(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周囲部分がガラスを含み、かつ前記第1プリズムアレイが、前記周囲部分の前記第1表面または前記第2表面に位置付けられた、角度フィルタで提供されることを特徴とする請求項1記載のベゼル隠蔽ディスプレイカバー。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】ディスプレイパネルとベゼルとを備えているディスプレイ装置の前面図
【
図1B】ディスプレイ装置のタイル状アレイの前面図
【
図2】ベゼルを隠すためのプリズム領域を含んだディスプレイカバーの前面図
【
図3A】プリズム領域の一部の概略図であって、個々のプリズムを示している図
【
図3B】プリズム角度θをディスプレイ装置での位置の関数として示しているグラフ
【
図4】ベゼル隠蔽ディスプレイカバーで覆われたディスプレイ装置のディスプレイパネルから離れて位置している、観察者を概略的に示した図
【
図5】ベゼル隠蔽ディスプレイカバーでの位置対ディスプレイ装置での位置の関係をプロットした図
【
図6】ベゼル幅Wと間隙G
Aとの比率を、プリズム角度θの関数としてプロットした図
【
図7】プリズムを含んでいるディスプレイカバーの一部を通して見た画像であって、プリズムの位置での局所的な画像の拡大(バンディング)を示している図
【
図8】バンディングを低減するようプリズムアレイのプリズムの長軸に直角に配列された、赤色、緑色、および青色(RGB)画素のアレイの概略図
【
図9】バンディングを低減するよう配列されたRGB画素のアレイの概略図
【
図10】プリズムを含んでいるディスプレイカバーを通して見た画像の一部であって、プリズムのない部分、プリズムがあるが局所的なぼやけを含まない部分、そしてプリズムがあって局所的なぼやけを含んでいる部分を示している図
【
図11】湾曲した前ファセットを備えているプリズムの概略図
【
図12】垂直入射での視野角および10°の視野角に対する、ディスプレイ装置での位置対ベゼル隠蔽ディスプレイカバーでの位置をプロットした図
【
図13】ディスプレイパネルおよびベゼルと、エッジから長さLに亘って分布されたプリズムアレイを含んでいる、ディスプレイカバーとを示している概略図
【
図14】ディスプレイパネルおよびベゼルと
図13のプリズムアレイの1つのプリズムを示している概略図であって、正および負の視野角と間隙G
Aとを説明している図
【
図15】間隙/ベゼル幅の比率を、プリズム角度θの関数として示したグラフ
【
図16】ディスプレイカバーの観察者側に配置されたプリズムアレイの概略図であって、ベゼルを見えるようにさせるプリズム内での内部反射を説明している図
【
図17】ディスプレイカバーの観察者側に配置されたプリズムアレイの概略図であって、観察者が2つの入力ファセットを通して画像を見ることでベゼルが見えるようになるように設定されたプリズムの角度を説明している図
【
図18】不適切な方向の(ベゼルに向かう)観察者の視野の割合をプリズム角度θの関数として示したグラフ
【
図19】内部全反射が生じる視野角をプリズム角度の関数として示したグラフ
【
図20】寄生画像(parasitic image)を生じさせるベゼル隠蔽ディスプレイカバーのプリズムを示した概略図
【
図21】ディスプレイカバーのプリズムアレイのプリズムが同じ角度を有しているときに、どのようにして像点が観察者に二重に見えるかを示した概略図
【
図22A】ディスプレイカバーの観察者側に配置されたプリズムアレイであって、ディスプレイカバーのエッジからプリズムアレイの長さに亘ってプリズム角度速い速度で減少するプリズムアレイを示した概略図
【
図22B】ディスプレイカバーの観察者側に配置されたプリズムアレイであって、ディスプレイカバーのエッジからプリズムアレイの長さに亘ってプリズム角度がゆっくりした速度で減少していくプリズムアレイを示した概略図
【
図23】プリズムアレイが延在しているディスプレイカバーのエッジからの距離の関数として拡大率を示したグラフ
【
図24】所与の拡大率に対し、アレイが延在しているディスプレイカバーのエッジからの距離の関数としてプリズム角度を示したグラフ
【
図25】プリズムを備えているディスプレイカバーおよびディスプレイパネルの概略図であって、ディスプレイカバーとディスプレイパネルとの間にリフレクタが位置付けられている図
【
図26】一方の表面にプリズムアレイを備えている導光板の断面側面図
【
図27】ディスプレイカバーに配置されたプリズムアレイの1つのプリズムの概略図であって、プリズムがディスプレイカバーのディスプレイパネル側に位置付けられている図
【
図28】ディスプレイカバーの観察者側に位置付けられたプリズムと、ディスプレイカバーのディスプレイパネル側に位置付けられたプリズムとに対し、プリズム角度の関数として内部全反射が生じる視野角を示したグラフ
【
図29】ディスプレイカバーのディスプレイパネル側に位置付けられたプリズムアレイの内部全反射を示した概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、実施形態例を示している添付の図面を参照し、例を以下でより十分に説明する。可能な限り、図面を通じて、同じまたは同様の部分の参照に同じ参照番号を使用する。ただし、態様は多くの異なる形で具現化し得、本書に明記される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0015】
テレビのディスプレイパネル、コンピュータモニタ、およびラップトップディスプレイパネルなどのディスプレイ装置の美しさは、これらのディスプレイ装置の周囲に存在しているベゼルのサイズおよび外観に影響される。例えば、ディスプレイパネルの画素を駆動するための電子機器を収容したり、また場合によってはディスプレイ装置用のバックライトを提供したりするために、ディスプレイ装置のベゼルは使用され得る。例えばLCDテレビのディスプレイパネルは、ディスプレイ装置のベゼル領域の範囲内で保持される、複数のバックライト用発光ダイオード(LED)を含み得る。
【0016】
ここ数年の傾向では、ベゼルはますます小さくなる方向に向かっている。現在のベゼル幅は3.0mmから10mm程度である。しかしながら、非常に大型のディスプレイパネルを備えたテレビモデルにおいて、少なくとも2つの縁部で幅2mmであり他の2つの縁部で幅4mmの、幅の小さいベゼル領域が実現された。ただしベゼルが存在していると、それがたとえ小さいものであっても、特にディスプレイ装置をタイル状配列で組み立てて非常に大きい表示画像を形成するとき、依然として気が散る存在になる。このようなタイル状ディスプレイ装置のベゼルは、継ぎ目のない密着した大型画像ではなく、画像「グリッド」という望ましくない外観を与えてしまう。目は、画像を見苦しくするタイル状ディスプレイ装置の黒い分割線の存在に非常に敏感である。
【0017】
本開示の実施形態は、ベゼルの存在が見えないよう、あるいは少なくとも予測可能な視野角の範囲内で観察者が容易にベゼルに気付くことのないよう、ベゼルを隠蔽する、ベゼル隠蔽ディスプレイカバーを含む。このディスプレイカバーは、例えばガラスから形成してもよい。いくつかの実施形態において、このガラスは化学強化ガラスでもよい。
【0018】
ここで
図1Aを参照すると、フラットディスプレイパネルテレビとして構成されたディスプレイ装置10が図示されている。以下の説明は主にテレビに関するものであるが、本書で説明する実施形態は他のディスプレイ装置にも適し得、従ってテレビに限定されるものではないことに留意されたい。ディスプレイ装置10はディスプレイパネル12を含み、ディスプレイパネル12は、その周囲に位置付けられたベゼル14を有している。ベゼル14はベゼル部分14a〜14dを含む。ベゼル部分14a〜14dには、ディスプレイ駆動用電子機器の他、ディスプレイパネル部分12にバックライトを当てるためのエッジ発光ダイオード(LED)などのバックライト用設備を入れることができる。ベゼル部分14a〜14dは、例えば3mmから10mmの間など、特定の幅を有し得る。特に
図1Bに示したように、画像全体を見るためにいくつかのディスプレイ装置を2次元に配列している場合には、ベゼル部分14a〜14dは視聴者にとって気を散らす存在になり得る。
【0019】
図2は、一実施の形態によるベゼル隠蔽ディスプレイカバー16を概略的に描いたものである。図示の実施形態のベゼル隠蔽ディスプレイカバー16は、ディスプレイ装置(例えば、
図1Aに示したようなディスプレイ装置10)に機械的に連結されるように構成されている。ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16は、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16とディスプレイ装置10の表面との間に間隙(例えば、屈折率の低い間隙または空隙)が存在するように、ディスプレイ装置10に取り付けられるべきである。一実施の形態において、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16は、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16の角で透明な支柱(図示なし)でディスプレイ装置10に連結される。
【0020】
ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16は、例えば、ディスプレイカバーの周囲に隣接した4つのプリズム部分18a〜18dを含む、周囲部分17を備えたものでもよい。以下でより詳細に説明するが、プリズム部分18a〜18dは、観察者に対してベゼル部分14a〜14dの後ろに位置するディスプレイパネル12の領域に対して光曲げ(屈折)フィルタとして作用する、アレイに配列された多くのプリズムを含む。ディスプレイカバーと、プリズム部分18a〜18dで提供される光曲げフィルタは、ベゼルの存在が見えないように、あるいは少なくとも予測可能な視野角の範囲内でベゼルが観察者に容易に見えないように、ベゼルを隠すことを可能にする。
【0021】
いくつかの実施形態において、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16は、プリズム部分18a〜18dに境を接している視覚的に透明な中心領域20をさらに含み得る。この中心領域20はプリズムを1つも含んでいないものであり、従って実質的に平坦である。他の実施形態において、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16は、周囲部分17で画成されるフレームのみが提供されるような、中心領域を含まないものである。
【0022】
ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16は、ガラスから作製してもよい。例えばこのガラスは、イオン交換されたガラスなどの化学強化ガラス、酸洗浄ガラス、またはこの両方でもよい。プリズム部分18a〜18dは、例えば3M社で製造されているビキュイティ(Vikuiti)画像方向付けフィルム(IDF II)など、ディスプレイカバーに接着することが可能な市販の光曲げフィルタ材料から作製してもよい。ビキュイティは、多くの考えられる光曲げフィルタの解決策のうちの単なる1つであり、単なる非制限の例として本書で示されることを理解されたい。別の例では、光曲げフィルタを直接ディスプレイカバー16に組み込んでもよい。例えば、プリズムを直接ディスプレイカバー材料に形成してもよい。以下でより詳細に説明するが、特殊な光曲げフィルタを、観察者からベゼルを隠す目的で最適化および開発することができる。ビキュイティの光曲げフィルタを使用したときには、所望の横方向の画像シフトのおよそ2.7倍の間隙が必要となり得ることに留意されたい。
【0023】
別の実施形態においてプリズムは、ディスプレイを包囲している、プラスチックまたはガラスなどの透明材料から作られたフレームの一部でもよい。このフレームを、例えば射出成形によって作り出すことができ、その型自体が、所望の視覚的効果を生み出すために必要なマイクロプリズム構造を含むものでもよい。この実施形態では、中心領域20は空き空間でもよい。
【0024】
ここで
図3Aを参照すると、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16に設けられたプリズム部分18の一部が示されている。プリズム部分18は、三角形状に成形された多くのプリズム22を含んでいる。この図においてプリズム22は、ディスプレイカバー16の外表面に(観察者に面して)位置付けられている。プリズム22は、ベゼル付近の画像をシフトさせるプリズム角度θを含んでいる。このプリズム角度とは、光がプリズムを通るときに主に通過するプリズムの面(ファセット)で挟まれた角度である。
図3Bは、ディスプレイ装置10での位置の関数としてプリズム角度θを示したグラフである。一般にプリズム22の角度θは、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16のエッジで最大であり、かつディスプレイカバーのエッジから離れると0まで減少する(すなわち、プリズムがなくなる)べきである。従って、ディスプレイパネル12で生成された画像のごく一部のみがシフトされる。プリズムアレイの周波数、すなわちプリズムの周期性は、得られる画像のエイリアシングを防ぐよう、ディスプレイパネルの画素の周波数よりも大きいべきである。一般にプリズムのサイズは、ディスプレイパネルの画素よりも小さいべきである。例えば個々のプリズムは、ディスプレイパネルの1画素サイズの1/10ほどの小さいものでもよい。
【0025】
実線曲線24は、プリズム角度θがベゼル隠蔽ディスプレイカバー16のエッジから直線的に減少し、距離Lを超えた中心領域でゼロになる例を示している。点線曲線26は、プリズム角度θが距離Lに亘って非直線的に変化する例を示している。より複雑な点線曲線26のプロファイルは、憂慮すべき画像の不連続を防ぐために考慮され得る。
【0026】
図4は、ディスプレイ装置10のディスプレイパネル12から遠く離れて位置している観察者Oを概略的に示したものであり、ディスプレイパネルと観察者Oとの間にベゼル隠蔽ディスプレイカバー16が位置付けられている。ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16とディスプレイパネル12との間には間隙G
Aが存在している。シミュレーションによって、ディスプレイパネル12から観察者Oに放射された光線を追跡し、ディスプレイパネル12での所与の位置X1に対し、その光線がベゼル隠蔽ディスプレイカバー16にぶつかる位置X2を示す。あるシミュレーションでは、プリズムは観察者Oに面し、またプリズムのプリズム角度はベゼル隠蔽ディスプレイカバー16のちょうどエッジ(すなわちベゼル14の一部の上方)での32°から、ディスプレイカバー16の外側エッジより約10mm離れた位置での0°まで直線的に変化する。シミュレーションでのベゼル隠蔽ディスプレイカバー16の屈折率は1.5であり、間隙G
Aは約15mmであった。
【0027】
図5はシミュレーションの結果のグラフであり、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16のちょうどエッジの位置(X2=0)で観察者Oに見える、ディスプレイ装置10のディスプレイパネル12での位置X1は、ディスプレイスクリーン13のエッジから約4.8mm離れていることを示している。従ってベゼルのサイズ(幅)が4.8mmよりも小さい場合には、ベゼル14は観察者の目に見えないことになる。
【0028】
プリズムで生み出すことができるビーム偏向の量は、プリズム角度θの関数である。
図6に示されているグラフは、屈折率を1.5と想定し、さらに視野角20°でベゼルを本質的に目に見えないままにできる状態を想定して、ベゼル幅Wに対する間隙G
Aの比率をプリズム角度θの関数として示したものである。一例であって限定するものではないが、45°のプリズム角度θを用いると、間隙はベゼルの幅の少なくとも4倍とする必要がある(G
A/Wの比率が4)。
【0029】
本書で説明するベゼル隠蔽ディスプレイカバーを導入すると、観察者の目に見え得るアーチファクトおよび/または歪みが、ディスプレイ装置で表示される画像に生じることがある。次に、生じ得るいくつかの画像アーチファクトの他、最適化することによってこういった画像アーチファクトおよび/または歪みが現れるのを最小限に抑えることができる設計パラメータについて説明する。
【0030】
前述のベゼル隠蔽ディスプレイカバー16の例によってディスプレイ装置10などのディスプレイ装置のベゼル付近に提供される局所的な光曲げフィルタは、局所的な画像の拡大を生じさせ得る。この局所的な拡大の一番の影響は画像の変形を招くことであり、この変形は画像歪み補正アルゴリズムを用いてある程度補償することができる。画像歪み補正アルゴリズムは、ディスプレイパネル12で表示される画像を操作して、拡大が現れるのを最小限に抑えることができる。しかしながら、画像の歪みは視野角γ(例えば、
図12に示されているような)の関数であるため、画像は所与の視角(例えば、ディスプレイを通常の入射角または他の何らかの固定視野角γで見たとき)に対してのみ補償することができる。
【0031】
局所的拡大に関連する別の画像アーチファクトは、個々の画素の画像が極めて拡大されて、有色または黒色の帯が画像に取り込まれることになり得るものである。
図7は、角度が変動するプリズム構造を、画素で構成されたスクリーンの前に置いて用いることで、画像が局所的に拡大された事例を示している。拡大に起因して、画素間の空間による幅広の暗部28が領域30内で結びついて極めて拡大され、目に見えて目立つ黒い線を画像に生じさせる。この効果は「バンディグ」と称される。
【0032】
一例として、同じ色の画素間の空間を最小にすることで、バンディングを低減または排除することができる。
図8は、ディスプレイパネル12の赤色、緑色、および青色の画素(夫々32、34、および36)が、プリズムの長軸38方向に直角に整列している例を示している。別の手法が
図9に示されており、この手法は、画素(例えば、赤色32、緑色34、および青色36の画素)を互いに大角度(例えば、およそ45°)で整列させ、かつ一行おきに色を変えるものを含む。この事例では、有色または黒色の帯の位置が一行おきに変わるため、これらの帯は目に見え難くなる。
【0033】
さらに、個々の画素のサイズを操作して、拡大の影響を最小にすることもできる。対角線55インチ(約1.4m)のディスプレイなど大型ディスプレイでの典型的な1画素サイズは、解像度次第であるが約0.7mmであり、拡大率5で画素が容易に目に見えることを意味する。これは、ディスプレイパネルの画素をより小さくするか、あるいは違った幾何学的形状を有するようにさせることで回避できる。拡大率5では、5分の1の小さい副画素を利用すると、認識されるバンディングが排除されることになる。電子的な観点からは、副画素の各組を同じトランジスタで変わらず駆動できることで、より複雑な電子回路を回避することができる。
【0034】
ベゼル隠蔽ディスプレイカバーは、バンディングを低減または排除するようにさらに変更することができる。例えば、プリズムのファセットに粗さを導入することによって、またはこれらの表面を平坦ではなく若干湾曲させることによって(すなわちプリズムにレンズ要素を加えて)、1画素の画像を若干ぼやけさせることでバンディングを低減または排除することができる。適切な粗さは、例えば複製元と、この複製元のマイクロ複製とを作り出す、ダイヤモンド旋削技術で得ることができる。
図10に示した画像で、部分40はプリズムが湾曲を有していた部分であり(部分的にぼやけたゾーン)、また別の部分42はプリズムが平坦なファセットのみを有していた部分である(ぼやけていないゾーン)。図から分かるように、部分42において画素間の幅広の暗いラインがなくなっている。部分44はプリズムなしで見たものである。
図11は、湾曲した前ファセット46を含むプリズム22の概略図である。
【0035】
観察者がディスプレイ装置10を垂直入射で見ていないとき、ベゼル14は部分的に、あるいは完全に、観察者の目に見える可能性がある。特に、観察者Oがディスプレイ装置10に極めて近い位置にいるとき、観察者は高入射角度でディスプレイカバーの全てのエッジを見ることになり、これにより全てのベゼル部分が目に見えるようになり得、かつ例えばテレビが箱の中にあるような印象が与えられ得る。
【0036】
図12は、ディスプレイ装置10を見ている位置に関するシミュレーションの結果を、
図4に示したものと同じくディスプレイ装置10を垂直入射で見ている状態(曲線A)と、
図6に示したものに類似した入射角10°での状態(曲線B、α=10)について描いたグラフである。グラフに示されているように、曲線AおよびBは互いにシフトしていることを除いて類似している。第1近似において曲線BはAG×sin(α)だけシフトされ、ここでAGは空隙であり、αは視角である。従って、比較的小さい視野角(10°など)で、ベゼルは目に見えるようになり始める。プリズム角度は、より大きい視野角に備えるために非直線的に変化させ得ることに留意されたい(
図3Bの点線曲線26参照)。
【0037】
いくつかの実施形態において、視野角が増加したときのベゼルの可視性は、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16のプリズム部分18a〜18dに拡散テクスチャを加えることによって減少させることができる。ベゼル部分14a〜14dに近いこの領域では、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16に画像のその部分が生成されるため、画像は部分的にぼやけ得る。しかしながら観察者の注意は通常画像の中心付近に固定され、周囲の情報は重要なものではないため、大型テレビに10mmのぼやけたエリアがあっても視覚的に著しく気を散らすことはないであろう。いくつかの例においてプリズム部分18a〜18dは、視野角を広げるために、ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16の各辺にプリズムを有し得る。
【0038】
ここで
図13を参照し、観察者Oがディスプレイパネル12の法線に対し視野角γでディスプレイ装置10(テレビなど)を見ていることについて検討する。視野角γでベゼル14が確実に目に見えないようにするためには、ディスプレイカバー16に設けられたプリズム22でもたらされる偏角δが、
δ=γ+arctan(W/G
A) (1)
すなわち
G
A=W/tan(δ−γ)
である必要がある。ここで、δはプリズムの偏角、γは視野角、Wはベゼル幅、そしてG
Aはディスプレイパネル12とディスプレイカバー16との間の間隙の距離である。
図13はさらに、プリズムがディスプレイカバーのエッジからディスプレイカバーの内側に向かって延在して設けられるべき最小の距離Lが、
L=W+G
Atan(γ) (2)
であることを示している。
【0039】
方程式1は、プリズムの偏角δの増加か、あるいはより小さい視野角でベゼル14が観察者に見えるようになることを意味する視野角γの減少で、間隙G
Aが小さくなることを示している。さらに方程式2は、間隙G
Aが小さいと、ベゼルを隠すために必要なプリズム22の分布のディスプレイカバーエッジからの長さLが減少することを示し、これはディスプレイ装置のエッジに近い小さい部分の画像の範囲内に局所的に画像アーチファクトが留まることを意味している。ここで
図14を参照すると、観察者Oが、幅Wのベゼル14で包囲されたディスプレイパネル12を備えたディスプレイ装置10を見ているものとして描かれている。プリズムアレイの1つのプリズム22が図示されている。プリズム22は、前ファセット50、非通過ファセット48、および後ファセット56を有している。後ファセット56および前ファセット50が、プリズム角度θを画成する。プリズム22が(ガラスカバーの観察者側で)観察者Oに面していると想定して、偏角δをプリズム角度θに対して計算することができ、また視野角を様々な値に固定しながら、間隙対ベゼル幅の比率G
A/Wを決定する。
【0040】
図15は、+30°の正の視野角+γまでベゼルが目に見えないままであることが望ましいと想定して、最小の間隙−ベゼル幅比率G
A/Wを描いたグラフである。プリズムの屈折率を1.56と想定した。
図15から分かるように、ベゼルが観察者の目に見えないままであり、かつ適切な間隙G
Aを保つためには、プリズム角度θは少なくとも55°であるべきである。ベゼル隠蔽ディスプレイカバー16の構成の最適な設計は、以下でより詳細に説明する他の画像アーチファクトに応じたものになり得る。
【0041】
図16は、小さいプリズム角度θを有し、かつ対向する非通過のファセット48(光線が通過しないファセット)を、隣接する通過用の前ファセット50に対して90°で設定した状態の(すなわち、角度βで形成された直角三角形)、プリズム22を使用したときの結果を示している。ディスプレイパネルの画像を光線52に沿って見ると、光線52は、対向するファセット48によって内部全反射で反射されて、ベゼル14が目に見えるような方向に伝播される。一例としてプリズム角度θが55°の場合、プリズムに入った光線のおよそ40%が不適切な方向に伝播される。
【0042】
あるいは
図17に示されているように、プリズム22の角度βは、プリズム内を通過している光線54にプリズム22の非通過ファセットが平行になるような角度である。しかしながら、このときその部分の光は、プリズム22のファセットの1つを直接透過することになり、55°のプリズム角度θでは、プリズムを通過する光のおよそ40%が依然として不適切な方向に伝播される。
図18のグラフは、不適切な方向に屈折された光の量をプリズム角度θの関数として示したものであり、約55°のプリズム角度θでは約40%の光線が不適切なファセットに向かうことが示されている。これは観察者Oから見える画像が、エッジでより薄暗く見えることを意味している。ほとんどの観察者にとって40%は許容できるであろうが、不適切に逸脱した光の量が40%を超えると視覚的に許容できないと想定される。結果的に、拡大された画像がそのエッジでより薄暗くなり、明るさの減少を40%未満で維持するための最大のプリズム角度θは55°である。
【0043】
再び
図14を参照すると、プリズム22が観察者Oに面しかつ平坦なガラス基板上に位置付けられているとき、後ファセット56(ディスプレイカバー16の位置のファセット)はディスプレイパネル12の平面に平行である。負の大きな視野角(−γ)では、後ファセット56での光線の入射角が極めて大きくなり、光線は後ファセット56で内部全反射で反射される。
図19のグラフは、プリズム内で内部全反射が始まる視野角γをプリズム角度θの関数として示したものであり、約55°のプリズム角度θでは約−31°の視野角γで内部全反射が始まることを示している。約−31°よりも負方向に小さい視野角−γで、プリズム22は拡散リフレクタにように見える。
【0044】
いくつかの事例では、観察者が特定の視野角範囲内でベゼル隠蔽ディスプレイカバー16を見ているとき、観察者に2つのずれた画像が見えることがある。
図20は、観察者Oが見ているときのベゼル隠蔽ディスプレイカバー16の一部を描いたものである。観察者Oには2つの画像、すなわち、プリズム22の通過用の前ファセット50を通って伝播する光線21で生成される1つのシフトした画像と、非通過であるよう意図されているファセット48を通って伝播する光線61で生成される1つの寄生画像とが見える。一実施の形態において二重画像は、光が非通過ファセットを透過しないよう、各プリズムの非通過ファセットを不透明にすることによって軽減される。例えば、非通過ファセットを(例えば、静電塗装プロセスによって)不透明コーティングで被覆してもよい。従って、光はプリズム22の通過用の前ファセット50のみを通過することができる。
【0045】
ここで
図21を参照すると、プリズム(例えば、プリズム22)が一定の角度θを有しているとき、ディスプレイパネルのエッジ付近の物体(点60での画像部分など)が重複して表示されることがあり、これが視覚的に邪魔になり得る。このような歪みは、プリズム22を通して見える画像をぼやけさせることで軽減することができる。あるいはプリズム角度θを、ディスプレイカバーのエッジから内側に偏角δがゼロに達するまで、距離Lに亘ってゆっくりと空間的に減少させてもよい。プリズム角度が直線的に減少していくと想定すると、プリズムアレイは円柱状のフレネルレンズと同等になり、空間のどこかに位置する1つの焦点を有する。
【0046】
図22Aおよび22Bは、プリズム角度が減少していく2つの異なるケースを示している。
図22Aは、プリズム角度θが急速に部分的に減少する例を概略的に示している。焦点f
pはディスプレイパネルの表面に位置している。従って、プリズムが必要となるディスプレイカバー16のエッジからの距離Lは、上記の方程式2を用いて決定することができる。しかしながら、この場合、観察者Oが見ている光の全てが同じ点から来ているため、結果として拡大率が大きくなる。
図22Bは、
図22Aに示した例よりもゆっくりとプリズム角度θが空間的に減少する例を概略的に示している。
図22Bに示したようにプリズム角度θがよりゆっくりと空間的に減少すると、焦点f
pはディスプレイパネル12の背後に位置し、拡大率(L/L´)は減少する。しかしながらプリズムが必要となる距離Lが増加し、これは上述した内部全反射などの他の欠陥が、画像のより大きな部分で見られるようになることを意味する。結果的に、一例であって限定するものではないが、約50°から約60°までの範囲内のプリズム角度θ、例えば約55°が適正な折衷案を提供し得、4mm幅のベゼルに対して間隙G
Aは約10mmとなる。
【0047】
上述した画像アーチファクトは、種々のアーチファクトのバランスを取り、意図されている視野角および距離に対して最適なベゼル隠蔽ディスプレイカバー16を設計する設計プロセスを開発することによって、軽減することができる。適切な設計を決定する例示的なプロセスを以下に説明する。最初に、ベゼル14が目に見えるようになる正の視野角+γが決定され得る。例えば試験中、約30°の正の視野角で、許容できる間隙がもたらされた。第2に、起点のプリズム角度θの関数として間隙対ベゼル比率が決定され得る。
図15の視野角+30°のグラフによれば、起点プリズム角度θ
1が55°で、G
A/W比率は約2.2である。次に、起点プリズム角度θ
1(すなわち、この例では55°)が、プリズムに入ってくる光線の内部全反射を生じさせ始める角度となるだけでなく、不適切なファセットを通る光の漏れの量を許容できるものとするようなものである場合には、これが決定され得る。用いるプリズム角度が非常に大きいと画像アーチファクトが生じるため、起点プリズム角度θ
1は十分に小さく、例えば約55°以下であるべきである。
【0048】
起点プリズム角度θ
1が選択されると、角度が減少していく速度を決定する。減少していく速度は、画像アーチファクトが小さいエリア内に局所的に留まるよう、できるだけ速いものとするべきであるが、画素の拡大(バンディング)が大きくなり過ぎないよう十分に遅く減少させるべきでもある。直線的な減少では、画像拡大の大きさは画像のエッジで極めて高く、局所的な画素の拡大がもたらされる。いくつかの事例では拡大が負になることがあり、これは画像が反転することを意味する。この効果は、フレネルレンズにより生成される球面収差に主に起因する。
図23は、ディスプレイカバーのエッジからの距離Lの関数として画像の拡大を示したものである。従って、プリズム角度の減少していく割合を増加させながら、拡大率をコンピュータで一定に保持することによって拡大率を選択してもよい。これはフレネルレンズ設計に非球面化を加えることと同等であることが分かるであろう。
図24は、拡大率を夫々5(曲線62)および2(曲線64)に固定したときの、プリズム角度の変動を示している。
【0049】
実施例1
拡大率2で55°の起点プリズム角度を選択し、約18mmのプリズムアレイ長さL(プリズムアレイが延在するディスプレイカバーのエッジからの距離)を得た。4mmのベゼル幅に対し、間隙G
Aをおよそ9mmとなるように決定した。その結果、ベゼルはおよそ30°の視野角で目に見え始め、内部全反射は−30°の視野角γで始まることになった。
【0050】
実施例2
拡大率5で55°の起点プリズム角度を選択し、約11.3mmのプリズムアレイ長さLを得た。4mmのベゼル幅に対し、間隙G
Aをおよそ9mmとなるように決定した。その結果、ベゼルはおよそ30°の視野角で目に見え始め、内部全反射は−30°の視野角γで始まることになった。
【0051】
実施例3
拡大率2で55°の起点プリズム角度を選択し、約45mmのプリズムアレイ長さLを得た。10mmのベゼル幅に対し、間隙G
Aをおよそ22mmとなるように決定した。その結果、ベゼルはおよそ30°の視野角で目に見え始め、内部全反射は−30°の視野角γで始まった。
【0052】
上述したように、視野角が正にさらに大きくなると、ベゼル14は目に見えるようになる。ここで
図25を参照すると、反射面66を提供して、ベゼル14にぶつかるはずの光線を(すなわち、ベゼル14を見るのを避けるよう逆方向に)逸脱させることによって、ベゼル14の可視性を軽減することができる。反射面66は、研磨された、ミラーとしての役割を果たすものでもよいし、あるいは、光を部分的に拡散して画像の反射された部分を部分的にぼやけさせる(不鮮明にする)、何らかの構造を有するものでもよい。
【0053】
上で説明したように、画像のエッジは、プリズムの不適切なファセットを通る光の漏れまたは不適切なファセットによる反射によって、より薄暗く現れ得る。こういった漏れを回避する別の手法は、画像を局所的により明るくすることを含む。例えば、観察者が垂直入射のとき、画像が過度に薄暗く見える場合のその量は計算可能であり、これに対応してディスプレイパネル12で生成される画像をより明るくすることができる。これは画像処理によって(このケースでは、画像自体がエッジで薄暗い場合のみ効果がある)、あるいはバックライトによって、実現することができる。
図26は、一実施の形態によるバックライトアセンブリ68を描いたものである。この例示的なバックライトアセンブリは、光源72、反射面74、および導光板70を含む。画像は、バックライトの導光板70から漏れる光の量を増加させることによって、局所的により明るくすることができる。これは、例えば浅いプリズムアレイ76を導光板に取り付けることによって達成し得ることは明らかであろう。
【0054】
あるいは、画像を、少なくとも画素のサイズに等しい量だけぼやけさせてもよい。これは、プリズムの角度にノイズ(わずかな偏向)を導入することによって、あるいはプリズムの出力ファセットを、
図11に関連して前述したような湾曲を有するようにすることによって、達成することができる。
【0055】
図27は本開示の一実施の形態を示したものであり、ここでプリズム22は、上述した実施形態のようなディスプレイパネル12から離れる方向ではなく、ディスプレイパネル12の方を向いている。この事例では、プリズムの入力面(ファセット56)は不適切な方向を指している。言い換えれば、所与の光線偏向角度では、プリズムファセットを出て行く光線の角度(α)は、プリズムが観察者Oに面しているときよりも必然的に大きくなる(このケースではファセット56がディスプレイに平行であるため)。結果として、内部全反射は大幅に小さい視野角で生じることになる。
【0056】
図28は、プリズム22が内部全反射を生じる視野角γを、プリズムが観察者に面しているとき(曲線78)、またはプリズムがディスプレイパネル12に面しているとき(曲線80)の、2つの状況において示したグラフである。一例として、40°のプリズム角度θでは、プリズム22がディスプレイパネルに面しているときに(曲線80)全ての負の視野角−γでプリズム22は内部全反射となり、一方プリズム22が観察者に面しているときには、−40°よりも負側の負の視野角−γに対してのみ内部全反射は始まる。結果として、平坦なカバーの、ディスプレイパネル12に面している背面側にプリズム22を位置付けるときには、内部全反射と大きい間隙とを回避するために、プリズム角度θを非常に小さくする必要がある。
【0057】
ここで
図29を参照すると、ディスプレイパネル12に面しているマイクロプリズムは内部全反射を生じ易いため、いくつかの実施形態では内部全反射モードが、観察者によって見られる名目モードになるように選択され得る。
図29は、ファセットの1つ(例えばファセット50)が内部全反射を生じ、他のファセット(例えばファセット56)が透過するものである実施形態を示している。より具体的には、光線はファセット48でプリズムに入り、ファセット50で内部全反射により反射され、さらにファセット56でプリズムから出る。ファセット48は入ってくる光線65に反射を生じさせるため、プリズムの屈折角とは無関係に非常に大きい偏向角度が生成され得る。これによりベゼル隠蔽ディスプレイカバー16とディスプレイ装置10との間の間隙G
Aを極端に小さくすることができる。
【0058】
本開示の実施形態を説明および画成するために、「実質的に」、「およそ」、および「約」という用語は、任意の定量比較、値、寸法、または他の表現に起因し得る、固有の不確実さの度合いを表すために本書において用いられることに留意されたい。
【0059】
特定の実施形態の構成要素が、特定のやり方で、または特定の性質を具現化するように、あるいは特定の形で機能するように、「構成」されているという本書での記述は、意図されている用途に関する記述ではなく構造的な記述であることに留意されたい。より具体的には、ある構成要素が「構成」されている様態に本書で言及するとき、その構成要素の現存の物理的条件を示し、したがってその構成要素の構造的特性に関する明確な記述と受け取られるべきである。
【0060】
さらに、特定の構成要素または部材の説明で「少なくとも1つ」という表現が使用されるとき、この特定の構成要素または部材のために、他の構成要素または部材の説明での単数形の使用が2以上の使用を排除することを意味したものではないことに留意されたい。より具体的には、ある構成要素は単数形を用いて説明されることがあるが、その構成要素を1つのみに限定していると解釈されるべきではない。
【0061】
特定の実施形態を本書で図示および説明してきたが、種々の他の変更および改変が、請求される主題の精神および範囲から逸脱することなく作製可能であることを理解されたい。より具体的には、説明された実施形態のいくつかの態様は、本書で好ましいものとして、あるいは特に有利であるとして識別されているが、請求される主題は必ずしもこれらの好適な態様に限定されるものではないと意図されている。