(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、溶接リングを使用することなくより短時間で溶接を可能とした電源装置及び電源装置を備える車両並びに蓄電装置、電源装置の製造方法を提供することにある。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電源装置によれば、電極部を備える複数の電池セルと、前記電池セルの電極部を接続するためのバスバーとを備える電源装置であって、前記バスバーは、その端縁の少なくとも一部に、厚さを他の部分よりも薄くした薄肉部を形成しており、前記薄肉部でもって、前記電池セルの電極部と溶接することができる。上記構成により、バスバーの溶接時には薄肉部を電極部に直接溶接することができ、溶接リングなどの別部材を使用する必要をなくして、溶接工程を省力化できる利点が得られる。
【0009】
また、本発明の他の電源装置によれば、前記バスバーの端縁を、凹状に形成しており、前記凹状部分に、前記薄肉部を形成することができる。上記構成により、バスバーと電極部を溶接する部分の距離を長くして接合強度の向上を図ることができる。
【0010】
さらに、本発明の他の電源装置によれば、前記薄肉部の幅が、前記電極部の1/2よりも小さくすることができる。上記構成により、台座部の両側からバスバーを配置する際でも、各バスバーと溶接する領域を適切に確保できる。
【0011】
さらにまた、本発明の他の電源装置によれば、前記電極部が、台座部と、前記台座部から突出された電極端子とを備えており、前記電極端子の側面に前記薄肉部を配置することができる。上記構成により、台座部から突出される電極端子をバスバーの位置決め用のガイドとして利用して、バスターの位置決め作業を容易に行える利点が得られる。
【0012】
さらにまた、本発明の他の電源装置によれば、前記電極端子が円柱状であり、前記凹状部分を、前記電極端子の円柱状に沿う半月状に形成することができる。上記構成により、電極端子とバスバーとの溶接部分の距離を長くして、接合強度を向上させることができる。
【0013】
さらにまた、本発明の他の電源装置によれば、前記半月状部分の半径を、前記電極端子の半径よりも大きくすることができる。上記構成によって、半月状部分に電極端子を配置する位置を調整して、電極端子の位置ずれを吸収できる利点が得られる。
【0014】
さらにまた、本発明の他の電源装置によれば、前記バスバーの薄肉部を、弾性変形可能に形成することができる。上記構成により、バスバーを電極部に溶接する際には溶接に係る薄肉部を弾性的に押圧して、溶接部分に隙間が形成させる事態を回避し、溶接の信頼性を向上できる。
【0015】
さらにまた、本発明の他の電源装置によれば、前記バスバーを断面視山形状に折曲させることができる。上記構成により、バスバーの両端部分を下面側すなわち電池セル側に突出させて、バスバーと電極部との溶接部分に隙間が形成されることを回避できる。
【0016】
さらにまた、本発明の他の電源装置によれば、前記バスバーの薄肉部を、前記山形状折曲方向とは逆向きに折曲させることができる。上記構成により、さらにバスバーの両端を電極部と接触させやすくして、溶接部分に隙間が形成されることを回避できる。
【0017】
さらにまた、本発明の他の電源装置によれば、前記薄肉部を前記電極部にファイバーレーザで溶接することができる。上記構成により、細いビーム径の高出力なレーザ光で薄肉部を正確に溶融させることができ、溶接の信頼性を高めることが可能となる。
【0018】
さらにまた、本発明の他の電源装置によれば、前記バスバーを、異種金属を接合したクラッド材とすることができる。上記構成により、電極部が異なる金属で構成されている場合に、各電極部を構成する金属と接合させやすい材質を選択して、これらをクラッド材としたバスバーとでき、電極部との接合の信頼性を向上できる。
【0019】
さらにまた、電源装置を備える電動車両によれば、上記の電源装置に加え、前記電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えることができる。
【0020】
さらにまた、蓄電装置によれば、前記電源装置への充放電を制御する電源コントローラを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電源装置への充電を可能とすると共に、前記電源装置に対し充電を行うよう制御可能とできる。
【0021】
さらにまた、電源装置の製造方法によれば、電極部を備える複数の電池セルと、各電池セルの電極部同士を接続する導電性のバスバーとを備える電源装置の製造方法であって、前記バスバーを、その断面視を山形状に折曲した状態で、前記複数の電池セルを積層した電池セル積層体の上面であって、隣接する電池セルの間の、対向する電極部の各上面に、該バスバーの端縁の少なくとも一部に形成された薄肉部を配置させる工程と、前記薄肉部にレーザ光を照射して、前記薄肉部を貫通させて前記電極部と共に溶融させて、これらを溶接する工程とを含むことができる。これにより、バスバーの溶接時には薄肉部を電極部に直接溶接することができ、溶接リングなどの別部材を使用する必要をなくして、溶接工程を省力化できる利点が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置及び電源装置を備える電動車両並びに蓄電装置、電源装置の製造方法を例示するものであって、本発明は電源装置及び電源装置を備える電動車両並びに蓄電装置、電源装置の製造方法を以下のものに特定しない。また実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施の形態1)
【0024】
本発明の実施の形態1に係る電源装置100から分解斜視図を
図1に、
図1の電源装置100の分解斜視図を
図2に、
図1の電源装置100の概略平面図を
図3に、
図3からバスバーホルダ8を外した概略平面図を
図4に、それぞれ示す。これらの図に示す電源装置100は、複数枚の電池セル1と、電池セル1同士の間に介在されるスペーサ50と、電池セル1とスペーサ50とを交互に積層した電池積層体2の各端面にそれぞれ配置されるエンドプレート3と、エンドプレート3同士を締結する締結手段4とを備えている。
(電池セル1)
【0025】
電池セル1は、
図1及び
図2に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形の電池としている。この電池セル1を複数枚、厚さ方向に積層して電池積層体2とする。各電池セル1は、リチウムイオン二次電池である。ただ、電池セルをニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の二次電池とすることもできる。
図2の電池セル1は、幅の広い両表面を四角形とする電池で、両表面を対向するように積層して電池積層体2としている。各電池セル1は、上面である封口板10の両端部に正負の電極部20を設けて、中央部にはガス排出弁11のガス排出口12を設けている。各電極部20は、台座部22と、この台座部22から突出された電極端子21とを備えている。電極端子21は円柱状に形成される。
【0026】
角形の電池セル1は、底を閉塞する筒状に金属板をプレス加工している外装缶の開口部を、封口板10で閉塞して密閉している。封口板10は平面状の金属板で、その外形を外装缶の開口部の形状としている。この封口板10はレーザ溶接して外装缶の外周縁に固定されて外装缶の開口部を気密に閉塞している。外装缶に固定される封口板10は、その両端部に正負の電極部20を固定しており、さらに正負の電極部20の中間にはガス排出口12を設けている。ガス排出口12の内部にはガス排出弁11を設けている。
【0027】
スペーサ50は、電池セル1の外装缶同士を絶縁するため、絶縁性の部材で構成される。またエンドプレート3は、電池積層体2を積層した状態で締結するため、金属製等の剛性の高い部材で構成される。さらに締結手段4は、同様に剛性の高い金属板等で構成される。ここでは、金属板を断面視コ字状に折曲して、端部をエンドプレート3にねじ止め等により固定している。また締結手段は、電池積層体2の締結のみならず、電池積層体2の上面にガスダクト6を固定する部材として兼用することもできる。ここでは、電池積層体2を側面で締結する締結手段4に加えて、電池積層体2の上面に第二締結手段5を設けている。なお、この構成は一例であって、第二締結手段を省略して電池積層体の側面のみを締結手段で締結することもできる。また、ガスダクトを省略することもできる。
(バスバーホルダ8)
【0028】
また電池積層体2の上面には、バスバーホルダ8が固定される。バスバーホルダ8は絶縁性の部材で構成され、バスバー30と電池セル1との意図しない導通を避けるため、電池セル1の上面を被覆する。さらにバスバーホルダ8は、各電極端子21を電気接続させるために、電池積層体2の上面に固定した状態で、電極端子21を表出させるための開口窓24を開口させている。これによって、電気接続に必要な部位を除いて電池セル1の上面を絶縁しつつ、開口窓24から電極端子21を表出させることで、電極端子21同士の電気接続を維持している。
【0029】
バスバーホルダ8は、
図2の分解斜視図に示すように、第二締結手段5でもって固定される。ここでは、第二締結手段5をバスバーホルダ8の上面から押圧し、第二締結手段5の端部をエンドプレート3の上面に螺合している。これにより第二締結手段5を介してバスバーホルダ8が電池積層体2の上面に固定される。なお、バスバーホルダの固定構造は、この構成に限られず、例えばバスバーホルダをエンドプレートに直接螺合したり、バスバーホルダに爪などの嵌合構造を設けてバスバーや締結手段に嵌合させるなど、他の既知の固定構造を適宜利用することもできる。
(ガスダクト6)
【0030】
さらに
図2に示す電源装置100は、バスバーホルダ8の上面に、ガスダクト6を固定し、さらにガスダクト6の上面に回路基板9を配置している。ガスダクト6は、電池セル1の積層方向に延長された中空状の筒体であり、端部にダクト排出部6xを開口している。ガスダクト6の底面側には、各電池セル1のガス排出弁11と対応する位置に、連結開口が開口されている。連結開口はそれぞれ、ガス排出弁11が開弁された状態でガス排出口12と連通され、電池セル1から排出される高圧のガスが、ガスダクト6内に案内されるよう構成されている。さらにガスダクト6の内部は、一方の端部を閉塞し、他方の端部にダクト排出部6xを開口させている。ダクト排出部6xは、ガス排出路と連結されて、ガスを安全に外部に排出する。このガスダクト6は、各連結開口がガス排出弁と連通するように位置決めして、電池積層体2の上面に固定されている。
図2の例では、ガスダクト6の延長方向における断面を、横長の矩形状に形成している。ただガスダクトの内部形状は、管状、あるいは逆U字状やU字状等、任意の形状とできる。
【0031】
なお
図2の例では、第二締結手段5は、ガスダクト6の固定構造も兼用している。すなわち、ガスダクト6の周囲に鍔部6aを形成すると共に、第二締結手段5に開口を設け、ガスダクト6の上方から第二締結手段5を、開口部分にガスダクト6を通すように被せると共に、ガスダクト6周囲の鍔部6aを開口の周縁で押圧して、ガスダクト6をバスバーホルダ8の上面に固定する。
(回路基板9)
【0032】
さらにガスダクト6の上面には、電子回路を実装した回路基板9が固定されている。回路基板9に実装される電子回路は、電池セル1の電圧等を監視するための保護回路や制御回路等とできる。回路基板9は、ガスダクト6の長手方向の長さよりも短く、かつ長手方向と交差するガスダクト6の幅方向においては、ガスダクト6よりも幅広に形成されている。
(電圧検出線)
【0033】
また、各電池セル1のセル電圧を測定するために、各バスバー30には、電圧を検出するための電圧検出線が固定されている。電圧検出線は、導電リードやハーネス、あるいはフレキシブルプリント基板(FPC)等で構成され、一端を回路基板に接続している。
図2、
図3に示す例では、FPCで構成された電圧検出線を、バスバー30の上面に固定している。
(ファイバーレーザ)
【0034】
各電池セル1は、正負の一対の電極部20を備えている。この電池セル1を積層した状態で、隣接する電池セル1の、電極部20同士を導電性のバスバー30で接続している。バスバー30の接続形態によって、電池セル1同士を直列や並列に接続できる。
図4の平面図に示す例では、隣接する電池セル1の正極端子と負極端子をそれぞれバスバー30で接続することで、12枚の電池セルを直列に接続している。このバスバー30を電極部20と溶接することで、バスバー30を介して隣接する電池セル1の電極同士を電気接続できる。
図4の例では、レーザ溶接によってバスバー30を溶融させて電極部20と固定している。レーザ光には、例えばファイバーレーザが好適に利用できる。ファイバーレーザは、通常のYAGレーザ等と比べて、スポット径を小さくでき、高出力である利点が得られる。このため、精密なレーザ溶接に好適である。
(バスバー30)
【0035】
バスバー30は、好ましくは導電性に優れ、かつレーザ溶接に適した金属板で構成される。バスバー30の斜視図を
図5に、平面図と断面図を
図6A及び
図6Bに、それぞれ示す。これらの図に示すようにバスバー30は、ほぼ均一な厚さの板材で構成する。特にバスバー30の抵抗を抑えるため、導電率の高い金属板で構成された厚肉の低抵抗部としている。また、このように構成されたバスバー30の厚肉部31は、電池セル1の正極と負極の電極部20にそれぞれ溶接しやすいよう、異なる金属板を組み合わせたクラッド材とすることが好ましい。例えばリチウムイオン二次電池では、正極をアルミニウム板に、負極を銅板とすることが多い。このためバスバー30をアルミニウム板または銅板のいずれかで均一に構成すると、正極又は負極のいずれか一方で、銅とアルミニウムの異種金属間接合となり、強度が弱くなることがある。そこで、銅板とアルミニウム板を組み合わせたクラッド材でバスバー30を構成し、アルミニウム板を正極に、銅板を負極に、それぞれ接触させて導通させることで、同種の金属同士を溶接させて接合の信頼性を高めることができる。
(薄肉部32)
【0036】
また、バスバー30の厚肉部31の両端には、薄肉部32を部分的に形成している。この薄肉部は、台座部の平坦面と溶接される溶接部33を含む。薄肉部32は、バスバー30を電極部20に溶接させる際に溶融させ易くするため、
図6Bの断面図に示すようにバスバー30中央の厚肉部31よりも肉薄に形成している。薄肉部32は、
図6Bの例では断面視において階段状に形成される。バスバーは薄いほど溶接し易くなる一方、電流抵抗が増大する。そこでバスバー30のほぼ中央に厚肉部31を、その端縁には薄肉部32を形成することで、バスバー30の溶接を容易としつつ、電流抵抗の増大を抑制することができる。また薄肉部は、
図6Aに示すようにバスバーの端縁を上面側で切り欠いた段差状に形成している。このように薄肉部をバスバー端縁の下面側からでなく、上面側を切り欠いた形状とすることで、下面側を溶接対象の台座部と広い面積で接触させることができ、薄肉部をレーザ光で貫通させて確実に溶接できる。
【0037】
またバスバー30の端縁は、直線状とせず非直線状とすることが好ましい。このようにすることで、バスバー30の端縁に沿って溶接部33を設ける場合、溶接部33の距離を長くして、強度を向上させることができる。例えば、端縁を抉るようにして、平面視において凹状に窪ませる。このように湾曲させることで、溶接部33の距離を稼ぐことができる。また、凹状部分34に電極端子21を配置することで、電極端子21をバスバー30の位置決めの際のガイドに利用できる。例えばパーツフィーダでバスバー30を配置する際に、画像処理で電極端子21の端面の円形を検出して、これに沿うようにバスバー30を配置しやすくできる。
【0038】
図6Aの平面図の例では、バスバー30の長手方向の両端を電極端子21の周囲に沿って一定幅dで、半円状に薄肉部32を形成している。このとき湾曲部分の半径を、電極端子21の半径よりも大きくすることが好ましい。これによって凹状部分34に電極端子21を配置できる。すなわち
図4の平面図に示すように、厚肉部31を電極端子21に近接できる分、厚肉部31の裏面と台座部22との接触面積を広くすることができる。
【0039】
また、電池セルの製造公差や電池セルの膨張などによって、電池セルを積層した際に電極端子21同士間の距離にはばらつきが生じる。そこで、上述の通りバスバー30の端縁を凹状部分34とすることで、このような電極端子21の位置ずれを吸収できる。すなわち、凹状部分34に電極端子21を配置した際に、両者間に若干の隙間が形成されるように予め設計することにより、この隙間によって電極端子21とバスバー30端縁との位置ずれを吸収できる。また、バスバー30の溶接部33を凹状に湾曲させたことで、上述の通りバスバー30端縁を直線状とした場合と比べて溶接される距離を長くすることができ、その分だけ接合強度が向上される。このように、バスバー30の端縁を凹状としたことで、電極端子21の位置ずれの吸収と接合強度の向上とに共用できる。
【0040】
さらに、薄肉部32の凹状部分34を開放端としたことで、特に電極端子21間の距離が所期値よりも長くなった場合に限界まで対応できる。すなわち、
図25に示すようにバスバーに長穴を形成して溶接リングで調整する方法では、長穴の長さまでしか調整できないため、例えば電池セルが膨張するなどして電池セル間の距離が長くなるとバスバーが破断する可能性があった。これに対して、閉じた穴状とせずに開放端とした凹状部分34であれば、このような破断を回避できる。
【0041】
このバスバー30を用いて電極部20と溶接する際には、
図7の平面図及び
図8の断面図に示すように、電池セル1の上面にバスバー30を台座部22と重ねるように配置する。この状態で、薄肉部32に対してレーザ光を照射する。レーザ光は、
図7の平面図においてクロスハッチングで示す領域に照射する。またレーザ光は、
図8の断面図において太線で示すように、バスバー30bの上方側から照射する。これにより、薄肉部32を溶融させて、下部の台座部22と溶接する。好ましくは、レーザ光が薄肉部32を貫通して台座部22も溶融させるように照射する。このような高精度で高出力のレーザ加工には、上述の通りファイバーレーザが好適に利用できる。なお、薄肉部32のすべてを完全に溶融させる必要はなく、十分な溶接が実現される程度に溶融されればよく、薄肉部32の一部が溶融されずに残っても足りる。
(実施の形態2、3)
【0042】
上記の例では、バスバーの端縁を半円状に形成した例を説明したが、バスバー端縁の形状はこれに限られず、直線状以外の形状が適宜利用できる。例えば、
図9に示す実施の形態2に係る電源装置200では、電極端子21Bを平面視六角形状としており、バスバー30B端縁の凹状部分もこれに応じて逆等脚台形状としている。また凹状部分には薄肉部32Bが形成される。さらに
図10に示す実施の形態3に係る電源装置300では、電極端子21Cを平面視四角形状とし、バスバー30C端縁の凹状部分もこれに応じてコ字状に開口させており、同様に薄肉部32Cが形成されている。このように、電極端子21の平面視形状は、円柱状に限られるものでなく、多角形状、あるいは楕円形状など、任意の形状が利用でき、これに応じてバスバー端縁の凹状部分の形状も適宜変形できる。また、以上の例では、凹状部分をバスバー端面のほぼ中央に一箇所のみ形成した例を説明したが、2以上の凹状部分を形成することもできる。またこれに従い、薄肉部分も複数箇所に設けてもよい。これによって、溶接部33の距離を長くすることができる。またこの場合において、複数の凹状部分はすべて同じ形状とせずに、異なる形状やパターンに形成することもできる。例えば中央の凹状部分を大きく形成し、その両側にこれよりも小さい凹状部分を形成できる。あるいは、波状や鋸刃状に形成してもよい。このようにして、台座部22と溶接される距離を長くして接合強度を増す効果が得られる。
(実施の形態4)
【0043】
また上記の例では、薄肉部をバスバーの厚肉部31の端縁に部分的に形成している。ただ、バスバーの端縁の全面に薄肉部を形成することもできる。このような例を実施の形態2として
図11に示す。この図に示すバスバー30Dは、厚肉部31の端縁から幅aを薄肉部32Dとしている。また薄肉部32Dの幅は、台座部22の幅の1/2よりも小さく形成することが好ましい。このようにすることで、台座部22の両側からバスバーを配置する際でも、各バスバーと溶接する領域を適切に確保できる。例えば
図12に示す変形例のように、電池セル1を2本ずつ並列に接続する場合は、電極部20において、電極端子21を挟み込むようにその両側からバスバー30を配置して溶接する必要がある。このような場合でも、各バスバー30と台座部22との溶接を適切に行えるように溶接領域を確保する。
【0044】
また、薄肉部32Dの中央には、実施の形態1と同様に凹状部分を形成することもできる。これによって、上述の通り電極端子21の位置ずれを吸収することができる。
【0045】
さらに、このバスバー30は、積層した電池セルの電極部同士を接続するため、電池セルを積層した状態で電極部の位置にばらつきが生じても対応できるという利点が得られる。すなわち、
図13の平面図に示すように、一本のバスバー1330で3本以上(
図13の例では6本)の電池セル1を接続する場合は、各電極端子21を挿入するためにバスバー1330に開口された接続穴の大きさの制約上、水平方向における電極端子21の位置ずれの対応に限界があった。さらに電池セル1は、高さ方向にも位置ずれすることがあるため、その対応は一層困難となる。これに対して、本実施の形態によれば、隣接する電池セルの電極同士、すなわち2箇所の接続のみとしているため、
図14の平面図に示すように、電池セル1の位置ずれにも柔軟に対応できる利点が得られる。これは、バスバー30の接続を隣接する電極端子21のみとしたために得られる利点である。また、このようにバスバー30の数を増やしても、溶接する位置は基本的に
図13の場合と変わらないため、溶接時間が長くなるデメリットも無い。
(実施の形態5)
【0046】
さらに上記の例では、いずれも電極端子の形状に応じてバスバー端縁の凹状部分の形状を形成した構成を説明した。ただ、台座部から突出させた電極端子は必ずしもバスバーとの溶接において必須でなく、これを省略することもできる。すなわち以上の実施の形態においては、バスバーを電極端子でなく、台座部と溶接している。言い換えると、
図25に示すような、電極端子に溶接リングを挿通して、溶接リングを介してバスバーと溶接する構成とは異なり、本実施の形態においては電極端子に直接溶接していない。このため、電極端子は必ずしも必須でなく、これを省略することも可能である。このような例を実施の形態5に係る電源装置500として
図15に示す。この図に示すように、バスバー30の薄肉部32は、電極端子によらず、台座部22’上の任意の位置に固定できる。
【0047】
なお
図6A等の例では、上述の通り電極端子21を位置決め用のガイドとして利用している。すなわち電極端子21の形状を画像処理によって検出し、この位置を基準としてバスバー30を配置している。このように電極端子21は、バスバー30の固定位置を決める位置決めガイドとして機能させている。そして実施の形態5のように電極端子を設けない場合は、電極端子に代わる他の位置決めガイドとして、例えば台座部の任意の位置にマークを刻印、印刷したり、あるいは台座部の四角形状の輪郭などを利用することができる。さらに後述する
図20に示すように、バスバーに一以上の穴を開口して、位置決めガイドとすることもできる。
(実施の形態6)
【0048】
以上のようにしてバスバーと電極部とを溶接リング無しで溶接する際、
図16に示すように電極端子21が高さ方向に位置ずれする際の対応が問題となる。すなわち、バスバー30と電極部20とを溶接する部分に隙間があると、溶接の信頼性が低下する。そこで、隙間が生じ難いように、バスバーを電池セルの上面に載置した状態で、バスバーの両端が電極部20に接触し易いように、バスバーを山形に折曲させることが考えられる。このような例を実施の形態6として
図17Aの平面図及び
図17Bの断面図に示す。これらの図に示すように、バスバー30Eのほぼ中央において、厚肉部31を山形に折曲させることで、その両端を相対的に下方に突出させることができる。上述の通りバスバーを異種金属のクラッド材で構成する場合は、異種金属同士を接合する面を若干傾斜させることで、このような山形に容易に形成できる。
【0049】
また、隙間の発生を防ぐには、溶接時においてバスバーを電池セルに対して、治具などを用いて押圧することが好ましい。この際、バスバーの電極部に接触する部分に弾性を持たせることで、加えられた応力によってバスバーの端縁が弾性変形されて、台座部との隙間を無くすことができる。このような弾性変形をバスバーに付与するため、バスバー30Eの端縁を、
図17Bの断面図に示すように山形とは逆向きの谷形に折曲させる。これによって、バスバー30E端縁の薄肉部32Eは弾性変形し易くなる。すなわち、溶接時にはバスバー30Eの上方から下向きに押圧することで、両端の接合部分を台座部22に押しつけて、ばね性によって接合面に密着させて隙間を埋めることができる。よって、この状態でレーザ溶接することで、隙間のない確実な溶接が図られ、電気接続の信頼性を向上できる。
(実施の形態7)
【0050】
また、以上の例ではバスバーの厚肉部を山形に折曲させた例を説明したが、必ずしも山形に限らず、湾曲させることもできる。実施の形態7として
図18の断面図に示すバスバー30Fは、中央部分を湾曲させた形状としており、このような形状でも上記と同様に薄肉部32Fを弾性変形できる効果が得られる。
(実施の形態8)
【0051】
また同様に、バスバーの厚肉部を湾曲させるのみならず、バスバーの端縁をこれとは逆向きに湾曲させることもできる。このような例を実施の形態8として
図19に示す。この図に示すバスバー30Gのように、台座部と接触する折曲部分を湾曲させることで、より広い面積で薄肉部32Gを台座部と折曲させることができ、レーザ溶接の際に隙間が生じることを回避できる。特に、電池積層体を構成する電池セルは、組付け時に上下に位置ずれする問題があるが、この構成によると、薄肉部が円弧状に形成されるため、折り曲げ部分の近傍で、台座部と接触させることができる。レーザ溶接の際に隙間が生じると、溶接強度が弱くなるため、バスバーと台座部との溶接の溶接強度にバラツキが生じてしまうおそれがあるが、上記構成とすることで、電池セルに位置ずれがあっても薄肉部32Gと台座部を接触させることができるので、溶接強度を一定に保つことができる。また、この観点からは湾曲の曲率半径を大きくすることが好ましい。このように、本明細書において「折曲」との用語には、湾曲も含む意味で使用している。
(実施の形態9)
【0052】
以上の例では、溶接部を、薄肉部に形成された凹状部分に沿って設けた例を説明した。ただ本発明は、この構成に限らず、溶接部を薄肉部の折曲部分に沿って直線状に設けることもできる。このような例を実施の形態9として、
図20及び
図21に示す。このバスバー30Hのは、レーザ溶接の際にレーザ光を直線に走査して溶接部をスムーズに溶接できる。一方、溶接部33を凹状とする例に比べて、レーザ溶接する距離が短くなるため、溶接部分の面積の低下に繋がり、強度が低下する。そこで、
図21の平面図において破線で示すように、溶接部33Hを薄肉部32Hの折曲部分に沿って、平行に離間させて複数本設けることで、溶接部33Hの面積を稼いで接合強度を向上させることができる。なお複数本の溶接部33Hは、折曲部分からバスバー30Hの端縁側にずらして設ける。また、溶接部を薄肉部の折曲部分に沿って、波状やジグザグ状に蛇行させることでも、同様に溶接部を長くして接合強度を向上できる。
(バスバー位置決めガイド36)
【0053】
なお、バスバーには位置決め用のガイドを形成することもできる。位置決め用のガイドは、例えばバスバーの端縁に形成された凹状が利用できる。さらにこれに加えて、一以上の貫通孔をバスバーに開口してもよい。このような例を
図20Aの平面図に示す。このバスバー30Hは、端縁の薄肉部32Hに丸穴状の貫通孔を形成している。バスバー位置決めガイド36を丸穴状とすることで、凹状のような半円形に比べて、画像処理を行い易い利点が得られる。さらにバスバー位置決めガイド36を複数設けることで、回転方向の姿勢を一義的に決定できる。
図20Aの例では、バスバー30H端縁の各隅部に貫通孔をそれぞれ開口している。また、バスバー30Hの厚肉部31Hの中央にも、第二貫通孔37を開口している。第二貫通孔37は、貫通孔よりも口径を大きくすることで、これらと区別している。これらを画像処理することで、バスバー30Hの平面方向での姿勢を決定できる。バスバー位置決めガイドはこれに限らず、矩形状としてもよい。またバスバー位置決めガイドは薄肉部に限らず、厚肉部に形成することもできる。あるいは、このような貫通孔を形成することなく、バスバーの外形でもってバスバー位置決めガイドとすることも可能である。
【0054】
さらにバスバーの外形の一部に切り欠きを形成して、姿勢や上下を規定できる。
図20Aの例では、バスバー30Hの厚肉部31Hの左上にU字状の窪み38を形成している。この窪み38を手掛かりにして、点対称のバスバー30Hの上下の姿勢を特定できる。
【0055】
以上の電源装置は、車載用の電源として利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0056】
図22に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94と、電源装置100とモータ93を搭載する車両本体90と、モータ93で駆動されて車両本体を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(電気自動車用電源装置)
【0057】
また、
図23に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94と、電源装置100とモータ93を搭載する車両本体90と、モータ93で駆動されて車両本体を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(蓄電用電源装置)
【0058】
さらに、この電源装置は、移動体用の動力源としてのみならず、定置型の蓄電用設備としても利用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を
図24に示す。この図に示す電源装置100は、複数の電池パック81をユニット状に接続して電池ユニット82を構成している。各電池パック81は、複数の電池セルが直列及び/又は並列に接続されている。各電池パック81は、電源コントローラ84により制御される。この電源装置100は、電池ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。このため電源装置100は、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して電源装置100と接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから電源装置100への充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0059】
電源装置100で駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して電源装置100と接続されている。電源装置100の放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、電源装置100からの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ84によって制御される。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。
図24の例では、UARTやRS−232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0060】
各電池パック81は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、パック入出力端子DIと、パック異常出力端子DAと、パック接続端子DOとを含む。パック入出力端子DIは、他のパック電池や電源コントローラ84からの信号を入出力するための端子であり、パック接続端子DOは子パックである他のパック電池に対して信号を入出力するための端子である。またパック異常出力端子DAは、パック電池の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電池パック81同士を直列、並列に接続するための端子である。