【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1を図面に基づき説明する。
本発明の実施例1は、PC鋼より線の巻き取り装置を
図1、
図2及び
図3に示すアーチ橋16に応用した例に基づき説明する。
これらの図において、アーチ橋16のアーチ部材20には、所定間隔でハンガー14が吊り下げられ、両岸から桁ブロック(重量物)13を順次連結して橋桁12を構築するものとする。前記アーチ部材20は、
図1及び
図2に示すように、中央部でやや狭くなるような間隔で左右2本設けられ、これらの左右のアーチ部材20の上には、所定間隔で架台24が固着され、この架台24の上にジャッキ式吊り上げ機械22とリール23が据え付けられる。前記4台1組のジャッキ式吊り上げ機械22からそれぞれ大口径(例えば、28.6φ)のPC鋼より線26が1本ずつ繰り出される場合を例として説明する。
下端部桁ブロック13は、これらのPC鋼より線26にて吊り上げられる。この桁ブロック13は、図示しない製作ヤードで組み立てられ、台船17でアーチ橋16の下まで運ばれてくる。
前記リール23は、PC鋼より線26を、巻き取るときは巻き取りリールとして作用し、繰り出すときは繰り出しリールとして作用する。
【0019】
前記ジャッキ式吊り上げ機械22を中心とした全体の段取りを説明すると、
図1及び
図2に示すように、左右のアーチ部材20の上に架台24が設けられ、この架台24の両側部のそれぞれの台座36に、ブレーキ装置32を介してジャッキ式吊り上げ機械22が設けられ、このジャッキ式吊り上げ機械22の傍に回動可能なリール23が据え付けられている。前記ジャッキ式吊り上げ機械22によって引き上げられたり繰り出されたりしたPC鋼より線26は、その一例として下端部のアンカー31が直接桁ブロック側のアンカーブロック31aに連結されるか、吊り桁25を介して連結され、桁ブロック13が吊り上げられる。
前記ジャッキ式吊り上げ機械22とリール23の間で巻き取られたり、繰り出されたりするPC鋼より線26は、湾曲用ガイド管33aで湾曲にされ、誘導用ガイド管33bでリール23に案内される。
前記架台24の台座36には、
図1に示すようにウインチ27が設置され、このウインチ27のウインチワイヤ29が滑車28を介して前記アンカー31に連結され、PC鋼より線26を下方に所定速度で繰り出すときに吊り桁25とPC鋼より線26の荷重を保持する。このウインチ27には、ウインチワイヤ29の引き出し量を検出して出力するエンコーダ等が内蔵している。
【0020】
前記ジャッキ式吊り上げ機械22とブレーキ装置32の詳細を、
図5、
図6及び
図7に基づき説明する。
前記台座36の上には、ブレーキ装置32が取り付けられ、このブレーキ装置32の上の上部支持体59には、ダブルツイン(登録商標)ジャッキなどからなる公知のジャッキ式吊り上げ機械22が取り付けられている。
【0021】
前記ブレーキ装置32は、
図7(a)(b)に示すように、底板35と左右の反力板43とで4角形の枠組みがなされ、両側の反力板43の間には、2枚のブレーキ盤40、40と、さらに一方ブレーキ盤40と反力板43との間にブレーキ用ジャッキ42が配置されている。前記2枚のブレーキ盤40,40の互いに向き合った面の略中央に前記PC鋼より線26の半径よりやや浅いブレーキ溝41が垂直に形成されている。これらのブレーキ溝41の両端部には、端部に向かって径の大きくなるガイド溝が形成されている。前記ブレーキ溝41は、前記PC鋼より線26を挾持するためのものであり、また、ブレーキ溝41の内面には、PC鋼より線26を挾持しているときの滑りを防止するため、ねじ山のような凹凸を形成してもよい。
このように構成されたブレーキ装置32の上部支持体59には、前記PC鋼より線26を挿通する貫通孔が穿設されている。
【0022】
図5及び
図6において、前記上部支持体59には、180度の間隔をおいて2個の第1ジャッキ38aのシリンダ側が固定的に取付けられ、また、これらと90度の間隔をおいた交差する位置に2個の第2ジャッキ38bのラム側が固定的に取付けられている。前記第1ジャッキ38aのラム側に連結する第1連結枠37aの中央には、1本のPC鋼より線26を挾持する3つ割りされた円錐形状のウエッジを主体とする上部チャック39aが設けられて、ラム駆動ジャッキとして動作する。また、前記第2ジャッキ38bのシリンダ側を連結する第2連結枠37bの中央には、前記1本のPC鋼より線26を挾持する下部チャック39bが設けられて、シリンダ駆動ジャッキとして動作する。
【0023】
次に、
図6において、電動ポンプユニット44は、油圧制御盤45に連結され、この油圧制御盤45には、ジャッキ用圧力変換器46とブレーキ用圧力変換器47が接続されている。前記ジャッキ用圧力変換器46には、2台の前記第1ジャッキ38a、38aと、2台の第2ジャッキ38b、38bとが連結され、前記ブレーキ用圧力変換器47には、前記ブレーキ用ジャッキ42に連結されている。前記ブレーキ用圧力変換器47は、プログラマブルコントローラ50に接続され、さらに、このプログラマブルコントローラ50は、操作盤51を介して前記油圧制御盤45に接続されている。
【0024】
次にリール23の詳細を
図8、
図9及び
図10に基づいて説明する。
前記台座36の上には、前記ジャッキ式吊り上げ機械22とともに、その側部にリール23が取り付けられる。このリール23は、PC鋼より線26が大口径(例えば、28.6φ)で堅いPC鋼より線からなるので、外巻タイプのリールに巻きつけようとすれば過大な動力と大型のドラムを必要とする。そこでジャッキ式吊り上げ機械22による吊り上げ時にPC鋼より線26を上方に押し出す力とその太くて堅い性質を利用してリール23の内側に巻き付けるタイプとする。前記リール23は、直径が60mm程度の鉄等の棒材54を、中心の回転軸34から45度の間隔で放射状に伸ばし、先端部を半径250mm程度の半円形に湾曲し、外周を外周補強部材63で補強して直径が2.0〜2.3mの籠状に形成する。この棒材54の先端の半円形の内側がPC鋼より線収納部60となる。このリール23の一側面は、PC鋼より線26が出入りするための開口部61であり、この開口部61の中心部には、前記棒材54の放射線部分とに間に軸支持部材62を介在して回転軸34が取り付けられる。このリール23は、出来るだけ軽量化するために、外周の外周補強部材63は、一部を省略してもよい。また、この外周補強部材63には、
図9に示すように、PC鋼より線26の先端部を固着するためのPC鋼より線固着部57が回動支点58で回動自在に設けられている。
【0025】
前記回転軸34の両端部は、台座36に取り付けた受け台52のU字形に切り欠いた軸受56に嵌め込まれ、PC鋼より線26の巻き取りと繰り出しに際してリール23が回動するようになっている。
前記ジャッキ式吊り上げ機械22とリール23の間の上部には、ジャッキ式吊り上げ機械22から押し出されたPC鋼より線26をリール23に案内するためのガイド管33が設けられる。このガイド管33は、ジャッキ式吊り上げ機械22とリール23の上にリール23と略同一径の半円形に湾曲するための湾曲用ガイド管33aと、さらに、リール23の開口部61に臨ませた誘導用ガイド管33bとからなり、支柱55で台座36に保持される。
以上のように、台座36に、ブレーキ装置32、ジャッキ式吊り上げ機械22、リール23、ガイド管33等が取り付けられて1つの吊り上げ機械となるが、全てを含めた装置の設置スペース及び段取り手間は、現場条件にもよるが、ウインチ式に比べて有利である。
【0026】
以上のような構成による作用を説明する。
アーチ橋16への据え付けに先立って、工場からドラムに外巻きされて入荷したPC鋼より線26を一度バラして人力でリール23に押し込んでゆく。
【0027】
PC鋼より線26を巻き付けたリール23とジャッキ式吊り上げ機械22は、
図3に示すように、ケーブルクレーン19に吊り下げられてアーチ部材20の所定の位置に架台24を介在して取り付けられる。このジャッキ式吊り上げ機械22は、4台を1組としてアーチ部材20の上に据え付けられる。それぞれのPC鋼より線26の下端部には、アンカー31とアンカーブロック31aが設けられており、これらのアンカー31には、桁ブロック13を吊り上げるための吊り桁25が取り付けられる。この吊り桁25は、PC鋼より線26を繰り出すときの後述する重りとして作用する。
また、前記アンカー31には、ウインチワイヤ29が連結され、前記台座36の上に据え付けたインバータ付きウインチ27に滑車28を介して連結されている。
【0028】
アーチ部材20の所定の位置に据え付けられたジャッキ式吊り上げ機械22を挿通してPC鋼より線26を下方へ繰り出すが、その方法は、PC鋼より線26の先端に取り付けられたアンカーブロック31a及び/又は吊り桁25を重りとし、ウインチ27で保持しながら吊り下げることにより行う。
【0029】
ウインチ27で重りの荷重を保持しつつ下降させれば、それに連結されたPC鋼より線26も下方に繰り出される。このとき、吊り桁25の重りの荷重は一定だが、降下に従い繰り出されたPC鋼より線26の自重が付加される。この漸増荷重分をブレーキ装置32に負担させることにより、リール23の逸走回転及び/又はリール23からのPC鋼より線26の飛び出しのリスクを回避する。制御としては、ウインチ27の負担する荷重が一定に保たれるように漸増するPC鋼より線26の自重を正確にブレーキ装置32で負担すべく本装置を荷重制御することが基本となる。
【0030】
具体的には、別途設けられたエンコーダ48によりジャッキ設置点から重し(アンカーブロック及び/又は吊り桁)25が設定時間で移動した距離を計測し、プログラマブルコントローラ50に入力・演算し、予め設定されていたウインチワイヤ29の繰り出しスピードと比較し、前者(重しの移動スピード)が遅い場合に限り、ブレーキ装置32の負担荷重を減少すべく油圧制御盤45を経由して圧抜きを行う。
【0031】
次に、桁ブロック13の吊り上げについて説明する。
PC鋼より線26を可能な限り早い所定の速度で台船17の位置まで繰り出して、吊り桁25に桁ブロック13を連結する。連結したら、ブレーキ装置32を解放し、4台のジャッキ式吊り上げ機械22で桁ブロック13を吊り上げる。
【0032】
桁ブロック13の引き上げ動作時に、ジャッキ式吊り上げ機械22の上方に押し出されたPC鋼より線26は、
図10に示すように、湾曲用ガイド管33aに導かれ、この湾曲用ガイド管33aの中を通り、更に先端の誘導用ガイド管33bを経てリール23の内部へ送られる。PC鋼より線26が押し出された力は、その太くて堅い性質によりワイヤ固着部57に伝達され、リール23を回転させ、PC鋼より線収納部60に収納されてゆく。湾曲用ガイド管33aの曲率半径は、PC鋼より線26の太さによって設定される。
【0033】
このようなジャッキ式吊り上げ機械22の動作によってPC鋼より線26に連結された桁ブロック13は、上方に引き上げられつつ、PC鋼より線26は、特に巻き取り駆動力なしでリール23に巻き取られる。桁ブロック13が橋桁12との連結位置に達したら、既設のハンガー14に吊り下げつつ既設の橋桁12に連結する。連結したら、桁ブロック13から吊り桁25を外す。この桁ブロック13の連結作業は、両岸から同時に行われる。
桁ブロック13から吊り桁25を外したら、ケーブルクレーン19によってジャッキ式吊り上げ機械22とリール23をアーチ部材20の次の位置に移動して据え付け、前記同様にして橋桁12を完成する。