に押し込んでゆく。
【0027】
PC鋼より線26を巻き付けたリール23とジャッキ式吊り上げ機械22は、図3に示すように、ケーブルクレーン19に吊り下げられてアーチ部材20の所定の位置に架台24を介在して取り付けられる。このジャッキ式吊り上げ機械22は、4台を1組としてアーチ部材20の上に据え付けられる。それぞれのPC鋼より線26の下端部には、アンカー31とアンカーブロック31aが設けられており、これらのアンカー31には、桁ブロック13を吊り上げるための吊り桁25が取り付けられる。この吊り桁25は、PC鋼より線26を繰り出すときの後述する重りとして作用する。
また、前記アンカー31には、ウインチワイヤ29が連結され、前記台座36の上に据え付けたインバータ付きウインチ27に滑車28を介して連結されている。
【0028】
アーチ部材20の所定の位置に据え付けられたジャッキ式吊り上げ機械22を挿通してPC鋼より線26を下方へ繰り出すが、その方法は、PC鋼より線26の先端に取り付けられたアンカーブロック31a及び/又は吊り桁25を重りとし、ウインチ27で保持しながら吊り下げることにより行う。
【0029】
ウインチ27で重りの荷重を保持しつつ下降させれば、それに連結されたPC鋼より線26も下方に繰り出される。このとき、吊り桁25の重りの荷重は一定だが、降下に従い繰り出されたPC鋼より線26の自重が付加される。この漸増荷重分をブレーキ装置32に負担させることにより、リール23の逸走回転及び/又はリール23からのPC鋼より線26の飛び出しのリスクを回避する。制御としては、ウインチ27の負担する荷重が一定に保たれるように漸増するPC鋼より線26の自重を正確にブレーキ装置32で負担すべく本装置を荷重制御することが基本となる。
【0030】
具体的には、別途設けられたエンコーダ48によりジャッキ設置点から重し(アンカーブロック及び/又は吊り桁)25が設定時間で移動した距離を計測し、プログラマブルコントローラ50に入力・演算し、予め設定されていたウインチワイヤ29の繰り出しスピードと比較し、前者(重しの移動スピード)が遅い場合に限り、ブレーキ装置32の負担荷重を減少すべく油圧制御盤45を経由して圧抜きを行う。
【0031】
次に、桁ブロック13の吊り上げについて説明する。
PC鋼より線26を可能な限り早い所定の速度で台船17の位置まで繰り出して、吊り桁25に桁ブロック13を連結する。連結したら、ブレーキ装置32を解放し、4台のジャッキ式吊り上げ機械22で桁ブロック13を吊り上げる。
【0032】
桁ブロック13の引き上げ動作時に、ジャッキ式吊り上げ機械22の上方に押し出されたPC鋼より線26は、図10に示すように、湾曲用ガイド管33aに導かれ、この湾曲用ガイド管33aの中を通り、更に先端の誘導用ガイド管33bを経てリール23の内部へ送られる。PC鋼より線26が押し出された力は、その太くて堅い性質によりワイヤ固着部57に伝達され、リール23を回転させ、PC鋼より線収納部60に収納されてゆく。湾曲用ガイド管33aの曲率半径は、PC鋼より線26の太さによって設定される。
【0033】
このようなジャッキ式吊り上げ機械22の動作によってPC鋼より線26に連結された桁ブロック13は、上方に引き上げられつつ、PC鋼より線26は、特に巻き取り駆動力なしでリール23に巻き取られる。桁ブロック13が橋桁12との連結位置に達したら、既設のハンガー14に吊り下げつつ既設の橋桁12に連結する。連結したら、桁ブロック13から吊り桁25を外す。この桁ブロック13の連結作業は、両岸から同時に行われる。
桁ブロック13から吊り桁25を外したら、ケーブルクレーン19によってジャッキ式吊り上げ機械22とリール23をアーチ部材20の次の位置に移動して据え付け、前記同様にして橋桁12を完成する。
【実施例2】
【0034】
前記実施例では、図3に示すように、アーチ橋16を例としたので、PC鋼より線26は、50〜100mの長さとなるが、これに限られるものではなく、図11に示すように、複数本の支柱64の上に、ジャッキ式吊り上げ機械22とブレーキ装置32とリール23を据付け、建物の屋根鉄骨13をPC鋼より線26で10〜20m程度吊り上げるような場合にも利用できる。
このような構成においてもジャッキ式吊り上げ機械22から押し出されたPC鋼より線26を湾曲用ガイド管33aと誘導用ガイド管33bによりリール23に案内され、このリール23に内巻きに収納される。
【実施例3】
【0035】
前記実施例では、重量物を垂直に吊り上げる場合を例としたが、これに限られるものではなく、図12に示すように、レール67にジャッキ式吊り上げ機械22を横引き機として固定し、レール67の上に滑り装置68を介して重量物13を載せ、この重量物13に連結したPC鋼より線26をジャッキ式吊り上げ機械22で横移送する場合であってもよい。
このような構成においても、このジャッキ式吊り上げ機械22から押し出されたPC鋼より線26がリール23に内巻きに収納される。ジャッキ式吊り上げ機械22とリール23の距離が長いときには、補助駆動装置66を介在してPC鋼より線26をリール23に送り込むことによりリール23への巻き取りが円滑になる。また、図13(a)(b)に示すように、リール23は、回転軸34を受け台52に設けたトルクモータ69に歯車70等を介在して連結し、PC鋼より線26のジャッキ式吊り上げ機械22による押し出し量に同期して回転させるようにしてもよい。
前記実施例では、リール23は、鉄などの棒材54を折曲して形成したが、これに限られるものではなく、鉄以外の金属、硬質のプラスチック、硬質の木材などであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…橋脚、11…メインケーブル、12…橋桁、13…桁ブロック(重量物)、14…ハンガー、15…ワイヤ巻き上げ機、16…アーチ橋、17…台船、18…ワイヤ、19…ケーブルクレーン、20…アーチ部材、21…水上航路、22…ジャッキ式吊り上げ機(移送装置)、23…リール、24…架台、25…吊り桁(重し)、26…PC鋼より線、27…ウインチ、28…滑車、29…ウインチワイヤ、31…アンカー、31a…アンカーブロック、32…ブレーキ装置、33…ガイド管、34…回転軸、35…底板、36…台座、37…連結枠、38…ジャッキ、39…チャック、40…ブレーキ盤、41…ブレーキ溝、42…ブレーキ用ジャッキ、43…反力板、44…電動ポンプユニット、45…油圧制御盤、46…ジャッキ用圧力変換器、47…ブレーキ用側圧力変換器、48…エンコーダ、50…プログラマブルコントローラ、51…操作盤、52…受け台、54…棒材、55…支柱、56…軸受、57…PC鋼より線固着部、58…回動支点、59…上部支持体、60…PC鋼より線収納部、61…開口部、62…軸支持部材、63…外周補強部材、64…支柱、66…補助駆動装置、67…レール、68…滑り装置、69…トルクモータ、70…歯車。
図1
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