(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239508
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】杭基礎および杭基礎設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/14 20060101AFI20171120BHJP
E02D 27/35 20060101ALI20171120BHJP
E02D 27/42 20060101ALI20171120BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20171120BHJP
E02D 5/54 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
E02D27/14
E02D27/35
E02D27/42 A
E02D27/32 Z
E02D5/54
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-525852(P2014-525852)
(86)(22)【出願日】2013年7月17日
(86)【国際出願番号】JP2013069440
(87)【国際公開番号】WO2014014033
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-161192(P2012-161192)
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301037512
【氏名又は名称】伊藤組土建株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594142207
【氏名又は名称】トヨタ自動車北海道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508324008
【氏名又は名称】株式会社ラスコジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】512073622
【氏名又は名称】札幌電鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100133260
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(72)【発明者】
【氏名】西岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】長尾 和宏
(72)【発明者】
【氏名】島谷 学
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 和弘
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3916083(JP,B2)
【文献】
特開2005−299215(JP,A)
【文献】
特許第4437169(JP,B2)
【文献】
国際公開第2010/119432(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/14
E02D 5/54
E02D 27/32
E02D 27/35
E02D 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の打込杭により地表面に支持されてその上部に構造物を載設する杭基礎であって、
下側に配置される下部板と、この下部板と同一形状に形成されるとともに上下対称となるように前記下部板の上側に配置される上部板と、前記下部板および前記上部板を所定の間隔を隔てて略平行に支持する支柱とを備え、地表面おいて支持される杭基礎本体を有しており、前記下部板および前記上部板には、前記各々の打込杭を下方に向けて略放射状に貫通させる複数の杭孔が、前記下部板および前記上部板の上下対称位置において同一形状に形成されているとともに、
前記杭基礎本体は、前記上部板と前記下部板との間における各々の外縁部を複数本の前記支柱により支持している、前記杭基礎。
【請求項2】
前記上部板および前記下部板が略正方形状に形成されているとともに、これらの略正方形状の外縁部における四隅を前記支柱により支持している、請求項1に記載の杭基礎。
【請求項3】
複数の打込杭により地表面に支持されてその上部に構造物を載設する杭基礎であって、
下側に配置される下部板と、この下部板と同一形状に形成されるとともに上下対称となるように前記下部板の上側に配置される上部板と、前記下部板および前記上部板を所定の間隔を隔てて略平行に支持する支柱とを備えた杭基礎本体を有しており、前記下部板および前記上部板には、前記各々の打込杭を下方に向けて略放射状に貫通させる複数の杭孔が形成されているとともに、
前記杭基礎本体は、前記支柱を直方体状に形成して中央に配置しているとともに、前記下部板および前記上部板を、それぞれ4枚の同型山形鋼を使って前記直方体状支柱の4つの上部側面および4つの下部側面をそれぞれ囲むように固定して略矩形枠状に形成してなる杭基礎。
【請求項4】
前記杭基礎本体は、熱的な絶縁性を有する錐体状の凍上防止用錐体を、その頂点を下方に向けて前記下部板の下面に有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の杭基礎。
【請求項5】
前記凍上防止用錐体は、多角錐体状に形成されているとともに、その各側面に前記杭孔が形成されている、請求項4に記載の杭基礎。
【請求項6】
前記杭基礎本体は、前記下部板よりも外側に大きく形成された沈降抑制板を前記下部板に有する、請求項1から請求項5のいずれかに記載の杭基礎。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の前記杭基礎本体に対し、前記複数の打込杭を前記上部板から前記下部板にかけて前記各杭孔に貫通させて略放射状に地盤へ打ち込むことにより、前記杭基礎を設置する杭基礎設置工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を載設するための杭基礎に関するものであって、特に軟弱地盤に対して好適な杭基礎および杭基礎設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーラーパネルや家屋等の構造物は、地面に対して水平を保つために地表面に設置された基礎の上に載設されている。しかし、構造物等を設置する地盤が湿地帯や泥炭地等の軟弱地盤である場合、構造物等や基礎が自重によって沈降や傾斜してしまうことがある。
【0003】
そこで、これまでに前記基礎を複数の打込杭を打ち込んで地表面に固定することにより、軟弱地盤における構造物や基礎の沈降や傾きを防止する杭基礎に関する発明が提案されている。
【0004】
例えば、米国特許第5039256号明細書では、コンクリートやセメントを充填した円筒体とこの円筒体を貫通する複数の打込杭とから構成される杭基礎が提案されている(特許文献1)。この特許文献1によれば、この杭基礎は、持ち運びが可能であるとともに、構造物等の取り外し後には他の構造物の基礎として再利用することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5039256号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、杭基礎の材料としてコンクリートが用いられているため、外気温が摂氏0度以下になるような寒冷地では、前記コンクリート内に含まれる水分が氷結することにより前記水分が膨張して、前記コンクリートに亀裂や割れが生じてしまう、いわゆる凍害が生じるおそれがある。また、コンクリートは重量が大きくなるため輸送コストが高くなり、搬送作業および施工作業も重労働となって負担が大きい。さらに、コンクリートの充填から固化までに相当な時間がかかるため製造効率が悪く、大量生産に不向きであって製造コストの削減を実現しにくいことから改善の要望が高かった。
【0007】
一方、コンクリート材料を使用せずに軽量で安価な鋼材等を使って杭基礎を製造した場合、熱伝導率が良いため外気温が前記鋼材を介して地中に伝わり易い。このため、例えば外気温が0℃以下になるとその冷気が地中に伝わり、地中の水分が氷結して氷層を形成して土壌が隆起してしまう、いわゆる凍上といわれる現象が生じる。このような凍上現象は、杭基礎を押し上げたり、傾斜させてしまうためその上に載設している構造物が傾斜し、破損してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点等を解決するためになされたものであって、構造部材の製造から搬送、および現場での施工作業が簡単かつ安価であり、大量生産および各種のコスト削減が可能となるとともに、凍害対策や凍上対策も効果的に行いうる杭基礎および杭基礎設置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る杭基礎は、複数の打込杭により地表面に支持されてその上部に構造物を載設する杭基礎であって、下側に配置される下部板と、上側に配置される上部板と、前記下部板および前記上部板を所定の間隔を隔てて略平行に支持する支柱とを備えた杭基礎本体を有しており、前記下部板および前記上部板には、前記各々の打込杭を下方に向けて略放射状に貫通させる複数の杭孔が形成されている。
【0010】
また、本発明における一態様として、前記杭基礎本体は、熱的な絶縁性を有する錐体状の凍上防止用錐体を、その頂点を下方に向けて前記下部板の下面に有するようにしてもよい。
【0011】
さらに、本発明における一態様として、前記凍上防止用錐体は、多角錐体状に形成されているとともに、その各側面に前記杭孔が形成されているようにしてもよい。
【0012】
また、本発明における一態様として、前記杭基礎本体は、前記下部板よりも外側に大きく形成された沈降抑制板を前記下部板に有するようにしてもよい。
【0013】
さらに、本発明における一態様として、前記杭基礎本体は、前記上部板と前記下部板との間における各々の外縁部を複数本の前記支柱により支持しているようにしてもよい。
【0014】
また、本発明における一態様として、前記杭基礎本体は、前記支柱を直方体状に形成して中央に配置しているとともに、前記下部板および前記上部板を、それぞれ4枚の同型山形鋼を使って前記直方体状支柱の4つの上部側面および4つの下部側面をそれぞれ囲むように固定して略矩形枠状に形成してなるようにしてもよい。
【0015】
また、本発明に係る杭基礎設置工法は、前記杭基礎本体に対し、前記複数の打込杭を前記上部板から前記下部板にかけて前記各杭孔に貫通させて略放射状に地盤へ打ち込むことにより、前記杭基礎を設置するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構造部材の製造から搬送、および現場での施工作業が簡単かつ安価であり、大量生産および各種のコスト削減が可能となるとともに、凍害対策や凍上対策も効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る杭基礎の第一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本第一実施形態における杭基礎本体を示す拡大斜視図である。
【
図3】本第一実施形態における凍上防止用錐体を示す拡大斜視図である。
【
図4】本第一実施形態の杭基礎を地盤に設置した状態を示す側面図である。
【
図5】本発明に係る杭基礎の第二実施形態を示す斜視図である。
【
図6】本第二実施形態における杭基礎本体を示す拡大斜視図である。
【
図7】本第二実施形態における杭基礎本体を示す組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る杭基礎および杭基礎設置工法の第一実施形態について図面を用いて説明する。本第一実施形態における杭基礎1aは、
図1から
図4に示すように、主として、地表面Fに設置される杭基礎本体2aと、この杭基礎本体2aを支持するために地盤に打ち込まれる複数の打込杭3とによって構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0019】
杭基礎本体2aは、軟弱地盤等の地表面Fにおいて支持されて上部に構造物Oを載設可能とするためのものである。本第一実施形態では、
図1から
図4に示すように、下側に配置される下部板21aと、上側に配置される上部板22aと、前記下部板21aおよび前記上部板22aを所定の間隔を隔てて略平行に支持する複数の支柱23aと、前記下部板21aの下面に設けられる凍上防止用錐体4と、前記下部板21aよりも大きく形成された沈降抑制板5とを有している。
【0020】
下部板21aは、杭基礎本体2aの下側に配置されるとともに矩形状に形成されており、本第一実施形態では、略正方形状の板材により形成されている。前記下部板21aには、複数の打込杭3を略放射状に挿通するために複数の杭孔24が楕円状に形成されている。
【0021】
上部板22aは、杭基礎本体2aの上側であって前記下部板21aに対して略平行に配置されるとともに矩形状に形成されており、本第一実施形態では、前記下部板21aと同様に、略正方形状の板材により形成されている。また、前記上部板22aには、複数の打込杭3を略放射状に挿通するために複数の杭孔24が楕円状に形成されている。そして、前記下部板21aの杭孔24と前記上部板22aの杭孔24は、垂直方向の位置をずらすことによって、打込杭3の打込角度を調整し、各打込杭3を放射状に貫通させるようになっている。なお、下部板21aと上部板22aとは共通する部品を適用することができるため、杭基礎本体2aを構成する部品の種類を少なくすることにより生産コストの削減を図ることができる。また、本第一実施形態では、前記上部板22aの上部中央位置に載設する構造物Oを固定するためのボルトが取り付けられている。
【0022】
なお、下部板21aおよび上部板22aの形状は、矩形状に限定されるものではなく、三角形状や五角形以上の多角形状、円形状等から適宜選択してよい。また、下部板21aおよび上部板22aに用いられる素材は、特に限定されるものではなく、溶融亜鉛メッキ鋼材、ステンレス鋼材、強化プラスチック材等の構造物Oを支持可能な剛性を有するとともに、長期間において外部にさらされることになるため酸化や紫外線等に対する適度な耐腐食性を有する素材から適宜選択されることが望ましい。
【0023】
支柱23aは、下部板21aおよび上部板22aを所定の間隔を隔てて略平行に支持するものである。本第一実施形態における支柱23aは、
図1および
図2に示すように、4本の略円柱状の棒材で構成されており、前記下部板21aおよび前記上部板22aの外縁部である各々の四隅にボルトで締結されている。
【0024】
なお、支柱23aの形状は、略円柱状のものに限定されるのではなく、円筒状、角柱状、角筒状等から適宜選択されるものである。また、支柱23aに用いられる素材は、下部板21a等と同様に、溶融亜鉛メッキ鋼材、ステンレス鋼材等の剛性および耐腐食性を有する素材から適宜選択されるものである。
【0025】
次に、凍上防止用錐体4について説明する。凍上防止用錐体4は、熱的に絶縁性を有する素材によって構成されており、
図3および
図4に示すように、地表面Fと下部板21aとの間に設けることで外気から伝わる冷気を下部板21aを介して地表面Fおよび地中に伝わらないようにするものである。熱的に絶縁性を有する素材としては、プラスチックや合成ゴム等の化学合成樹脂、天然ゴム、セラミックス、FRP等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、凍上防止用錐体4の形状は特に限定されるものではないが、本第一実施形態では、錐体状に形成されているとともに、その頂点を下方に向けて下部板の下面に設けられている。これは、
図4に示すように、凍上防止用錐体4の頂点を地表面Fに差し込むように設置することにより、地表面Fに多少の凹凸があっても地表面Fとの設置面を大きくして安定的に設置できるようにしたものである。よって、設置場所を整地する手間が省けるという利点を有する。
【0026】
また、本第一実施形態における凍上防止用錐体4は、
図3および
図4に示すように、プラスチック材料によって略四角錐体に形成されており、後述する沈降抑制板5を介して、下部板21aの下面に接着やボルト止めなどによって固定されている。また、この凍上防止用錐体4の各側面には、打込杭3を挿通させるために下部板21aに設けられた杭孔24と連通するように4つの杭孔24がそれぞれ設けられている。
【0027】
なお、凍上防止用錐体4は、略四角錐体状の形状に限定されるものではなく、例えば、三角錐体状、五角以上の多角錐体状および円錐状等に形成されていてもよい。また、本第一実施形態における凍上防止用錐体4は、下部板21aとは別体に形成されているが、下部板21aと一体的に形成されていてもよい。
【0028】
沈降抑制板5は、下部板21aよりも外側に大きく拡幅された板材であって、下部板21aに設けられることにより、地表面Fとの設置面積を増大して浮体として機能し、杭基礎1aの沈降を抑制する作用効果を高めるためのものである。沈降抑制板5の大きさは、大きい程、沈降抑制効果が高まるが、地盤の強度の程度や沈降抑制板5の強度、コスト等を勘案して決められる。本第一実施形態における沈降抑制板5は、
図4に示すように、下部板21aと凍上防止用錐体4との間に狭持されている。
【0029】
なお、本第一実施形態における沈降抑制板5は、下部板21aや凍上防止用錐体4とは別体に形成されているが、これに限定されるものではなく、下部板21aや凍上防止用錐体4またはその両方に対して、一体的に形成されていてもよい。
【0030】
次に、打込杭3について説明する。打込杭3は、円柱状、円筒状、角柱状、角筒状等であって所定長さを有する長尺状の棒材からなり、杭基礎本体2aに設けられた杭孔24に挿通されて地盤に打ち込まれることにより、前記杭基礎本体2aを地表面Fに支持するものである。本第一実施形態における複数の打込杭3は、
図1および
図2に示すように、4本の打込杭3によって構成されている。
【0031】
なお、この打込杭3の形状、長さおよび本数等は、本第一実施形態で示す4本の円筒状のものに限定されるものではなく、杭基礎本体2aの形状や大きさ、載設する構造物Oの形状や重量、および設置される地盤の軟弱の程度や強度等に応じて適宜選択されるものである。
【0032】
次に、本第一実施形態の杭基礎1aにおける各構成の作用について、本第一実施形態における杭基礎設置方法とともに説明する。
【0033】
まず、本第一実施形態における杭基礎本体2aは、工場で組み立てても良いが、ボルトやナットにより容易に組み立てられるため、各構成部材を杭基礎工事の現場に搬送し、その現場にて組み立てることも可能である。各構成部材は搬送スペースも小さく、管理もし易い。よって、製造コストや搬送コスト、管理コストを低減することができる。
【0034】
次に、組み立てられた杭基礎本体2aは、
図4に示すように、凍上防止用錐体4を下方に向けた状態で地表面Fに置かれる。このとき、凍上防止用錐体4の頂点を地表面Fに対して差し込むように設置することにより、地表面Fに多少の凹凸が存在していても地表面Fとの設置面積を大きくして安定的に設置することができる。よって、地表面Fを平面状に整地する手間を省くことができ、施工期間の短縮とコスト低減につながる。
【0035】
次に、打込杭3を上部板22aから下部板21a、凍上防止用錐体4にかけて各杭孔24に挿入し、前記打込杭3を略放射状に地盤へ打ち込む。地盤が軟弱地盤の場合には、その下にある固い地盤まで打ち込むことが望ましいが、十分な強度の地盤まで打込杭3を打ち込めない場合であっても沈降抑制板5が杭基礎1aの沈降や傾きを抑制する。具体的には、沈降抑制板5は、地表面Fおよび地中との設置面積が広いため沈降への抵抗となるとともに、液状に近い軟弱地盤に対しては大きな浮力を生じることなる。よって、沈降抑制板5は、その沈降に対する抵抗力および浮力によって杭基礎1a全体およびその上に載設する構造物Oの沈降を抑制することができる。
【0036】
また、沈降抑制板5による沈降抑制力や浮力は、適宜、沈降抑制板5の大きさを変更することによって調整することが可能である。従って、構造物Oを支持する箇所に応じた重量バランスや構造物にかかる風圧等により複数の杭基礎1aにかかる負荷にバラツキがある場合、さらには設置場所によって地盤の軟弱程度が異なる場合、適宜、沈降抑制板5の大きさを調整して沈降量や沈降速度を制御し、載設する構造物Oの傾きを抑制することができる。
【0037】
また、凍上防止用錐体4は、熱的な絶縁性材料によって構成されているため、外気の熱を土中に伝えにくくし、北海道等の寒冷地における冬期間の凍上の影響を抑制することができる。
【0038】
また、本第一実施形態における杭基礎本体2aは、耐腐食性を有する素材によって形成されているため、凍害の発生や錆による悪影響を回避できる。
【0039】
さらに、本第一実施形態の杭基礎1aは、設置後においても打込杭3を地盤から引き抜くことで杭基礎本体2aを移動させたり、再利用することができる。また、凍上防止用錐体4における杭孔24は、打込杭3が各側面を貫通するように形成されており、前記打込杭3を引き抜く際に、前記打込杭3が凍上防止用錐体4の各側面に引っかからず、容易に引き抜けるようになっている。
【0040】
以上のような本第一実施形態における杭基礎1aおよび杭基礎設置方法によれば、以下のような効果を得ることがでる。
1.部品数が少なく、高価な金型を必要としないため、製造が容易であるとともに製造コストを削減することができる。
2.杭基礎本体2aを設置現場で組み立てることも可能であるため、輸送スペースを小さくでき、輸送コストや設置コストを削減することができる。
3.杭基礎1aを寒冷地に設置する場合に問題となる凍害や凍上のおそれを抑制し、長期間にわたって安定的に使用することができる。
4.軟弱地盤や整地していない土地においても杭基礎1aを容易に設置することができて太陽光発電システム等の構造物Oを設置することができる。
5.構造物Oの重量による沈降を効果的に抑制することができる。
6.設置後の打込杭3の引き抜き作業が簡単であり、杭基礎1aの交換や再利用を容易に行うことができる。
【0041】
次に、本発明に係る杭基礎の第二実施形態について図面を用いて説明する。なお、本第二実施形態の杭基礎1bのうち、上述した第一実施形態の構成と同等または相当する構成については、同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0042】
本第二実施形態の杭基礎1bは、
図5から
図7に示すように、地表面Fに設置される杭基礎本体2bと、この杭基礎本体2bを支持するために地盤に打ち込まれる複数の打込杭3とによって構成されている。また、本第二実施形態における杭基礎本体2bは、下側に配置される下部板21bと、上側に配置される上部板22bと、中央に配置されて前記下部板21bおよび前記上部板22bを所定の間隔を隔てて略平行に支持する支柱23bと、前記下部板21bの下面に設けられる凍上防止用錐体4とを有している。
【0043】
支柱23bは、
図5から
図7に示すように、直方体状に形成されており、杭基礎本体2bの略中央に配置されている。本第二実施形態における支柱23bは、軽量かつ剛性を高めるために角管によって形成されている。また、支柱23bは、溶融亜鉛メッキ加工またはステンレス加工等が施されており、耐腐食性が高められている。
【0044】
なお、図示しないが、直方体状の支柱23bにおいて強度が不足している場合には、角管内に筋交い状の板材や棒材による補強を施したり、支柱23bを角柱によって形成してもよい。
【0045】
次に、本第二実施形態における下部板21bおよび上部板22bは、4枚の同型山形鋼25を枠状に組み合わせて構成されている。つまり、各山形鋼25は、直方体状支柱23bの4つの上部側面および4つの下部側面を囲むように略矩形枠状に配置されており、
図7に示すように、ボルト・ナット等によって固定されている。
【0046】
また、各山形鋼25には、それぞれ1本ずつの打込杭3を挿通するための杭孔24が1つずつ形成されている。さらに、下部板21bを構成する4つの山形鋼25と、上部板22bを構成する4つの山形鋼25は、
図5から
図7に示すように、上下対称となるように設けられており、下部板21bおよび上部板22bの杭孔24が垂直方向にずれて配置されて、各打込杭3を略放射状に貫通させている。
【0047】
また、本第二実施形態における上部板22bの上部には、複数のボルトが設けられた載置プレート26が固定されており、杭基礎本体2bの上部に構造物Oが連結されるようになっている。
【0048】
以上のような本第二実施形態における杭基礎1bによれば、上述した第一実施形態における杭基礎1aの有する効果に加えて、次の効果を得ることができる。まず、下部板21bおよび上部板22bは、同型山形鋼25を組み合わせることにより容易に形成することが可能である。また、本第二実施形態における支柱23bは、杭基礎本体2bの中央に配置されることで、支柱23b自体を太く構成することが可能であり強度を高めるのに有利である。さらに、部品の種類も少なく、組み立ても容易であるため製造コストも安く抑えることができる。
【0049】
なお、本発明に係る杭基礎は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0050】
例えば、図示しないが、支柱の長さを調整可能な構成とすることにより、打込杭3の傾斜角度を調整できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1a,1b 杭基礎
2a,2b 杭基礎本体
3 打込杭
4 凍上防止用錐体
5 沈降抑制板
21a,21b 下部板
22a,22b 上部板
23a,23b 支柱
24 杭孔
25 山形鋼
26 載置プレート
O 構造物
F 地表面