(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集合住宅の界壁には、高度の遮音性能が求められる。遮音性能に影響を与える要因として、内装面材自体の遮音性能、壁内部の空気層を伝わる伝搬音、内装下地桟およびパネルフレームを介して伝わる伝搬音等があるが、ここでは空気層を伝わる伝搬音について考える。
【0005】
両側の内装面材の間に一つの空気層が形成された二重壁構造の場合、空気層の空気がばねのように働き、主に低音域で音が透過する現象、いわゆる「共鳴透過」が発生する。この現象は、内部にブレースを有する耐力壁でも、例外なく発生する。一般に、面材間の空気層が厚くなるほど、共鳴透過を起こす周波数が低音域へ移行する。このため、空気層を厚めにとって、人間の聴覚感度が鈍くなる低周波数域で共鳴透過が起きるようにすれば、日常生活上の遮音性能に問題が出にくい。
【0006】
しかし、両面の内装面材間に波型鋼板等の面材型の耐力要素が設けられた三重壁構造の耐力壁の場合、面材型の耐力要素により壁の内部が2つの空気層に分断されるため、各空気層の厚さが薄くなる。これにより、二重壁構造の耐力壁と比べて共鳴透過を起こす周波数が高くなり、前記低周波数域外で共鳴透過が起きるリスクが高くなる。また、2つの空気層の共鳴透過が共に前記低周波数域で発生する場合でも、2つの空気層の共鳴透過を起こす周波数が一致するかまたは近いと、両共鳴透過が互い影響し合って現象が増幅されるため、日常生活上の遮音性能の低下が懸念される。
【0007】
特に、集合住宅の界壁は建築基準法により遮音性能の基準値(Rr−40以上)が定められているため、三重壁構造の耐力壁に遮音性能以外の構造上の利点や施工上の利点があったとしても、遮音性能が前記基準値を下回れば使用できない。また、遮音性能が前記基準値を満足していても、より高い遮音性能を得ることが望ましい。
【0008】
特許文献1に、三重壁体において音源側中空層の厚さを受音側中空層の厚さよりも厚くすることで遮音性能を向上させることが提案されている。同文献の明細書中には、三重壁体の中央の面材が何であって、どのような目的で設けられているのか記載されていないため、この三重壁体が耐力壁であるか否かの判断を明確にはできないが、少なくとも耐力壁であるとの記載はない。また、この三重壁体は、音源側と受音側とが決まっているため、両方向の遮音性能が求められる集合住宅の界壁には不向きである。
【0009】
耐力壁について遮音性能の面からだけ見れば、耐力要素がブレースである二重壁構造の方が、耐力要素が面材である三重壁構造よりも優れている。しかし、耐力壁の耐力要素がブレースであるよりも一部分を面材にした方が構造耐力上優れている。そのため、耐力要素の一部分が面材である耐力壁を用いることで、建物全体としての耐力壁の数量が減らせ、開口部をより多く計画できる等、プランの自由度が高まる利点がある。また、界壁を耐力壁とする場合、建物全体の耐震強度や耐力壁の配置を考慮した上で耐力壁の求められる耐力が決まるため、求められる耐力を得るために、少なくとも一部分の耐力要素を面材にしなければならない状況がでてくる。
【0010】
この発明の目的は、壁内部の空気層を伝わる伝搬音を抑えて、構造上および遮音性能に優れた面材型の耐力要素を有する三重壁構造の耐力壁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の耐力壁は、2枚の面材と、これら2枚の面材の間に設置された面材型の耐力要素とを備える耐力壁であって、
前記面材型の耐力要素を取付けるパネルフレームが、前記2枚の面材間の中央であり、このパネルフレームの片側の面に前記面材型の耐力要素が設けられ、前記2枚の面材のうちの片方の面材と前記面材型の耐力要素間の空気層の厚さと、もう片方の面材と前記面材型の耐力要素間の空気層の厚さとが互いに異なる。
【0012】
この構成によると、面材型の耐力要素の両側にある2つの空気層の厚さが互いに異なるため、両空気層の共鳴透過を起こす周波数が異なる。つまり、両空気層の共鳴透過現象が分散される。このため、両空気層の共鳴透過現象が互いに影響し合うことによる遮音性能の低下が最小限に抑えられる。
【0013】
この発明は、前記構成において、前記面材型の耐力要素が、断面台形状または矩形状の山部と谷部とが交互に並ぶ波型鋼板であり、前記面材型の耐力要素と前記面材との間に生じる各部の空気層厚さのうち、最小の空気層厚さが、
89Hz以下の周波数域で共鳴透過現象が起きる寸法である。
波型鋼板は、面材でありながら耐力要素として効果的に機能する。また、面材型の耐力要素が波型鋼板であると、波型鋼板における山部および谷部の並び方向の位置によって、両側の空気層を隔てる部分の壁厚さ方向の位置が異なるため、両側の空気層の双方に複数種の空気層の厚さが存在する。そして、各厚さの空気層でそれぞれ共鳴透過現象が発生する。このため、共鳴透過現象がより一層分散され、遮音性能を向上させることができる。
【0014】
この発明において、前記耐力要素が前記面材型の耐力要素である区画層と、前記耐力要素が非面材型の耐力要素である区画層とを有していてもよい。
この場合、上記2種類の区画層を適正に組み合わせることにより、求められる耐力を容易に得ることができると共に、耐力要素が非面材型の耐力要素である区画層に開口部を設けることができる。さらに、耐力要素が面材型の耐力要素である区画層における面材型の耐力要素の両側に形成される2つの空気層と、耐力要素が非面材型の耐力要素である区画層に形成される1つの空気層とを有するため、共鳴透過現象がより一層分散され、遮音性能を向上させることができる。
【0015】
この発明において、前記面材は石膏ボードであり、一つの面材につき前記石膏ボードを2枚重ねで使用するとよい。石膏ボードは、それ自体の遮音性が高い。その石膏ボードを2枚重ねで使用することで、耐力壁の遮音性がより一層向上する。
【0016】
この耐力壁は上記長所を有するので、集合住宅の界壁に適する。
【発明の効果】
【0017】
この発明の耐力壁は、2枚の面材と、これら2枚の面材の間に設置された面材型の耐力要素とを備える耐力壁であって、前記面材型の耐力要素が、断面台形状または矩形状の山部と谷部とが交互に並ぶ波型鋼板であり、
前記面材型の耐力要素を取付けるパネルフレームが、前記2枚の面材間の中央であり、このパネルフレームの片側の面に前記面材型の耐力要素が設けられ、前記2枚の面材のうちの片方の面材と前記面材型の耐力要素間の空気層の厚さと、もう片方の面材と前記面材型の耐力要素間の空気層の厚さとが互いに異なり、前記面材型の耐力要素と前記面材との間に生じる各部の空気層厚さのうち、最小の空気層厚さが
89Hz以下の周波数域で共鳴透過現象が起きる寸法であるため、壁内部の空気層を伝わる伝搬音が抑えられ、遮音性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。
この耐力壁は集合住宅の隔壁に適用されるものであって、
図1に示すように、上下の横架材2,2の間に設けられる。耐力壁1は、パネルフレーム3と、このパネルフレーム3に設けられた非面材型の耐力要素4および面材型の耐力要素5と、これらパネルフレーム3および耐力要素4,5の両側に配置された2枚の内装面材6とを備える。
【0020】
パネルフレーム3は、左右の縦フレーム材7と上下の横フレーム材8とで矩形に組まれた枠体9を有し、この枠体9の高さ方向の中間で、複数本の中間横フレーム材10により左右の縦フレーム材7を互いに繋いでいる。縦フレーム材7、横フレーム材8、および中間横フレーム材10は、例えば角パイプが用いられる。なお、縦フレーム材7と横フレーム材8とは、接続金物11を介して接合している。また、縦フレーム材7と中間横フレーム材10との接合は、中間横フレーム材10の端面を縦フレーム材7の側面に突き合わせて溶接する接合形式とされている。
【0021】
図示の例では中間横フレーム材10の数は3本であり、これら3本の中間横フレーム材10をそれぞれ境界として、耐力壁1が上下に並ぶ4つの区画層A,Bに等分割されている。そして、各区画層A,Bごとに耐力要素4,5のいずれかが設けられている。
【0022】
上端および下端の区画層Aに設けられた非面材型の耐力要素4は、逆V字状またはV字状に配置された2本の斜材4a,4aで構成される。各斜材4aは、角パイプまたは他の形鋼からなる。各斜材4aのV字の開き側端は中間横フレーム材10の左右端に接合され、閉じ側端は変形吸収デバイス12を介して横フレーム材8に接合されている。変形吸収デバイス12は、例えば複数枚の鋼板を溶接により所定の形状に組み合わせたものであって、非面材型の耐力要素4が設けられた区画層Aの変形を吸収する機能を有する。斜材4aと中間横フレーム材10の接合、斜材4aと変形吸収デバイス12の接合、および変形吸収デバイス12と横フレーム材8の接合は、例えば溶接により行われる。
【0023】
中間の2つの区画層Bに設けられた面材型の耐力要素5
は、波型鋼板である。より詳しくは、図示の例の耐力要素5は、断面台形状または矩形状の山部5aと谷部5bとが交互に並ぶ折板であ
る。このような波型鋼板は、面材でありながら耐力要素として効果的に機能する。この波型鋼板からなる耐力要素5は、その山部5aおよび谷部5bが鉛直方向に沿う向きとなるように配置され、隣合う上下一対の中間横フレーム材10の片側の面に谷部5bの上下両端がそれぞれビス等により固定される。
【0024】
図2に示すように、波型鋼板からなる耐力要素5が設けられた区画層Bでは、図の下側(
図1(B)の左側)である片側の内装面材6と耐力要素5との間、および図の上側(
図1(B)の右側)であるもう片側の内装面材6と耐力要素5との間に、それぞれ空気層S1,S2が形成されている。パネルフレーム3は両側の内装面材6,6間のほぼ中央に位置し、このパネルフレーム3の片側の面に耐力要素5が設けられているため、片側の空気層S1よりももう片側の空気層S2の方が厚い。正確には、片側の空気層S1は、波型鋼板からなる耐力要素5の山部5aと内装面材6間の空気層厚さt1a、および谷部5bと内装面材6間の空気層厚さt1bを有し、もう片側の空気層S2は、波型鋼板からなる耐力要素5の山部5aと内装面材6間の空気層厚さt2a、および谷部5bと内装面材6間の空気層厚さt2bを有する。厚さの厚い順に、t2a>t2b>t1b>t1aとなっている。これら空気層厚さのうちの最小の空気層厚さt1aが、人間の聴覚感度が鈍くなる低周波数域で共鳴透過現象が起きる寸法であ
る。
【0025】
内装面材6としては、例えば石膏ボード6aが用いられる。図示の例では、石膏ボード6aを2枚重ねで使用している。両側の内装面材6は、縦方向の内装下地桟13に取り付けられる。内装下地桟13は、通常「スタッド」と呼ばれる。図示の例では、1つの耐力壁1につき、パネルフレーム3の両面にそれぞれ内装下地桟13が2本ずつ設けられている。両面の内装下地桟13の左右位置は同じである。
【0026】
内装下地桟13の設置方法について説明する。
図3は
図1(B)のIII部拡大図であり、パネルフレーム3に対する内装下地桟13の上端部の保持構造を示す。
図6はその斜視図である。以下の説明は、内装下地桟13の上端部の保持構造について行うが、下端部の保持構造も同じ構造である。
【0027】
内装下地桟13はリップ付き溝形鋼からなり、開口側を壁の内側に向けて配置される。内装下地桟13の上端部における両フランジ部13aの先端側部分が切り欠かれており、フランジ部13aに水平な段面14が形成されている。この内装下地桟13の上端部が、コ字形金物15およびスタッド保持金物16を介して、パネルフレーム3の横フレーム材8に保持される。
【0028】
コ字形金物15は、水平状の基部15aの両端から垂直に折曲げ部15bが延びる正面形状コ字形の金物であり、前記基部15aでビス17により横フレーム材8の底面に固定される。
【0029】
スタッド保持金物16は、
図7に示すように、ビス孔18を有する基板部16aと、この基板部16aの下端から水平方向に延びる上下位置決め板部16bと、基板部16aの両側部から上下位置決め板部16bと反対側へ延びる一対の側板部16cと、これら一対の側板部16cの上端からそれぞれ外側へ水平に屈曲してなる一対のスタッド受け部16dとからなる。
【0030】
図3および
図6に示すように、前記スタッド保持金物16は、上下位置決め板部16bをコ字形金物15の折曲げ部15bの下端面に当接させた状態で、ビス孔18に挿通したビス17によりコ字形金物15の折曲げ部15bに固定される。このように固定されたスタッド保持金物16の側板部16cを内装下地桟13の両フランジ部13aの間に挿入し、基板部16aをフランジ部13aの先端に当接させると共に、スタッド受け部16dを内装下地桟13の段面14に当接させることにより、内装下地桟13の上端部が保持される。スタッド保持金物16の側板部16cが両フランジ部13aの間に挿入されることで、内装下地材13のパネル厚さ方向の位置が決まる。スタッド保持金物16の基板部16aがフランジ部13aの先端に当接することで、内装下地桟13のパネル幅方向の位置が決まる。また、スタッド受け部16dが内装下地桟13の段面14に当接することで、スタッド13の上下方向の位置が決まる。このように、ビス止め等の作業が不要であるので、施工が容易である。
【0031】
この内装下地桟13の上下端部の保持構造は、ビス等を用いて内装下地桟13をパネルフレーム3に強固に固定するのではなく、スタッド保持金物16を用いて弱い力で柔軟に固定している。このような固定であると、固定部分の互いに対向する面同士が全面で接触するのではなく、一部だけが接触した状態となる。このため、内装下地桟13とスタッド保持金物16間で振動が伝達し難い。換言すると、内装下地桟13とパネルフレーム3間で振動の伝達が行われ難い構造である。
【0032】
上記例は、内装下地桟13の上端側では、コ字形金物15を横フレーム材8の底面に固定するが、
図8のように、横フレーム材8の上面に固定してもよい。スタッド保持金物16による内装下地桟13の保持構造は前記同様である。この場合、内装下地桟13の段面14が同内装下地桟13の末端近くとなるので、段面14を形成するための切欠きが小さくて済む。
【0033】
図4、
図5はそれぞれ
図1のIV部拡大図、V拡大図であり、パネルフレーム3に対する内装下地桟13の中間部の保持構造を示す。これらの保持構造には、断面L形の補助金具20と、
図9に示すスタッド挟み具21とが用いられる。スタッド挟み具21は、
図1における左側の内装下地桟13を保持する場合(
図4)と、右側の内装下地桟13を保持する場合(
図5)とで上下逆向き姿勢で使用されるが、ここでは
図4の姿勢であるときの状態を説明する。
【0034】
図9において、スタッド挟み具21は、水平状の基板部21aを有し、この基板部21aの一方向(
図9(D)の上下方向)の両端から一対の舌状部21bが下方に延びている。基板部21aにおける前記一方向と直交する方向(
図9(D)の左右方向)の一端からは、屈曲部21cが下方に屈曲して延びている。この屈曲部21cと基板部21aとの接続部の両端部分に切込み22が設けられており、この切込み22により基板部21aから分離された屈曲部21cの一部分がリップ挟み部21caとなっている。リップ挟み部21caは、前記舌状部21bから一定距離だけ離れている。また、リップ挟み部21caは、先端側へ行くに従い、舌状部21bから遠く離れるように反り返った形状とされている。
【0035】
基板部21aにおける前記直交する方向の他端からは、補助金具挟み部21dが下方に延びている。この補助金具挟み部21dは片持ち状となっていて、前記直交する方向の弾性を有する形状とされている。補助金具挟み部21dにおける舌状部21bに最も近い部分である曲がり部分21daと舌状部21bとの隙間は、通常では補助金具20の厚さよりも若干狭くなっているが、弾性を利用して補助金具20の厚さより広く押し広げることが可能である。
【0036】
図4は、スタッド挟み具21による左側の内装下地桟13の保持構造を示す。断面L形の補助金具20を、寸法が長い方の部分20aが上方に延びた姿勢となるように、寸法が短い方の部分20bの端面を中間横フレーム部材8の側面に溶接で固定する。そして、内装下地桟13の一対のリップ13bをそれぞれスタッド挟み具21の舌状部21bとリップ挟み部21caとで挟み込むと共に、補助金具20の上端をスタッド挟み具21の舌状部21bと補助金具挟み部21dとで挟み込むことで、内装下地桟13の中間部を保持する。このように、簡単な挟み込み作業を行うだけで、ビス止め等の作業が不要であるので、施工が容易である。
【0037】
図5は、スタッド挟み具21による右側の内装下地桟13の保持構造を示す。断面L形の補助金具20を、寸法が長い方の部分20aが下方に延びた姿勢となるように、寸法が短い方の部分21bを中間横フレーム部材8の底面に溶接で固定する。そして、内装下地桟13の一対のリップ13bをそれぞれスタッド挟み具21の舌状部21bとリップ挟み部21caとで挟み込むと共に、補助金具20の下端をスタッド挟み具21の舌状部21bと補助金具挟み部21dとで挟み込むことで、内装下地桟13の中間部を保持する。この場合も、前記同様に施工が容易である。
【0038】
図4および
図5のどちらの保持構造についても、ビス等を用いて内装下地桟13をパネルフレーム3に強固に固定するのではなく、スタッド挟み具21を用いて弱い力で柔軟に固定している。このような固定であると、内装下地桟13の上下端部の保持構造と同様に、固定部分の互いに対向する面同士が全面で接触するのではなく、一部だけが接触した状態となる。このため、内装下地桟13とスタッド挟み具21で振動が伝達し難い。換言すると、内装下地桟13とパネルフレーム3間で振動の伝達が行われ難い構造である。
【0039】
図1に示すように、左側の内装下地桟13はスタッド挟み具21により上から1段目と3段目の中間横フレーム材10に保持され、右側の内装下地桟13はスタッド挟み具21により上から2段目の中間横フレーム材10に保持されている。このように、パネル幅方向の互いに同じ位置にある両側の内装下地桟13を、互いに異なる高さ位置の中間横フレーム材10に保持させると、片側の内装下地桟13の保持箇所ともう片側の内装下地桟13の保持箇所とが互いに離れた状態となり、パネルフレーム3を介して片側の内装下地桟13からもう片側の内装下地桟13へ振動が伝達され難い。
【0040】
以上に説明したように、内装下地桟13は、上下端部および中間部の少ない保持箇所でパネルフレーム3に保持される。しかも、各保持箇所における内装下地桟13の保持構造は、内装下地桟13とパネルフレーム3間で振動の伝達が行われ難い構造である。また、片側の内装下地桟13の保持箇所ともう片側の内装下地桟13の保持箇所とが互いに離れていることによっても、振動が伝達され難くなっている。これらのことから、内装下地桟13およびパネルフレーム3を介して、片側の内装面材6からもう片側の内装面材6へ伝わる伝搬音を低減させることができ、遮音性能の向上が図れる。
【0041】
また、この耐力壁1は、面材型の耐力要素4の両側にある2つの空気層S1,S2の厚さt1a,t1b,t2a,t2bを互いに異ならせてある。その理由を説明する。
「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、両側の内装面材の間に一つの空気層が形成された二重壁構造では、主に低音域で共鳴透過現象が発生する。この現象は、
図10のグラフに示すように、一般に、面材間の空気層が厚くなるほど、共鳴透過を起こす周波数(丸で示す)が低音域へ移行する。
【0042】
対して、壁内部に面材型の耐力要素が設けられた三重壁構造の場合、面材型の耐力要素により壁の内部が2つの空気層に分断され、それぞれの空気層で共鳴透過現象が起きる。2つの空気層の厚さが同じであると、
図11のグラフにおいて実線で示すように、それぞれの空気層で同じ周波数の共鳴透過現象が生じるため、2つの空気層の共鳴透過現象が互いに影響し合って現象が増幅されることにより遮音性能を低下させる。2つの空気層の厚さが異なっていると、
図11のグラフにおいて点線で示すように、2つの空気層の共鳴透過現象が分散されるため、遮音性能の低下が緩和される。以上の理由から、2つの空気層S1,S2の厚さt1a,t1b,t2a,t2bを互いに異ならせてある。
【0043】
図12は、1/1オクターブバンド中心周波数と音響透過損失との関係を、面材型の耐力要素5が壁厚さ方向の中央に位置する耐力壁(
図13(A)参照)および同耐力要素5が片側に寄った位置にある耐力壁(
図13(B)参照)についてそれぞれ行った実験結果のグラフである。この実験結果から、いずれの1/1オクターブバンド中心周波数についても、耐力要素5を片寄せた耐力壁の方が耐力要素5を中央に位置させた耐力壁よりも遮音性能が優れていることが分かる。
【0044】
耐力要素が面材型の耐力要素5である区画層Bの各空気層S1,S2の厚さの適正値について検証した結果、次の結論を得た。話を簡単にするために面材型の耐力要素5が
図14に示すような平板であると仮定した場合、理想的には、片側の空気層S1の厚さは50mm、もう片側の空気層S2の厚さは200mmとするのが良い。その根拠を示す。
【0045】
人間の聴覚感度が鈍くなる低周波数域(例えば89Hz以下)で共鳴透過現象を発生させるためには、空気層の厚さが50mm以上必要とされている。そこで、厚さの薄い方の空気層S1の厚さを50mmとすることで、どちらの空気層S1,S2で発生する共鳴透過現象も前記低周波数域内に収めることができる。例えば、厚さ50mmの空気層S1の共鳴透過周波数は63Hzであり、厚さ200mmの空気層S2の共鳴透過周波数は31.5Hzである。また、両空気層S1,S2の厚さを上記程度に異ならせることにより、両空気層S1,S2で発生する共鳴透過現象を完全に分散させることができる。遮音性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0046】
また、この実施形態の耐力壁は、耐力要素が面材型の耐力要素5である区画層Bと、耐力要素が非面材型の耐力要素4である区画層Aとを有し、かつ面材型の耐力要素5を波型鋼板としたことにより、以下の作用が得られる。
すなわち、波型鋼板の山部5aおよび谷部5bの並び方向の位置によって、両側の空気層S1,S2を隔てる部分の壁厚さ方向の位置が異なるため、両側の各空気層S1,S2につき複数種の空気層厚さが存在する。
図13(B)のように波型鋼板が折板である場合は、空気層S1の厚さの数はt1a,t1bの2つであり、空気層S2の厚さの数はt2a,t2bの2つである。つまり、耐力要素が面材型の耐力要素5である区画層Bには、4つの空気層厚さが存在する。これら4つの空気層厚さに、耐力要素が非面材型の耐力要素4である区画層Aの1つの空気層厚さt3を加えると、1つの耐力壁に5つの空気層厚さが存在する。このように多くの空気層厚さが存在することで、共鳴透過現象がより一層分散され、遮音性能を向上させることができる。
【0047】
さらに、耐力要素が面材型の耐力要素5である区画層Bと、耐力要素が非面材型の耐力要素4である区画層Aとを組み合わせると、求めれられる耐力が容易に得られると共に、耐力要素が非面材型の耐力要素である区画層Aに開口部を設けることもできる。
【0048】
このように、この耐力壁1は、内装下地桟13およびパネルフレーム3を介して伝わる伝搬音を抑えることができると共に、壁内部の空気層S1,S2を伝わる伝搬音を抑えることができるので、高度の遮音性能が得られる。加えて、内装面材6として、それ自体が遮音性能に優れる石膏ボード6aが2枚重ねで使用されているため、耐力壁1の遮音性能がより一層向上する。
【0049】
図15は、パネルフレーム3に対する内装下地桟13の上端部の保持構造の異なる実施形態を示す。この保持構造では、内装下地桟13の上端部に切欠きを設けずに、そのままの状態で用いる。耐力壁1が設置される上側の横架材2に、断面形状溝形のランナー23を下向き開口姿勢でパネル幅方向に沿って設け、このランナー23内に内装下地桟13の上端部を挿入する。また、下側の横架材2にはランナー23を上向き開口姿勢で設け、このランナー23内に内装下地桟13の下端部を挿入する(図示せず)。これら上下のランナー23により、内装下地桟13の上下端部を定められた位置に保持する。ランナー23に内装下地桟13の上下端部を嵌め込むだけであるので、スタッド保持金物16を用いた保持構造よりも、施工がより一層容易である。
【0050】
この内装下地桟13の上下端部の保持構造は、ビス等を用いて内装下地桟13の強固に固定するのではなく、ランナー23により柔軟に保持するだけであるため、内装下地桟13とランナー23間で振動が伝達し難い。換言すると、片側の内装下地桟13から横架材2を経由してもう片側の内装下地桟13へ振動の伝達が行われ難い構造である。内装下地桟13の中間部は、前記実施形態と同様に、前記スタッド挟み具21によりパネルフレーム3の中間横フレーム材10に保持される。