(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対象物にレーザーパルスの前記バーストを適用するステップの前に、まず、レーザーパルスの前記バーストを選択された分散焦点レンズ集束装置に通して集束させるステップをさらに含む請求項1に記載の光音響圧縮加工方法。
前記主焦点ウエストの下方または上方に位置するスポットが、前記対象物に形成されるフィラメンテーションの直径よりも常に大きい直径を有するように集束を調整するステップをさらに含む請求項3に記載の光音響圧縮加工方法。
前記対象物が、1つまたは積層構造の一群の透明なウエハ、プレート、または基板で構成され、前記対象物の加工が、任意の深さおよび前記積層構造の一群のウエハ、プレート、または基板のいずれか1つからの有底または貫通のオリフィスの穴あけである請求項3に記載の光音響圧縮加工方法。
前記分散焦点レンズ集束装置が、前記副焦点ウエストの流束レベルが前記光音響圧縮加工を対象物の所望の体積に確実に伝搬させるだけの十分な強度および数値となるように選択された請求項3に記載の光音響圧縮加工方法。
レーザーパルスの前記バーストが、直前のパルスと前記対象物との相互作用から生じる選択された過渡的効果を維持するのに適したバースト周波数を有し、約10ナノ秒未満のパルス幅を有する請求項1に記載の光音響圧縮加工方法。
前記対象物にレーザーパルスの前記バーストを適用するステップの前に、まず、レーザーパルスの前記バーストを選択された分散焦点レンズ集束装置に通して集束させるステップをさらに含む請求項9に記載の混合型アブレーション光音響圧縮加工方法。
前記主焦点ウエストの下方または上方に位置するスポットが前記対象物に形成されるフィラメンテーションの直径よりも常に大きい直径を有するように集束を調整するステップをさらに含む請求項11に記載の方法。
前記分散焦点レンズ集束装置が、前記副焦点ウエストの流束レベルが前記光音響圧縮加工を前記対象物の所望の体積に確実に伝搬させるだけの十分な強度および数値となるように選択された請求項11に記載の混合型アブレーション光音響圧縮加工方法。
レーザーパルスの前記バーストが、直前のパルスと前記対象物との相互作用から生じる選択された過渡的効果を維持するのに適したバースト周波数を有し、約10ナノ秒未満のパルス幅を有する請求項9に記載の混合型アブレーション光音響圧縮加工方法。
レーザーパルスの前記バーストを適用するステップの前に前記対象材料の表面に犠牲層を適用するステップを含む請求項9に記載の混合型アブレーション光音響圧縮加工方法。
【背景技術】
【0002】
ガラスやポリカーボネートでできた透明な基板に複数の穴を穴あけすることに対する需要は、きわめて大きい。
穴あけされた基板の用途の1つは、大気監視、微粒子監視、細胞学、走化性(chemotaxis)、生物検定(bioassay)等のためのフィルタとして使用することである。
これらの用途では、通常、大量に製造した場合に相互の同一性を維持し、表面積に対する穴の比率が安定している、直径が数百ナノメートルから数十マイクロメートルのオリフィスが必要である。
【0003】
現在、従来技術の材料加工システムでは、ダイヤモンド穴あけ加工、または、アブレーション加工、複合型レーザー加熱冷却加工、高速レーザースクライビング加工等のレーザー露光技術により、ガラス等の基板にオリフィスを作成している。
すべての従来技術システムは、以下に詳述するように、スループットタイムが長く、新奇な基板材料の多くでうまく機能せず、複数の積層した基板の不透過性に関する問題を抱え、要求される密接なオリフィスの間隔を達成できず、材料にひび割れが伝搬し、またはオリフィスの側面および起点を囲む表面に許容できない表面粗さが残る。
【0004】
現在の製造では、ウエハまたはガラスプレートのシンギュレーション処理によるオリフィスの作成は、典型的には、ダイヤモンド切削加工、ルーティング加工、または穴あけ加工に依存している。
【0005】
レーザーアブレーション加工は、シンギュレーション、ダイシング、スクライビング、クリービング、切削、およびファセット処理(facet treatment)のために積極的に開発が進められている分野であるが、特に透明材料において、処理速度が遅い、亀裂が生じる、アブレーション加工によるデブリ、すなわち、廃棄物による汚れが生じる、カーフ幅(kerf width)が抑制される等の欠点を有する。
さらに、レーザー相互作用時の熱輸送(thermal transport)により、付随的な熱損傷(すなわち、熱影響領域(heat affected zone))が広い領域に生じる可能性がある。
レーザーアブレーション加工は、媒体により強力に吸収される波長を有するレーザー(たとえば、深紫外線UV 10エキシマレーザーまたは遠赤外線CO2レーザー)を選択することによって劇的に改善できるが、この物理的なアブレーション加工に固有の積極的な相互作用により、上記欠点を克服することはできない。
【0006】
代替で、レーザーパルスの持続時間を減らすことにより、透明媒体の表面でレーザーアブレーション加工を改善することもできる。
これは、処理媒体の内部で透明であるレーザーにおいて特に有利である。
透明材料の表面上または内部に集束させる場合、レーザー密度が高いと、非線形吸収効果が誘起されて動的な不透明度が生じる。この不透明度を制御して、焦点体積により画定される少量の材料に適したレーザーエネルギーを正確に沈積させることができる。
パルスの持続時間が短いと、パルスの持続時間が長い場合に比べて、さらなる利点がある。たとえば、レーザーパルスの短い時間尺度における熱拡散やその他の熱輸送効果の成分が小さいことにより、プラズマ反射がなくなり、付帯的損害が減少する。
したがって、フェムト秒およびピコ秒のレーザーアブレーション加工は、不透明材料と透明材料の両方で大きな利点をもたらす。
しかし、数十〜数百フェムト秒程度の短いパルスで透明材料を加工した場合でも、レーザーにより形成されたオリフィスまたは溝の周辺で表面が粗くなったり、極小亀裂が生じたりする。
これは、アルミナガラス、ドープ誘電体、光学結晶等の脆弱な材料にとって特に問題である。
さらに、アブレーション加工による廃棄物により、近くの試料および周囲表面が汚れる。
【0007】
オリフィス用にガラスおよび関連材料を切削またはスクライビングするカーフフリー(kerf−free)の方法は、たとえば、CO2レーザーおよびウォータージェットによるレーザー加熱とレーザー冷却との組み合わせに依存する。
近傍での適切な条件の加熱および冷却の下で、材料の深部まで亀裂を誘起する高い引張応力が生成される。これらの亀裂は、レーザー冷却源を表面にわたって走査するだけで、柔軟な曲線経路で伝搬し得る。
こうすると、熱応力により誘起されたスクライビングにより、機械的なスクライビングやダイヤモンド鋸の欠点を伴わずに、また、レーザーアブレーションの成分による廃棄物を生成せずに、材料がきれいに分離される。
ただし、この方法は、応力による亀裂形成に依存してスクライビングを方向付け、機械的手段またはレーザー手段に依存して亀裂形成を引き起こす。
持続時間の短いレーザーパルスは、通常、透明材料の内部で効率的に伝搬でき、レンズの焦点位置での非線形吸収プロセスにより、塊の内部で局所的に変化を誘起するという利点をもたらす。
しかし、透明な光学媒体での超高速レーザーパルス(ピーク出力5MW超)の伝搬は、群速度分散(group−velocity dispersion;GVD)、線形回折、自己位相変調(self−phase modulation;SPM)、自己集束、価電子帯から伝導体への電子の多光子イオン化/トンネルイオン化(MPI/TI)、プラズマ集束解除(plasma defocusing)、自己パルス急峻化等の線形効果および非線形効果の複合作用によるレーザーパルスの空間的および時間的形状の強力な再形成により複雑化する。
これらの効果がどの程度現れるかは、レーザーのパラメータ、材料の非線形属性、および材料への集束条件によって異なる。
【0008】
フラットパネルディスプレイ(FPD)のガラス用の他の高速スクライビング手法も存在する。
倍周波数で780nm、300fs、100μJの出力の100kHzチタンサファイアチャープパルス増幅レーザーがガラス基板の裏面の近傍に集束されてガラスの損傷しきい値を超え、材料の光学破壊により空洞が生成される。
これらの空洞は、レーザーの高反復率により、裏面に到達する。
連結された空洞は、内部の応力および損傷に加えて、機械的応力または熱衝撃によるレーザースクライブ線に沿った方向でのダイシングを促進する表面アブレーションを作り出す。
この方法は、300mm/sの高速なスクライブ速度を潜在的に提供するが、内部に形成された空洞が表面に届くときに、有限のカーフ幅、表面損傷、面の粗さ、およびアブレーションによる廃棄物が生じる。
【0009】
レーザー処理は、ダイヤモンド切削に関連する制限の多くを克服してきたが、上述したように、新たな材料組成により、ウエハやパネルをレーザーでスクライビングすることができなくなった。
今後は、既存の従来技術システムの欠点を回避した、透明材料の上面または裏面から貫通または有底のオリフィスを穴あけ加工するための高速で経済的なシステムにより、材料処理業界における長年のニーズが満たされるであろう。
本発明は、既知の技術と新しい技術とを独自かつ新規な構成で利用および結合して、上述した問題を克服し、かかるニーズの充足を実現するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここまでは、以下に示す本発明の詳細な説明をよりよく理解し、技術に対する本貢献をよりよく把握できるよう、本発明の重要な特徴を幾分広範に説明してきた。
もちろん、本発明には、以下に説明し、本発明の請求項を形成するその他の特徴もある。
【0016】
本開示のさまざまな実施形態および態様について、以下に詳細に説明する。
以下の説明および図面は、本開示を例示するものであり、本開示を限定するものとは理解されない。
本開示のさまざまな実施形態を詳しく理解できるよう、多数の具体的な詳細について説明する。
ただし、場合によっては、本開示の実施形態を簡潔に説明するために、既知または従来の詳細事項については説明しない。
【0017】
この点に関し、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその用途において、以下の説明または図面に示される構造の詳細または構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。
本発明は、他の実施形態に対応し、さまざまな方法で実施および実行できる。
また、本明細書で採用される表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定と捉えられるべきものではないことを理解されたい。
【0018】
別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、当業者に共通して理解されるものと同一の意味を持つものとして意図される。
コンテキスト等により別途指示しない限り、本明細書で使用される以下の用語は、以下の意味を持つものとして意図される。
【0019】
本明細書で使用されるアブレーション穴あけ(ablative drilling)という用語は、レーザービームを放射することにより対象物の表面を(通常は材料の除去により基板を切削または穴あけすることにより)加工する方法を示す。
低いレーザー流束では、吸収されたレーザーエネルギーによって材料が加熱され、蒸発または昇華する。
高いレーザー流束では、材料が典型的にはプラズマに変換される。
通常、レーザーアブレーション加工とは、パルスレーザーで材料を除去することを示すが、レーザー密度が十分に高ければ、連続波レーザービームで材料をアブレーションすることが可能である。
アブレーション穴あけまたは切削の加工には、廃棄物領域(debris field)が形成され、材料除去プロセス中の特定時点に液体/溶解段階が存在し、形状の入口または出口に噴出土手(ejecta mound)が形成されるという特徴がある。
【0020】
本明細書で使用される「光音響穴あけ」(photo acoustic drilling)という用語は、一般にアブレーション穴あけまたは切削で使用される低パルスエネルギー光ビームを放射することで個体から基板を切削または穴あけすることにより対象物を加工する方法を示す。
光吸収のプロセスとそれに続く熱弾性膨張により、放射された材料内に広帯域音響波が生成されて、ビーム伝搬軸(オリフィスの軸と共通)を中心に圧縮された材料の通路が材料内に形成される。
この方法には、オリフィスの壁が滑らかになり、噴出物が最小化または除去され、材料における極小亀裂の形成が最小化されるという特徴がある。
【0021】
本明細書で使用される「光学効率」という用語は、主焦点ウエストにおけるフルエンス(fluence)の集束要素または装置の開口部における総入射フルエンスに対する比率に関する。
【0022】
本明細書で使用される「透明」という用語は、入射光ビームに対して少なくとも部分的に透明な材料を意味する。
より好ましくは、透明基板は、本明細書に記載された実施形態に基づく入射ビームによる内部フィラメント修正配列の生成を支援できる十分な大きさの吸収深さによって特徴付けられる。
言い換えると、入射ビームの少なくとも一部が線形吸収領域で伝達されるような吸収スペクトルおよび厚さを有する材料である。
【0023】
本明細書で使用される「フィラメント修正領域」(filament modified zone)という用語は、基板内のフィラメント領域であって、光ビーム経路により画定される圧縮領域により特徴付けられる領域を示す。
【0024】
本明細書で使用される「バースト」、「バーストモード」、または「バーストパルス」という用語は、レーザーの繰り返し周期よりも実質的に小さい相対時間間隔を有するレーザーパルス群を示す。
バースト内のパルス間の時間間隔は一定または可変であり得ること、および、バースト内のパルスの増幅は、たとえば、対象材料の内部に最適化または事前に決定されたフィラメント修正領域を作成することを目的に、可変であることを理解されたい。
一部の実施形態では、パルスのバーストは、そのバーストを形成するパルスの強度またはエネルギーを変えて形成される。
【0025】
本明細書で使用される「幾何学的焦点」(geometric focus)という表現は、レンズの曲線に基づいて光が通過する通常の光学経路であって、ビームウエストが光学に共通する単純なレンズ方程式に応じて位置する光学経路を示す。
この表現は、レンズの位置とその相互関係とによって作り出される光学焦点と、対象材料の熱変形によって 作り出され、結果的に最大約15mmの疑似レイリー長を提供する狭窄事象とを区別するために使用される。後者は特に珍しく、本研究の発明的な特性に関連している。
【0026】
本明細書で使用される「基板」という用語は、ガラスまたは半導体を意味し、透明セラミック、ポリマー、透明導電体、バンドギャップの大きいガラス、結晶、結晶水晶、ダイヤモンド、サファイア、希土類元素製剤、ディスプレイ用金属酸化物、およびコーティング有りまたはコーティング無しの研磨状態または非研磨状態のアモルファス酸化物からなるグループより選択され、プレートやウエハを含むがこれらに限定されない任意の幾何学的構成を網羅するように意図されている。
基板は、2つ以上の層を含み、それら2つ以上の層の少なくとも1つの中にフィラメント配列を生成するように集束レーザービームのビーム焦点の位置が選択される。
複数層の基板は、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、有機ELディスプレイ(OLED)等の複数層フラットパネルディスプレイガラスを含む。
また、基板は、自動車用ガラス、チューブ、窓、バイオチップ、光学センサ、平面光波回路、光ファイバ、飲料用ガラス製品、アートグラス、シリコン、111−V半導体、超小型電子チップ、メモリチップ、センサチップ、電気工学レンズ、フラットディスプレイ、強固なカバー材料を必要とするハンドヘルドコンピューティングデバイス、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、および垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)からなるグループから選択される。
対象物または対象材料は、通常は基板から選択される。
【0027】
本明細書で使用される「主焦点ウエスト」(principal focal waist)という用語は、最終集束後(光が対象物に入射する前の最後の光学要素装置を通過した後)のビームが最も密に集束され、最も焦点強度が大きい部分を示す。
また、この用語は、「主焦点」という用語と同じ意味で使用され得る。
「副焦点ウエスト」(secondary focal waist)という用語は、分散ビームの主焦点ウエストよりも強度が小さい他のすべての焦点を示す。
この用語は、「副焦点」という用語と同じ意味で使用される。
【0028】
本明細書で使用される「フィラメント」(filament)という用語は、媒体を通過し、カー効果が観測または測定される任意の光ビームを示す。
【0029】
本明細書で使用される「レーザーフィラメンテーション」(laser filamentation)とは、レーザーを使用して材料内にフィラメントを作成する行為である。
【0030】
本明細書で使用される「犠牲層」(sacrificial layer)という用語は、対象材料に除去可能に適用できる材料を示す。
【0031】
本明細書で使用される「加工」または「修正」という用語は、対象物または基板の表面または内部のオリフィス穴あけ、切削、スクライビング、またはダイシングのプロセスを包含する。
【0032】
本明細書で使用される「焦点分散」(focal distribution)という用語は、全体として正レンズであるレンズ装置を通過する入射光線の時空的分散を示す。
一般に、本明細書では、集束レンズの中心からの距離に応じた有用な強度のスポットの収束について説明する。
【0033】
本明細書で使用される、「臨界エネルギーレベル」(critical energy level)、「しきい値エネルギーレベル」(threshold energy level)、および「最小エネルギーレベル」(minimum energy level)という用語は、いずれもアブレーション加工、光音響圧縮加工、カー効果等を含むがこれらに限定されない過渡的なプロセスを対象材料に発生させるために対象物に与える必要がある最小限のエネルギー量を示す。
【0034】
本明細書で使用される「収差レンズ」(aberrative lens)という用語は、レンズを通過する入射光に対して分散した焦点パターンを作り出すために、x面のレンズ曲線がy面のレンズ曲線と等価ではない不完全なレンズである集束レンズを示す。
正収差レンズは収束レンズであり、負収差レンズは発散レンズである。
【0035】
本明細書では、「含む」および「含んでいる」という用語は、包括的かつ非限定的であると解釈されるものであり、排他的とは解釈されない。
詳細には、明細書およびクレームで使用された場合、「含む」および「含んでいる」という用語ならびにそれらの変形は、特定の特徴、ステップ、または構成要素が含まれることを意味する。
これらの用語は、他の特徴、ステップ、または構成要素の存在を排除するものとは解釈されない。
【0036】
本明細書で使用される「例示的な」という用語は、「例、事例、または実例としての役割を果たす」ことを意味するものであり、本明細書で開示される他の構成よりも好適または有利であると解釈すべきではない。
【0037】
本明細書で使用される「約」という用語は、特性、パラメータ、寸法の変量など、値範囲の上限および下限の間に存在し得る変量を網羅することを意味する。
非限定的な一例では、「約」という用語は、プラスまたはマイナス10パーセント以下を意味する。
【0038】
本発明の主たる目的は、超高速レーザーパルスのバーストによるフィラメンテーションによって複数の積層した対象材料の1つの下方または上方に発生させることができるオリフィス(有底/盲のオリフィスまたは貫通のオリフィス)を対象材料に発生させる、高速で信頼性が高く経済的な非アブレーションレーザー加工手法を提供することである。
超短レーザーは、多光子、トンネルイオン化、および電子雪崩の各プロセスを積極的に駆動することにより表面をきれいに微小加工、修正、および処理する高い強度を提供する。
当面の問題は、対象の透明材料に、アブレーション穴あけ加工で使用されるエネルギーよりも少なく、かつ光音響圧縮加工を開始および維持するための臨界エネルギーレベルよりも大きいエネルギーをどのように与えて、材料内の焦点における屈折率を修正し、(従来技術のアブレーション穴あけシステムで直面する)光学破壊に直面しないフィラメントを作成して、対象材料内でのレーザービームの継続的な再集束を長距離にわたって継続し、複数の積層した基板でも先細りを抑えてオリフィスの壁を滑らかにしつつ対象材料の上方、下方、または内部から同時に穴あけできるようにするかである。
【0039】
一般に、従来技術では、透明材料を加工するために、材料の上方、内部、または表面の単一の主焦点に集束する高エネルギーのパルスレーザービームを利用するレーザーアブレーション加工が使用されてきた。
図1に示すように、入射レーザー光ビーム2は、集束装置を通り、最後の集束レンズ4を通過して、対象物10の表面に主焦点ウエスト8が位置する非分散光ビーム6を集束させる。
図3からわかるように、オプションで、主焦点ウエスト8が対象物の内部に位置するように非分散光ビームを集束させることができる。
通常、これらの手法では、
図9に示すように、完全な球面集束レンズ12、すなわちX面の曲率とY面の曲率とが等価である(Cx=Cy)非収差レンズを使用するか、または、単一の焦点14を持つ非分散ビームを生成する集束要素装置を用いる。
これにより、対象の基板材料10の表面上(
図1)または内部(
図3)に伝達される狭いビームスポットが作成される。
図2は、
図1の手法で切削された加工済みスロット16の形状を示し、
図4は、
図3の手法で作成された楕円形のオリフィス18を示す。
【0040】
さまざまな光学媒体での強力な超高速のレーザーパルスの伝搬が広く研究されている。
材料の非線形屈曲率は、レーザー強度に依存する。
パルスの中心部が尾部よりもはるかに強力なガウス分布の強力なレーザーパルスを使用すると、レーザービームパルスを受ける側の材料の中心領域と周辺領域とで屈折率が変わる。
結果として、そのようなレーザーパルスの伝搬時に、パルスが自動的につぶれる。
この非線形現象は、業界で自己集束と呼ばれている。
自己集束は、ビーム経路でレンズを使用して促進することもできる。
焦点領域で、レーザービームの強度は、多重イオン化、トンネルイオン化、および雪崩イオン化を引き起こすのに十分な値に達し、それによって材料にプラズマが作成される。
プラズマにより、レーザービームは集束解除し、再び集束して次のプラズマボリュームを形成する。
非分散ビームの単一焦点に固有の問題は、レーザーパルスがすべてのエネルギーを失うとプロセスが終了し、上述のように再集束できないことである。
【0041】
このアブレーション方法は、材料10の光学破壊しきい値を超えて光学破壊(OB)16が発生するまで、材料内に最大で長さ30ミクロンのフィラメントを発展させる(
図9)。
OBの時点で、最大しきい値フルエンス(単位面積当たりで伝達されるエネルギー。単位はJ/m
2)に到達し、オリフィス直径が狭くなってアブレーション加工または穴あけがそれ以上深く進まなくなる。
これは、従来技術の方法を使用することの明らかな欠点である。なぜなら、これらの方法では、穴あけできるオリフィス22のサイズが制限され、オリフィス22の壁が粗くなり、対象物10の上面と底面とで直径が異なる先細りのオリフィス22ができあがるからである(
図5)。
こうしたことが起こるのは、アブレーション加工では、ビームの中心焦点8(主焦点ウエストともいう)が対象物10の表面に位置し、加熱および熱膨張が局所化して、材料10の表面がその沸点まで加熱されキーホールが生成されるからである。
キーホールは、光学吸収率の唐突な増加につながり、オリフィス22を急速に深くする。
オリフィス22が深くなり、材料が沸騰するにつれ、生成された蒸気が融解した壁を侵食し、噴出物20を吹き飛ばし、オリフィス22をさらに大きくする。
このとき、被アブレーション材料は、拡張しながら下方の表面に高圧のパルスを適用する。
この効果は、表面をハンマーで叩くことに似ており、脆弱な材料は簡単に割れる(さらに、脆弱材料は熱破壊に特に敏感である。
熱破壊は、熱応力割(thermal stress cracking)で利用される特徴だが、オリフィスの穴あけでは望ましくない)。
通常、OBに到達するのは、デブリと称する廃棄物が噴出しないか、オリフィス22で気泡が形成されるか、またはオリフィス22の領域に対象物を亀裂させる強烈なアブレーションが存在するときである。
これらの効果のいずれかまたは組み合わせにより、ビーム6はこのポイントから散乱するか、または完全に吸収され、材料10をさらに穴あけするだけの十分なビーム力(フルエンス)が失われる。
さらに、これにより、アブレーション噴出土手20と呼ばれる歪みまたは粗さが、対象基板10の表面の起点の周囲に形成される(
図5)。
【0042】
レーザーアブレーション加工のもう1つの問題は、レーザービームのフィラメンテーションの直径が距離に応じて変化するため、穴あけするオリフィスの直径が一定でないということである。
これは、レイリー範囲として説明される。レイリー範囲は、焦点ウエストから断面積が2倍になる場所までのビームの伝搬方向に沿った距離である。
これにより、
図2および
図5に示すような先細りのオリフィス22ができあがる。
【0043】
本発明は、光学破壊の問題を解決し、オリフィスの粗さとアブレーション噴出土手とを最小限に抑え、直径が先細りしたオリフィスをなくす。
【0044】
本開示は、レーザーにより誘起される光音響圧縮(photo acoustic compression)によって透明材料にオリフィスを加工する装置、システム、および方法を提供する。
既知のレーザー材料加工と異なり、本発明の実施形態では、入射ビーム2を長手方向のビーム軸に沿って分散させる光学配置を利用する。
これにより、主焦点ウエスト8と副焦点ウエスト24とを直線的に並べて(オリフィスの直線軸に一致するが、主焦点8または焦点ウエストから垂直方向にずれている)、入射ビーム2が材料10を通過するときに連続して再集束できるようにし、それによって材料10内のビーム経路に沿った屈折率を修正し、かつ(初歩的なフィラメンテーションを使用するものと使用しないものとを含む従来技術のアブレーション穴あけシステムに見られるような)光学破壊に直面しないフィラメントの作成を可能にし、対象材料におけるレーザービームの継続的な再集束を長距離にわたって継続できるようにする(
図6)。
【0045】
この分散集束方法では、分散焦点レンズ集束装置からなる分散集束要素装置26により副焦点ウエスト24を作成し、主焦点ウエスト8を材料10の上方、内部、または外部に位置させることによって、主焦点ウエスト8に存在する入射ビーム2の不要なエネルギーを「ダンピング」または低減することができる。
このように、ビームフルエンスのダンピングと主焦点ウエスト8および副焦点ウエスト24の線形配列とを組み合わせることで、これまで既知の方法を使用して可能だった距離を大幅に上回る(および1mmを大幅に上回る)距離にわたりフィラメントを形成しつつ、フィラメント領域の全長にわたり実際の修正および圧縮を行うための十分なレーザー強度(フルエンスμJ/cm
2)を維持することができる。
この分散集束方法は、1ミリメートルを超える長さのフィラメントの形成をサポートし、かつエネルギー密度を材料の光学破壊しきい値よりも低く維持する。
これにより、複数の積層基板でも異種の材料(対象材料の層の間の空気またはポリマーの間隙など)にわたって同時に穴あけできるだけの十分な強度を保ち、穴あけ距離全体での先細りをごくわずかにし(
図7)、比較的滑らかな壁のオリフィスを対象材料の上方、下方、または内部から形成できるようにする。
オリフィスの加工中に対象物10を相対的に移動することで、壁が先細りしていないスリット23を対象物10内に形成できる。
【0046】
レーザーパルスの光学密度により、自己集束現象が起こり、フィラメントの内部/近傍/周囲の領域で非アブレーション初期光音響圧縮を行うのに十分な強度のフィラメントが生成される。
これにより、フィラメントに一致する実質的に一定の直径の線形対称空洞が作成され、またレーザーパルスの連続的な自己集束および集束解除と分散ビームの副焦点ウエスト24によるエネルギー入力との組み合わせによって、対象材料の指定された領域を横断または貫通するオリフィスの形成を指示/案内するフィラメントが形成される。
このオリフィスは、対象物から材料を除去するのではなく、形成されるオリフィスの周囲の対象材料を光音響圧縮することによって形成できる。
【0047】
対象物10の表面でのフルエンスレベルは、入射ビーム2の強度と特定の分散焦点レンズ集束装置からなる分散集束要素装置26とに依存することがわかっており、特定の対象物の素材、対象物の厚さ、所望の加工速度、オリフィス全体の深さ、およびオリフィスの直径に応じて調整される。
また、穴あけされるオリフィスの深さは、レーザーエネルギーが吸収される深さに依存する。したがって、単一のレーザーパルスによって除去される材料の量は、材料の光学特性と、レーザーの波長およびパルス長とに依存する(このため、本明細書では、使用するシステムおよび材料で最適な結果を得るために経験的な判断を必要とする各基板および対応する用途ごとに、幅広い加工パラメータを示す)。
そのため、表面でのフルエンスレベルが一時的かつ局所的なアブレーション(蒸発)加工を開始するのに十分な高さである場合、対象物10の入口点で最小限のアブレーション噴出土手20が形成されることがある。ただし、このプラズマ作成は必須ではない。
状況によっては、過渡的かつ一時的なアブレーション穴あけを作成するのに十分な強度のフルエンスレベルを対象物10の表面で利用して幅広の傾斜した入口を作成しつつ、オリフィス22の残りの部分は同一の直径とするのが望ましい場合がある(
図8)。
このようなオリフィス22は、一時的なアブレーション加工とそれに続く継続的な光音響圧縮加工とを許容するエネルギーレベルを使用した分散焦点混合型穴あけ方法により作成される。
これは、本発明により、アブレーション加工に必要なフルエンスレベルが傾斜部(または他の形状構成)の所望の深さで消耗するように材料におけるビームの線形吸収と非線形吸収とをバランスさせたフルエンスレベルを対象物の表面で選択することにより実現できる。
この分散焦点混合型穴あけ手法では小さな排出土手20ができるが、対象物の表面に犠牲層30を適用することで除去できる。
一般的な犠牲層30は、PVA、メタクリル樹脂、PEG等を含むがこれらに限定されない樹脂またはポリマーであり、通常必要な厚さはわずか1〜300ミクロンである(ただし、透明材料の加工では、10〜30ミクロンの範囲が利用され得る)。
犠牲層30は、一般的には対象材料の表面に噴霧することにより適用される。
犠牲層30は、技術分野で知られているように、溶融したデブリと称する廃棄物が表面に付着するのを防ぎ、代わりに除去可能な犠牲材料に付着させることにより、材料10に噴出土手20が形成されるのを防ぐ。
【0048】
光音響圧縮加工を実現するには、以下のシステムが必要である。
・バーストパルスエンベロープ内に2〜50のサブパルスを含むプログラミング可能なパルス列を含むビームを生成できるバーストパルスレーザーシステム。このレーザーシステムはさらに、利用する対象材料に応じて、1〜200ワットの平均出力を生成できる必要がある。通常、この範囲は、ホウケイ酸ガラスの場合で50〜100ワットである。
・対象材料での入射フルエンスがカー効果の自己集束および伝搬を引き起こすのに十分である弱収束の多焦点空間ビーム像を生成できる分散焦点レンズ集束装置からなる分散集束要素装置26(正レンズおよび負レンズを含み得るが、全体として正集束効果を有する)。
・対象物にビームを伝えることができる光学伝送システム。
【0049】
商業運転では、光学装置に対して材料(またはビーム)を移動する(またはその逆で移動する)機能、またはシステム制御コンピュータにより駆動される協調/複合動作が必要である。
【0050】
このシステムを使用して光音響圧縮加工によってオリフィスを穴あけするには、特定の対象物に対して、分散焦点要素装置26の特性、バーストパルスレーザービームの特性、および主焦点の位置を調整する必要がある。
【0051】
分散焦点レンズ集束装置からなる分散焦点要素装置26は、非球面プレート、テレセントリックレンズ、非テレセントリックレンズ、非球面レンズ、環状ファセットレンズ(annularly faceted lenses)、カスタム研磨収差(非完全)レンズ、正レンズと負レンズとの組み合わせまたは一連の修正プレート(位相シフトマスキング)、入射ビームに対して傾斜した任意の光学要素、ビームの伝搬を操作できる能動補正光学要素など、技術分野で一般的に採用されている多様な既知の集束要素でよい。
上述した光学要素装置候補の主焦点ウエスト8は、通常は、主焦点ウエスト8における入射ビームのフルエンスの50%〜90%を含む(ただし、事例によっては、分散焦点要素装置26の光学効率が99%に達することがある)。
図10は、上述したプロセスで使用され得る非球面の収差レンズ34を示す。
分散焦点レンズ集束装置からなる分散焦点要素装置26の実際の光学効率は、個別の用途ごとに微調整する必要がある。
利用者は、各透明材料、対象物の物理構成および特性、ならびに特定のレーザーパラメータに応じた一群の経験的テーブルを作成する。
炭化ケイ素、ガリウムリン、サファイア、強化ガラス等はそれぞれ独自の値を持つ。
このテーブルは、材料内にフィラメントを作成し(レーザー出力、反復率、焦点位置、およびレンズ特性のパラメータを上述したように調整する)、亀裂の面または光音響圧縮の軸を誘起してオリフィスを作成するのに十分なフルエンスが存在することを確認することにより決定される。
ホウケイ酸塩でできた厚さ2mmの単一プレート状の対象物に、周波数(反復率)が1MHz域である10μJのエネルギーのバーストパルスを出力するImicronの50ワットレーザーで、直径5ミクロンの貫通オリフィス(
図11に図示)を穴あけするためのサンプル光学効率は、ビームの主焦点ウエスト8が所望の起点から1mm離れたところに位置する状態で65%である。
【0052】
この光音響圧縮穴あけ加工で満たす必要がある一群の物理パラメータが存在することに注目されたい。
図11および
図12を参照すると、ビームスポット直径38>フィラメント直径40>オリフィス直径42の関係であることがわかる。
さらに、分散ビームの主焦点ウエスト8は、フィラメントが作成される対象材料10の内部または表面上に位置していない。
【0053】
主焦点ウエスト8の位置は、一般に、所望の起点から500マイクロメートル〜300ミリメートル離れた範囲内である。
これは、
図6にも示すように、エネルギーダンプ距離32と呼ばれる。
また、各透明材料に応じた経験的テーブルの作成により、対象物の物理構成および特徴と、レーザーのパラメータとが判断される。
これは、上述した方法により作成されたテーブルより推測される。
【0054】
レーザービームエネルギーの特性は、次のとおりである。
すなわち、ビームのパルスエネルギーは、5μJ〜1000μJ、反復率は 1Hz〜2MHz(反復率は、試料移動(sample movement)の速度および隣接フィラメント間の間隔を定義)である。
フィラメントの直径および長さは、各バーストエンベロープ内に存在する一時的エネルギー分散を変更することにより調節できる。
図17乃至
図19は、バーストパルスレーザー信号の3つの異なる一時的エネルギー分散例を示している。
図19の上昇および下降するバーストエンベロープ形状は、誘電材料から薄い金属層を除去するのに非常に適したプロセス制御の特に有益な手段を表している。
【0055】
図13乃至
図16を参照すると、本発明の機構が最もよく示され得る。
ここでは、バーストピコ秒パルス光を使用している。これは、対象材料10に堆積するエネルギーの総量が低く、光音響圧縮が対象材料10を亀裂させずに進行できるからである。
また、対象材料10で生成される熱が少ないため、効率的な小単位のエネルギーが材料に堆積し、よってフィラメントの周囲で材料の完全性を損なうことなく材料を基底状態から最大励起状態に漸進的に高めることができるからである。
【0056】
実際の物理プロセスは、本明細書で説明するように発生する。
パルスバーストレーザーの入射光ビームの主焦点ウエスト8が、分散集束要素装置を通じて、フィラメントが作成される対象材料10の上方または下方(内部となることはない)の空間の点に提供される。
これにより、対象物10表面にスポットが作成されるとともに、白色光が生成される。
対象物表面のスポットの直径は、フィラメントの直径および所望の形状(オリフィス、スロット等)の直径を上回る。
したがって表面のスポットに入射するエネルギーの量は、二次電気光学効果(カー効果―材料の屈折率の変化は、適用される電場に比例する)を生成するための臨界エネルギーよりも大きいが、切削プロセスを誘起するために必要な臨界エネルギーよりは低く、より明確には、材料の光学破壊のしきい値を下回る。
この関係を満たす臨界出力よりも上で自己集束が発生する。このとき、出力は、対象材料10の実屈折率と複素屈折率との積に反比例する。
自己集束条件と光学破壊条件との間のバランスを維持できるように対象材料10で必要な出力を時間的尺度にわたり維持した結果として、光音響圧縮加工が進行する。
この光音響圧縮加工は、均一で高出力なフィラメント形成および伝搬プロセスの結果である。このとき、材料は、アブレーションプロセスを介した除去に有利になるように再配置される。
したがってきわめて長いフィラメントの形成が、分散集束要素装置によって作成される空間拡張された副焦点によって誘発され、光学破壊に到達することなく自己集束効果が維持される。
この装置では、多数の周辺光線および近軸光線が、主焦点に対して相対的な異なる空間位置で収束する。
これらの副焦点は、無限空間に延在するが、対象物の厚さに経験的に対応する限られた範囲のみで有用な強度を持つ。
副焦点のエネルギーを、基板の表面よりも低いレベルであるがフィラメント事象の能動的な底面であるレベルに集束させる。
これにより、レーザーエネルギーがプラズマによる吸収とデブリと称する廃棄物による散乱とを回避しながら、材料の大半にアクセスすることが可能となる。
【0057】
分散焦点要素装置は、不均等に分散しているように見える入射ビームの焦点を、主焦点ウエスト8と一連の直線的に配置された副焦点ウエスト(焦点)とを含む分散焦点ビーム経路に発展させるために、入射レーザービームの経路に配置された単一の収差焦点レンズである。
これらの焦点の配列は、オリフィス42の直線軸と共線的である。
なお、主焦点ウエスト8は、対象材料10の表面上または内部に位置することはない。
図13では、主焦点ウエスト8が対象材料10の上方にあり、
図14では、主焦点ウエスト8が対象材料10の下方にある。
これは、焦点ビームの対称的かつ非直線的な特性により、オリフィス42が主焦点ウエスト8の上方または下方から開始されるからである。
したがって、ビームスポット52(約10μm離れている)が対象物10の表面に存在し、弱い副焦点ウエスト50が対象物10内に共線的に存在する。
これは、レーザーの電場が対象物10の屈折率を変化させるため、材料が最後の光学要素として機能して、これらの焦点を作成するからである。
この分散焦点により、
図15に示すように、レーザーエネルギーを材料に堆積させて、フィラメントラインまたはフィラメント領域60を形成することができる。
複数の焦点を直線状に配置し、材料を最後のレンズとして機能させることにより、対象材料は、超高速バーストパルスレーザービームを照射されたときに、多数の連続する局所的な加熱を被る。
これにより、直線状に配列された焦点の経路に沿って、材料の局所的な屈折率(詳細には複素屈折率)の変化が熱的に誘起される。
これにより、長くて先細りのないフィラメント60が対象物に発展し、それに続いて音響圧縮波が材料の所望の領域を環状に圧縮して、フィラメンテーション経路の周辺に空洞および圧縮された材料のリングが作成される。
次に、ビームが再集束し、再集束したビームと副焦点ウエストのエネルギーとの組み合わせによって臨界エネルギーレベルが維持され、この一連の事象が自動的に繰り返されて、縦横比(オリフィスの長さ/オリフィスの直径)が1500:1で、先細りがほとんどなく、オリフィスの入口サイズと出口サイズが事実上同じ直径であるオリフィスが穴あけされる。
これは、エネルギーを対象材料の上面または内部に集束させ、結果としてフィラメンテーション距離が光学破壊に到達してフィラメンテーションが劣化または停止するまでの短いものとなる従来技術と異なる。
【0058】
図16は、空隙を挟んだ3枚の積層構成のプレート状対象物10のうちの下の2枚へのオリフィスの穴あけを示している。ここで、主焦点ウエスト8は、最後の対象物10の下方に位置している。
穴あけは、複数層の構成の上方、下方、または中間から行うことができるが、同じレンズセットおよび曲率を使用した場合は、穴あけ事象は、常に主焦点ウエスト8から同じ距離で発生する。
主焦点ウエスト8は、常に材料の外部にあり、基板の表面に達することはない。
【0059】
光音響圧縮加工を通じてオリフィスを穴あけする方法は、以下の連続するステップにより実現される。
1.レーザー源から、選択した分散焦点レンズ集束装置を通じてレーザーエネルギーを渡す。
2.レーザー源に対する分散焦点レンズ集束装置の相対的な距離および/または角度を、レーザーエネルギーを分散焦点構成で集束して主焦点ウエストと少なくとも1つの副焦点ウエストとを作成するように調節する。
3.主焦点ウエストが工作される対象物の表面上または内部に位置しないように、主焦点ウエストまたは対象物を調節する。
4.主焦点ウエストの下方または上方に位置する対象物の表面上のレーザーフルエンスのスポットが、対象物に形成されるフィラメンテーションの直径よりも常に大きな直径を有するように、焦点を調節する。
5.光音響圧縮加工が対象物の所望の体積に確実に伝搬するように、副焦点ウエストのフルエンスレベルを十分な強度および数に調節する。
6.適切な波長、適切なバーストパルス反復率、および適切なバーストパルスエネルギーを有するレーザーパルスの少なくとも1つのバーストを、選択した分散焦点レンズ集束装置を通じて、レーザー源から対象物に適用する。ここで、レーザーパルスが対象物の加工の起点に接触するスポットで対象物に適用されるパルスエネルギーまたはフルエンスの総量は、光音響圧縮加工を開始および伝搬するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きいが、アブレーション加工を開始するために必要なしきい値臨界エネルギーレベルよりも低い。
7.所望の加工が完了したら、レーザーパルスのバーストを停止する。
【0060】
既に述べたように、オリフィスの入口が先細りした特殊なオリフィス構成が望ましい場合がある。
これは、所望の距離だけアブレーション加工ができるレーザーフルエンスレベルでオリフィスを開始し、アブレーション加工の臨界レベルよりも低くかつ材料の所望の深さまで光音響圧縮加工を行うための臨界レベルよりも高いレーザーフルエンスレベルで穴あけを完了することにより実現される。
この種のオリフィス形成では、対象物の表面への除去可能な犠牲層の適用も利用できる。
これにより、噴出土手を犠牲層の上に形成し、後で噴出土手を犠牲層と共に除去することができる。
このようなアブレーション加工と光音響圧縮加工との混合型加工方法によるオリフィスの穴あけは、以下のステップにより実行できる。なお、ここでは犠牲層の適用を利用しているが、利用する場合は最初に実行しなくてもよい。
1.対象物の少なくとも1つの表面に犠牲層を適用する。
2.レーザー源から、選択した分散焦点レンズ集束装置を通じてレーザーエネルギーを渡す。
3.レーザー源に対する分散焦点レンズ集束装置の相対的な距離および/または角度を、レーザーエネルギーを分散焦点構成で集束して主焦点ウエストと少なくとも1つの副焦点ウエストとを作成するように調節する。
4.主焦点ウエストが、機械工作される対象物の表面上または内部に位置しないように、主焦点ウエストまたは対象物を調節する。
5.対象物の表面上のレーザーフルエンスのスポットが、主焦点ウエストの下方または上方に位置するように、焦点を調節する。
6.対象物の表面上のレーザーフルエンスのスポットを、対象物に形成されるフィラメンテーションの直径よりも常に大きな直径を有するように調節する。
7.副焦点ウエストのフルエンスレベルが、対象物の所望の体積に光音響圧縮加工を確実に伝搬できる強度および数であることを確認する。
8.適切な波長、適切なバーストパルス反復率、および適切なバーストパルスエネルギーを有するレーザーパルスの少なくとも1つのバーストを、選択した分散焦点レンズ集束装置を通じて、レーザー源から対象物に適用する。
ここで、レーザーパルスが対象物の加工の起点に接触するスポットで対象物に適用されるパルスエネルギーまたはフルエンスの総量は、アブレーション加工を所望の深さまで開始するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きく、その後、アブレーション加工により穴あけされたオリフィスの底部におけるフルエンスエネルギーは、フィラメンテーションおよび光音響圧縮加工を開始および伝搬するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きいが、アブレーション加工を開始するために必要なしきい値臨界エネルギーレベルよりも低い。
9.所望の加工が完了したら、レーザーパルスのバーストとフィラメンテーションとを停止する。
【0061】
レーザー特性のさまざまなパラメータ、主焦点ウエストの位置、および最終的な集束レンズの配置と作成されるオリフィスの特徴とを次の表に示す。
これらは対象材料の種類、対象材料の厚さ、ならびに所望のオリフィスのサイズおよび位置によって値が大きく異なるため、範囲で表されていることに注意されたい。
次の表は、多様な透明材料のいずれかに均一のオリフィスを穴あけするために使用される、さまざまなシステム変数の範囲を詳細に示している。
【0062】
既に述べたように、上記パラメータは、対象物によって異なっている。
操作の例として、透明基板に3ミクロンの穴を深さ2mmで穴あけするには、装置およびパラメータとして、波長1064ナノメートルのレーザー、65ワットの平均出力、10μJのパルスエネルギー、バーストごとに15個のサブパルス、および1MHzの反復率を使用する。
これを、2mmの空間(フィラメント活性領域が長さ2mm)にわたって焦点を分散させる収差レンズで、材料に応じて上面より.5ミクロン〜100mm上方で集束させる。
【0063】
本発明は、以上の説明または図面に示された構成要素の配置に用途が限定されるわけではないことを理解されたい。
本発明は、他の実施形態に対応し、さまざまな異なる順序のステップでも実現および実行できる。
また、本明細書で採用されている表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定とみなされるべきものではないことに注意されたい。
よって当業者は、本開示の基盤となる概念が、本発明のさまざまな目的を実行するための他の構造、方法、およびシステムを設計するための基盤として容易に利用できることを理解する。
したがって、特許請求の範囲については、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、等価の構造物を含んでいるとみなすことが重要である。