(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記振動加圧装置が、前記コンクリート表面に沿って転動可能なローラと、前記ローラに振動を与える発振手段と、を有するローラ式振動加圧装置である請求項1記載の床面施工法。
前記振動加圧装置が、前記コンクリート表面に沿って滑動可能な加圧板と、前記加圧板に振動を与える発振手段と、を有するボード式振動加圧装置である請求項1記載の床面施工法。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート建設物や各種コンクリート構造物などを構築する分野においては、強度が高く、耐久性に優れたコンクリート床面を形成することは極めて重要な課題の一つである。一般に、コンクリートは、内部に含まれる砕石(骨材)が多いほど、強度が高くなることが知られているので、コンクリート床面の施工に使用されるコンクリートも砕石を多く含むものであることが望ましい。
【0003】
しかしながら、床面施工の際のコンクリート打設工事は、その殆どが、施工現場に到着した生コンクリートを、圧送車(コンクリートポンプ車)により、ホースを経由して打設場所まで送給するという方法が採られている関係上、砕石を多く含む生コンクリートはホースに詰まり易く、打設場所まで送給することができないのが実状である。
【0004】
一方、施工後のコンクリート床面が劣化する原因として代表的なものは、コンクリート床面の表層部(コンクリート表面から深さ5cm程度までの領域)の劣化である。例えば、コンクリート表面の摩耗による劣化、あるいは、ひび割れなどからの水分や不純物の浸透による劣化などが代表的なものである。
【0005】
そこで、施工後のコンクリート表層を強化する工法として、打ち込み完了後、未硬化時のコンクリート表面層に、耐摩耗性骨材、吸湿性骨材及びポルトランドセメントからなる強化用粉末を散布して、コンクリート表面層上に当該表面層と一体化した新たな強化コンクリート表面層を形成する工法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0006】
また、コンクリート床面の強度や耐摩耗性を向上させる工法として、生乾き状態のコンクリート表面に、粉砕した硬質骨材(粒径1.5mm〜10mmの砕石粒)を散布し、表面を擦って、硬質骨材を表層部に埋没させて固化し、硬質骨材入り表層を形成する工法(例えば、特許文献2参照。)、あるいは、硬化する前のコンクリート表面に、粒径3mm〜5mmの人造石や天然石を散布し、コンクリートが硬化した後に、コンクリート表面上の人造石や天然石を研磨して仕上げる方法(例えば、特許文献3参照。)なども提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、強度が高く、耐久性に優れたコンクリート床面を形成することは極めて重要な課題の一つであるが、特許文献1記載の「コンクリート表層強化方法」によって強化されるのは、コンクリート表面を含む比較的薄い部分(表面層)に限られるので、強度及び耐久性は十分ではない。
【0009】
また、特許文献2記載の「コンクリート床表面形成工法」は、コンクリート表面に散布された硬質骨材(砕石粒)をコンクリート表層部に埋没させるのに手間を要するだけでなく、コテあるいは機械コテを用いて擦ることによって埋没可能な硬質骨材は、粒径が1.5mm〜10mmの程度の細粒骨材に限られるので、強度が高く、耐久性に優れた床面を形成するのが困難である。
【0010】
さらに、特許文献3記載の「床表面仕上げ方法」によって形成される床表面は、コンクリート硬化前に散布された粒径3mm〜10mmの人造石や天然石が露出した状態となるので、凹凸のない平滑な床面を形成することが要請される施工現場には採用することができない。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、施工が容易であり、施工後のコンクリート表面の脆化、剥離及びクラックが発生し難く、極めて強度が高く、耐久性にも優れた、平滑なコンクリート床面を形成することができる床面施工技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の床面施工法は、施工場所に打設され
不陸のない平面状態に整えられたコンクリートが固化する前に前記コンクリート表面に骨材を散布する工程と、前記コンクリートが固化する前
の半乾き状態にあるときに振動加圧装置を用いて前記骨材に振動及び圧力を与えながら前記コンクリート表面下に前記骨材を埋没させる工程と、を備え
、前記骨材が粒径10mm〜70mmの粗骨材を含むものであることを特徴とする。
【0013】
このような構成とすれば、固化後のコンクリート床面には、その表面から深さ50mm程度までの部分に、骨材が石垣状に散在する硬質の表層部が形成されるので、施工後のコンクリート表面の脆化、剥離及びクラックが発生し難く、極めて強度が高く、耐久性にも優れた、平滑なコンクリート床面を形成することができる。なお、前記骨材は、天然石や砕石などの硬質骨材が好適である。
【0014】
また、固化前のコンクリート表面に骨材を散布し、振動加圧装置を用いて骨材に振動及び圧力を与えてコンクリート表面下に埋没させるだけで、平滑なコンクリート床面を形成することができるので、施工も容易である。さらに、振動加圧装置を用いて骨材をコンクリート表面下に埋没させる工程を備えたことにより、粒径が比較的大きな骨材を埋没させることも可能であるため、強度の高いコンクリート床面を形成する上で有効である。
【0015】
ここで、前記骨材は粒径10mm〜70mmの粗骨材であることが望ましい。
【0016】
また、前記骨材が、前記粗骨材に加えて、前記粗骨材より粒径の小さい細骨材を使用することもできる。
【0017】
一方、前記振動加圧装置は、前記コンクリート表面に沿って転動可能なローラと、前記ローラに振動を与える発振手段と、を有するローラ式振動加圧装置を使用することができる。
【0018】
また、前記振動加圧装置は、前記コンクリート表面に沿って滑動可能な加圧板と、前記加圧板に振動を与える発振手段と、を有するボード式振動加圧装置を使用することもできる。
【0019】
次に、本発明の床面構造は、施工場所に打設され
不陸のない平面状態に整えられた固化前のコンクリート表面に散布された
粒径10mm〜70mmの粗骨材を含む骨材に
振動加圧装置を用いて振動及び圧力を与えて固化前の
半乾き状態にある前記コンクリート表面下に前記骨材を埋没させることにより、前記コンクリート固化後のコンクリート床面下に前記骨材が散在する強化層を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、施工が容易であり、施工後のコンクリート表面の脆化、剥離及びクラックが発生し難く、極めて強度が高く、耐久性にも優れた、平滑なコンクリート床面を形成可能な床面施工技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。初めに、
図1,
図2に基づいて、本発明の実施形態である床面施工法において使用するローラ式振動加圧装置10及びボード式振動加圧装置30について説明する。
【0023】
図1に示すように、ローラ式振動加圧装置10は、3本の加圧ローラ11,12,13と、保持部材14と、平板状の振動部材15と、発振手段16と、平板状の仕上げ鏝17と、ブラシ18と、操作ハンドル19と、を備えている。3本の加圧ローラ11,12,13は、それぞれの軸心11c,12c,13c同士が同一の仮想平面上で互いに平行をなすように配置されている。3本の加圧ローラ11,12,13の両端部は保持部材14によってそれぞれ回転自在に保持されている。
【0024】
3本の加圧ローラ11,12,13に振動を伝えるため保持部材14に平板状の振動部材15が連設され、振動部材15に、その固有振動を与えるため、振動部材15上に発振手段16が付設されている。仕上げ鏝17は、加圧ローラ11,12,13が転動通過した後の床面に摺動しながら接触可能である。ブラシ18は、加圧ローラ11,12,13が転動通過する前の床面に摺動しながら接触可能である。操作ハンドル19は、振動部材15の上面に取り付けられている。
【0025】
操作ハンドル19は、作業者が手で把持する水平部19hと、水平部19hの左右から振動部材15に向かって延設された連結部19aと、連結部19a同士を繋ぐ水平補強部19bと、で形成され、振動部材15の上面に制振材31を介して取り付けられたL字状の連結部材29に対し、連結部19aの前端部が着脱可能に取り付けられている。なお、ローラ式振動加圧装置10において、仕上げ鏝17が取り付けられている方向を前方(または正面)といい、ブラシ18が取り付けられている方向を後方(または背面)といい、操作ハンドル19の後方に、振動部材15に向かった姿勢で起立した作業者を基準に上下及び左右を表示する。
【0026】
加圧ローラ11,12,13は外周面が滑らかな硬質金属で形成された同じサイズの円筒状部材であり、いずれも直径Dが120mm、長さLが1250mmである。加圧ローラ11,12,13の配置間隔Sは175mmである。ローラ式振動加圧装置10全体の重量は約100kgであり、加圧対象である床面に対する加圧ローラ11,12,13の接地圧力を算出すると、加圧ローラ11,12,13の軸心11c,12c,13c方向の長さ1cm当たり約0.27kgとなる。なお、ローラ式振動加圧装置10に関する前記数値は、一例であって、これらに限定するものではない。
【0027】
加圧ローラ11,12,13は、それぞれの左右両端に突設された支軸(図示せず)及び軸受け11a,12a,13aを介して、保持部材14を構成する左右一対の側面部材14sにそれぞれ回転自在に取り付けられている。保持部材14は、前述した左右一対の側面部材14sと、側面部材14aの前端部同士を連接する正面部材14fと、で形成された平面視略コ字状の部材である。左右の側面部材14sは加圧ローラ11,12,13の軸心11c,12c,13cと直角に立体交差する方向に配置され、正面部材14fは軸心11c,12c,13cと平行をなすように配置されている。正面部材14f及び側面部材14sはいずれも断面L字状のアングル材で形成されている。そして、側面部材14sの後端部同士を連結する状態で長尺のブラシ18が着脱可能に取り付けられている。
【0028】
発振手段16は、原動機16eと、振動発生機16bと、原動機16eの回転力を振動発生機16bに伝えるベルト16vと、を備えている。振動発生機16bに内蔵されている偏心回転体(図示せず)が原動機16eの駆動によって回転することにより振動が発生する。原動機16eの出力回転数を増減するためのスロットルレバー16tが操作ハンドル19に取り付けられ、このスロットルレバー16tを操作することによって振動発生機16bの振動出力を調節することができる。振動部材15は、前後方向(加圧ローラ11,12,13の転動方向)の断面が略コ字状をした厚さ2〜5mm程度の金属板で形成され、発振手段16が発生する振動によって当該振動部材15が共振しやすい材質、形状を具備している。
【0029】
保持部材14の正面材14fの前方に、複数の蝶番20介して、断面L字状の補強部材21が正面材14fと平行に取り付けられ、この補強部材21に沿って仕上げ鏝17が着脱可能に取り付けられている。仕上げ鏝17は補強部材21とともに蝶番20を中心に上下に回動自在であり、保持部材14の正面材14fと補強部材21とが逆V字状のリンク機構23によって連接されている。リンク機構23に先端部が係止された操作ワイヤ25の基端部が、操作ハンドル19に設けられた操作桿24に係止されている。
【0030】
操作桿24をシリンダ24sに沿って前後移動させると、操作ワイヤ25が引っ張られたり、緩められたりし、これによって仕上げ鏝17が蝶番20を中心に上下回動する。本実施形態では、
図1に示すように、操作桿24がシリンダ24sの前方に位置するとき仕上げ鏝17が床面に接触可能に下降した状態にあり、操作桿24をシリンダ24sに沿って後方に引っ張った後、右側方に倒して操作桿24の基端部をシリンダ24sの湾状部24bに嵌入させると、後述する
図4に示すように、仕上げ鏝17は床面から離れるまで上昇した状態でロックされる。
【0031】
補強部材21の左右に立設された一対の支柱26にはフランジ状のストッパ27及び緩衝材28が設けられ、緩衝材28の上面側に重錘22が着脱可能に取り付けられている。これらの重錘22は、仕上げ鏝17を床面に向かって押圧するためのものであり、重錘22の種類や個数を変更することにより、床面に対する仕上げ鏝17の押圧力を調節することができる。仕上げ鏝17は弾性変形可能な金属板で形成されているため、仕上げ鏝17は重錘22の重さに応じて床面を弾性的に押圧することができる。
【0032】
次に、
図2に示すように、ボード式振動加圧装置30は、平面視形状が矩形状の金属製の加圧板32と、振動発生機33と、コ字形状の操作ハンドル35と、を備えている。加圧板32は硬化前のコンクリート表面上を滑動可能であり、この加圧板32に振動を与えて共振させるため、加圧板32の長辺方向のLの中央部に振動発生機33が搭載されている。振動発生機33を挟んで加圧板32の長辺方向Lの対称位置に複数の係止部34が設けられ、コ字状の操作ハンドル35が、これらの係止部34を介して、加圧板32に着脱可能に取り付けられている。
【0033】
加圧板32は四隅部分を滑らかな曲線状に丸めた矩形であり、その長辺方向Lの長さL2は約2000mm、短辺方向Sの長さS2は約200mm、厚さT2は約50mmであり、ボード式加圧装置30の総重量は約30kgである。ボード式加圧装置30をコンクリート表面上に載置したとき、加圧板32の底面32bがコンクリート表面に与える荷重(単位荷重)は約75kg/m
2程度であるが、加圧板32のサイズや単位荷重は前述のものに限定しない。
【0034】
振動発生機33は、加圧板32に、その固有振動数を与えて共振させるためカバー38a内に配置された偏心回転体(図示せず)と、加圧板32上の前記偏心回転体から離れた位置に取り付けられた原動機38と、原動機38の回転軸に固定されたプーリと、偏心回転体の支軸に固定されたプーリと、の間に掛け渡されたVベルトと、で構成されている。原動機38はガソリンエンジンであり、その回転軸は、加圧板32の長辺方向Lと平行をなすように配置されている。カバー38a内に配置された偏心回転体は、円柱部材の一部を削除した形状であり、支軸を介して加圧板32に回転自在に軸支されている。
【0035】
振動発生機33は、加圧板32上面の長辺方向Lの中央部に配置された固定板39を介して加圧板32に固定され、固定板39の前後部分は断面L字状の振動伝達部材40a,40bを介して加圧板32の前後の長辺部分に固定されている。振動発生機33全体も、ボルト・ナット(図示せず)を用いて固定板39上面に固定されている。固定板39および振動伝達部材40a,40bはいずれも剛性の高い金属材料で形成されている。
【0036】
操作ハンドル35と係止部34との境界付近には、加圧板32の振動が操作ハンドル35の把持部35aに伝わるのを防止するための制振部35bが設けられ、一方の傾斜部35cには、原動機38の回転数を変化させるためのスロットルレバー42が配置されている。また、加圧板32の振動が操作ハンドル35に伝わるのを防止するため、加圧板32の表面と係止部34との間にも制振部材34bが配置されている。
【0037】
次に、
図3〜
図5に基づいて、本発明の実施形態である床面施工法について説明する。本実施形態の床面施工法は、
図3(a)に示すように、施工場所に打設されたコンクリートCが固化する前にコンクリート表面Fに祖骨材51を散布する工程と、
図3(b)に示すように、ローラ式振動加圧装置10(
図1参照)を用いて粗骨材51に振動及び圧力を与えながらコンクリート表面F下に粗骨材51を埋没させる工程と、
図3(c)に示すように、コンクリート表面Fを平滑に仕上げる工程と、を備えている。
【0038】
図3(a)に示すように、施工場所に打設されたコンクリートCは不陸のない平面状態に整えられているが、必要に応じて、粗骨材51を散布する前に、ブラシ掛けを行ってコンクリート表面Fのレイタンスを除去したり、熊手状の粗化器具(図示せず)でコンクリート表面Fを引っ掻いて複数の溝を形成したりしてもよい。
【0039】
前述したように、打設後、固化する前のコンクリート表面Fに粗骨材51を散布すると、
図3(a)に示すように、粗骨材51は、その最下部がコンクリート表面Fに接地した状態若しくは僅かに沈んだ状態となってコンクリート表面F上に散在する。
【0040】
粗骨材51は、粒径10mm〜70mmの砕石を使用しているが、これに限定しないので、粒径を変えたり、外周面が滑らかな天然石材を使用したりすることもできる。粗骨材51の散布量(単位面積当たりの散布量)も限定しないので、施工条件に応じて、増減させることができるが、コンクリート表面Fに散布された粗骨材51が、互いに接触せず、万遍なく散在する程度の散布量が望ましい。なお、粗骨材51は、前述した砕石や天然石のほか、既設のコンクリート構造物を破砕して得られるコンクリート破砕物、各種セラミックスなどの無機材料、金属材などを使用することもできる。
【0041】
粗骨材51の散布が完了したら、
図4に示すように、コンクリートCが固化する前に、
図1に示すローラ式振動加圧装置10を、粗骨材51が散在するコンクリート表面F上に運び込み、発振手段16を始動させ、スロットルレバー16tを調節して、振動部材15にその固有振動を与えると、振動部材15に共振が生じ、激しく振動するとともに、この振動が保持部材14左右の側面材14sから軸受け11a,12a,13a及び支軸(図示せず)を介して加圧ローラ11,12,13に伝えられる。
【0042】
これにより、各加圧ローラ11,12,13も激しく振動する状態となるが、ローラ式振動加圧装置10はコンクリート表面Fに沈下することなく保持されるので、作業者が操作ハンドル19に矢線R方向の引っ張り力を加えれば、加圧ローラ11,12,13の回転方向(加圧ローラ11,12,13の軸心11c,12c,13cと直交する方向)に移動する。なお、スロットルレバー16tを操作して原動機16eの回転数を増減させると、振動部材15が激しく振動する状態(スロットルレバー16tの適正セット位置)が見つかるので、振動部材15を固有振動状態に設定する操作は容易である。
【0043】
このように、振動部材15が固有振動状態にあるローラ式振動加圧装置10に作業者が水平方向(矢線R方向)の力を加え、加圧ローラ11,12,13が回転する方向にローラ式振動加圧装置10全体を移動させれば、
図4に示すように、コンクリート表面F及び粗骨材51の上を順番に転動通過していく複数の加圧ローラ11,12,13の激しい振動加圧作用により、粗骨材51は半乾き状態のコンクリート表面Fの下方へ沈下、埋没していく。
【0044】
この場合、
図3(b)に示すように、加圧ローラ11,12,13の外周面は、粗骨材51の最上部に点接触若しくは線接触に近い状態で接触しながら振動加圧作用を及ぼすので、粗骨材51は速やかにコンクリート表面Fの下方へ沈下、埋没していく。また、粗骨材51を埋没させる過程においては、加圧ローラ11,12,13の振動加圧作用により、自らも振動しながら沈下していく粗骨材51が、コンクリート表面F付近に存在するコンクリートC中の骨材50に接触して振動加圧作用を及ぼし沈下させていくので、コンクリート表面Fの直下部分には粗骨材51と骨材51とが互いに密集した領域が形成されていく。
【0045】
さらに、ローラ式振動加圧装置10を使用して粗骨材51を沈下、埋没させていく過程においては、加圧ローラ11,12,13の振動加圧作用により振動しながら沈下していく粗骨材51が骨材50を介してコンクリートC全体に振動を与えるので、コンクリートC中に含まれる空気が上昇し、コンクリート表面Fに気泡化して出現した後、破裂して放散するという効果も生じる。また、粗骨材51が骨材50を介してコンクリートC全体に振動を与えることにより、半乾きのコンクリートCが強く締め固められるため、コンクリートCが固化した後の強度が高まり、クラック発生も防止することができる。
【0046】
ローラ式振動加圧装置10による粗骨材51の埋没作業が完了後、
図3(c)に示すように、コンクリート表面Fを平滑に仕上げ、コンクリートCが固化すると、本発明の実施形態である床面構造100が完成する。
【0047】
図3(c)に示すように、完成した床面構造100には、コンクリート表面Fから深さ50mm程度までの部分に、骨材50及び粗骨材51が石垣状に散在する硬質の表層部101が形成されるので、施工後のコンクリート表面Fの脆化、剥離及びクラックが発生し難く、極めて強度が高く、耐久性にも優れた、平滑なコンクリート床面を形成することができる。
【0048】
また、固化前のコンクリート表面Fに粗骨材51を散布し、ローラ式振動加圧装置10を用いて粗骨材51に振動及び圧力を与えてコンクリート表面F下に埋没させるだけで、平滑なコンクリート床面を形成することができるので、施工も容易である。さらに、ローラ式振動加圧装置10を用いて粗骨材51をコンクリート表面F下に埋没させる工程を備えたことにより、打設前の生コンクリート中に予め混在させておくことができない、比較的粒径の大きな粗骨材を埋没させることも可能となるため、強度の高いコンクリート床面を形成する上で有効である。
【0049】
次に、
図5に基づいて、ボード式振動加圧装置30を使用した粗骨材51の埋没作業について説明する。本実施形態の床面施工法において、粗骨材51をコンクリート表面Fの下方へ埋没させる作業は、
図1に示すローラ式振動加圧装置10だけでなく、
図2に示すボード式振動加圧装置30を使用して実施することもできる。
【0050】
図5に示すように、半乾き状態で粗骨材51が散布された後のコンクリート表面Fにボード式振動加圧装置30を載置し、原動機38を始動させ、作業者Wは操作ハンドル35の後方に立って加圧板32に対向する姿勢をとる。そして、スロットルレバー42を操作して原動機38の回転数を徐々に上げていき、振動発生機33の振動によって加圧板2が適切な振動状態(共振状態)となるようにセットする。この場合、スロットルレバー42を操作して原動機38の回転数を徐々に上げていくと加圧板32が激しく振動するポイント(共振点)があるので、作業者Wは比較的容易に共振状態にセットすることができる。
【0051】
加圧板32が共振状態にセットされたら、操作ハンドル35の把持部35aを両手で握り、そのまま矢印R方向に後退すると、加圧板32がコンクリート表面F及び粗骨材51上を滑動しながら、ボード式振動加圧装置30全体が矢印R方向に後退する。このとき、
図1に示すローラ式振動加圧装置10の場合と同様、加圧板32は、振動伝達部材40bを含む後方部分が、振動伝達部材40aを含む前方部分より少し浮き上がった傾斜姿勢を保ちながら、矢印R方向に後退する。
【0052】
図5に示すように、振動発生機33により振動状態(共振状態)に保たれた加圧板32の底面32bをコンクリート表面Fに接触させ、加圧板32に向かって構えた作業者Wが操作ハンドル35を両手で持って、そのまま矢印R方向に後退すれば、加圧板32の共振振動によりコンクリート表面F上の粗骨材51が叩打され、振動加圧作用が与えられるので、粗骨材51は速やかにコンクリート表面Fの下方へ沈下、埋没していく。
【0053】
このように、ボード式振動加圧装置30を使用すれば、コンクリート表面F上の粗骨材51を加圧板32自体の大きな振動で叩打しながら埋没させることができるため、
図3(c)に示すような、床面構造100を速やかに形成することができる。また、コンクリート表面F及び粗骨材51に加圧板32で振動を与えることにより、コンクリート表面Fが再度、転圧されるため、コンクリート表面Fの強度も高まる。
【0054】
特に、加圧板32でコンクリート表面F及び粗骨材51に強い振動を与えることにより、粗骨材51が埋没するだけでなく、骨材50なども沈下するとともに、セメント成分がコンクリート表面Fに浮いてくるため、表面強度の向上に有効である。
【0055】
本実施形態においては、ボード式振動加圧装置30の加圧板32がコンクリート表面Fに与える荷重を約75kg/m
2程度に設定しているため、半乾き状態にあるコンクリート表面F上の粗骨材51に対して強力な振動加圧作用を与え、速やかに沈下、埋没させることができる。
【0056】
なお、本実施形態の床面施工法においては、コンクリート床面Fに粗骨材51を散布した後、
図1に示すローラ式振動加圧装置10及び
図2に示すボード式振動加圧装置30を、この順番若しくは逆の順番で使用して粗骨材51の埋没作業を行うことができるが、これに限定しないので、ローラ式振動加圧装置10若しくはボード式振動加圧装置30の一方のみを使用して粗骨材の埋没作業を行うこともできる。
【0057】
次に、
図6に基づいて本発明のその他の実施形態である床面施工法について説明する。なお、
図6に示す床面施工法において、
図3に示す床面施工法と共通する部分については
図3中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0058】
本実施形態の床面施工法は、
図6(a)に示すように、施工場所に打設されたコンクリートCが固化する前にコンクリート表面Fに祖骨材51及び細骨材52を散布する工程と、
図6(b)に示すように、ローラ式振動加圧装置10(
図1参照)を用いて粗骨材51及び細骨材52に振動及び圧力を与えながらコンクリート表面F下に粗骨材51及び細骨材52を埋没させる工程と、
図6(c)に示すように、コンクリート表面Fを平滑に仕上げる工程と、を備えている。
【0059】
粗骨材51は粒径10mm〜70mmの砕石であり、細骨材52の粒径は、粗骨材51の粒径より小さく、コンクリートC中に含まれる骨材50の粒径より大である。粗骨材51及び細骨材52の埋没作業が、
図1に示すローラ式振動加圧装置10を使用しているが、ローラ式振動加圧装置10に代えて、若しくは、ローラ式振動加圧装置10と前後してボード式振動加圧装置30を使用することもできる。粗骨材51は、前述した砕石のほか、天然石、既設のコンクリート構造物を破砕して得られるコンクリート破砕物、各種セラミックスなどの無機材料、金属材などを使用することもできる。
【0060】
本実施形態の床面施工法により、
図6(c)に示すように、コンクリート表面Fから深さ50mm程度までの部分に、骨材50、粗骨材51及び細骨材52が石垣状に散在する硬質の表層部201を備えた床面構造200が形成されるので、施工後のコンクリート表面Fの脆化、剥離及びクラックが発生し難く、極めて強度が高く、耐久性にも優れた、平滑なコンクリート床面を得ることができる。
【0061】
図1〜
図6に基づいて説明した床面施工法によって構築された床面構造100,200は下記のような特徴を備えている。
【0062】
(1)コンクリート表面F下に、骨材50、粗骨材51などの硬質骨材が石垣状に散在する厚さ50mm程度の極めて硬い表層部101,201が形成されるので、コンクリートの劣化を表層部101,201でくい止めることができる。
【0063】
(2)固化する前の半乾き状態のコンクリート表面Fに散布した粗骨材51などをローラ式振動加圧装置若しくはボード式振動加圧装置30の少なくとも一方を使用して転圧、沈下させることにより、優れた転圧効果が得られるので、表層部101,201だけでなくコンクリートC全体が締固められた状態となり、コンクリート床面全体が密度の高い品質となる。
【0064】
(3)コンクリート表面Fの下部にクラックが発生することがあっても、石垣状の表層部101,201がクラックの進行を阻止するので、コンクリート床面のひび割れを防止することができる。
【0065】
(4)生乾き状態にあるコンクリート表面Fに存在するレイタンスなどの脆弱層は、粗骨材51などに振動及び圧力を与えて埋没させる工程において、分断、沈下されるので、レイタンスなどに起因する弊害をなくすことができる。
【0066】
(5)完成後のコンクリート床面に加わる外的圧力は、表層部101,201中に存在する石垣状の骨材(骨材50及び粗骨材51など)によって支えられるので、地盤沈下などが生じることがあっても、ひび割れが生じ難い。
【0067】
(6)コンクリート表面Fの直下部分に石垣状の骨材(骨材50、粗骨材51など)が存在するので、完成した後のコンクリート床面は耐摩耗性も優れている。
【0068】
なお、本実施形態の床面施工法により形成した後、固化前のコンクリート表面に、既存の表面強化剤、表面改質剤、合金骨材あるいは無機質系床仕上げ材などを散布して仕上げる工法を付加することもできる。
【0069】
なお、
図1〜
図6に基づいて説明した実施形態は本発明を例示するものであり、本発明の床面施工法及び床面構造は前述した実施形態に限定されない。