特許第6239475号(P6239475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239475燃料チャンネルボックスの製造方法、燃料集合体及びそれを装荷する沸騰水型原子炉の炉心
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239475
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】燃料チャンネルボックスの製造方法、燃料集合体及びそれを装荷する沸騰水型原子炉の炉心
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/324 20060101AFI20171120BHJP
   G21C 3/30 20060101ALI20171120BHJP
   G21C 1/08 20060101ALI20171120BHJP
   G21C 21/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G21C3/30 H
   G21C3/30 A
   G21C1/08
   G21C21/00 L
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-193895(P2014-193895)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-65761(P2016-65761A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中山 道夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 武裕
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 寅喜
(72)【発明者】
【氏名】野上 武志
【審査官】 長谷川 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−323070(JP,A)
【文献】 特開平06−201873(JP,A)
【文献】 特開2005−227048(JP,A)
【文献】 特開2013−142602(JP,A)
【文献】 米国特許第06285729(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/324
G21C 1/08
G21C 3/30
G21C 21/00
G21D 1/00
G21D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルカロイ板材を横断面U字状に形成し、当該U字状に形成された2つのジルカロイ板材を溶接し角筒管状の燃料チャンネルボックスを形成する燃料チャンネルボックスの製造方法であって、
前記2つの板材が溶接された角筒管状の燃料チャンネルボックスの1つの角部を、冷却用位置決め治具に挿入する工程と、
前記冷却用位置決め治具に接触する1つの角部に、前記燃料チャンネルボックスの板厚より薄いクリップを載置し位置決めする工程と、
前記位置決めされたクリップを溶接により前記燃料チャンネルボックスに接合する工程と、を備えることを特徴とする燃料チャンネルボックスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料チャンネルボックスの製造方法において、
前記位置決め工程は、溶接により前記燃料チャンネルボックスに接合される前記クリップの接合面の幅が、前記燃料チャンネルボックスの板厚より小さいことを特徴とする燃料チャンネルボックスの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料チャンネルボックスの製造方法において、
前記位置決め工程は、前記クリップの前記燃料チャンネルボックスの横断面中央側の側面が、前記冷却用位置決め治具の表面に形成された段差と当接することで、前記クリップを位置決めすることを特徴とする燃料チャンネルボックスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料チャンネルボックスの製造方法において、
前記位置決め工程は、前記冷却用位置決め治具に形成された開口にねじ止め可能なねじを有する板状押圧部材により、前記クリップを前記冷却用位置決め治具にねじ止め固定することを特徴とする燃料チャンネルボックスの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料チャンネルボックスの製造方法において、
前記板状押圧部材は略三角形状であって、前記板状押圧部材の外周部は、前記クリップの溶接部に重ならず、
前記クリップの溶接後、前記板状押圧部材を前記冷却用位置決め治具より取り外すことを特徴とする燃料チャンネルボックスの製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の燃料チャンネルボックスの製造方法において、
前記燃料チャンネルボックスに接合される前記クリップの形状は、前記燃料チャンネルボックスの1つの角部の形状を模した略三角形状であることを特徴とする燃料チャンネルボックスの製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載の燃料チャンネルボックス製造方法において、
前記クリップは略三角形状の頂角部を切り欠いた略台形状をなし、前記略台形状のクリップの2つの脚部を前記燃料チャンネルボックスの上端部に溶接により接合することを特徴とする燃料チャンネルボックスの製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載の燃料チャンネルボックスの製造方法において、
前記クリップの前記燃料チャンネルボックスに接合される領域の形状は、前記燃料チャンネルボックスの1つの角部の形状を模した略三角形状であり、
前記クリップの頂角部と前記燃料チャンネルボックスの上端部上で嵌合可能な切り欠き部を有する板状の第2の位置決め治具により、前記クリップを、前記冷却用位置決め治具及び前記第2の位置決め治具により位置決めすることを特徴とする燃料チャンネルボックスの製造方法。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の燃料チャンネルボックスの製造方法において、
前記冷却用位置決め治具の横断面は、略三角形状の頂角部を切り欠いた略台形状を成し、前記横断面が略台形状の冷却用治具の2つの脚部が、前記角筒管状の燃料チャンネルボックスの内面と接触することを特徴とする燃料チャンネルボックスの製造方法。
【請求項10】
被覆管内に核燃料物質が充填された複数の燃料棒と、
前記複数の燃料棒の上端部を保持し、上面の外周部に立設する円柱状の1本のポストを有する上部タイプレートと、
前記複数の燃料棒の下端部を保持する下部タイプレートと、
前記複数の燃料棒を横断面上で格子状に配置するスペーサと、
前記複数の燃料棒、上部タイプレート、下部タイプレート及びスペーサを収容する角筒状の燃料チャンネルボックスと、を備え、
前記燃料チャンネルボックスの開口端部には、対角線上の2つの角部に溶接により接合されるクリップを有し、
方のクリップに形成された貫通孔を前記上部タイプレートのポストが貫通すると共に、前記2つのクリップの板厚は前記燃料チャンネルボックスの板厚より薄いことを特徴とする燃料集合体。
【請求項11】
請求項10に記載の燃料集合体において、
前記燃料チャンネルボックスの開口端部に接合される前記クリップの接合面の幅は、前記燃料チャンネルボックスの板厚より小さいことを特徴とする燃料集合体。
【請求項12】
請求項11に記載の燃料集合体において、
前記燃料チャンネルボックスに接合される前記クリップの形状は、前記燃料チャンネルボックスの1つの角部の形状を模した略三角形状であることを特徴とする燃料集合体。
【請求項13】
請求項11に記載の燃料集合体において、
前記燃料チャンネルボックスに接合される前記クリップの形状は、略三角形状の頂角部を切り欠いた略台形状をなし、前記略台形状のクリップの2つの脚部が前記燃料チャンネルボックスの上端部に接合されることを特徴とする燃料集合体。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の燃料集合体において、
前記クリップの板厚をT1、前記燃料チャンネルボックスの板厚をT2としたとき、
1/3≦T1/T2≦4/5 となることを特徴とする燃料集合体。
【請求項15】
請求項12または請求項13に記載の燃料集合体において、
前記クリップの板厚をT1、前記燃料チャンネルボックスの板厚をT2、前記クリップの前記燃料チャンネルボックスの開口端部に接合される前記クリップの接合面の幅をWとしたとき、
T1/T2=1/2且つ、W=T1 となることを特徴とする燃料集合体。
【請求項16】
被覆管内に核燃料物質が充填された複数の燃料棒を燃料チャンネルボックス内に収容する燃料集合体を、複数体格子状に配列し装荷する沸騰水型原子炉の炉心において、
前記燃料チャンネルボックスの開口端部には、対角線上の2つの角部に溶接により接合されるクリップを有し、
前記2つのクリップの板厚は前記燃料チャンネルボックスの板厚より薄いことを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項17】
請求項16に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記燃料チャンネルボックスの開口端部に接合される前記クリップの接合面の幅は、前記燃料チャンネルボックスの板厚より小さいことを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心
【請求項18】
請求項17に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記燃料チャンネルボックスに接合される前記クリップの形状は、前記燃料チャンネルボックスの1つの角部の形状を模した略三角形状であることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【請求項19】
請求項17に記載の沸騰水型原子炉の炉心において、
前記燃料チャンネルボックスに接合される前記クリップの形状は、略三角形状の頂角部
を切り欠いた略台形状をなし、前記略台形状のクリップの2つの脚部が前記燃料チャンネ
ルボックスの上端部に接合されることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料チャンネルボックスに係り、クリップ溶接の腐食を低減し、生産性を向上し得る燃料チャンネルボックスの製造方法、燃料集合体及びそれを装荷する沸騰水型原子炉(BWR)の炉心に関する。
【背景技術】
【0002】
国内の沸騰水型原子力発電所において、燃料チャンネルボックスのクリップ溶接部に腐食による欠損が確認された。この欠損は入熱量(電流×電圧÷溶接速度)が高いクリップ溶接による溶接部の耐食性低下が原因であると推定されている。
【0003】
クリップ溶接は、原子炉内での隙間腐食対策として完全溶け込み溶接としており、燃料との取り合いから溶接の裏波量も制限している。また、燃料チャンネルボックスは、薄板のジルコニウムを使用しており、溶接による溶け落ちにも注意し、安定した溶接とする必要がある。これらの要求を満足させるため、結果的に高い入熱量の溶接となり、溶接部の耐食性が低下してしまった。これらを解決するため、低入熱量の溶接を実現させる溶接設備の開発、低入熱量となる溶接条件の選定を進めている。
【0004】
従来の燃料チャンネルボックスとして特許文献1がある。特許文献1では、ジルコニウム合金板材を成形溶接して角筒管とした後、角筒管の燃料チャンネルボックスの開口側端部にクリップを溶接し、金属アルコキシド含有溶液に接触させることにより、燃料チャンネルボックスの内面及び外面に金属酸化膜を形成している。なお、特許文献1では、角筒管を形成するジルコニウム合金板材よりクリップを形成し、このクリップを角筒管の端部に溶接するものであり、燃料チャンネルボックスの板厚(角筒管の板厚)とクリップの板厚は同じ板厚となる。角筒管の外形にクリップの溶接面の外周を合わせ位置決めすることで、安定したクリップ溶接を実現している。
【0005】
また、東日本大震災を受け、巨大地震動による燃料チャンネルボックスの変形を防止するため、燃料チャンネルボックスの板厚を増大することも検討している。すなわち、燃料チャンネルボックスを厚肉化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−99970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、今後、燃料チャンネルボックスは厚肉化(板厚増大)する方向である。しかしながら、特許文献1のように、燃料チャンネルボックスの板厚とクリップの板厚を同一とするものでは、クリップの板厚方向に完全溶け込み溶接する場合、チャンネルボックスの板厚増加に伴う入熱量の増加は避けられず、燃料チャンネルボックスのクリップ溶接部に、腐食による欠損が生じる可能性がある。
【0008】
本発明は、燃料チャンネルボックスの板厚に係らず、クリップ溶接部の腐食を低減し得る燃料チャンネルボックスの製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明は、燃料集合体を構成する燃料チャンネルボックスの板厚に係わらず、クリップ溶接部の欠損を低減し、炉心への燃料集合体の挿抜時における信頼性を向上し得る燃料集合体及びそれを装荷する沸騰水型原子炉の炉心を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の燃料チャンネルボックスの製造方法は、ジルカロイ板材を横断面U字状に形成し、当該U字状に形成された2つのジルカロイ板材を溶接し角筒管状の燃料チャンネルボックスを形成する燃料チャンネルボックスの製造方法であって、(1)前記2つの板材が溶接された角筒管状の燃料チャンネルボックスの1つの角部を、冷却用位置決め治具に挿入する工程と、(2)前記冷却用位置決め治具に接触する1つの角部に、前記燃料チャンネルボックスの板厚より薄いクリップを載置し位置決めする工程と、(3)前記位置決めされたクリップを溶接により前記燃料チャンネルボックスに接合する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の燃料集合体は、被覆管内に核燃料物質が充填された複数の燃料棒と、前記複数の燃料棒の上端部を保持し、上面の外周部に立設する円柱状の1本のポストを有する上部タイプレートと、前記複数の燃料棒の下端部を保持する下部タイプレートと、前記複数の燃料棒を横断面上で格子状に配置するスペーサと、前記複数の燃料棒、上部タイプレート、下部タイプレート及びスペーサを収容する角筒状の燃料チャンネルボックスと、を備え、前記燃料チャンネルボックスの開口端部には、対角線上の2つの角部に溶接により接合されるクリップを有し、方のクリップに形成された貫通孔を前記上部タイプレートのポストが貫通すると共に、前記2つのクリップの板厚は前記燃料チャンネルボックスの板厚より薄いことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の沸騰水型原子炉の炉心は、被覆管内に核燃料物質が充填された複数の燃料棒を燃料チャンネルボックス内に収容する燃料集合体を、複数体格子状に配列し装荷する沸騰水型原子炉の炉心において、前記燃料チャンネルボックスの開口端部には、対角線上の2つの角部に溶接により接合されるクリップを有し、前記2つのクリップの板厚は前記燃料チャンネルボックスの板厚より薄いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料チャンネルボックスの板厚に係らず、クリップ溶接部の腐食を低減し得る燃料チャンネルボックスを提供でき、燃料チャンネルボックスの生産性を向上することが可能となる。
【0014】
また本発明によれば、燃料チャンネルボックスの板厚に係わらず、クリップ溶接部の欠損を低減し、炉心への燃料集合体の挿抜時における信頼性を向上し得る燃料集合体及びそれを装荷する沸騰水型原子炉の炉心を提供することができる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】沸騰水型原子力プラントの概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る燃料集合体の縦断面図である。
図3図2に示す燃料集合体のA−A断面図である
図4図2に示す燃料棒の被覆管を示す断面斜視模式図である。
図5図2に示すウォータロッドの被覆管を示す断面斜視模式図である。
図6図2に示す燃料集合体のB−B断面矢視図である。
図7図6に示す本発明の一実施形態に係る燃料チャンネルボックスの概略製造工程を示す図である。
図8】本発明の一実施例に係る実施例1の燃料チャンネルボックスの板厚とクリップ溶接の入熱量との関係を従来例と共に示す図である。
図9】本発明の一実施例に係る実施例1の孔無しクリップと角筒管との配置関係を示す図である。
図10】本発明の一実施例に係る実施例1の孔有りクリップの位置決め工程の説明図である。
図11】本発明の他の実施例に係る実施例2の孔無しクリップと角筒管との配置関係を示す図である。
図12】本発明の他の実施例に係る実施例2の孔有りクリップの位置決め工程の説明図である。
図13】本発明の他の実施例に係る実施例3の孔無しクリップと角筒管との配置関係を示す図である。
図14】本発明の他の実施例に係る実施例3の孔有クリップの位置決め工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の発明者らは、完全溶け込み溶接を必要とするクリップ溶接の入熱量が、H=60×E×I/v(J/cm)、ここで、Hは完全溶け込み溶接における入熱量、Eはアーク電圧、Iはアーク電流、vは溶接速度(cm/min)の関係に鑑み、鋭意研究の結果、クリップの板厚を燃料チャンネルボックスの板厚より小さくすることにより、入熱量を低減し、クリップ溶接部における腐食による欠損を低減し得るという新たな知見を得たものである。以下、本発明の燃料チャンネルボックスを用いた燃料集合体が装荷される沸騰水型原子炉について説明する。
【0018】
図1に、本発明の一実施形態に係る燃料チャンネルボックスを用いた沸騰水型原子力プラントの概略構成図を示す。沸騰水型原子力プラント1は、原子炉2及び原子炉格納容器3を備えている。原子炉格納容器3は、原子炉建屋4内に設置されて、上端部に原子炉格納容器上蓋5が取り付けられて密封されている。原子炉格納容器3は、内部に形成されたドライウェル6、及び冷却水が充填された圧力抑制プールが内部に形成された圧力抑制室(ウェットウェル)7を有する。ドライウェル6に連絡されるベント通路8の一端が、圧力抑制室7内の圧力抑制プールの冷却水中に浸漬されている。原子炉格納容器上蓋5の真上に複数に分割された放射線遮蔽体であるシールドプラグ9が配置され、これらのシールドプラグ9が、原子炉建屋4の運転床29に設置されている。
【0019】
原子炉建屋4には、原子炉格納容器3が内部に設置されており、この原子炉格納容器3の上部には、原子炉停止時に原子炉圧力容器11の蓋を開けて燃料集合体16を取り出し、隣接する使用済燃料貯蔵プール28へ移す際に通すプールであって、放射線の遮蔽等のために水を張るための原子炉ウェル26が設けられている。なお、燃料集合体16の取り出し及び使用済燃料プール28への移送は、燃料交換機30にて行われる。さらに、この原子炉ウェル26を挟み込むように、ドライヤ・セパレータプール27及び使用済みの燃料を一時的に保管する使用済燃料貯蔵プール28が設けられている。ドライヤ・セパレータプール27は、定期検査時に蒸気乾燥器14や気水分離器13といった炉内構機器を仮置きする場所として使われる。
【0020】
原子炉2、原子炉圧力容器上蓋10が取り付けられて構成される原子炉圧力容器11、核燃料物質を含む複数の燃料集合体16が装荷された炉心12、蒸気乾燥器14及び気水分離器13を備えている。炉心12、蒸気乾燥器14及び気水分離器13は原子炉圧力容器11内に配置される。原子炉圧力容器11内に設置された炉心シュラウド15が、炉心12を取り囲んでいる。炉心12内に装荷された各燃料集合体16は、下端部が炉心支持板17によって支持され、上端部が上部格子板18によって保持される。気水分離器13は炉心12の上端部に位置する上部格子板18よりも上方に配置され、蒸気乾燥器14が気水分離器13の上方に配置される。ここで、燃料集合体16は、図示しない核燃料物質として例えばMOX燃料のペレットを、ステンレス製の被覆管内にその軸方向に複数充填された燃料棒を有する。複数の燃料棒を横断面四角形状のチャンネルボックス内に正方格子状に配列して燃料集合体16が形成されている。
【0021】
複数の制御棒案内管19が炉心12の下方に配置され、複数の制御棒案内管19を含むサポートシリンダが形成されている。炉心12内の燃料集合体16間に出し入れされて原子炉出力を制御する制御棒20が、各制御棒案内管19内に配置されている。複数の制御棒駆動機構ハウジング21が、原子炉圧力容器11の下鏡22に取り付けられている。制御棒駆動機構(図示せず)が、それぞれの制御棒駆動機構ハウジング21内に設置され、制御棒案内管19内の制御棒20と連結されている。原子炉圧容器11内に設置された蒸気乾燥器14、気水分離器13、炉心シュラウド15、上部格子板18、炉心支持板17、サポートシリンダ、制御棒案内管19、炉心シュラウド下部胴は、炉内構造物である。
【0022】
原子炉圧力容器11は、原子炉格納容器3内の底部に設けられたコンクリートマット23上に設けられた筒状のペデスタル24上に据え付けられている。筒状のγ線遮蔽体25が、ペデスタル24の上端に設置され、原子炉圧力容器11を取り囲んでいる。
【0023】
ここで、燃料集合体16の構成を説明する。図2に示すように、燃料集合体16は、上部タイプレート31、下部タイプレート32、これらのタイプレートに両端が保持されている複数の燃料棒33、ウォータロッド34、これらの燃料棒を束ねる燃料支持格子(スペーサ)35、及び、燃料支持格子35により束ねられている燃料棒束を取り囲み上部タイプレート31に取り付けられた燃料チャンネルボックス36を備えている。上部タイプレート31にはハンドル38が締結されており、ハンドル38を吊り上げると、燃料集合体16全体を引き上げることができる。燃料棒としては、その一部に高さが上部タイプレート31まで達しない部分長燃料棒37が採用される場合がある。すなわち、部分長燃料棒37は、上部タイプレート31へ達する全長燃料棒33よりも内部に充填される燃料有効長が短い燃料棒である。また、上部タイプレート31には、後述するクリップの孔を貫通し、このクリップを介して燃料チャンネルボックス36と接続される1本のポスト39が設けられている。
【0024】
図3に示すように、横断面角筒状の燃料チャンネルボックス36内に、全長燃料棒33、部分長燃料棒37及びウォータロッド34が正方格子状に束ねて収容されている。ここでは、燃料チャンネルボックス36の横断面略中央部に2本のウォータロッド34を配し、各ウォータロッド34を4本の全長燃料棒33が配置可能な格子領域に配置した例を示している。
【0025】
原子炉2の炉心12において、燃料集合体16は、炉心支持板17及び上部格子板18で支持され、円筒形の炉心シュラウド15に囲まれている。冷却水は、下方より、燃料支持金具のオリフィス及び燃料集合体16の下部タイプレート32を経由して角筒状の燃料チャンネルボックス36内に流入し、燃料棒33により熱せられて、沸騰により蒸気を発生し、気液二相流となる。
【0026】
図4図2に示す全長燃料棒33における燃料被覆管を示す断面斜視模式図を示し、図5にウォータロッド34の被覆管を示す断面斜視模式図を示す。図4に示す燃料被覆管41は、例えば、SiC/SiC複合材を基材とし、表面には適切な耐環境遮蔽被覆が施されている。端栓44はSiC強化繊維からなる焼結セラミックス、もしくはZr合金で作製されている。燃料被覆管41は、外径が11mm程度、管の厚さが1mm程度である。端栓44は中実の棒である。燃料被覆管41内には、燃料ペレット42が収容され、上部タイプレート31に保持される一方の端栓44側には、一端が当該端栓44の底部に接続され他端が燃料被覆管41内に収容される燃料ペレット42の最上部を抑えるよう配置されたプレナムスプリング43が備えられている。また、上部タイプレート31には、ねじが切られた円柱状のポスト39が1本のみ形成されている。ポスト39は、後述する孔有りクリップの孔を貫通しクリップにネジ止めされる。従って、燃料チャンネルボックス36はこのポスト39のみにより上部タイプレート31に接続されている。
【0027】
また、図5に示すウォータロッド34は、冷却水をその内部に通流する中空管45、下部タイプレート32及び上部タイプレート31に保持される端栓46、中空管45は軸方向中央部の径より小さい径となる領域47を有する。中空管45は、例えば、SiC/SiC複合材を基材とし、表面には適切な耐環境遮蔽被覆が施されている。端栓46はSiC強化繊維からなる焼結セラミックス、もしくはZr合金で作製されている。
【0028】
図6に、図2に示す燃料集合体のB−B断面矢視図を示す。図6において、上述の通り孔有りクリップ51の孔を貫通するポスト39及び上部タイプレート31は、説明の便宜上省略している。図6に示すように、原子炉2の炉心12に格子状に装荷される燃料集合体16のうち、4体の燃料集合体16の中央部に横断面が略十字状の制御棒20が配設されるとともに、中性子束を検出するために複数個の局部出力領域モニタが配置されている。
【0029】
また、ジルカロイ製の角筒管(燃料チャンネルボックス)50Cは、制御棒20と対峙する2つの側面の上端部に炉心12内で隣接する燃料集合体16との間隔を維持するため、上記2つの側面の上端部付近にチャンネルスペーサ48が溶接にて取り付けられている。角筒管(燃料チャンネルボックス)50Cの開口上端部には、対角線上の2つの角部に、ジルカロイ製の孔有りクリップ51及び孔無しクリップ52が溶接にて取付けられている。これら孔有りクリップ51及び孔無しクリップ52は、角筒管(燃料チャンネルボックス)50Cに対し炉心12の径方向、すなわち、燃料集合体16の軸方向に対し垂直な方向に生じる応力に対抗するための補強材として機能する。また、上述のとおり、孔有りクリップ51は、上部タイプレート31に形成されたポスト39を介して、上部タイプレート31を角筒管50Cに接続する機能を有する。ここで、本発明の孔有りクリップ51及び孔無しクリップ52の板厚は、角筒管50Cの板厚よりも薄い。なお、これら、孔有りクリップ51の形状、板厚等の詳細については実施例にて後述する。
【0030】
図7に、本発明の一実施形態に係る燃料チャンネルボックスの概略製造工程を示す。まず、図7の最上部の図面に示すように、ジルカロイ製の平板であるジルカロイ板材50Aを準備する(工程1)。ここで、ジルカロイ板材50Aの板厚は、数mm程度である。次に、プレス加工にてジルカロイ板材50Aを、巨視的には横断面コ字状、微視的には横断面U字状に加工する(工程2)。以下では横断面U字状として説明する。工程2により、横断面U字状のジルカロイ板材50Bを2枚形成する。その後、これら2枚の横断面U字状のジルカロイ板材50Bを溶接にて接合し、角筒管50Cを形成する(工程3)。角筒管50Cの2つの側面の上端部付近にチャンネルスペーサ48を溶接にて接合する。また角筒管50Cの開口上端部の対角線方向の2つの角部、すなわち、対角線上の2つの角部にそれぞれ、孔有りクリップ51、孔無しクリップ52を位置決めし、完全溶け込み溶接にて角筒管50Cに孔有りクリップ51及び孔無しクリップ52を接合し燃料チャンネルボックスを形成する(工程4)。なお、工程4において、チャンネルスペーサ48と、孔有りクリップ51及び孔無しクリップ52の溶接による接合順は、逆の順番に行ってもかまわない。
【0031】
このように形成される角筒管50Cの板厚よりも薄い孔有りクリップ51及び孔無しクリップ52を有する本発明の一実施形態による燃料集合体16によれば、クリップ溶接部の欠損が低減されることにより、炉心12から燃料集合体16を引き抜く場合において、孔有りクリップ51が剥離し、上部タイプレート31及び下部タイプレート33間に保持される燃料棒33、部分長燃料棒37及びウォータロッド34より角筒管50Cが脱落することを防止でき、信頼性の高い燃料集合体を実現できる。
【0032】
また、このような燃料集合体16を沸騰水型原子炉の炉心12に装荷することにより、例えば、炉心12より燃料集合体16を引き抜く場合において、上述のとおり孔有りクリップ51が剥離し、角筒管50Cと共に炉心12に残存する(ルースパーツ)事態を防止でき、高信頼な沸騰水型原子炉の炉心を実現することができる。
【0033】
以下、図面を用いて、孔有りクリップ51の形状及び孔有りクリップ51の位置決めの詳細に関する本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0034】
図9に、本発明の実施例1に係る孔無しクリップ52Aと角筒管50Cとの配置関係を示す。図9に示すように、角筒管50Cの角部の内側には、溶接時における冷却機能を兼ねる冷却用位置決め治具54Aが配置され、冷却用位置決め治具54A上に孔無しクリップ52A及びこの孔無しクリップ52Aの略三角形状の頂角部を模した切り欠き部を有する位置決め治具(第2のクリップ位置決め治具)53が配置される。図9に示すように、位置決め治具53の切り欠き部は、孔無しクリップ52Aの略三角形状の頂角部と角筒管50Cの上端部上で嵌合し、冷却用位置決め治具54Aと協働し孔無しクリップ52Aを位置決めする。
【0035】
孔無しクリップ52Aは、ジルカロイ製の略三角形状の平板であり、その頂角部に対向する底辺部の両端部が切り欠かれ段差状をなしている。また、孔無しクリップ52Aの底辺部のうち上記両端部に形成された段差部を除く部分(孔無しクリップ52Aの角筒管50Cの横断面中央側の側面)は、冷却用位置決め治具54Aに設けられた段差部と当接可能となっている。孔無しクリップ52Aの板厚T1、角筒管50Cの板厚T2は、T1/T2=1/2の関係にある。また、孔無しクリップ52Aの角筒管50Cの上端部に溶接により接合される接合面の幅WはT1と等しい。すなわち、接合面の幅Wは角筒管50Cの板厚の1/2となる。
【0036】
ここで、図8に、燃料チャンネルボックス(角筒管)の板厚(T2)とクリップ溶接の入熱量との関係を従来例と共に示す。横軸に燃料チャンネルボックス(角筒管50C)の板厚T2(mm)、縦軸にクリップ溶接の入熱量(J/cm)を取り、丸印及び三角印が従来のクリップによる値、ひし形印が本実施例の孔無しクリップ52Aによる値を示している。本実施例の孔無しクリップ52Aの板厚T1は2.05mmで固定とし、従来のクリップの板厚(T1)は燃料チャンネルボックスの板厚(T2)と同一としている。
【0037】
図8に示すように、従来のクリップでは、クリップの板厚T1が2.05mm・燃料チャンネルボックスの板厚T2が2.05mmで、入熱量7000J/cmの時、クリップ溶接部における欠損は生じず。また、クリップの板厚T1が2.54mm・燃料チャンネルボックスの板厚T2が2.54mmで、入熱量9000J/cmの時、クリップ溶接部における欠損は確認されず、同一の板厚で入熱量1600J/cmでは、クリップの溶接部における欠損が確認された。また、クリップの板厚T1が3.05mm・燃料チャンネルボックスの板厚T2が3.05mmで、入熱量11000J/cmの時、クリップ溶接部における欠損は確認されなかった。
【0038】
これに対し、本実施例では、クリップの板厚T1が2.05mm・燃料チャンネルボックスの板厚T2が2.54mmで、入熱量7000J/cmでクリップの溶接部における欠損は確認されず、更にクリップの板厚T1が2.05mm・燃料チャンネルボックスの板厚T2が3.05mmで、入熱量7000J/cmでもクリップの溶接部における欠損は確認されなかった。
【0039】
上述のとおりクリップを完全溶け込み溶接するためには、板厚方向にクリップを溶かす必要があり、従来のクリップの場合、燃料チャンネルの板厚T2の増大に伴いクリップの板厚T1も増大させる必要がある。クリップの板厚T1が増大すれば、それに応じて入熱量も増大させる必要が生じる。しかし、本実施例によれば、クリップの板厚T1を2.05mmに一定とし、燃料チャンネルボックスの板厚T2が2.54mm、3.05mmと増大しても入熱量は同一で、7000J/cmと低入熱量での完全溶け込み溶接が可能となることが図8よりわかる。従って、本実施例によれば、クリップ溶接部における欠損の発生を低減できる。
【0040】
なお、孔無しクリップ52A及び孔有りクリップ51Aの板厚T1が1mm以下となると、溶接による接合強度上の問題はないものの、溶接作業の難易度が飛躍的に向上する。従って、孔無しクリップ52A及び孔有りクリップ51Aの板厚T1は、1mmより厚くすることが好ましい。また、燃料チャンネルボックス(角筒管50C)の板厚T2を最大3.05mmとした場合、1/3≦T1/T2≦4/5とするのが好ましく。作業性を考慮するとT1/T2=1/2とするのが望ましい。また、W<T2とするのが好ましく、W1=T1とするのが望ましい。
【0041】
図10に、本発明の実施例1の孔有りクリップの位置決め工程を示す。図10において、左側に正面図を、右側に正面図のA―A断面矢視図を示す。
【0042】
図10(a)に示すように、略三角柱状の形状を有する冷却用位置決め治具54Aに角筒管50Cを挿入する。正面図及び断面図に示すように、冷却用位置決め治具54Aは、略三角形状の頂角に対向する底辺側に、雌ねじが切られた開孔を有し、その開孔が位置する上方に段差が形成されている。冷却用位置決め治具54Aに角筒管50Cを挿入することにより、角筒管50Cの自重により、冷却用位置決め治具54Aに自己整合的に角筒管50Cが位置決めされる(セルフアライメント)。
【0043】
次に、図10(b)に示すように、孔有りクリップ51Aを冷却用位置決め治具54A及び角筒管50Cの上端部に載置する。ここで孔有りクリップ51Aは、ジルカロイ製の略三角形状の平板であり、その頂角部に対向する底辺部の両端部が切り欠かれ段差状を成し、ポスト39が貫通しねじ止め可能とする孔を備えている。また、孔有りクリップ51Aの底辺部のうち上記両端部に形成された段差部を除く部分(孔有りクリップ51Aの角筒管50Cの横断面中央側の側面)は、冷却用位置決め治具54Aに載置されるとき、冷却用位置決め治具に54Aに設けられた段差部と当接する。続いて、孔有りクリップ51Aの上方に角筒管50Cの上端部に係るよう位置決め治具(第2のクリップ位置決め治具)53を載置する。位置決め治具53の切り欠き部は、孔有りクリップ51Aの略三角形状の頂角部と角筒管50Cの上端部上で嵌合し、孔有りクリップ51Aは冷却用位置決め治具54Aと位置決め治具53により位置決めされる。
【0044】
次に、図10(c)に示すように、略三角形状の板状をなしその底辺付近中央部に雄ねじを有するねじ付き板状押圧部材55を取付ける。このとき、ねじ付き板状押圧部材55の雄ねじは、冷却用位置決め治具54Aに設けられた雌ねじが切られた開口にネジ止めされる。これにより、位置決めされた孔有りクリップ51Aは、冷却用位置決め治具54A及び角筒管50Cの上端部に固定される。
【0045】
続いて、図10(d)に示すように、位置決め治具(第2のクリップ位置決め治具)53を取り外し、孔有りクリップ51Aを角筒管50Cの上端部に溶接により取り付ける。
【0046】
図10(e)に示すように、孔有りクリップ51Aが完全溶け込み溶接にて角筒管50Cの上端部に接合した後、ねじ付き板状押圧部材55を取り外す。
【0047】
なお、孔有りクリップ51Aの対角線方向に取り付けられる孔無しクリップ52Aは、図10(e)に示す工程後、角筒管50Cを180°回転し、図10(a)から図10(e)に示す工程を繰り返すことにより、角筒管50Cの上端部に完全溶け込み溶接にて取付ける。
【0048】
本実施例によれば、角筒管50Cの板厚より薄い板厚を有する孔有りクリップ51A及び孔無しクリップ52Aを、各筒管50Cの上端部に高精度に位置決めでき、燃料チャンネルボックスの生産性を向上できる。なお、本実施例によれば、角筒管50Cの板厚の増大に係わらず、薄い1種類の板厚のクリップを使用することが可能となり、更なる生産性の向上が図られる。
【0049】
また、本実施例によれば、孔有りクリップ51A及び孔無しクリップ52Aの溶接時、低入熱量とすることが可能となり、クリップ溶接部における腐食による欠損を低減できる。
【実施例2】
【0050】
図11に本発明の実施例2の孔無しクリップ52Aと角筒管50Cとの配置関係を示し、図12に本発明の実施例2の孔有りクリップ51Aの位置決め工程を示す。実施例1と同一の構成要素に同一の符号を付している。本実施例では、冷却用位置決め治具の形状を、略三角柱状の形状に替えて略四角(台形)柱状とし、冷却用位置決め治具のみを用いて孔有りクリップ51A及び孔無しクリップ52Bを位置決め可能とした点が実施例1と異なる。その他の点については、実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
図11に示すように、冷却用位置決め治具54Bは、横断面が略三角形状の頂角部を切り欠いた略台形状の柱状体をなしている。横断面が略台形状の冷却位置決め用治具54Bの2つの脚部、すなわち冷却用位置決め治具54Bの両端部が、角筒管50Cの内面と接触する。また、冷却用位置決め治具54Bの略中央部には、雌ねじが切られた開孔を有し、その開孔の角筒管50Cの角部に向かう方向側に段差が形成されている。
【0052】
孔無しクリップ52Aは、ジルカロイ製の略三角形状の平板であり、その頂角部に対向する底辺部の両端部が切り欠かれ段差状をなしている。また、孔無しクリップ52Aの底辺部のうち上記両端部に形成された段差部を除く部分(孔無しクリップ52Aの角筒管50Cの横断面中央側の側面)は、冷却用位置決め治具54Aに設けられた段差部と当接可能となっている。
【0053】
図12(a)に示すように、横断面略台形状の柱状体をなす冷却用位置決め治具54Bに角筒管50Cを挿入する。冷却用位置決め治具54Bに角筒管50Cを挿入することにより、角筒管50Cの自重により、角筒管50Cの内面が冷却用位置決め治具54Bの脚部と接触するよう自己整合的に位置決めされる。
【0054】
次に、図12(b)に示すように、孔有りクリップ51Aを冷却用位置決め治具54B及び角筒管50Cの上端部に載置する。ここで孔有りクリップ51Aは、ジルカロイ製の略三角形状の平板であり、その頂角部に対向する底辺部の両端部が切り欠かれ段差状をなし、ポスト39が貫通しねじ止め可能とする孔を備えている。また、孔有りクリップ51Aの底辺部のうち上記両端部に形成された段差部を除く部分(孔有りクリップ51Aの角筒管50Cの横断面中央側の側面)は、冷却用位置決め治具54Bに載置されるとき、冷却用位置決め治具に54Bに設けられた段差部と当接し、角筒管50Cの上端部に対し孔有りクリップ51Aが位置決めされる。
【0055】
図12(c)では、略三角形状の板状をなしその底辺付近中央部に雄ねじを有するねじ付き板状押圧部材55を取付ける。このとき、ねじ付き板状押圧部材55の雄ねじは、冷却用位置決め治具54Bに設けられた雌ねじが切られた開口にネジ止めされる。これにより、位置決めされた孔有りクリップ51Aは、冷却用位置決め治具54B及び角筒管50Cの上端部に固定される。この状態で、孔有りクリップ51Aを角筒管50Cの上端部に溶接により取り付ける。
【0056】
続いて、図12(d)に示すように、孔有りクリップ51Aが完全溶け込み溶接にて角筒管50Cの上端部に接合した後、ねじ付き板状押圧部材55を取り外す。なお、孔有りクリップ51Aの対角線方向に取り付けられる孔無しクリップ52Aは、図12(d)に示す工程後、角筒管50Cを180°回転し、図12(a)から図12(d)に示す工程を繰り返すことにより、角筒管50Cの上端部に完全溶け込み溶接にて取付ける。
【0057】
本実施例によれば、実施例1の効果に加え、1種類の冷却用位置決め治具54Bにより、様々な板厚の角筒管50Cに対し、孔有クリップ51A及び孔無しクリップ52Aを位置決めすることが可能となり、更に燃料チャンネルボックスの生産性を向上することが可能となる。また、実施例1における位置決め治具53は不要となり、作業工程の短縮化も図られる。
【実施例3】
【0058】
図13に本発明の実施例3の孔無しクリップ52Bと角筒管50Cとの配置関係を示し、図14に本発明の実施例3の孔有りクリップ51Bの位置決め工程を示す。実施例2と同一の構成要素に同一の符号を付している。本実施例では、孔無しクリップ52B及び孔有りクリップ51Bの形状を、略三角形状の平板に替えて略台形状の平板とした点が実施例2と異なる。
【0059】
図13に示すように、孔無しクリップ52Bは、略三角形状の頂角部を切り欠いた略台形状の平板をなしている。略台形状の孔無しクリップ52Bの2つの脚部が、角筒管50Cの上端部に配置される。冷却用位置決め治具54Bは、横断面が略三角形状の頂角部を切り欠いた略台形状の柱状体をなしている。横断面が略台形状の冷却位置決め用治具54Bの2つの脚部、すなわち冷却用位置決め治具54Bの両端部が、角筒管50Cの内面と接触する。また、冷却用位置決め治具54Bの略中央部には、雌ねじが切られた開孔を有し、その開孔の角筒管50Cの角部に向かう方向側に段差が形成されている。また、孔無しクリップ52Bは、ジルカロイ製の略台形状の平板であり、その下底部の両端部が切り欠かれ段差状をなしている。また、孔無しクリップ52Bの下底部のうち上記両端部に形成された段差部を除く部分(孔無しクリップ52Bの角筒管50Cの横断面中央側の側面)は、冷却用位置決め治具54Bに設けられた段差部と当接可能となっている。
【0060】
図14(a)に示すように、横断面略台形状の柱状体をなす冷却用位置決め治具54Bに角筒管50Cを挿入する。冷却用位置決め治具54Bに角筒管50Cを挿入することにより、角筒管50Cの自重により、角筒管50Cの内面が冷却用位置決め治具54Bの脚部と接触するよう自己整合的に位置決めされる。
【0061】
次に、図14(b)に示すように、孔有りクリップ51Bを冷却用位置決め治具54B及び角筒管50Cの上端部に載置する。ここで孔有りクリップ51Bは、ジルカロイ製の略台形状の平板であり、その下底部の両端部が切り欠かれ段差状をなし、ポスト39が貫通すしねじ止め可能とする孔を備えている。また、孔有りクリップ51Bの下底部のうち上記両端部に形成された段差部を除く部分(孔有りクリップ51Bの角筒管50Cの横断面中央側の側面)は、冷却用位置決め治具54Bに載置されるとき、冷却用位置決め治具に54Bに設けられた段差部と当接し、角筒管50Cの上端部に対し孔有りクリップ51Bが位置決めされる。
【0062】
続いて、図14(c)では、略三角形状の板状をなしその底辺付近中央部に雄ねじを有するねじ付き板状押圧部材55を取付ける。このとき、ねじ付き板状押圧部材55の雄ねじは、冷却用位置決め治具54Bに設けられた雌ねじが切られた開口にねじ止めされる。これにより、位置決めされた孔有りクリップ51Bは、冷却用位置決め治具54B及び角筒管50Cの上端部に固定される。この状態で、孔有りクリップ51Bを角筒管50Cの上端部に溶接により取り付ける。
【0063】
図14(d)に示すように、孔有りクリップ51Bが完全溶け込み溶接にて角筒管50Cの上端部に接合した後、ねじ付き板状押圧部材55を取り外す。なお、孔有りクリップ51Bの対角線方向に取り付けられる孔無しクリップ52Bは、図14(d)に示す工程後、角筒管50Cを180°回転し、図14(a)から図14(d)に示す工程を繰り返すことにより、角筒管50Cの上端部に完全溶け込み溶接にて取付ける。
【0064】
本実施例によれば、実施例2の効果に加え、図13に示すように実施例2と比較し、孔有りクリップ51Bの溶接による接合面の長さ、すなわち、溶接距離が短くなるため溶接時間の短縮化が図られる。
【0065】
また、本実施例によれば、溶接部が直線状のみとなるため溶接作業における作業性の向上も図られる。
【0066】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・沸騰水型原子力プラント、2・・・原子炉、3・・・原子炉格納容器、4・・・原子炉建屋、5・・・原子炉格納容器上蓋、6・・・ドライウェル、7・・・圧力抑制室、8・・・ベント通路、9・・・シールドプラグ、10・・・原子炉力容器上蓋、11・・・原子炉圧力容器、12・・・炉心、13・・・気水分離器、14・・・蒸気乾燥器、15・・・炉心シュラウド、16・・・燃料集合体、17・・・炉心支持板、18・・・上部格子板、19・・・制御棒案内管、20・・・制御棒、21・・・制御棒駆動機構ハウジング、22・・・下鏡、23・・・ コンクリートマット、24・・・ペデスタル、25・・・γ線遮蔽体、26・・・原子炉ウェル、27・・・ドライヤ・セパレータプール、28・・・使用済燃料貯蔵プール、29・・・運転床、30・・・燃料交換機、31・・・上部タイプレート、32・・・下部タイプレート、33・・・燃料棒、34・・・ウォータロッド、35・・・燃料支持格子、36・・・燃料チャンネルボックス、37・・・部分長燃料棒、38・・・ハンドル、39・・・ポスト、41・・・燃料被覆管、42・・・燃料ペレット、43・・・プレナムスプリング、44・・・端栓、45・・・中空管、46・・・端栓、47・・・領域、48・・・チャンネルスペーサ、50A・・・ジルカロイ板材、50B・・・横断面U字状のジルカロイ板材、50C・・・角筒管(燃料チャンネルボックス)、51,51A,51B・・・孔有りクリップ、52,52A,52B・・・孔無しクリップ、53・・・位置決め治具(第2のクリップ位置決め治具)、54A,54B・・・冷却用位置決め治具、55・・・ねじ付き板状押圧部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14