(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
払拭面上に配置されたワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータとを備え、前記払拭面上における前記ワイパブレードの位置に対応して設定された前記ワイパブレードの目標速度と該ワイパブレードの現在速度との差に応じて前記電動モータがPWMduty制御されるワイパ装置の制御方法であって、
前記電動モータは、前記ワイパブレードの払拭動作において前記ワイパブレードの速度を低下させ始める減速開始位置以降、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に、前記ワイパブレードの前記払拭面上の位置に対応して設定された所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値(sld sta duty × Ksd)を用いて駆動されることを特徴とするワイパ制御方法。
払拭面上に配置されたワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータとを備え、前記払拭面上における前記ワイパブレードの位置に対応して設定された前記ワイパブレードの目標速度と該ワイパブレードの現在速度との差に応じて前記電動モータがPWMduty制御されるワイパ装置の制御方法であって、
前記電動モータは、前記ワイパブレードの払拭動作において前記ワイパブレードの速度を低下させ始める減速開始位置以降、前記減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に、前記ワイパブレードの前記払拭面上の位置に対応して設定された所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値(ffc sta duty × Ksd)を用いて駆動されることを特徴とするワイパ制御方法。
払拭面上に配置されたワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータとを備え、前記払拭面上における前記ワイパブレードの位置に対応して設定された前記ワイパブレードの目標速度と該ワイパブレードの現在速度との差に応じて前記電動モータがPWMduty制御されるワイパ装置の制御装置であって、
前記ワイパブレードの現在位置を検出するブレード位置検出部と、
前記ワイパブレードの現在の移動速度を検出するブレード速度検出部と、
前記ワイパブレードの現在位置に対応するブレード目標速度tgt spdと、前記ワイパブレードの現在の速度とを比較するブレード速度判定部と、
前記ブレード速度判定部における判定結果に基づいて、前記電動モータの回転数を算出するモータ回転数演算部と、
前記モータ回転数演算部の指示に基づいて前記電動モータの動作を制御する駆動制御指示部と、を有し、
前記モータ回転数演算部は、前記ワイパブレードの払拭動作において前記ワイパブレードの速度を低下させ始める減速開始位置以降、前記電動モータに対するPWMduty値として、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に、前記ワイパブレードの前記払拭面上の位置に対応して設定された所定の減速係数Ksdを乗じた値(sld sta duty × Ksd)を用いることを特徴とするワイパ制御装置。
払拭面上に配置されたワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータとを備え、前記払拭面上における前記ワイパブレードの位置に対応して設定された前記ワイパブレードの目標速度と該ワイパブレードの現在速度との差に応じて前記電動モータがPWMduty制御されるワイパ装置の制御装置であって、
前記ワイパブレードの現在位置を検出するブレード位置検出部と、
前記ワイパブレードの現在の移動速度を検出するブレード速度検出部と、
前記ワイパブレードの現在位置に対応するブレード目標速度tgt spdと、前記ワイパブレードの現在の速度とを比較するブレード速度判定部と、
前記ブレード速度判定部における判定結果に基づいて、前記電動モータの回転数を算出するモータ回転数演算部と、
前記モータ回転数演算部の指示に基づいて前記電動モータの動作を制御する駆動制御指示部と、を有し、
前記モータ回転数演算部は、前記ワイパブレードの払拭動作において前記ワイパブレードの速度を低下させ始める減速開始位置以降、前記減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に、前記ワイパブレードの前記払拭面上の位置に対応して設定された所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値(ffc sta duty × Ksd)を用いることを特徴とするワイパ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ワイパ装置では、復路払拭動作(上反転位置→下反転位置)の際、ワイパブレードがガラス面の上下方向中央付近を過ぎると、ブレード等にかかる重力成分の関係から負荷が急激に小さくなる。負荷が急減すると、目標速度に対し制御時の速度が上回り、PIフィードバック制御を行っている場合、速度を落とすべくモータのPWM Dutyが下げられる。すると、今度は速度が目標速度を下回ってしまい、また、速度を上げるべくPWM Dutyが上げられる。そして、この繰り返しにより、
図10の破線囲み部に示すように、PWM Dutyやモータ回転数、ピボット軸回転速度(ブレード速度)に乱れが生じ、制御が不安定な状態(カウンター状態)となる可能性がある。その結果、動摩擦状態と静止摩擦状態の境界域にてワイパブレードが止まったり、急に動き出したりする、いわゆるスティックスリップのような挙動を引き起こしてしまうおそれがあった。
【0005】
一方、往路払拭動作(下反転位置→上反転位置)においても、ブレードが上反転位置に近付くと負荷が急激に小さくなり、制御が不安定な状態となる可能性がある。例えば、車両走行中に車両速度が一定値を超えると、ブレード等にかかる重力成分と車両の走行風等による外力成分の関係が逆転する場合がある。このような現象が生じると、前述の復路払拭動作と同じ現象が往路払拭動作でも発生する可能性があり、ワイパブレードの挙動が不安定になるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイパ制御方法は、払拭面上に配置されたワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータとを備え、前記払拭面上における前記ワイパブレードの位置に対応して設定された
前記ワイパブレードの目標速度と該ワイパブレードの現在速度との差に応じて前記電動モータがPWMduty制御されるワイパ装置の制御方法であって、前記電動モータは、前記ワイパブレードの払拭動作において前記ワイパブレードの速度を低下させ始める減速開始位置以降、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に、前記ワイパブレードの前記払拭面上の位置に対応して設定された所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値(sld sta duty × Ksd)を用いて駆動されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他のワイパ制御方法は、払拭面上に配置されたワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータとを備え、前記払拭面上における前記ワイパブレードの位置に対応して設定された
前記ワイパブレードの目標速度と該ワイパブレードの現在速度との差に応じて前記電動モータがPWMduty制御されるワイパ装置の制御方法であって、前記電動モータは、前記ワイパブレードの払拭動作において前記ワイパブレードの速度を低下させ始める減速開始位置以降、前記減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に、前記ワイパブレードの前記払拭面上の位置に対応して設定された所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値(ffc sta duty × Ksd)を用いて駆動されることを特徴とするワイパ制御方法。
【0008】
これらの発明にあっては、減速開始位置以降、減速開始位置におけるPWMduty値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値に所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値を用いて電動モータを駆動するようにしたので、減速開始位置以降は、所定の値に基づいてブレード速度が制御される。このため、負荷変動の大きい車両においても、負荷の急変によるDutyやモータ回転数の乱れを抑えることができ、スティックスリップのようなブレードの異常挙動が抑制され、払拭挙動を安定させることが可能となる。
【0009】
前記ワイパ制御方法において、前記減速係数Ksdを、減速開始時における前記ワイパブレードの目標速度pek tgt spdと、前記ワイパブレードの位置に対応して設定された前記ワイパブレードの目標速度tgt spdとの比(tgt spd/pek tgt spd)に基づいて設定しても良い。
【0010】
また、前記電動モータを前記ワイパブレードの速度に基づいてフィードバック制御する一方、前記減速開始位置以降は、前記フィードバック制御を行うことなく、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値のみにて駆動するようにしても良い。
【0011】
前記電動モータを、前記減速開始位置以降、前記ワイパブレードの速度に基づくフィードバック制御を行うことなく、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値による係数制御にて駆動する一方、前記ワイパブレードの速度が前記目標速度に対して所定値以上乖離した場合は、前記係数制御に代えて前記フィードバック制御によって駆動するようにしても良い。
【0012】
前記電動モータを、前記ワイパブレードの速度に基づいてフィードバック制御する一方、前記減速開始位置以降は、前記フィードバック制御と、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値による制御を併用しつつ駆動するようにしても良い。この場合、前記電動モータを、前記減速開始位置以降、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値D1、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値D
ffと、前記フィードバック制御に基づくPWMduty値D2(D
fb)を用いて算出される出力PWM duty値
出力PWM duty=(a×D1+b×D2)/c (但し、c=a+b)
あるいは、
出力PWM duty=(a×D
ff+b×D
fb)/c (但し、c=a+b)
にて駆動するようにしても良い。
【0014】
一方、本発明の
ワイパ制御装置は、払拭面上に配置されたワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータとを備え、前記払拭面上における前記ワイパブレードの位置に対応して設定された
前記ワイパブレードの目標速度と該ワイパブレードの現在速度との差に応じて前記電動モータがPWMduty制御されるワイパ装置の制御装置であって、前記ワイパブレードの現在位置を検出するブレード位置検出部と、前記ワイパブレードの現在の移動速度を検出するブレード速度検出部と、前記ワイパブレードの現在位置に対応するブレード目標速度tgt spdと、前記ワイパブレードの現在の速度とを比較するブレード速度判定部と、前記ブレード速度判定部における判定結果に基づいて、前記電動モータの回転数を算出するモータ回転数演算部と、前記モータ回転数演算部の指示に基づいて前記電動モータの動作を制御する駆動制御指示部と、を有し、前記モータ回転数演算部は、前記ワイパブレードの払拭動作において前記ワイパブレードの速度を低下させ始める減速開始位置以降、前記電動モータに対するPWMduty値として、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に、前記ワイパブレードの前記払拭面上の位置に対応して設定された所定の減速係数Ksdを乗じた値(sld sta duty × Ksd)を用いることを特徴とするワイパ制御装置。
【0015】
また、本発明の他のワイパ制御装置は、払拭面上に配置されたワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復動させるための電動モータとを備え、前記払拭面上における前記ワイパブレードの位置に対応して設定された
前記ワイパブレードの目標速度と該ワイパブレードの現在速度との差に応じて前記電動モータがPWMduty制御されるワイパ装置の制御装置であって、前記ワイパブレードの現在位置を検出するブレード位置検出部と、前記ワイパブレードの現在の移動速度を検出するブレード速度検出部と、前記ワイパブレードの現在位置に対応するブレード目標速度tgt spdと、前記ワイパブレードの現在の速度とを比較するブレード速度判定部と、前記ブレード速度判定部における判定結果に基づいて、前記電動モータの回転数を算出するモータ回転数演算部と、前記モータ回転数演算部の指示に基づいて前記電動モータの動作を制御する駆動制御指示部と、を有し、前記モータ回転数演算部は、前記ワイパブレードの払拭動作において前記ワイパブレードの速度を低下させ始める減速開始位置以降、前記減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に、前記ワイパブレードの前記払拭面上の位置に対応して設定された所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値(ffc sta duty × Ksd)を用いることを特徴とする。
【0016】
これらの発明にあっては、ワイパブレードの現在位置に対応するブレード目標速度tgt spdとワイパブレードの現在の速度とを比較するブレード速度判定部と、ブレード速度判定部における判定結果に基づいて電動モータの回転数を算出するモータ回転数演算部を設け、このモータ回転数演算部にて、減速開始位置以降、PWMduty値として、減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値
に所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値を用いて電動モータを駆動するようにしたので、減速開始位置以降は、所定の値に基づいてブレード速度が制御される。このため、負荷変動の大きい車両においても、負荷の急変によるDutyやモータ回転数の乱れを抑えることができ、スティックスリップのようなブレードの異常挙動が抑制され、払拭挙動を安定させることが可能となる。
【0017】
前記ワイパ制御装置において、前記減速係数Ksdを、減速開始時における前記ワイパブレードの目標速度pek tgt spdと、前記ワイパブレードの位置に対応して設定された前記ワイパブレードの目標速度tgt spdとの比(tgt spd/pek tgt spd)に基づいて設定しても良い。
【0018】
また、前記電動モータを、前記モータ回転数演算部によって、前記ワイパブレードの速度に基づいてフィードバック制御する一方、前記減速開始位置以降は、前記フィードバック制御を行うことなく、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値のみにて駆動するようにしても良い。
【0019】
また、前記電動モータに対し、前記モータ回転数演算部によって、前記減速開始位置以降、前記フィードバック制御を行うことなく前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値による係数制御が行う一方、前記ワイパブレードの速度が前記目標速度に対して所定値以上乖離した場合は、前記係数制御に代えて前記フィードバック制御が行うようにしても良い。
【0020】
前記電動モータを、前記モータ回転数演算部によって、前記ワイパブレードの速度に基づいてフィードバック制御する一方、前記減速開始位置以降は、前記フィードバック制御と、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値による制御を併用しつつ駆動ようにしても良い。この場合、前記電動モータを、前記減速開始位置以降、前記減速開始位置におけるPWMduty値(sld sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値D1、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値(ffc sta duty)に前記減速係数Ksdを乗じた値D
ffと、前記フィードバック制御に基づくPWMduty値D2(D
fb)を用いて算出される出力PWM duty値
出力PWM duty=(a×D1+b×D2)/c (但し、c=a+b)
あるいは、
出力PWM duty=(a×D
ff+b×D
fb)/c (但し、c=a+b)
にて駆動するようにしても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明のワイパ制御方法によれば、ワイパブレード払拭動作の減速開始位置以降は、減速開始位置におけるPWMduty値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値に所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値を用いて電動モータを駆動するようにしたので、減速開始位置以降、所定の値に基づいてブレード速度が制御され、負荷の急変によるDutyやモータ回転数の乱れを抑えることが可能となる。このため、減速開始位置以降におけるスティックスリップのようなブレードの異常挙動が抑制され、払拭挙動の安定化を図ることが可能となる。
【0023】
本発明のワイパ制御装置によれば、ワイパブレードの現在位置に対応するブレード目標速度とワイパブレードの現在の速度とを比較するブレード速度判定部と、ブレード速度判定部における判定結果に基づいて、電動モータの回転数を算出するモータ回転数演算部を設け、このモータ回転数演算部にて、ワイパブレード払拭動作の減速開始位置以降、減速開始位置におけるPWMduty値、あるいは、減速開始位置より前に設定されたフィードフォワード制御開始位置におけるPWMduty値に所定の減速係数Ksdを乗じたPWMduty値を用いて電動モータを駆動するようにしたので、減速開始位置以降、所定の値に基づいてブレード速度が制御され、負荷の急変によるDutyやモータ回転数の乱れを抑えることが可能となる。このため、減速開始位置以降におけるスティックスリップのようなブレードの異常挙動が抑制され、払拭挙動の安定化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の目的は、車両用ワイパ装置において、ブレード負荷の変動に起因する制御の乱れを抑制し、反転位置近傍におけるワイパブレードの払拭挙動を安定させることにある。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1である制御方法・制御装置によって駆動されるワイパシステムの全体構成を示す説明図である。
図1のワイパ装置は、運転席側のワイパアーム1aと助手席側のワイパアーム1bとを有している。ワイパアーム1a,1bは、車体に揺動自在に設けられている。各ワイパアーム1a,1bには、運転席側のワイパブレード2aと助手席側のワイパブレード2bが取り付けられている。ワイパブレード2a,2b(以下、ブレード2a,2bと略記する)は、ワイパアーム1a,1b内に内装された図示しないばね部材等により、フロントガラス3に弾圧的に接触している。車体には、2つのワイパ軸(ピボット軸)4a,4bが設けられている。ワイパ軸4a,4bには、ワイパアーム1a,1bの基端部が取り付けられている。符号における「a,b」は、それぞれ運転席側と助手席側に関連する部材や部分等であることを示している。
【0026】
ワイパアーム1a,1bを揺動運動させるため、当該システムには、2つ電動モータ6a,6b(以下、モータ6a,6bと略記する)が設けられている。モータ6a,6bは、モータ本体7と減速機構8とによって構成されている。モータ6a,6bは、ワイパ制御装置10a,10bによってPWM duty制御され正逆回転する。モータ6aを駆動制御するワイパ制御装置10aは、車両側のコントローラであるECU11と、車載LAN12を介して接続されている。ECU11からワイパ制御装置10aに対しては、ワイパスイッチのON/OFFやLo,Hi,INT(間欠作動)などのスイッチ情報や、エンジン起動情報などがLAN12を介して入力される。ワイパ制御装置10a,10b同士の間は通信線13にて接続されている。
【0027】
図1のワイパシステムでは、ブレード2a,2bの位置情報に基づいてモータ6a,6bがフィードバック制御(PI制御)される。ここでは、ブレード2a,2bの位置に対応して、両ブレードの目標速度tgt spdが設定されている。目標速度tgt spdは、予めマップ等の形でワイパ制御装置10a,10b内に格納されている。ワイパ制御装置10a,10bは、ブレード2a,2bの現在位置を検出すると共に、ワイパ軸4a,4bの回転速度からブレード2a,2bの移動速度を検出する。制御装置10a,10bは、現在のブレード2a,2bの速度と、当該位置におけるブレード2a,2bの目標速度tgt spdとを比較し、目標速度tgt spdと現在速度との差に応じて、適宜、モータ6a,6bを制御する。
【0028】
フィードバック制御を行うため、モータ6a,6bには、センサマグネット31と、ロータリーエンコーダIC32が設けられている。
図2は、モータ6aの構成を示す説明図である。なお、モータ6bも同様の構成となっている。前述のように、モータ6aは、モータ本体7と減速機構8とによって構成されている。モータ本体7には、ロータ33が回転自在に配されている。ロータ33の回転軸34には、ウォーム35が形成されている。ウォーム35は、減速機構8に配されたウォームホイール36と噛合している。ウォームホイール36は、ワイパ軸4aに取り付けられている。ワイパ軸4aもしくはウォームホイール36にはさらにセンサマグネット31が取り付けられている。モータ6aの減速機構8側には、図示しない制御基板が設けられている。センサマグネット31は、この基板に取り付けられたロータリーエンコーダIC32と対向するように配置されている。
【0029】
ロータリーエンコーダIC32は、センサマグネット31の磁気変化に伴う出力電圧の変化を角度に変換することにより、ワイパ軸4aの回転角度を検出する。ロータリーエンコーダIC32の出力電圧値とワイパ軸4aの回転角度との間には所定の関係があり、この出力電圧値に基づいてブレード2aの現在位置が検出される。また、ワイパ軸4aの単位時間当たりの角度変化を検出することにより、ワイパ軸4aの回転速度が算出され、ブレード2aの速度が検出される。ワイパ軸4aの回転角度及び回転速度の算出は、上記のロータリーエンコーダIC32を使用した方式には限定されず、ホールICを用いたパルス検出による方式でも良い。
【0030】
ブレード2aの速度や現在位置などの制御情報は、通信線13を介してワイパ制御装置10a,10bの間で交換される。ワイパ制御装置10a,10bは、双方のブレードの位置関係に基づいて、モータ6a,6bを同期制御する。すなわち、ワイパ制御装置10a,10bは、まず、自身の側のブレード位置に基づきモータ6a,6bを正逆転制御する。同時にワイパ制御装置10a,10bは、両ブレード2a,2bのブレード位置情報に基づいてモータ6a,6bを制御し、ブレード同士が干渉したり、角度差が拡大したりしないようにワイパシステムを制御する。これにより、ブレード2a,2bが下反転位置Aと上反転位置Bとの間、つまり図中一点鎖線で示す払拭範囲5を揺動運動し、フロントガラス3に付着した雨や雪などが払拭される。
【0031】
一方、
図1のワイパシステムにおいても、復路払拭時にブレード2a,2bがフロントガラス3の上下方向中央付近を過ぎ下半分領域に至ると、負荷が急激に小さくなり、前述のように、PWM Dutyや回転数に乱れが生じるおそれがある。そこで、当該ワイパシステムでは、負荷の急変動によって制御が不安定な状態となるのを防止するため、復路払拭時における減速開始位置からDuty算出方法を変更し、外乱によるモータ6a,6bの出力変動を抑えている。
図3は、本発明によるワイパ制御装置10の制御系の構成を示すブロック図である。また、
図4は、本発明によるワイパ制御方法の処理手順を示すフローチャートであり、
図4の処理はワイパ制御装置10a,10bによって実行される。なお、ワイパ制御装置10a,10bは同一構成となっているため、
図3及び以下の記載では、ワイパ制御装置10aについてのみ説明する。
【0032】
図3に示すように、ワイパ制御装置10aには、CPU21と、データ送受信部22が設けられている。ワイパ制御装置10aは、LAN12を介してECU11と接続されている。ワイパ制御装置10aには、ECU11から、ワイパスイッチの設定状態(ON/OFFやLo,Hi,INT等の動作モード設定)、エンジン起動信号等の各種車両情報が入力される。ワイパ制御装置10a内にはさらに、ROM23と、RAM24が設けられている。ROM23には、制御プログラムや各種制御情報が格納されている。RAM24には、モータ回転数やブレード現在位置などの制御上のデータが格納される。
【0033】
CPU21は中央演算処理装置である。本実施形態では、ECU11と接続されたCPU21がマスタ側となっており、図示しないワイパ制御装置
10bのCPUがスレーブ側となっている。ワイパ制御装置10aのCPU21は、データ送受信部22と通信線13を介して、ワイパ制御装置10bのCPUと接続されている。両CPUは、通信線13を通じて位置情報や動作指示を互いにやり取りしている。マスタ側のCPU21は、ワイパスイッチの状態に従って、ワイパ制御装置10bから送られてきたブレード2bの位置情報や、自ら(ブレード2a)の位置情報に基づいてモータ6aの動作を制御する。スレーブ側のCPUは、ワイパ制御装置10aからの指示に従って、ワイパ制御装置10aから送られてきたブレード2aの位置情報や、自ら(ブレード2b)の位置情報に基づいてモータ6bの動作を制御する。
【0034】
CPU21には、位置検出部25と、ブレード速度検出部26、ブレード速度判定部27、モータ回転数演算部28、及び、駆動制御指示部29が設けられている。位置検出部25は、ロータリーエンコーダIC32からのセンサ信号に基づいて、ブレード2aの現在位置を検出する。ブレード速度検出部26は、ブレード2aの現在の移動速度を検出する。ブレード速度判定部27は、ブレード2aの現在位置に対応するブレード目標速度tgt spdをROM23から読み込み、これとブレード2aの現在の速度とを比較する。
【0035】
モータ回転数演算部28は、ブレード速度判定部27における判定結果と、相手側ブレードとの位置関係、ワイパスイッチ情報などに基づいて、モータ6aの回転数を算出する。駆動制御指示部29は、モータ回転数演算部28の指示に基づき、モータ6aに対し回転方向やDuty等を指示し、ブレード2aを上下反転位置間で適宜動作させる。モータ回転数演算部28は、前述の諸条件を考慮してモータ6aの回転数を決定する。但し、該本発明によるワイパシステムでは、復路時におけるDuty算出方法を減速開始時点から変更し、モータ回転数の暴れ(不規則な変動)を抑えている。なお、減速開始時点は必ずしも復路中央ではない。本実施形態では、減速開始時点(位置)とは、加速が完了してブレード2aが最高速度となり、それが維持されている領域(最高速度領域)が終了し、モータが減速を開始する時点(位置)を意味している。
【0036】
本発明によるワイパシステムでは、払拭動作時には次のような処理が行われる。
図4に示すように、ここではまずステップS1にて、ブレード2aの現在位置を検出され、ステップS2にて、ブレード2aの現在速度が検出される。なお、ステップS1,S2は順不同である。ステップS1,S2にて、ブレード2aの現在位置と現在速度を把握した後、ステップS3に進む。ステップS3では、ブレード2aが復路の減速開始位置Xに到達しているか否かが判断される。なお、前述のように、減速開始位置Xは、復路行程の必ずしも中央ではない。ブレード2aが減速開始位置Xに到達していない場合には、ステップS4に進み、ブレード2aの現在位置に対応した目標速度tgt spdを取得する。目標速度tgt spdは、前述のようにROM23内に格納されており、ブレード2aの位置をパラメータとして予め設定されている。S4の処理により、ブレード2aの現在位置に対応したブレード速度の目標値が設定される。
【0037】
目標速度tgt spdを取得した後、ステップS5に進む。ステップS5では、自身及び相手側のブレード位置などから、ブレードの現在の状況(目標より遅れているか?、進んでいるか?、相手との関係は正常か?等)がモータ回転数演算部28にて判断される。そして、ステップS6に進み、ブレード2aに対する最適なPWM duty値(制御duty値)が設定される。制御duty値は、ブレードの現在の状況と、ブレード2aの現在速度及び目標速度tgt spdに基づいて、設定される。制御duty値の設定処理もまた、モータ回転数演算部28にて実行される。duty値の設定の後、ステップS7に進み、駆動制御指示部29によって、先の設定値に基づいてPWM duty値が出力される。この結果、モータ6aは、両ブレードの位置や速度等に基づいてフィードバック制御され、ルーチンを抜ける。
【0038】
一方、ステップS3にて、ブレード2aが減速開始位置Xに到達している場合には、ステップS8に進み、duty設定が変更される。本システムでは、モータ回転数演算部28により、次式(式(1))に基づいてPWM dutyが設定される。
出力PWM duty(D1)
=減速開始時のPWM duty(sld sta duty) × Ksd (式1)
(Ksd=現在目標速度tgt spd/減速開始時目標速度pek tgt spd)
Ksdは、減速開始時からの出力減少分を示す制御係数であり、ブレード2aの位置に対応して設定される。本システムでは、制御係数Ksdは、目標速度の比、すなわち、減速開始位置Xにおける目標速度pek tgt spdと、ブレード2aの位置に対応して設定されたブレード2aの目標速度tgt spdとの比である。制御係数Ksdは、ブレード位置に対応したマップとしてROM23に格納されている。モータ回転数演算部28は、ブレード位置に基づき、このマップから出力PWM dutyを設定する。
【0039】
ステップS8にて出力PWM dutyを設定した後、ステップS7に進む。ステップS7では、駆動制御指示部29によって、式(1)に基づいて設定されたPWM duty値が出力される。これにより、減速開始位置X以降は、PIフィードバック制御を行うことなく、マップ記載の所定値(式(1)による算出値)に基づいてモータ6aが駆動される。
【0040】
図5は、当該ワイパシステムにおけるPWM dutyとブレード速度、モータ回転数の時間変化を示す説明図である。前述のように、減速開始後のdutyは、減速開始時のduty(sld sta duty: slow down start duty)を基準値として、それに減速開始時の目標速度pek tgt spd (peak target speed)に対する現在の目標速度tgt spd (target speed)の比率を掛けた値に設定される(式(1))。その結果、本発明によるシステムでは、出力dutyは、
図5に示すように、減速開始位置以降、放物線状の所定のカーブを描いて減少すると共に、そのカーブ自体が減速開始時のduty値(最高速度領域における負荷状態)に応じて適宜上下(duty値が増減)する。すなわち、最高速度領域での負荷が高い場合は、
図5の曲線Hのようにdutyが設定され、負荷が低い場合には、曲線Lのようにdutyが設定される。よって、モータ6aは、その減速領域において、最高速度領域での負荷状態に応じて設定される所定の制御形態にて駆動されることになる。
【0041】
本発明によるワイパシステムでは、復路の減速開始位置以降は、モータ駆動用のPWM duty値が式(1)に基づいて設定される。その結果、
図5に示すように、減速開始位置以降は、ブレード速度やモータ回転数は、目標値に追従する形で、特に乱れを生じることなく放物線状に変化し、滑らかな減速カーブを描いて下反転位置に至る。従って、
図10のような、負荷の急変によるDutyやモータ回転数の乱れを抑えることができ、スティックスリップのようなブレードの異常挙動が抑制され、払拭挙動を安定させることが可能となる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施形態2として、減速開始位置X以降もPIフィードバック制御を並行して行う制御形態について説明する。前述のように、実施の形態1の制御形態では、負荷の急激な低下による影響は的確に回避し得る。しかしながら、減速開始位置以降に、ガラス面の状態がDRYからWETへ急激に変化した場合、速度が過剰(オーバーシュート)になってしまうことも考えられる。そこで、実施の形態2の制御形態では、式(1)に基づく制御を行いつつも、PIフィードバック制御を並行して実施し、負荷変動への対応性を向上させている。
【0043】
実施形態2の制御は、前述のステップS8が次のように変更される形で実施される。すなわち、前述の式(1)に基づいてduty値D1が算出されると共に、前述のステップS4〜S6のフィードバック制御における制御duty値D2が算出される。そして、これらの値D1,D2と次の式(2)により、PWM duty値が設定・出力される。
出力PWM duty=(a×D1+b×D2)/c 式(2)
(但し、c=a+b)
つまり、PWM duty値の決定に際し、規定値のD1とフィードバック演算値のD2の両方を使用し、これらの重み付けを適宜調整することにより、負荷の急激な低下と、ガラス面の状態変化に的確に対応できるようにしている。
【0044】
図6は、復路動作の際に下反転位置近傍に部分的に散水を行った場合のPWM dutyとブレード速度、モータ回転数の時間変化を示す説明図である。
図6(a)は実施の形態2の制御、
図6(b)は実施の形態1の制御を行った場合をそれぞれ示している。なお、(a)の制御形態は、式(2)において、D1とD2を同等に取り扱い(a=1,b=1)、両者を足して2(c=2)で割った制御形態となっている(50%減速誘導)。
図6(b)に示すように、実施の形態1の制御形態の場合、復路動作の減速開始位置以後にガラス面が突然WETな状態になると、フィードバック制御が実施されていないため、WETな状況に対応できず、ブレード速度が急上昇してしまう(
図6(b)中央「散水」部分)。
【0045】
これに対し、実施の形態2の制御形態では、WET状態にてブレード速度が上昇するが、PIフィードバック制御により、その状況が的確に把握され制御に反映される。その結果、速度上昇が抑えられ、
図6(a)のように速度の乱れを小さく留めることが可能となる(
図6(a)中央「散水」部分)。このように、実施の形態2の制御形態では、規定値D1による制御とPIフィードバック制御を並行して行うことにより、ガラス面状態の急激な変化にも対応しつつ、負荷変動によるDutyやモータ回転数の乱れを小さく抑えることができる。従って、外乱に対する適応性が向上し、ワイパの払拭挙動をより安定させることが可能となる。
【0046】
(実施の形態3)
さらに、本発明の実施の形態3として、減速開始位置Xの手前(例えば、10°)の位置にフィードフォワード制御(以下、FF制御と略記する)開始位置Pを設定し、FF制御開始時におけるPWM duty(ffc sta duty)に基づいて前記duty値D1を算出する制御形態について説明する。
図7は実施の形態3の制御形態における制御処理を示す説明図、
図8はその処理手順を示すフローチャートである。なお、FF制御開始位置Pは、前述の最高速度領域内に設定されている。
【0047】
図7に示すように、実施の形態3のワイパシステムでは、PIフィードバック制御と、外乱を想定したフィードフォワード制御が実施され、
図8のような処理手順にて実行される。
図8に示すように、この場合も、ステップS11,S12にて、ブレード2aの現在位置と現在速度が検出される。そして、これらを把握した後、ステップS13に進み、ブレード2aがFF制御開始位置Pに到達しているか否かが判断される。ステップS13にて、ブレード2aがFF制御開始位置Pに到達していない場合には、ステップS14〜S17に進む。ステップS14〜S17では、
図4のS4〜S7と同様に、ブレードの現在の状況と、ブレード2aの現在速度及び目標速度tgt spdに基づいてPWM duty値が出力される。
【0048】
一方、ステップS13にて、ブレード2aがFF制御開始位置Pに到達している場合には、ステップS18に進む。ステップS18では、FF制御のため、その時点におけるPWM duty(ffc sta duty)を取得する。PWM duty(ffc sta duty)を取得した後、ステップS19にてFF制御開始フラグを立て(FF制御開始フラグ=1)、ステップS20に進む。ステップS20では、ブレード2aが復路の減速開始位置Xに到達しているか否かが判断される。ステップS20にて、ブレード2aが減速開始位置Xに到達していない場合には、ステップS14〜S17に進み、フィードバック制御が継続される。これに対し、ステップS20にて、ブレード2aが減速開始位置Xに到達している場合には、ステップS21に進み、FF制御出力D
ffが算出される。
【0049】
ここでは、モータ回転数演算部28により、次式(式(3))に基づいてPWM dutyが設定される。
FF制御出力D
ff
=FF制御開始位置時のPWM duty(ffc sta duty) × Ksd 式(3)
(Ksd=現在目標速度tgt spd/減速開始時目標速度pek tgt spd)
Ksdは、前述同様、減速開始時からの出力減少分を示す制御係数である。
図9は、FF制御開始位置Pや、本発明における現在目標速度tgt spdや減速開始時目標速度pek tgt spdの概念を示す説明図である。
図9に示すように、減速開始時目標速度pek tgt spdは、減速開始位置以降、放物線状の所定のカーブを描いて減少すると共に、そのカーブ自体が減速開始時のduty値に応じて適宜上下(duty値が増減)する。
【0050】
ステップS21にてFF制御出力D
ffを算出した後、ステップS22に進む。ステップS22では、前述のステップS14〜S17と同様の手順にて、フィードバック制御における制御duty値D
fbが算出される(D
fb=前述のD2)。そして、ステップS23に進み、これらの値(D
ff, D
fb)と次の式(4)により、PWM duty値が設定・出力される。
出力PWM duty=(a×D
ff+b×D
fb)/c 式(4)
(但し、c=a+b)
【0051】
このように、実施の形態3の制御処理では、PWM duty値の決定に際し、外乱を想定したFF制御値D
ff(規定値)とフィードバック演算値のD
fbの両方を使用し、これらの重み付けを適宜調整する。これにより、前述同様、ガラス面状態の急激な変化にも対応しつつ、負荷変動によるDutyやモータ回転数の乱れを小さく抑えることができ、外乱に対する適応性が向上し、ワイパの払拭挙動をより安定させることが可能となる。なお、実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、フィードバック制御を行うことなく(制御duty値D
fb不使用:b=0)、FF制御出力D
ffのみによって制御を行うことも可能である。
【0052】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施の形態1では、減速開始位置X以降は、PIフィードバック制御を行わない制御形態となっているが、実施の形態2で述べたような事象も想定され得る。従って、減速開始位置X以降もPIフィードバックを継続して演算し、現在のブレード速度が目標速度に対して所定値以上乖離した場合(例えば、20%以上)は、規定値D1による制御からPIフィードバック制御に切り替えても良い。
【0053】
また、実施の形態2,3におけるa,bの値はあくまでも一例であり、車種や想定される外乱等に応じて、値を適宜変更することが可能である。例えば、a=2,b=1として、規定値D1による制御を重視したり、逆に、a=1,b=2として、フィードバック演算値D2による制御を重視したりしても良い。また、外乱の状況により、随時D1とD2の重み付けを変更したり、学習により両者を適宜変更したりして行くことも可能である。
【0054】
さらに、前述の実施の形態では、減速係数Ksdとして、現在目標速度tgt spdと減速開始時目標速度pek tgt spdとの比を用いた例を示したが、ブレード位置に対応した目標duty値を予め設定してモータ制御を行うワイパ装置などでは、Ksdとして、当該位置の目標duty値と減速開始位置の目標duty値の比(現在目標duty値/減速開始時目標duty値)を用いることも可能である。
【0055】
加えて、前述の実施形態では、復路時における制御例を示したが、本発明の制御形態は往路時にも適用可能である。前述のように、往路払拭動作においても、復路払拭動作と同じ現象が発生するおそれがある。そこで、往路での不安定現象を防止すべく、往路時においても、復路時と同様に、ワイパシステムの減速開始時点からduty算出方法を変更しても良い。つまり、本発明は、往路と復路からなる1制御サイクル中に設定された各モータ減速領域にて共に実施可能である。従って、本発明によれば、減速開始位置以後は、減速開始位置やFF制御開始位置でのduty値、すなわち、最高速度領域での負荷に応じて設定される所定の制御形態にてモータの速度制御が行うことができる。なお、本発明における1制御サイクルとは、ワイパブレードの1往復払拭動作に関する制御周期である。
【0056】
また、前述の実施形態では、
図1のように、2つのモータにて各ワイパアームを駆動するワイパシステムに本発明を適用した例を示したが、本発明が適用可能なワイパシステムはこれには限定されない。例えば、本発明は、リンク機構を用いて1つの電動モータで2つのワイパアームを動かすワイパシステムにも適用可能である。
【0057】
さらに、
図2には、電動モータにセンサマグネット31とロータリーエンコーダIC32を1つずつ備えたものを示したが、電動モータの構成はこれには限定されない。例えば、回転軸にセンサマグネットを設けると共に、センサマグネットの磁極変化をセンシングするため、センサマグネットに臨んでホールICを設けたモータも使用可能である。当該モータは、パルスを検出するパルス仕様であり、モータの回転に伴ってホールICからパルスが出力される。なお、当該モータにおけるホールICの数も限定されない。