特許第6239519号(P6239519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239519脱硫装置およびそこで発生した凝縮水の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239519
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】脱硫装置およびそこで発生した凝縮水の使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   B01D53/50 200
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-535477(P2014-535477)
(86)(22)【出願日】2013年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2013072497
(87)【国際公開番号】WO2014041986
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2015年2月2日
【審判番号】不服2016-14703(P2016-14703/J1)
【審判請求日】2016年9月30日
(31)【優先権主張番号】US13/611,396
(32)【優先日】2012年9月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 基文
(72)【発明者】
【氏名】杉田 覚
(72)【発明者】
【氏名】辻内 達也
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 大橋 賢一
【審判官】 後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−952(JP,A)
【文献】 特開平6−63353(JP,A)
【文献】 特開平6−26310(JP,A)
【文献】 特開2006−218415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硫装置で発生する凝縮水の使用方法であって、
硫黄酸化物を含有する処理対象ガスと脱硫吸収液を接触させて、処理対象ガスから硫黄酸化物を吸収、除去するステップと、
硫黄酸化物を除去した脱硫ガスに同伴する脱硫吸収液を、ミストエリミネータで除去するステップと、
前記ミストエリミネータで脱硫ガスに同伴する脱硫吸収液を除去した脱硫ガスを冷却し、脱硫ガスから凝縮水を得るステップと、
前記凝縮水で前記脱硫装置を洗浄するステップと
を含み、
前記脱硫装置の洗浄ステップが、前記ミストエリミネータを前記凝縮水で洗浄することを含むとともに、前記処理対象ガスを前記脱硫装置に導入するための入口であって、前記処理対象ガスが通過している入口を、前記凝縮水で洗浄することを更に含む方法。
【請求項2】
前記凝縮水を、前記脱硫吸収液の補給水として再利用するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凝縮水を、前記脱硫ガスの冷却ステップで前記脱硫ガスを冷却する冷却液として再利用するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫装置およびこの脱硫装置で発生した凝縮水の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化現象の原因の一つとして、COによる温室効果が指摘されており、そのため、COを大気へ放出することを防ぐ又は抑える技術について多くの研究、開発が行われている。COの発生源は主に化石燃料の燃焼によるものである。よって、化石燃料の燃焼排ガスは、ガス中からCOを減少または除去した後、大気へ排出することが望まれる。
【0003】
特開2008−126154号公報には、化石燃料の燃焼排ガスを、先ず、脱硫吸収液と接触させてガス中の硫黄酸化物を吸収、除去した後、この脱硫ガスを塩基性アミン化合物などのCO吸収液と接触させてガス中のCOを吸収、除去し、このCOを吸収した吸収液から、COを分離、回収するとともに、吸収液を再生する、脱硫脱炭酸方法が記載されている。この公報には、脱硫ガスを、CO吸収液と接触させる前に冷却しておくことが記載されている。また、この脱硫ガスの冷却の際に発生する凝縮水の一部を、脱硫吸収液に添加することが記載されている。
【発明の概要】
【0004】

このような構成の脱硫装置では、脱硫ガスの冷却の際に発生する凝縮水は、その一部が再利用されているものの、大部分が系外に排出されることから、排水量が非常に多いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、脱硫ガスの冷却の際に発生する凝縮水を有効に利用し、系外に排出される排水量を大幅に抑えることができる脱硫装置およびそこで発生した凝縮水の使用方法を提供することである。
【0006】
本発明は、その一態様として、脱硫装置で発生する凝縮水の使用方法であって、硫黄酸化物を含有する処理対象ガスと脱硫吸収液を接触させて、処理対象ガスから硫黄酸化物を吸収、除去するステップと、硫黄酸化物を除去した脱硫ガスを冷却し、脱硫ガスから凝縮水を得るステップと、前記凝縮水で前記脱硫装置を洗浄するステップとを含む。
【0007】
前記脱硫装置の洗浄ステップは、前記処理対象ガスを前記脱硫装置に導入するための入口を前記凝縮水で洗浄することを含んでもよい。前記脱硫ガスの冷却ステップの前に、ミストエリミネータで、前記脱硫ガスから同伴する脱硫吸収液を除去するステップを更に含んでもよい。この場合、前記脱硫装置の洗浄ステップは、前記ミストエリミネータを凝縮水で洗浄することを含んでもよい。前記脱硫装置の洗浄ステップは、前記ガス入口と前記ミストエリミネータとの両方を前記凝縮水で洗浄することを更に含んでもよい。
【0008】
本発明の方法は、前記凝縮水を、前記脱硫吸収液の補給水として再利用するステップを更に含んでもよい。また、前記凝縮水を、前記脱硫ガスの冷却ステップで前記脱硫ガスを冷却する冷却液として再利用するステップを更に含んでもよい。
【0009】
本発明は、別の態様として、脱硫装置であって、硫黄酸化物を含有する処理対象ガスと脱硫吸収液を接触させて、処理対象ガスから硫黄酸化物を吸収、除去する脱硫部と、前記脱硫部で硫黄酸化物を除去した脱硫ガスを冷却し、脱硫ガスから凝縮水を得る過冷却部と、前記凝縮水で前記脱硫装置を洗浄するために、前記過冷却部から前記凝縮水を洗浄箇所に供給するための凝縮水ラインとを備える。
【0010】
前記洗浄箇所は、前記処理対象ガスを前記脱硫装置に導入するためのガス入口であってもよい。前記脱硫部と前記過冷却部との間に、前記脱硫ガスから同伴する脱硫吸収液を除去するためのミストエリミネータを更に備えてもよい。この場合、前記洗浄箇所は、前記ミストエリミネータであってもよい。前記洗浄箇所は、前記ガス入口と前記ミストエリミネータの両方であってもよい。
【0011】
本発明の装置は、前記凝縮水を補給水として前記脱硫吸収液に添加するために、前記過冷却部から前記凝縮水を供給する補給水ラインを更に備えてもよい。また、前記過冷却部で得た前記凝縮水を、前記過冷却部で前記脱硫ガスを冷却する冷却液として再利用するために前記凝縮水を循環供給するラインを更に備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る脱硫装置を含むCO回収システムの一実施の形態を概略的に示す模式図である。
図2図2は、図1に示す脱硫装置を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態のCO回収システムは、化石燃料の燃焼排ガスなどの硫黄酸化物や二酸化炭素を含有する処理対象ガスに対し、ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫塔10と、この脱硫塔で硫黄酸化物が除去された脱硫ガスから、CO吸収液を用いてCOを除去するCO吸収塔20と、COを吸収したCO吸収液(リッチ吸収液という)からCOを脱離してCO吸収液を再生する(リーン吸収液という)再生塔30とを主に備える。
【0015】
脱硫塔10は、塔の中央部に設けたチムニートレイ16を境に、塔の下部に、処理対象ガス中の硫黄酸化物を高度に除去する脱硫部11を備え、塔の上部に、この脱硫部を通過した脱硫ガスを冷却する脱硫ガス過冷却部12を備える。なお、この脱硫塔は、高度脱硫冷却塔とも呼ばれる。この脱硫塔10のより詳細な構成について、図2に示す。
【0016】
図2に示すように、脱硫塔10は、塔底部に位置し、脱硫吸収液を貯留するための吸収液槽14と、脱硫部11とチムニートレイ16との間に位置し、通過するガスに同伴する液滴を除去する第1のミストエリミネータ15と、過冷却部12の更に塔頂側に位置し、通過するガスに同伴する液滴を除去する第2のミストエリミネータ18とを更に備える。第1のミストエリミネータ15は樹脂、もしくは金属の折れ板構造を有する。第2のミストエリミネータ18は、金属線または樹脂線が三次元的に網状に織られた構造物である。
【0017】
さらに、脱硫塔10は、塔内に処理対象ガスを導入するために、脱硫部11の下側に設けられたガス導入口19と、吸収液槽14内の脱硫吸収液を脱硫部11に供給するための吸収液供給ライン61と、チムニートレイ16に溜まった冷却液および凝縮水を過冷却部12に循環供給するために、過冷却部12の上下側をつなぐ冷却液循環ライン51と、この冷却液循環ラインによって供給される冷却液を過冷却部12に噴霧する複数の冷却液ノズル17と、脱硫部11および過冷却部12を通過した脱硫ガスを塔外に排出するために、塔頂部に設けられたガス排出ライン13とを備える。
【0018】
吸収液供給ライン61には、脱硫吸収液を圧送するためのポンプ62を設ける。また、この吸収液供給ライン61には、ライン内の脱硫吸収液の一部を空気と混合し、吸収液槽14内の脱硫吸収液に吹き込むための吹き込みノズル63を設ける。
【0019】
脱硫部11で使用される脱硫吸収液としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウムなどのうちの1つの化合物または2つ以上の化合物の混合物を含むものが好ましい。脱硫吸収液における当該化合物の濃度は、例えば、0.1〜30重量%が好ましい。
【0020】
冷却液循環ライン51には、冷却液を流すためのポンプ52と、冷却剤との熱交換によって冷却液を冷却する冷却器53とを設ける。なお、冷却液循環ライン51には、冷却器53を迂回して冷却液をチムニートレイ16から冷却液ノズル17へ流すためのバイパスライン54を設け、このバイパスラインには、バイパスラインを流れる冷却液の流量を調節するためのバルブ55を設ける。
【0021】
さらに、脱硫塔10は、チムニートレイ16に溜まった冷却液を、脱硫塔10内の洗浄液として再利用するための凝縮水再利用ライン56を備える。この凝縮水再利用ライン56は、図2に示すように、冷却液循環ライン51から、洗浄箇所である処理対象ガスのガス導入口19に冷却液を供給する第1の凝縮水再利用ライン56Aと、洗浄箇所である第1のミストエリミネータ15に冷却液を供給する第2の凝縮水再利用ライン56Bとに分岐する。また、脱硫塔10は、チムニートレイ16に溜まった冷却液を、塔底部の吸収液槽14内に補給水として再利用するための補給水ライン57を備える。さらに、凝縮水再利用ライン56には、凝縮水を系外へ排出するための凝縮水排水ライン58を設ける。
【0022】
CO吸収塔20は、塔の下部にCO吸収部21を備え、塔の上部に水洗部22を備える。洗浄部は複数段あってもよい。また、CO吸収塔20は、CO吸収部21および水洗部22の間には、チムニートレイを備えるとともに、各水洗部22の塔頂側には、通過するガスに同伴する液滴を除去するミストエリミネータを備える。CO吸収部21の下側には、塔内に脱硫ガスを導入するためのガス導入排出ライン13が接続する。
【0023】
さらに、CO吸収塔20は、CO吸収液をCO吸収部21に供給するために、CO吸収部21の上側に設けられたリーン吸収液ライン40と、COを吸収したリッチ吸収液を排出するために、塔底部に設けられたリッチ吸収液ライン25とを備える。さらに、CO吸収塔20は、各チムニートレイに溜まった洗浄水を各水洗部22に循環供給するために、各水洗部22の上下側をつなぐ洗浄水循環ライン2527と、CO吸収部21および水洗部22を通過したガスを塔外に排出するために、塔頂部に設けられたガス排出ライン24とを備える。洗浄水循環ライン2527には、循環供給する洗浄水を冷却する冷却器26を設ける。
【0024】
CO吸収液としては、特に限定されないが、塩基性アミン化合物を主成分とするCO吸収液が好ましい。塩基性アミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチン−1−プロパノールなどのアルコール性水酸基含有1級アミン類、ジエタノールアミン、2−メチルアミノエタノール、2−エチルアミノエタノールなどのアルコール性水酸基含有2級アミン類、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノールなどのアルコール性水酸基含有3級アミン類、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリエチレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、ピロリジン類などの環状アミン類、キシリレンジアミンなどのポリアミン類、メチルアミリカルポン酸などのアミノ酸類がある。CO吸収液は、これらの1つの化合物または複数の化合物を含有してもよい。塩基性アミン化合物の濃度は10〜70重量%としてもよい。CO吸収液は、二酸化炭素吸収促進剤や、腐食防止剤を含有してもよく、また、その他の媒体として、メタノール、ポリエチレングリコール、スルフォラン等を含有してもよい。
【0025】
再生塔30は、塔の中央部から下部にかけてCO脱離部31を備え、このCO脱離部の上方に水洗部32を備える。再生塔30には、CO吸収塔20でCOを吸収したリッチ吸収液を再生塔30に導入するためのリッチ吸収液ライン25が、CO脱離部31と水洗部32との間に接続している。また、再生塔30には、再生処理されたリーン吸収液をCO吸収塔20に供給するためのリーン吸収液ライン40が、塔底部に設けられている。そして、リッチ吸収液ライン25とリーン吸収液ライン40との間で熱交換を行う熱交換器41が設けられている。さらに、リーン吸収液ライン40には、熱交換器41とCO吸収塔20との間にリーン吸収液の熱を更に回収するための熱交換器42が設けられている。
【0026】
再生塔30は、チムニートレイの上方から吸収液の一部を抜き出して塔底部に供給する吸収液再生ライン38を備え、この吸収液再生ライン38には吸収液を加熱するリボイラ39を備える。また、再生塔30は、リッチ吸収液から脱離したCOガスを塔頂部から排出するCOガス排出ライン33を備え、このCOガス排出ライン33には、COガスに同伴する水蒸気を凝縮するコンデンサ34と、これにより生じた凝縮水をガスから分離する分離ドラム35とを備える。コンデンサ34では、例えば、冷却水を用いてガスを冷却してもよい。分離ドラム35には、分離した凝縮水を再生塔30の水洗部32の洗浄水として供給するための凝縮水返送ライン37が設けられている。
【0027】
分離ドラム35には、分離したCOガスをCOガス圧縮系(図示省略)へ供給するためのCOガスライン36を設け、このCOガスライン36には、COガスの流量を調整するバルブを設ける。COガス圧縮系は、図示省略したが、複数のコンプレッサによってCOガスを所定の圧力まで圧縮する装置である。
【0028】
このような構成によれば、先ず、硫黄酸化物および二酸化炭素を含有する処理対象ガスを、ガス導入口19を介して脱硫塔10に導入する。塔内の脱硫部11では、このガスを脱硫吸収液に気液接触させてガス中の硫黄酸化物を吸収して除去することで、硫黄酸化物の濃度を5ppm以下、好ましくは1ppm以下になるように高度脱硫処理することができる。ガス中の硫黄酸化物濃度が5ppmを超えると、CO吸収塔20で使用するCO吸収液に硫黄酸化物が蓄積し、CO吸収液をリクレーミングする頻度が増加するという問題があるためである。
【0029】
なお、脱硫部11には、吸収液供給ライン61を介して吸収液槽14内の脱硫吸収液を供給し、処理対象ガスに対して噴射する。また、吸収液槽14内の脱硫吸収液には、吹き込みノズル63を介して空気を吹き込み、脱硫吸収液に吸収された硫黄酸化物を、脱硫吸収液と反応させ、更に酸化させて石膏などの副生物を生成させる。
【0030】
脱硫ガスは、第1のミストエリミネータ15を通過することで、同伴する液滴(主に、脱硫吸収液)が除去された後、チムニートレイ16を超えて、塔上部の過冷却部12に流れる。過冷却部12では、複数の冷却液ノズル17から冷却液が噴霧され、脱硫ガスの温度を50℃以下、好ましくは45℃以下、より好ましくは30〜45℃の範囲に冷却する。ガス温度が50℃を超えると、その後のCO吸収塔20にて、ガスに同伴するCO吸収液の主成分である塩基性アミン化合物の量が増加し、塩基性アミン化合物が無駄に消費されるという問題があるからである。
【0031】
冷却された脱硫ガスは、第2のミストエリミネータ18で同伴する液滴(主に、冷却液)が除去された後、塔頂部のガス排出ライン13からCO吸収塔20へと送る。このように、CO吸収塔20の処理対象ガスの前流側に高度脱硫冷却装置を設置することで、CO吸収塔20にて容易に且つ低コストでガス中のCOを除去、回収することができる。
【0032】

一方、過冷却部12では、脱硫ガス中の水分が冷却によって凝縮することから、噴霧された冷却液とともに凝縮水がチムニートレイ16に溜まる。この冷却液および凝縮水は、過冷却部12で再利用するために、冷却液循環ライン51を介して冷却器53で冷却した後、冷却液として冷却液ノズル17から噴霧する。なお、過冷却部12で所定の温度に脱硫ガスを冷却するために、バイパスライン54に流れる冷却液の流量と、冷却器53に流れる冷却液の流量との比を、バルブ55を介して調節、制御することができる。
【0033】

このように循環利用される一定の量の冷却液に加え、チムニートレイ16では、脱硫ガスから多量の凝縮水が回収される。よって、この凝縮水を、凝縮水再利用ライン56を介して脱硫塔10の洗浄液として再利用したり、補給水ライン57を介して塔底部の吸収液槽14内に補給水として再利用したりすることができる。
【0034】

凝縮水の再利用として、先ず、第1の凝縮水再利用ライン56Aを介してガス導入口19に供給し、ガス導入口19の洗浄水として使用することができる。ガス導入口19は、硫黄酸化物を含有する処理対象ガスが通過するため、そのダクト部分等に、反応によって生成する石膏などが付着する。よって、このような付着物を洗浄するため、チムニートレイ16で回収した凝縮水を再利用する。ガス導入口19の洗浄は、脱硫塔10の運転中、連続的に行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
【0035】

凝縮水の再利用として、次に、第2の凝縮水再利用ライン56Bを介して第1のミストエリミネータ15に供給し、第1のミストエリミネータ15の洗浄水として使用することができる。第1のミストエリミネータ15は、脱硫吸収液を同伴する脱硫ガスが通過することから、その折れ板構造部分に石膏などが付着する。よって、このような付着物を洗浄するため、チムニートレイ16で回収した凝縮水を再利用する。第1のミストエリミネータ15の洗浄は、脱硫塔10の運転中、連続的に行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
【0036】

凝縮水の再利用として、さらに、補給水ライン57を介して塔底の吸収液槽14に供給し、脱硫部11の脱硫吸収液に添加する補給水として使用することができる。脱硫部11では、処理対象ガスに対して噴射された脱硫吸収液が塔底の吸収液槽14へ落下することから、脱硫部11内で脱硫吸収液が循環して再利用されるが、高温の処理対象ガスと接触することで、一部は蒸発して脱硫ガスとともに脱硫部11から排出される。よって、吸収液槽14の脱硫吸収液には補給水を加える必要がある。補給水の添加は、脱硫塔10の運転中、連続的に行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
【0037】

過剰の凝縮水は、凝縮水排水ライン58を介して系外へ排出する。排出した凝縮水は、別途、再利用することもできるし、必要な処理をして廃棄することもできる。
【0038】
次に、ガス排出ライン13を介して脱硫塔10からCO吸収塔20に導入された脱硫ガスは、CO吸収部21においてCO吸収液と気液接触させ、脱硫ガス中のCOをCO吸収液に吸収し、除去する。COが除去されたガスは、チムニートレイを超えて第一の水洗部22へ流れ、洗浄水で洗浄する。そして、洗浄部22で洗浄された脱炭酸ガスは、ミストエリミネータを通過して、塔頂部のガス排出ライン24から排出する。水洗部22で使用された洗浄水は、各チムニートレイに溜まり、CO吸収部21へは流下しない。溜まった洗浄水は、洗浄水液循環ライン27を介して水洗部22で洗浄水として循環利用する。
【0039】
CO吸収塔20でCOを吸収したリッチ吸収液は、塔底からリッチ吸収液ライン25を介して排出し、熱交換器41で加熱した後、再生塔30へ送る。再生塔30では、CO脱離部31にこのリッチ吸収液を散布する。リッチ吸収液は、CO脱離部31内を加熱されながら流下する。そして、大部分のCOを放出して塔底付近のチムニートレイまで流下する。チムニートレイに溜まった吸収液は、吸収液再生ライン38を介してリボイラ39でスチームによって加熱し、残ったCOを放出して吸収液を再生し、再生塔30の塔底に戻す。再生したリーン吸収液は、塔底のリーン吸収液ライン40を介して、熱交換器41でリッチ吸収液を加熱し、熱交換器42で更に熱を回収した後、CO吸収塔20へ供給する。
【0040】
リッチ吸収液から脱離したCOガスは、チムニートレイおよびCO脱離部31を通過して水洗部32へと上昇する。水洗部32では、凝縮水返送ライン37から洗浄水を散布し、COガスに同伴するCO吸収液を除去する。水洗部32で洗浄したCOガスは、再生塔の塔頂のCOガス排出ライン33から排出する。再生塔30から排出されたCOガスは、同伴する水蒸気をコンデンサ34で凝縮し、さらに分離ドラム35でこの凝縮水を分離する。凝縮水を除いたCOガスは、COガスライン36を介してCOガス圧縮系(図示省略)へ供給し、所定の圧力まで圧縮して回収する。
【0041】
なお、本発明は図1の実施の形態に限定されず、例えば、高度脱硫冷却塔である脱硫塔10の前流側に、過冷却部のない脱硫部のみの脱硫塔を設置してもよい。
【実施例】
【0042】
図2に示す高度脱硫冷却塔において、凝縮水の発生量と、その再利用量とを計算した。150MWの脱硫塔の場合、発生する凝縮水は788ton/日であった。一方、ガス入口のダクト洗浄水量は51ton/日、ミストエリミネータの洗浄水量は177ton/日、吸収液の補給水量は216ton/日であった。よって、凝縮水の排水量は344ton/日であり、排水量を大幅に削減することができた。
【0043】
また、図2に示す高度脱硫冷却塔の前流側に、過冷却部のない脱硫部のみの脱硫塔を設置した場合についても、凝縮水の発生量と、その再利用量とを計算した。150MWの高度脱硫冷却塔の場合、その入口ガス温度が80℃の条件で、発生する凝縮水は599ton/日であった。一方、ガス入口のダクト洗浄水量は19ton/日、ミストエリミネータの洗浄水量は177ton/日、吸収液の補給水量は81ton/日であった。よって、凝縮水の排水量は323ton/日であり、排水量を大幅に削減することができた。
【0044】
以上、本発明を好ましい実施の形態を用いて説明してきたが、本発明の範囲を既述した特定の形態に限定することを意図したものでなく、それどころか、添付の特許請求の範囲で規定する本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の変形例、改変例および均等例が行い得ることを意図するものである。
図1
図2