特許第6239480号(P6239480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239480
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電源装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-207050(P2014-207050)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-77108(P2016-77108A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿又 幹裕
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−050299(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0062431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の電源電圧を印加する電源と、
前記電源電圧がドレイン端子に印加され、ゲート端子とソース端子間に印加されるゲート・ソース間電圧に応じてオンまたはオフするnチャンネルMOS型のFETと、
前記ゲート端子と接続され前記ゲート・ソース間電圧を印加する電源ICと、
一端が前記電源ICを介して前記ゲート端子に接続され、他端が前記ソース端子と接続され、前記電源ICから電圧を印加されるブーストコンデンサと、
前記ブーストコンデンサの前記一端の電圧と前記電源電圧とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して前記FETのオン電圧より低いか否かを判断する判断手段と、
前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して前記オン電圧より低いことを判断した場合は、前記電源ICが前記ゲート・ソース間電圧を低下させて前記FETをオフする停止手段と、
を備えた電源装置。
【請求項2】
前記FETはハイサイドFETであり、
ゲート端子とドレイン端子とソース端子を備えたローサイドFET、
をさらに備え、
前記ハイサイドFETの前記ソース端子と前記ローサイドFETのドレイン端子が接続され、
前記ローサイドFETのソース端子は接地された、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記比較手段は、ブーストコンデンサの前記一端に印加される電圧と前記電源電圧とを比較して比較結果を出力するコンパレータ、
であり、
前記判断手段は、前記コンパレータの出力に基づいて、前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して基準電圧より低いか否かを判断する、
請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
時間を計時するタイマーと、
前記判断手段が前記タイマーが前記所定時間を計時する前に前記ゲート・ソース間電圧が所定電圧以上となったと判断した場合に、前記タイマーをリセットするリセット手段と、
をさらに備えた請求項1ないし3のいずれか一に記載の電源装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記タイマーが前記リセット手段によりリセットされることなく前記所定時間を計時した場合に、前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して前オン電圧より低いと判断する、
請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
直流の電源電圧を印加する電源と、前記電源電圧がドレイン端子に印加され、ゲート端子とソース端子間に印加されるゲート・ソース間電圧に応じてオンまたはオフするnチャンネルMOS型のFETと、前記ゲート端子と接続され前記ゲート・ソース間電圧を印加する電源ICと、一端が電源ICを介して前記ゲート端子に接続され、他端が前記ソース端子と接続され、前記電源ICから電圧を印加されるブーストコンデンサと、前記ブーストコンデンサの前記一端の電圧と前記電源電圧とを比較する比較手段とを備えた電源装置をコンピュータにより制御するプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して前記FETのオン電圧より低いか否かを判断する判断手段と、
前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して前記オン電圧より低いことを判断した場合は、前記電源ICが前記ゲート・ソース間電圧を低下させて前記FETをオフする停止手段と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器は、FET(Field Effect Transistor)を使用した電源回路を装備している。電源回路は、FETをオン・オフさせてスイッチング動作を実行する。FETには、nチャンネルMOS型FETとpチャンネルMOS型FETが存在する。
【0003】
電源回路は、nチャンネルMOS型FET(以降、単に「FET」という)を正しくオン・オフさせるために、例えばブーストコンデンサを実装している。ブーストコンデンサが実装されている場合、電源回路は、ゲート・ソース間に十分な電圧を印加してFETをオンさせる。
【0004】
しかしながら、何らかの理由でブーストコンデンサが実装されていない場合、電源回路はFETのゲート・ソース間に十分な電圧を印加できない。また、接触不良や故障等の理由でブーストコンデンサが実装不良となった場合も、電源回路はFETのゲート・ソース間に十分な電圧を印加できない。このような場合、FETは、内部負荷が大きい状態でドレイン・ソース間を電流が流れる場合がある。そのため、この状態が長時間継続すると、内部を流れる電流によって、FETが過剰に発熱し、発煙、発火する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、FETのゲート・ソース間に十分な電圧が印加されていなくてもFETが過剰に発熱せず、FETの発煙・発火を防止することができる電源装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電源装置は、直流の電源電圧を印加する電源と、前記電源電圧がドレイン端子に印加され、ゲート端子とソース端子間に印加されるゲート・ソース間電圧に応じてオンまたはオフするnチャンネルMOS型のFETと、前記ゲート端子と接続され前記ゲート・ソース端子間電圧を印加する電源ICと、一端が前記電源ICを介して前記ゲート端子に接続され、他端が前記ソース端子と接続され、前記電源ICから電圧を印加されるブーストコンデンサと、前記ブーストコンデンサの前記一端の電圧と前記電源電圧とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して前記FETのオン電圧より低いか否かを判断する判断手段と、前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して前記オン電圧より低いことを判断した場合は、前記電源ICが前記ゲート・ソース端子間印加される電圧を低下させて前記FETをオフする停止手段と、を備える。
【0007】
実施形態のプログラムは、直流の電源電圧を印加する電源と、前記電源電圧がドレイン端子に印加され、ゲート端子とソース端子間に印加されるゲート・ソース間電圧に応じてオンまたはオフするnチャンネルMOS型のFETと、前記ゲート端子と接続され前記ゲート・ソース端子間電圧を印加する電源ICと、一端が電源ICを介して前記ゲート端子に接続され、他端が前記ソース端子と接続され、前記電源ICから電圧を印加されるブーストコンデンサと、前記ブーストコンデンサの前記一端の電圧と前記電源電圧とを比較する比較手段とを備えた電源装置をコンピュータにより制御するプログラムであって、前記コンピュータを、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して前記FETのオン電圧より低いか否かを判断する判断手段と、前記ゲート・ソース間電圧が所定時間継続して前記オン電圧より低いことを判断した場合は、前記電源ICが前記ゲート・ソース端子間印加される電圧を低下させて前記FETをオフする停止手段と、して機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかる電源装置の回路および電源装置の制御部のハードウェア構成を示す図である。
図2図2は、FETのゲート・ソース間電圧とドレイン端子とソース端子間の抵抗値を表すグラフである。
図3図3は、電源装置のタイミングチャートである。
図4図4は、制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。
図5図5は、制御部の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態にかかる電源装置の回路および電源装置の制御部のハードウェア構成を示す図である。電源装置1は、電源IC11、コンパレータ12、ロジックIC13、直流の電源14、FET15、FET16、制御部100を備えている。電源IC(Integrated Circuit)11は、電源装置1の各部品を正常に動作させるために電圧を監視し、各部品に安定した電圧を印加するための半導体である。コンパレータ12は、入力電圧と基準電圧とを比較し、比較結果に応じて所定の出力をする半導体である。ロジックIC13は、コンパレータ12の出力を所定のタイミングで制御部100に出力する半導体である。電源14は、各部品を動作させるために、各部品に直流電圧を印加する。実施形態において、FET15(Field Effect Transistor)とFET16は、nチャンネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタである。
【0010】
FET15は、ゲート端子15Gとドレイン端子15Dとソース端子15Sを備えている。ゲート端子15Gは、電源IC11に接続されている。ドレイン端子15Dは、電源14と接続されている。電源14は、ドレイン端子15Dに直流の電源電圧(24V)を印加する。ソース端子15Sは、電源IC11に接続されている。電源IC11は、FET15のゲート端子15Gとソース端子15S間にゲート・ソース間電圧を印加する。
【0011】
FET15のゲート端子15Gとソース端子15S間に十分に高いゲート・ソース間電圧を印加する。するとFET15は、ドレイン端子15Dとソース端子15S間を導通させてオンする。FET15がオンするゲート・ソース間電圧をオン電圧(例えば3〜5V)という。FET15がオンしているときのドレイン端子15Dとソース端子15S間の抵抗(以降「ドレイン・ソース間抵抗」という)は低負荷である。この状態でFET15は、ドレイン端子15Dとソース端子15S間に電流が流れる。以降、ドレイン端子15Dとソース端子15S間を流れる電流を「ドレイン電流」という。
【0012】
一方、ゲート・ソース間電圧がオン電圧より下がる(例えば1〜2V)と、FET15はオンではなくなる。ただ、ゲート・ソース間電圧が0Vではないので、FET15はオフしているわけでもない。以降この状態を「ハーフオン」という。ハーフオン状態では、FET15のドレイン・ソース間抵抗が増加し高負荷となる。このような状態でFET15には、ドレイン端子15Dとソース端子15S間をドレイン電流が流れる。
【0013】
図2は、FET15のゲート・ソース間電圧(横軸)と、ドレイン・ソース間抵抗(縦軸)を表すグラフである。図2において、ゲート・ソース間電圧が低いほどドレイン・ソース間抵抗が高いことが分かる。また、ゲート・ソース間電圧が高くなると、ドレイン・ソース間抵抗は低い値で推移することが分かる。
【0014】
図1の説明に戻る。ゲート・ソース間電圧が充分高い(例えば3〜5V)場合は、FET15はオンし、かつドレイン・ソース間抵抗は低い。そのため、ドレイン電流は、FET15のドレイン・ソース間抵抗の影響を受けて発熱することはない。ゲート・ソース間電圧がオン電圧より下がって例えば1〜2Vの場合は、FETはハーフオン状態であるため、ドレイン・ソース間抵抗は高い。そのため、ドレイン電流が流れると、高いドレイン・ソース間抵抗の影響で、FET15は発熱する。そして、そのままFET15がハーフオンの状態を続けると、FET15は、発煙や発火する危険性がある。
【0015】
FET16は、ゲート端子16Gとドレイン端子16Dとソース端子16Sを備えている。ゲート端子16Gは、電源IC11に接続されている。電源IC11は、ゲート端子16Gとソース端子16S間にゲート・ソース間電圧を印加する。ドレイン端子16Dは、FET15のソース端子15Sと、接点26で接続されている。また、ドレイン端子16Dは、電源IC11と接続されている。ソース端子16Sは、アース端子20に接地されている。
【0016】
FET16のゲート端子16Gとソース端子16S間に十分に高いゲート・ソース間電圧を印加する。するとFET16は、ドレイン端子16Dとソース端子16S間を導通させてオンする。FET16がオンする電圧もオン電圧(例えば3〜5V)という。FET16がオンしているときのドレイン端子16Dとソース端子16S間の抵抗(以降「ドレイン・ソース間抵抗」という)は低負荷である。また、FET16のドレイン端子16Dとソース端子16S間を流れる電流もドレイン電流という。FET16におけるゲート・ソース間電圧とFET16のドレイン・ソース間抵抗とドレイン電流の関係は、FET15と同様(図2の関係)であるので、説明を省略する。
【0017】
また、電源装置1は、ブーストコンデンサ17を備えている。ブーストコンデンサ17は、一端が接点25と接続され、かつ電源IC11に接続されている。ブーストコンデンサ17は、他端が接点26に接続されている。また、ブーストコンデンサ17の一端は、電源IC11を介して、直接的または間接的にFET15のゲート端子15Gと接続されている。そのため、ブーストコンデンサ17がチャージされて接点25の電圧が昇圧すると、ゲート・ソース間電圧が連動して高くなる。上記の「間接的に接続されている」とは、接点25と接点26間の電圧を高くすると、ゲート・ソース間電圧が連動して高くなるように接続されていることを意味する。また、上記の「間接的に接続されている」とは、接点25と接点26間の電圧を低くすると、ゲート・ソース間電圧が連動して低くなるように接続されていることである。
【0018】
ブーストコンデンサ17は、電源IC11から電圧を印加されることで電荷(電気エネルギー)を蓄える。そして電荷が蓄えられた結果、ブーストコンデンサ17の接点25と接点26との間に大きな電位差が生じる。このようにしてブーストコンデンサ17間の電圧が高くなる。そして、ブーストコンデンサ17の一端が、直接的または間接的にゲート端子15Gと接続されていることから、FET15のゲート・ソース間電圧は3〜5Vに引き上げられる。
【0019】
次に、コンパレータ12について説明する。コンパレータ12は、被比較電圧(Vbst)を印加する入力端子12aと、基準電圧(Vref)が印加される入力端子12bと出力端子12cを備えている。入力端子12aは接点25と接続されている。入力端子12bは、電源14からのVin端子14aと接続している。また、入力端子12bは、FET15のドレイン端子15Dと接続している。コンパレータ12の出力端子12cは、ロジックIC13の一方の入力端子13aと接続している。コンパレータ12の出力端子12cは、ハイレベルまたはローレベルの出力Vcoutを出力する。
【0020】
電源IC11は、コンパレータ12の入力端子12aに、電源IC11からブーストコンデンサ17に印加するVbst電圧を印加する。また、電源14は、商用電源(AC100V)を入力して直流の電源電圧(24V)を生成する。電源14は、コンパレータ12の入力端子12bに、電源14からFET15のドレイン端子15Dに印加するVref電圧を印加する。したがって、電源14の電源電圧が基準電圧(Vref)となる。
【0021】
コンパレータ12(比較手段)は、入力端子12aへ印加されるVbst電圧と入力端子12bへ印加されるVref電圧に基づいて、異なる電圧Vcoutを出力端子12cから出力する。すなわち、コンパレータ12は、Vbst電圧と入力端子12bへ印加されるVref電圧とを比較する。比較した結果、Vbst電圧がVref電圧以上の場合は、出力端子12cからハイレベルのVcoutを出力する。コンパレータ12は、比較した結果、入力端子12aのVbst電圧が入力端子12bのVref電圧より低い場合は、出力端子12cからローレベルのVcoutを出力する。
【0022】
次に、ロジックIC13は、2つの入力端子13aと13bを備えている。また、ロジックIC13は、出力端子13cを備えている。ロジックIC13は、コンパレータ12の出力Vcoutを入力端子13aに入力する。また、ロジックIC13は、電源IC11から出力されたパワーグッド信号を入力端子13b入力する。
【0023】
パワーグッド信号は、電源装置1の電源が投入された直後から、電源IC11から設定通りの電圧が出力されている場合に、周辺回路に送信される信号である。電源IC11から送信されたパワーグッド信号は、ロジックIC13の入力端子13bと制御部100に入力される。
【0024】
ロジックIC13は、入力端子13bにパワーグッド信号が入力されている間、入力端子13aに入力された出力Vcoutを出力端子13cから出力する。ロジックIC13は、入力端子13bにパワーグッド信号が入力されていないときは、入力端子13aに入力された出力Vcoutを出力端子13cから出力しない。
【0025】
また、電源装置1は、コイル18を備えている。コイル18は、一端を接点26に接続している。コイル18の他端は電源装置1の出力端子27である。コイル18は、接点26の電圧を平均化して出力端子27から直流電圧Voutを出力する。
【0026】
また、電源装置1は、コンデンサ19を備えている。コンデンサ19は、一端を出力端子27に接続している。コンデンサ19は、他端をアース端子20に接地している。コンデンサ19は、電圧を平均化して出力端子27から直流電圧Voutを出力する。
【0027】
電源IC11は、FET15とFET16のゲート・ソース間電圧を制御して、FET15とFET16を交互にオン・オフする。FET15がオンしてFET16がオフした場合、FET15には、ドレイン・ソース間抵抗が低負荷でドレイン電流が流れる。この場合、接点26の電位は、ドレイン端子15Dとソース端子15S間で多少の電圧降下があるものの、ほぼ24Vである。
【0028】
一方、FET16がオンしてFET15がオフした場合、FET16には、ドレイン・ソース間抵抗が低負荷でドレイン電流が流れる。この場合、接点26の電圧は、FET16がオンするためほぼグランドレベル(0V)となる。FET15とFET16が交互にオン・オフする毎に、接点26の電圧は24Vと0Vを繰り返す。この電圧の変化をコイル18とコンデンサ19が平均化するため、出力端子27からは直流電圧(Vout(約12V)が出力される。なお、出力端子27から出力される直流電圧は、FET15、FET16のデューティ比を変更することで任意の電圧に設定することができる。
【0029】
このような電源装置において、FET15をオンさせる場合は、電源IC11は、接点25の電位を昇圧する。すると、ブーストコンデンサ17に電荷がチャージされ、接点25と接点26間電圧が高くなる。接点25と接点26間電圧が高くなることに連動して、FET15のゲート・ソース間電圧が高くなる。高くなったゲート・ソース間電圧は3〜5V(オン電圧)である。この場合、FET15は、ドレイン端子15Dとソース端子15S間のドレイン・ソース間抵抗が低負荷の状態でオンする。するとドレイン電流が、電源14から接点26に向けて低負荷で流れる。そのため、FET15は発熱することはない。
【0030】
また、FET15をオフする場合は、電源IC11は、接点25の電圧を降圧する。すると、連動してFET15のゲート・ソース間電圧が下がる。ゲート・ソース間電圧が下がる(例えば0V)とFET15はオフする。
【0031】
一方、ブーストコンデンサが実装されていない場合や、接触不良や故障等の理由でブーストコンデンサが実装不良となった場合は、電源IC11が接点25を昇圧できない。そのため、FET15のゲート・ソース間電圧は、3〜5Vより低い。例えば、ゲート・ソース間電圧は1〜2Vである。そのため、FET15はハーフオン状態である。
【0032】
この場合、FET15は、ドレイン端子15Dとソース端子15S間のドレイン・ソース間抵抗が高負荷の状態となる。するとドレイン電流が、電源14から接点26に向行けてドレイン・ソース間抵抗が高負荷の状態で流れる。そのため、FET15は過剰に発熱することがある。この状態が継続されると、FET15は発煙・発火する恐れがある。
【0033】
そのため、実施形態では、FET15が過剰に発熱して発煙・発火する恐れがある場合は、制御部100が電源14からFET15への電圧印加を停止する。
【0034】
以降、FET15への電圧印加を停止する制御部100の構成について説明する。制御部100は、マイクロコンピュータで構成されている。制御部100は、少なくともCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、メモリ部104、タイマー105を備えている。
【0035】
CPU101は制御主体となる。ROM102は各種プログラムを記憶する。RAM103は各種データを展開する。CPU101、ROM102、RAM103、メモリ部104は、互いにデータバス(図示せず)を介して接続されている。CPU101とROM102とRAM103が、制御部100を構成する。CPU101がROM102やメモリ部104に記憶されRAM103に展開された制御プログラムに従って動作することにより、制御部100は後述する制御処理を実行する。
【0036】
メモリ部104は、電源を切っても記憶情報が保持されるHDD(Hard Disc Drive)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成される。メモリ部104は、制御プログラムを含むプログラム等を記憶する。
【0037】
タイマー105は、例えば、クロック周波数をカウントすることで計時(カウントアップまたはカウントダウン)する。制御部100は、タイマー105の計時に基づいて、所定時間を経過したか否かを判断する。なお、タイマー105は、所定時間を計時した場合に出力するものであってもよい。この場合、制御部100は、タイマー105の出力によって所定時間を経過したことを判断する。
【0038】
次に、コンパレータ12への入力と出力、ロジックIC13の出力、パワーグッド信号およびタイマー105の出力について、図3のタイミングチャートを用いて説明する。
【0039】
図3において、仮想の点線Aの左側は、ブーストコンデンサ17が実装されている場合の各波形である。仮想の点線Aの右側は、故障する等でブーストコンデンサ17が実装されなくなった場合の各波形である。
【0040】
点線Aの左側は、ブーストコンデンサ17が実装されている場合のタイミングチャートである。コンパレータ12の入力端子12aに印加される電圧Vbstが、入力端子12bに印加される電圧Vref以上である。Vbst31は、コンパレータ12の入力端子12aに印加される、接点25における電圧である。Vref32は、入力端子12bへ印加される、電源14のVin端子14aの電圧である。電源IC11は、所定時間接点25を昇圧する。昇圧すると、Vbst31はローレベルからハイレベルに切り替わる立ち上がり波形31aを形成する。すると、Vbst31はVref32以上の電圧となる。すると、FET15がオンする。また、電源IC11が接点25への電圧の印加を停止すると、Vbst31はハイレベルからローレベルに切り替わる立ち下り波形31bを形成する。すると、Vbst31はローレベルの電圧となり、FET15はオフする。
【0041】
一方、点線Aのタイミングでブーストコンデンサ17が破壊した等の理由で実装不良となり、点線Aの右側は、ブーストコンデンサ17が実質的に実装されていない。そのため、電源ICが接点25を昇圧してもブーストコンデンサ17間の電圧が上昇しない。このような状態では、Vbst31はローレベルからハイレベルに切り替わろうとして、立ち上がり波形31aを形成しても、Vref32より低い状態となる。
【0042】
コンパレータ12の出力Vcout33は、点線Aより左側の場合、Vbst31がVref32以上となっている場合にハイレベルとなる。詳細には、コンパレータ12の出力Vcout33は、Vbst31がVref32以上になった場合、立ち上がり波形31aのタイミングで立ち上がり波形33aを形成する。また、コンパレータ12の出力Vcout33は、Vbst31がVref32より低くなった場合、立下がり波形31bのタイミングで立ち下がり波形33bを形成する。
【0043】
一方、点線Aより右側の場合、コンパレータ12の出力Vcout33は、ローレベルのままである。
【0044】
パワーグッド信号34は、ロジックIC13の入力端子13bと制御部100に入力される信号である。パワーグッド信号34は、出力Voutが安定したタイミングで立ち上がり波形34aを形成する。
【0045】
Vlout35は、ロジックIC13の出力端子13cからの出力である。ロジックIC13は、パワーグッド信号34がローレベルからハイレベルに立上っている間、入力端子13aに入力された出力Vcout33を出力Vlout35として出力する。点線Aより左側の場合、出力Vlout35は、出力Vcout33の立ち上がり波形33aのタイミングで立ち上がり波形35aを形成しハイレベルとなる。また、Vlout35は、Vcout33の立下がり波形33bのタイミングで立下がり波形35bを形成しローレベルとなる。また、点線Aより右側の場合、Vlout35は、ローレベルのままである。
【0046】
タイマー105は、波形36に示すように、パワーグッド信号34の立ち上がり波形34aのタイミング36aで起動され、カウント(すなわち計時)を開始する。タイマー105は、点線Aより左側の場合、Vlout35の立ち上がり波形35aのタイミング36bでリセットされ再度起動される。タイマー105は起動のタイミングでカウント(すなわち計時)を開始し、リセットのタイミングでカウント(すなわち計時)を0に戻す。
【0047】
また、タイマー105は、点線Aより右側の場合、Vlout35がローレベルのままであるため、リセットされず、カウントアップを続ける。そしてタイマー105が閾値となるカウント値TSをカウントしたタイミング36cにおいて、タイマー105は所定時間Tを計時する。このタイミング36cにおいて、電源14からドレイン端子15Dへの電圧印加が停止するため、Vref32はローレベルになる。
【0048】
次に、図4図5を用いて、電源装置1の制御処理について説明する。図4は、電源装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。制御部100は、ROM102やメモリ部104に記憶された制御プログラムを含む各種プログラムに従って機能する。制御部100は、判断手段111、停止手段112、リセット手段113として機能する。
【0049】
判断手段111は、比較手段であるコンパレータ12の比較結果に基づいて、ゲート・ソース間電圧が所定時間継続してFETのオン電圧より低いことを判断する機能を有する。
【0050】
停止手段112は、ゲート・ソース間電圧が所定時間継続してオン電圧より低いことを判断した場合は、FETをオフする機能を有する。
【0051】
リセット手段113は、判断手段がタイマー105が所定時間を計時する前にゲート・ソース間電圧が所定電圧以上となったと判断した場合に、タイマー105をリセットする機能を有する。
【0052】
次に、図5のフローチャートを用いて、電源装置1の制御処理の流れを説明する。制御部100は、電源IC11からパワーグッド信号を入力したか否かを判断する(S11)。パワーグッド信号を入力したと判断した場合は(S11のYes)、制御部100は、タイマー105を起動する(S12)。パワーグッド信号を入力していないと判断した場合は(S11のNo)、制御部100は、ステップS11に戻る。
【0053】
タイマー105を起動した制御部100は、次にロジックIC13の出力Vloutがローレベルからハイレベルに変化したか否かを判断する(S13)。変化したと判断した場合は(S13のYes)、制御部100(リセット手段113)は、S12で起動したタイマー105をリセットして再起動する(S14)。一方、変化していないと判断した場合は(S13のNo)、制御部100(判断手段111)は、タイマー105が所定時間Tを計時したか否かを判断する(S15)。所定時間Tは、FET15が発熱しても発煙・発火に至らない時間として定める。所定時間Tを経過したと判断した場合は(S15のYes)、制御部100(停止手段112)は、FET15をオフするための信号を電源IC11に出力する。具体的には、制御部100は、電源IC11に対して、電源IC11を停止させるイネーブル信号を出力する(S16)。このイネーブル信号を受信した電源IC11は停止する。すると、FET15のゲート・ソース間電圧が低下しFET15はオフする。なお、所定時間Tを経過していないと判断した場合は(S15のNo)、制御部100は、S13に戻る。
【0054】
このような実施形態によれば、タイマー105がリセットされずに所定時間Tを経過した場合、制御部100は、電源IC11を停止させて、FET15をオフする。そのため、FET15は過剰に発熱しない。したがって、FET15の発煙・発火を防止することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
11 電源IC
12 コンパレータ
13 ロジックIC
14 電源
15 FET(ハイサイドFET)
16 FET(ローサイドFET)
17 ブーストコンデンサ
100 制御部
105 タイマー
111 判断手段
112 停止手段
113 リセット手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2009−260659号公報
図1
図2
図3
図4
図5