(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239580
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ベントナイトからシリカ水和物の除去方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/40 20060101AFI20171120BHJP
C09C 1/28 20060101ALI20171120BHJP
C09C 3/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
C01B33/40
C09C1/28
C09C3/04
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-254608(P2015-254608)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-128375(P2016-128375A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0192967
(32)【優先日】2014年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506081530
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ ジオサイエンス アンド ミネラル リソースズ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】キム ワンテ
(72)【発明者】
【氏名】キム サンベ
(72)【発明者】
【氏名】カン イル−モ
【審査官】
小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0377562(US,A1)
【文献】
特開平09−183613(JP,A)
【文献】
特開2011−207687(JP,A)
【文献】
特開昭58−204862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20−39/54
C09C 1/28
C09C 3/04
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイトとナトリウム化合物を蒸溜水または脱イオン水に入れてスラリーを製造した後、超音波を照射するステップと、
前記超音波が照射されたスラリーに蒸溜水または脱イオン水を添加して希釈させた後、遠心分離するステップと、
前記遠心分離により得られた上澄液を乾燥させるステップと、を含み、
前記ナトリウム化合物は、ベントナイトに対してベントナイトの陽イオン交換容量に基づいて0.04〜0.09の重量比で添加され、
前記遠心分離は、10,000〜12,000rpmで30分間遂行される、
ことを特徴とする、ベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項2】
前記ベントナイトは蒸溜水または脱イオン水での濃度が3.0〜9.0重量%になるように含むことを特徴とする、請求項1に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項3】
前記ナトリウム化合物はNa2CO3、NaHCO3、及び(NaPO3)6からなる群から選択される1種であることを特徴とする、請求項1に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項4】
前記ナトリウム化合物がNa2CO3の場合、ベントナイトに対して0.04〜0.05の重量比で添加されることを特徴とする、請求項1に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項5】
前記ナトリウム化合物がNaHCO3の場合、ベントナイトに対して0.06〜0.07の重量比で添加されることを特徴とする、請求項1に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項6】
前記ナトリウム化合物が(NaPO3)6の場合、ベントナイトに対して0.07〜0.09の重量比で添加されることを特徴とする、請求項1に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項7】
前記超音波は20kHzの周波数を有し、500〜700Wのエネルギーで10〜20分間照射されることを特徴とする、請求項1に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項8】
前記超音波照射後、蒸溜水または脱イオン水はスラリーの濃度が0.75〜1.5重量%になるように添加されることを特徴とする、請求項1に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項9】
ベントナイトを前処理するステップと、
前記前処理されたベントナイトにナトリウム化合物を添加し、蒸溜水または脱イオン水に入れた後、超音波を照射するステップと、
前記超音波が照射されたスラリーに蒸溜水または脱イオン水を添加して希釈させた後、遠心分離するステップと、
前記遠心分離により得られた上澄液を乾燥させるステップと、を含み、
前記ナトリウム化合物は、ベントナイトに対してベントナイトの陽イオン交換容量に基づいて0.04〜0.09の重量比で添加され、
前記遠心分離は、10,000〜12,000rpmで30分間遂行される、
ことを特徴とする、ベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項10】
前記前処理はベントナイトを乾燥させ、解碎(scrubbing)した後、水飛し、乾燥させる工程を含むことを特徴とする、請求項9に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項11】
前記前処理されたベントナイトは蒸溜水または脱イオン水での濃度が3.0〜9.0重量%になるように含まれることを特徴とする、請求項9に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項12】
前記ナトリウム化合物はNa2CO3、NaHCO3、及び(NaPO3)6からなる群から選択される1種であることを特徴とする、請求項9に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項13】
前記超音波は20kHzの周波数を有し、500〜700Wのエネルギーで10〜20分間照射されることを特徴とする、請求項9に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【請求項14】
前記超音波照射後、蒸溜水または脱イオン水はスラリーでの前処理されたベントナイト濃度が0.75〜1.5重量%になるように添加されることを特徴とする、請求項9に記載のベントナイトからシリカ水和物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナトリウム化合物及び超音波照射を用いてベントナイトに含まれたシリカ水和物を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベントナイト(bentonite)は陽イオン置換能、粘結性、水和、及び膨潤性などが他の鉱物に比べて非常に良好であるので、粘結特性を用いた鋳物産業での粘結材、膨潤特性を用いた土木工事材料、農薬添加剤に使われており、最近には有機−無機ナノ複合材の素材として脚光を浴びている実状である。また、ベントナイトに含まれているモンモリロナイトの鉱物学的特性を用いる新たな用途である製紙、ペイント、廃水処理、高分子工業などの化学工業分野で需要が増加している趨勢であるが、このような用途に使用するためには前記ベントナイトのうちに含まれているモンモリロナイトを選別的に分離・回収することが必須である。
【0003】
一方、天然のベントナイト鉱物は主成分鉱物であるモンモリロナイト鉱物の以外に石英、ゼオライト、雲母類、高嶺土、イルライト、石膏、方解石などの鉱物を不純鉱物として含有しているため、このような不純鉱物はベントナイトを使用するに当たってさまざまな制約要因として作用するようになる。そして、ベントナイト鉱物に挟在された不純鉱物はベントナイト鉱物の生成時期に如何なる地質変化を受けて、周辺鉱物環境がどうだったかによって多様に構成され、主なベントナイト鉱物の粒子サイズが微粒の粘土鉱物であるという特徴があるので、周辺の不純物の種類、混入程度、及び分布特性によって相異する。
【0004】
ベントナイトのうちからモンモリロナイト鉱物を分離・選別する方法には、ベントナイト原鉱に水を添加して鉱液を作って、前記鉱液を撹拌機内でインペラの回転力により解碎させた後、一定のサイズの篩目を有する篩を通過させて微粒産物を回収する四分分離法と、ベントナイト原鉱を水と混合して撹拌させた後、浮遊する産物を水流により運搬して回収する水飛方法と、鉱液をサイクロンを通過させて微粒産物のみを回収するサイクロン法などがある。しかしながら、前記のような方法はベントナイトのうちに含まれているモンモリロナイト鉱物を分離・選別することにある程度の効果はあるが、モンモリロナイト鉱物の回収率が低く、純粋なモンモリロナイト鉱物のみを分離回収することはほとんど不可能な問題があるだけでなく、解碎工程で多い時間及びエネルギーを必要とし、分離工程で多量の水が添加されるので、これに伴う脱水及び後処理工程が非常に複雑になって処理費用が上昇する問題点を有している。
【0005】
また、モンモリロナイトを主成分とするベントナイトを化粧品、食品、医薬品などの人体に使用する時、モンモリロナイトに含まれたシリカ水和物によって癌などのさまざまな疾病を誘発することがあるので、ベントナイトに含まれたシリカ水和物を除去する方法が必要である。
【0006】
これと関連した先行文献には、大韓民国公開特許第10−2001−0079473号(2001.08.22.公開)に開示されている“食品及び医薬品の用途として、数多い種類のコロイド性微量ミネラルが含まれているベントナイト(または、モンモリロナイト)”がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ナトリウム化合物及び超音波照射を用いて簡単な方法によりベントナイトに含まれたシリカ水和物を除去する方法を提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない更に他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明はベントナイトとナトリウム化合物を蒸溜水または脱イオン水に入れてスラリーを製造した後、超音波を照射するステップ;前記超音波が照射されたスラリーに蒸溜水または脱イオン水を添加して希釈させた後、遠心分離するステップ;及び前記遠心分離により得られた上澄液を乾燥させるステップ;を含むベントナイトからシリカ水和物の除去方法を提供する。
【0010】
また、本発明はベントナイトを前処理するステップ;前記前処理されたベントナイトにナトリウム化合物を添加し、蒸溜水または脱イオン水を入れてスラリーを製造した後、超音波を照射するステップ;前記超音波が照射されたスラリーに蒸溜水または脱イオン水を添加して希釈させた後、遠心分離するステップ;及び前記遠心分離により得られた上澄液を乾燥させるステップ;を含むベントナイトからシリカ水和物の除去方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトを化粧品、食品、医薬品などの人体に使用する場合、モンモリロナイトに含まれたシリカ水和物によって癌などのさまざまな疾病を誘発することがあるので、ナトリウム化合物を用いてCa−ベントナイトをNa−ベントナイトに活性化させることによって、板状構造の間に存在するシリカ水和物などの不純鉱物を全てベントナイト粒子の表面に露出させることができる。
【0012】
また、ベントナイトに超音波を照射してモンモリロナイトと分離し、これを遠心分離する工程によりシリカ水和物を95〜100%に除去することができるので、化粧品、食品、医薬品などに有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法における遠心分離により得られた上澄液を乾燥させた後のXRD結果である。
【
図3】本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法における遠心分離により得られた沈殿物を乾燥させた後のXRD結果である。
【
図4】本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法におけるナトリウム化合物の添加量に従うベントナイトのXRD結果である。
【
図5】本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法におけるナトリウム化合物の添加量に従う面間距離を示すグラフである。
【
図6】本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法におけるナトリウム化合物の添加有無及び超音波照射時間に従う高純度ベントナイトの回収率を示すグラフである。
【
図7】ベントナイトの処理方法に従う高純度ベントナイトの回収量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しつつ本発明に係る好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明の利点及び特徴、そしてそれを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すれば明確になる。
【0016】
しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態により限定されるものでなく、互いに異なる多様な形態に具現されるものであり、単に本実施形態は本発明の開示が完全であるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇により定義されるだけである。
【0017】
また、本発明を説明するに当たって関連した公知技術などが本発明の要旨を曖昧にすることがあると判断される場合、それに関する詳細な説明は省略する。
【0018】
本発明は、ベントナイトとナトリウム化合物を蒸溜水または脱イオン水に入れてスラリーを製造した後、超音波を照射するステップ;前記超音波が照射されたスラリーに蒸溜水または脱イオン水を添加して希釈させた後、遠心分離するステップ;及び前記遠心分離により得られた上澄液を乾燥させるステップ;を含むベントナイトからシリカ水和物の除去方法を提供する。
【0019】
本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法は、ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトを化粧品、食品、医薬品などの人体に使用する場合、モンモリロナイトに含まれたシリカ水和物によって癌などのさまざまな疾病を誘発することがあるので、ナトリウム化合物を用いてCa−ベントナイトをNa−ベントナイトに活性化させることによって、板状構造の間に存在するシリカ水和物などの不純鉱物を全てベントナイト粒子の表面に露出させることができる。また、ベントナイトに超音波を照射してモンモリロナイトと分離し、これを遠心分離する工程によりシリカ水和物を95〜100%に除去することができるので、化粧品、食品、医薬品などに有用に使用することができる。
【0020】
図1は、本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法を示すフローチャートである。以下、
図1を参考して本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法は、ベントナイトとナトリウム化合物を蒸溜水または脱イオン水に入れてスラリーを製造した後、超音波を照射するステップ(S10)を含む。
【0022】
前記ベントナイトは、蒸溜水または脱イオン水での濃度が3.0〜9.0重量%になるように含まれることが好ましい。前記濃度が3.0重量%未満の場合には超音波照射時、ベントナイト粒子と超音波の気泡または粒子相互間の衝突機会が低くてシリカ水和物を分離させる効果が低くなり、最終的に得られる高純度ベントナイトの量が減少する問題があり、9.0重量%を超過する場合には、スラリーの流動性が顕著に減少して、今後、超音波効果が低いという問題がある。
【0023】
また、前記ナトリウム化合物はNa
2CO
3、NaHCO
3、及び(NaPO
3)
6からなる群から選択される1種を使用することができる。本発明は、前述した種類のナトリウム化合物を使用することによって、Ca形態のベントナイトをNa形態のベントナイトに活性化させることができ、Na形態のベントナイトが有する向上した膨潤性を用いてベントナイト層の間に分布するシリカ水和物を効率よく除去することができる。
【0024】
前記ナトリウム化合物は、以下の実験例1から分かるように、ベントナイトのCEC値の90%以上添加されれば、XRDピークの位置が変化せず、面間距離が一定に維持されて、これを換算した値が適切な添加量である。したがって、ナトリウム化合物はベントナイトに対して0.04〜0.09の重量比で添加されることが好ましい。具体的に、ナトリウム化合物がNa
2CO
3の場合、ベントナイトに対して0.04〜0.05の重量比で添加されることが好ましく、NaHCO
3の場合、ベントナイトに対して0.06〜0.07の重量比で添加されることが好ましく、(NaPO
3)
6の場合、ベントナイトに対して0.07〜0.09の重量比で添加されることが好ましい。前記重量比が0.04未満添加される場合には、ベントナイト層の間に存在するCaをNaに完全に置換させられなくて、膨潤性が低くて層間に存在するシリカ水和物が外部に十分に露出させられない問題があり、0.09を超過する場合には、ナトリウム化合物の添加量が多くなって余分のNaが最終産物に残留する問題がある。
【0025】
また、前記超音波は20kHzの周波数を有し、500〜700Wのエネルギーで10〜20分間照射することが好ましい。前記超音波が500W未満に照射される場合にはベントナイトとシリカ水和物との分離効率が低くなる問題があり、700Wを超過する場合にはスラリーが強く搖動して作業性が劣って、エネルギー消費が多過ぎ、超音波発生部の摩耗が容易に起こって、スラリーに不純物が混入する問題がある。
【0026】
次に、本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法は、前記超音波が照射されたスラリーに蒸溜水または脱イオン水を添加して希釈させた後、遠心分離するステップ(S20)を含む。
【0027】
前記超音波照射後、蒸溜水または脱イオン水はスラリーの濃度が0.75〜1.5重量%になるように添加されることが好ましい。前記濃度が0.75重量%未満の場合にはスラリー量が増加して遠心分離回数が増加する問題があり、1.5重量%を超過する場合には、スラリー内に存在する粒子相互間の干渉により分離効率が低下する問題がある。
【0028】
また、前記遠心分離は10,000〜12,000rpmで30分間遂行されることが好ましい。前記遠心分離が10,000rpm未満に遂行される場合にはベントナイトに含まれたシリカ水和物が除去されない問題があり、12,000rpmを超過する場合には、ベントナイトの実収率が減少する問題がある。
【0029】
本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法は、前記遠心分離により得られた上澄液を乾燥させるステップ(S30)を含む。
【0030】
本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法における遠心分離を遂行すれば液体(上澄液)と固体(沈殿物)とに分離され、分離された上澄液にはシリカ水和物が除去されたモンモリロナイトのみが存在するようになり、これを乾燥させることによってシリカ水和物が除去された高純度のモンモリロナイトを得ることができる。
【0031】
また、本発明はベントナイトを前処理するステップ;前記前処理されたベントナイトにナトリウム化合物を添加し、蒸溜水または脱イオン水に入れた後、超音波を照射するステップ;前記超音波が照射されたスラリーに蒸溜水または脱イオン水を添加して希釈させた後、遠心分離するステップ;及び前記遠心分離により得られた上澄液を乾燥させるステップ;を含むベントナイトからシリカ水和物の除去方法を提供する。
【0032】
天然のベントナイト鉱物は主成分鉱物であるモンモリロナイト鉱物の以外に、石英、ゼオライト、雲母類、高嶺土、イルライト、石膏、方解石などの鉱物を不純鉱物として含有しているので、このような不純鉱物は除去するためにベントナイトを前処理することができ、前処理を遂行してベントナイトからモンモリロナイトのみを回収することができる。
【0033】
本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法において、前記前処理はベントナイトを乾燥させ、解碎(scrubbing)した後、水飛し、乾燥させる工程を含む。
【0034】
この際、前記前処理されたベントナイトは蒸溜水または脱イオン水での濃度が3.0〜9.0重量%になるように含まれる。
【0035】
また、前記ナトリウム化合物はNa
2CO
3、NaHCO
3、及び(NaPO
3)
6からなる群から選択される1種を使用することができ、前記ナトリウム化合物は前処理されたベントナイトに対して0.04〜0.09の重量比で添加されることが好ましい。以下、構成は前述した通りである。
【0036】
実施形態1:ベントナイトからシリカ水和物の除去1
10.5gのベントナイトと0.48gのNa
2CO
3を350mlの蒸溜水に入れて3重量%のスラリーに製造した後、20kHz周波数で500Wの超音波を10分間照射した。超音波照射後、350mlのスラリーに1,050mlの蒸溜水を入れてスラリー濃度が0.75%になるように希釈させた後、希釈されたスラリーを4等分して4,000rpm、6,000rpm、8,000rpm、及び10,000rpmで30分間遠心分離させた。遠心分離後、得られた上澄液を乾燥させてシリカ水和物が除去された高純度モンモリロナイトを得た。
【0037】
図2は、本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法における遠心分離後、得られた上澄液を乾燥させた後のXRD結果である。
図2の(a)、(b)、(c)及び(d)は各々遠心分離を4,000rpm、6,000rpm、8,000rpm、10,000rpmで遂行したXRD結果である。
図2に示すように、10,000rpmでは液体にシリカ水和物(SiO
2・nH
2O、opal CT)が観察されていないことから見て、大部分が固液分離時に沈殿物に移動したことが分かる。したがって、ナトリウム化合物を用いると共に、超音波照射工程を通じて固液分離により得られた液体にはモンモリロナイトのみが存在してシリカ水和物が除去されたことが分かる。
【0038】
図3は、本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法における遠心分離により得られた沈殿物を乾燥させた後のXRD結果である。
図3に示すように、沈殿物にはシリカ水和物の他にもベントナイトに混在されていたクォーツ(quartz)と長石(feldspar)などの不純鉱物のピークが表れることが分かり、Na
2CO
3により生成された炭酸カルシウム(CaCO
3)も検出された。
【0039】
実施形態2:ベントナイトからシリカ水和物の除去2
ベントナイトを乾燥させ、解碎した後、比重選別し、乾燥させる工程を遂行してベントナイトを前処理したことを除いては、前記実施形態1と同一な方法によりベントナイトからシリカ水和物を除去した。
【0040】
比較例1:ベントナイト処理1
10.5gのベントナイトを350mlの蒸溜水に入れてスラリーに作った後、60分間機械的に撹拌し、10,000rpmで30分間遠心分離した。遠心分離後、得られた液体を乾燥させた。
【0041】
比較例2:ベントナイト処理2
10.5gのベントナイトと0.48gのNa
2CO
3を350mlの蒸溜水に入れて10,000rpmで30分間遠心分離した。遠心分離後、得られた液体を乾燥させた。
【0042】
比較例3:ベントナイト処理3
10.5gのベントナイトを350mlの蒸溜水に入れて20kHz周波数で240Wの超音波を10分間照射した後、10,000rpmで30分間遠心分離した。遠心分離後、得られた液体を乾燥させた。
【0043】
実験例1:ナトリウム化合物の添加量分析
本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法におけるナトリウム化合物の添加量を決定するためにXRD及び面間距離変化を分析し、その結果を
図4及び
図5に示した。
【0044】
アルカリ活性化のために適正量のナトリウム化合物を添加するために、本発明ではXRDと計算法を併用した。ベントナイトにナトリウム化合物を投入して65℃で1時間の間湿式撹拌した後、乾燥させたベントナイトをXRDで分析し、以下の<数式1>に記載された通り、ナトリウム化合物の理論量を計算した。
【0045】
[数1]
ナトリウム化合物使用量(g)=(ベントナイトのCEC(eq/g)×ベントナイトの重さ(g)×ナトリウム化合物の分子量)/1000×0.5
【0046】
前記CECはベントナイトの陽イオン交換容量(cation exchange capacity、meq/100g)である。
【0047】
図4は、本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法におけるナトリウム化合物の添加量に従うXRD結果である。
図4に示すように、ナトリウム化合物の添加量によってピークが異に示されることが分かり、ナトリウム化合物であるNa
2CO
3の添加量をベントナイトCECの90%以上にした場合、XRDでのピーク位置が変化しなかった。
【0048】
以下の<表1>はベントナイトCECの10%、20%、40%、60%、80%、90%、100%、110%、120%に対するNa
2CO
3量を示すものである。
【0050】
この際、ベントナイトの使用量は10.5gで、ベントナイトのCECは78.4meq/100gである。
【0051】
また、
図5は本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法におけるナトリウム化合物の添加量に従うベントナイトの面間距離変化を示すグラフである。
図5に示すように、ナトリウム化合物であるNa
2CO
3の量が増加するほど(001)面の面間距離は減って、特に、Na
2CO
3が0.4g以上添加した場合からは面間距離が変化せず、一定に維持されることが分かる。
【0052】
したがって、本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法におけるナトリウム化合物の添加量はベントナイト(001)面の面間距離が変化しない地点である0.4〜0.5gのものが最も適切であることが分かる。
【0053】
実験例2:ナトリウム化合物の添加有無及び超音波照射時間に従うモンモリロナイトの回収率分析
本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法におけるナトリウム化合物の添加有無及び超音波照射時間に従うモンモリロナイトの回収率を調べて、その結果を
図6に示す。
【0054】
図6に示すように、ナトリウム化合物を添加することによってモンモリロナイトの回収率が格段に向上することが分かり、超音波照射時間を10〜20分間遂行した場合、高い回収率を示した。
【0055】
実験例3:ベントナイト処理方法に従うベントナイトの回収量分析
ベントナイトの処理方法に従うモンモリロナイトの回収量を分析し、その結果を以下の<表2>及び
図7に示した。
【0057】
前記<表2>及び
図7に示すように、本発明に係る実施形態2ではシリカ水和物が除去された高純度ベントナイト(モンモリロナイト)を61.4重量%で得ることができるので最も高い回収率を示し、機械的撹拌と遠心分離だけではシリカ水和物が除去されたベントナイトをほとんど得ることができなかった。また、Na
2CO
3と遠心分離を使用した場合にもシリカ水和物が除去されたベントナイトを24.7重量%で得ることができるので、本発明に係る実施形態2と比較するとシリカ水和物が除去されたベントナイトの量が格段に少ないことが分かり、超音波照射と遠心分離を用いた場合にも16.5重量%で示されて実施形態2で得られる量に遠く及ばないことが分かる。
【0058】
したがって、ベントナイトからシリカ水和物を除去し、多量のモンモリロナイトを得るためにはNa
2CO
3と超音波照射及び遠心分離が併行されなければならないことが分かる。
【0059】
今まで本発明に係るベントナイトからシリカ水和物の除去方法に関する具体的な実施形態に関して説明したが、本発明の範囲から逸脱しない限度内ではさまざまな実施変形が可能であることは自明である。
【0060】
したがって、本発明の範囲には説明された実施形態に限定されて定まってはならず、後述する特許請求範囲だけでなく、この特許請求範囲と均等なものにより定まらなければならない。
【0061】
即ち、前述した実施形態は全ての面で例示的なものであり、限定的なものでないことと理解されなければならず、本発明の範囲は詳細な説明よりは後述する特許請求範囲により表されて、その特許請求範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものとして解析されなければならない。