【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「半導体技術を用いた高感度・高精度化学物質検出デバイス・システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面は模式的なものであり、正確な縮尺ではない。
【0012】
実施形態に従うバイオ情報計測装置10は、
図1に示すように、計測デバイス20と、特定の照明強度で光照射する照明デバイス30と、照明デバイス30の光照射を制御する制御部40とを備える。照明デバイス30は、計測デバイス20が備えるセンサマトリックス内の特定の領域を光照射する。計測デバイス20と、照明デバイス30と、制御部40とは、電気的に接続している。
【0013】
計測デバイス20によるセンシングは、光情報センシング、化学物質情報センシング、電気情報センシングを含む。ここで、光情報センシングは、計測デバイス20のセンシング領域に対向して配置される照明デバイス30から照射される光を受けて行われる。実施形態の装置によれば、照射は、制御部40の制御下で計測デバイス20の化学物質情報センシングおよび/または電気情報センシングにより得られた結果に基づいて行われる。照射の条件は、照明デバイス30による光照射領域、光照明強度、並びに光照射時間およびタイミングなどである。これによってより適切に光照射が制御される。そのため、実施形態に従うバイオ情報計測装置10は、従来よりも経済的、効率的に測定対象物についての計測を実施することが可能となる。
【0014】
このようなバイオ情報計測装置10は、例えば次のように作用し得る。(1)照明デバイスからの光照射をオフする。(2)化学物質情報センシングおよび/または電気情報センシングを行い細胞信号を計測する。(3)照明デバイスの解像度、計測デバイスの解像度および光の拡散を考慮し、照明範囲を決定する。(4)照明デバイスが、細胞信号の得られた画素領域のみに対してであっても光照射し得る。(5)上記(1)〜(4)を繰り返すことによって動画像を取得する。(6)照明強度を照射領域ごとに適切に制御する。
【0015】
培養細胞がバイオ情報計測装置10における測定の測定対象物である場合、例えば、生体から単離された細胞は、計測デバイス20が備えるセンサマトリックス上に播種された後にインキュベータ内に置かれて培養され得る。このように培養された状態で、バイオ情報計測装置10は所望の項目についての測定を行い得る。培養当初においては、センサマトリックス上に存在する細胞の数は少ない。実施形態に従えば、化学物質情報センシングおよび/または電気情報センシングにより取得した情報に基づいて、細胞の存在する領域を特定できる。従来の装置ではセンサマトリックス全体に光照射して観察を行っている。従って、照明デバイス30からの光照射は、例えば、特定された領域にのみに制限することも可能であり、より経済的である。
【0016】
一方、生物学的試料では、光刺激への暴露がその正常または一般的な病態に対して大小の影響を与え得る。従って、そのような測定対象物への光照射は最小限に抑えられることが好ましい場合がある。実施形態のバイオ情報計測装置10によれば、例えば、細胞の状況に応じて光照射条件または光照射の有無を選択することが可能である。測定対象物である細胞が、例えば、アポトーシスや壊死を生じている、或いは衰弱しているときには、光照射が最小限にすることが要望され得る。その場合、光照射に先駆けて、アポトーシス、壊死または衰弱を示唆する指標、例えば、pH値、細胞代謝産物などの指標、を測定対象物について測定し、光照射条件または光照射の有無を選択することが可能である。これにより効果的に計測データを得ることが可能となる。また、望まれない光照射を防止することが可能であるので、より正確な結果を得ることが可能となる。このような場合、光照射条件または光照射の有無を決定するために使用される閾条件は、測定対象物の特定の状況を示す何れかの指標であり得る。また、閾条件は、予め定められた閾値、予め定められたパターンであればよく、光照射条件または光照射の有無の決定には、例えば、閾値判定、パターンマッチング、機械学習、統計処理を用いた判定などが使用され得る。しかしながらこれらに限定されるものではない。閾条件とは、例えば、光照射を行うか否かを判断するための閾となる条件である。例えば、「pHが特定の値よりも小さいときには、照射を行う」、「pHが特定の値よりも大きいときには、光を照射しない(または消灯する)」などが閾条件の1例である。
【0017】
以下、更にバイオ情報計測装置10についてより詳細に説明する。
【0018】
[計測デバイス]
計測デバイス20は、基板21を備え、この基板21表面にはセンサマトリックス22が存在している。センサマトリックス22は、複数のセンサ画素23を含むアレイ、即ち、センサ画素アレイである。1つのセンサ画素23は、1つの基本ブロックから構成されている。センサマトリックス22は、同じ構成の基本ブロックが所望の数で整列してマトリックスを形成している。
【0019】
計測デバイス20で検出される信号は、測定対象物からの細胞信号であり得る。「検出されるべき情報」は、光情報、イオン情報、電気情報、更に、温度およびその他の情報などであり得る。光情報は、例えば、光強度、蛍光強度、生物発光(バイオルミネッセンス)強度、りん光強度および自家蛍光強度などである。電気情報は、例えば、電位、電流値、電圧値およびインピーダンスなどである。更に、これらの情報は、所望の項目の経時的な変化を含み得る。検出されるべき情報に応じてセンサ素子の種類が選択され得る。
【0020】
基本ブロックは、検出されるべき情報に応じた種類のセンサ素子24を少なくとも2種類含む。そのうちの1種類は、光センサ素子であり、これによりセンシングされるべき測定対象物に関する光情報を取得する。光情報とは、測定対象物に光を照射して得られる何れかの光に関する情報である。光センサ素子は、光信号をセンシングし、それを電気信号に変換する半導体素子であればよい。センシングされる光は、可視光、紫外光、赤外光、蛍光、りん光、発光などであり得る。これにより、測定対象物の形態学的情報、測定対象物の分布、並びに測定対象物に関連する物質の分布、濃度および挙動などに関する情報を得ることができる。そのような光センサ素子の例は、フォトダイオードで検知された光を電気信号に変換するCMOSイメージセンサ、SPAD(Single photon Avalanche Diode)で検知された光を電気信号に変換するSPADイメージセンサおよびCCDイメージセンサなどの固体撮像素子を用いるイメージセンサ、サーモパイルセンサなどの熱電変換素子を用いるセンサなどであり得る。
【0021】
基本ブロックが含む光センサ素子以外のセンサ素子は、化学物質センサ素子および/または電気センサ素子などであり得る。
【0022】
化学物質センサ素子は、化学物質の有する特性またはその変化をセンシングし、電気信号に変換する半導体素子であり得る。それにより化学物質の検出、物理的、化学的または生化学的変化を検出する。化学物質センサ素子は、例えば、H
+、K
+、Ca
2+などのイオン、アセチルコリンなどの神経伝達物質、細胞内若しくは細胞外で生じる代謝産物または代謝され得る物質などの代謝物、特定の抗原若しくは抗体またはそれらに由来するタンパク質などをセンシングし、検出されるべき化学物質に由来する情報に基づく信号を電気信号に変換する半導体センサ素子である。化学物質センサ素子の例は、イオン感受性または化学的電界効果トランジスタ、ISFET、CHEMFETなどであり得る。
【0023】
電気センサ素子は、測定対象についての電気情報を取得する半導体素子である。電気センサ素子は、細胞の活動電位などの電位情報、細胞接地度、細胞間の接着または接触度、細胞等の測定対象の活性化または活性化状態などを検出するために電位、電流値、電圧値、インピーダンスをセンシングし、電流または電圧信号を生成する半導体素子であり得る。更に、センサ素子は、温度センサ素子であってもよい。各素子におけるセンシングおよびセンシングにより得られた情報の電気信号への変換などは制御系の制御下で行われ得る。またその他の物質を検出するためのセンサ素子が含まれてもよい。電気センサ素子の例は、電極を用いる半導体センサ、半導体電圧センサなどであり得る。
【0024】
実施形態に従うセンサマトリックス22では、光センサ素子以外の種類のセンサ素子を少なくとも1種類が選択されて、光センサ素子と組み合わせて基本ブロックに含まれる。
【0025】
基本ブロックが含む複数のセンサ素子は、所望の数でマトリックスを形成している。基本ブロック内に含まれる1つのセンサ素子は、サブ画素を提供している。即ち、センサマトリックス22を構成する複数のセンサ画素23のそれぞれは、基本ブロックにより提供される。そして各センサ画素23は、複数のサブ画素から構成されている。
【0026】
センサ素子は、計測デバイス20の表目側を向くようにセンシング部を備える(図示せず)。1つのサブ画素は、1つのセンサ素子によって提供され、センサ素子のセンシング部に相当する。このセンシング部が1つのサブ画素に相当し、センサ画素23は、複数のサブ画素を含んでなる。1つのセンサ画素23内には、サブ画素が所望の数でサブマトリックスを形成している。
【0027】
センサ画素23の例を
図2に示す。
図2に示すセンサ画素23は、二行二列でマトリックス状に並んでいる4つのサブ画素を備える。4つのサブ画素のそれぞれは、センサ素子のセンシング部である。
図2(a)に示す4つのセンシング部は、第1の光センシング部25a、第2の光センシング部25a’、第1のpHセンシング部25bおよび第2のpHセンシング部25b’である。センシング部25a,a’,b,b’は、互いに異なる種類のセンシング部が互いに隣り合うように配置されている。即ち、第1の光センシング部25aの一辺は、第1のpHセンシング部25bの一辺と接しており、第1のpHセンシング部25bの他辺は、第2の光センシング部25a’の一辺と接しており、第1の光センシング25aの他辺は、第2のpHセンシング部25b’の他辺と接しており、第2のpHセンシング部の25b’の他辺は、第1の光センシング25aの他辺と接している。
【0028】
各センサ画素の大きさは、例えば、300nm×300nm〜20μm×20μm、300nm×300nm〜10μm×10μm、300nm×300nm〜1μm×1μmなどの範囲であってもよく、センサ素子の種類に依存して大きさを変更してもよい。それ以外の画素の場合においては、例えば、感知されるべき信号の大きさに依存して画素の大きさを決定してもよい。センサ画素間のピッチは、例えば、0.3μm〜30μmであってもよいが、これに限定するものではない。
【0029】
図2(b)の例ではセンサ画素23は、光センシング部25a、pHセンシング部25b、カリウムイオンセンシング部25cおよびナトリウムイオンセンシング部25dを含む。このセンサ画素23では、1つのセンシング部が一辺を接して隣り合うのは、検出要素の種類の違うセンシング部である。
【0030】
図2(c)に例として示すセンサ画素23では、センサ画素23に含まれる全てのセンシング部は、互いに異なる情報または項目を検知するものであり得る。
【0031】
1つの実施形態によれば、このような基本ブロックを1つのセンサ画素23として複数含むセンサマトリックス22が、計測デバイス20の1つの面を構成し、その上に存在する測定対象物、例えば、センサマトリックス22上で培養された細胞について、そのバイオ情報を二次元的なイメージとして取得する。
【0032】
このようにセンサ素子のセンシング部が、1つのサブセンサ画素25を提供し、複数のサブセンサ画素25から構成される基本ブロックが1つのセンサ画素23を提供する。複数のセンサ画素23は、所望の数でマトリックス状に並んでセンサ画素アレイを構成する。即ち、センサマトリックス22は、所望の数でマトリックスを形成している複数のセンサ画素の集合体である。
【0033】
計測デバイス20は、センサマトリックス22が提供する二次元領域上に存在している測定対象物についての光学的情報と、生化学的情報および/または電気的情報とを二次元領域上での位置情報と対応付けて取得する。得られた情報から、二次元画像が作製され得る。光センサ素子により得られる光信号から作製される画像は、顕微鏡により撮像された画像の代替物として使用され得る。
【0034】
[照明デバイス]
図1は、照明デバイス30が、計測デバイス20のセンサマトリックス22上の特定の領域に向けて特定の光31a,31b,31cを照射しているところを示している。光31a,31b,31cは、センサマトリックス22上に細胞が存在している3つの領域に対して選択的に行われている。この例に示す照明デバイス30は、センサマトリックス22に対向する面に複数の照明ユニット32を備えている。照明ユニット32は、センサマトリックス22に対向する照明デバイス30の1つの面にそれぞれに所望の数でマトリックス状に並んでいる。これらの照明ユニット32は、照明ユニットアレイを構成している。照明ユニット32は、センサマトリックス22の特定の領域を選択的に照射することが可能であるように、センサマトリックス22に含まれるセンサ画素23と同数でもよく、センサ画素23よりも少なくてもよく、センサ画素23よりも多くてもよい。また、センサ画素23の大きさと照明ユニット32の大きさは、互いに同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0035】
照明デバイス30と、センサマトリックス22とは、互いに位置決めがされており、制御部40の制御下で照明デバイス30からの光照射は、センサマトリックス22の特定の領域に対して特定の照明強度で行われる。
【0036】
照明ユニット32は、例えば、有機EL、LEDまたはレーザーなどであってよい。また複数の照明ユニットが所望の数でマトリックスを形成してもよく、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、レーザー、レーザーアレイ、LEDアレイまたはレーザースキャナであってもよい。これらの有機ELディスプレイ、LEDアレイまたはレーザースキャナは、1つ以上の照明ユニットを含み得る。照明デバイス30による計測デバイス20に対する照明は、面発光、点発光または線発光で行われてもよい。例えば、点発光または線発光の場合、照明デバイス30が複数の照明ユニットを含んでいる場合であっても、或いは単一の照明ユニットの場合であっても、照明ユニットにより提供される二次元領域を端から端へとスキャンニングするように光照射する照明ユニットおよび/または計測デバイスの位置を移動させればよい。
【0037】
照明デバイスが複数の照明ユニットを含むとき、それらの照明ユニットは互いに波長の異なる光を照射してもよい。異なる波長を照射するために、照明デバイスは、照明ユニットの光射出部にフィルタを備え得る。1つの領域に照射される光の例は、赤色光、緑色光、青色光、白色光などの可視光、紫外光および赤外光、並びにこれらの中から選択される2つ以上の組み合わせなどであってもよく、光色に限らず特定の波長を有する光または互いに異なる複数の波長の光の組み合わせであってもよく、所望に応じて選択されればよい。
【0038】
また、照明ユニットから照射された光が、光センシング部に入射する角度(即ち、入射角度)は、所望に応じて選択され得る。例えば、照明ユニットから照射された光が、光センシング部に垂直に入射してもよく、あるいは、光センシング部に対して斜め方向から入射してもよい。
【0039】
図3に、照明ユニットから照射された光が、光センシング部29bに対して斜め方向から入射する例を示す。
図3(a)は、互いに波長の異なる3つの光を1つの領域に照射するための照明ユニット群の例である。この例では、照明ユニット群は、第1の特定の波長を照射する第1の照明ユニット32aと、第2の特定の波長を照射する第2の照明ユニット32bと、第3の特定の波長を照射する第3の照明ユニット32cとを備える。この照明ユニット群は、照明デバイス30aのセンサマトリックス22aの所望の領域に対向する面33aに形成された凹部34内に配置される。第1の照明ユニット32aは、対応する位置にある光センシング部29aに平行して直上に配置される。第1の照明ユニット32aから照射された光は、直下にある光センシング部29aに垂直に入射する。第2の照明ユニット32bから照射された光は、斜めに、即ち、90°未満の入射角度θで光センシング部29aに入射する。同様に第3の照明ユニット32cから照射された光は、斜めに、即ち、90°未満の入射角度θ’で光センシング部29aに入射する。第1の照明ユニット32aから光が照射されているときには、第2または第3の照明ユニット32b,32cからは、光照射しないように制御され得る。即ち、第1、第2、第3の照明ユニット32a,32b,32cの何れかから光が照射されているときには、残りの照射ユニットからは光が照射されなくてもよい。また、対応する光センシング部29aは、検出すべき波長を選択的に入射させるためにフィルタを備えてもよい。フィルタと組み合わせて使用する場合には、入射角度が90°未満である方がフィルタによる波長選択により有利である。
【0040】
図3(b)は更なる光照明ユニットの例を示す。この光照明ユニット32dは、照明デバイス30bの下方にある光源35と、光源35から照射された光を反射することにより光路を変更し、センサマトリックス22bの所望の領域に光照射するミラー36a,36bおよび36c(ミラー36と総称する)と、このミラー36のセンサマトリックス22bに対する角度を所望に応じて変更または調整するミラー角度変更機構37とを備える。例えば、ミラー36は、デジタルミラーデバイス(DMD)である。使用時の光照明ユニット32dは、光源35から光を照射し、照射された光を照明デバイス30bのセンサマトリックス22bに対向する面33bに固定されているミラー36で反射させてセンサマトリックス22bの所望の領域に方向付ける。それによりセンサマトリックス22bの特定の領域に対して光を照射し、そこに存在する光センシング部29bに対して所望の角度で入射させる。
【0041】
[制御部]
バイオ情報計測装置10の制御は、制御部40により行われる。計測デバイス20は、二次元領域上での位置情報と対応付けて、測定対象物についての光学的情報と、生化学的情報および/または電気的情報などとを二次元領域上で取得し得る。制御部40は、照明デバイス30からの照明の有無や照明条件を計測デバイス20からの情報に基づいて行う。
【0042】
制御部40の制御下で行われるバイオ情報計測装置10を用いた計測の一例を
図4を参照しながら説明する。まず、オペレータが、培養皿内に載置された計測デバイス20のセンサマトリックス22上に測定対象物、例えば、細胞を播種し、インキュベータ内で培養を行う(S1)。このとき、対応する位置で互いに位置合わせがされた状態で照明デバイス30が配置される。次に、インキュベータ内に載置した状態のまま、予め記憶させたプログラムに従って、制御部40の制御によりセンサ素子24が細胞に関する情報を取得する(S2)。このとき、照明デバイス30の照射はOFFのままである。制御部40の制御の下でセンサ素子24は、取得した結果を電気信号に変換して制御部40に送り、またはセンシングされた信号が電気信号であれば変換せずに制御部40に送る。制御部40は、信号を受け取り、電気信号が得られたセンサ素子24を含むセンサ画素のセンサマトリックス上での位置を検出する(S4)。制御部40は、受け取った電気信号と、予め決定された閾条件と比較する(S5)。次に、制御部40は、比較の結果に基づいて、与えられた電気信号が閾条件を満たすか否かを判断する(S6)。制御部40は、工程S2からS6まででなる処理ループを繰り返し二次元画像を生成する。制御部40の制御下で、S6の判断の結果、閾条件を満たすセンサ画素23の位置に対応するセンサマトリックス22内の領域と、予め決定されている特定の範囲である領域に対して、その閾条件に割り当てられた照明条件で照明デバイス30が光を照射する(S7)。制御部40の制御下で、光センサ素子24は、照明デバイス30が照射した光を感知し、得られた光信号を電気信号に変換し、制御部40に送る(S8)。制御部40は、光センサ素子24から受け取った全ての信号から二次元画像を生成する(S9)。電気信号が閾条件を満たさない場合には、その電気信号が得られた画素に対応する領域には照明デバイスからの光照射は行われない(S10)。また、このような計測は、オペレータの判断により、任意のタイミングで光をセンサマトリックスの全面または一部に照射し、二次元画像を取得できるよう割込み制御され得る。
【0043】
閾条件により検出または計測されるべき測定対象物に関する情報は、例えば、細胞有無(または細胞存在状態)の判定、細胞状態の判定、細胞周囲環境の判定などであり得る。細胞有無の判定は、センサ画素上に細胞が存在するのか否かを判断する。その判断の指標の例は、電位、pH、イオン濃度、神経伝達物質および細胞代謝物などであり得る。
【0044】
例えば、細胞状態の判定は、測定対象物となる細胞種や実験目的、測定対象物に対して添加または導入される試薬の種類によってその指標が決定され得る。例えば、細胞死や細胞の衰弱によって、正常な細胞と比較して細胞内のpH値が変化することが知られている。従って、このような細胞の状態は、pH値を指標として判定することが可能である。
【0045】
例えば、細胞内外または細胞周囲のイオン濃度、細胞代謝産物などを検出することにより、細胞の活性状態やその機能を調べることが可能である。従って、検出したそれらに関する信号に基づいて、細胞状態を判定することが可能である。例えば、細胞同士の接着度に関しては、インピーダンスをその指標として用いることができる。それにより細胞の組織化状態を判定することができる。例えば、神経細胞のネットワークの形成については、活動電位を指標とすることが可能である。そのような情報は、それ自体が得られるべき情報であり得るが、照明デバイスからの照明について照明条件を決定するための情報となる閾条件を構成する成分または項目となり得る。
【0046】
このような指標となる情報(単一情報または複合情報)の大きさ、経時的変化、相対的特徴、パターン、特定の項目の閾値などを閾条件とし、それらが特定の値または状態であるときに選択されるべき照明領域、照明強度、照明時間、照明間隔および光照射の有無などを照明条件として予め決定する。そのような閾条件と照明条件とを対応付けた情報を制御部に予め記憶させる。記憶される対応情報は、テーブルおよびリストなど、何れの形態であってもよい。
【0047】
また、制御部による各デバイスの制御、複数のデバイスに亘る制御およびバイオ情報計測装置全体としての制御などは、予め制御部に記憶させたプログラムや条件と操作とを対応付けたテーブルなどに従って行われ得る。
【0048】
例えば、pH値を指標として、細胞の有無に関する情報を得ることは、次の工程を含み得る:(1)pH値画像を取得する。予め細胞培養液のpH値または計測域全体の平均値に比べて大きいかまたは小さいかを指標とする。例えば、予めpH値が大きい場合に「細胞がある」、または小さいときには「細胞がない」或いはその逆を閾条件として予め決定しておく。例えば、閾値よりも検出されたpH値が大きい場合には、「細胞がある」とし、特定の照明強度でその信号が得られたセンサ画素および任意にその周辺に対して光照射されるように設定され得る。センサ画素の周辺は、実施者が所望に応じて予めその範囲を決定すればよい。
【0049】
例えば、実施形態に従うバイオ情報計測装置10は、以下に示す制御系によって制御され得る。
図5を参照しながら制御系の一例を説明する。
【0050】
計測デバイス20は、センサ素子を含む複数のセンサIC26を含む(すなわち、センサIC26a〜26i、センサIC26と総称する)。これらは所望の数でマトリックスを形成している。センサIC26は、電気的に入出力処理回路に接続されており、信号の受け渡しをする。また、計測デバイス20は、電源回路28を備え、この回路28は、バイオ情報計測装置10の全構成に電力を供給するように電気的に接続されている。
【0051】
入出力処理回路27は、計測デバイス20内に含まれ、センサIC26と制御デバイス50内の制御装置51および処理装置52とに電気的に接続され、それらの間の信号の入出力を処理する。制御デバイス(計算機)50は、制御装置51と、処理装置52と、記憶装置53とを備え、これらは互いに直接的または間接的に電気的に接続している。
【0052】
各センサ素子により取得された情報は、必要に応じて電気信号に変換され、センサIC26および入出力処理回路27を経て処理装置52に送られる。
【0053】
記憶装置53には、制御装置51がバイオ情報計測装置10を全体的に制御するためのプログラム、並びにそれぞれの構成を制御するためのプログラムなどが予め記憶されている。更に記憶装置53には、閾条件と照明条件とを関係付けまたは対応付ける情報などがテーブルまたはリストなどのデータとして記憶されている。必要に応じて記憶装置53は、更なるプログラムおよびテーブルなどが記憶され得る。計測デバイスによる計測および/または照明デバイスによる光照射は、経時的に、間欠的または連続して行われ得る。更に記憶装置53は、全ての計測結果および対応する位置情報を記憶し得る。
【0054】
制御装置51の制御下で、記憶装置53に記憶されているデータ、プログラムおよびテーブルなどに基づいて、処理装置52は、計算などのデータ処理、二次元画像の生成などを行う。処理装置52は、記憶装置53に記憶された前回計測時の細胞状況、データおよびその際の照明条件などに基づいて、新たに照明条件を変更および生成し得る。
【0055】
制御装置51は、照明デバイス30の制御回路38に電気的に接続されている。制御回路38は、発光部39に電気的に接続されており、送られる照明条件に従い発光部39から照射される光について、例えば、照明の有無、照明強度、照明領域、照明間隔、照明時間、照射される光の波長および入射角度などを制御する。制御回路38により行われる制御は、制御デバイス50に制御され得る。
【0056】
発光部39は、複数の照明ユニットを備え(図示せず)。各照明ユニットは、計測デバイス20に含まれる各基本ブロック(即ち、センサ画素)のそれぞれの位置に対応するように配置されている。或いは近接する複数の基本ブロックに対して1つの照明ユニットが割り当てられている。照明ユニットと基本ブロックとの割り当ては、所望に応じて行われ得る。互いに対応する照明ユニットと基本ブロックとの比は、例えば、1×1:1×1〜1×1:10×10、1×1:1×1〜1×1:100×100、1×1:1×1〜1×1:1000×1000または1×1:1×1〜1×1:1000以上×1000以上などの何れであってもよい。
【0057】
上記の例では、計測デバイス20は、複数のセンサIC26を備えるが、1つのセンサIC26によってセンサマトリックス内の全てまたは一部分のセンサ素子および基本ブロックが制御されてもよい。
【0058】
制御部は、計算機であってもよく、例えば、コンピュータであってもよい。上述の例では、計算機は制御装置、処理装置および記憶装置を備えているが、それに加えて入力部、画像処理部、出力部、無線電波発信/受信部などを備えてもよい。
【0059】
また、制御デバイス50、照明デバイス30および計測デバイス20は互いに電気的に接続されており、この接続は有線による接続であっても、無線での接続であってもよい。
【0060】
このようなバイオ情報計測装置10での計測に関する操作手順について、
図6〜
図8を参照しながら説明する。
【0061】
図6は、装置の初期設定として行われ得る計測デバイス20と照明デバイス30との位置合わせ補正処理の一例を示すフローチャートである。
図7は、
図6に示した処理が行われるべき対象の一例であり、計測デバイスおよび照明デバイスの一部分をそれぞれ抜出して示した模式図である。
図8は、バイオ情報計測装置10で行う計測の操作のフローチャートである。
【0062】
次に、装置の初期設定として行われ得る計測デバイス20と照明デバイス30との位置合わせ補正処理の流れについて説明する。
【0063】
まず、オペレータは、計測デバイス20と照明デバイス30とを互いに対向させて位置決めをした状態で暗室内に設置する(S11)。オペレータは入力部(図示せず)から操作開始の指示を出し、それを受けて制御装置51が、バイオ情報計測装置10を作動させ、位置決めの補正処理を開始する(S12)。初期設定としてi=0とする(S13)。制御装置51は、iをカウントアップし(S14)、発光部39がセンサマトリックス22内の1番目のセンサ画素を点灯(光入射)し(S15)、同時にこのセンサ画素がセンサマトリックス22内の1番目(即ち、i=1)であることを記録する(図示せず)。処理装置52は、センサICにより増幅された信号としての光情報と、画素情報、即ち、光入射を感知した画素の位置などを入出力直処理回路27から受け取り、光情報と位置情報とを対応付けて記憶装置53内に保存する(S16)。処理装置52は、i番目の画素がセンサマトリックス22内に存在する最後の画素であるか否かを判定する(S17)。処理装置52が当該センサ画素が最後の画素ではないと判断した場合には、S14に進む。そして、処理装置52が、センサマトリックス22内に存在する最後の画素についての画素情報を得たと判断するまで、S14〜S17までを繰り返す。処理装置52がセンサマトリックス22内に存在する最後の画素についての画素情報を得たと判断した場合、S18に進み、位置決めの補正処理を完了する。
【0064】
このような位置決めの補正処理は、初期設定としてバイオ情報計測装置10の立上げ直後に自動的に行われ得る。一旦、位置決めの補正を行えば、センサICを再度脱着しても初期化処理は不要であり得る。或いは、任意に実施者が位置決めの補正処理を開始することも可能であり得る。
【0065】
次に、バイオ情報計測装置10における計測の手順を
図8を参照して説明する。オペレータが、計測デバイス30を置き、そのセンサマトリックス表面に対して培地に懸濁された細胞を播種する。これにより、センサICに計測対象物を導入する(S21)。この計測デバイス20の上部に照明デバイス30を配置し、位置決めをした状態で暗室としてのインキュベータ内に設置する(図示せず)。オペレータが入力部から制御装置51に操作開始の指示を出し、バイオ情報計測装置10を作動させる(S22)。制御装置51は、予め決定された細胞情報取得条件または細胞情報取得開始条件が成立すると判断したとき(S23)、センサICを制御して、センサマトリックス内での位置情報と紐付けて光学的情報を除く特定または任意の細胞情報を取得する。得られた細胞情報はセンサIC内で増幅され、入出力処理回路27に送られる。制御装置51は、細胞情報の電気信号を記憶装置53に送り、そこに一旦保存する(S24)(「細胞情報取得保存」)。処理装置52は、予め決定され、記憶装置53に保存されているプログラムおよびテーブルなどの閾条件に従って、得られた細胞情報についてのデータ解析を行う(S25)。制御装置51はS25の解析の結果が、予め決定された閾条件を満たすかどうかを判断する(S26)。閾値条件が成立すると判断した場合には、処理装置52は、記憶装置53に保存されているプログラムおよび閾条件と照明条件とを対応付けるテーブルなどに従って、照明領域、光量、波長、入射角度などの照明条件を判定する(S27)(「照明条件判定」)。判定された照明条件は、制御装置51に送られる。制御装置51は、受け取った照明条件に従い、制御回路38によって照明デバイス30を制御し(S28)、照明デバイス30は照明条件に従って光照射を行う。それと同時に、制御装置51はセンサICマトリックス26Aを制御して、センサマトリックスにおける光検出を行う。検出された光情報はセンサICマトリックス26Aで増幅され、入出力処理回路27に送られる。制御装置51は、入出力処理回路27により任意の変換を行い、処理装置52に光情報の電気信号を送る。処理装置52は、光情報と対応する位置情報から光情報光学像を生成し、記憶装置53に一旦保存する(S29)(「光学像取得保存」)。処理装置52は、予め定められた条件またはタイムテーブルなどに従い、測定対象物が所定の状態に達したか、または所定の条件を満たすかを判断する(S31)。処理装置52が測定対象物が所定の状態に達した、または所定の条件を満たしたと判断したらS32に進み、計測を終了する(S32)。処理装置52が、測定対象物が所定の状態に達していない、または所定の条件を満たしていないと判断する場合、S26に進み、予め定められた条件またはタイムテーブルなどに従い、繰り返しS26〜S30までの工程を行う。
【0066】
ここで、例えば、S23における細胞情報取得の開始およびS26における照明条件判定は、予め決定されたタイムテーブルに従って制御装置51により制御され得る。S26の判断において、S25で解析された結果が、予め決定された閾条件を成立させるものでないときには、S26〜S30の工程はスキップされ、閾条件を成立するまでS23〜S31の工程が繰り返えされる。S32では、制御装置51の制御またはオペレータの判断により、保存された情報の一部または全部を読み出すことができる。また、このような計測は、オペレータの判断により、任意のタイミングで光をセンサマトリックスの全面または一部に照射し、二次元画像を取得できるよう割込み制御され得る。
【0067】
図8を用いて説明した計測の手順は、
図9(a)〜(c)の例示されるタイムテーブルに従って実行または手順が変更されてもよい。以下、タイムテーブルに沿って操作手順について更に説明する。
【0068】
図9(a)のタイムテーブルでは、バイオ情報計測装置10が、「細胞情報取得保存」、「照明条件判定」および「光学像取得保存」を1セットとしてこれを任意の回数で繰り返すシーケンスに従い計測を実行する。
図9(a)には、このセットを3回繰り返す例を示している。しかしながら、この繰り返しに制限はなく、例えば、実施者の要望や計測されるべき情報に応じた回数で行い得る。また同様に、前記1セットに含まれる3つの工程間の間隔、並びにセット間の間隔は、例えば、実施者の要望や計測されるべき情報に応じて、或いは処理装置52における演算によって、或いはその両方によって選択されればよい。
【0069】
図9(b)のタイムテーブルでは、バイオ情報計測装置10は、「細胞情報取得保存」、「照明条件判定」および複数回の「光学像取得保存」(即ち、「光学像取得保存」の工程の繰り返し)を1セットとしてこれを任意の回数で繰り返すシーケンスに従い計測を実行する。このシーケンスの場合、「光学像取得保存」が所望に応じて複数回繰り返される。1セット中の「光学像取得保存」の繰り返し回数、1セット中の工程間の間隔およびセット間の間隔は、
図9(a)と同様に、例えば、実施者の要望や計測されるべき情報に応じて、或いは処理装置52における演算によって、或いはその両方によって選択されればよい。
【0070】
図9(c)のタイムテーブルでは、バイオ情報計測装置10は、「細胞情報取得保存」と「照明条件判定」との繰り返しが、取得された情報が閾条件を成立できる情報となるまで行われ、閾条件を成立させる情報が得られて初めて「光学像取得保存」を行う。これらの工程が1セットであり、このセットを任意の回数で繰り返すシーケンスに従って、バイオ情報計測装置10は計測を実行する。即ち、「細胞情報取得保存」および「照明条件判定」の工程において、照明条件判定において「照明点灯判定」が出される(閾条件を成立できる情報が得られる)までは、照明デバイスからの光照射は行われない。また、この例では、「細胞情報取得保存」と「照明条件判定」とが同時に行われ得る。従って、短時間にこの2つの工程を数多く繰り返すことが可能である。1セット中の「細胞情報取得保存」および「照明条件判定」の繰り返し回数、1セット中の工程間の間隔およびセット間の間隔は、
図9(a)および(b)と同様に、例えば、実施者の要望や計測されるべき情報に応じて、或いは処理装置52における演算によって、或いはその両方によって選択されればよい。
【0071】
また、上記の3つの例の何れにおいても、「細胞情報取得保存」、「照明条件判定」および「光学像取得保存」の各工程に係る時間は、例えば、実施者の要望や計測されるべき情報に応じて、或いは処理装置52における演算によって、或いはその両方によって選択されればよい。
【0072】
このような実施形態に従うバイオ情報計測装置によれば、計測されるべき情報を得ることが可能である。これにより、より経済的、効率的または正確に測定対象物についての計測を実施することが可能となる。1つの実施形態に従うと、バイオ情報計測装置を用いて生物学的試料をセンシングする方法、またはバイオ情報計測装置を用いて細胞情報を得る方法も提供され得る。
【0073】
図10(a)および(b)を参照しながら、更にバイオ情報計測装置の更なる実施形態の例について説明する。
【0074】
バイオ情報計測装置1001は、基本ブロックに含まれるセンサ素子の種類および組合せと照明ユニットの構成を除いて、上述のバイオ情報計測装置10と同じ構成である。バイオ情報計測装置1001では、蛍光強度が光情報として含まれている。
図10(a)に示す発光部1039は、二種類の波長の励起光と可視光とを照射する照明ユニットを備える。2つの波長の励起光を入射させ、所望の蛍光を光情報としてそれぞれ取得する。
図10(a)は、計測デバイス1020が配置されたセンサマトリックス1022において、特定の領域に対して2つの種類の励起光が照射されている状態を示す模式図である。
【0075】
第1および第2の励起波長を照射する第1および第2の照明ユニット1032a,1032bは、照明ユニットマトリックス1041上に一方向の直線上に整列し、隣り合って交互に配置されている。
【0076】
センサマトリックス1022上には、基本ブロック内に
図10(c)のように第1の励起波長を入射させ、第1の蛍光波長を有する第1の蛍光をセンシングする第1のサブセンサ画素1025aと、第2の蛍光波長を有する第2の蛍光をセンシングする第2のサブセンサ画素1025bと、他の種類の情報をセンシングする第3のサブセンサ画素25が、互いに異なる種類の画素と隣り合うように所望の数でマトリックス状に配置されている。
【0077】
照明ユニットマトリックス1041とセンサマトリックス1022とは、線Lに沿う方向で近接して配置されている。
【0078】
第3のサブセンサ画素25からの情報に基づいた照明条件に従って、第1の励起波長および第2の励起波長がセンサマトリックス1022に照射され、第1のサブセンサ画素1025aおよび第2のサブセンサ画素1025bが、波長選択的に計測対象物に関する光情報を取得する。
【0079】
1つの波長の励起波長を照射し、1つの波長の蛍光を検出する場合には、
図10(b)に示すように、蛍光情報を検出するためのサブセンサ画素1025aと、他の種類のサブセンサ画素25が、互いに異なる種類の画素と隣り合うように配置され得る。
【0080】
各センシング部には、特定の単一波長が選択的に入射するように、励起光除去フィルタが設置され得る。
【0081】
蛍光情報検出時には、第1の励起波長および第2の励起波長の一方を照射し、他方を消しておく。第1の励起波長とそれに対応して観察されるべき第1の蛍光波長と、第2の励起波長とそれに対応して観察されるべき第2の蛍光波長とに重なりがない場合には、第1の励起波長と第2の励起波長とが同時に照射されてもよい。また、第1および第2の励起波長並びに第1および第2の蛍光波長の間に重なりがあった場合であっても、これらの光がセンサマトリックス1022上で互いに干渉しない限りにおいて、第1の励起波長と第2の励起波長とは同時に照射され、且つそれらに対応する蛍光波長が検出されてもよい。それらの波長が互いに干渉しないということは、実際にそれらが使用されるバイオ情報計測装置10を用いて確認されてもよく、或いは理論により決定することも可能である。また、励起光の照射と蛍光観察とが交互に行われてもよい。
【0082】
生物体またはその一部を測定対象物とする場合の計測デバイス20の使用例を
図11〜
図13を参照しながら説明する。
【0083】
計測デバイス1120a〜1120j(「計測デバイス1120」と総称する)は、それぞれセンサマトリックスを備える計測デバイスである。バイオ情報計測装置1002では、このような複数の計測デバイス1120が、センサマトリックス上で細胞を培養できる環境で計測デバイスアレイ1121として含まれる。
図13では、そのような環境が培地を含む培養皿1050により提供されている。このように1つの実施形態に従うバイオ情報計測装置1002は、計測デバイスアレイ1121を含むこと以外は上述したバイオ情報計測装置10と同様の構成を備える。計測デバイスアレイ1121への光照射は、これらの全てのセンサマトリックスを覆う面積を有する照明ユニットマトリックスを備えた照明デバイス30により行い得る。
【0084】
バイオ情報計測装置1002への測定対象物の導入は次のように行われる。まず、適切な大きさの培養皿1050内部に検出されるべき情報に応じてセンサ素子が選択されて基本ブロックが設計された複数の計測デバイス1120a〜1120jを配置する。そこに培地に懸濁された細胞を播種する(即ち、細胞懸濁液を添加する)。計測デバイス1120の全てのバイオセンサマトリックス面に対して、照明ユニットマトリックスが向かい合い、且つ対応する素子同士の位置が合うように照明デバイス30を計測デバイスアレイ1121に取り付ける。このようにして測定対象物としての細胞がバイオ情報計測装置1002に導入される。
【0085】
バイオ情報計測装置1002による計測は次のように行い得る。まずバイオ情報計測装置1002を培養に適した環境を維持しているインキュベータ内に設置する。そして、測定対象物である細胞を長時間に亘り培養しながら、経時的に細胞についての所望の情報を取得する。照明デバイス30および計測デバイス1120は、無線によって制御部40に電気的に接続されている(図示せず)。このようなバイオ情報計測装置1002の制御および操作手順は上述した通りである。
【0086】
1つの計測デバイスアレイ1121に含まれる複数の計測デバイス1120は、互いに同じ構成であってもよく、互いに異なる構成であってもよく、それらの一部が同じ構成であってもよい。
【0087】
このようなバイオ情報計測装置1002によれば、1つのバッチ内の細胞について、同様の条件で多項目の試験を行うことが可能である。このときに照明領域などの照明条件の選択は、細胞の存在状況に応じて決定されるので、経済的または効率的に行うことが可能である。
【0088】
或いは
図11に示した培養皿1050が、
図12に示すように計測デバイスアレイ1121に含まれる計測デバイス1120の数だけ用意されてもよい。このようなバイオ情報計測装置1003は、複数の培養チャンバーにそれぞれ収容された複数の計測デバイス1120を備える。複数の培養チャンバーは、それぞれ独立した培養皿であってもよく、複数の培養チャンバーを備えるマルチウェルチャンバーであってもよい。マルチウェルチャンバーのウェル数は、任意に選択され得る。
【0089】
一方、培養チャンバーを含むバイオ情報計測装置に含まれる照明デバイスは、培養皿および培養チャンバーなどの培養容器の蓋として提供されてもよい。或いは、市販の培養容器、例えば、蓋付き培養皿、並びに6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェルおよび96ウェルのマルチウェルチャンバーをそれぞれバイオ情報計測装置の計測デバイスアレイのために使用してもよい。その場合、各培養皿または各ウェルに1つ以上の照明デバイスを含ませ得る。一方、このようなバイオ情報計測装置では、蓋付き培養皿、並びに6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェルおよび96ウェルのマルチウェルチャンバーの蓋体の裏側に、照明デバイスを取り付けて、その照明ユニットマトリックスとバイオセンサマトリックスとを対向させることによりバイオ情報計測装置を製造することも可能である。或いは、インキュベータ内に配置されて計測を行うためのバイオ情報計測装置の場合、インキュベータ内に上下に平行に設置した少なくとも2つの棚の下段上面に計測デバイスを載置し、上段下面の対応する位置に照明デバイスを取り付けてもよい。その場合、設置される棚は、載置面またはインキュベータ内底面に平行するように(水平に)インキュベータ内に取り付ければよい。
【0090】
上述するような複数の培養チャンバーを備えるバイオ情報計測装置において、
図13に示すように複数の培養チャンバーの間に遮蔽部材1125が備えられてもよい。バイオ情報計測装置1004に含まれる照明デバイス30は、遮蔽部材1125と接して配置され得る。このような遮蔽部材1125を備えることにより、独立した空間内で計測デバイスに対して照明デバイス30から光照射することが可能である。例えば、遮蔽部材11が、隣り合う計測デバイスアレイ1120の間に存在してもよく、或いは、複数の計測デバイスアレイ1120を含む計測デバイスアレイ群(図示せず)の隣り合う群の間に存在してもよい。言い換えれば、例えば、遮蔽部材1125が存在することによってセンシング単位領域が形成され、このセンシング単位領域に単一または複数の計測デバイスが存在してもよい(図示せず)。照明ユニットマトリックス41と遮蔽部材1125の上部を線Lに沿って近づけることにより照明ユニットマトリックス41とセンサマトリックスとの距離が調整されてもよい。或いは、照明ユニットマトリックス41と遮蔽部材1125の上部が接していてもよく、互いに密着して固定されていてもよい。遮蔽部材の形状は、板状、膜状、フィルム状などであってよく、遮光部材の一例は、遮光板であり得る。
【0091】
これによりバイオ情報計測装置1004に複数備えられる複数の計測デバイスに対して独立空間を与えることが可能であるので、照明条件または計測プロトコールなどの設計の自由度が向上する。従って、より経済的または効率的に目的とする計測を行うことが可能である。
【0092】
上述したバイオ情報計測装置は、1つの計測デバイスに1つのセンサマトリックス面を有し、1つの照明デバイスに1つの照明ユニットマトリックス面を有する例である。しかしながら、これに限定されるものではなく、1つの計測デバイスが複数のセンサマトリックス面を備えてもよく、および/または1つの照明デバイスが複数の照明ユニットマトリックス面を備えてもよい。そのようなバイオ情報計測装置の例を
図14に示す。このバイオ情報計測装置1005が備える照明デバイス1139は、照明ユニットマトリックスアレイ1241を備える。この照明ユニットマトリックスアレイ1241は、照明ユニットマトリックス1141を複数備える。照明ユニットマトリックス1141は、複数の照明ユニット32を備える。またバイオ情報計測装置1005は、センサマトリックスアレイ1122を備える。センサマトリックスアレイ1122は、複数のセンサマトリックス1220a〜1220iを備える。センサマトリックス1220aは、複数のセンサ画素23を備える。センサ画素23は複数のサブ画素を含み、サブ画素はセンサ素子が含むセンシング部により提供される(図示せず)。
【0093】
上述の例では、計測対象物である細胞が培養できる環境を、培地を含む培養皿に計測デバイスを配置することにより達成している。実施形態によれば、培養皿を使用することなく、細胞の培養環境を達成することが可能である。例えば、
図15に示すように、計測デバイス1320上のセンサマトリックス1321またはセンサマトリックスアレイ1321を取り囲むように、基板1321の縁部から上方に延出する壁部1322を有してもよい。この壁部1322内に細胞懸濁液を添加することにより、バイオ情報計測装置内に計測対象物を導入することが可能である。
【0094】
[センサ素子]
図16〜19を参照しながら、センサ素子について説明する。
【0095】
図16および17は、計測デバイスの基板に形成された各センサ素子の断面図である。計測デバイスの基板は、半導体基板101上に絶縁材料および/または金属材料および/または樹脂からなる格子状の区画壁104により区画された複数の画素(センサ素子)を備える。計測デバイスは、シリコン基板101と、基板101に形成された積層形成されたSiO
2膜102と、SiO
2膜102の表面に形成された窒化シリコン膜103と、窒化シリコン膜103の表面に形成されている。SiO
2膜102の内部には、複数層の配線105が導体材料で形成されたビア107により互いに電気的に接続して形成されている。
【0096】
例えば、
図16の区画壁104の格子内には、
図16(a)、
図16(b)、
図16(c)、
図16(d)、
図16(e)、
図16(f)、
図16(g)、
図16(h)の順にイオン濃度計測画素111、水素イオン濃度計測画素121、第1の電圧信号のセンサ画素131、電流信号または第2の電圧信号のセンサ画素141、第1の光センサ画素151、第2の光センサ画素161、第3の光センサ画素171、第4の光センサ画素181が形成されている。画素下に形成された配線はトランジスタ(図示せず)に接続されている。当該トランジスタは、画素直下の基板101上であっても、検出力域の周辺部であっても、いずれでもよい。
【0097】
前記イオン濃度計測画素111は、窒化シリコン膜103表面に形成されたイオン感応膜112を備えている。イオン感応膜112は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)をベース物質とし、単種のイオンと選択的に結合するバリノマイシン等のイオノフォア、さらに可塑剤、排除剤を含む。各イオンに結合するイオノファンを次に例示する。Na
+:ビズ(12−クラウン−4),K
+:ビズ(ベンゾー15−クラウン−5)またはバリノマイシン、Ca
+:K23E1,NH
4+:TD19C6。イオン感応膜は、例えばインクジェットプリンティング法で形成することができる。当該イオン濃度計測画素111に接続されたトランジスタは、イオン感応膜112でのイオン濃度の変化を検出する。
【0098】
上述では、イオン濃度計測画素111は窒化シリコン膜103表面に形成される例を示したが、窒化シリコン膜に代えてシリコン酸化膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル膜などであってもよい。
【0099】
また、イオン濃度計測画素111を形成する際に、インク噴出ノズルに対向する位置、即ち、イオン濃度計測画素111に対応する位置で基板101上に配置された金属(電極)に電圧を加えておくことも好ましい。これによりインクジェットプリンティングされる材料に指向性を持たせ、材料の飛行または飛沫を防止できる。
【0100】
水素イオン濃度計測画素121は、窒化シリコン膜103を水素イオン感応膜としてもよい。水素イオン濃度計測画素121において、水素イオンは窒化シリコン膜103表面に生じるシラノール基を感応基として検出される。水素イオン濃度計測画素121に接続されたトランジスタは、水素イオン濃度計測画素121でのイオン濃度の変化を検出する。
【0101】
次に電気センサ画素について、
図16および
図17を用いて説明する。第1の電圧信号のセンサ画素131は、最上層の配線106と電気的に接続された、例えばNi等の金属からなる電極132と、電極132の露出面を覆うように形成された窒化シリコン膜133とを備える。窒化シリコン膜133は、例えば20nm以下であることが好ましい。センサ画素131は、最上層の配線106表面にニッケルなどからなる電極(台座)を形成し、この電極の露出面に窒化シリコン膜を堆積することにより形成できる。
【0102】
このようなセンサ画素131は、電極132と窒化シリコン膜133との間の容量結合によって交流の電圧信号を検出することができる。
【0103】
第2の電流信号または電圧信号のセンサ画素141は、最上層の配線106と電気的に接続された、例えばNi等の金属からなる電極142と、電極142の露出面を覆うように形成された例えばPt,AuまたはTiからなる導体膜143とを備える。センサ画素141は、最上層の配線106表面にプラチナ、金またはチタンなどからなる電極(台座)を形成し、この電極の露出面に導体膜を堆積することにより形成できる。
【0104】
このようなセンサ画素141は、電極142と導体膜143との間のコンダクタンス結合によって電流信号および低周波を含む交流の電圧信号を検出することができる。
【0105】
なお、第1、第2のセンサ画素131,141は、
図17に示すように、窒化シリコン膜133、導体膜143の上面が区画壁104上面より僅かに陥没する凹型(
図16(a)および(b))、窒化シリコン膜133、導体膜143の上面が区画壁104上面と面一である平坦型(
図17(c)、(d))、或いは窒化シリコン膜133、導体膜143の上面が区画壁104上面より僅かに突出する凸型(
図16(e)および(f))のいずれであってもよい。電気センサ画素に接続されるトランジスタは、ICチップ以外の領域であってもよい。
【0106】
図16を参照しながら、光センサ画素について説明する。前記第1〜第4の光センサ画素151,161,171,181(
図16(e)、
図16(f)、
図16(g)、
図16(h))の直下に位置するシリコン基板101部分には、フォトダイオード(受光素子)108がそれぞれ埋め込まれている。第1〜第4の光センサ画素151,161,171,181の直下には、配線105が存在せず、各光センサ画素151,161,171,181からの光をフォトダイオード108で受光できるようになっている。隣接する配線により各他の光センサ画素からの光が遮断され、所望の波長の光を受光することができる。
【0107】
第1の光センサ画素151は、窒化シリコン膜103下面に形成された無機フィルタ152と窒化シリコン膜103上面に形成された有機フィルタ153とを備える。
【0108】
無機フィルタ152は、例えば多層フィルタまたはプラズモンフィルタである。多層フィルタは、低屈折材と高屈折材とを交互に堆積したものである。例えば、低屈折材として酸化シリコン膜、高屈折材として酸化ジルコニウムを用いた場合、各膜の厚さは、酸化シリコン膜が62nm±5nm、酸化ジルコニウム38nm±5nmであることが好ましい。このような多層膜は、510nmの波長に対して360nm±30nmの波長の光を良好に反射することができる。具体的には、前記2種の酸化膜を対として30積層することにより1/100000の除去比を得ることができる。有機フィルタ153は、顔料または染料から作ることができる。
【0109】
このような第1の光センサ画素151は、無機フィルタ152および有機フィルタ153を有する光学フィルタを備えるため、特定の波長を透過吸収することができる。例えば、蛍光計測において励起光を除去して蛍光を透過してフォトダイオード108で検出することができる。
【0110】
なお、第1の光センサ画素151は無機フィルタ152である多層フィルタに必要な層数が多い場合に適用される。すなわち、無機フィルタ152に必要な層数が多い場合、当該無機フィルタを窒化シリコン膜103上面に形成するには、区画壁104の高さを高くする必要があり、構造上の障害になる。このような場合、無機フィルタ152を窒化シリコン膜103下面に接して形成することによって、区画壁104の高さを高くすることなく、必要な層数で無機フィルタ152を形成できる。
【0111】
第2の光センサ画素161は、窒化シリコン膜103上面に形成された無機フィルタ162と、この無機フィルタ162表面に形成され、区画壁104上面と面一になる形成された有機フィルタ163とを備える。
【0112】
無機フィルタ162および有機フィルタ163は、第1の光センサ画素151で用いたものと同様である。
【0113】
このような第2の光センサ画素161は、第1の光センサ画素151と同様に、特定の波長を透過吸収することができる。例えば、蛍光計測において励起光を除去して蛍光を透過してフォトダイオード108で検出することができる。
【0114】
なお、第1の光センサ画素151は無機フィルタ162である多層フィルタに必要な層数が少ない場合に適用される。すなわち、無機フィルタ162に必要な層数が少ない場合、当該無機フィルタおよび有機フィルタ163を窒化シリコン膜103上面にそれぞれ形成することができる。
【0115】
第3の光センサ画素171は、窒化シリコン膜103上面にフィルタが存在しない。この第3の光センサ画素171では、窒化シリコン膜103上面の分析対象物に対して可視光を用いてフォトダイオード108で検出する。
【0116】
なお、第3の光センサ画素171において各画素と同様に表面構造を平坦にするために、窒化シリコン膜103上面に酸化シリコンまたはガラス膜を区画壁104上面と面一になるように形成することを許容する。
【0117】
第4の光センサ画素181は、区画壁104内に埋め込まれた透明電極182と、区画壁104内の直下に位置する配線106と透明電極182とを接続するビア183とを備える。
【0118】
透明電極182は、例えばITO,InGaZnO,TiO
2のような導電性酸化物、または導電性ガラスから作られる。
【0119】
このような第4の光センサ画素181は、電圧を配線106からビア183を通して透明電極182に印加し、透明電極182上の分析対象物を泳動もしくは誘導するか、または電気刺激を与え、その状態で照射された光をフォトダイオード108で検出する。或いは、フォトダイオード108による光の検出と同時に分析対象物の電圧または電位などの電気信号を測定してもよい。
【0120】
第1の光センサ画素の形成方法を
図18を参照して以下に説明する。
【0121】
シリコン基板101に不純物を打ち込んでフォトダイオード108を形成し、続いてSiO
2膜102を堆積させながら配線105を形成する(
図18(a))。
【0122】
次いで、
図18(b)に示すようにSiO
2膜102の表層を選択的にエッチングして格子状凸部201を形成する。つづいて、
図18(c)に示すように格子状凸部201を含むSiO
2膜102表面に例えばスパッタにより無機材料の多層膜202を形成する。ひきつづき、化学機械研磨(CMP)により格子状凸部201上の多層膜202を選択的に研磨して多層膜を格子状凸部201間内に残すことにより複数の無機フィルタ152を形成する。その後、無機フィルタ152を含むSiO
2膜102表面に例えばCVD法により窒化シリコン膜103を堆積する(
図18(d))。
【0123】
次いで、
図18(e)に示すように窒化シリコン膜103表面に例えばCVD法によりSiO
2膜を堆積した後、SiO
2膜をパターニングすることにより前記格子状凸部201と同様なSiO
2格子凸部からなる区画壁104を形成する。その後、区画壁104内に有機フィルタ材料を区画壁104表面と面一になるように塗布し、乾燥して各無機フィルタ152に対して窒化シリコン膜103を挟んで有機フィルタ153をそれぞれ積層して第1の光センサ画素151を形成する(
図18(f))。形成された2層のフィルタ152,153はフォトダイオード108と対向して配置される。
【0124】
ここで、有機フィルタ材料の塗布は、インクジェットプリンティング法により行ってもよい。その際に、イオン濃度計測画素111の形成と同様に、インク噴出ノズルに対向する位置、即ち、有機フィルタ153形成位置に対応して基板101上に配置された金属(電極)に電圧を加えておくことも好ましい。これによりインクジェットプリンティングされる材料に指向性を持たせ、材料の飛行または飛沫を防止できる。
【0125】
第2の光センサ画素の形成方法を以下に
図19を参照して説明する。
【0126】
シリコン基板101に不純物を打ち込んでフォトダイオード108を形成し、続いてSiO
2膜102を堆積させながら配線105を形成する(
図19(a))。
【0127】
次いで、
図19(b)に示すように窒化シリコン膜103表面に例えばスパッタにより無機材料の多層膜301を形成する。つづいて、無機材料の多層膜301をパターニングして複数の無機フィルタ162を形成する(
図19(c))。
【0128】
次いで、
図19(d)に示すように複数の無機フィルタ162を含む窒化シリコン膜103表面に無機フィルタ162より膜厚が厚いSiO
2膜302を形成する。続いて、
図19(e)に示すように無機フィルタ162上のSiO
2膜302を選択的に除去し、窒化シリコン膜103表面に無機フィルタ162を囲み、当該無機フィルタ162より厚いSiO
2格子からなる区画壁104を形成する。その後、無機フィルタ162表面に有機フィルタ材料を区画壁104表面と面一になるように塗布し、乾燥して各無機フィルタ162上に有機フィルタ163をそれぞれ積層して第2の光センサ画素161を形成する(
図19(f))。形成された2層のフィルタ162,163はフォトダイオード108と対向して配置される。
【0129】
配線106の材料として、例えば、銅およびアルミニウムが使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
各検出素子のセンシング部により検出された信号は、例えば、トランジスタまたは受光素子から計測デバイスの回路部分に送られる。
【0131】
温度センサ画素は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)の閾値電圧が温度に依存することを利用した、複数の電界効果トランジスタ(FET)を含むトランジスタ回路により構成されてよい。例えば、FETとこれに直列接続されるダイオード接続された更なるFETと、これらのFETからなる直列回路と更なるもう1つのFETとを並列に接続してトランジスタ回路を構成すればよい。このトランジスタ回路の出力電圧から温度を検知することが可能である。このような温度センサ画素は、上記何れかの半導体のトランジスタ形成部を利用し、そこにおいて温度計測を行えばよい。その場合、温度センサ画素は計測デバイスの表面の領域を占有しなくてもよい。或いは、このようなFETを利用した構成を独立した温度センサ素子として配置してもよい。
【0132】
上述した何れのセンサ素子においても、有機フィルタおよび/または無機フィルタを組み合わせて使用してもよい。また、使用されるフィルタは、例えば、顔料フィルタ、若しくは染料フィルタなどの光学フィルタまたはそれらの組み合わせであってもよい。更に、所望に応じてフィルタを通過する光の周波数を選択してよい。所望の周波数に応じて、フィルタ材料の種類、フィルタ材料の組み合わせおよびフィルタ全体としての構成は適宜選択されればよい。また例えば、1つの計測デバイスに含まれる全てのセンサ素子が何れかのフィルタを備えてもよく、一部分のセンサ素子のみが何れかのフィルタを備えてもよい。また、複数のセンサ素子にフィルタが含まれるときには、それら全てのフィルタが互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよく、或いは一部分のフィルタが互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0133】
次に、計測デバイスの回路構成について図面を参照しながら説明する。
【0134】
図20および
図21は、実施形態に係る計測デバイスの回路構成について、その概要例を示している。
【0135】
計測デバイス310は、センサアレイ311と、ロウコントローラ312と、カラムコントローラ313と、出力回路314とを備える。
【0136】
センサアレイ311は、複数の基本ブロックのアレイを備える。複数の基本ブロックは、例えば、互いに同じレイアウトおよび同じ回路構成を有する。本例では、基本ブロックB311は、4つのサブブロック(画素)S0,S1,S2,S3を備える。サブブロックS0〜S3の各々は、イオンセンサ、電気センサ、および光センサのうちの1つである。
【0137】
ロウコントローラ312およびカラムコントローラ313は、マトリックス状に配置された画素のデータ検出動作を制御する。例えば、ロウコントローラ312およびカラムコントローラ313は、各サブブロック(センサ)からのデータの読み出し順を制御する。
【0138】
例えば、ロウコントローラ312は、イネーブル信号ENと刺激信号STとを発生する。
【0139】
イネーブル信号ENおよび刺激信号STは、ロウ方向に並ぶ複数の基本ブロックに共通に与えられる。
【0140】
基本ブロックBに与えられる信号をイネーブル信号EN[0:3]、刺激信号ST[0:3]とすると、イネーブル信号EN[0]および刺激信号ST[0]は、サブブロックS0に与えられ、イネーブル信号EN[1]および刺激信号ST[1]は、サブブロックS1に与えられる。また、イネーブル信号EN[2]および刺激信号ST[2]は、サブブロックS2に与えられ、イネーブル信号EN[3]および刺激信号ST[3]は、サブブロックS3に与えられる。
【0141】
カラムコントローラ313は、リセット信号RT、転送信号SLとを発生する。リセット信号RTは、センサからの検出信号を増幅するアンプの入力電圧をリセットする信号である。転送信号SLは、アンプの出力信号をマルチプレクサ314に転送する信号である。
【0142】
リセット信号RTおよび転送信号SLは、カラム方向に並ぶ複数の基本ブロックに共通に与えられる。
【0143】
基本ブロックBに与えられる信号をリセット信号[0:3]、転送信号SL[0:3]とすると、リセット信号RT[0]および転送信号SL[0]は、サブブロックS0に与えられ、リセット信号RT[1]および転送信号SL[1]は、サブブロックS1に与えられる。また、リセット信号RT[2]および転送信号SL[2]は、サブブロックS2に与えられ、リセット信号RT[3]および転送信号SL[3]は、サブブロックS3に与えられる。
【0144】
図21は、サブブロックの回路例を示している。各図は、例えば、
図20のサブブロック(センサ)S0〜S3のうちの1つを構成するセンサの例である。iは、0,1,2,3のうちの1つである。
【0145】
図21の例は、サブブロックがイオンセンサまたは電気センサであるときの例である。
【0146】
サブブロックは、刺激信号ST[i]に基づき、電極Eiに刺激電圧Vsを印加するスイッチ素子SW1と、リセット信号RT[i]に基づき、アンプBの入力をリセット電圧VRにリセットするスイッチ素子SW2と、イネーブル信号EN[i]に基づき、電極Eiからの検出信号をアンプBに転送するスイッチ素子SW3と、転送信号SL[i]に基づき、アンプBの出力信号Voを有効化するスイッチ素子SW4とを備える。
【0147】
スイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4は、それぞれ、Pチャネル型MOSトランジスタ、Nチャネル型MOSトランジスタ、またはこれら双方を含むCMOSスイッチなどを用いることができる。
【0148】
また、アンプBは、ソース接地型アンプ、ドレイン接地型アンプ、または差増型アンプなどを用いることができる。
【0149】
図23の例は、サブブロックが光センサであるときの例である。
【0150】
サブブロックは、リセット信号RT[i]に基づき、アンプBの入力をリセット電圧VR、例えば、電源電圧Vddにリセットするスイッチ素子SW2と、イネーブル信号EN[i]に基づき、フォトダイオード(受光素子)PDiからの検出信号をアンプBに転送するスイッチ素子SW3と、転送信号SL[i]に基づき、アンプBの出力信号Voを有効化するスイッチ素子SW4とを備える。
【0151】
このような回路により各センサ素子からデータ読み出す順番は、バイオチップが含むセンサ素子の種類など、所望に応じて任意に決定すればよい。例えば、光センサ素子、電気センサ素子、例えば、電流信号センサ素子または電圧信号センサ素子、温度センサ素子を含むバイオチップの場合には、これらの読み出しをこの通りの順番で行ってもよく、他の任意の順番で行ってもよい。また、各センサ素子の感度に応じて読み出す順番や時間を調整してもよい。
【0152】
また上述した回路は、センサ素子からの信号の読み出しを制御する読み出し制御回路として、センサ素子毎にそれぞれ接続されていてもよく、複数のセンサ素子が1つの回路に接続されていてもよく、信号の読み出しがスイッチによる切り替えにより行われてもよい。また、そのような読み出し制御回路は、更に、センサ素子からの信号の読み出し順を制御するコントローラと、前記コントローラの制御の下で、前記センサ素子からの当該信号を外部に出力する出力回路とを備えてもよい。
【0153】
センサ素子からの信号の読み出しを制御する読み出し制御回路に加えて、計測デバイスは、センサ素子からの信号についてA/D変換が必要な場合など、所望に応じてA/D変換回路を更に備えてもよい。また更に、読み出し制御回路に加えて、計測デバイスは、センサ素子からの信号を予め設定した手順に従って処理する信号処理回路を備えてもよい。信号処理回路は、処理回路とも称され、例えば、時間積分、オートゼロイング、チョッピング、相関二重サンプリング、および/または相関多重サンプリングなどの処理が行われる。また、計測デバイスは、そこにおいて得られた結果を外部に送信する通信回路を更に備えてもよく、測定条件、測定手順、試料との対応付けおよび/または得られた結果などを格納するメモリ回路、計測デバイスに電気を供給する電源回路などを更に前記基板上に備えてもよい。計測デバイスが備える回路は、上述の何れの回路であってもよく、それら何れかの組み合わせであってもよい。
【0154】
実施形態に従うバイオ情報計測装置により、計測が行われる測定対象物は、例えば、生物学的試料であり得る。生物学的試料は、例えば、生体組織切片、単離細胞、培養細胞、培養組織、細胞膜、抗体、血液、血漿、血清、尿、便および粘膜などの動物および植物に由来する試料、または土壌、河川、湖水および大気などの環境に由来する何れの試料、或いは、ウイルス、細菌および寄生虫などの微生物などであり得る。
【0155】
「単離細胞」とは、ヒトまたはヒト以外の動物、植物などの多細胞生物体である対象から採取され、単離された細胞、または環境から単離された単細胞生物、例えば、微生物、菌類、真菌類、細菌類、ウイルスなどを指す。「培養細胞」とは、何れかの生体から採取され単離された後または環境から単離された後に、培地または緩衝液中で任意の時間に亘り維持された細胞を指す。「単離組織」とは、何れかの生体から採取され、単離された組織、または細胞内若しくは細胞外などに存在する細胞構成成分などを指す。単離組織は、必要に応じて単離組織を切断することにより得られる切片であってもよい。「培養組織」とは、上記単離組織またはその切片を培地または緩衝液中で任意の時間に亘り維持したものを指す。
【0156】
上述した何れの実施形態も組み合わせることが可能であり、また、実施形態の一部分を他の実施形態の一部分と置き換えることが可能である。
【0157】
以上説明した照明デバイスおよびバイオ情報計測装置によれば、より効率的、経済的または正確に複数の検査項目についての情報(多項目)を得ることができる。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。