特許第6239462号(P6239462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239462
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20171120BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01M7/02 C
   G01M17/007 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-156381(P2014-156381)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33483(P2016-33483A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2016年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121120
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男
(72)【発明者】
【氏名】船上 誠
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孔一
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特公平06−052225(JP,B2)
【文献】 実開昭59−025451(JP,U)
【文献】 特開2002−372480(JP,A)
【文献】 特開2001−183259(JP,A)
【文献】 特開平4−22838(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0104670(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/00− 7/08
G01M 17/00−17/10
G01M 9/00− 9/08
G01N 17/00−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象物を振動又は走行させて試験するための試験装置であって、
欠落部分を設けた固定床と、
前記欠落部分に対応して配置され、試験対象物の試験を実行するための試験実行部と、
前記固定床の下方に設置され、前記試験実行部の移動に伴い水平方向に移動可能な移動パネルと、
前記欠落部分を覆うように前記固定床の上に配置され、前記欠落部分を覆った状態にて前記移動パネルの移動に応じて水平方向に移動する床表面部材と、
前記欠落部分において前記移動パネルの上に配置され、少なくとも前記試験対象物が前記床表面部材上にあるときには前記床表面部材からの荷重を前記移動パネルとともに受ける複数の荷重受け治具とを備え、
前記複数の荷重受け治具は、前記欠落部分内で前記床表面部材に対して相対移動可能である、
試験装置。
【請求項2】
試験対象物を振動又は走行させて試験するための試験装置であって、
欠落部分を設けた固定床と、
前記欠落部分に対応して配置され、試験対象物の試験を実行するための試験実行部と、
前記固定床の下方に設置され、前記試験実行部の移動に伴い水平方向に移動可能な移動パネルと、
前記欠落部分を覆うように前記固定床の上に配置され、前記欠落部分を覆った状態にて前記移動パネルの移動に応じて水平方向に移動する床表面部材と、
前記欠落部分において前記移動パネルの上に配置され、少なくとも前記試験対象物が前記床表面部材上にあるときには前記床表面部材からの荷重を前記移動パネルとともに受ける複数の荷重受け治具とを備え、
前記複数の荷重受け治具は、前記欠落部分内で移動可能であり、
前記複数の荷重受け治具の配置個数は、前記荷重受け治具を前記欠落部分に充填可能な最大数の40%〜90%の範囲内である、
試験装置。
【請求項3】
試験対象物を振動又は走行させて試験するための試験装置であって、
欠落部分を設けた固定床と、
前記欠落部分に対応して配置され、試験対象物の試験を実行するための試験実行部と、
前記固定床の下方に設置され、前記試験実行部の移動に伴い水平方向に移動可能な移動パネルと、
前記欠落部分を覆うように前記固定床の上に配置され、前記欠落部分を覆った状態にて前記移動パネルの移動に応じて水平方向に移動する床表面部材と、
前記欠落部分において前記移動パネルの上に配置され、少なくとも前記試験対象物が前記床表面部材上にあるときには前記床表面部材からの荷重を前記移動パネルとともに受ける複数の荷重受け治具とを備え、
前記固定床は、上固定床と下固定床で形成され、
前記移動パネルは前記上固定床と前記した固定床の間に位置する、
試験装置。
【請求項4】
試験対象物を振動又は走行させて試験するための試験装置であって、
欠落部分を設けた固定床と、
前記欠落部分に対応して配置され、試験対象物の試験を実行するための試験実行部と、
前記固定床の下方に設置され、前記試験実行部の移動に伴い水平方向に移動可能な移動パネルと、
前記欠落部分を覆うように前記固定床の上に配置され、前記欠落部分を覆った状態にて前記移動パネルの移動に応じて水平方向に移動する床表面部材と、
前記欠落部分において前記移動パネルの上に配置され、少なくとも前記試験対象物が前記床表面部材上にあるときには前記床表面部材からの荷重を前記移動パネルとともに受ける複数の荷重受け治具とを備え、
前記複数の荷重受け治具が、前記欠落部分内で全領域に水平方向に移動可能である、
試験装置。
【請求項5】
試験対象物を振動又は走行させて試験するための試験装置であって、
欠落部分を設けた固定床と、
前記欠落部分に対応して配置され、試験対象物の試験を実行するための試験実行部と、
前記固定床の下方に設置され、前記試験実行部の移動に伴い水平方向に移動可能な移動パネルと、
前記欠落部分を覆うように前記固定床の上に配置され、前記欠落部分を覆った状態にて前記移動パネルの移動に応じて水平方向に移動する床表面部材と、
前記欠落部分において前記移動パネルの上に配置され、少なくとも前記試験対象物が前記床表面部材上にあるときには前記床表面部材からの荷重を前記移動パネルとともに受ける複数の荷重受け治具と、
前記複数の荷重受け治具の少なくとも一部を、前記欠落部分の部分的領域に制限する移動制限部材とを備え、
前記複数の荷重受け治具は移動可能に配置されたものである、
試験装置。
【請求項6】
前記複数の荷重受け治具は、円筒、円柱、又は球形の部材である、請求項1〜のいずれかに記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象物の各種試験を行う試験装置に関する。特に、試験対象物を振動又は走行させて試験を行う試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などの振動試験などを行う試験装置が知られている。例えば、特許文献1には、環境試験装置と振動試験装置とを組み合わせた複合環境試験装置が開示されている。特許文献1の複合環境試験装置は、平面方向に移動可能な移動パネルと、移動パネルと一体に移動する加振部とを有している。移動パネルは、床部の開口を塞ぐように、床部の上面に置かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−52225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された複合環境試験装置においては、移動パネルが床部の上面に置かれているので、移動パネルの縁部分において段差が生じる。このように段差があると、当該段差を埋め合わせるための部材(例えば、段差を埋めるスロープなど)を設置する作業が必要であった。
本発明の課題は、試験装置において、試験対象物の移動を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る試験装置は、試験対象物を振動又は走行させて試験を行う試験装置であって、固定床と、試験実行部と、移動パネルと、床表面部材と、複数の荷重受け治具と、を備える。固定床には、欠落部分が設けられている。試験実行部は、欠落部分に対応して配置され、試験対象物の試験を実行する。移動パネルは、固定床の下方に設置され、試験実行部の移動に伴って水平方向に移動可能である。床表面部材は、欠落部分を覆うように固定床の上に配置され、固定床の欠落部分を覆った状態にて移動パネルの移動に応じて水平方向に移動する。複数の荷重受け治具は、欠落部分において移動パネルの上に配置されている。また、荷重受け治具は、少なくとも、試験対象物が床表面部材上にあるときには、床表面部材からの荷重を移動パネルとともに受ける。
【0006】
上記の試験装置においては、まず、試験実行部が試験対象物に応じた所定の位置に移動される。当該試験実行部の移動に伴って、移動パネルが水平方向に移動する。次に、試験対象物が固定床から床表面部材を経て試験実行部の配置箇所に移動される。その後、試験実行部により、各種試験が開始される。
【0007】
上記の試験装置においては、固定床の欠落部分に荷重受け治具が配置され、荷重受け治具は、試験対象物が床表面部材上にあるときには、床表面部材からの荷重を移動パネルとともに受ける。これにより、試験対象物が床表面部材上を通過するときに、床表面部材の厚みが所定の値以下と薄くその剛性が低い場合でも、床表面部材が大きくたわまない。その結果、床表面部材が破損しにくい。
【0008】
上記の試験装置においては、床表面部材の厚みを所定の値以下にでき、固定床から床表面部材を経て試験実行部までに至る経路には、大きな段差が存在しないようにできる。これにより、段差を埋め合わせる部材を配置する作業が不要になる。以上の結果、試験対象物を試験実行部の配置箇所までより簡単に移動できる。
【0009】
複数の荷重受け治具は、欠落部分内で全領域に水平方向に移動可能であってもよい。このように複数の荷重受け治具の水平方向の動きが制限されていないので、試験実行部が水平方向に移動する際に滑らかに移動できる。
【0010】
試験装置は、複数の荷重受け治具の少なくとも一部を、欠落部分の部分的領域で水平方向に移動可能とする移動制限部材をさらに備えてもよい。これにより、複数の荷重受け治具が偏った位置に移動することがない。その結果、床表面部材が荷重受け治具により確実に支持される。
【0011】
複数の荷重受け治具は、円筒、円柱、又は球形の部材であってもよい。これにより、荷重受け治具が欠落部分の所定の位置に止まりにくい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る試験装置では、容易に試験対象物を移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の試験装置を示す図。
図2】試験装置を上(天井方向)から見た図。
図3】移動振動部の詳細構成を示す図。
図4A】荷重受け治具の配置の他の実施形態の一例を示す図。
図4B】荷重受け治具の配置の他の実施形態のさらなる一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.第1実施形態
(1)試験装置の全体構成
以下に、本発明の試験装置について説明する。まず、第1実施形態に係る試験装置100の全体構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の試験装置を示す図である。本実施形態の試験装置100は、試験対象物Vとしての車両の振動試験を行うための試験装置である。
なお、本実施形態において、試験対象物Vである車両は4輪の車両(例えば、自動車)であるがそれに限られず、オートバイなどの2輪の車両など任意の数の車輪を有する車両であってもよい。その他、建物などを試験対象物としてもよい。以下に示す移動振動部の個数は、試験対象物に応じて変更できる。
【0015】
図1に示すように、試験装置100は、固定床1と、第1移動振動部3aと、第2移動振動部3bと、を主に備える。
固定床1は、試験装置100の設置場所の基礎面Gに設置される。基礎面Gには、第1欠落部分H1と、第1欠落部分H1よりも深さが小さい第2欠落部分H2とが設けられ、第2欠落部分H2に固定床1が設けられる。一方、第1欠落部分H1には、第1移動振動部3a(後述)及び第2移動振動部3b(後述)の振動部31(後述)が設置される。
【0016】
固定床1は、下固定床11と、断熱部材13と、上固定床15とを有する。下固定床11は、ステンレスなどの金属製の板部材であり、第2欠落部分H2の主面上に、取付部材を介して設置される。また、下固定床11の上記の第1欠落部分H1に対応する領域には開口が設けられている。
なお、第3欠落部分H3(図3)の断熱性を確保するため、下固定床11は断熱性を有するものとすることが好ましい。
【0017】
断熱部材13は、下固定床11の試験対象物Vが設置される側の主面上に設置される。また、断熱部材13には、上記の下固定床11に設けられた開口よりも大きな(すなわち、第1欠落部分H1に対応する領域よりも大きい)開口が設けられている。これにより、第1移動振動部3a及び第2移動振動部3bの移動パネル33(後述)が下固定床11と上固定床15との間にて移動可能となる。なお、以後、断熱部材13に設けられた開口により形成される領域を第3欠落部分H3(図3)と呼ぶ。また、断熱部材13は、断熱性を有する材料による部材であり、基礎面Gと空間S(後述)とを断熱する。
なお、断熱性を要求されない試験装置100である場合は、断熱部材13を用いず、断熱部材13に代えて金属製の板部材等の他の部材を用いてもよい。
【0018】
上固定床15は、下固定床11と同様、ステンレスなどの金属製の板部材であり、試験対象物Vが設置される側の主面(以後、試験対象物Vが設置される側の主面のことを「床レベル」と呼ぶことにする)の高さが基礎面Gの表面の高さと一致するように、断熱部材13の上側の主面に設置される。これにより、試験対象物Vを試験装置100に設置する際に、基礎面Gと試験装置100との間の段差を無くせる。その結果、試験対象物Vを試験装置100に容易に移動できる。また、下固定床11と同様に、上固定床15にも第1欠落部分H1に対応する領域に開口が設けられている。以後、上固定床15に設けられた開口により形成される領域を第4欠落部分H4(図3)と呼ぶ。
【0019】
なお、下固定床11に設けられる開口と、上固定床15に設けられる開口とは、大きさが異なっていてもよい。また、第3欠落部分H3(図3)の断熱性を確保するため、上固定床15は断熱性を有するものとすることが好ましい。
固定床1には第3欠落部分H3があるため、第3欠落部分H3の断熱性を確保する観点から、下固定床11又は上固定床15のうち少なくともいずれか一方は、断熱性を有するものとすることが好ましい。ただし、断熱性が要求されない場合は、断熱材を用いなくともよい。
【0020】
また、下固定床11、断熱部材13、及び上固定床15に設けられた開口の形状は、円形、楕円、長方形などの振動部31(後述)の移動範囲に応じた任意の形状とすることができる。ただし、少なくとも、上固定床15に設けられる開口(第4欠落部分H4)の形状については、開口の形状が長方形などのように角がある形状の場合には、角が曲線状になっていることが好ましい。これにより、第4欠落部分H4に配置された荷重受け治具37(図3)が移動中に、開口の角において止まってしまうことを抑制できる。すなわち、荷重受け治具37を滑らかに移動できる。
【0021】
第1移動振動部3aは、図2に示すように、入口扉Eから見て奥側の第1欠落部分H1に設置されている。図2は、試験装置を上(天井方向)から見た図である。試験実行時には、第1移動振動部3aには、4輪の試験対象物Vの前輪が載置される。また、第1移動振動部3aは、図2の紙面の上側の第1移動振動部3aと下側の第1移動振動部3aとが同期して、紙面の上下方向に移動可能となっている。
【0022】
第1移動振動部3aが紙面の上下方向に移動する際、例えば、紙面上側の第1移動振動部3aが下方向に移動するときには、紙面下側の第1移動振動部3aが上方向に移動するというように、それぞれが逆方向に同じ距離だけ移動する。これにより、第1移動振動部3aを、試験対象物Vの前輪間の幅や前輪が設置される場所に応じて適切に移動できる。
【0023】
なお、上記のように、本実施形態の第1移動振動部3aは紙面上下方向にのみ移動可能となっているが、これに限られない。後述する第2移動振動部3bと同様の構成を有して、紙面の上下左右方向に移動可能となっていてもよいし、紙面の左右方向にのみ移動可能なものであってもよい。また、紙面上側の第1移動振動部3aと紙面下側の第1移動振動部3aが同期せずに移動可能なものであってもよい。
【0024】
また、本実施形態の第1移動振動部3aには、後述する荷重受け治具37(図3)が第4欠落部分H4(図3)に配置されていない。なぜなら、試験対象物Vが第1移動振動部3aの床表面部材35(図3)上を通過することはほとんどないからである。しかし、これに限られず、第1移動振動部3aの第4欠落部分H4にも荷重受け治具37が設置されていてもよい。これにより、万が一、試験対象物Vを試験装置100に配置する際に試験対象物Vの位置がずれた場合でも、試験対象物Vの重量により床表面部材35がたわんだりすることを回避できる。
【0025】
第2移動振動部3bは、第1移動振動部3aよりも入口扉Eに近い側の第1欠落部分H1に対応する位置に配置されている。試験実行時には、第2移動振動部3bには、4輪の試験対象物Vの後輪が載置される。また、第2移動振動部3bは、図2の紙面の上側の第2移動振動部3bと下側の第2移動振動部3bとが同期して、紙面の上下左右方向に移動可能となっている。
【0026】
2つの第2移動振動部3bは、紙面の上下方向に移動する際、第1移動振動部3aと同様に、それぞれが逆方向に同じ距離だけ紙面の上下方向に移動する。また、第2移動振動部3bは、紙面の上下方向の移動の際には、第1移動振動部3aとの紙面の左右方向の位置関係を変化することなく、第1移動振動部3aとともに移動可能となっていてもよいし、第1移動振動部3aとは独立に移動可能となってもよい。これにより、第2移動振動部3bを、第1移動振動部3aと同様、試験対象物Vの後輪間の幅に応じて適切に移動できる。
【0027】
なお、上記のように、本実施形態の第2移動振動部3bは紙面上下左右方向に移動可能となっているが、これに限られない。上述した第1移動振動部3aと同様の構成を有して、紙面の上下方向にのみ移動可能となっていてもよいし、紙面の左右方向にのみ移動可能なものであってもよい。また、紙面上側の第2移動振動部3bと紙面下側の第2移動振動部3bが同期せずに移動可能なものであってもよい。
【0028】
また、紙面の左右方向に移動する際、第2移動振動部3bは、上側の第2移動振動部3bと下側の第2移動振動部3bとの間の左右方向の位置関係を変化することなく移動する。これにより、上側の第2移動振動部3bと下側の第2移動振動部3bの位置関係がずれることなく、第2移動振動部3bを試験対象物Vの前輪と後輪との間の距離(ホイールベース)に対応するように移動できる。
なお、紙面上側の第2移動振動部3bと紙面下側の第2移動振動部3bとの間の位置関係が変化しつつ移動可能なものであっても良い。
【0029】
なお、第1移動振動部3a及び第2移動振動部3bの構成の詳細については、後ほど説明する。
【0030】
試験装置100は、さらに、空間遮断部5を備えている。空間遮断部5は、外部空間と試験対象物Vが振動試験中に配置される空間Sとを遮断する壁である。従って、空間遮断部5は、例えば、断熱材料を挟み込んだ構造のステンレスなどの金属板により形成された中空の箱型の部材である。空間遮断部5の当該中空部分が空間Sに対応する。試験装置100が空間遮断部5を備えることにより、空間S内部に様々な条件(温度、湿度、など)を有する環境を作り出すことができる。その結果、様々な環境における試験対象物Vの振動試験を実行できる。
【0031】
また、空間遮断部5には、試験対象物Vを通過可能な大きさの開口が設けられている。空間遮断部5の当該開口部分には、入口扉Eが設けられている。試験対象物Vを空間S内に移動するときは、入口扉Eを開放し、上記の空間遮断部5の開口から試験対象物Vを空間S内に移動する。一方、振動試験中において、入口扉Eは閉じられ、空間Sと外部空間とが隔離される。
なお、試験対象物Vの試験環境を特に制御する必要がない場合には、試験装置100において空間遮断部5を省略してもよい。
【0032】
(2)移動振動部の構成
次に、第1移動振動部3a及び第2移動振動部3bの構成について、図3を用いて説明する。図3は、移動振動部の詳細構成を示す図である。なお、以下の説明においては、第2移動振動部3bの構成を例にとって説明する。なぜなら、上記のように、第1移動振動部3aと第2移動振動部3bとは、第1移動振動部3aが紙面の上下方向のみに移動可能なこと(従って、荷重受け治具37を省略可能であること)以外は、同じ構成を有しているからである。
第2移動振動部3bは、振動部31と、移動パネル33と、床表面部材35と、複数の荷重受け治具37と、を有する。
【0033】
振動部31(試験実行部の一例)は、上記のように、第1欠落部分H1に設置されている。振動部31は、制御部(図示せず)などの指示に基づいて、主に上下方向(鉛直上下方向)に振動する。また、振動部31は、鉛直上下方向のみでなく、紙面の左右方向や上下方向(鉛直方向に対して垂直な水平方向)に振動可能となっていてもよい。さらに、振動部31において、2つの第1移動振動部3a及び2つの第2移動振動部3bが、それぞれ、同期して振動してもよいし、独立に振動してもよい。これにより、振動部31は、振動試験のために、多様な振動を試験対象物Vに与えることができる。
【0034】
移動パネル33は、固定床1の下固定床11と上固定床15との間の第3欠落部分H3内に移動自在に設置されている。すなわち、移動パネル33は、固定床1の上固定床15の下方に移動自在に設置されている。また、移動パネル33は、振動部31の所定の位置に固定されている。これにより、制御部などの指令に基づいて振動部31が第1欠落部分H1(又は第4欠落部分H4(後述))により定められた領域内にて移動するに伴って、移動パネル33が第3欠落部分H3内を水平方向に移動できる。
【0035】
また、空間Sと第1欠落部分H1との断熱性を確保するため、移動パネル33は断熱性を有するものとすることが好ましいが、断熱性を要求されない試験装置100である場合は、断熱性を有していなくともよい。
【0036】
上記のように、第1欠落部分H1(第4欠落部分H4)に定められた領域内にて振動部31を移動可能とするためには、第3欠落部分H3の固定床1と移動パネル33とに囲まれた領域の(水平方向の)面積は、上記の振動部31が移動可能な領域の(水平方向の)面積以上であることが好ましい。例えば、第3欠落部分H3の固定床1と移動パネル33とに囲まれた領域の(水平方向の)面積を、第1欠落部分H1(第4欠落部分H4)の水平方向の面積以上にすることにより、第1欠落部分H1(第4欠落部分H4)の領域全体に亘って振動部31を移動できる。
【0037】
床表面部材35は、ステンレスなどの金属製の所定の値以下の厚みを有する板状部材である。また、床表面部材35は、上固定床15上に配置されたときに第4欠落部分H4を覆うことが可能な十分な面積を有している。さらに、床表面部材35は、移動パネル33又は振動部31の所定の位置に固定されている。これにより、床表面部材35は、第4欠落部分H4を覆った状態にて移動パネル33(又は振動部31)の移動に応じて水平方向に移動する。
【0038】
上記の床表面部材35の厚みは、床表面部材35と上固定床15との間の段差の高さを決定する。本実施形態において、床表面部材35の厚み(すなわち、床表面部材35と上固定床15との間の段差)は、例えば、10mm以下であることが好ましく、バリアフリー段差基準である5mm以下であることがさらに好ましい。これにより、スロープなどを設置することなく、容易に試験対象物Vを試験装置100内に移動できる。
【0039】
複数の荷重受け治具37は、少なくとも長さ(高さ)方向に十分な強度を有する、円筒形状の金属製の部材である。荷重受け治具37は、第4欠落部分H4において、長さ方向の一端が移動パネル33の主面上に当接した状態にて配置されている。また、円筒形状の荷重受け治具37の高さは、第4欠落部分H4の高さ(すなわち、上固定床15の厚み)とほぼ同じ高さを有している。これにより、荷重受け治具37の長さ方向の他端は、試験対象物Vが床表面部材35上にあるときには、床表面部材35と当接できる。
【0040】
つまり、荷重受け治具37は、試験対象物Vが床表面部材35上にあるときに、一端が移動パネル33に当接し他端が床表面部材35と当接する。その結果、荷重受け治具37は、床表面部材35からの試験対象物Vの荷重を移動パネル33とともに受けることができる。これにより、床表面部材35の厚みが薄くその剛性が低い場合でも、試験対象物Vが床表面部材35上を通過するときに床表面部材35が大きくたわまない。その結果、床表面部材35が破損しにくい。
【0041】
なお、上記のように、試験対象物Vが床表面部材35上にあるときに、床表面部材35及び移動パネル33と荷重受け治具37とが当接できれば上記の効果を発揮できるので、荷重受け治具37の高さは、第4欠落部分H4の高さ(上固定床15の厚み)と一致しなくてもよい。例えば、荷重受け治具37の高さは、第4欠落部分H4の高さよりも若干低い方が好ましい。
【0042】
荷重受け治具37の高さを第4欠落部分H4の高さよりも若干低くすることにより、床表面部材35の移動中に、床表面部材35と荷重受け治具37とが接触しにくくなる。つまり、床表面部材35の移動中に、床表面部材35と荷重受け治具37との間で摩擦が発生しにくくなる。その結果、大きな騒音が発生したり、床表面部材35及び/又は荷重受け治具37の移動が妨げられたりしにくくなる。
【0043】
また、荷重受け治具37が円筒形状であることにより、荷重受け治具37は、第4欠落部分H4の角などに滞留したり他の荷重受け治具37と当接したりして、所定の位置に止まらなくなる。荷重受け治具37の形状は、円筒以外にも、円柱又は球形といった、曲線を有する形状であれば、上記の効果を発揮できる。
なお、滞留する可能性は生じるが、荷重受け治具37が角状の筒、角柱などの形状を有していてもよい。この場合は、荷重受け治具37の形状を円柱に近い角状とすることが好ましい。
【0044】
さらに、荷重受け治具37の個数は、典型的には、荷重受け治具37を第4欠落部分H4に充填可能な最大数(最大充填個数)の60%〜90%程度であることが好ましく、90%程度であることがさらに好ましい。これにより、荷重受け治具37は、振動部31が移動する際に、振動部31に押しのけられる形態及び振動部31が通過したあとの経路を埋める形態にて、倒れることなく滑らかに移動できる。
【0045】
また、荷重受け治具37の個数が少なすぎずに適切な個数であるので、試験対象物Vが床表面部材35を通過する際に、例えば、荷重受け治具37の位置が偏ってしまうことがない。つまり、ある箇所において試験対象物Vを支持できなくなることがない。
【0046】
(3)試験装置の動作
次に、試験装置100を用いて試験対象物Vの振動試験を行うときの動作について説明する。まず、振動試験を行う前に、試験対象物Vの寸法(例えば、車輪間の距離)に応じて、床表面部材35により第4欠落部分H4を覆った状態にて、第1移動振動部3a及び第2移動振動部3bを、振動部31を移動することにより移動させる。当該振動部31の移動に伴い、移動パネル33が上固定床15の下方において水平方向に移動する。上記の場合、第1移動振動部3a及び第2移動振動部3bの移動前後において、第4欠落部分H4は床表面部材35により覆われている。
【0047】
このとき、荷重受け治具37は、円筒形状であるため、第4欠落部分H4の所定の位置にて止まりにくい。また、荷重受け治具37は、第4欠落部分H4内で全領域に水平方向に移動可能である。以上の結果、荷重受け治具37は、第4欠落部分H4内を、水平方向の動きが妨害されることなく自由に移動できる。その結果、第1移動振動部3a及び第2移動振動部3bは、滑らかに移動できる。
【0048】
なお、第1移動振動部3a及び第2移動振動部3bの移動位置は、制御部などを用いて作業者により設定され調整されてもよい。または、各試験対象物Vに応じた位置を制御部などに記憶しておき、振動試験を行いたい試験対象物Vを作業者が制御部において指定して、制御部が、自動的に第1移動振動部3a及び第2移動振動部3bを各試験対象物Vに対応する位置に移動してもよい。
【0049】
第1移動振動部3a及び第2移動振動部3bを所定の位置に移動後、試験対象物Vの前輪を第1移動振動部3aの振動部31上に、後輪を第2移動振動部3bの振動部31上に配置するため、試験対象物Vを、基礎面Gから、固定床1(上固定床15)及び床表面部材35を経て、試験装置100中に移動させる。
【0050】
このとき、上記のように、基礎面Gから、固定床1(上固定床15)及び床表面部材35を経て、振動部31に至るまでの試験対象物Vが移動する経路には、大きな段差が存在しない。これにより、段差を埋め合わせる部材を配置するなどの作業が不要になる。
【0051】
また、試験対象物Vが床表面部材35を通過中(すなわち、試験対象物Vが床表面部材35上に存在するとき)、荷重受け治具37の長さ方向の両端が、それぞれ、移動パネル33及び床表面部材35に当接する。これにより、荷重受け治具37は、試験対象物Vを移動パネル33とともに支持できる。その結果、床表面部材35がたわみにくい。
【0052】
試験対象物Vを振動部31上に配置後、必要に応じて、試験対象物Vの各車輪を、治具(図示せず)などを用いて振動部31に固定する。その後、全ての作業者を空間S内から退避させ入口扉Eを閉じて、必要に応じて、空間遮断部5の所定の位置に備えられている空調機などを用いて、空間S中に所定の大気条件の環境を作り出す。
【0053】
必要に応じて空間S中に所定の環境を作り出した後、振動部31は所定の高さ(例えば、10cm程度)まで試験対象物Vを持ち上げた状態にて、試験対象物Vに対して振動を加えて、試験対象物Vの振動試験を実行する。
【0054】
なお、上記の試験装置100の動作においては、本発明の範囲を超えない範囲において、任意に各動作を変更したり、各動作の順番を入れ替えたりできる。
【0055】
(4)実施形態の効果
上記第1実施形態の効果は、下記のように記載できる。
第1実施形態の試験装置(例えば、試験装置100)は、試験対象物(例えば、試験対象物V)を振動又は走行させて試験を行う試験装置であって、固定床(例えば、上固定床15)と、試験実行部(例えば、振動部31)と、移動パネル(例えば、移動パネル33)と、床表面部材(例えば、床表面部材35)と、複数の荷重受け治具(例えば、荷重受け治具37)と、を備える。固定床には、欠落部分(例えば、第4欠落部分H4)が設けられている。試験実行部は、欠落部分に対応して配置され、試験対象物の試験(例えば、振動試験)を実行する。移動パネルは、固定床の下方に設置され、試験実行部の移動に伴って水平方向に移動可能である。床表面部材は、欠落部分を覆うように固定床の上に配置され、固定床の欠落部分を覆った状態にて移動パネルの移動に応じて水平方向に移動する。複数の荷重受け治具は、欠落部分において移動パネルの上に配置されている。また、荷重受け治具は、少なくとも、試験対象物が床表面部材上にあるときには、床表面部材からの荷重を移動パネルとともに受ける。
【0056】
第1実施形態の試験装置においては、まず、試験実行部が試験対象物に応じた所定の位置に移動される。当該試験実行部の移動に伴って、移動パネルが水平方向に移動する。次に、試験対象物が固定床から床表面部材を経て試験実行部の配置箇所に移動される。その後、試験実行部により、試験が開始される。
【0057】
第1実施形態の試験装置においては、固定床の欠落部分に荷重受け治具が配置され、荷重受け治具は、試験対象物が床表面部材上にあるときには、床表面部材からの荷重を移動パネルとともに受ける。これにより、試験対象物が床表面部材上を通過するときに、床表面部材の厚みが所定の値以下と薄くその剛性が低い場合でも、床表面部材が大きくたわまない。その結果、床表面部材が破損しにくい。
【0058】
第1実施形態の試験装置においては、床表面部材の厚みを所定の値以下にでき、固定床から床表面部材を経て試験実行部までに至る経路には、大きな段差が存在しない。これにより、段差を埋め合わせる部材を配置する作業が不要になる。以上の結果、試験対象物を試験実行部の配置箇所までより簡単に移動できる。
【0059】
複数の荷重受け治具は、欠落部分内で全領域に水平方向に移動可能である。このように複数の荷重受け治具の水平方向の動きが制限されていないので、試験実行部が水平方向に移動する際に滑らかに移動できる。
【0060】
複数の荷重受け治具は、円筒、円柱、又は球形の部材である。これにより、荷重受け治具が欠落部分の所定の位置に止まりにくい。
【0061】
(5)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)荷重受け治具の配置についての他の実施形態
上記の第1実施形態においては、複数の荷重受け治具37が、第4欠落部分H4の全領域を水平方向に移動可能に配置されていた。しかし、荷重受け治具37は必要な場所に配置されて移動パネル33とともに床表面部材35からの荷重を受けることができればよいので、欠落部分における配置方法は特に限定されない。
例えば、試験装置は、複数の荷受け治具を、欠落部分の部分的領域で水平方向に移動可能とする移動制限部材をさらに備えてもよい。
【0062】
例えば、図4Aに示すように、荷重受け治具37のそれぞれを、バネなどの弾性部材41(移動制限部材の一例)の一端と固定し、弾性部材41の他端を振動部31及び第4欠落部分H4の側壁(上固定床15の厚み部分)に固定することにより、荷重受け治具37の移動を所定の範囲内に制限できる。このとき、図4Aに示すように、弾性部材41により接続された複数の荷重受け治具37を介して、1つの荷重受け治具37が振動部31及び第4欠落部分H4の側壁に接続されてもよい。図4Aは、荷重受け治具の配置の他の実施形態の一例を示す図である。
【0063】
または、図4Bに示すように、一端が振動部31に接続され他端が第4欠落部分H4の側壁に接続された、ゴムなどの弾性材料により形成された複数の分離幕43(移動制限部材の一例)により、第4欠落部分H4を複数の領域に分割し、分割したそれぞれの領域に荷重受け治具37を配置してもよい。図4Bは、荷重受け治具の配置の他の実施形態のさらなる一例を示す図である。
【0064】
上記のように荷重受け治具37の移動を所定の範囲内に制限することにより、荷重受け治具37が偏った位置に移動しにくい。その結果、床表面部材35において荷重受け治具37により支持されない箇所が生じにくい(すなわち、床表面部材35を荷重受け治具37により確実に支持できる)。
【0065】
また、上記のように、荷重受け治具37の移動を所定の範囲内に制限することにより、荷重受け治具37を移動の制限を行うことなく配置する場合と比較して、荷重受け治具37の個数を減少(例えば、上記の最大充填個数の40%程度まで減少)しても、荷重受け治具37の存在位置が偏って試験対象物を支持できない箇所をなくせる。
【0066】
(B)床表面部材の他の実施形態
上記の第1実施形態において、床表面部材35は板状の部材であった。しかし、これに限られず、例えば、床表面部材35の端部を削るなどの方法により、床表面部材35の端部(少なくとも、試験対象物Vが通過する経路上の端部)に緩やかなスロープを設けてもよい。これにより、例えば強度を向上させるために床表面部材35の厚みを厚くしても、固定床1(上固定床15)の床レベルと床表面部材35の床レベルを所定の高さ以下にできる(すなわち、固定床1(上固定床15)の床レベルと床表面部材35の床レベルとの間に、大きな段差が形成されることを回避できる)。
【0067】
(C)試験実行部の他の実施形態
上記の第1実施形態の試験装置100においては、振動部31を試験実行部として用いていた。しかし、これに限られず、試験実行部として、試験対象物Vとしての車両の走行に関わる各種の特性、例えば、車輪の回転特性(すなわち、試験対象物Vの走行特性)を測定するための走行部を用いてもよい。
【0068】
車輪の回転特性を測定するための走行部としては、例えば、中心軸周りに回転可能な円筒形状の部材上に配置された車輪を回転させた時に、当該円筒形状の部材の回転数や回転トルクなどを測定可能なシャーシダイナモとも言われる走行部などがある。このような走行部においては、例えば、測定された円筒形状の部材の回転数や回転トルクから、それぞれ、車輪の回転数と車輪の回転により生じるトルク(例えば、車輪の回転−トルク特性)を測定できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、試験対象物の各種試験を行う試験装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0070】
100 試験装置
1 固定床
11 下固定床
13 断熱部材
15 上固定床
3a 第1移動振動部
3b 第2移動振動部
31 振動部
33 移動パネル
35 床表面部材
37 荷重受け治具
41 弾性部材
43 分離幕
5 空間遮断部
E 入口扉
G 基礎面
H1 第1欠落部分
H2 第2欠落部分
H3 第3欠落部分
H4 第4欠落部分
S 空間
V 試験対象物
図1
図2
図3
図4A
図4B