【実施例1】
【0020】
図1において、本発明の水溶性切削・研削液生成用還元電位の発
生装置は、PWM(パルス幅制御)発振回路10と、波形整形回路11と、駆動回路12と、重畳直流電源13と、駆動直流電源14と、電流検出回路15と、増幅回路16と、切換え回路17と、還元槽18とからなる。
【0021】
前記PWM発振回路10は、
図2(a)に示すようなパルス(脈流)信号を発振し、発振周波数fは、5kHz〜30kHzの範囲で調整でき、かつ、オン、オフのデューティ比dは、0から100%の範囲で調整できるものとする。
前記波形整形回路11は、
図2(b)に示すように、前記PWM発振回路10のパルス信号を奇数番目のパルス信号b−1と偶数番目のパルス信号b−2に分離する。
前記重畳直流電源13は、パルス信号に重畳するための略フラットな直流電圧v1を出力する。
前記駆動直流電源14は、パルス信号のピーク電圧v1を制御する。
前記駆動回路12は、駆動直流電源14で設定したパルス電圧v1に重畳直流電源13で設定した略フラットな直流電圧v2を重畳して、
図2(c)のc−1とc−2に示すように、互いに180度の位相のずれた信号として出力する。
【0022】
前記還元槽18は、2個を1対とする還元電極19が互いに対峙して設けられ、これらの還元電極19の間にコモン電極20が設けられる。これらの還元電極19は、2個1対に限られず、多数個を対としたものであってもよい。
前記駆動回路12のコモン端子c−0と前記コモン電極20の間に抵抗などからなる電流検出回路15が挿入され、この電流検出回路15の両端に、増幅回路16が接続され、この増幅回路16の出力側には、切換え回路17を介して前記PWM発振回路10と、前記重畳直流電源13と、前記駆動直流電源14が選択的に接続され、この切換え回路17により、デューティ比dと、電圧値v2と、電圧値v1を選択的に切換える。
【0023】
次に本発明の作用を説明する。
還元槽18に水を入れて回路のスイッチを入れて電気分解を開始する。この水には、水道水、工業用水(地下水)若しくはこれらの水を市販の軟水化装置で軟水化したもののような薬品の混ぜ物を添加しない水が用いられる。
水 軟水
水量 160リットル
室温 24℃
PWM発振回路10は、例えば、10kHzで、デューティ比50%のパルス信号を出力するものとする。このパルス信号は、波形整形回路11にて奇数番目のパルス信号b−1と偶数番目のパルス信号b−2に分離され、駆動回路12に送られる。パルス電圧の印加は、水に浸透性と親和性を付加するためである。
前記重畳直流電源13では、10〜24Vの略フラットな直流電圧v2を設定し、駆動回路12へ送る。
前記駆動直流電源14は、前記パルス信号に直流電圧v2を重畳したときのピーク値v1が48Vとなるように設定して駆動回路12に送る。
この駆動回路12のパルス信号に略フラットな直流電圧10〜24Vを重畳した
図2(c)c−1とc−2に示す電圧が2つの還元電極19間に印加される。
【0024】
還元槽18内の水溶性切削・研削液に、パルス電圧に略フラットな直流電圧10〜24Vを重畳した電圧が印加されたときの酸化還元電位の経時的変化を測定すると、
図5の特性曲線Pが得られた。この特性曲線Pによれば、60分で目的の−250mVが得られた。また、60分を過ぎても少しずつ還元電位が降下する。
【0025】
水溶性切削・研削液は、切削・研削液として使用をすることにより、還元電極19の腐食や汚れが発生し、還元電極19に流れる電流が減少し、
図5の点線曲線Qのように還元電位が+の方向に移行してくる。この還元電極19に流れる電流の減少は、電流検出回路15にて検出され、増幅回路16を介して切換え回路17に信号を送る。この切換え回路17にてPWM発振回路10を選択したものとすると、PWM発振回路10でパルス幅を広くするようにデューティ比を大きくして電流を増やすように制御して
図5の曲線Pに近づける。電流は、上げ過ぎると危険を伴うので、5Aを上限とする。
逆に何らかの原因で駆動回路12の駆動電流が増加した場合には、電流検出回路15で検出し,増幅回路16,切換え回路17を介してPWM発振回路10でパルス幅を狭くして電流を減らす。このようにして駆動電流を一定値に保つ。
【0026】
図2は、電流の変化をパルス信号のデューティ比(パルス幅)で制御するようにしたが、
図3の例では、重畳電圧v2で制御する例を示している。すなわち、還元電極19の腐食や汚れが発生し、還元電極19に流れる電流が減少し、
図5の点線曲線Qのように還元電位が+の方向に移行してくる。この還元電極19に流れる電流の減少は、電流検出回路15にて検出され、増幅回路16を介して切換え回路17に信号を送る。この切換え回路17にて重畳直流電源13を選択したものとすると、ピーク電圧v1はそのままで、重畳直流電源13で重畳電圧v2を上げて電流を増やすように制御して
図5の曲線Pに近づける。電流は、上げ過ぎると危険を伴うので、5Aを上限とすることは、前記同様である。
逆に何らかの原因で駆動回路12の駆動電流が増加した場合には、電流検出回路15で検出し,増幅回路16,切換え回路17を介して重畳直流電源13で重畳電圧v2を下げて電流を減らす。このようにして駆動電流を一定値に保つ。
【0027】
図4は、駆動電圧v1で制御するさらに他の例を示している。すなわち、還元電極19の腐食や汚れが発生し、還元電極19に流れる電流が減少し、
図5の点線曲線Qのように還元電位が+の方向に移行してくる。この還元電極19に流れる電流の減少は、電流検出回路15にて検出され、増幅回路16を介して切換え回路17に信号を送る。この切換え回路17にて駆動直流電源14を選択したものとすると、重畳直流電源13の重畳電圧v2はそのままで、ピーク電圧v1を上げて電流を増やすように制御して
図5の曲線Pに近づける。電流は、上げ過ぎると危険を伴うので、5Aを上限とすることは、前記同様である。
逆に何らかの原因で駆動回路12の駆動電流が増加した場合には、電流検出回路15で検出し,増幅回路16,切換え回路17を介して駆動直流電源14で駆動電圧v1を下げて電流を減らす。このようにして駆動電流を一定値に保つ。
【0028】
前記実施例では、駆動電流を一定に保つために、パルス信号のデューティ比(パルス幅)で制御する方法、重畳電圧v2で制御する方法、ピーク電圧v1で制御する方法のいずれか単独の方法としたが、いずれか2以上の組み合わせ、すなわち、(1)パルス信号のデューティ比(パルス幅)で制御する方法と、重畳電圧v2で制御する方法の組み合わせの方法、(2)パルス信号のデューティ比(パルス幅)で制御する方法と、ピーク電圧v1で制御する方法の組み合わせの方法、(3)重畳電圧v2で制御する方法と、ピーク電圧v1で制御する方法の組み合わせの方法、(4)パルス信号のデューティ比(パルス幅)で制御する方法と、重畳電圧v2で制御する方法と、ピーク電圧v1で制御する方法のすべての組み合わせの方法とすることもできる。
【0029】
前記実施例では、水は、水道水、工業用水(地下水)若しくはこれらの軟水化したものを用いたが、ストレートな水に限られず、また、現在切削・研削に使用されているクーラント液であってもよい。また、現に使用されている水溶性切削・研削液(水に、エマルジョン、ソリュブル、ソリューション、シンセティックなどを混合希釈したもの)の性能回復としても用いることもできる。更に、防錆目的で低級な環境規制に抵触しないアミンを添加したものであってもよい。