特許第6239504号(P6239504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239504
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】セルロースエステル系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/10 20060101AFI20171120BHJP
   C08K 5/134 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 5/523 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 5/526 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 5/527 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08L1/10
   C08K5/134
   C08K5/523
   C08K5/526
   C08K5/527
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-522509(P2014-522509)
(86)(22)【出願日】2013年6月5日
(86)【国際出願番号】JP2013065629
(87)【国際公開番号】WO2014002720
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2015年12月9日
【審判番号】不服2016-16612(P2016-16612/J1)
【審判請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-145192(P2012-145192)
(32)【優先日】2012年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】綾部 敬士
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 優希
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼口 哲哉
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 小野寺 務
【審判官】 橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−169592(JP,A)
【文献】 特開2008−202009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00- 1/32
C08K 5/00- 5/59
C08J 5/00- 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるリン酸エステルを1〜50質量部含有し、
さらに、ポリテトラフルオロエチレンを、前記セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部含有することを特徴とするセルロースエステル系樹脂組成物。
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
【請求項2】
さらに、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物、下記一般式(3)で表されるトリアリールホスファイト化合物及び下記一般式(4)で表されるジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物からなる群から選ばれる1種以上を、前記セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、それぞれ0.01〜10質量部含有することを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
(式(2)中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、mは1〜4の整数を表し、Aは1〜4価のアルコールからm個の水酸基を除いた残基を表す。)
(式(3)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
(式(4)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項3】
さらに、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物、および、下記一般式(3)で表されるトリアリールホスファイト化合物を、前記セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、それぞれ0.01〜10質量部含有することを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
(式(2)中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、mは1〜4の整数を表し、Aは1〜4価のアルコールからm個の水酸基を除いた残基を表す。)
(式(3)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項4】
さらに、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物、および、下記一般式(4)で表されるジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物を、前記セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、それぞれ0.01〜10質量部含有することを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
(式(2)中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、mは1〜4の整数を表し、Aは1〜4価のアルコールからm個の水酸基を除いた残基を表す。)
(式(4)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記セルロースエステル系樹脂が、炭素数2〜6のカルボン酸のセルロースエステルであることを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
【請求項6】
前記セルロースエステル系樹脂が、セルロースアセテートであることを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(I)で表されるリン酸エステルを、前記セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、5〜40質量部含有することを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
【請求項8】
前記一般式(I)で表されるリン酸エステルを、前記セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、10〜35質量部含有することを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル系樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1または2記載のセルロースエステル系樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステル系樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、プリンタ、コピー機等の電気電子機器、テレビや冷蔵庫等の家電製品、容器やパッケージ等の包装材、壁材や床材等の建築資材、自動車内外装材などを構成する材料として、ポリエステルやポリアミド、ポリカーボネートなどの合成樹脂が使用されている。これら合成樹脂は成形性、生産性、機械的特性に優れるものの、石油を原料として製造されているため、自然界に廃棄した場合、難分解性のため、土壌等の環境への負荷が大きく、焼却処理した場合は、二酸化炭素の発生により地球温暖化防止の観点から問題があった。
【0003】
一方、植物由来の樹脂は、生分解性に優れ土壌環境に与える負荷が小さい。さらに元々、植物が大気中の二酸化炭素と水とを原料として光合成反応によって生成したものであるため、たとえ焼却して二酸化炭素が発生しても大気中の二酸化炭素の収支はプラスマイナスゼロとなる、いわゆる「カーボンニュートラル」な材料とされており、石油由来の樹脂に代わってカーボンニュートラルな植物由来の樹脂を使用することは、地球温暖化を防止する上でも急務となっている。
【0004】
植物由来の樹脂の1つとして、セルロース誘導体が利用されている。例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート等のセルロースエステルが、フィルム材料として従来から用いられている。
【0005】
しかしながら、これらセルロースエステル等のセルロース誘導体は、そのままでは成形性に乏しく、加工性に難があり、射出成形など熱成形する場合には可塑剤の添加が必要であった。また加工時や成形時に着色し、得られる成形品の色調に問題が生じていた。
【0006】
可塑剤としては、リン酸エステルの添加が提案されている(特許文献1及び2)。しかしながら、リン酸エステルの種類によって、加工性や成形性に大きな差があり、いずれも満足のいく性能は得られていなかった。さらに着色する問題の解決が必要とされていた。また、耐熱性についても未だ改善の余地があった。
一方、石油由来樹脂の代わりに使用される成形材料として、これらセルロースエステル等のセルロース誘導体は難燃性も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−28429号公報
【特許文献2】特開2006−176596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の第1の目的は、加工性、耐加工着色性、難燃性に優れたセルロースエステル系樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、該セルロースエステル系樹脂組成物から得られる、色調と難燃性に優れた成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有するリン酸エステルが、優れた加工性、耐着色性、耐熱性を有し、それをセルロースエステル樹脂組成物に配合することで、加工性、耐加工着色性、難燃性に優れたセルロースエステル系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のセルロースエステル系樹脂組成物は、セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるリン酸エステルを1〜50質量部含有し、
さらに、ポリテトラフルオロエチレンを、前記セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部含有することを特徴とするものである。
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
【0011】
本発明のセルロールエステル系樹脂組成物は、さらに、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物、下記一般式(3)で表されるトリアリールホスファイト化合物及び下記一般式(4)で表されるジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物からなる群から選ばれる1種以上を、前記セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、それぞれ0.01〜10質量部含有することが好ましい。
(式(2)中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、mは1〜4の整数を表し、Aは1〜4価のアルコールからm個の水酸基を除いた残基を表す。)
(式(3)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
(式(4)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
【0012】
本発明の成形体は、前記セルロースエステル系樹脂組成物を成形してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加工性、耐加工着色性、難燃性に優れたセルロースエステル系樹脂組成物及び、色調と難燃性に優れた成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明について詳述する。
まず本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂から説明する。
セルロースエステル系樹脂としては、例えば、セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース有機酸エステル、ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテートなどのグラフト体などの前記セルロース有機酸エステルの誘導体、アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロースなどの炭素原子数2〜6アシルセルロース炭素原子数1〜6アルキルエーテル、アセチルヒドロキシエチルセルロース、アセチルヒドロキシプロピルセルロースなどの炭素原子数2〜6アシルセルロースヒドロキシ炭素原子数2〜6アルキルエーテルなどのセルロース有機酸エステル・エーテル類、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどのセルロース無機酸エステル、硝酸酢酸セルロースなどのセルロース有機酸・無機酸混合エステル、などが挙げられる。これらのセルロースエステルは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
これらのセルロースエステル系樹脂のうち、セルロース有機酸エステルが好ましく、炭素原子数2〜6カルボン酸のセルロースエステルがより好ましく、セルロースアセテート(酢酸セルロース)が特に好ましい。
【0016】
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物は、下記一般式(1)で表されるリン酸エステルを含有することを特徴とする。
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
【0017】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステルは、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0018】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステルとしては、例えば以下の化合物No.1及び化合物No.2が挙げられる。
化合物No.1
(nは1〜5の整数を表す。)
化合物No.2
【0019】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステルの合成方法は特に制限されず、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとフェノールとオキシ塩化リンを塩化マグネシウムなどの触媒の存在下に反応させ脱塩酸するか、トリフェニルホスフェートと4,4’−ジヒドロキシビフェニルをエステル交換反応することで合成可能である。
【0020】
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物中の、一般式(1)で表されるリン酸エステルの含有量は、セルロースエステル系樹脂100質量部に対して1〜50質量部であり、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは10〜35質量部である。
【0021】
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物は、さらに、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物、下記一般式(3)で表されるトリアリールホスファイト化合物及び下記一般式(4)で表されるジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物からなる群から選ばれる1種以上を、前記セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、それぞれ0.01〜10質量部含有することが好ましい。
【0022】
下記一般式(2)で表されるフェノール化合物について説明する。
(式(2)中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、mは1〜4の整数を表し、Aは1〜4価のアルコールからm個の水酸基を除いた残基を表す。)
【0023】
上記一般式(2)においてRが表す炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル基が挙げられる。
【0024】
上記一般式(2)においてAが表す残基を与える1〜4価のアルコールは、好適には炭素原子数1〜30の1価〜4価のアルコールである。例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリアコンタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジエタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジグリセリン等の4価アルコールが挙げられる。
【0025】
上記一般式(2)で表されるフェノール化合物の具体例としては、ステアリル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ビス(3−(3−第三ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、2,2−ビス(4−(2−(3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)フェニル)プロパン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−(3−(3−第三ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリス(2−(3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)イソシアヌレート、テトラキス(3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル)メタン等が挙げられ、特にテトラキス(3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル)メタンが好ましい。
【0026】
下記一般式(3)で表されるトリアリールホスファイト化合物について説明する。
(式(3)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
【0027】
上記一般式(3)においてR及びRが表す炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル基が挙げられる。
【0028】
上記一般式(3)で表されるトリアリールホスファイト化合物の具体例としては、トリス(2−第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−第三ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−第三ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェニル)ホスファイト等が挙げられ、特にトリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0029】
下記一般式(4)で表されるジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物について説明する。
(式(4)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
【0030】
上記一般式(4)においてR及びRが表す炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル基が挙げられる。
【0031】
上記一般式(4)で表されるジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物の具体例としては、たとえば、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−イソプロピルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−第二ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。これらのジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物のうちで、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが特に好ましい。
【0032】
上記一般式(2)で表されるフェノール化合物、上記一般式(3)で表されるトリアリールホスファイト化合物及び上記一般式(4)で表されるジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物を配合する場合、上記3成分の合計の含有量は、セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。0.01質量部よりも少ないと所望の加工時着色防止効果が得られない恐れがあり、10質量部を超えて配合しても、配合量に見合った効果の増強が見られなくなることがある。
【0033】
本発明のセルロース系樹脂組成物には、可塑剤を任意に使用することができる。可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレートなどのフタレート系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペートなどのアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのホスフェート系可塑剤;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどと、二塩基酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などとを用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどと、一塩基酸として、酢酸、安息香酸、p−第三ブチル安息香酸などを、用いて得られる多価アルコールエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタル酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤などが挙げられる。
【0034】
また、本発明のセルロースエステル系樹脂組成物には、さらに各種の添加剤、例えば、リン系、フェノール系または硫黄系抗酸化剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などを配合することもできる。
【0035】
上記リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェニル)・エチルホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4’−n―ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)]・1,6−ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイトなどが挙げられる。
【0036】
上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン]などが挙げられる。
【0037】
上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステルなどのジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)などのポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類などが挙げられる。
【0038】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−第三ブチル−4’−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などの2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−C7〜9混合アルコキシカルボニルエチルフェニル)トリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステルなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリドなどの置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどのシアノアクリレート類などが挙げられる。
【0039】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどが挙げられる。
【0040】
さらに本発明のセルロースエステル系樹脂組成物には、必要に応じて、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、リン酸エステル系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、ホスフェート系難燃剤、無機リン系難燃剤、(ポリ)リン酸塩系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、三酸化アンチモン等の酸化アンチモン、その他の無機系難燃助剤、その他の有機系難燃助剤、ドリップ防止剤等の合成樹脂に通常配合される難燃性を付与するための添加剤を添加してもよい。
【0041】
上記トリアジン環含有化合物としては、例えば、メラミン、アンメリン、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ピロリン酸メラミン、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3−ヘキシレンジメラミン等が挙げられる。
【0042】
上記金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、キスマー5A(水酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0043】
上記リン酸エステル系難燃剤の例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリスイソプロピルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(t−ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス−(t−ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0044】
上記縮合リン酸エステル系難燃剤の例としては、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
【0045】
上記(ポリ)リン酸塩系難燃剤の例としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ピペラジン等の(ポリ)リン酸のアンモニウム塩やアミン塩が挙げられる。
【0046】
上記その他の無機系難燃助剤としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク、モンモリロナイト等の無機化合物、及びその表面処理品が挙げられ、例えば、TIPAQUER−680(酸化チタン:石原産業(株)製)、キョーワマグ150(酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)、DHT−4A(ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製)、アルカマイザー4(亜鉛変性ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製)等の種々の市販品を用いることができる。
【0047】
上記その他の有機系難燃助剤としては、例えば、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0048】
ドリップ防止剤としては、フッ素系のドリップ防止剤が挙げられ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂やパーフルオロメタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−n−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロ−t−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−2−エチルヘキサンスルホン酸カルシウム塩等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩化合物またはパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよく、二種類以上を混合して用いることができる。また同様に、その他のドリップ防止剤としてシリコンゴム類、タルク等の層状ケイ酸塩を配合することも可能である。
ドリップ防止剤等の合成樹脂に通常配合される難燃性を付与するための添加剤の配合量は、セルロースエステル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部である。
【0049】
その他、本発明のセルロースエステル系樹脂組成物には、必要に応じて通常合成樹脂に使用される添加剤、例えば、帯電防止剤、架橋剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、防曇剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤、等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0050】
また、上記一般式(1)で表されるリン酸エステル、さらに、上記一般式(2)で表されるフェノール化合物、上記一般式(3)で表されるトリアリールホスファイト化合物、上記一般式(4)で表されるジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物及び上記他の添加剤のセルロースエステル系樹脂への添加方法としては、各配合物を各々別個に樹脂へ添加してヘンシェルミキサーなどで混合してから加工機へ供給する方法、樹脂以外の配合物の任意の組み合わせを予め混合物として粉体や顆粒状としたものを樹脂へ添加する方法、樹脂中へ高濃度で配合してマスターペレットとしたものを樹脂へ添加する方法、複数の供給口を有する押出機で樹脂とは別の供給口から樹脂へ添加する方法など公知の添加方法を適宜採用することができる。
【0051】
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物を成形することにより、セルロースエステル系樹脂成形体を得ることができる。成形方法は、特に限定されるものではなく、押し出し加工、カレンダー加工、射出成形、ロール、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられ、樹脂板、シート、フィルム、繊維、異形品等の種々の形状の成形品が製造できる。
【0052】
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物により得られる成形体は、色調と難燃性に優れる。
【0053】
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物及びその成形体は、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用できる。
【0054】
より具体的には、本発明のセルロースエステル系樹脂組成物及びその成形体は、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品及び通信機器、自動車用内外装材、製版用フィルム、粘着フィルム、ボトル、食品用容器、食品包装用フィルム、製薬・医薬用ラップフィルム、製品包装フィルム、農業用フィルム、農業用シート、温室用フィルム、等の用途に用いられる。
【0055】
さらに、本発明のセルロースエステル系樹脂組成物及びその成形体は、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、デッキ材、壁材、柱材、敷板、塀の材料、骨組及び繰形、窓及びドア形材、こけら板、羽目、テラス、バルコニー、防音板、断熱板、窓材等の自動車、車両、船舶、航空機、建物、住宅及び建築用材料や土木材料、衣料、カーテン、シーツ、不織布、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の生活用品、スポーツ用品、等の各種用途に使用される。
【実施例】
【0056】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等においては特に記載が無い限り質量基準である。
【0057】
〔参考例1〜3、比較例1〜5〕
下記表1および表2に示す配合で、セルロースエステル系樹脂組成物を調製し、下記加工試験条件で混練し、加工性及び耐加工着色性を試験した。加工性は混練時のトルクを測定し、耐加工着色性は下記のように評価した。
【0058】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステルとして、下記リン酸エステル化合物−1を使用した。リン酸エステル化合物−1は、nの数が異なる化合物の混合物である。
リン酸エステル化合物−1
(式中、nは1〜5の数を表す。)
【0059】
また上記一般式(2)で表されるフェノール化合物として下記フェノール化合物−1を、上記一般式(3)で表されるトリアリールホスファイト化合物として下記トリアリールホスファイト化合物−1を、上記一般式(4)で表されるジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物として、下記ジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物−2を使用した。
フェノール化合物−1
トリアリールホスファイト化合物−2
ジアリールペンタエリスリトールジホスファイト化合物−1
【0060】
また比較化合物として、下記、比較リン酸エステル化合物−1、比較リン酸エステル化合物−2を使用した。
比較リン酸エステル化合物−1
比較リン酸エステル化合物−2
【0061】
<加工試験条件>
機器:単軸押出機(ラボプラストミル75C−100:(株)東洋精機製作所製の商品名)
加工温度:230℃
混練時間:10min.
回転数:10rpm
【0062】
<耐加工着色性評価基準>
混練10分後のセルロースエステル系樹脂組成物の色を目視で確認し、以下の基準で評価した。
◎:加工による着色が見られない。
○:加工による着色がやや見られる。
△:加工による着色が見られる。
×:加工による着色が顕著に見られる。
【0063】
【表1】
(配合は質量部)
*1:酢酸セルロース 酢化度55%(ダイセルポリマー製 L−50)
*2:アデカスタブFP−800((株)ADEKAの商品名)
*3:アデカスタブAO−60((株)ADEKAの商品名)
*4:アデカスタブ2112((株)ADEKAの商品名)
*5:アデカスタブPEP−36((株)ADEKAの商品名)
【0064】
【表2】
【0065】
〔参考例4〜6、実施例1〜3〕
下記表3に示す配合で、セルロースエステル系樹脂組成物を調整し、下記加工条件で、押出してペレットを製造し、これを使用して240℃で射出成型し、1.6mm×12.7mm×127mmの難燃性試験用試験片を得て、下記試験方法で難燃性UL−94V試験を行った。
【0066】
<加工条件>
機器:TEX28V((株)日本製鋼所株式会社製)
加工温度:230〜240℃
【0067】
<難燃性UL−94V試験方法>
長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmの試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後で炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行ない、1回目と同様にして着火した火が消える時間を測定した。また、落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。
1回目と2回目の燃焼時間、綿着火の有無等からUL−94V規格にしたがって燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV−0が最高のものであり、V−1、V−2となるにしたがって難燃性は低下する。但し、V−0〜V−2のランクの何れにも該当しないものはNRとする。
【0068】
【表3】
(配合は質量部)
*1:酢酸セルロース 酢化度55%(ダイセルポリマー製 L−50)
*2:アデカスタブFP−800((株)ADEKAの商品名)
*3:アデカスタブAO−60((株)ADEKAの商品名)
*4:アデカスタブ2112((株)ADEKAの商品名)
*5:アデカスタブPEP−36((株)ADEKAの商品名)
【0069】
<耐熱性評価>
熱量計測定装置(Rigaku製)を用いて、下記表4に示す化合物もしくは混合物について、10℃/min、Air 200ml/minの条件下で5%重量減少温度(℃)を測定した。結果を下記表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
上記表4記載の参考例7と比較参考例1の結果から明らかなように、上記一般式(I)で表されるリン酸エステル化合物は、既存のリン酸エステル化合物に比較して耐熱性に優れるものである。