特許第6239587号(P6239587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239587多価カルボン酸組成物、エポキシ樹脂用硬化剤組成物、エポキシ樹脂組成物およびその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239587
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】多価カルボン酸組成物、エポキシ樹脂用硬化剤組成物、エポキシ樹脂組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20171120BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20171120BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20171120BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08L83/06
   C08L67/00
   C08G77/38
   C08G59/40
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-504284(P2015-504284)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2014055152
(87)【国際公開番号】WO2014136693
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-42973(P2013-42973)
(32)【優先日】2013年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪木 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智江
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/071168(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/029503(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/043400(WO,A1)
【文献】 特開昭63−062363(JP,A)
【文献】 特開平06−100762(JP,A)
【文献】 特開昭59−182583(JP,A)
【文献】 特開平05−226700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00−83/16
67/00−67/03
C08G 59/00−59/72
77/00−77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるシリコーンオイル(a)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)とを付加反応させることにより得られる多価カルボン酸化合物(J)と、多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(d)とを付加反応させることにより得られる多価カルボン酸化合物(K)とを含有する多価カルボン酸組成物の製造方法であって、シリコーンオイル(a)と多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)との混合物に分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)および(d)を仕込み、反応させる多価カルボン酸組成物の製造方法
【化1】


(式(1)において、Rはそれぞれ独立してエーテル結合を介しても良い炭素総数1〜10のアルキレン基を、Rはそれぞれ独立してメチル基、フェニル基またはシクロヘキシル基を表す。またnはくり返し数であり平均値を意味し、1〜100である。)
【請求項2】
分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)および(d)が環状の飽和炭化水素を母骨格とする酸無水物である請求項1に記載の多価カルボン酸組成物の製造方法
【請求項3】
分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)および(d)がメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物及びビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種の酸無水物である請求項1または2に記載の多価カルボン酸組成物の製造方法
【請求項4】
多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)が水素化ビスフェノール類、水素化トリスフェノール類または水素化テトラフェノール類である請求項1〜3のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物の製造方法
【請求項5】
多価カルボン酸(J)と多価カルボン酸(K)の比率(重量比)が(J)/(K)で記載した場合、99.7/0.3〜50/50である請求項1〜4のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物の製造方法。
【請求項6】
以下の工程(A)、工程(B)を逐次的に1ポットで反応させる請求項1〜5のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物の製造方法。
工程(A):シリコーンオイル(a)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)を反応させる工程、
工程(B):多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(d)を反応させる工程。
【請求項7】
無溶剤で、もしくは使用する原料に対し、50重量%以下の有機溶剤中で、40〜150℃で反応させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法で製造した多価カルボン酸組成物に対し、分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(e)を重量比で0.1〜50重量%混合するエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法で製造した多価カルボン酸組成物、または請求項に記載の方法で製造したエポキシ樹脂用硬化剤組成物とエポキシ樹脂とを混合するエポキシ樹脂組成物の製造方法
【請求項10】
エポキシ樹脂が脂環式エポキシ樹脂およびエポキシ基含有シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法
【請求項11】
エポキシ樹脂としてエポキシ基含有シリコーン樹脂を含有する請求項に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気電子材料用途に好適なエポキシ樹脂組成物の硬化剤に使用する多価カルボン酸組成物、それを含有するエポキシ樹脂用硬化剤組成物、およびそれを含有するエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多価カルボン酸は、高熱安定性や良好な電気特性、耐薬品性などと共に、縮合体の形成や反応性の良さなど、架橋剤、縮合剤等として優れた性能を備えており、近年、高分子製造原材料として、非常に着目され、広く使用されるようになってきている。
また多価カルボン酸はエポキシ樹脂の硬化剤としても使用できることが知られている。
【0003】
エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物は、耐熱性に優れた樹脂として、建築、土木、自動車、航空機などの分野で利用されている。近年、特に半導体関連材料の分野においてはカメラ付き携帯電話、超薄型の液晶やプラズマTV、軽量ノート型パソコンなど軽・薄・短・小がキーワードとなるような電子機器があふれ、これによりエポキシ樹脂に代表されるパッケージ材料にも非常に高い特性が求められてきている。
また、近年の高度情報化に伴い、膨大な情報を円滑に伝送、処理するために、従来の電気配線による信号伝送に変わり、光信号を生かした技術が開発されていく中で、光導波路、青色LED、および光半導体等の光学部品の分野においては透明性に優れた硬化物を与える樹脂組成物の開発が望まれている。
【0004】
一般にこのような分野で用いられるエポキシ樹脂の硬化剤としては酸無水物系の化合物が挙げられる。特に飽和炭化水素で形成された酸無水物は、それを使用したエポキシ樹脂組成物の硬化物が耐光性に優れることから、利用されることが多い。これら酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式酸無水物が一般的であり、中でも常温で液状であるメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が取扱いの容易さから主に使用されている。
しかしながら上記脂環式酸無水物をエポキシ樹脂の硬化剤として開放系で熱硬化させる場合、これらの硬化剤は蒸気圧が高いために硬化時に一部が蒸発する。この揮発した硬化剤が、大気中へ放出されて環境汚染、人体への悪影響を引き起こす。さらに、生産ラインの汚染、硬化物中に所定量のカルボン酸無水物(硬化剤)が存在しないことに起因するエポキシ樹脂組成物の硬化不良と、それに伴う硬化物特性の変化や生産安定等の問題が発生する。
【0005】
また、従来の酸無水物を硬化剤として用いた硬化物はLED、特にSMD(Surface Mount Device)を封止した際は顕著であり、使用する樹脂量が少ないため、先の揮発の問題により、へこみが発生し、酷い場合には、ワイヤーが露出するという問題が生じる。さらには半田リフロー時のクラック、剥離等、さらに硬化が不十分になってしまうため長期点灯にも耐えることが困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2003−277473号公報
【特許文献2】日本国特開2008−063333号公報
【特許文献3】国際公開第2011/043400号パンフレット
【特許文献4】日本国特開2005−185521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような問題に対し、多価カルボン酸を硬化剤として使用するという手法が考えられる。しかしながら通常の多価カルボン酸はその水素結合のために固形化、特に結晶化する場合が多く、液状の組成物として使用するのは非常に難しい。そのような問題を解決するためにシリコーン系の多価カルボン酸を硬化剤として使用する検討を行ったが、揮発性の問題は解決できたものの密着性や耐腐食ガス透過性という点で特性が悪く、使用が困難となった。
更に密着性、耐腐食ガス透過性改善のために多価カルボン酸とシリコーン系多価カルボン酸を併用することで問題解決を試みたが、エポキシ樹脂組成物の粘度が上がってしまい、作業性の悪化や狭小パッケージへの注型が困難になる等の問題が起こってきた。
【0008】
本発明は、硬化時の硬化剤の揮発を減らし、さらには耐熱性、光学特性、密着性、延伸性、耐腐食ガス透過性に優れる硬化物を与える多価カルボン酸含有の硬化剤組成物、および該硬化剤組成物を含むエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記したような実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
【0010】
(1)
下記式(1)で表されるシリコーンオイル(a)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)とを付加反応させることにより得られるカルボン酸化合物(J)と、多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(d)とを付加反応させることにより得られる多価カルボン酸化合物(K)とを含有する多価カルボン酸組成物、
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)において、Rはそれぞれ独立してエーテル結合を介しても良い炭素総数1〜10のアルキレン基を、Rはそれぞれ独立してメチル基、フェニル基またはシクロヘキシル基を表す。またnはくり返し数であり平均値を意味し、1〜100である。)
【0013】
(2)
分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)および(d)が環状の飽和炭化水素を母骨格とする酸無水物である前記(1)に記載の多価カルボン酸組成物、
(3)
分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)および(d)がメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物及びビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種の酸無水物である前記(1)または(2)に記載の多価カルボン酸組成物、
(4)
多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)が水素化ビスフェノール類、水素化トリスフェノール類または水素化テトラフェノール類である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物、
(5)
多価カルボン酸(J)と多価カルボン酸(K)の比率(重量比)が(J)/(K)で記載した場合、99.7/0.3〜50/50である前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物、
【0014】
(6)
シリコーンオイル(a)と多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)の混合物に、分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)および(d)を加え、同時に反応させる前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物の製造方法、
(7)
以下の工程(A)、工程(B)を逐次的に1ポットで反応させる前記(6)に記載の多価カルボン酸組成物の製造方法、
工程(A):シリコーンオイル(a)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)を反応させる工程
工程(B):多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(d)を反応させる工程、
(8)
無溶剤で、もしくは使用する原料に対し50重量%以下の有機溶剤中で、40〜150℃で反応させる前記(6)または(7)に記載の多価カルボン酸の製造方法、
(9)
前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物に対し、分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(e)を重量比で0.1〜50重量%混合したエポキシ樹脂用硬化剤組成物、
(10)
前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の多価カルボン酸組成物、または前記(9)に記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物とエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物、
(11)
エポキシ樹脂が脂環式エポキシ樹脂および/またはエポキシ基含有シリコーン樹脂であることを特徴とする前記(10)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(12)
エポキシ樹脂としてエポキシ基含有シリコーン樹脂を含有する前記(10)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(13)
前記(10)〜(12)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多価カルボン酸組成物はエポキシ樹脂の硬化剤として有用であり、特に多価カルボン酸を含有する硬化剤組成物はエポキシ樹脂を硬化させるのに通常採用される温度域での揮発性が極めて少ないだけでなく、それを使用したエポキシ樹脂組成物の硬化物は耐熱性、光学特性、密着性、耐腐食ガス透過性、延伸性に優れる。本発明の多価カルボン酸組成物を使用したエポキシ樹脂組成物は塗料、接着剤、成形品、半導体、光半導体の封止材用樹脂、光半導体のダイボンド材用樹脂、ポリイミド樹脂などの原料や改質剤、可塑剤、潤滑油原料、医農薬中間体、塗料用樹脂の原料、トナー用樹脂として有用である。とりわけ、この多価カルボン酸組成物はエポキシ樹脂に対する硬化能力及びこれから得られる硬化物の透明度に優れるため、高輝度の白色LED等に代表される光半導体の封止に用いるのに最適であり、さらに優れた耐ハンダリフロー性をも獲得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の多価カルボン酸組成物は、下記式(1)で表されるシリコーンオイル(a)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)とを付加反応させることにより得られるカルボン酸化合物(J)(以下、単にカルボン酸(J)とも称する)と、多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(d)とを付加反応させることにより得られる多価カルボン酸化合物(K)(以下、単にカルボン酸(K)とも称する)とを含有することを必須とする。
【0017】
【化2】
【0018】
(式(1)において、Rはそれぞれ独立してエーテル結合を介しても良い炭素総数1〜10のアルキレン基を、Rはそれぞれ独立してメチル基、フェニル基またはシクロヘキシル基を表す。またnはくり返し数であり平均値意味し、1〜100である。)
【0019】
シリコーンオイル(a)は前記式(1)で示される。前記式(1)において、Rの具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン等の炭素数1〜10のアルキレン基、−C−O−C−の構造を有する基、−C−O−C−の構造を有する基、−C−O−C−の構造を有する基などの炭素数1〜10のエーテル結合含有アルキレン基が挙げられる。特に好ましくはプロピレン基、−C−O−C−である。
【0020】
上記前記式(1)で示されるシリコーンオイルにおいて、繰り返し数であるnは2〜80が好ましく、3〜60が特に好ましい。
また、重量平均分子量として300〜10000が好ましく、500〜5000が特に好ましい。
【0021】
本発明に使用される多環多価フェノール化合物(多環多価フェノール化合物とは、2つ以上の六員環を有する化合物であって、2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物を意味する。)の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(=水素化ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)エタン(=水素化ビスフェノールE)、4,4’−ビシクロヘキサノール(=水素化ビフェノール)、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビシクロヘキサノール、メチレンビスシクロヘキサノール(=水素化ビスフェノールF)、4,4’,4”−メチリデントリスシクロヘキサノール、4,4’−[(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メチレン]ビス(2−メチルヘキサノール)、4,4’−(1−{4−[1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル]フェニル}エチリデン)ビスシクロヘキサノール、4,4’−[4−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)シクロヘキシリデン]ビスフェノール、4,4’−[4−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)シクロヘキシリデン]ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−[4−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)シクロヘキシリデン]ビス(2,6−ジメチルフェノール、ジヒドロキシデカヒドロナフタレン(=水素化ジヒドロキシナフタレン)、ジヒドロキシテトラデカヒドロアントラセン、1,4−シクロへキシレンビス(メチルエタノール)、5,5’−(1−メチルエチリデン)ビス[1,1’−(ビシクロヘキシル)−2−オール]、5,5’−(1,1’−シクロヘキシリデン)ビス[1,1’−(ビシクロヘキシル)−2−オール]、5,5’−(シクロヘキシルメチレン)ビス[1,1’−(ビシクロヘキシル)−2−オール]、1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、1,1,2,2,−テトラキス(3,5-ジメチル−4−ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、が挙げられるが、これらに限定されず、1種又は2種以上を混合して用いても良い。
上記の中でも、水素化ビスフェノールA等の水素化ビスフェノール、水素化ビフェノール、水素化ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
【0022】
本発明に使用する分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)および(d)(b,dは同一でも構わない)としては、分子中に1個、もしくは2個のカルボン酸無水物基を有するものが好ましく、特に飽和炭化水素構造を有する化合物が好ましい。さらに、環状構造を有するものが特に好ましく、具体的にはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二水和物、ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるがこれらに限定されず、1種又は2種以上を混合して用いても良い。
本発明においては特にカルボン酸無水物基を1個有する物が特に好ましく、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物が好ましく、特に好ましくはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物である。
【0023】
シリコーンオイル(a)とカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)、および/または多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)とカルボン酸無水物基をもつ化合物(d)、とを付加反応させるようなアルコールと酸無水物との反応は一般に酸や塩基を触媒とする付加反応であるが、本発明においては特に無触媒での反応が好ましい。
触媒を用いる場合、使用しうる触媒としては、例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等の酸性化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等の複素環式化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルセチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムアセテート、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの触媒は1種又は2種以上を混合して用いても良い。これらの中で、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンが好ましい。
触媒の使用量には、特に制限はないが、原料の総重量100重量部に対して、通常0.001〜5重量部必要により使用するのが好ましい。
【0024】
本反応においては無溶剤での反応が好ましいが、有機溶剤を使用しても構わない。有機溶剤の使用量としては、反応基質の総量1に対し、重量比で0.005〜1であり、好ましくは0.005〜0.7、より好ましくは0.005〜0.5(すなわち50重量%以下)である。重量比で1を超える場合、反応の進行が極度に遅くなることがある。使用できる有機溶剤の具体的な例としてはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、アノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、蟻酸メチルなどのエステル化合物などが使用できる。
【0025】
反応温度は40〜200℃が好ましく、特に好ましくは40〜150℃である。特に本反応を無溶剤で行う場合は、酸無水物の揮発があるため、100℃以下での反応が好ましく、40〜100℃、特に40〜80℃での反応が好ましい。
また室温での結晶性の高い化合物、例えばシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等を用いる場合はその結晶を十分に溶解させるため100〜150℃での反応を行うことが好ましい。
揮発しやすい酸無水物と、結晶性の高い酸無水物を併用する場合は、段階的に温度を上昇させることで酸無水物の揮発を防ぐということも可能である。
【0026】
多価カルボン酸(J)と多価カルボン酸(K)を得る反応の際の(a)と(b)、(c)と(d)の反応比率は理論的には当モルでの反応が好ましいが、必要に応じて変更可能である。すなわち、後述するが、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物においては、使用する酸無水物とここで使用する酸無水物が同じである場合は、製造時に過剰の酸無水物中で反応を行い、多価カルボン酸(J)と多価カルボン酸(K)を得る反応が終了した時点で酸無水物と本発明の多価カルボン酸の混合物(硬化剤組成物)とすることもできる。
具体的な反応比率としてはその官能基当量で比較し、(b)(もしくは(d))を1とした場合、そのモル比で(a)(もしくは(c))が0.001〜1.0、より好ましくは0.01〜1.0、さらに好ましくは0.1〜1.0である。前述のように硬化剤組成物を製造する場合、0.01〜0.7、さらに好ましくは0.01〜0.4の範囲で使用することが好ましい。
【0027】
反応時間は反応温度、触媒量等にもよるが、工業生産という観点から、長時間の反応は多大なエネルギーを消費することになるため好ましくはない。また短すぎる反応時間はその反応が急激であることを意味し、安全性の面から好ましく無い。好ましい範囲としては1〜48時間、より好ましくは1〜36時間、さらに好ましくは1〜24時間である。
【0028】
反応終了後、触媒を用いた場合は、それぞれ中和、水洗、吸着などによって触媒の除去を行い、溶剤を留去することで目的とする多価カルボン酸が得られる。また無触媒での反応においては必要に応じて溶剤を留去、さらに無溶剤、無触媒の場合はそのまま取り出すことで多価カルボン酸(J)、多価カルボン酸(K)を得ることができる。
【0029】
最も好適な製造方法としては、無触媒、無溶剤の条件下、40〜150℃で反応させ、反応終了後、そのまま取り出すという手法である。
【0030】
このようにして得られた多価カルボン酸(J)、多価カルボン酸(K)を混合することで目的とする多価カルボン酸組成物を得ることができる。その比率(重量比)は(J)/(K)=99.7/0.3〜50/50であり、より好ましくは99.7/3〜60/40である。多価カルボン酸(J)の量が多すぎる場合、硬化物の耐ガス透過性、耐リフロー性に問題が生じ、多価カルボン酸(K)が多すぎる場合、固形化あるいは高粘度化し、取り扱いが困難となる。
ここで、特に(J)/(K)の比率(重量比)は99/1〜70/30が好ましく、99/1〜80/20がより好ましく、99/1〜85/15が特に好ましい。(K)を重量比で1以上混合させることで、耐腐食ガス透過性が特に改善され、さらに(J)を重量比で70以上混合させることで、耐光性に優れ、基材からの剥離やクラックが生じ難く、LEDの封止材として用いた場合における照度劣化も起こり難くなるためである。特に(J)を重量比で80以上(特に好ましくは85以上)混合させることで、上記特性をバランス良く両立させることができる。
【0031】
また、本発明においては多価カルボン酸(J)と多価カルボン酸(K)を同時に製造することも可能である。具体的な手法としては
(i)
シリコーンオイル(a)と多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)の混合物に、分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)および(d)を仕込み、同時に反応させる。
(ii)
以下の工程(A)、工程(B)を逐次的に1ポットで反応させる。
工程(A):シリコーンオイル(a)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)を反応させる工程
工程(B):多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)と分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(d)を反応させる工程
工程(A)(あるいは工程(B))を行った後に、逐次的に工程(B)(あるいは工程(A))に使用する化合物を投入し、系中で反応および混合を行うものである。
(iii)
分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)(d)が同一である場合、シリコーンオイル(a)(あるいは多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c))と、分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物(b)、(d)を仕込み、反応を行った後、多環多価フェノール化合物の水酸基を有する1個以上の芳香環が水素化されているアルコール化合物(c)(あるいはシリコーンオイル(a))を仕込み、反応を行う。
【0032】
このようにして得られる本発明の多価カルボン酸組成物は、通常、無色の液状〜半固形物質となる。
本発明の多価カルボン酸組成物は透明性に優れ、エポキシ樹脂の硬化剤、塗料、接着剤、成形品、半導体、光半導体の封止材用樹脂、光半導体のダイボンド材用樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などの原料や改質剤、可塑剤や潤滑油原料、医農薬中間体、塗料用樹脂の原料、トナー用樹脂として有用であるが、とりわけエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合、硬化能に優れ、その硬化物の透明度が優れるので、高輝度の白色LEDや他の光半導体封止に用いられるエポキシ樹脂用硬化剤として極めて有用である。
【0033】
以下、本発明の多価カルボン酸組成物を含む本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物について記載する。
本発明の多価カルボン酸組成物をエポキシ樹脂の硬化剤として、特に液状組成物として使用する場合、本発明の多価カルボン酸組成物と他の酸無水物とを混合した硬化剤組成物の形態として使用することができる。
使用できる他の酸無水物としては、分子内に1個以上のカルボン酸無水物基をもつ化合物が好ましく、特にその構造に芳香環を有しない酸無水物が好ましい。具体的にはヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物などが挙げられる。
硬化剤組成物として酸無水物との混合で使用する場合、本発明の多価カルボン酸組成物の占める割合は前記酸無水物と多価カルボン酸の合計重量に対し、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%である。かかる範囲で併用することで、組成物の流動性、硬化物の耐熱性、機械強度の面で効果を奏する。
【0034】
以下、本発明の多価カルボン酸組成物、好ましくは本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物を含む本発明のエポキシ樹脂組成物(以下、硬化性樹脂組成物とも称する)について記載する。
本発明の硬化性樹脂組成物はエポキシ樹脂を必須成分として含有する。
【0035】
本発明の硬化性樹脂組成物において使用できるエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
特に本発明の硬化性樹脂組成物を光学用途に用いる場合、脂環式エポキシ樹脂及び/またはエポキシ基含有シリコーン樹脂が好ましく、シルセスキオキサン構造のエポキシ樹脂がより好ましい。特に脂環式エポキシ樹脂の場合、骨格にエポキシシクロヘキサン構造を有する化合物が好ましく、シクロヘキセン構造を有する化合物の酸化反応により得られるエポキシ樹脂が特に好ましい。
これら脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンカルボン酸とアルコール類とのエステル化反応あるいはシクロヘキセンメタノールとカルボン酸類とのエステル化反応(Tetrahedron vol.36 p.2409 (1980)、Tetrahedron Letter p.4475 (1980)等に記載の手法)、あるいはシクロヘキセンアルデヒドのティシェンコ反応(日本国特開2003−170059号公報、日本国特開2004−262871号公報等に記載の手法)、さらにはシクロヘキセンカルボン酸エステルのエステル交換反応(日本国特開2006−052187号公報等に記載の手法)によって製造できる化合物を酸化した物などが挙げられる。
アルコール類としては、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオールなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類などが挙げられる。またカルボン酸類としてはシュウ酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれに限らない。
【0037】
さらに上記以外の脂環式エポキシ樹脂として、シクロヘキセンアルデヒド誘導体と、アルコール体とのアセタール反応によるアセタール化合物が挙げられる。反応手法としては一般のアセタール化反応を応用すれば製造でき、例えば、反応媒体にトルエン、キシレンなどの溶媒を用いて共沸脱水しながら反応を行う方法(米国特許第2945008号公報)、濃塩酸に多価アルコールを溶解した後アルデヒド類を徐々に添加しながら反応を行う方法(日本国特開昭48−96590号公報)、反応媒体に水を用いる方法(米国特許第3092640号公報)、反応媒体に有機溶媒を用いる方法(日本国特開平7−215979号公報)、固体酸触媒を用いる方法(日本国特開2007−230992号公報)等が開示されている。構造の安定性から環状アセタール構造が好ましい。
これらエポキシ樹脂の具体例としては、ERL−4221、UVR−6105、ERL−4299(全て商品名、いずれもダウ・ケミカル製)、セロキサイド2021P、エポリードGT401、EHPE3150、EHPE3150CE(全て商品名、いずれもダイセル化学工業製)及びジシクロペンタジエンジエポキシドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない(参考文献:総説エポキシ樹脂 基礎編I p76−85)。
これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物において、本発明の多価カルボン酸(もしくは硬化剤組成物)は他の硬化剤と併用しても構わない。併用する場合、本発明の多価カルボン酸の全硬化剤中に占める割合は20重量%以上が好ましく、特に30重量%以上が好ましい。
併用できる他の硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。使用できる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、テルペンとフェノール類の縮合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物において硬化剤とエポキシ樹脂の比率は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量(なお酸無水物基を1官能と考える)が好ましく、特に好ましくは0.5〜1.2当量である。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは1.5当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られないことがある。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、硬化剤とともに硬化促進剤を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−ウンデシルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−エチル,4−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2'−メチルイミダゾール(1'))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラブチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類やホスホニウム化合物、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、オクチル酸スズ等の金属化合物等、及びこれら硬化促進剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化促進剤等が挙げられる。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物においては亜鉛塩および/または亜鉛錯体を含有することが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物において、亜鉛塩および/または亜鉛錯体は、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化促進剤として寄与する。
亜鉛塩および/または亜鉛錯体としては、亜鉛イオンを中心元素とした塩および/または錯体であって、好ましくは、カウンターイオン及び/または配位子として炭素数1〜30のアルキル基を有するカルボン酸、燐酸エステル、燐酸から選ばれる少なくとも1種を有する。炭素数1〜30のアルキル基としてはメチル基、イソプロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソデシル基、イソステアリル基、デカニル基、セチル基などが挙げられる。
本発明においては特にカルボン酸亜鉛体、燐酸エステル亜鉛体が好ましい。カルボン酸亜鉛体、燐酸エステル亜鉛体を使用することによって、耐腐食性ガス透過性を向上させることができる。
本発明において特に好ましいカルボン酸亜鉛体としては、鎖状分岐構造を有するアルキル基あるいはオレフィン等の官能基を有するアルキル基を化合物中に有することが好ましく、中でも炭素数3〜30であるものが好ましく、特に5〜20のものが好ましい。これらは相溶性の面で好ましく、炭素数が大きすぎる(炭素数30を超える場合)、あるいは分岐構造、官能基等の構造を持たない場合、樹脂との相溶性が低くなることがある
具体的には2−エチルヘキシル亜鉛、イソステアリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、ベヘニン酸亜鉛などが挙げられる。
【0042】
本発明において特に好ましい燐酸エステル体としては、燐酸、燐酸エステル(モノアルキルエステル体、ジアルキルエステル体、トリアルキルエステル体、もしくはそれらの混合物)の亜鉛塩および/または亜鉛錯体が好ましく、複数の燐酸エステル体を含有してもかまわない。具体的には含有される燐酸エステル中、モノアルキルエステル体、ジアルキルエステル体、トリアルキルエステル体のモル比(ガスクロマトグラフィーの純度で代替。ただし、トリメチルシリル化を行う必要があるため、感度に差が出てしまう。)において、トリメチルシリル処理をした段階で、モノアルキルエステル体の存在量が50面積%以上であることが好ましい。
このような燐酸エステル亜鉛の亜鉛塩および/または亜鉛錯体は、燐酸エステルを例えば炭酸亜鉛、水酸化亜鉛などと反応させることで得られる(特許文献EP699708号公報)。
このような燐酸エステルの亜鉛塩および/または亜鉛錯体の詳細としては燐原子と亜鉛原子との比率(P/Zn)が1.2〜2.3が好ましく、1.3〜2.0がより好ましい。
特に好ましくは1.4〜1.9である。すなわち、特に好ましい形態では、亜鉛イオン1モルに対し、燐酸エステル(もしくは燐酸エステル由来の燐酸)が2.0モル以下となり、単純なイオン構造ではなく、いくつかの分子がイオン結合(あるいは配位結合)により関わった構造を有しているものが好ましい。このような亜鉛塩および/または亜鉛錯体としては例えば日本国特表2003−51495号公報に記載の手法で得ることも出来る。
このような化合物として、市販品としてはカルボン酸亜鉛として、Zn−St、Zn−St 602、Zn−St NZ、ZS−3、ZS−6、ZS−8、ZS−7、ZS−10、ZS−5、ZS−14、ZS−16(日東化成工業製)、XK−614(キングインダストリー製)、18%オクトープZn(ホープ製薬)、SCI−ZNB(サンエース製)、燐酸エステルおよび/または燐酸亜鉛として、LBT−200B(SC有機化学製)、XC−9206(キングインダストリー製)、が挙げられる。
これら硬化促進剤のどれを用いるかは、例えば透明性、硬化速度、作業条件といった得られる透明樹脂組成物に要求される特性によって適宜選択される。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100重量部に対し通常0.001〜15重量部、より好ましくは0.01〜5重量部、特に好ましくは0.01〜3重量部の範囲で使用される。本反応においては硬化促進剤を使用しなくても硬化は可能であるが、硬化時の着色の問題から、硬化促進剤の添加が好ましい。特に着色を防止するとともに耐腐食性ガス透過性を得る上では、亜鉛塩および/または亜鉛錯体の使用が好ましい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0044】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加しても構わない。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100重量部に対して、通常0.008〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0045】
フェノール系酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
【0046】
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。
【0047】
リン系酸化防止剤の具体例としては、1,1,3-トリス(2-メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジイソプロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクリジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トルブチキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられる。
上記リン系酸化防止剤は、市販品を用いることも出来る。
例えば、アデカ製として、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8,アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPPが挙げられる。
【0048】
本発明において、リン系酸化防止剤の使用量は、エポキシ樹脂に対し、重量比で好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.01〜4重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%である。
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。特に本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
【0049】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。
光安定剤としては、特にヒンダートアミン化合物を含有することが好ましく、必要に応じてリン系化合物を含有することが好ましい。前記アミン化合物としては例えば、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)=1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(2,2,6,6−トトラメチル−4−ピペリジル)=1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オウウデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−メタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル−1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応性生物、N,N’,N”,N”’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)エチル−7−オキサ−3,20−ジアザスピロ〔5・1・11・2〕ヘネイコサン−21−オン、β−アラニン,N,−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン−21−オン、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサ−3,20−ジアザジシクロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、プロパンジオイックアシッド、〔(4−メトキシフェニル)−メチレン〕ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3−ベンゼンジカルボキシアミド,N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)等のヒンダートアミン化合物等が挙げられる。
前記光安定剤であるアミン化合物として、次に示す市販品を使用することができる。
例えば、チバスペシャリティケミカルズ製として、TINUVIN765、TINUVIN770DF、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN622LD、TINUVIN152、CHIMASSORB944、アデカ製として、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63P、LA−77Y、LA−81、LA−82、LA−87などが挙げられる。
本発明において、光安定剤の使用量は、エポキシ樹脂に対して重量比で、好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.01〜4重量%、特に好ましくは0.1〜2重量%である。0.005重量%よりも少ない場合、効果が不足し、5重量%を超えるような場合は、耐熱着色性への影響が現れることがある。
【0050】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中において0〜95重量%を占める量が用いられる。更に本発明の硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、界面活性剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物を光半導体封止剤に使用する場合、必要に応じて、蛍光体を添加することができる。蛍光体は、例えば、青色LED素子から発せられた青色光の一部を吸収し、波長変換された黄色光を発することにより、白色光を形成する作用を有するものである。蛍光体を、硬化性樹脂組成物に予め分散させておいてから、光半導体を封止する。蛍光体としては特に制限がなく、従来公知の蛍光体を使用することができ、例えば、希土類元素のアルミン酸塩、チオ没食子酸塩、オルトケイ酸塩等が例示される。より具体的には、YAG蛍光体、TAG蛍光体、オルトシリケート蛍光体、チオガレート蛍光体、硫化物蛍光体等の蛍光体が挙げられ、YAlO:Ce、YAl12:Ce,YAl:Ce、YS:Eu、Sr(POCl:Eu、(SrEu)O・Alなどが例示される。係る蛍光体の粒径としては、この分野で公知の粒径のものが使用されるが、平均粒径としては、1〜250μm、特に2〜50μmが好ましい。これらの蛍光体を使用する場合、その添加量は、その樹脂成分100重量部に対して、1〜80重量部が好ましく、5〜60重量部がより好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物を光学材料、特に光半導体封止剤に使用する場合、各種蛍光体の硬化時沈降を防止する目的で、シリカ微粉末(アエロジル、アエロゾルとも呼ばれる)をはじめとするチクソトロピック性付与剤を添加することができる。このようなシリカ微粉末としては、例えばAerosil 50、Aerosil 90、Aerosil 130、Aerosil 200、Aerosil 300、Aerosil 380、Aerosil OX50、Aerosil TT600、Aerosil R972、Aerosil R974 Aerosil R202、Aerosil R812、Aerosil R812S、Aerosil R805、RY200、RX200(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えばエポキシ樹脂と硬化剤並びに必要により硬化促進剤、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して硬化性樹脂組成物を得、その硬化性樹脂組成物を液状である場合はポッティングやキャスティング、基材に含浸、金型に硬化性樹脂組成物を流し込み注型し、加熱により硬化、また固形の場合、溶融後注型、あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに加熱により硬化するという手法が挙げられる。硬化温度、時間としては80〜200℃で2〜10時間である。硬化方法としては高温で一気に固めることもできるが、ステップワイズに昇温し、硬化反応を進めることが好ましい。具体的には80〜150℃の間で初期硬化を行い、100℃〜200℃の間で後硬化を行う。硬化の段階としては2〜8段階に分けて昇温するのが好ましく、より好ましくは2〜4段階である。
【0054】
また本発明の硬化性樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物のままRTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
【0055】
また本発明の硬化性樹脂組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB−ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物を前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0056】
次に本発明のエポキシ樹脂組成物を光半導体の封止材又はダイボンド材として用いる場合について詳細に説明する。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物が高輝度白色LED等の光半導体の封止材、またはダイボンド材として用いる場合には、本発明の多価カルボン酸組成物を含有する硬化剤(硬化剤組成物)と、エポキシ樹脂の他、硬化促進剤、カップリング材、酸化防止剤、光安定剤等の添加物を充分に混合することによりエポキシ樹脂組成物を調製し、封止材として、またはダイボンド材と封止材の両方に使用される。混合方法としては、ニーダー、三本ロール、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー、ビーズミル等を用いて常温または加温して混合すれば良い。
【0058】
高輝度白色LED等の光半導体素子は、一般的にサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO等の基板上に積層させたGaAs、GaP、GaAlAs,GaAsP、AlGa、InP、GaN、InN、AlN、InGaN等の半導体チップを、接着剤(ダイボンド材)を用いてリードフレームや放熱板、パッケージに接着させてなる。電流を流すために金ワイヤー等のワイヤーが接続されているタイプもある。その半導体チップを、熱や湿気から守り、かつレンズ機能の役割を果たすためにエポキシ樹脂等の封止材で封止されている。本発明のエポキシ樹脂組成物はこの封止材やダイボンド材として用いる事ができる。工程上からは本発明の硬化性樹脂組成物をダイボンド材と封止材の両方に使用するのが好都合である。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて、半導体チップを基板に接着する方法としては、本発明の硬化性樹脂組成物をディスペンサー、ポッティング、スクリーン印刷により塗布した後、前記硬化性樹脂組成物の上に半導体チップをのせて加熱硬化を行う方法が挙げられる。かかる方法により、半導体チップを基板に接着させることができる。加熱は、熱風循環式、赤外線、高周波等の方法が使用できる。
加熱条件は例えば80〜230℃で1分〜24時間程度が好ましい。加熱硬化の際に発生する内部応力を低減する目的で、例えば80〜120℃、30分〜5時間予備硬化させた後に、120〜180℃、30分〜10時間の条件で後硬化させることができる。
【0060】
封止材の成形方式としては上記のように半導体チップが固定された基板を挿入した型枠内に封止材を注入した後に加熱硬化を行い成形する注入方式、金型上に封止材をあらかじめ注入し、そこに基板上に固定された半導体チップを浸漬させて加熱硬化をした後に金型から離形する圧縮成形方式等が用いられている。
注入方法としては、ディスペンサー、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。
加熱は、熱風循環式、赤外線、高周波等の方法が使用できる。
加熱条件は例えば80〜230℃で1分〜24時間程度が好ましい。加熱硬化の際に発生する内部応力を低減する目的で、例えば80〜120℃、30分〜5時間予備硬化させた後に、120〜180℃、30分〜10時間の条件で後硬化させることができる。
【0061】
更に、本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途に用いることができ、具体的には、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物や、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0062】
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【0063】
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる本発明の硬化物は光学部品材料をはじめ各種用途に使用できる。光学用材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。より具体的には、ランプタイプ、SMDタイプ等のLED用封止材の他、以下のようなものが挙げられる。液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料である。また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLEDのモールド材、LEDの封止材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤である。光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤などである。
【0065】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部である。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーである。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤などである。光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルムなどである。光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤などである。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤などである。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LEDの封止材、CCDの封止材、接着剤などである。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤などである。光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーである。半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料である。自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品である。また、鉄道車輌用の複層ガラスである。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートである。建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料である。農業用では、ハウス被覆用フィルムである。次世代の光・電子機能有機材料としては、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤などである。
【実施例】
【0066】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
合成例1(エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物の合成)
2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン394部、分子量1700(GPC測定値)のシラノール基をもつポリジメチルジフェニルシロキサン475部、0.5%KOHメタノール溶液4部、イソプロピルアルコール36部を反応容器に仕込み、75℃に昇温した。昇温後、還流下にて10時間反応させた。反応後、メタノールを656部追加後、50%蒸留水メタノール溶液172.8部を60分かけて滴下し、還流下さらに10時間反応させた。反応終了後、5%第1水素ナトリウムリン酸水溶液で中和後、80℃でメタノールの蒸留回収を行った。その後、洗浄のために、メチルイソブチルケトン(MIBK)780部を添加後、水洗を3回繰り返した。次いで有機相を減圧下、100℃で溶媒を除去することによりエポキシ基を有するシロキサン化合物(EP−1)731部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は491g/eq、外観は無色透明であった。
【0068】
合成例2(エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物の合成)
2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン492部、分子量1700(GPC測定値)のシラノール基をもつポリジメチルジフェニルシロキサン444部、0.5%KOHメタノール溶液4部、イソプロピルアルコール36部を反応容器に仕込み、75℃に昇温した。昇温後、還流下にて10時間反応させた。反応後、メタノールを533部追加後、50%蒸留水メタノール溶液216部を60分かけて滴下し、還流下さらに10時間反応させた。反応終了後、5%第1水素ナトリウムリン酸水溶液で中和後、80℃でメタノールの蒸留回収を行った。その後、洗浄のために、MIBK660部を添加後、水洗を3回繰り返した。次いで有機相を減圧下、100℃で溶媒を除去することによりエポキシ基を有するシロキサン化合物(EP−2)783部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は411g/eq、外観は無色透明であった。
【0069】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(東京化成工業(株)製)8.3部、両末端カルビノール変性シリコーンX22−160AS(信越化学工業(株)製)58.9部、MH―T(メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、新日本理化(株)製)32.8部を加え、窒素パージを施しながら、80℃で3時間、120℃で3時間反応を行ったところ、無色透明液体として多価カルボン酸組成物(MA−1)99部を得た。得られた多価カルボン酸組成物(MA-1)の粘度は17562mPa・s、400nmでの透過率は97.6%であった。
【0070】
実施例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、4,4’−ビシクロヘキサノール(東京化成工業(株)製)7.4部、両末端カルビノール変性シリコーンX22−160AS(信越化学工業(株)製)58.9部、MH―T(メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、新日本理化製)33.7部を加え、窒素パージを施しながら、80℃で3時間、100℃で3時間反応を行ったところ、白濁液体として多価カルボン酸組成物(MA−2)99部を得た。得られた多価カルボン酸組成物(MA-2)の粘度は13645mPa・sであった。
【0071】
比較例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、トリシクロデカンジメタノール(TCD Alcohol DM OXEA製)7.4部、両末端カルビノール変性シリコーンX22−160AS(信越化学工業(株)製)58.9部、MH―T(メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、新日本理化製)33.7部を加え、窒素パージを施しながら、50℃で2時間、80℃で3時間反応を行ったところ、無色透明液体として多価カルボン酸組成物(MC−1)98部を得た。得られた多価カルボン酸組成物(MC−1)の粘度は8448mPa・s、400nmでの透過率は96%であった。
【0072】
比較例2
撹拌装置、コンデンサ、温度計を設置したフラスコに、両末端カルビノール変性シリコーンX22-160AS(信越化学工業(株)製)47.1部、下記式(2)の構造のポリエステルポリオール(アデカニューエースY9−10 ADEKA(株)製)11.8部、リカシッドBT−100(ブタンテトラカルボン酸二無水物 新日本理化(株)製)2.5部、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(リカシッドMH 新日本理化(株)製)16.6部を仕込み、80℃で2時間、140℃で16時間反応させ、多価カルボン酸組成物(MC−2)77.5部を得た。この多価カルボン酸組成物は、反応終了時は無色透明の液体であったが、反応液の温度が下がるにつれて外観は白濁した液体になった。得られた化合物の酸価は77mgKOH/g、粘度は5730mPa・sであった。
【0073】
【化3】
【0074】
(式中、kは繰り返し単位数をし、Rがネオペンチレンを、R4がブチレンを表す。)
【0075】
実施例3、比較例3〜4
実施例1で得られた本発明の多価カルボン酸組成物(MA−1)、比較例として、比較例1、2で製造した多価カルボン酸組成物(MC−1)(MC−2)を硬化剤として用い、エポキシ樹脂として合成例1,2で得られたエポキシ樹脂(EP−1)(EP−2)、硬化促進剤としてベヘニン酸亜鉛((株)サンエース製 SCI−ZNB 以下C−1と称す)、光安定剤(ADEKA製LA−81 以下添加剤AD−1と称す)、酸化防止剤(ADEKA製 アデカ260 以下添加剤AD−2と称す)を使用し、下記表1に示す配合比(重量部)で配合し、20分間脱泡を行い、本発明及び比較用の硬化性樹脂組成物を得た。
得られた硬化性樹脂組成物及びその硬化物について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
<最大点伸度>
測定条件
引っ張り試験 JIS K 6911に準拠
サンプル 厚み0.9±0.05mm 断面積4.5±0.2mm
速度 5mm/min チャック間距離 15mm
解析条件
(破断時のチャック間距離−15mm)/15mm×100
【0077】
<ガラス転移温度、弾性率>
測定条件
動的粘弾性測定装置:DMS6100(セイコーインスツル株式会社)
測定温度範囲:−50℃〜150℃
昇温速度:2℃/min
試験片サイズ:5mm×7mm
解析条件
ガラス転移温度(Tg):Tan−δピークの最大点での温度をTgとした。
弾性率:0℃における貯蔵弾性率
【0078】
<リフロー試験>
得られた硬化性樹脂組成物を真空脱泡20分間実施後シリンジに充填し、精密吐出装置を用いて、底面に銀メッキを施した銅製電極(リフレクタ)を具備する(1)5mm×5mm×1.4mmt(封止部0.6mmt)と(2)3.2mm×2.8mm×1.3mmt(封止部0.6mmt)の2種類の表面実装型LEDパッケージに発光波長450nmを持つ発光素子を搭載したものに、開口部が平面になるように注型した。120℃×1時間の予備硬化の後、150℃×3時間で硬化し、表面実装型LEDを封止した。得られた試験用LEDを30℃60%×96Hr吸湿後、鉛フリーN2リフローシステム(TNR15−225LH−M (株)タムラ製作所)を用い、260℃×10秒の条件で加熱し、(1)のパッケージについてはクラックの有無あるいは程度を、(2)のパッケージについてはリフレクタ部分と樹脂との剥離の有無あるいは程度をそれぞれA、B、C、Dの4段階で評価した。結果は表1に示した。
【0079】
<腐食ガス透過性試験>
上記の(1)のサイズのLEDパッケージを同様に封止し、下記条件で腐食性ガス中に放置して封止内部の銀メッキされたリフレクタ部の色の変化を観察した。
腐食ガス:硫化水素20ppm
暴露条件:25℃、湿度75%、4日間
暴露後処理:85℃×6時間加熱
腐食の判定:LEDパッケージ内部のリフレクタ部が黒く変色した程度をA、B、C、Dの4段階で評価した。結果は表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
以上の結果から明らかなように、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は構造体として実用的なガラス転移温度、弾性率を有するため、本発明の硬化性樹脂組成物をLED封止材として用いることが可能であり、かつ延伸性があって弾性率も高すぎないため、耐ハンダリフロー性に優れた硬化物を得ることができる。
【0082】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2013年3月5日付で出願された日本国特許出願(特願2013−042973)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の多価カルボン酸組成物を用いたエポキシ樹脂組成物は、電気電子材料等に好適に用いられる。