特許第6239456号(P6239456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239456
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】蛍光体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/59 20060101AFI20171120BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C09K11/59CQH
   C09K11/08 B
【請求項の数】10
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-147504(P2014-147504)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-23217(P2016-23217A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】503447036
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(72)【発明者】
【氏名】北畠 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】藤林 房樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅英
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 孝俊
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−515536(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/053595(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0135928(US,A1)
【文献】 特開2009−263201(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0213822(US,A1)
【文献】 特開2008−095091(JP,A)
【文献】 特開2007−332016(JP,A)
【文献】 特表2008−521994(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/059260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/59
C09K 11/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する酸窒化物を含む蛍光体であって、
体積平均粒径が50nm以上400nm以下であり、励起波長450nmにおける内部量子効率が60%以上であり、
当該蛍光体は、組成式MSiで表わされ、
前記酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有し、
前記元素Mは、Ca、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上のアルカリ土類金属元素とEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の賦活剤元素とを有し、元素Mの合計に対して、15モル%以上99モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下の賦活剤元素とを有し、
体積平均粒度分布指標が1.21以上1.32以下であり、
前記酸窒化物と異なる結晶構造を有するケイ素含有化合物を含み、
前記酸窒化物は、前記酸窒化物と前記ケイ素含有化合物との合計に対して、50質量%以上含まれる蛍光体。
【請求項2】
アルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する酸窒化物を含む蛍光体の製造方法であって、
窒化ケイ素粒子とアルカリ土類金属元素を含有する物質と賦活剤元素を含有する物質とを含む懸濁液に湿式化学法を適用して、前記窒化ケイ素粒子の表面に、前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物および前記賦活剤元素を含有する化合物が混ざり合って堆積され、体積平均粒径が250nm以下である蛍光体前駆体粒子を準備する前駆体準備工程と、
前記蛍光体前駆体粒子を焼成する焼成工程と
を含み、
前記焼成工程は、水素と窒素との混合ガス雰囲気またはアンモニアと窒素との混合ガス雰囲気の下、1150℃以上1650℃以下の温度で行い、
前記蛍光体前駆体粒子は、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計に対して、15モル%以上99モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下の賦活剤元素とを有し、
当該蛍光体は、組成式MSiで表わされ、
前記酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有し、
前記元素Mは、Ca、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上のアルカリ土類金属元素とEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の賦活剤元素とを有する蛍光体の製造方法。
【請求項3】
前記蛍光体前駆体粒子は、窒化ケイ素粒子と、前記窒化ケイ素粒子の表面に堆積されたCa、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上の前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物ならびにEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の前記賦活剤元素を含有する化合物とを、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計とケイ素のモル比が1:1.4から1:2.86の範囲で含請求項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項4】
前記前駆体準備工程は、
窒化ケイ素粒子とCa、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上のアルカリ土類金属元素を含む物質とEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の賦活剤元素を含む物質とを、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計とケイ素のモル比が1:1.4から1:2.86の範囲で含む懸濁液を形成する懸濁液形成工程と、
前記懸濁液に湿式化学法を適用して、前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物と前記賦活剤元素を含有する化合物とを析出させ、前記窒化ケイ素粒子の表面に、前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物および前記賦活剤元素を含有する化合物が混ざり合って堆積された蛍光体前駆体粒子を形成する前駆体形成工程とを含み、
前記懸濁液は、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計に対して、15モル%以上99モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下の賦活剤元素とを有する請求項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項5】
前記湿式化学法は、共沈法およびクエン酸塩法の少なくとも一方である請求項またはに記載の蛍光体の製造方法。
【請求項6】
前記湿式化学法は共沈法である請求項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物および前記賦活剤元素を含有する化合物は、それぞれ、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、カルボン酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、有機金属化合物および水酸化物からなる群から選択される1種類以上の化合物を含む請求項からのいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物および前記賦活剤元素を含有する化合物は、それぞれ、炭酸塩および水酸化物からなる群から選択される1種類以上の化合物を含む請求項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項9】
前記窒化ケイ素粒子は150nm以下の体積平均粒径を有する請求項からのいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項10】
前記窒化ケイ素粒子は非晶質である請求項からのいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED照明やディスプレイ等の発光装置において、光変換を担う蛍光体が装置に組み込まれている。
例えば、LED照明として、励起光源として有望と考えられている、青色光または近紫外光を放出するInGaN系半導体チップ上に、シリコン樹脂等の中に蛍光体を分散したものを滴下して、チップを蛍光体で被覆するものが開発されている。この場合、InGaN系半導体チップが放出する光と、このチップが放出する光によって励起される蛍光体が発する光とで色味を調整する。
【0003】
このような発光装置では、蛍光体の発光特性が、装置の特性において、非常に重要な役割を担っている。光変換を担う蛍光体の発光特性向上が、発光装置の特性を向上させる上で非常に重要である。現在、このような発光装置には、黄色発光を示すYAl12:Ce、赤色発光を示すCaAlSiN:Euといった可視光励起型の蛍光体が主に使用されている。これらの蛍光体では、数μmから数十μmの粒径においてもっとも発光特性がよいとされている。このため、平均粒径が上記の値を持つような蛍光体粒子が使用されている。平均粒径が1μm未満の微粒子蛍光体は、結晶性が乏しく、欠陥が多く、賦活元素の分散が十分でないため、輝度が大幅に低減したものとなり、一般に、LED/蛍光体を使用した照明やディスプレイ等の発光装置に不向きである。
【0004】
その一方で、発光効率の高い1μm未満の微粒子蛍光体は多くの用途で必要性が高い。
例えば、古くから使用されていた蛍光ランプにおいて、1μm未満の微粒子蛍光体は十μm程度の蛍光体より、その塗布性能に優れ、塗布量が少なくてすむ傾向があった。ここ十数年で立ち上がってきたLED照明パッケージにおいても同様であり、1μm未満の微粒子蛍光体は十μm程度の蛍光体より分散性に優れ搭載量が少なく、かつ、光分散性が向上するといった大きな長所を有している。
【0005】
可視光で励起される1μm未満の微粒子蛍光体も同様に多くの用途で必要性が高い。この場合の可視光励起蛍光体は、Eu2+やCe3+等の賦活イオンで結晶場分裂が十分大きくなり、nephelauxetic効果が十分大きい窒素アニオンの蛍光体である必要がある。従って、前記の効果を十分高めて1μm未満の酸窒化物微粒子蛍光体又は1μm未満の窒化物微粒子蛍光体の発光効率をLED用蛍光体と同等レベルに引き上げることが課題となる。
【0006】
粒径の小さいアルカリ土類金属元素およびケイ素含有の窒化物蛍光体や酸窒化物蛍光体を形成するため、以下の方法が試みられている。
例えば、特許文献1では、先ず、平均粒径がそれぞれ50nm以下の蛍光体原料粉末の混合物からなる蛍光体前駆体粉末を用意する。蛍光体原料粉末として、例えば、窒化ケイ素粉末が用いられる。この蛍光体前駆体粉末に溶媒を加えてスラリーを形成する。その後、このスラリーに有機バインダを添加する。その後、有機バインダが添加されたスラリーを噴霧乾燥法により乾燥して粒径2μm以下の顆粒を形成する。このようにして形成された顆粒を焼成することにより、目的とする蛍光体を得る。特許文献1に開示された方法では、噴霧乾燥法により形成される蛍光体前駆体粉末の粒径2μm以下の顆粒を焼成すると、前駆体粉末が焼結した状態になる。このため、粒径の小さい蛍光体粒子を合成することは困難である。また、粒径2μm以下の顆粒とするために有機バインダを使用しているため、焼成によっても除去しきれない炭素が蛍光体の発光特性を阻害する恐れがある。また、Eu等の賦活元素の化合物と、賦活元素が置換されるサイトを提供するアルカリ土類金属元素の化合物とが別々に原料として用意されているため、焼成によりEuがアルカリ土類金属元素のサイト中に十分に分散することが困難である。これらの結果、得られる蛍光体の発光効率が低くなる。
特許文献2では、蛍光体原料からなる前駆体粒子の混合物を形成する。前駆体粒子の少なくとも1つは、平均1次粒子サイズが100nmより小さい。平均1次粒子サイズが100nmより小さい前駆体粒子として、例えば、窒化ケイ素粒子が用いられる。その後、この混合物を焼成して、固相反応により、目的とする蛍光体を得る。特許文献2に開示された方法では、前駆体粒子の混合物を焼成して得られた蛍光体は、シリコン窒化物粒子やシリコンオキシ窒化物粒子の堆積物である。このため、1次粒子同士の固着などにより、粒径の小さい蛍光体粒子を合成することは困難である。また、特許文献1の場合と同様、賦活元素の化合物とアルカリ土類金属元素の化合物とが別々に用意されているため、粒子がサブミクロンに達するまでの間に十分なEuの分散がおこっていないため発光効率が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−314726号公報
【特許文献2】特表2011−515536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、蛍光体量を低減した高性能発光装置の用途などに使用される蛍光体に求められる1μm未満の微粒子蛍光体の発光効率は、従来法で形成した場合に数μ〜十数μmの粒径で達成するレベルに到達していない。
【0009】
このため、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、蛍光体単独での発光効率が高く、かつ、1μm未満の平均粒径を有する、アルカリ土類金属元素とケイ素とを含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した目的を達成するために鋭意検討し、窒化ケイ素微粒子の表面に、アルカリ土類金属元素と賦活元素を湿式化学法によって微細に堆積させた微粒子状の蛍光体前駆体粒子から、発光特性の優れた小粒径の、アルカリ土類金属元素とケイ素とを含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体が得られるという知見を得るに至った。
【0011】
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、以下の構成を有する。
【0012】
(構成1)
アルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体であって、
体積平均粒径が50nm以上400nm以下であり、励起波長450nmにおける内部量子効率が60%以上である蛍光体。
【0013】
(構成2)
当該蛍光体は、組成式MSiで表わされ、
前記酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有し、
前記元素Mは、Ca、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上のアルカリ土類金属元素とEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の賦活剤元素とを有し、元素Mの合計に対して、15モル%以上99モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下の賦活剤元素とを有する構成1に記載の蛍光体。
【0014】
(構成3)
体積平均粒度分布指標が1.20以上1.35以下である構成1または2に記載の蛍光体。
【0015】
(構成4)
前記酸窒化物と異なる結晶構造を有するケイ素含有化合物を含み、
前記酸窒化物は、前記酸窒化物と前記ケイ素含有化合物との合計に対して、50質量%以上含まれる構成2または3に記載の蛍光体。
【0016】
(構成5)
アルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体の製造方法であって、
窒化ケイ素粒子と、前記窒化ケイ素粒子の表面に堆積されたアルカリ土類金属元素を含有する化合物と賦活剤元素を含有する化合物とを含み、体積平均粒径が250nm以下である蛍光体前駆体粒子を準備する前駆体準備工程と、
前記蛍光体前駆体粒子を焼成する焼成工程と
を含む蛍光体の製造方法。
【0017】
(構成6)
前記前駆体準備工程は、窒化ケイ素粒子とアルカリ土類金属元素を含有する物質と賦活剤元素を含有する物質とを含む懸濁液に湿式化学法を適用して、前記窒化ケイ素粒子の表面に、前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物および前記賦前記活剤元素を含有する化合物が混ざり合って堆積された蛍光体前駆体粒子を形成する前駆体形成工程を含む構成5に記載の蛍光体の製造方法。
【0018】
(構成7)
前記蛍光体前駆体粒子は、窒化ケイ素粒子と、前記窒化ケイ素粒子の表面に堆積されたCa、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上の前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物ならびにEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の前記賦活剤元素を含有する化合物とを、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計とケイ素のモル比が1:1.4から1:2.86の範囲で含み、
前記蛍光体前駆体粒子は、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計に対して、15モル%以上99モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下の賦活剤元素とを有する構成5に記載の蛍光体の製造方法。
【0019】
(構成8)
前記前駆体準備工程は、
窒化ケイ素粒子とCa、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上のアルカリ土類金属元素を含む物質とEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の賦活剤元素を含む物質とを、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計とケイ素のモル比が1:1.4から1:2.86の範囲で含む懸濁液を形成する懸濁液形成工程と、
前記懸濁液に湿式化学法を適用して、前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物と前記賦活剤元素を含有する化合物とを析出させ、前記窒化ケイ素粒子の表面に、前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物および前記賦活剤元素を含有する化合物が混ざり合って堆積された蛍光体前駆体粒子を形成する前駆体形成工程とを含み、
前記懸濁液は、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計に対して、15モル%以上99モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下の賦活剤元素とを有する構成7に記載の蛍光体の製造方法。
【0020】
(構成9)
前記湿式化学法は、共沈法およびクエン酸塩法の少なくとも一方である構成6または8に記載の蛍光体の製造方法。
【0021】
(構成10)
前記湿式化学法は共沈法である構成9に記載の蛍光体の製造方法。
【0022】
(構成11)
前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物および前記賦活剤元素を含有する化合物は、それぞれ、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、カルボン酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、有機金属化合物および水酸化物からなる群から選択される1種類以上の化合物を含む構成5から10のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【0023】
(構成12)
前記アルカリ土類金属元素を含有する化合物および前記賦活剤元素を含有する化合物は、それぞれ、炭酸塩および水酸化物からなる群から選択される1種類以上の化合物を含む構成11に記載の蛍光体の製造方法。
【0024】
(構成13)
前記窒化ケイ素粒子は150nm以下の体積平均粒径を有する構成5から12のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【0025】
(構成14)
前記窒化ケイ素粒子は非晶質である構成5から13のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【0026】
(構成15)
前記焼成工程は、水素と窒素との混合ガス雰囲気またはアンモニアと窒素との混合ガス雰囲気の下、1150℃以上1650℃以下の温度で行う構成5から14のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
上述したように、本発明に係るアルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体によれば、体積平均粒径が50nm以上400nm以下であり、励起波長450nmにおける内部量子効率が60%以上である。このため、発光特性の優れた小粒径の、アルカリ土類金属元素、ケイ素、および賦活剤元素を含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体を得ることができる。
【0028】
また、本発明に係るアルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体の製造方法によれば、窒化ケイ素粒子とその表面に堆積されたアルカリ土類金属元素を含有する化合物と賦活剤元素を含有する化合物とを含む体積平均粒径が250nm以下である蛍光体前駆体粒子を準備し、その蛍光体前駆体粒子を焼成する。蛍光体前駆体粒子は、窒化ケイ素粒子の表面に、アルカリ土類金属元素を含有する化合物および賦活剤元素を含有する化合物が堆積している状態である。このため、焼成時に、ケイ素イオンとアルカリ土類金属イオンおよび賦活剤元素のイオンとのカチオン交換が容易に起こる。従って、目的組成の窒化物や酸窒化物の合成反応が、わずかな粒成長だけで成し遂げられる。よって、発光特性の優れた小粒径の、アルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】蛍光体前駆体粒子を走査電子顕微鏡(SEM)により観察して得られた画像を示す。
図2】実施例1の蛍光体の励起発光スペクトルを示す。
図3】実施例1および実施例2の蛍光体のX線回折スペクトルを示す。
図4】実施例2、比較例9および比較例10の蛍光体の発光スペクトルを示す。
図5】蛍光体の体積平均粒径と励起波長450nmにおける内部量子効率との関係を示すグラフである。
図6】蛍光体のSr含有量と励起波長450nmにおける内部量子効率との関係を示すグラフである。
図7】蛍光体のEu含有量と励起波長450nmにおける内部量子効率との関係を示すグラフである。
図8】窒化ケイ素粒子の体積平均粒径と蛍光体の体積平均粒径との関係を示すグラフである。
図9】窒化ケイ素粒子の体積平均粒径と蛍光体の体積平均粒度分布指標との関係を示すグラフである。
図10】蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径と蛍光体の体積平均粒径との関係を示すグラフである。
図11】蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径と蛍光体の体積平均粒度分布指標との関係を示すグラフである。
図12】焼成温度と蛍光体の励起波長450nmにおける内部量子効率との関係を示すグラフである。
図13】焼成温度と蛍光体の体積平均粒径との関係を示すグラフである。
図14】焼成温度と蛍光体の体積平均粒度分布指標との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
A.本発明の対象となる蛍光体
本発明によって得られる蛍光体は、アルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤として機能する元素(以下、賦活剤元素という)を含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含むものである。蛍光体は、窒化物のみを含む場合であってもよいし、窒化物のみを含む場合であってもよい。また、窒化物および酸窒化物の両方を含む場合であってもよい。また、窒化物および酸窒化物の他に、蛍光体の発光特性に悪影響を及ぼさない範囲で不純物を含む場合であってもよい。
【0032】
窒化物や酸窒化物に含有され得るアルカリ土類金属元素として、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)が挙げられる。
【0033】
窒化物や酸窒化物は、蛍光体の発光特性を向上させるために、賦活剤元素を含有する。賦活剤元素として、例えば、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)が挙げられる。
【0034】
本発明の蛍光体に含まれる得る窒化物として、例えば、MSi系窒化物(Mは、アルカリ土類金属元素、または、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素)が挙げられる。
【0035】
本発明の蛍光体に含まれる得る酸窒化物として、例えば、MSi系酸窒化物(Mは、アルカリ土類金属元素、または、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素)、M(Si,Al)(N,O)系酸窒化物(Mは、アルカリ土類金属元素、または、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素)が挙げられる。
【0036】
B.蛍光体の製造方法
上述した本発明の対象となる蛍光体であるアルカリ土類金属元素とケイ素とを含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体は、蛍光体前駆体粒子を準備する前駆体準備工程と、蛍光体前駆体粒子を焼成する焼成工程とにより製造される。
【0037】
以下、各工程を詳細に説明する。
【0038】
1.前駆体準備工程
原料として、窒化ケイ素粒子と、アルカリ土類金属元素を含有する物質とを用いる。また、蛍光体の発光特性を向上させるために、賦活剤元素を含有する物質を用いる。
【0039】
原料として用いる窒化ケイ素粒子は、非晶質であることが好ましい。非晶質の窒化ケイ素粒子を原料として用いる場合、焼成時に、窒化ケイ素粒子の表面に堆積しているアルカリ土類金属元素を含有する化合物や賦活剤元素を含有する化合物との間で、ケイ素イオンとアルカリ土類金属イオンや賦活剤元素のイオンとのカチオン交換が起こりやすい。
【0040】
また、原料として用いる窒化ケイ素粒子は、体積平均粒径が150nm以下、より具体的には120nm以下であることが好ましい。体積平均粒径が150nm以下の窒化ケイ素粒子を原料として用いる場合、粒径の小さい蛍光体前駆体粒子が得られ、その結果、粒径の小さい蛍光体が得られる。また、体積平均粒径が150nm以下の窒化ケイ素粒子を原料として用いる場合、粒度分布を制御することができ、粒径の揃った蛍光体が得られる。
【0041】
原料として用いるアルカリ土類金属元素を含有する物質に関して、Caを含有する物質として、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム4水和物、硫酸カルシウム2水和物、シュウ酸カルシウム1水和物、酢酸カルシウム1水和物、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、窒化カルシウム、カルシウムイミン、カルシウムアミドが挙げられる。中でも、硝酸カルシウム4水和物、塩化カルシウムが好ましい。Srを含有する物質として、例えば、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム8水和物、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、シュウ酸ストロンチウム1水和物、酢酸ストロンチウム0.5水和物、塩化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、窒化ストロンチウム、ストロンチウムイミン、ストロンチウムアミドが挙げられる。中でも、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウムが好ましい。Baを含有する物質として、例えば、酸化バリウム、水酸化バリウム8水和物、炭酸バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、シュウ酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、窒化バリウム、バリウムイミン、バリウムアミドが挙げられる。中でも、硝酸バリウム、塩化バリウムが好ましい。Mgを含有する物質として、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム6水和物、硫酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム2水和物、酢酸マグネシウム4水和物、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、窒化マグネシウム、マグネシウムイミン、マグネシウムアミドが挙げられる。中でも、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウムが好ましい。
【0042】
原料として用いる賦活剤元素を含有する物質に関して、Euを含有する物質として、例えば、酸化ユウロピウム、硫酸ユウロピウム、シュウ酸ユウロピウム10水和物、塩化ユウロピウム(II)、塩化ユウロピウム(III)、フッ化ユウロピウム(II)、フッ化ユウロピウム(III)、硝酸ユウロピウム6水和物、窒化ユウロピウム、ユウロピウムイミン、ユウロピウムアミドが挙げられる。中でも、硝酸ユウロピウム6水和物、酸化ユウロピウム、塩化ユウロピウム(II)が好ましい。その他の賦活元素Ce、Mn、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbを含有する物質としては、上記Euを含有する物質の具体例として挙げた各化合物において、EuをそれぞれCe、Mn、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbに置き換えた化合物が挙げられる。
【0043】
前駆体準備工程では、窒化ケイ素粒子と、この窒化ケイ素粒子の表面に堆積されたアルカリ土類金属元素を含有する化合物と、この窒化ケイ素粒子の表面に堆積された賦活剤元素を含有する化合物とを含み、体積平均粒径が250nm以下、より具体的には210nm以下である蛍光体前駆体粒子を準備する。
【0044】
例えば、MSi系酸窒化物(Mは、Ca、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上のアルカリ土類金属元素とEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の賦活剤元素とを有し、元素Mの合計に対して、15モル%以上99モル%以下、より具体的には20モル%以上95モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下、より具体的には5モル%以上15モル%以下の賦活剤元素とを有する)を得ることを目的とする場合、前駆体準備工程では、窒化ケイ素粒子と前記窒化ケイ素粒子の表面に堆積されたCa、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上のアルカリ土類金属元素を含有する化合物ならびにEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の賦活剤元素を含有する化合物とを含み、体積平均粒径が250nm以下、より具体的には210nm以下である蛍光体前駆体粒子を準備する。この蛍光体前駆体粒子は、窒化ケイ素粒子と、アルカリ土類金属元素を含有する化合物と、賦活剤元素を含有する化合物とを、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計とケイ素のモル比が1:1.4から1:2.86の範囲、より具体的には1:1.5から1:2.67の範囲で含む。また、この蛍光体前駆体粒子は、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計に対して、15モル%以上99モル%以下、より具体的には20モル%以上95モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下、より具体的には5モル%以上15モル%以下の賦活剤元素とを有する。
【0045】
前駆体準備工程は、懸濁液形成工程と、前駆体形成工程とを含む。
【0046】
[懸濁液形成工程]
目的組成のアルカリ土類金属元素とケイ素とを含有する窒化物や酸窒化物を得るべく、原料として、窒化ケイ素粒子と、アルカリ土類金属元素を含有する物質と、賦活剤元素を含有する物質とを所定の割合で含む懸濁液を形成する。
【0047】
例えば、上述したMSi系酸窒化物を得ることを目的とする場合、原料として、窒化ケイ素粒子と、アルカリ土類金属元素を含有する物質と、賦活剤元素を含有する物質とを、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計とケイ素のモル比が1:1.4から1:2.86の範囲、より具体的には1:1.5から1:2.67の範囲で含む懸濁液を形成する。この範囲以外では蛍光体の収率が低下することから、コスト上昇の原因となる。また、この懸濁液は、元素Mの合計に対して、15モル%以上99モル%以下、より具体的には20モル%以上95モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下、より具体的には5モル%以上15モル%以下の賦活剤元素とを有する。
【0048】
懸濁液は、原料を溶媒に投入し、撹拌することによって形成する。懸濁液を形成するために用いる溶媒として、例えば、水とエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、グリセリン、ソルビトールからなる群から選択される1種類以上の多価アルコールとの混合溶媒が挙げられる。中でも、水とエチレングリコールの混合溶媒が好ましい。
【0049】
[前駆体形成工程]
得られた懸濁液に湿式化学法を適用して、窒化ケイ素粒子の表面に、アルカリ土類金属元素を含有する化合物および賦活剤元素を含有する化合物が混ざり合って堆積された、体積平均粒径が250nm以下、より具体的には210nm以下である蛍光体前駆体粒子を形成する。
【0050】
例えば、上述したMSi系酸窒化物を得ることを目的とする場合、得られた懸濁液に湿式化学法を適用して、アルカリ土類金属元素を含有する化合物と賦活剤元素を含有する化合物とを析出させ、窒化ケイ素粒子の表面に、アルカリ土類金属元素を含有する化合物および賦活剤元素を含有する化合物が混ざり合って堆積された、体積平均粒径が250nm以下、より具体的には210nm以下である蛍光体前駆体粒子を形成する。この蛍光体前駆体粒子は、窒化ケイ素粒子と、アルカリ土類金属元素を含有する化合物と、賦活剤元素を含有する化合物とを、アルカリ土類金属元素および賦活剤元素の合計とケイ素のモル比が1:1.4から1:2.86の範囲、より具体的には1:1.5から1:2.67の範囲で含む。この範囲以外では蛍光体の収率が低下することから、コスト上昇の原因となる。また、この蛍光体前駆体粒子は、元素Mの合計に対して、15モル%以上99モル%以下、より具体的には20モル%以上95モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下、より具体的には5モル%以上15モル%以下の賦活剤元素とを有する。
【0051】
蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径が250nm以下である場合、粒径の小さい蛍光体が得られる。また、蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径が250nm以下である場合、粒度分布を制御することができ、粒径の揃った蛍光体が得られる。
【0052】
懸濁液に湿式化学法を適用することにより、窒化ケイ素粒子の表面に、アルカリ土類金属元素を含有する化合物および賦活剤元素を含有する化合物が混ざり合った状態で堆積する。このため、焼成時に、ケイ素イオンとアルカリ土類金属イオンや賦活剤元素のイオンとのカチオン交換が容易に起こる。従って、目的組成の窒化物や酸窒化物の合成反応が、わずかな粒成長だけで成し遂げられる。
【0053】
湿式化学法は、窒化ケイ素粒子の表面に、アルカリ土類金属元素を含有する化合物および賦活剤元素を含有する化合物が混ざり合った状態で堆積できる方法であれば、どのような方法であってもよい。好ましくは、共沈法およびクエン酸塩法の少なくとも一方である。湿式化学法として、共沈法のみを用いる場合であってもよいし、クエン酸塩法のみを含む場合であってもよい。また、共沈法およびクエン酸塩法の両方を用いる場合であってもよい。湿式化学法として、共沈法やクエン酸塩法を用いる場合、窒化ケイ素粒子の表面に、アルカリ土類金属元素を含有する化合物や賦活剤元素を含有する化合物を容易に析出させ、窒化ケイ素粒子を容易に包摂して接触させることができる。このため、焼成時に、ケイ素イオンとアルカリ土類金属イオンや賦活剤元素のイオンとのカチオン交換が容易に起こる。従って、目的組成の窒化物や酸窒化物の合成反応が、わずかな粒成長だけで成し遂げられる。
【0054】
共沈法は、懸濁液に共沈剤を加えることにより行われる。懸濁液に加える共沈剤として、例えば、炭酸水素アンモニウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、尿素水溶液、アセトアミド水溶液、チオ尿素水溶液、チオアセトアミド水溶液が挙げられる。中でも、炭酸水素アンモニウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液が好ましい。
【0055】
クエン酸塩法は、懸濁液にクエン酸を加えることにより行われる。
【0056】
窒化ケイ素粒子の表面に堆積されるアルカリ土類金属元素を含有する化合物や賦活剤元素を含有する化合物は、それぞれ、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、カルボン酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、有機金属化合物および水酸化物からなる群から選択される1種類以上の化合物であれば、どのような化合物あってもよい。好ましくは、炭酸塩および水酸化物からなる群から選択される1種類以上の化合物である。炭酸塩や水酸化物は、共沈法やクエン酸塩法によって、容易に析出させることができる。
【0057】
懸濁液中に含まれている蛍光体前駆体粒子は、例えば、遠心分離を用いて回収する。
【0058】
2.焼成工程
得られた蛍光体前駆体粒子を焼成する。焼成は、目的組成のアルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する窒化物や酸窒化物を含む蛍光体が、発光特性の優れた小粒径の蛍光体として得られる焼成条件で行う。
【0059】
例えば、上述したMSi系酸窒化物を得ることを目的とする場合、得られた蛍光体前駆体粒子を、水素と窒素との混合ガス雰囲気またはアンモニアと窒素との混合ガス雰囲気の下、1150℃以上1650℃以下、より具体的には1200℃以上1600℃以下の温度で焼成する。水素と窒素との混合ガス雰囲気またはアンモニアと窒素との混合ガス雰囲気の下で焼成することにより、目的組成のMSi系酸窒化物を主成分として含む蛍光体が得られる。目的組成のMSi系酸窒化物を主成分として含むことにより、発光特性の優れた蛍光体が得られる。また、1150℃以上の温度で焼成することにより、目的組成のMSi系酸窒化物の焼成不足を防ぐことができ、さらに、目的組成のMSi系酸窒化物以外の不純物の生成を防止することができる。焼成不足や不純物の生成を防止することができるため、発光特性の優れた蛍光体が得られる。また、1650℃以下の温度で焼成することにより、粒成長の進みすぎを防止することができ、さらに、目的組成のMSi系酸窒化物の溶融を防止することができる。粒成長の進みすぎを防止することができるため、小粒径の蛍光体が得られる。さらに、目的組成のMSi系酸窒化物の溶融を防止することができるため、目的組成のMSi系酸窒化物を含む蛍光体が製造しやすい。
【0060】
焼成は、例えば、以下の手順で行う。先ず、得られた蛍光体前駆体粒子を反応性の低い材料からなる耐熱容器中に充填する。耐熱容器として、例えば、るつぼ、トレイが挙げられる。耐熱容器の材質として、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、マグネシウム、ムライト等のセラミックス、白金、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、イリジウム、ロジウム等の金属またはそれらを主成分とする合金、カーボン(グラファイト)が挙げられる。好ましくは、窒化ホウ素製、アルミナ製、窒化珪素製、炭化珪素製、白金製、モリブデン製、タングステン製、タンタル製の耐熱容器が挙げられる。
【0061】
その後、蛍光体前駆体粒子が充填された耐熱容器を、焼成装置内に入れる。焼成装置として、例えば、メタル炉、カーボン炉が挙げられる。
【0062】
その後、耐熱容器が入れられた焼成装置内を、真空等の減圧状態にする。その後、焼成装置内を仮焼温度まで昇温する。その後、目的組成のアルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する窒化物や酸窒化物を含む蛍光体が、発光特性の優れた小粒径の蛍光体として得られるように、所定のガスを焼成装置内に導入し、焼成装置内の圧力を大気圧程度まで戻す。例えば、上述したMSi系酸窒化物を得ることを目的とする場合、水素と窒素との混合ガスまたはアンモニアと窒素との混合ガスを焼成装置内に導入する。その後、目的組成のアルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する窒化物や酸窒化物を含む蛍光体が、発光特性の優れた小粒径の蛍光体として得られるように、焼成装置内を所定の焼成温度まで昇温し、所定の時間保持する。例えば、上述したMSi系酸窒化物を得ることを目的とする場合、150℃以上1650℃以下、より具体的には1200℃以上1600℃以下の焼成温度まで昇温する。
【0063】
C.蛍光体
上述した製造方法により得られる、アルカリ土類金属元素、ケイ素および賦活剤元素を含有する窒化物および酸窒化物の少なくとも一方を含む蛍光体は、体積平均粒径が50nm以上400nm以下、より具体的には100nm以上350nm以下であり、励起波長450nmにおける内部量子効率が60%以上、より具体的には70%以上である。このため、この蛍光体は、発光特性に優れており、小粒径である。
【0064】
例えば、上述したMSi系酸窒化物を得ることを目的として上述した製造方法により得られる、アルカリ土類金属元素と賦活剤元素とケイ素とを含有する酸窒化物を含む蛍光体は、組成式MSi(Mは、Ca、Sr、BaおよびMgからなる群から少なくともSrを含んで選択される1種類以上のアルカリ土類金属元素とEuおよびCeからなる群から少なくともEuを含んで選択される1種類以上の賦活剤元素とを有し、元素Mの合計に対して、15モル%以上99モル%以下、より具体的には20モル%以上95モル%以下のSrと1モル%以上20モル%以下、より具体的には5モル%以上15モル%以下の賦活剤元素とを有する)で表わされ、酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。この蛍光体は、体積平均粒径が50nm以上400nm以下、より具体的には100nm以上350nm以下であり、励起波長450nmにおける内部量子効率が60%以上、より具体的には70%以上である。このため、この蛍光体は、発光特性に優れており、小粒径である。また、この蛍光体は、元素Mの合計に対して、15モル%以上のSrを有しているため、目的組成のMSi系酸窒化物の融点の低下を防止することができる。このため、目的組成のMSi系酸窒化物を含む蛍光体が製造しやすい。また、この蛍光体は、元素Mの合計に対して、99モル%以下のSrを有しているため、賦活剤元素の含有量低下を防止することができる。このため、発光特性の優れた蛍光体が得られる。また、この蛍光体は、元素Mの合計に対して、1モル%以上の賦活剤元素を有しているため、賦活剤元素の含有量を確保することができる。このため、発光特性の優れた蛍光体が得られる。また、この蛍光体は、元素Mの合計に対して、20モル%以下の賦活剤元素を有しているため、濃度消光の発生を防止することができる。このため、発光特性の優れた蛍光体が得られる。
【0065】
また、上述した製造方法により得られる蛍光体は、体積平均粒度分布指標が1.20以上1.35以下、より具体的には1.21以上1.32以下であることが好ましい。体積平均粒度分布指標が1.20以上1.35以下である場合、得られる蛍光体は粒径の揃ったものである。
【0066】
また、上述した製造方法により得られる蛍光体は、目的組成の酸窒化物と異なる結晶構造を有するケイ素含有化合物を含む場合には、目的組成の酸窒化物を、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、50質量%以上、より具体的には70質量%以上含むことが好ましい。目的組成の酸窒化物を50質量%以上含むことにより、目的組成のMSi系酸窒化物が主成分となる。このため、発光特性の優れた蛍光体が得られる。
【0067】
D.蛍光体の用途
本発明によって得られる蛍光体は、LED照明やディスプレイ等の光変換装置に用いることができる。また、粒子径が400nm以下と微細であることから従来からある顔料の代替としても用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
【0069】
実施例および比較例における種々の測定、分析は以下のように行った。
【0070】
<粒度分布測定>
実施例および比較例において、ELS−Z1000ZS(大塚電子製)を用いて、粒子の粒度分布を測定した。測定には、試料をエタノールまたは水に分散させ、超音波により30秒以上分散させた測定用サンプルを用いた。測定された粒子の粒度分布を基にして、分割された粒度範囲に含まれる粒子が占める体積を小径側から累積していき、累積16%となる粒径をD16、累積50%となる粒径をD50、累積84%となる粒径をD84と規定した。このとき、D50を体積平均粒径と定義し、D84/D16を体積平均粒度分布指標PSDと定義する。
また、測定された粒子の粒度分布を基にして、分割された粒度範囲に含まれる粒子個数を小径側から累積していき、累積50%となる粒径を数平均粒径と定義する。
【0071】
<励起発光スペクトル測定>
実施例および比較例において、蛍光分光光度計F−7000(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、励起発光スペクトルを測定した。
【0072】
<内部量子効率測定>
実施例において、絶対PL量子収率測定装置(浜松フォトニクス製)を用いて、内部量子効率を測定した。測定には、0.1gの試料を用いた。測定は励起波長450nmで行った。
【0073】
<走査電子顕微鏡観察>
実施例において、走査電子顕微鏡(SEM)SU8020(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、粒子の観察を行った。
【0074】
<金属元素分析>
実施例および比較例において、ICP−MS(アジレントテクノロジー製)およびICP−AES(島津製作所製)を用いて、金属元素分析を行った。金属元素分析には、試料を融剤(ホウ砂:炭酸ソーダ=1:1)を用いてアルカリ融解した後、塩酸を添加して定容した測定用サンプルを用いた。ユウロピウムの分析はICP−MS(アジレントテクノロジー製)で行い、それ以外の金属元素の分析はICP−AES(島津製作所製)で行った。
【0075】
<粉末X線回折>
実施例および比較例において、X線回折装置スマートラボ(リガク製)を用いて、粉末X線回折を行った。粉末X線回折において、CuKαを線源として用いた。粉末X線回折によって得られたX線回折スペクトルを解析することにより、試料中に形成されている無機化合物の定性分析と定量分析とを行った。
【0076】
表1は以下に示す実施例および比較例の前駆体準備工程および焼成工程における種々の製造条件を示す。また、表2は得られた前駆体および焼成品の特性を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
実施例1.
[前駆体準備工程]
(懸濁液形成工程)
原料として、体積平均粒径D50が50nmの非晶質の窒化ケイ素粒子(シグマアルドリッチ製)と、硝酸ストロンチウム(キシダ化学製)と、硝酸ユウロピウム6水和物(キシダ化学製)とを用いた。
【0080】
組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる酸窒化物を得るべく、窒化ケイ素粒子と硝酸ストロンチウムと硝酸ユウロピウム6水和物とを、それぞれ28.461質量%、57.964質量%、13.575質量%となるように秤量した。このように秤量すると、後述する懸濁液および蛍光体前駆体粒子には、SrおよびEuの合計とケイ素とのモル比が1:2で含まれ、また、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとが含まれる。秤量した原料を水100gとエチレングリコール50gとからなる混合溶媒へ投入し、撹拌することによって懸濁液を形成した。
【0081】
(前駆体形成工程)
炭酸水素アンモニウム(キシダ化学製)を水に溶解し、共沈剤として、濃度0.158mol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液216mlを形成した。
【0082】
次に、上述のようにして得られた懸濁液を撹拌混合しながら、共沈剤を1時間かけて滴下した。共沈剤の滴下後、2時間撹拌混合を続けた。このようにして、ストロンチウムイオンとユウロピウムイオンとをそれぞれ炭酸塩と水酸化物として析出させ、窒化ケイ素粒子の表面に、ストロンチウムの炭酸塩およびユウロピウムの水酸化物が均一に混ざり合って堆積された蛍光体前駆体粒子を形成した。
【0083】
その後、蛍光体前駆体粒子が含まれている懸濁液を、遠心分離によって水とエチレングリコールからなる混合溶媒から水へ溶媒置換した。溶媒置換後の懸濁液を100℃に設定された乾燥器に入れ、水を蒸発させることによって、蛍光体前駆体粒子を回収した。
【0084】
[焼成工程]
得られた蛍光体前駆体粒子を、以下の手順で焼成した。先ず、得られた蛍光体前駆体粒子を窒化ホウ素製のるつぼに充填した。その後、蛍光体前駆体粒子が充填されたるつぼを、メタル炉である真空雰囲気炉(ネムス製)内に入れた。るつぼを炉内に入れた後、先ず、拡散ポンプにより炉内を真空とした。その後、炉内を室温から1100℃まで毎時300℃の速度で昇温した。その後、炉内温度を1100℃に保持したまま、水素4体積%、窒素96体積%の混合ガスを炉内に導入して、炉内圧力を大気圧程度まで戻した。その後、炉内を毎時300℃の速度で1450℃まで昇温し、炉内温度を1450℃に3時間保持して、蛍光体前駆体粒子を焼成して、焼成品を得た。
【0085】
[蛍光体前駆体粒子の特性]
得られた蛍光体前駆体粒子を走査電子顕微鏡を用いて観察した。図1は蛍光体前駆体粒子を走査電子顕微鏡(SEM)により観察して得られた画像を示す。図1には、粒径100nm程度の粒子が多数見られる。このことから、窒化ケイ素粒子の表面に、ストロンチウムの炭酸塩およびユウロピウムの水酸化物が堆積していることが確認できた。
【0086】
また、得られた蛍光体前駆体粒子の粒度分布を測定した。粒度分布の測定結果から、蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は127nmであった。
【0087】
[蛍光体の特性]
得られた焼成品の励起発光スペクトルを測定した。図2は実施例1の焼成品の励起発光スペクトルを示す。図2の横軸は波長であり、縦軸は強度である。励起発光スペクトルから、200nm以上の紫外光から500nm以下の可視光までの広い波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が550nmの黄緑色光であることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。
【0088】
また、得られた焼成品の粉末X線回折を行った。図3中のaは実施例1の焼成品のX線回折スペクトルを示す。図3の横軸は入射X線方向と回折X線方向とのなす角度であり、縦軸は強度である。このX線回折スペクトルをリートベルト法で解析したところ、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が85質量%生成し、ケイ素含有化合物が15質量%生成していることが分かった。なお、図3中のcは計算によって得られるSrSi結晶のX線回折スペクトルを示す。
【0089】
また、得られた焼成品の金属元素分析を行った。金属元素分析の測定結果から、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.9:0.1のモル比で含まれていることが分かった。
【0090】
また、得られた焼成品の粒度分布を測定した。粒度分布の測定結果から、焼成品の体積平均粒径D50は165nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.26であった。
【0091】
また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率を測定した。測定結果から、焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は73%であった。
【0092】
以上のことから、実施例1により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が165nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.26である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が73%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、85質量%の酸窒化物を含む。
【0093】
実施例2.
原料として、体積平均粒径D50が50nmの非晶質の窒化ケイ素粒子(シグマアルドリッチ製)と、硝酸ストロンチウム(キシダ化学製)と、硝酸カルシウム4水和物(キシダ化学製)と、硝酸ユウロピウム6水和物(キシダ化学製)とを用いた。組成式Eu0.1Sr0.45Ca0.45Siで表わされる酸窒化物を得るべく、窒化ケイ素粒子と硝酸ストロンチウムと硝酸カルシウム4水和物と硝酸ユウロピウム6水和物とを、それぞれ27.537質量%、28.040質量%、31.289質量%、13.134質量%となるように秤量した。このように秤量すると、懸濁液および蛍光体前駆体粒子には、Sr、CaおよびEuの合計とケイ素とのモル比が1:2で含まれ、また、Sr、CaおよびEuの合計に対して、45モル%のSrと10モル%のEuとが含まれる。
【0094】
それ以外は、実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0095】
得られた蛍光体前駆体粒子の粒度分布を測定したところ、蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は112nmであった。
【0096】
また、得られた焼成品の励起発光スペクトルを測定したところ、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が543nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。図4中のaは実施例2の焼成品の発光スペクトルを示す。図4の横軸は波長であり、縦軸は強度である。
【0097】
また、得られた焼成品の粉末X線回折を行ったところ、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が89質量%生成し、ケイ素含有化合物が11質量%生成していることが分かった。図3中のbは実施例2の焼成品のX線回折スペクトルを示す。
【0098】
また、得られた焼成品の元素分析を行ったところ、得られた焼成品には、SrとCaとEuとがSr:Ca:Eu=0.45:0.45:0.1のモル比で含まれていることが分かった。
【0099】
また、得られた焼成品の粒度分布を測定したところ、焼成品の体積平均粒径D50は142nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.24であった。
【0100】
また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率を測定したところ、焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は81%であった。
【0101】
以上のことから、実施例2により得られた蛍光体は、SrとCaとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.45Ca0.45Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、Sr、CaおよびEuの合計に対して、45モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が142nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.24である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が81%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、89質量%の酸窒化物を含む。
【0102】
実施例3.
実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子を得た。また、蛍光体前駆体粒子を、アンモニア4体積%、窒素96体積%の混合ガス雰囲気の下で焼成した以外は、実施例1と同様の方法により焼成し、焼成品を得た。
【0103】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が550nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が92質量%生成し、ケイ素含有化合物が8質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.9:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は153nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.27であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は83%であった。
【0104】
以上のことから、実施例3により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が153nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.27である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が83%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、92質量%の酸窒化物を含む。
【0105】
実施例4.
実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子を得た。また、蛍光体前駆体粒子を、1250℃で焼成した以外は、実施例1と同様の方法により焼成し、焼成品を得た。
【0106】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が550nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が82質量%生成し、ケイ素含有化合物が18質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.9:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は148nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.25であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は72%であった。
【0107】
以上のことから、実施例4により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が148nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.25である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が72%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、82質量%の酸窒化物を含む。
【0108】
実施例5.
実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子を得た。また、蛍光体前駆体粒子を、1550℃で焼成した以外は、実施例1と同様の方法により焼成し、焼成品を得た。
【0109】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が552nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が88質量%生成し、ケイ素含有化合物が12質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.9:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は173nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.24であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は80%であった。
【0110】
以上のことから、実施例5により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が173nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.24である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が80%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、88質量%の酸窒化物を含む。
【0111】
実施例6.
組成式Eu0.1Sr0.7Ca0.2Siで表わされる酸窒化物を得るべく、窒化ケイ素粒子と硝酸ストロンチウムと硝酸カルシウム4水和物と硝酸ユウロピウム6水和物とを、それぞれ28.043質量%、44.420質量%、14.162質量%、13.375質量%となるように秤量した以外は、実施例2と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0112】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は121nmであった。また、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が548nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が86質量%生成し、ケイ素含有化合物が14質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとCaとEuとがSr:Ca:Eu=0.7:0.2:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は151nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.27であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は79%であった。
【0113】
以上のことから、実施例6により得られた蛍光体は、SrとCaとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.7Ca0.2Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、Sr、CaおよびEuの合計に対して、70モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が151nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.27である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が79%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、86質量%の酸窒化物を含む。
【0114】
実施例7.
組成式Eu0.1Sr0.2Ca0.7Siで表わされる酸窒化物を得るべく、窒化ケイ素粒子と硝酸ストロンチウムと硝酸カルシウム4水和物と硝酸ユウロピウム6水和物とを、それぞれ27.048質量%、12.241質量%、47.809質量%、12.901質量%となるように秤量した以外は、実施例2と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0115】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は114nmであった。また、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が541nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が88質量%生成し、ケイ素含有化合物が12質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとCaとEuとがSr:Ca:Eu=0.2:0.7:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は146nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.23であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は77%であった。
【0116】
以上のことから、実施例7により得られた蛍光体は、SrとCaとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.2Ca0.7Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、Sr、CaおよびEuの合計に対して、20モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が146nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.23である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が77%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、88質量%の酸窒化物を含む。
【0117】
実施例8.
組成式Eu0.15Sr0.85Siで表わされる酸窒化物を得るべく、窒化ケイ素粒子と硝酸ストロンチウムと硝酸ユウロピウム6水和物とを、それぞれ27.481質量%、52.858質量%、19.661質量%となるように秤量した以外は、実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0118】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は131nmであった。また、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が551nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が84質量%生成し、ケイ素含有化合物が16質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.85:0.15のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は168nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.31であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は75%であった。
【0119】
以上のことから、実施例8により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.15Sr0.85Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、85モル%のSrと15モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が168nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.31である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が75%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、84質量%の酸窒化物を含む。
【0120】
実施例9.
組成式Eu0.05Sr0.95Siで表わされる酸窒化物を得るべく、窒化ケイ素粒子と硝酸ストロンチウムと硝酸ユウロピウム6水和物とを、それぞれ29.514質量%、63.447質量%、7.039質量%となるように秤量した以外は、実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0121】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は133nmであった。また、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が550nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が85質量%生成し、ケイ素含有化合物が15質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.95:0.05のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は157nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.29であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は74%であった。
【0122】
以上のことから、実施例9により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.05Sr0.95Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、95モル%のSrと5モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が157nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.29である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が74%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、85質量%の酸窒化物を含む。
【0123】
実施例10.
原料として、数平均粒径500nmの結晶性窒化ケイ素(高純度化学製)を微粉砕機(アシザワ・ファインテック社製LMZ015)により粉砕して得られた、体積平均粒径D50が110nmの窒化ケイ素粒子を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0124】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は208nmであった。また、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が549nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が87質量%生成し、ケイ素含有化合物が13質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.9:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は329nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.22であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は79%であった。
【0125】
以上のことから、実施例10により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が329nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.22である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が79%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、87質量%の酸窒化物を含む。
【0126】
実施例11.
原料として、体積平均粒径D50が25nmの非晶質の窒化ケイ素粒子(HEFEI KAIER NANOMETER ENERGY & TECHNOLOGY CO., LTD製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0127】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は53nmであった。また、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が550nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が84質量%生成し、ケイ素含有化合物が16質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.9:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は113nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.30であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は73%であった。
【0128】
以上のことから、実施例11により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が113nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.30である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が73%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、84質量%の酸窒化物を含む。
【0129】
比較例1.
原料として、体積平均粒径D50が195nmの結晶質の窒化ケイ素粒子(宇部興産製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0130】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は286nmであった。また、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が550nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が85質量%生成し、ケイ素含有化合物が15質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.9:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は438nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.41であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は76%であった。
【0131】
以上のことから、比較例1により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が438nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.41である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が76%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、85質量%の酸窒化物を含む。
【0132】
比較例2.
実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子を得た。また、蛍光体前駆体粒子を、窒素100体積%のガス雰囲気の下で焼成した以外は、実施例1と同様の方法により焼成し、焼成品を得た。
【0133】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が557nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSrSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が5質量%生成し、ケイ素含有化合物が95質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.9:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は184nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.33であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は50%であった。
【0134】
以上のことから、比較例2により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が184nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.33である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が50%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、5質量%の酸窒化物を含む。
【0135】
比較例3.
実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子を得た。また、蛍光体前駆体粒子を、1100℃で焼成した以外は、実施例1と同様の方法により焼成し、焼成品を得た。
【0136】
得られた焼成品の励起発光スペクトルを測定したところ、焼成品は発光しなかった。これは、焼成不足のためである。従って、比較例3では、蛍光体は得られなかった。
【0137】
比較例4.
実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子を得た。また、蛍光体前駆体粒子を、1700℃で焼成した以外は、実施例1と同様の方法により焼成し、焼成品を得た。
【0138】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が551nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が93質量%生成し、ケイ素含有化合物が7質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.9:0.1のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は960nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.45であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は81%であった。
【0139】
以上のことから、比較例4により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.1Sr0.9Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、90モル%のSrと10モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が960nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.45である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が81%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、93質量%の酸窒化物を含む。
【0140】
比較例5.
実施例2と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子を得た。また、蛍光体前駆体粒子を、1700℃で焼成した以外は、実施例1と同様の方法により焼成した。
【0141】
比較例5では、焼成中に溶融したため、蛍光体は得られなかった。これは、蛍光体前駆体粒子に含有されているカルシウムの量が多く、焼成中に合成される酸窒化物の融点が下がったためである。
【0142】
比較例6.
組成式Eu0.1Sr0.1Ca0.8Siで表わされる酸窒化物を得るべく、窒化ケイ素粒子と硝酸ストロンチウムと硝酸カルシウム4水和物と硝酸ユウロピウム6水和物とを、それぞれ26.858質量%、6.078質量%、54.254質量%、12.810質量%となるように秤量した以外は、実施例2と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子を得た。また、蛍光体前駆体粒子を、実施例1と同様の方法により焼成した。
【0143】
比較例6では、焼成中に溶融したため、蛍光体は得られなかった。これは、蛍光体前駆体粒子に含有されているカルシウムの量が多く、焼成中に合成される酸窒化物の融点が下がったためである。
【0144】
比較例7.
組成式Eu0.005Sr0.995Siで表わされる酸窒化物を得るべく、窒化ケイ素粒子と硝酸ストロンチウムと硝酸ユウロピウム6水和物とを、それぞれ30.530質量%、68.741質量%、0.728質量%となるように秤量した以外は、実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0145】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は123nmであった。また、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が548nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が83質量%生成し、ケイ素含有化合物が17質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.995:0.005のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は186nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.32であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は52%であった。
【0146】
以上のことから、比較例7により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.005Sr0.995Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、99.5モル%のSrと0.5モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が186nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.32である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が52%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、83質量%の酸窒化物を含む。
【0147】
比較例8.
組成式Eu0.25Sr0.75Siで表わされる酸窒化物を得るべく、窒化ケイ素粒子と硝酸ストロンチウムと硝酸ユウロピウム6水和物とを、それぞれ25.710質量%、43.634質量%、30.657質量%となるように秤量した以外は、実施例1と同様の方法により、蛍光体前駆体粒子および焼成品を得た。
【0148】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、得られた蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は132nmであった。また、得られた焼成品は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が545nmであることが分かった。このことから、得られた焼成品は可視光で励起される蛍光体であることが確認できた。また、得られた焼成品には、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物とSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物とが生成していることが分かった。また、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が84質量%生成し、ケイ素含有化合物が16質量%生成していることが分かった。また、得られた焼成品には、SrとEuとがSr:Eu=0.75:0.25のモル比で含まれていることが分かった。また、得られた焼成品の体積平均粒径D50は172nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.31であった。また、得られた焼成品の励起波長450nmにおける内部量子効率は48%であった。
【0149】
以上のことから、比較例8により得られた蛍光体は、SrとEuとSiとを含有する酸窒化物を含むものである。また、この蛍光体は、組成式Eu0.25Sr0.75Siで表わされる。この組成式より、この蛍光体は、SrおよびEuの合計に対して、75モル%のSrと25モル%のEuとを有する。また、この酸窒化物は、SrSiと同じ結晶構造を有する。また、この蛍光体は、体積平均粒径D50が172nmであり、体積平均粒度分布指標PSDが1.31である。また、この蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が48%である。また、この蛍光体は、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、84質量%の酸窒化物を含む。
【0150】
比較例9.
組成式Eu0.1Sr0.45Ba0.45Siで表わされる市販の酸窒化物蛍光体(北京中村宇▲極▼科技有限公司製)を用いた。
【0151】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、市販の酸窒化物蛍光体は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が550nmであることが分かった。図4中のbは市販の酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを示す。また、市販の酸窒化物蛍光体は、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物以外の結晶成分を含んでいないことが分かった。また、市販の酸窒化物蛍光体の体積平均粒径D50は15400nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは2.22であった。また、市販の酸窒化物蛍光体の励起波長450nmにおける内部量子効率は77%であった。
【0152】
比較例10.
比較例9で用いた市販の酸窒化物蛍光体をビーズミルで粉砕し、分級することにより、サブミクロンサイズの酸窒化物蛍光体を得た。
【0153】
実施例1と同様に種々の測定、分析を行ったところ、粉砕後の市販の酸窒化物蛍光体は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光によって励起され、発光ピーク波長が562nmであることが分かった。図4中のcは粉砕後の市販の酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを示す。また、粉砕後の市販の酸窒化物蛍光体は、SrSiと同じ結晶構造を有する酸窒化物以外の結晶成分を含んでいないが、酸窒化物の結晶の一部が粉砕によって非晶質化していることが分かった。また、粉砕後の市販の酸窒化物蛍光体の体積平均粒径D50は364nmであり、体積平均粒度分布指標PSDは1.33であった。また、粉砕後の市販の酸窒化物蛍光体の励起波長450nmにおける内部量子効率は36%であった。
【0154】
実施例と比較例の対比検討.
図5は蛍光体の体積平均粒径D50と励起波長450nmにおける内部量子効率との関係を示すグラフである。図5の横軸は蛍光体の体積平均粒径D50であり、縦軸は蛍光体の励起波長450nmにおける内部量子効率である。図5中、ダイヤモンド形状の点は実施例1−11を示し、四角形状の点a,bは比較例9,10を示す。
【0155】
図5に示されるように、実施例1−11の蛍光体は、体積平均粒径D50が50nm以上400nm以下、より具体的には、100nm以上350nm以下であり、かつ、励起波長450nmにおける内部量子効率が60%以上、より具体的には、70%以上である。このため、実施例1−11から発光特性の優れた小粒径の蛍光体を得ることができた。特に、実施例2,3,5では、励起波長450nmにおける内部量子効率が80%以上であり、発光特性の極めて優れた小粒径の蛍光体を得ることができた。
【0156】
一方、比較例9の蛍光体は、励起波長450nmにおける内部量子効率が77%と高いが、体積平均粒径D50が15400nmと大きい。比較例9の蛍光体を粉砕することにより得られた比較例10の蛍光体では、体積平均粒径D50を364nmまで小さくすることができたが、励起波長450nmにおける内部量子効率が36%に低下した。また、図4に示されるように、比較例9,10の蛍光体の発光ピーク波長における発光強度は、実施例2の蛍光体の発光ピーク波長における発光強度より低い。このため、市販品の蛍光体(比較例9,10)からは、発光特性の優れた小粒径の蛍光体を得ることができなかった。
【0157】
また、実施例1−11の蛍光体は、体積平均粒度分布指標PSDが1.20以上1.35以下、より具体的には、1.21nm以上1.32以下である。このため、実施例1−11から粒径の揃った蛍光体を得ることができた。
【0158】
図6は蛍光体のSr含有量と励起波長450nmにおける内部量子効率との関係を示すグラフである。図6の横軸は蛍光体のSr含有量であり、縦軸は蛍光体の励起波長450nmにおける内部量子効率である。図6中、ダイヤモンド形状の点は実施例1−11を示し、四角形状の点a,bは比較例6,7を示す。
【0159】
図6に示されるように、比較例6では、Ca含有量が多く、アルカリ土類金属元素(Sr,Ca)とEuとの合計に対して、15モル%よりも少ないSrを有する。このため、焼成中に合成される酸窒化物の融点が下がり、蛍光体が得られなかった。焼成温度を下げると、合成反応が進行し難くなって、ケイ素含有化合物等の不純物が多くなるため、励起波長450nmにおける内部量子効率が低下すると考えられる。また、比較例7の蛍光体は、Sr含有量が99モル%より多い。このため、Euの含有量が少なくなり、励起波長450nmにおける内部量子効率が低下する。
【0160】
従って、Sr含有量は、好ましくは、15モル%以上99モル%以下である。また、励起波長450nmにおける内部量子効率が60%以上である実施例1−11の蛍光体は、アルカリ土類金属元素(Sr,Ca)とEuとの合計に対して、20モル%以上95モル%以下のSrを有する。このため、Sr含有量は、さらに好ましくは、20モル%以上95モル%以下である。
【0161】
図7は蛍光体のEu含有量と励起波長450nmにおける内部量子効率との関係を示すグラフである。図7の横軸は蛍光体のEu含有量であり、縦軸は蛍光体の励起波長450nmにおける内部量子効率である。図7中、ダイヤモンド形状の点は実施例1−11を示し、四角形状の点a,bは比較例7,8を示す。
【0162】
図7に示されるように、比較例7の蛍光体は、アルカリ土類金属元素(Sr,Ca)とEuとの合計に対して、1モル%よりも少ないEuを有する。このため、Euの含有量が少なく、励起波長450nmにおける内部量子効率が低下する。また、比較例8の蛍光体は、Eu含有量が20モル%より多い。このため、濃度消光が発生し、励起波長450nmにおける内部量子効率が低下する。
【0163】
従って、Eu含有量は、好ましくは、1モル%以上20モル%以下である。また、励起波長450nmにおける内部量子効率が60%以上である実施例1−11の蛍光体は、アルカリ土類金属元素(Sr,Ca)とEuとの合計に対して、5モル%以上15モル%以下のEuを有する。このため、Eu含有量は、さらに好ましくは、5モル%以上15モル%以下である。
【0164】
図8は窒化ケイ素粒子の体積平均粒径D50と蛍光体の体積平均粒径D50との関係を示すグラフである。図8の横軸は窒化ケイ素粒子の体積平均粒径D50であり、縦軸は蛍光体の体積平均粒径D50である。図9は窒化ケイ素粒子の体積平均粒径D50と蛍光体の体積平均粒度分布指標PSDとの関係を示すグラフである。図9の横軸は窒化ケイ素粒子の体積平均粒径D50であり、縦軸は蛍光体の体積平均粒度分布指標PSDである。図8,9中、ダイヤモンド形状のプロットは実施例1−11を示し、四角形状のプロットaは比較例1を示す。
【0165】
図8に示されるように、比較例1では、窒化ケイ素粒子の体積平均粒径D50が150nmより大きい。このため、蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50も大きくなった。その結果、蛍光体の体積平均粒径D50が400nmより大きくなり、所望の粒径の蛍光体を得ることができなかった。また、図9に示されるように、粒度分布を制御することができず、蛍光体の体積平均粒度分布指標PSDが1.35より大きくなり、所望の粒度分布の蛍光体を得ることができなかった。
【0166】
従って、窒化ケイ素粒子の体積平均粒径D50は、好ましくは、150nm以下である。また、体積平均粒径D50が50nm以上400nm以下であり、体積平均粒度分布指標PSDが1.20以上1.35以下である蛍光体が得られる実施例1−11では、窒化ケイ素粒子の体積平均粒径D50が120nm以下である。このため、窒化ケイ素粒子の体積平均粒径D50は、さらに好ましくは、120nm以下である。
【0167】
図10は蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50と蛍光体の体積平均粒径D50との関係を示すグラフである。図10の横軸は蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50であり、縦軸は蛍光体の体積平均粒径D50である。図11は蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50と蛍光体の体積平均粒度分布指標PSDとの関係を示すグラフである。図11の横軸は蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50であり、縦軸は蛍光体の体積平均粒度分布指標PSDである。図10,11中、ダイヤモンド形状のプロットは実施例1−11を示し、四角形状のプロットaは比較例1を示す。
【0168】
図10に示されるように、比較例1では、蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50が250nmより大きい。このため、蛍光体の体積平均粒径D50が400nmより大きくなり、所望の粒径の蛍光体を得ることができなかった。また、図11に示されるように、粒度分布を制御することができず、蛍光体の体積平均粒度分布指標PSDが1.35より大きくなり、所望の粒度分布の蛍光体を得ることができなかった。
【0169】
従って、蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は、好ましくは、250nm以下である。また、体積平均粒径D50が50nm以上400nm以下であり、体積平均粒度分布指標PSDが1.20以上1.35以下である蛍光体が得られる実施例1−11では、蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50が210nm以下である。このため、蛍光体前駆体粒子の体積平均粒径D50は、さらに好ましくは、210nm以下である。
【0170】
図12は焼成温度と蛍光体の励起波長450nmにおける内部量子効率との関係を示すグラフである。図12の横軸は焼成温度であり、縦軸は蛍光体の励起波長450nmにおける内部量子効率である。図12中、ダイヤモンド形状の点は実施例1−11を示し、四角形状の点a−cは比較例3−5を示す。
【0171】
図13は焼成温度と蛍光体の体積平均粒径D50との関係を示すグラフである。図13の横軸は焼成温度であり、縦軸は蛍光体の体積平均粒径D50である。図14は焼成温度と蛍光体の体積平均粒度分布指標PSDとの関係を示すグラフである。図14の横軸は焼成温度であり、縦軸は蛍光体の体積平均粒度分布指標PSDである。図13,14中、ダイヤモンド形状のプロットは実施例1−11を示し、四角形状のプロットbは比較例4を示す。
【0172】
図12に示されるように、比較例3では、焼成温度が1150℃より低い。このため、合成反応が進行せず、焼成不足のため、蛍光体は得られなかった。また、焼成温度が低いと、合成反応が進行し難くなって、ケイ素含有化合物等の不純物が多くなるため、励起波長450nmにおける内部量子効率が低下すると考えられる。また、図12に示されるように、比較例4では、焼成温度が1650℃より高い。このため、図13に示されるように、粒成長が進みすぎて、蛍光体の体積平均粒径D50が400nmより大きくなり、所望の粒径の蛍光体を得ることができなかった。また、図14に示されるように、粒度分布を制御することができず、蛍光体の体積平均粒度分布指標PSDが1.35より大きくなり、所望の粒度分布の蛍光体を得ることができなかった。また、図12に示されるように、比較例5では、焼成温度が1650℃より高い。比較例5のように、アルカリ土類金属元素(Sr,Ca)とEuとの含有割合によっては、焼成中に合成される酸窒化物の融点が下がるため、焼成温度が高いと、焼成中に溶融して、蛍光体が得られなくなる。
【0173】
従って、焼成温度は、好ましくは1150℃以上1650℃以下である。また、体積平均粒径D50が50nm以上400nm以下であり、体積平均粒度分布指標PSDが1.20以上1.35以下である蛍光体が得られる実施例1−11では、焼成温度が1200℃以上1600℃以下である。このため、焼成温度は、さらに好ましくは、1200℃以上1600℃以下である。
【0174】
実施例1−11では、蛍光体前駆体粒子を、水素と窒素との混合ガス雰囲気またはアンモニアと窒素との混合ガス雰囲気の下で焼成した。その場合、酸窒化物を主成分として含む蛍光体が得られた。具体的には、実施例1−11の蛍光体には、酸窒化物とケイ素含有化合物との合計に対して、酸窒化物が50質量%以上、さらに具体的には、70質量%以上含まれる。酸窒化物を主成分として含むことにより、励起波長450nmにおける内部量子効率の高い蛍光体が得られた。
【0175】
一方、比較例2では、蛍光体前駆体粒子を、窒素100体積%のガス雰囲気の下で焼成した。その場合、酸窒化物の合成反応が進行せず、SrSiOと同じ結晶構造を有するケイ素含有化合物が主成分として生成した。
【0176】
従って、焼成は、水素と窒素との混合ガス雰囲気またはアンモニアと窒素との混合ガス雰囲気の下で行うことが好ましい。
【0177】
なお、上述した実施例では、アルカリ土類金属元素として、Srのみを用いる場合の他に、SrおよびCaの組み合わせを用いる場合についてのみ説明したが、CaのかわりにBaおよびMgの少なくとも一方を用いる場合やCaとともにBaおよびMgの少なくとも一方を用いる場合でも、本発明を適用できる。
【0178】
また、上述した実施例では、賦活剤元素として、Euのみを用いる場合について説明したが、EuとともにCeを用いる場合でも、本発明を適用できる。
【0179】
また、上述した実施例では、湿式化学法として、共沈法を用いる場合についてのみ説明したが、クエン酸塩法を用いる場合でも、本発明を適用できる。
【0180】
また、上述した実施例では、窒化ケイ素粒子の表面に、アルカリ土類元素の炭酸塩および賦活剤元素の水酸化物が堆積する場合について説明したが、炭酸塩や水酸化物以外の炭酸水素塩、リン酸塩、カルボン酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩または有機金属化合物が堆積する場合でも、本発明を適用できる。
【0181】
以上のように、本発明を実施の形態および実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されない。該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白である。本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は他の実施態様も含む。
図1
図2
図3
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図10
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