(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グラファイトシートの厚みが、グラファイトシート積層体の厚みの5%〜75%であることを特徴とする請求項8〜14の何れか1項に記載のグラファイトシート積層体。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、グラファイトシート10の少なくとも一方の主面に、射出成形時の導入樹脂温度において弾性率が7.0×10
4Pa以上5.0×10
7Pa以下となる第一固定層55が接触する構成を含むグラファイトシート積層体81を、一方の射出成形型のキャビティー面110にグラファイトシート積層体81の第一固定層55側と反対側の主面が接触するように沿わせた後に、射出成形型を型締めしてキャビティーに溶融状態の樹脂を射出してグラファイトシート積層体81と樹脂とを接着させることを特徴とする樹脂成形体の製造方法である。ここで、射出成形時の導入樹脂温度とは、
図1を参照して、射出成形機のゲート40の先端部分での樹脂温度のことである。樹脂温度は、金型からゲート40に向かって熱電対42を挿入し、熱電対42が樹脂と接触するように設置して測定する。尚、熱電対42は、樹脂の導入を妨げないように、金型からゲート40側に出して配置する。
【0025】
なお、本明細書において「主面」とは、構成(例えば、グラファイトシート、または、グラファイト積層体など)の表面を形成する面のうち、大きな面積を占める面を意図する。
【0026】
例えば、「主面」は、構成の表面を形成する面のうち、一番大きな面積を占める面であってもよいし、二番目に大きな面積を占める面であってもよい。
【0027】
更に具体的には、一方の主面を、一番大きな面積を有する面とし、他方の主面を、一方の主面と同じ(又は、略同じ)面積を有する面とすることが可能である。また、一方の主面を、一番大きな面積を有する面とし、他方の主面を、、二番目に大きな面積を占める面とすることも可能である。また、一方の主面を、二番目に大きな面積を占める面とし、他方の主面を、一番大きな面積を有する面とすることも可能である。
【0028】
また、「主面」は、構成の表面を形成する面の全面積を100(%)としたとき、30(%)以上を占める面であってもよく、40(%)以上を占める面であってもよく、50(%)以上を占める面であってもよく、60(%)以上を占める面であってもよく、70(%)以上を占める面であってもよく、80(%)以上を占める面であってもよく、90(%)以上を占める面であってもよい。
【0029】
以下、グラファイトシート積層体について詳しく説明する。
【0030】
<第一固定層>
第一固定層55は、射出樹脂と接触するように
図1のように金型21内にセットされ、グラファイトシート積層体81が成形体に対してズレることなく配置されるための役割を果たす。第一固定層55は、導入樹脂温度における弾性率が、7.0×10
4Pa以上5.0×10
7Pa以下、好ましくは8.5×10
4Pa以上3.0×10
7Pa以下、より好ましくは1.0×10
5Pa以上1.0×10
7Pa以下のものを選定するのが良い。また、樹脂導入温度は、230℃以上350℃以下(例えば、250℃または310℃)であることが好ましい。第一固定層55の導入樹脂温度における弾性率が、7.0×10
4Pa以上5.0×10
7Pa以下であれば、導入される樹脂の導入温度が300℃以上になる場合もある射出成形であっても、第一固定層55が流されず、表面活性が低く、他材料との接着性が低いグラファイトシート10を用いた場合であっても、グラファイトシート積層体81を樹脂成形体の所望の位置に設置することができる。また、第1固定層55の弾性率を適度な柔らかさに設定することで、第1固定層55は、タック性を有し、導入された樹脂(つまり成形体を形成する樹脂)との接着性を発揮し、位置ズレや接着不良を抑制することができる。
【0031】
更に具体的に、導入樹脂温度における第一固定層55の弾性率は、1.0×10
5以上3.2×10
7以下であってもよく、1.0×10
5以上1.0×10
7以下であってもよく、2.1×10
6以上3.2×10
7以下であってもよい。第一固定層55の導入樹脂温度における弾性率が当該値の時にも、導入される樹脂の導入温度が300℃以上になる場合もある射出成形であっても、第一固定層55が流されず、表面活性が低く、他材料との接着性が低いグラファイトシート10を用いた場合であっても、グラファイトシート積層体81を樹脂成形体の所望の位置に設置することができる。また、第1固定層55の弾性率を適度な柔らかさに設定することで、第1固定層55は、タック性を有し、導入された樹脂(つまり成形体を形成する樹脂)との接着性を発揮し、位置ズレや接着不良を抑制することができる。
【0032】
また、金型温度における第一固定層55の弾性率は、好ましくは1.0×10
4Pa以上5.0×10
6Pa以下、より好ましくは5.0×10
4Pa以上3.0×10
6Pa以下、さらに好ましくは8.0×10
4Pa以上1.0×10
6Pa以下である。金型温度における第一固定層55の弾性率を、1.0×10
4Pa以上5.0×10
6Pa以下とすることで、高温の樹脂が導入された際もグラファイトシート積層体81が流されず、グラファイトシート積層体81の位置ズレを防止することができる。さらに、第1固定層55が好適な軟らかさを有するため、導入される樹脂が射出の勢いで第一固定層55に食い込むことで、第一固定層55と樹脂とは広い接触面積を有することができる。また、金型温度は、70℃以上150℃以下(例えば
、80℃)であることが好ましい。
【0033】
更に具体的に、金型温度における第一固定層55の弾性率は、3.0×10
5以上5.0×10
7以下であってもよく、8.5×10
6以上5.0×10
7以下であってもよく、3.0×10
5以上4.0×10
6以下であってもよい。金型温度における第一固定層55の弾性率が当該値の時にも、高温の樹脂が導入された際もグラファイトシート積層体81が流されず、グラファイトシート積層体81の位置ズレを防止することができる。さらに、第1固定層55が好適な軟らかさを有するため、導入される樹脂が射出の勢いで第一固定層55に食い込むことで、第一固定層55と樹脂とは広い接触面積を有することができる。
【0034】
さらに、第一固定層55の弾性率としては、好ましくは金型温度における弾性率が1.0×10
4Pa以上5.0×10
6Pa以下であって、導入樹脂温度における弾性率が7.0×10
4Pa以上5.0×10
7Pa以下であり、より好ましくは金型温度における弾性率が5.0×10
4Pa以上3.0×10
6Pa以下であって、導入樹脂温度における弾性率が8.5×10
4Pa以上3.0×10
7Pa以下であり、さらに好ましくは、金型温度における弾性率が8.0×10
4Pa以上1.0×10
6Pa以下であって、導入樹脂温度における弾性率が1.0×10
5Pa以上1.0×10
7Pa以下である。ここで、金型温度における弾性率とは、すなわち70℃〜150℃のいずれかの温度での弾性率のことである。また、導入樹脂温度における弾性率とは、すなわち230℃〜350℃のいずれかの温度における弾性率のことである。70℃〜150℃のいずれかの温度での弾性率が、230℃〜350℃のいずれかの温度に上昇した際に、上記のような弾性率になる第一固定層55を用いることが好ましい。
【0035】
更に具体的に、導入樹脂温度における第一固定層55の弾性率が、1.0×10
5以上3.2×10
7以下のときに、金型温度における第一固定層55の弾性率は、3.0×10
5以上5.0×10
7以下、8.5×10
6以上5.0×10
7以下、または、3.0×10
5以上4.0×10
6以下であってもよい。また、導入樹脂温度における第一固定層55の弾性率が、1.0×10
5以上1.0×10
7以下のときに、金型温度における第一固定層55の弾性率は、3.0×10
5以上5.0×10
7以下、8.5×10
6以上5.0×10
7以下、または、3.0×10
5以上4.0×10
6以下であってもよい。また、導入樹脂温度における第一固定層55の弾性率が、2.1×10
6以上3.2×10
7以下のときに、金型温度における第一固定層55の弾性率は、3.0×10
5以上5.0×10
7以下、8.5×10
6以上5.0×10
7以下、または、3.0×10
5以上4.0×10
6以下であってもよい。
【0036】
また、第一固定層55は、射出成形時の導入樹脂温度において、弾性率が高いものであることが好ましい。つまり、金型内に導入してきた樹脂が第一固定層55に接触した際に第一固定層55が硬化することで、強固な接着効果を発揮し、樹脂と第一固定層55とを強固に接着し、グラファイトシート積層体81の位置ズレを防止することができる。また、グラファイトシート10と第一固定層55間においても、金型温度において、グラファイトシート10の表面の凹凸に第一固定層55が浸透し、その後導入樹脂温度において、硬化するため、良好な接着性を発揮することができる。つまり、樹脂導入前は、ある程度の軟らかさを有する材料であって、樹脂が接触した際に弾性率が上昇する材料によって、第一固定層55が形成されていることが好ましい。
【0037】
第一固定層55を形成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系、エポキシ系、フェノール系の樹脂などを適宜使用することができる。
【0038】
<第二固定層>
本発明のグラファイトシート積層体80には、
図2のようにグラファイトシート10の第一固定層55側と反対側の主面に第二固定層51が形成されていても良い。第二固定層51は、後述するような支持体を形成する場合には、支持体とグラファイトシート10との位置ズレを防止する役割を果たす。また、第二固定層51は、支持体がない場合にも、グラファイトシート10の機械強度の弱さを補強し、グラファイトシート10の破れや折れを抑制する機能を発現する。
【0039】
第二固定層51としては、導入樹脂温度における弾性率が、好ましくは7.0×10
4Pa以上5.0×10
8Pa以下、より好ましくは8.5×10
4Pa以上3.0×10
8Pa以下、さらに好ましくは1.0×10
5Pa以上1.0×10
8Pa以下のものを選定するのが良い。第二固定層51の導入樹脂温度における弾性率が7.0×10
4Pa以上5.0×10
8Pa以下であれば、グラファイトシート10から第二固定層51が位置ズレすることなく、成形体を得ることができる。
【0040】
導入樹脂温度における第二固定層51の弾性率は、9.6×10
5以上2.1×10
6以下であってもよい。導入樹脂温度における第二固定層51の弾性率が当該値の時にも、グラファイトシート10から第二固定層51が位置ズレすることなく、成形体を得ることができる。
【0041】
さらに、第二固定層51の弾性率としては、好ましくは、金型温度での弾性率が1.0×10
4Pa以上5.0×10
7Pa以下、導入樹脂温度での弾性率が7.0×10
4Pa以上5.0×10
8Pa以下、より好ましくは、金型温度での弾性率が5.0×10
4Pa以上3.0×10
7Pa以下、導入樹脂温度での弾性率が8.5×10
4Pa以上3.0×10
8Pa、さらに好ましくは、金型温度での弾性率が8.0×10
4Pa以上1.0×10
7Pa以下、導入樹脂温度での弾性率が1.0×10
5Pa以上1.0×10
8Pa以下である。
【0042】
更に具体的に、金型温度における第二固定層51の弾性率は、5.0×10
5以上1.0×10
7以下であってもよい。さらに、第二固定層51の弾性率としては、好ましくは、金型温度での弾性率が、5.0×10
5以上1.0×10
7以下、導入樹脂温度での弾性率が、9.6×10
5以上2.1×10
6以下であってもよい。
【0043】
ここで、金型温度での弾性率とは、すなわち70℃〜150℃(例えば
、80℃)のいずれかの温度での弾性率のことである。また、導入樹脂温度での弾性率とは、すなわち230℃〜350℃(例えば、250℃または310℃)のいずれかの温度における弾性率のことである。70℃〜150℃でのいずれかの温度での弾性率が、230℃〜350℃のいずれかの温度に上昇した際に、上記のような弾性率になる第二固定層51を用いることが好ましい。
【0044】
また、第二固定層51は、射出成形時の導入樹脂温度において、弾性率が高いものであることが好ましい。
【0045】
第二固定層51を形成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系、エポキシ系、フェノール系の樹脂などを適宜使用することができる。
【0046】
<支持体>
グラファイトシート積層体には、支持体が固着されていることが好ましい。支持体とは、グラファイトシートの機械的強度を補強するための材料であり、
図3のように、グラファイトシート10が支持体31に固着されることにより、グラファイトシート積層体85は、グラファイトシート10単体の場合に比して高い機械特性(剛性および弾性)を有することができる。このグラファイトシート積層体85を射出成形(インサート成形)に供することで、射出成形時の樹脂圧力(射出圧)に起因するグラファイトシート10の破断や折れ等の不具合を防ぐことができる。
【0047】
支持体31としては、例えば、PETフィルム、アクリルフィルム、ABSフィルム、PENフィルム、PEフィルム等の樹脂フィルムや、アルミ箔、銅箔、SUS箔等の金属箔等が挙げられる。
【0048】
支持体31の形成方法は、特に限定されないが、フィルム状の材料をラミネートによって貼り合わせる方法や、液状の樹脂を塗工によって形成する方法、などが挙げられる。また、支持体31とグラファイトシート10との間に接着剤などの固定層(例えば、第二固定層)を設けることもできる。例えば、グラファイトシート10の主面に形成されている第一固定層55と同様の材料によって固定層を形成することで、グラファイトシート10と支持体31との接着強度を良好に保つことができる。
【0049】
グラファイトシート積層体85の機械強度を高めてグラファイトシート10の破砕等を防止する観点から、支持体31は、引張弾性率が、1GPa以上であることが好ましく、2GPa以上であることがより好ましく、3GPa以上であることがさらに好ましい。支持体31の厚みは、上記の機械強度特性を満足するように適宜に設定され得るが、1μm〜50μmが好ましく、2μm〜25μmがより好ましく、4μm〜18μmがさらに好ましい。支持体31の厚みを1μm〜50μmにすることで、成形体とした際の反りも低減できるため良い。支持体31には、意匠性を持たせるために、色のついた支持体を用いたり、支持体31に印刷やコーティングをしておいても良い。
【0050】
支持体31の厚みは、50μm以下(例えば、1μm〜50μm)であってもよく、25μm以下(例えば、1μm〜25μm)であってもよく、18μm以下(例えば、1μm〜18μm)であってもよく、9μm以下(例えば、1μm〜9μm)であってもよい。
【0051】
<グラファイトシート>
本発明で用いるグラファイトシート10は、高分子グラファイトシートである。高分子グラファイトシートは、例えば、高分子フィルムが熱処理によって炭素化され、ついでグラファイト化されることによって得られる。高分子グラファイトシートとしては、例えばシート面方向の熱伝導が400〜1700W/(m・K)程度、厚さ方向の熱伝導度が5〜20W/(m・K)程度の熱伝導異方性を有するものが好適に用いられる。このような熱伝導異方性の高い高分子グラファイトシートは、例えば、公知の方法により得られる。例えば、ポリイミドフィルムを2400℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトシートは上記の特性を満たし得る。
【0052】
グラファイトシート10の厚みは、1μm〜250μmが好ましく、3μm〜150μmがより好ましく、5μm〜100μmがさらに好ましい。厚みが前記範囲内であれば、本発明の複合成形体が電子機器等に用いられた場合の放熱性が改善されるとともに、複合成形体(換言すれば、電子機器等)の薄型化が可能である。複合成形体の薄型化の観点、および支持体との固着強度を高める観点から、グラファイトシート10の厚みは、40μm以下が特に好ましい。
【0053】
更に具体的に、グラファイトシート10の厚みは、150μm以下(例えば、1μm〜150μm)が好ましく、100μm以下(例えば、1μm〜100μm)が更に好ましく、40μm以下(例えば、1μm〜40μm)が更に好ましく、25μm以下(例えば、1μm〜25μm)が最も好ましい。厚みが前記範囲内であれば、本発明の複合成形体が電子機器等に用いられた場合の放熱性が改善されるとともに、複合成形体(換言すれば、電子機器等)の薄型化が可能である。
【0054】
また、グラファイトシート10による熱伝導率異方性を保持しつつ、グラファイトシート積層体としたときの当該グラファイトシート積層体の弾性や剛性を高めるとの観点から、グラファイトシート10の厚みは、本発明のグラファイトシート積層体全体の5%〜75%が好ましく、7%〜60%がより好ましく、10%〜50%がさらに好ましく、12%〜40%が特に好ましい。グラファイトシート積層体におけるグラファイトシート10の厚み比率が前記範囲であれば、グラファイトシート積層体の機械特性(剛性、弾性等)や熱的特性(熱線膨張係数等)は、主に支持体31の特性に支配される。そのため、射出成形時のグラファイトシート10の変形・破砕や位置ズレが抑止されるとともに、射出成形樹脂とグラファイトシート10との熱線膨張係数の差に起因する複合成形品の反りも抑制される傾向がある。
【0055】
なお、支持体31が形成されていない樹脂成形体の場合も、グラファイトシート10による熱伝導率異方性を保持しつつ、グラファイトシート積層体としたときの当該グラファイトシート積層体の弾性や剛性を高めるとの観点から、グラファイトシート10の厚みは、本発明のグラファイトシート積層体全体の5%〜75%が好ましく、7%〜60%がより好ましく、10%〜50%がさらに好ましく、12%〜40%が特に好ましい。グラファイトシート積層体におけるグラファイトシート10の厚み比率が前記範囲であれば、支持体31が形成されている時と比較すれば若干劣るものの、従来技術と比較して、射出成形時のグラファイトシート10の変形・破砕や位置ズレが抑止されるとともに、射出成形樹脂とグラファイトシート10との熱線膨張係数の差に起因する複合成形品の反りも抑制される傾向がある。
【0056】
射出成形時のグラファイトシート10の破砕、位置ズレ、外観不良等を防止するため、グラファイトシート10自体の弾性率は、好ましくは1GPa以上、より好ましくは5GPa以上であると良い。一方、本発明者らの検討によれば、グラファイトシート10を支持体31との積層体として射出成形に供する場合は、グラファイトシート10の厚みが小さい方が、樹脂成形体の反りが抑制される傾向がある。そのため、グラファイトシート10の厚みは前記範囲であることが好ましい。
【0057】
グラファイトシート10は、貫通孔を有していることが好ましい。その開孔率は、好ましくは2%以上40%以下、より好ましくは3%以上30%以下、さらに好ましくは5%以上20%以下である。グラファイトフィルム10の開孔率が2%以上であれば、貫通孔が反りを緩和させる働きをし、反りの小さな樹脂成形体を得ることが出来る。また、グラファイトフィルム10の開孔率が40.0%以下であれば、高い放熱性を保つことができる。
【0058】
<グラファイトシート積層体の厚み>
グラファイトシート積層体の厚みとしては、好ましくは250μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。グラファイトシート積層体の厚みを250μm以下とすることで、樹脂成形体の反りも低減できるため良い。
【0059】
<グラファイトシート積層体の引張り強度>
グラファイトシート積層体の強度としては、引張り強度が、好ましくは80MPa以上、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは200MPa以上である。グラファイトシート積層体の引張り強度を80MPa以上とすることで、射出成形時のグラファイトシート積層体の破断や折れなどを抑制することができる。
【0060】
<グラファイトシート積層体の構成>
本発明のグラファイトシート積層体は、グラファイトシートの一方の主面に第一固定層を有する。また、第一固定層55は、
図1のように射出樹脂と接するように金型内に配置され、グラファイトシート積層体81の位置ズレを防止する。
【0061】
第一固定層55側と反対側のグラファイトシート10の主面には、
図2のように第二固定層51が形成されていても良い。第二固定層51は、後述するような支持体を形成する場合には、支持体とグラファイトシート10との位置ズレを防止する役割を果たす。また、支持体がない場合にもグラファイトシート10の機械強度の弱さを補強し、破れや折れを抑制する機能を発現する。
【0062】
更に
図3のように、支持体31が、グラファイトシート10における第二固定層51とは反対側の面に形成されていても良い。支持体31は、グラファイトシート10の機械強度の弱さを補強し、グラファイトシート10の破れや折れを抑制する機能を発現する。
【0063】
また、樹脂の射出圧による位置ズレや変形を効率的に抑止するためには、
図4のように第一固定層55がグラファイトシート10の側周部を覆っており、支持体31(または第二固定層51)と第一固定層55とによって、グラファイトシート10が封止されていてもよい。なお、グラファイトシート10の側面は、第二固定層51によって覆われていてもよい。また、第二固定層51と第一固定層55との両方が、グラファイトシート10の側面を覆っていてもよい。
【0064】
<樹脂成形体>
図5は、一実施形態にかかる樹脂成形体100を表す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。本発明の樹脂成形体100は、グラファイトシート積層体80と樹脂90とが一体成形されたものである。
【0065】
<樹脂成形体の製造方法>
樹脂成形体は、
図1のようにグラファイトシート積層体81を成形金型内に配置した後、その金型内に樹脂材料を射出成形するインサート成形法によって製造され得る。本発明の製造方法に用いられる金型は、特に限定されず、一般の射出成形に用いられているものが使用できる。
【0066】
グラファイトシート積層体81は、
図1のように、一方の射出成形型のキャビティー面110にグラファイトシート積層体81の第一固定層55側とは反対側の主面が接触するように沿わされる。その後に、射出成形型を型締めしてキャビティーに溶融状態の樹脂を射出して(換言すれば、一方の射出成形型のキャビティー面110と、他方の射出成形型の対向面120との間に溶融状態の樹脂を射出して)
、グラファイトシート積層体81と樹脂とを接着させる。つまり、第一固定層55が導入樹脂と接触するように、グラファイトシート積層体81は金型内に配置される。そして、グラファイトシート積層体81の第一固定層55側と反対側の主面は、樹脂成形体の表面層の一部として形成されることになる。
【0067】
金型内でのグラファイトシート積層体81の設置位置は特に限定されないが、樹脂導入口の直下に、グラファイトシート積層体81が設置されることが好ましい。樹脂導入口の直下において、樹脂の射出圧力は、グラファイトシート積層体81の表面に対して垂直方向へ向かう圧力成分が大きいため、グラファイトシート積層体81に対して、金型壁面に向かって押し付けられる力が付与される。一方、グラファイトシート積層体81の面方向の圧力成分は小さいため、樹脂の射出圧によるグラファイトシート積層体81への剪断力が抑制され、グラファイトシート10が射出圧によって流されることによる位置ズレや、グラファイトシート10の変形等を防ぐことができる。
【0068】
また、グラファイトシート積層体81が、金型内の樹脂導入口から最も遠い位置に配置されることも好ましい。樹脂導入口から離れた位置では、圧力損失に伴って射出圧が小さくなっているため、グラファイトシート積層体81に加わる剪断力が抑制され、グラファイトシート10の位置ズレや、グラファイトシート10の変形等を防ぐことができる。
【0069】
グラファイトシート積層体81が形成されている部分のキャビティーの厚み(換言すれば、一方の射出成形型のキャビティー面110と、他方の射出成形型の対向面120との間の距離)が、1.0mm以下、さらには0.8mm以下、特には0.6mm以下であるとき、グラファイトシート積層体81に加わる射出圧力が高くなるため、インサートされる材料の位置ズレや変形が起きやすくなるが、本発明のグラファイトシート積層体81を用いれば、位置ズレや変形なく、射出成形することが可能になる。
【0070】
(射出成形に用いる樹脂)
本発明の射出成形に用いる樹脂としては、特に限定されず、一般的な射出成形に用いられる樹脂が使用できる。射出成形に用いられる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMMA)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等のビニル系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系ポリマー、ナイロン6やナイロン6,6等のポリアミド系ポリマー、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶性ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、シンジオタクチックポリスチレン、フッ素系ポリマー、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルフォン(PES)、芳香族ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、その他のエンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。
【0071】
特に、厚みが小さく、かつ高強度の成形体を得るためには、ガラス繊維やカーボン繊維を含む繊維強化樹脂が好適に用いられる。このような繊維強化樹脂は、溶融粘度が高く、射出成形時の樹脂の圧力が高くなる傾向がある。そのため、グラファイトシートが単体で射出成形に供された場合は、グラファイトシートの変形による外観不良や、グラファイトシートの位置ズレを生じやすい。一方、本発明では、グラファイトシートが支持体に固着されたグラファイトシート積層体が用いられるため、溶融粘度の高い繊維強化樹脂が用いられた場合でも、外観不良や位置ズレが抑制される。また、支持体の表面の特性を調整することによって、表面の滑り性を改善して、樹脂の射出圧によるグラファイトシート積層体への剪断応力を低減させることもできる。
【0072】
勿論、本発明は、上述した支持体を必須構成とはしない。本発明は、支持体が無い場合であっても、従来技術と比較して、溶融粘度の高い繊維強化樹脂が用いられた場合でも、外観不良や位置ズレが抑制される。更に、本発明は、支持体が無い場合であっても、従来技術と比較して、樹脂の射出圧によるグラファイトシート積層体への剪断応力を低減させることもできる。
【0073】
(射出成形時の導入樹脂温度)
本発明の射出成形時の導入樹脂温度は、一般的な射出成形に用いられる条件が使用できる。なお、グラファイトシートは面方向に熱伝導率が高く、厚み方向への熱伝導率が低いため、隣接して配置される樹脂層や支持体等に対して断熱効果を有する。そのため、グラファイトシート積層体のグラファイトシート側の面に射出成形が行われる場合は、樹脂温度が、樹脂層や支持体の耐熱温度を多少上回る場合でも、熱による変質を抑制することができる。
【0074】
本発明の射出成形時の導入樹脂温度が、230℃以上、260℃以上、290℃以上、310℃以上になるにつれて、グラファイトシート積層体に加わる熱が高くなるため、インサートされる材料の位置ズレや変形が起きやすくなるが、本発明のグラファイトシート積層体を用いれば、位置ズレや変形なく、射出成形することが可能になる。
【0075】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0076】
<1>本発明は、グラファイトシートの少なくとも一方の主面に、射出成形時に導入樹脂温度において弾性率が7.0×10
4Pa以上5.0×10
7Pa以下となる第一固定層が接触する構成を含むグラファイトシート積層体を、一方の射出成形型のキャビティー面にグラファイトシート積層体の第一固定層側と反対側主面が接触するように沿わせた後に、射出成形型を型締めしてキャビティーに溶融状態の樹脂を射出してグラファイトシート積層体と樹脂とを接着させることを特徴とする樹脂成形体の製造方法に関する。
【0077】
<2>グラファイトシート積層体の第一固定層側と反対側主面には射出成形時に導入樹脂温度で弾性率が7.0×10
4Pa以上5.0×10
8Pa以下となる第二固定層が形成されていることを特徴とする<1>に記載の樹脂成形体の製造方法に関する。
【0078】
<3>射出成形時の導入樹脂温度が230℃以上350℃以下であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の樹脂成形体の製造方法に関する。
【0079】
<4>更に、第二固定層のグラファイトシートと反対側の主面には支持体が形成されていることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法に関する。
【0080】
<5>グラファイトシートの一方の主面に、80℃で弾性率が1.0×10
4Pa以上5.0×10
6Pa以下、250℃で弾性率が7.0×10
4Pa以上5.0×10
7Pa以下である第一固定層がグラファイトシートと接触する構成を含むグラファイトシート積層体に関する。
【0081】
<6>更に、グラファイトシートの他方の主面に80℃での弾性率が1.0×10
4Pa以上5.0×10
7Pa以下、250℃で弾性率が7.0×10
4Pa以上5.0×10
8Pa以下である第二固定層がグラファイトシートと接触する構成を含む<5>に記載のグラファイトシート積層体に関する。
【0082】
<7>第一固定層は、250℃における弾性率が80℃における弾性率よりも高いことを特徴とする<5>又は<6>に記載のグラファイトシート積層体に関する。
【0083】
<8>第二固定層は、250℃における弾性率が80℃における弾性率よりも高いことを特徴とする<5>〜<7>のいずれかに記載のグラファイトシート積層体に関する。
【0084】
<9>第二固定層は、グラファイトシートの主面と反対側に形成され、更に支持体が第二固定層のグラファイトシートとは反対側の面に形成されていることを特徴とする<6>〜<8>のいずれかに記載のグラファイトシート積層体に関する。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げて、本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0086】
なお、各実施例および比較例において、樹脂成形体の成形性等は、以下の基準により評価を行った。
【0087】
[評価方法]
<引張強度の測定>
グラファイトシート積層体の引張強度の測定には、引張試験機(東洋精機製作所製 ストログラフVES1D)を用い、JIS K 7078に準拠して測定を行った。測定は、チャック間距離100mm、引張速度50mm/分、室温下(25℃の雰囲気)で行い、3回測定した際の平均値を引張強度とした。
【0088】
[樹脂成形体の評価]
<位置ズレ>
樹脂成形体におけるグラファイトシート積層体の位置ズレの有無は、目視による評価および面積保持率により評価した。面積保持率は、複合積層体のグラファイトシート(GS)のうち、金型内の配置場所(30mm×30mmの領域)内で保持されている部分の面積率(%)である。また、目視による評価は、以下の基準によりおこなった。
A:グラファイトシート積層体が、金型内に配置した場所からずれることなく、元の面形
状を保持している状態
B:グラファイトシート積層体が金型内に配置した場所からわずかにずれているが、成形体の中に保持されている状態
<外観(形態保持性)>
複合成形体の外観は、グラファイトシート積層体の皺・割れ・破れの状態を目視で評価した。
【0089】
A:グラファイトシート積層体が皺なく、割れがない状態
B:グラファイトシート積層体に皺が入ったが、割れがない状態
C:グラファイトシート積層体が割れて元の大きさを保持できず、ばらばらになった状態(インサート成形では複合成形体が得られない)
<反り>
樹脂成形品を水平面上に載置した際の反り量(水平面から成形品の端面までの距離)により評価した。
【0090】
A:目視では反りが確認できない(反り量2.0mm未満)
B:目視にて反りが確認でき、反り量は2.0mm以上[固定層]。
【0091】
[固定層]
第一固定層、第二固定層として、下記の材料を用いた。尚、固定層A〜固定層Cの弾性率を表1に示す。
<固定層A>
アクリル系樹脂A(日栄加工社製、NeoFix10)
<固定層B>
エポキシフィルム(トーヨーケム社製、TSU0041SI−10DL)
<固定層C>
アクリル系樹脂B(十条ケミカル社製、JELCONバインダーインキ G−2S)
<固定層D>
アクリル系樹脂C
<固定層E>
アクリル系樹脂D
<弾性率の測定>
ティー・エー・インスツルメント社製動的粘弾性測定装置ARESを用い、サンプル厚み0.5mm、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、25℃〜320℃の温度域で測定した。
【0092】
【表1】
[実施例1]
<グラファイトシート積層体の作製>
支持体として、厚み18μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を用い、この支持体の一方の面の全体に、第二固定層としてアクリル系樹脂B(固定層C)を、乾燥後の厚みが18μmとなるように塗布した。このアクリル系樹脂B(固定層C)上に、厚み40μmのグラファイトシート(熱伝導率1500W/(m・K))を載せ、支持体とグラファイトシートとを固着した。その後、
図3のように、第一固定層として、さらにアクリル系樹脂B(固定層C)が10μmの厚みで形成された、グラファイトシート積層体85を得た。
【0093】
<射出成形>
40mm×60mmの大きさにカットした上記のグラファイトシート積層体85を、PETフィルム側の面が金型内面と接するように配置し、
図1のようにグラファイトシート積層体の第一固定層が樹脂射出面となるように、射出成形機の金型内に設置した。次いで、30%ガラス繊維強化ポリカーボネートを射出成形して、グラファイトシート積層体85が成形体の内部であって、かつ、成形体の表面に露出するように挿入された、厚み0.6mm、サイズ60×120mmのグラファイトシート−樹脂複合成形体を得た。グラファイトシート積層体85の金型内への固定は、吸引口45により行った。金型温度は80℃、射出樹脂を導入する樹脂導入温度は310℃であった。結果を表2に示す。
【0094】
[比較例1]
第一固定層としてアクリル系樹脂B(固定層C)の代わりに、エポキシフィルム(固定層B)を用いたこと以外は実施例1と同様である。尚、エポキシフィルムは、半硬化(Bステージ)のエポキシフィルムとグラファイトシートとを貼り合わせ、熱プレスにより80℃、常圧にて30分保持後、130℃、5kg/cm
2の圧力にて90分保持し、エポキシ樹脂を硬化させることで形成した。結果を表2に示す。
【0095】
[比較例2]
第一固定層としてアクリル系樹脂B(固定層C)の代わりに、アクリル系樹脂A(固定層A)を用いたこと以外は実施例1と同様である。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
比較例1では、250℃の弾性率が
高すぎるために、グラファイトシート積層体の位置ズレが発生したが、実施例9のように弾性率を
下降させることによって、グラファイトシート積層体の位置ズレが改善した。
【0097】
一方、比較例2では、250℃の弾性率が
低すぎるために、射出樹脂とグラファイト積層体との密着性が悪く、グラファイトシート積層体の位置ズレが発生したが、実施例10のように弾性率を
上昇させることによって、グラファイトシート積層体の位置ズレが改善した。
【0098】
更に、実施例1のように250℃の弾性率を9.6×10
5に調整することによって、グラファイトシート積層体の位置ズレを無くすことができた。
【0099】
[実施例2]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を用いたこと以外は、実施例1と同様である。結果を表3に示す。
【0100】
[実施例3]
厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を用いたこと以外は、実施例1と同様である。結果を表3に示す。
【0101】
[実施例4]
厚み9μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を用いたこと以外は、実施例1と同様である。結果を表3に示す。
【0102】
[実施例5]
厚み40μmのグラファイトシート(熱伝導率1500W/(m・K))に、第一固定層としてアクリル系樹脂B(固定層C)を厚み30μmで形成し、グラファイトシート積層体を得た。射出成形においては、グラファイトシート積層体のグラファイトシート面が金型内面と接するように配置し、
図1のように、グラファイトシート積層体の第一固定層が樹脂射出面となるように、射出成形機の金型内にグラファイトシート積層体を設置し射出成形を行った。それ以外は実施例1と同様である。結果を表3に示す。
【0103】
[実施例6]
第一固定層としてアクリル系樹脂B(固定層C)を厚み10μmで形成したこと以外は実施例5と同様である。結果を表3に示す。
【0104】
[比較例3]
グラファイトシート積層体の代わりにグラファイトシートそのものを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
【0105】
【表3】
引張り強度の小さいグラファイトシート単体を用いた比較例3では、射出時の樹脂の勢いでグラファイトシートが破れてしまい、グラファイトシートが複合された成形体を得ることができなかった。一方、グラファイトシートに厚み10μmの第一固定層を形成した実施例6では、第一固定層がグラファイトシートの強度を補強したことによって、折れは発生したが、破れは抑制されていた。また、厚み30μmの第一固定層を形成した場合、破れ、折れともに抑制することができた。更に、第一固定層が形成されていない側の面に支持体としてPETフィルムを形成した実施例1〜4においても、支持体であるPETフィルムがグラファイトシートを補強したことによって、破れ、折れを抑制することができた。ただし、実施例2のように支持体の厚みが50μmと厚くなると、成形体に反りが発生した。
【0106】
[実施例7]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の代わりにポリエチレンナフタレートフィルム(PEN)を用いたこと以外は実施例1と同様である。結果を表4に示す。
【0107】
【表4】
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の代わりにポリエチレンナフタレートフィルム(PEN)を用いた場合でも、PETを用いた場合同様、良好な成形体を得ることができた。
【0108】
[実施例8]
グラファイトシートにNCドリル加工にて直径0.20mmの貫通孔を貫通孔ピッチ0.50mmで形成し(開孔率12.6%)、貫通孔を有するグラファイトシートを得た。グラファイトシートとして、貫通孔を有するグラファイトシートを用いたこと以外は、実施例2と同様である。結果を表5に示す。
【0109】
【表5】
実施例8のようにグラファイトシートに貫通孔を形成することで、成形後の収縮の応力を貫通孔が吸収し、反りが低減したものと考えられる。
【0110】
【表6】
[実施例9]
第一固定層としてアクリル系樹脂D(固定層E)を厚み10μmで形成したこと以外は実施例1と同様である。結果を表2に示す。
【0111】
比較例1では、250℃における第一固定層の弾性率が
高すぎてグラファイト積層体の位置ズレが発生したが、実施例9のように第一固定層の弾性率を
下降させることで、グラファイト積層体の位置ズレが改善した。
【0112】
[実施例10]
第一固定層としてアクリル系樹脂C(固定層D)を厚み10μmで形成したこと以外は実施例1と同様である。結果を表2に示す。
【0113】
比較例2では、250℃における第一固定層の弾性率が
低すぎるため、グラファイト積層体と射出樹脂との密着性が悪く、グラファイト積層体の位置ズレが発生したが、実施例10のように第一固定層の弾性率を
上昇させることで、グラファイト積層体の位置ズレが改善した。
【0114】
[実施例11]
グラファイトシートの厚みを150μmとしたこと以外は実施例1と同様である。結果を表6に示す。
【0115】
[実施例12]
グラファイトシートの厚みを100μmとしたこと以外は実施例1と同様である。結果を表6に示す。
【0116】
[実施例13]
グラファイトシートの厚みを25μmとしたこと以外は実施例1と同様である。結果を表6に示す。
【0117】
実施例1、11〜13などから、グラファイトシートの厚みを薄くすれば、樹脂成形品の反りを低減できることが明らかになった。
【0118】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。