特許第6239586号(P6239586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62395862つの固体間の熱抵抗を減じるための方法および可動式装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239586
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】2つの固体間の熱抵抗を減じるための方法および可動式装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   G21C19/32 W
   G21C19/32 P
   G21C19/32 Z
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-502368(P2015-502368)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-513101(P2015-513101A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013056792
(87)【国際公開番号】WO2013144326
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】1252769
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506423291
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ボナール,ジャン クロード
(72)【発明者】
【氏名】デュレ,ベルナール
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−102802(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/161233(WO,A1)
【文献】 特表2010−525309(JP,A)
【文献】 特開2003−315488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料貯蔵ラックのための柱形状又はブロック形状の熱伝達要素(30、32、34、36)であって、
底面および2つの第2表面を含む3つの主要な面(303、303’、305、325、345、365)と2つの側面(301、301’)とを有し、前記柱形状又はブロック形状を形成する面に少なくとも前記底面および前記2つの第2表面を含む3つの主要な面を含み、
熱伝導性材料で作成され、
前記2つの側面は、
前記底面に対して平行かつ前記柱形状又はブロック形状の延長方向に垂直な引っぱり方向に前記熱伝達要素を引っぱるための手段を備え、
前記熱伝達要素を引っぱるための手段は、前記熱伝達要素の前記底面が高温壁もしくは低温壁とよばれる壁に接触している初期位置から、前記熱伝達要素の前記底面が前記高温壁もしくは低温壁とよばれる壁に面するとともに空間もしくはクリアランス(27、29)によって前記高温壁もしくは低温壁とよばれる壁から離間された、引き上げられた状態に前記熱伝達要素を移行させるため、およびその逆のために、設けられる、熱伝達要素。
【請求項2】
前記要素を引っぱるための前記手段が、
・前記側面上に位置されているか、
・または、前記要素に形成された側部凹部(203、204、205、206)であって、各凹部が、前記第2平面のうちの1つおよび任意により対応する側面(303)に存在する、側部ノッチもしくは側部凹部を備える、
請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記要素を引っぱるための前記手段が、各側面上または各側部ノッチもしくは側部凹部の壁上に位置された少なくとも2つのピンもしくは2つの突出部(30’、30”、32’、32”、34’、34”、36’、36”)を備える、請求項2に記載の要素。
【請求項4】
前記底面に対して平行な方向に前記要素を引っぱるための前記手段と協働する、少なくとも1つの牽引リンク(40、42、44、47)を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の要素。
【請求項5】
前記牽引リンクが、少なくとも部分的に切り取られた開口部を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の要素。
【請求項6】
前記2つの側面のそれぞれが三角形に形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の要素。
【請求項7】
前記底面が、平面であるか、または円筒(305’)の一部を形成するか、湾曲を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の要素。
【請求項8】
前記第2表面(303、303’)が、平面であるか、または波状起伏を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の要素。
【請求項9】
・前記2つの壁の間に配置された、請求項1〜8のいずれか一項に記載の伝達要素の第一スタックであって、要素の各第2表面が、隣接する伝達要素の第2表面と対向しており、前記異なる吸収性要素の前記底面が前記スタックの一方の面、次いで他方の面を向いて交互に反転しており、各伝達要素が、前記底面に対して平行な方向に該要素を引っぱるための手段によって、その隣接する要素に接続されている、第一スタックと、
・伝達要素の前記アセンブリに牽引を行使するための手段(21)と、
を備える、核燃料貯蔵ラック要素(60、62、64、66、68、70)。
【請求項10】
要素の各第2表面が、
・伝達要素の前記アセンブリに牽引が行使されていない場合には伝達要素の第2表面と接触しており、
・伝達要素の前記アセンブリに牽引が行使される場合には、前記第2表面から、それらに対して平行に、ゼロでない距離に位置される、
請求項9に記載の貯蔵ラック要素(60、62、64、66、68、70)。
【請求項11】
伝達要素の前記スタックが、前記ラック要素の全高より短い高さ(h)を有する、請求項9または10に記載の貯蔵ラック要素(60、62、64、66、68、70)。
【請求項12】
材料の連続部分によって前記第一スタックから離間されたゾーン(200、200’)に配置された、請求項1〜8のいずれか一項に記載の伝達要素の少なくとも1つに第二スタックをさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の貯蔵ラック要素(60、62、64、66、68、70)。
【請求項13】
各ラックの牽引の方向に対して垂直な平面において、円筒形または正方形または長方形または六角形の中央キャビティ(17)を区切るように配置された、請求項9〜12のいずれか一項に記載の複数の貯蔵ラック要素を含む、核燃料貯蔵ラック。
【請求項14】
ガンマ線の吸収のための周辺保護層(54)および中性子を減速するための周辺保護層(52)で囲まれた、請求項13に記載の少なくとも1つの貯蔵ラックを含む、核燃料の貯蔵および/または輸送のためのキャスク。
【請求項15】
2〜12の数のいくつかのラックを含む、請求項14に記載の核燃料の貯蔵のためのキャスク。
【請求項16】
以下の工程:
・請求項13に記載の貯蔵ラックの前記ラック要素の前記伝達要素を、初期状態から引き上げられた状態に移行させて、各伝達要素と前記高温面および低温面を形成する前記2つの平面(22、24)との間にクリアランス(27、29)を生じさせるために、該伝達要素に対して牽引を行使し
・前記中央キャビティ(17)内に核燃料棒(15)を導入し、
・前記伝達要素を、各伝達要素の前記底面が前記高温壁および低温壁(22、24)の2つのうちの一方もしくは他方と接触するように位置決めされる初期状態へと戻すために、該伝達要素を解放すること、
を含む、核燃料棒(15)を貯蔵および/または輸送するための方法。
【請求項17】
前記貯蔵ラックをプール(12)中に導入する前工程と、前記核燃料棒(15)を搭載した前記ラックを前記プールから取り出す後工程とを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記核燃料棒(15)7kW以上の出力を有する、請求項16または17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれの中に燃料アセンブリまたは任意により数個の燃料アセンブリのロッドが導入され得る複数の長尺の隣接するセルで構成される、核燃料アセンブリのための貯蔵ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
当該貯蔵ラック(貯蔵バスケットとしても知られる)は、任意により遮蔽されているもしくはされていないパッケージでの、当該燃料アセンブリの貯蔵および/または輸送のためのものである。それらは、使用済燃料に適しているが、未使用燃料に対しても使用することができる。それらは、例えば、プールでの燃料の貯蔵の際または輸送もしくは貯蔵パッケージ内へのそれらの導入の際などに、乾燥媒体もしくは湿潤媒体中において使用され得る。
【0003】
燃料アセンブリを輸送するためのキャスクの様々な機能(放射線保護、耐衝撃性、耐火性など)の必要性に対して提供される解決策は、多様な材料のスタックである。高出力が排出される場合、スタックにとって必要なクリアランスの存在から、結果として、内部温度に対する限界が生じる。
【0004】
放射性物質の安全性および輸送に関連する問題については、“La surete des transports de matieres radioactives” (Safe transport of radioactive materials), by B. Lenail, Revue Generale Nucleaire n°1 2005、“Conception, fabrication et essais des emballages pour le transport des matieres radioactives” (Design, construction and testing of packages for transporting radioactive materials), by B.C. Bernardo, IAEA Bulletin Vol.21, n°6、または、欧州特許第0752151号明細書に記載されている。
【0005】
一般的に、燃料アセンブリは、12個(またはそれ以上)までのアセンブリを収容するキャスク内において乾燥状態で運搬される。これらの輸送パッケージは、関連するフランス、英国、および日本の当局によって承認されており、ならびに、タイプBのパッケージに対するIAEA規定によって課せられた基準を満たしている。およそ40年間も使用されるこのタイプのキャスクは、放射能のあらゆる放出を防ぐ性能(二重障壁、火災挙動など)を当該パッケージが本質的に備えているという原則に基づいている。
【0006】
図1に示されるように、当該キャスクは、外部から内部までにおいて、その長尺にわたって、
・冷却フィン4を備え得る外部ゾーン2、
・中性子吸収層6、
・鉄鋼製カラー8、
・ならびに、燃料アセンブリもしくは任意選択によりいくつかの燃料アセンブリのロッドが導入され得る、1つまたは複数の長尺の隣接するセル12を含む、核燃料アセンブリのための貯蔵ラック10
を備える。
【0007】
核燃料アセンブリのためのセル構造を有する様々なタイプのラックが知られている。それらは、一般的に、以下の3つの機能を保証している。
・ラック内に貯蔵される一連のアセンブリの、乾燥状態での、または液体もしくは気体状態(この水は、例えばホウ素などをベースとする中性子吸収性化合物を含有することができる)の水の存在下での臨界の制御
・以下の2つの目的を満たす十分な機械的強度
(i)アセンブリを搭載したラックの幾何学構造の維持を保証すること、および通常の使用(取り扱い、輸送など)の際の燃料棒の劣化を避けること
(ii)現行規定に従って、たとえ偶発的状況(激しい衝撃または落下)においてもラックの幾何学構造を維持することにより臨界の制御を保証すること、
・使用済みアセンブリの場合に放出される熱を排出するための熱伝達
【0008】
当該ラックは、場合により、放射線を遮蔽する補完物を提供することを目的としても設計される。
【0009】
当該ラックは、一般的に、いくつかの材料の組み合わせによって構成され、当該材料のそれぞれは、上記において列挙した3つの機能のうちの少なくとも1つを満たしている。使用される主な材料は、一般的には、以下の通りである。
・機械的強度機能のためのステンレス鋼またはアルミニウム(またはそれらの合金)
・熱伝達機能のためのアルミニウムまたは銅(またはそれらの合金)
・臨界制御機能のための、ホウ素化合物(例えば、B4Cベースのフリットなど)、銅の合金、ホウ素を含有するアルミニウムまたはステンレス鋼
【0010】
キャスクの熱的性能の観点から、内部出力の排出および800℃で30分間の耐火性は、現在、材料(鉄鋼製カラー、アルミニウムラックなど)およびそれらの性能(フィンが横断する「複合体」、接続部の保護など)を適合させることにより、解決される。
【0011】
特にアセンブリの具現化の問題の場合、半径方向の異なる層の連結を伴うこのシステムは、特に、より容易にアセンブリもしくはラックをキャスクに導入することを必要とするため、異なる層の間、特にアセンブリとキャビティとの間だけでなく、ラックとカラーとの間、の境界にクリアランスが設けられる。これらのクリアランス、例えば約5mmおよび2mm、は、熱伝達の必要性に対しては不利であり得る。
【0012】
特に高出力を排出する場合、これらのクリアランスの存在は、高い熱抵抗を生じ、結果として高い熱勾配を生じ、これは、許容可能な最大出力レベルを高めることが望まれる場合に、最高内部温度をかなり上昇させる(これは、材料、燃焼速度などにも依存する)。
【0013】
現在のところ、輸送は窒素下において行われるが、より伝導性の高い気体(ヘリウム)を使用することもでき、この場合、PWR(加圧水型原子炉)の燃料の輸送では、出力レベルが低いため、それぞれ5mmおよび2mmの内部クリアランスおよび外部クリアランスで十分である。
【0014】
しかし、より高出力の燃料(例えば、MOX燃料タイプ、または代わりに将来的なアクチニドのアセンブリ)の輸送を可能にすることについては問題がある。
【0015】
したがって、許容不可能な内部温度を完全に超えることのない、外部への熱量の良好な排出の可能性は、今後の重要な課題である。
【0016】
この場合、伝達される総出力はそれほどたいした問題ではなく、むしろ前述のクリアランスの存在によって生じる熱勾配の方が問題である。
【0017】
したがって、現状技術を用いることにより、ヘリウム下において輸送されるアセンブリの最大出力は、450℃を超えない場合の2.5kW、および650℃を超えない場合の4.5kWに抑えられるであろうが、その一方で、より一層高い出力の輸送が求められ得る。
【0018】
国際公開第2011/161233号には、外部クリアランスによる接触熱抵抗を低減することを可能にするシステムについて記載されている。このシステムでは、ラックの4つの部品が鋼鉄製カラーと接触する。その結果、半径方向の伝達が向上した簡単なシステムが得られるが、既知の内部クリアランスについてのものは得られない。したがって、排出可能な出力に関して、利得は少ない。
【0019】
したがって、内部クリアランスと呼ばれる(アセンブリとラックとの間の)クリアランスについても問題がある。
【0020】
事実、従来のクリアランス(例えば、内部5mmおよび外部2mm)を有する、アセンブリがヘリウム下にあるようなキャスクの場合を再考すると、650℃で排出可能な出力は6.3kWである。例えば国際公開第2011/161233号の教示により、外部クリアランスが無くされる場合、排出可能な出力は6.75kWとなり、すなわち、排出可能な出力は8%だけ増加する。2つのクリアランスが無くされる場合、当該出力は、8.75となる(すなわち、+40%の増加)。しかし、この技術において、接触状態で位置される表面は重要であり(ラックの外部表面の約1/4)、したがって、完全に許容不可能な製作公差が存在しない限り、1つの発生器または単にいくつかのゾーンにおいてのみ接触が生じ得る。
【0021】
結果として、その厚さが重要な接触抵抗ならびに熱的基準の上限を生じる、貯蔵もしくは輸送キャスクの内側のクリアランスは、燃料アセンブリの輸送の際に、排出可能な出力を多分に調整する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、課題は、名目上の仕様において達せられる温度を下げるために、輸送キャスクの内側の熱交換を向上させることである。
【0023】
この制限に対する解決策を本明細書において提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
最初に、核燃料貯蔵ラックのための熱伝達要素であって、実質的にプリズム形状であり、底面および2つの第2平面を含む3つの主要な面と2つの側面とを有し、熱伝達性材料で作成され、ならびに底面に対して平行な方向に当該要素を引っぱるための手段を側面に備えた、熱伝達要素について説明する。
【0025】
各伝達要素は、熱を伝達する素材で作成されており、したがって、良好な熱伝導性であり、例えば、アルミニウムもしくは銅などの金属材料で作成される。
【0026】
当該要素を引っぱるための手段は、側面に位置されてもよい。例えば、これらのそれぞれの側面は、少なくとも2つのピンまたは2つの突出部を備える。
【0027】
変形例において、当該要素を引くための手段は、当該要素に形成されたノッチまたは側部凹部を含んでもよく、この場合、各凹部は、第2平面のうちの1つに存在し、ならびに任意により対応する側面にも存在する。各ノッチの壁は、例えば少なくとも2つのピンもしくは2つの突出部などの手段を備える。
【0028】
かかる要素は、底面に対して平行な方向に当該要素を引っぱるための手段と協働する、例えば内部切り取りなどを有し、または有しない少なくとも1つの牽引リンクを備え得る。
【0029】
かかる要素は、底面に対して垂直な平面において、実質的に三角形を有する。
【0030】
当該底面は、平面であり得るか、または牽引の方向に対して実質的に平行な軸の周りにおいて少なくとも1つの湾曲を有し得る。
【0031】
したがって、核燃料貯蔵ラック要素は、
・要素の各第2平面が、隣接する伝達要素の第2平面に対向しており、それにより、異なる伝達要素の底面が、スタックの片面に向かって、次いでもう一方の片面に向かってと、交互に反転しており、各伝達要素が、当該要素を底面に平行な方向に引っぱるための手段によってその隣の伝達要素と接続されている、上記において説明したタイプの伝達要素の第一スタックと、
・伝達要素のアセンブリに牽引を行使するための手段と
を備える。
【0032】
そのような貯蔵ラック要素において、要素の各第2平面は、
・伝達要素のアセンブリに牽引が行使されない場合、特に要素のアセンブリに圧力が加えられる場合に、隣接する伝達要素の第2平面に接触してもよく、
・ならびに、伝達要素のアセンブリに牽引が行使される場合に、隣接する伝達要素の第2平面から離されてもよい。
【0033】
伝達要素のスタックは、ラック要素の全高より低い高さ(h)を有してもよい。この場合、ラックの残りの部分は、上記において説明した伝達要素の上方および下方に積み重ねられた伝達材料で構成される。当該高さhは、燃料要素が熱を生じる長さに実質的に等しいかもしくは近い。
【0034】
ラック要素はさらに、材料の連続部分によって第一スタックから離間されるゾーンに配置された、少なくとも1つの、上記において説明した伝達要素の第二スタックを含んでもよい。この第二スタックは、機械的な役割を果たすが、熱的な役割はあまり果たさない。
【0035】
基本核燃料貯蔵ラックは、対象となるアセンブリの形状に応じて、各ラックの牽引の方向に対して垂直な平面において実質的に正方形もしくは長方形もしくは六角形の中央キャビティを区切るように配置された、上記において説明したタイプの複数の貯蔵ラック要素を含んでもよい。
【0036】
したがって、キャスクは、核燃料の貯蔵および/または輸送のために構成されてもよく、前述において説明したようなタイプの基本貯蔵ラックを含み、この場合、当該ラックは、ガンマ線を吸収するための周辺保護層および中性子を減速するための周辺保護層によって囲まれている。
【0037】
いくつかの、例えば2〜12個の基本貯蔵ラックを含む、核燃料の貯蔵および/または輸送のためのキャスクを構成することも可能であり、この場合、各基本ラックは、前述において説明したようなタイプのものである。
【0038】
当該基本ラックは、周辺層との効率的な熱的接触を保証する前述のタイプの複数の伝達要素によって囲まれた固定ラック自体に位置される。
【0039】
本発明は、以下の工程を含む、核燃料棒を貯蔵および/または輸送する方法にも関する。
・上記において説明したような貯蔵ラックのラック要素に牽引を行使することにより、それらを初期状態から引き上げられた状態へと移行させ、各伝達要素と高温壁および低温壁とのそれぞれとの間にクリアランスを作り出す工程
・1つまたは複数のアセンブリを中央キャビティ内に導入する工程
・牽引を解放して、伝達要素を、各伝達要素の底面が高温壁および低温壁の一方もしくは他方と接触するように位置決めされる初期位置へと戻す工程
この工程の際、引力の作用は、それらの自重により、当該要素を初期位置に戻すのに十分であってもよい。当該ラックが縦向きの状態以外の状態にある場合でも、例えば、輸送の際に横向きの状態であっても、当該要素をこの状態に維持することを可能にする追加の圧力を任意に加えてもよい。
【0040】
かかる方法は、貯蔵ラックをプールに導入する工程によって先行されてもよく、ならびに燃料棒を搭載したラックを当該プールから取り出す工程によって後続されてもよい。
【0041】
本発明において、力を伝達要素のスタックに適用するための手段が実践され、これは、ラックがその内半径および外半径を変更することを可能にし、その結果、アセンブリとラックとの間の空間およびラックと外部環境、例えばカラーとの間の空間も減らすことを可能にする。
【0042】
したがって、当該ラックは、その形状を適合させて、アセンブリの潜在的変形に適合する。
【0043】
したがって、本発明は、搭載物の導入の際に重要なクリアランスを維持し、次いで、後続の作業、例えば取り扱いまたは輸送などの前にそれらを再吸収することを可能にする。
【0044】
特に高出力レベルのアセンブリの輸送の場合、当該システムは、接触熱抵抗(クリアランスにおける気体ギャップおよび当該気体の熱伝導率に直接関連する)を減じること、さらには無くすことを可能にする。しかし、当該システムは、以下の別の利点も有する。
・アセンブリをラックが覆うことにより、輸送の際の機械的強度を可能にすること
・以前にそうしていたような、くさびを導入する必要がないこと
・このラックが、その形状を適合させ、アセンブリにおける長手方向の潜在的な変形に適合すること
・ラックの現在の機械加工コストを減じること
・ある特定の場合において(特にアセンブリの場合)ラックのヘリウムが乾燥空気もしくは窒素で置き換えられ得ること
【0045】
接触が1つの発生器もしくは単にいくつかのゾーンにおいてのみ生じることが想起される、特許文献2に記載されている技術と比較して、本明細書において説明する本発明は、その底面の多様性により、接触点を増加させて、より大きな接触面積を有することを可能にする。伝達要素が小さいほど、形状への適合はより良好となる。
【0046】
本発明は、ラックにおける内部および外部クリアランスを最小にすることを可能にし、これは、ある特定のアセンブリの貯蔵および輸送を実施することを可能にし、その出力レベル(P>8kW)は、現在放出されているものより大きい。ただ1つのアセンブリだけではなく、複数のアセンブリも実現され得るため、本発明はさらに、アセンブリの輸送数の最適化も可能にする。
【0047】
以下において、添付の図面を参照しつつ、非限定的な実施例により本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】既に説明した、公知の構造のキャスクの分解立体図。
図2A】説明したような伝達要素の様々な図を表す。
図2B】説明したような伝達要素の様々な図を表す。
図2C】説明したような伝達要素の様々な図を表す。
図2D】説明したような伝達要素の様々な図を表す。
図3A】説明したような伝達要素の様々な図を表す。
図3B】説明したような伝達要素の様々な図を表す。
図4A】リンクおよびそれらの相対運動によって接続された2つの要素を表す。
図4B】リンクおよびそれらの相対運動によって接続された2つの要素を表す。
図4C】リンクおよびそれらの相対運動によって接続された2つの要素を表す。
図5A】伝達要素の様々な図。
図5B】伝達要素の様々な図。
図5C】伝達要素の様々な図。
図5D】伝達要素の様々な図。
図6A】リンクおよびそれらの相対運動によって接続された伝達要素のスタックを表す。
図6B】リンクおよびそれらの相対運動によって接続された伝達要素のスタックを表す。
図7A】開放された状態のラックの概略図。
図7B】閉鎖された状態のラックの概略図。
図8A】アセンブリを収容したラックの図。
図8B】アセンブリを収容したラックの図。
図9A】アセンブリをラック内に導入する工程。
図9B】アセンブリをラック内に導入する工程。
図9C】アセンブリをラック内に導入する工程。
図9D】アセンブリをラック内に導入する工程。
図9E】アセンブリをラック内に導入する工程。
図10A】1つのアセンブリを収容する、少なくとも1つのラック、1つの鉄鋼製カラー、および1つの樹脂を含むシステムの上面図。
図10B】複数のアセンブリを収容する、少なくとも1つのラック、1つの鉄鋼製のカラー、および1つの樹脂を含む、数個のアセンブリを収容するシステムの上面図。
図11】内部および外部クリアランスならびに1個のアセンブリの出力の関数としての、可能な最高温度の排出を表す。
図12】内部および外部クリアランスならびに7個のアセンブリの出力の関数としての、可能な最高温度の排出を表す。
図13】内部および外部クリアランスならびに12個のアセンブリの出力の関数としての、可能な最高温度の排出を表す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
最初に、本発明の特定の実施形態によるラックシステム20の熱伝達要素30、32、34、36のスタックを表す、図2A(側面図、図2Bの平面AA’またはxOzに沿った断面)および2B(上面図、図2Aの平面BB’もしくはxOyに沿った断面)について言及する。
【0050】
図2Aでは、様々な伝達要素が、立方体の角Oxyzの方向Ozに沿って積み重ねられていることが分かる。この図および図2Bには、2つの壁22、24も表されており、これらは、それぞれ、スタックが置かれている環境の高温壁および低温壁である(高温壁と呼ばれる壁22は、高温アセンブリの側面であり、ラックの内側に位置されており、その一方で、低温壁と呼ばれる壁24は、ラックの外側の周囲環境の側面である)。この環境の外側において、符号22および24は、後で説明されるように、それらが閉鎖さられた状態もしくは下げられた状態の場合、Oxに沿ってスタックの側部延長を区切る2つの平面であり、以下において、2つの壁について言及するが、これは、2つの平面としても意味することができる。
【0051】
軸Oxは、当該2つの壁22、24に対して垂直であり、その一方で、軸OzおよびOyは、当該壁に対して平行である。当該スタックは、概して、Ozに沿った方向に延びている。
【0052】
当該スタックの各要素は、個々の要素30の実施形態について図2Cに示されるように、実質的にプリズム形状である。図2Aの他の要素は、それと同一であるかもしくは類似しており、この理由により、これらの他の要素の全ての部品(図2Cに記載されるものに類似するかもしくは同一である)については、詳細には説明しない。
【0053】
より詳しくは、図2Cに表される要素は、実質的に五面体もしくは三角形のプリズムであり、この場合、3つの四角形の面303、303’、305は、それらの2つと、軸Oyに対して実質的に垂直でお互いに隣接していない2つの三角形の面301、301’とに隣接している。
【0054】
当該要素は、底面305も有し、これは、この実施形態においては、平面であり、ならびに立方体の角Oxyzの軸Oyに沿って延びる稜線部307に対して平行である。
【0055】
図2Dに示される特定の態様により、側部および角は切頂される場合もあり、それでも、「稜線部」または「最頂部」なる表現が使用されるであろう。
【0056】
2つの面303、303’は、稜線部307または最頂部と底面305との間に延びており、当該面は、便宜上、それぞれ、「上側表面」および「下側表面」と呼ばれてもよい。表された実施例において、これらの面は平面であるが、それらは、他の形状を有していてもよく、例えば、それらは、隣接する要素の平面における対応する波形もしくは波状起伏と接触すること、もしくはそれらと組み合わされることが意図される波形もしくは波状起伏を有していてもよい。
【0057】
当該要素は、軸Oyに沿った側方において、2つの壁または側面301、301’によって限定される。この実施形態の例において、これらの2つの後者の壁は、底面305に対して実質的に垂直であり、ならびに平面xOzに対して実質的に平行である。図3Aおよび3Bの上面図において図式的に表される変形例において、側壁(ここでは341、341’、表されている要素は要素34である)は傾斜しており、したがって、軸OxおよびOyの両方と交差する。これらの伝達要素のそれぞれは、平面zOxにおいて実質的に三角形状を有しており、各三角形は、1つの大きな辺と好ましくは実質的に同じ長さである2つの小さな辺とを有し、当該三角形は、それ自体実質的に二等辺三角形である。さらに好ましくは、3つの辺は、図2Dまたは図4A〜4Cに示されているように、その末端において切頂されている。平面zOxにおいて、それぞれは、厳密には、もはや実質的三角形状を有しておらず、むしろ3つの長い辺と3つの短い辺とが交互に配置された六角形を有する。
【0058】
この三角形の高さ、または稜線部307または最頂部と底面305との間の距離は、2つの壁22、24の間の距離より短い。したがって、当該要素が、図2Aに示されるように位置決めされる場合、当該要素の最頂部307とその底面305との間の距離は、この要素と2つの壁22、24のそれぞれとの間においてクリアランス27、29を保持することを可能にする。当該装置が「閉鎖された」状態にある場合(図4C、6B、および7B)、伝達要素の一部によって満たされないゾーン270、270’、290、290’が残される。これらのクリアランスは、伝達要素と隣接する第二列の要素との間の任意の接触を回避することを可能にする寸法である(例えば、図2Aにおいて、要素30と34との間、要素32と36との間などでの全ての接触が回避される)。熱は、隣接する要素の間、例えば、要素30と32との間、要素32と34との間、要素34と36との間など、において生じる接触を介して伝わるため、これらのゾーンは、熱的観点からの問題を生じない。これらのゾーンは、壁22、24のそれぞれに向かって交互に配置されており、気体によって充満されていても、およびその結果として断熱性であっても、隣接する要素ははるかに多くの熱伝導性の平行通路を介してつながっているため、それらの熱的影響は無視できる。
【0059】
図2Aでは、図2Cにおいて提示されるものと同様に、他の要素32、34、36の底面325、345、365およびそれらの稜線部327、347、367を見ることができる。
【0060】
様々な要素30、32、34、36は、図2Aにおいて示されるように積み重ねられ、第一要素の下側(それぞれ、上側)平面は、軸Ozに沿ってこの第一要素の下に(それぞれ、上に)位置される直に隣接する第二要素の上側(それぞれ、下側)平面と接触するかもしくは対向している。
【0061】
積み重ねられた要素の大きい側面は、壁24および壁22に向かって交互に配置されている。言い換えれば、伝達要素30は、壁24の方を向いている底面を有するが、その一方で、隣接する要素の底面は、壁22の方を向いている。
【0062】
当該スタックが閉鎖された状態もしくは下げられた状態では、2つの隣接する要素は、それらの下側および上側平面のうちの一方を介して、インターフェイス40に沿って、お互いに押し合い得る。これは、軸Oxに対して平行なまたは壁22、24に対して垂直な直線に対して鋭角A(例えば、30°〜60°、例えば、この場合もやはり45°に等しいかもしくは近い)を形成する直線分の形状を有する。
【0063】
上記において説明した実施例において、面305、325などは平面である。
【0064】
変形例において、この面は湾曲を有していてもよく、例えば、それは、面345’(要素34、図3B)および305’(要素30、図5Cおよび5D)により図3B、5C、および5Dにおいて示されるように、円柱の一部からなっていていもよく、この場合、当該円柱の軸は、スタック全体の牽引の方向に対して平行である。2つの隣接する要素における隣接する平面の間の接触は、上記において説明したものと同一のままであるため、スタックが閉鎖された状態もしくは下げられた状態では、当該スタック全体の熱的効果は影響を受けない。平面zOxに沿ってのこの要素の断面も、図2Dの形状と同様の三角形であり、当該三角形の底辺305は、直線分である。スタックが下げられた状態では、壁345’、305’の円筒形の部分は、外壁または外側平面24に接する。そのような湾曲は、円柱の形状を抱え込むために有用であり得、平面もしくは壁22および24は、多くの場合、牽引の方向に対して平行な軸に沿って円筒形である(例えば、図10、10bの構造を参照されたい)。
【0065】
図2A〜2C、3A〜3B、および図5A〜5Dからも分かり得るように、各要素の側面301、301’、321、321’、341、341’、361、361’のそれぞれは、2つの突出部30’、30”、32’、32”、34’、34”、36’、36”を有しており、各突出部は、対応する要素の下側および上側平面のうちの一方の付近にある。同じ側面の2つの突出部は、この同じ要素の底面に対して平行な方向に、または図2Dの断面図における稜線部305に沿って(またはその代わりに、牽引の方向に沿って)、実質的に揃えられている。各突出部は、実質的に円筒形状を有し、当該円筒の軸は、この突出部が位置される側面に対して実質的に垂直に向いている。
【0066】
接続ロッドもしくはリンク40、42、44、46は、2つの隣接する要素の最も近い2つの突出部に接続している。したがって、このリンクは、最も近い2つの隣接する要素(これらが接触していない場合)の上側および下側の2つの平面の間に存在し得る最大距離を形成するであろう。当該リンクは、ある要素の平面の、隣接する要素の対向する平面に対する摺動可能な最大振幅も決定する。
【0067】
このリンクおよび対応する突出部は、軸Ozに対しておよび/または平面zOxを有する底面の交差点305に対して(図2Dおよび3Bの場合)、平行もしくは実質的に平行な方向において、対象となる要素への牽引の適用を可能にする。図4Aの場合、各面に適用される力は、Oxに沿っての成分も有するが、牽引状態(図4A)では当該要素は遮られるので、結果に関係ない。その結果、結果として得られる力は、ここでもやはり、軸Ozに沿っている。したがって、図2Aから分かり得るように、ならびに以下において説明されるように、方向Ozの力Fが各要素に適用または伝達され、この場合、それらの底面は、それらが向けられている対応する高温壁もしくは低温壁に対して平行なままである。各要素が、2つの他の要素の間において軸Ozに沿って配置される限り、各突出部は、上向きの牽引力を受けるが、それだけでなく、その下に位置される当該要素の重さも受ける。
【0068】
したがって、ラックが2つの壁、例えば高温壁および低温壁22、24など、の間において積み重ねられ整列される場合、ラックの構成要素の相対変位は確保される。
【0069】
これらの手段は、異なる要素をその隣接する要素のそれぞれから離すことを可能にし、その結果、2つの隣接する要素の2つの側面の間にギャップeを生じ、この場合、これらの2つの側面はお互いに平行のままである。同様に、異なる要素が離される際に、空間またはクリアランス27、29が異なる要素と壁22、24との間に整列されるように、それらの位置決めが生じる。
【0070】
リンクは、例えば、図2Aまたは6Aに表される形状を有し、この形状は、縦長であり、ならびに中央開口部を有し、この場合、当該中央開口部も縦長である。この開口部の最大振幅、言い換えると、当該リンクの2つの小さい側部の内面の間の距離、は、当該スタックにおける直に隣接する2つの伝達要素の2つの隣接する突出部の外部発生器の間の所望の最大距離に等しい。当該リンクおよびその側部開口部は、2つの隣接する要素における直に隣接する平面を接触したままに維持しつつ、当該2つの隣接する要素がお互いに摺動することを可能にする。例えば、各リンクが、2つの隣接する要素301および321、321および341、341および361...における隣接する側面をお互いに対して距離eで平行に維持するようにそれらを離間させることを可能にする中央開口部を有することが図2Aから分かり得る。この距離もしくはこのギャップは、ラック内への要素のロッドの導入を可能にするために、伝達要素を「引き上げられた」状態にすることを可能にする。下げられた状態では、隣接する要素の側面は、図6Bおよび7Bに示されるように、お互いに接触している。次いで、当該リンクは解放された状態となり、この場合、2つの隣接する要素における2つの隣接する突出部の間の距離は、各リンクの内部開口部によって決定される最大振幅より小さい。
【0071】
当該リンクの別の実施形態が、図4A〜4Cに表されており、この場合、各リンク47は2つの開口部を有し、これらの開口部のそれぞれは、当該リングが伝達要素のうちの1つの突出部30”、32”を収容することを可能にする。これらの開口部のうちの突出部30”の周りにある一方は、この突出部の周りでの当該リンクの回転運動のみを可能にするが、並進運動は可能にせず、それに対し、他方の開口部は突出部32”の周りでの当該リンクの回転運動と要素32の並進運動とを可能にし、すなわち、対応する開口部は、当該リンクの中央付近から(その長さの方向に)その側端部のうちの1つの内端まで、より長く延びている。
【0072】
2つの開口部の間の距離と当該第二開口部の長さは、当該2つの隣接する伝達要素が、
・初期と呼ばれる状態(図4A)(この状態では、2つの隣接する要素の2つの隣接する面は接触しており、クリアランス27、29が、当該要素のそれぞれの底面と壁もしくはこの底面が面している壁22、24との間に配置されている)から、
・中間状態(図4B)(この状態では、2つの隣接する要素における隣接する側面が、お互いから所望の距離に離れて移動し、各底面が対応する壁22、24に近づく)へ、
・次いで、「覆われた」状態(図4C)(この状態では、2つの隣接する側面がお互いに接触するかまたはお互いに押し合い、各要素の底面が、対応する壁22、24に押し付けられる)へ
と移行することができるように選択される。
【0073】
この運動では、リンクの端部は、手段21の作用下において(図7A)、円の中心がリンクの中心であるような、実質的に円形の運動を行う。
【0074】
隣接する要素の間の接続のシステムの別の実施形態が、図5A〜5Dに示されており、この場合、図5A〜5Bは、平面壁形状の底面305の実施形態に対応し、図5C〜5Dは、底面305’が円筒の一部の形状を有する実施形態に対応する。
【0075】
今回、表された要素30は、
・上側平面303および任意により(図5A〜5Dの場合のように)対応する側面301’、301に存在する、2つの側部ノッチまたは側部凹部203、204と、
・下側平面303’および任意により対応する側面301’、301に存在する、2つの側部ノッチまたは側部凹部205、206と
を有する。
【0076】
ここで、既に上記において説明したように、各側部ノッチの内壁には、突出部がそこに位置決めされ得る穴203’、204’が形成され、当該穴は、接続ロッドもしくはリンクの端部と協働することが意図される。
【0077】
したがって、各ノッチの壁は、上記において説明したように、各要素を例えば2つのリンクなどによって連結するための手段、例えば、少なくとも1つのピンもしくは1つの突出部を備えることが意図される。各ノッチは、対応するリンクの端部部分を収容するのに十分な容積を有する。
【0078】
図7Aに表されるように、牽引の手段もしくは機構21は、ラックの上方または下方においてラックの片側に位置決めされる。要素のアセンブリに、軸Ozに沿った上昇運動もしくは下降運動を伝えるために、例えば1つもしくは複数のロッド210および/または1つもしくは複数のジャッキを含む手段が、要素のスタックの末端要素に接続される。手段21は、これが閉鎖された状態もしくは下げられた状態にある場合、スタック全体に圧力を加えることを可能にしてもよい。
【0079】
アセンブリをラック内に導入しようとする場合、図2A、6A、および7Aにおいて矢印Fによって図式的に示されるように、軸Ozおよび壁22、24のそれぞれに対して平行に、上向きの力が加えられる。
【0080】
次いで、図4A〜4C、6A〜6B、および7A〜7Bを参照しながら上記において説明したように、ラックの各要素が、隣接する要素から離される。この動きは、半径方向においてクリアランス27、29、27’、29’(図2A、6A、および7A)を解放する。
【0081】
アセンブリが適切な場所に位置されると、(依然として、軸Ozに沿って)下向きの力、またはその代わりに伝達要素を下向きに引っぱる重力、が加えられ、当該伝達要素の平面がお互いと接触して、内部クリアランスおよび外部クリアランスが消滅する(図4C、6B、および7Bのように)。この段階の終了時に、横向き状態を含めてキャスクの状態にかかわらず、隣接する要素の各対の固体−固体界面での熱抵抗を減じるため、およびアセンブリの機械的強度を保証するために、再び、押付力を要素のスタックに加えられ得る。
【0082】
図2Bおよび図3の上面図および図2Cの斜視図から分かり得るように、各伝達要素は、限られた長さL、例えば100mm〜200mmまたは500mmなど、にわたって延びており、この長さは、要素の表面品質および所望の熱移動の質に応じて選択される。Lは、特に図3Bの底面345’のような底面の場合、円弧の伸ばした長さであってもよい。
【0083】
結果として、概して円筒形状を有するアセンブリは、実質的に円形に配置された複数のn個のラック要素によって囲まれることとなり、各ラック要素は、およそ360°/nの部分を覆う。そのような配置は、図8Aおよび8Bに表されており、例えば、六角形のアセンブリの場合、各ラック要素60、62、64、66、68、70は、約60°の部分を覆う。符号620〜626は、2つのラック要素62の個々の要素である。2つの末端要素620および626は、スタックの2つの末端において平面を得るために切頂されている。
【0084】
これらの図8Aおよび8Bでは、当該システムは三次元において表されており、ここで、より良い視覚化のために、伝達要素の縦の1列が省略されている(または1つのラック要素が省略されている)。ラック要素のアセンブリは、内部の六角形の開口部17を形成するように配置されており、ここに燃料要素が導入され得る。
【0085】
図8Aは、開放された状況に対応しており、伝達要素は、図2Aおよび図4Aに示されているように、お互いに離間された状態にある。したがって、ラックの中央にある搭載物と、このラックの内壁との間に、重要であり得るクリアランスが形成されている。
【0086】
図8Bは、閉鎖された状況に対応しており、隣接する伝達要素は、図4Cおよび図6Bに示されているように、お互いに接触した状態にある。この状態では、前に見出された、搭載物とラックの内面との間のいずれのクリアランスも失われる。
【0087】
図8Aおよび8Bの実施形態の実施例では、六角形15が搭載物であり、その外壁は、図2Aの高温壁(壁22)に対応している。
【0088】
この実施形態では、接するセルの間または2つのラック要素(例えば、62と64)の間の、伝達要素がないゾーンの存在について述べることができる。しかし、残存するクリアランス270、290について上記において示したのと同じ理由から、これは、熱伝導の観点から影響を及ぼすことはなく、事実、熱的観点から、熱はより高い伝導性のゾーンにおいて「すぐ近く」を伝わる(ヘリウムに対するアルミニウムの伝熱性の比率は1000であり、空気に対しては約6000である)。
【0089】
当該システムが適切な場所に位置されると(図7B、8B)、半径方向の熱量の排出が向上し、結果として、半径方向の熱勾配がかなり減少する。
【0090】
したがって、上記において説明したようにラックを用いた貯蔵方法を使用することにより、以前に発表された限界の2.5kW(Tmax<450℃)および4.5kW(Tmax<650℃)は、それぞれ、3.5kWおよび6.5kWになる。したがって、アセンブリの輸送の際、Tmax<450℃の場合は5kWに、Tmax<650℃の場合は9kWに達し得る。
【0091】
図8Aおよび8Bに示される実施形態は、ラック(図面の可読性の問題のために、要素の列が1つだけが省略されている)および六角形の管15を示している。しかし、上面図を表している図10Bに示されるように、数個のアセンブリを導入することも可能であり、この場合、当該ラックは、
・複数の基本ラック100〜106と、
・固定部品55(熱伝導性材料で作成された、例えばアルミニウムなどで作成された、ディスクのスタック、各ディスクは、ラックが所望の位置まで通過することを可能にするための適切な開口部を有する)と、
・ラック要素の冠状部550(各要素が既に上記において提示したように、本発明によるタイプである)と
を含む。
【0092】
それによって構成される当該ラックは、キャスクの内側に配置され、アセンブリは、鉄鋼製カラー54および樹脂層52で囲まれる。当該アセンブリは、熱排出フィン56を備え得、これらは、図10Cにおいて外側に向かって突き出ているフィンである。これらの符号52、54は、単一ラックの場合の図10Aにおいても見出される。
【0093】
したがって、キャスクを構成するアセンブリは、上記において説明したような少なくとも1つの基本ラックを含み得るが、それだけでなく吸収材層のアセンブリ、例えば、ガンマ線を吸収するための層54(これは、鍛造された鉄もしくは鉛で作成され得る)および中性子を減速するための層52(多くの水素を含有する)など、も含み得る。
【0094】
基本ラックは、その全高にわたって、上記において説明した構造を有し得る。
【0095】
それは、例えば図9Aに見られるように、排出したい出力に対応する、例えば約1mなどの、限られた高さhにおいてそのような構造を有していてもよく、すなわち、可動式要素のアセンブリ20は、ラックの各壁の限られた高さ(それは、熱交換が生じる高さである)において延びており、残りの部分は、2つの同型部品20’、20”で構成されることが分かり得る。
【0096】
変形例において、図9Bに示されるように、ゾーン200、200’のような、熱交換が全くもしくはほとんど無い部分に、いくつかの要素が配置されていてもよい。これらの要素は、既に上記において説明されているように機能するが、それらは、機械的に保護する役割のみを有するのであって、熱的観点からの役割は、全くもしくはほとんど果たさない。対照的に、可動式要素のアセンブリ20は、1つで同時に熱的役割と機械的な役割とを有する。ゾーン200’、200は、上記において説明したような伝達要素を備えない、均一で連続する材料の部分によって当該ゾーンまたは当該部分20から離間されている。
【0097】
図9A〜9Eは、燃料を本発明による装置内に搭載する工程を表している。
【0098】
最初に(図9A)、このアセンブリは、まだ燃料要素を収容しておらず、プール120中に浸漬されており、様々な部品のカバー130が開けられる。
【0099】
次いで(図9B)、手段21による要素のアセンブリの牽引によって、上記において既に説明したように、当該ラックの伝達要素が引き上げられる。したがって、それらの維持が解放され、各要素の底面とそれらが向いている面22、24との間に、クリアランスが導入される(上記において提示した説明を参照されたい)。
【0100】
ラックがこの引き上げられた状態に維持され、燃料要素15(図9Cを参照のこと)が、中央開口部17内に導入され得る。
【0101】
次いで、図9Dに示されているように、これらの要素の底面と壁との間にいかなるクリアランスも残すことなく、伝達要素をお互いに接触するように位置決めするために、ラックの壁の要素への押付力が反転される。
【0102】
最後に、カバーをそれらの初期状態へと戻して、当該アセンブリが再び閉鎖される(図9Eを参照のこと)。
【0103】
次いで、当該アセンブリは、排水のためにプールから引き上げられ得る。
【0104】
以下に、1個、7個、または12個のアセンブリを輸送するキャスクの場合の数値結果を提示する。これらのキャスクは、それらが1個、2個、または7個のアセンブリを輸送するかどうかに応じて、TC1、TC2、またはTC12と命名される。
【0105】
650℃が限界の場合、1つのアセンブリあたりの出力は、標準的なクリアランスの場合、4.6kW(TC12)から6.3kW(TC1)へと増加する。これらのクリアランスを無くすことにより、それぞれ、6.6Wから8.8Wを得ることが可能となるであろう。
【0106】
以下において、排出可能な出力に関して為された利得は、マイナーアクチニドを搭載したアセンブリの場合に対して、所定の温度基準について評価される。
【0107】
当該キャスクのために選択される幾何学的構造は、
図10Bの上面図に表されている(この幾何学構造では、層550の外径は、今日使用されているラックの外径と同じであり、残り部分の幾何学構造は全く変更されていない。符号54は、鉄鋼製カラーを指している)、
・または、図10Aの上面図に表されている(この幾何学構造において、樹脂層52の外径Deおよびアルミニウムラック100の外径は、保持されている)、
の多層幾何学構造である。
【0108】
それらの3つの場合、すなわち、単一のアセンブリの場合、7個のアセンブリの場合、および12個のアセンブリの場合、について検討した。
【0110】
単一のアセンブリの場合について、パラメータTmaxおよびクリアランスの効果の研究により、図11に示されるような以下の結果:
・それぞれ1mmの2つのクリアランスに対応する曲線I
・5mmの1つの内部クリアランスおよび1mmの1つの外部クリアランスに対応する曲線II
・5mmの1つの内部クリアランスおよび2mmの1つの外部クリアランスに対応する曲線III
・5mmの2つのクリアランスに対応する曲線IV
・0mmの2つのクリアランス(言い換えると、本発明により得られる接触)に対応する曲線V
が得られる。
【0111】
例えば、650℃の最大値の場合:
・曲線Iの場合、8kWが排出され、
・標準の場合(曲線III)、約6.3kWが排出され、
・およびクリアランスが無くなった場合(曲線V)、最適値は8.7kWである。
【0113】
7個のアセンブリの場合について、パラメータ研究の際、標準の場合およびクリアランスがゼロの場合のみについて検討した(他の事例は、これら2つの限定された事例の間にある)。パラメータTmaxおよびクリアランスの効果の研究により、図11に示される以下のような結果:
・5mmの1つの内部クリアランスおよび1mmの1つの外部クリアランスに対応する曲線I’;この標準の場合、1つのアセンブリあたり5.5kW、すなわち39kWの総出力、が排出され得、樹脂は、70℃〜88℃の温度を有する、
・0mmの2つのクリアランスに対応する曲線II’
が得られる。
【0114】
ここでも、クリアランスの減少が中央における所定の最大温度において、排出可能なパワーを増加させることを可能にすることが分かり得る。
【0116】
12個のアセンブリの場合について、パラメータ研究の際、標準の場合およびクリアランスがゼロの場合のみについて検討した(他の事例はこれら2つの限定された事例の間にある)。パラメータTmaxおよびクリアランスの効果の研究により、図13に示された、以下のような結果:
・5mmの1つの内部クリアランスおよび1mmの1つの外部クリアランスに対応する曲線I”;この標準的な場合、1つのアセンブリあたり4.5kW、すなわち、54kWの総出力、が排出され得、中央の温度は、650℃未満である、
・0mmの2つのクリアランスに対応する曲線II”
が得られる。
【0117】
高出力のこの事例において、外部樹脂は、80℃の温度に達する。
【0118】
図13の結果は同じ結論に至っており、すなわち、クリアランスの減少は、中央における所定の最大温度での排出可能な出力を増加させることを可能にする。
【0119】
下記の表IIに、上記の3つの構成および2つの異なる最大温度(450℃および650℃)に対する排出可能な出力をまとめる。当該排出可能な出力は、これらの事例のそれぞれに対して示されており、クリアランスがゼロの場合は下線が引いてある。
【0120】
【表1】
【0121】
本発明は、高レベルの放射性物質、特に第四世代の高レベル燃料、例えば、やはりマイナーアクチニドを充填したアセンブリ、の貯蔵および/または輸送の分野に適用される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図11
図12
図13