特許第6239598号(P6239598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッドの特許一覧

特許6239598薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用
<>
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000093
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000094
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000095
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000096
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000097
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000098
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000099
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000100
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000101
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000102
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000103
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000104
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000105
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000106
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000107
  • 特許6239598-薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用 図000108
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239598
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】薬物複合体、複合体形成方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20171120BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171120BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   A61K39/395 C
   A61K39/395 L
   A61K45/00
   A61P35/00
   !C07K16/00ZNA
【請求項の数】6
【全頁数】95
(21)【出願番号】特願2015-512770(P2015-512770)
(86)(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公表番号】特表2015-518832(P2015-518832A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】US2013041027
(87)【国際公開番号】WO2013173392
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2016年5月11日
(31)【優先権主張番号】61/652,512
(32)【優先日】2012年5月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/648,532
(32)【優先日】2012年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/647,300
(32)【優先日】2012年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/648,406
(32)【優先日】2012年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100067035
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 光隆
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ジェンウェイ・ミャオ
(72)【発明者】
【氏名】ユーフォン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】トン・ジュウ
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−515069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iab
【化1】
[式中、
Aは抗体または抗体フラグメントであり、
は存在せず、
【化2】

【化3】
であり、
は活性薬物であり
1であり、
1Aは存在しないかまたは−(CH)n’−、−(CHCHO)n”−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、ペプチドおよびオリゴ糖からなる群から選択され;
は存在しないかまたは−(CH)n”’−、−(CHCHO)n””−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、ペプチド、オリゴ糖、O、S、NH、Val、Cit、Ala−PAB、PAB、phe、Lys、D−Val、Leu、Lys、Gly、AlaおよびAsnからなる群から選択され;
n’、n”、およびn”’、およびn””の各々は独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。]
を含む、活性薬物複合体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
1Aが−(CH)−、−(CHCHO)−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、Ala−PAB、PAB、ペプチド、オリゴ糖およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、ここで、n’およびn”が独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である、請求項に記載の活性薬物複合体。
【請求項3】
がペプチド、オリゴ糖、−(CH)−、O(酸素)、S(硫黄)、−NH−、−(CHCHO)−、Val、Cit、PAB、Phe、Lys、D−Val、Leu、Lys、Gly、Ala、Asn、−(CH”’、−(CHCHO)””、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、Ala−PAB、ペプチド、オリゴ糖およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1個の要素を含ここで、n”’およびn””が独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である、請求項1または2に記載の活性薬物複合体。
【請求項4】
が、−(CH”’−、−(CHCHO)””−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、Ala−PAB、PAB、ペプチド、オリゴ糖およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、ここで、n”’およびn””が独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である、請求項1ないしのいずれか一項に記載の活性薬物複合体。
【請求項5】
式II−Aの化合物を式II−Bの化合物と反応させて、
【化4】
[式中、
Aは抗体または抗体フラグメントであり;
Bは存在せず;
XはNであり;
YはCであり;
Dは活性薬物であり;
nは1であり;
1Aは存在しないかまたは−(CH)n’−、−(CHCHO)n”−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、ペプチドおよびオリゴ糖からなる群から選択され;
は存在しないかまたは−(CH)n”’−、−(CHCHO)n””−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、ペプチド、オリゴ糖、O、S、NH、Val、Cit、Ala−PAB、PAB、phe、Lys、D−Val、Leu、Lys、Gly、AlaおよびAsnからなる群から選択され、
n’、n”、n”’およびn””の各々は独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
Gは、−F、−Cl、−Br、−I、−N、−OR、SR、−ONRR、RC(=O)O−、およびRSO−O−からなる群より選択され、そして
Rは、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、または置換ヘテロ環である。]
請求項1に記載の活性薬物複合体を得る、化学的合成法。
【請求項6】
次のものからなる群から選択される、活性薬物複合体:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、抗体(または、一本鎖可変フラグメントのような抗体フラグメント)をペイロード(payload)薬物と結合させ、抗体−薬物複合体、またはADCと称される免疫複合体の形態にできることが見出された。抗体は、ADCの標的細胞への結合をもたらす。その後、ADCは細胞によって内在化されることが多く、薬物が放出され、細胞が処理される。このターゲティングのため、副作用は全身的な薬物投与の副作用よりも低い可能性がある。
【発明の概要】
【0002】
概要
ある態様は、活性薬物複合体、活性薬物複合体の製造方法、およびその使用を提供する。
【0003】
ある態様は、式I:
【化1】

[式中、
Aは、標的部分であり、
Bは、第二の標的部分を含んでいてよい補助的部分であるか、またはBは存在せず、
は、少なくとも1個のN(窒素)原子を含む基を含み、
Dは、それぞれ独立して選択され、ここで、各Dは活性薬物を含み、
は、それぞれ独立して、リンカーであり、ここで、少なくとも1個のLはLに結合し、そして
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。]
で示される構造を有する活性薬物複合体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0004】
ある態様は、式Ia:
【化2】

[式中、
Xが、N(窒素)またはCHであり、
Yが、N(窒素)またはCHであり、
mが、0、1、または2であり、
Lが、リンカーであるか、または存在せず、そして
1Aが、リンカーであるか、または存在しない。]
で示される構造を有する活性薬物複合体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0005】
ある態様は、式Iaa
【化3】

[式中、
Aは、標的部分であり、
Bは、第二の標的部分を含んでいてよい補助的部分であるか、またはBは存在せず、
Dは、それぞれ独立して選択され、ここで、各Dは活性薬物を含み、
は、それぞれ独立して、リンカーであり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、XはN(窒素)またはCHであり、そしてL1Aはリンカーであるか、または存在しない。]
で示される構造を有する活性薬物複合体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0006】
ある態様は、式Iab
【化4】

[式中、
Aは、標的部分であり、
Bは、第二の標的部分を含んでいてよい補助的部分であるか、またはBは存在せず、
Dは、それぞれ独立して選択され、ここで、各Dは活性薬物を含み、
は、それぞれ独立して、リンカーであり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、XはN(窒素)またはCHであり、そしてL1Aはリンカーであるか、または存在しない。]
で示される構造を有する活性薬物複合体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0007】
ある態様は、
式I−Aのアミンを式I−Bのジアルデヒドと反応させて、
【化5】

式Iaaの活性薬物複合体を得る化学的合成法を提供する。
【0008】
ある態様は、式II−Aの化合物を式II−Bの化合物と反応させて、
【化6】

式Iabの活性薬物複合体を得る化学的合成法を提供する。
【0009】
ある態様において、
【化7】
は、
【化8】

であってよい。ある態様において、Lは、−NH−C(=O)−、−NH−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−O−を含む。ある態様において、Lは、−NH−C(=O)−、−NH−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−O−であってよい。ある態様において、Lは存在しなくてもよい。ある態様において、Lは、−C(=O)−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−O−を含む。ある態様において、Lは、−C(=O)−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−O−であってよい。ある態様において、Lは−C(=O)−であってよい。
【0010】
ある態様において、L1Aは、−(CH−を含み、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。ある態様において、L1Aは、−(CHCHO)−を含み、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。ある態様において、L1Aは、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、Ala−PAB、またはPABを含む。ある態様において、L1Aは、ペプチド、オリゴ糖、−(CH−、−(CHCHO)−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、Ala−PAB、PAB、またはそれらの組み合わせを含む。
【0011】
ある態様において、構成要素Aは、モノクローナル抗体(mAB)を含む。ある態様において、構成要素Aは、抗体フラグメント、サロゲート、または変異体を含む。ある態様において、構成要素Aは、タンパク質リガンドを含む。ある態様において、構成要素Aは、タンパク質骨格を含む。ある態様において、構成要素Aは、ペプチドを含む。ある態様において、構成要素Aは、小分子リガンドを含む。ある態様において、構成要素Aは、少なくとも1個の修飾されたn−ブチルL−α−アミノ酸残基を含む。
【0012】
ある態様において、Lは非切断型ユニットを含む。ある態様において、非切断型ユニットは、−(CH−を含み、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。ある態様において、非切断型ユニットは、−(CHCHO)−を含み、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。ある態様において、Lは切断型ユニットを含み。ある態様において、切断型ユニットはペプチドを含み。ある態様において、Lは、ペプチド、オリゴ糖、−(CH)−、O(酸素)、S(硫黄)、−NH−、−(CHCHO)−、Val、Cit、PAB、Phe、Lys、D−Val、Leu、Lys、Gly、Ala、Asnなどからなる群より選択される少なくとも1個の構成要素を含む。ある態様において、Lは、−(CH−を含み、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。ある態様において、Lは、−(CHCHO)−を含み、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。ある態様において、Lは、少なくとも1個のVal−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、Ala−PAB、またはPABを含む。ある態様において、Lは、ペプチド、オリゴ糖、−(CH−、−(CHCHO)−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、Ala−PAB、PAB、またはそれらの組み合わせを含む。
【0013】
ある態様は、本明細書に開示および記載される活性薬物複合体を含む組成物を提供する。ある態様において、組成物の>70%が2種以内の活性成分からなる。ある態様において、組成物の>60%が、2種以内の活性成分からなる。ある態様において、組成物の>50%が2種以内の活性成分からなる。ある態様は、本明細書に開示および記載される活性薬物複合体を含む組成物を提供する。ある態様において、組成物の>70%が2種のみの活性成分からなる。ある態様において、組成物の>60%が2種のみの活性成分からなる。ある態様において、組成物の>50%が2種のみの活性成分からなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、従来のトラスツズマブ−エムタンシンの2工程複合体形成反応の生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図2図2は、従来のトラスツズマブ−エムタンシンの1工程複合体形成反応の生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図3図3は、従来のNHS法を用いてトラスツズマブと化合物34を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図4図4は、選択的複合体形成法を用いてトラスツズマブと化合物34を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図5図5は、選択的複合体形成法を用いてトラスツズマブと化合物67を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図6図6は、1:4の薬剤/抗体比で、選択的複合体形成法を用いて、トラスツズマブと化合物62を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図7図7は、1:6の薬剤/抗体比で、選択的複合体形成法を用いて、トラスツズマブと化合物62を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
【0015】
図8図8は、1:7.5の薬剤/抗体比で、選択的複合体形成法を用いて、トラスツズマブと化合物62を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図9図9は、選択的複合体形成法を用いて、トラスツズマブと化合物49を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図10図10は、選択的複合体形成法を用いてトラスツズマブと化合物73を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図11図11は、非選択的リンカーを用いてトラスツズマブと化合物60を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラム、および適するリンカーを用いてトラスツズマブと化合物60を反応させた生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示す。
図12図12は、トラスツズマブ−化合物55の抗体−薬物複合体に対するSK−BR−3細胞の生存能を示す。
図13図13は、トラスツズマブ−化合物61の抗体−薬物複合体に対するSK−BR−3、HCC1954、MCF7、およびMDA−MB−468細胞の生存能を示す。
図14図14は、トラスツズマブ−化合物67の抗体−薬物複合体に対するSK−BR−3、HCC1954、MCF7、およびMDA−MB−468細胞の生存能を示す。
図15図15は、トラスツズマブ−化合物62の抗体−薬物複合体に対するSK−BR−3、HCC1954、MCF7、およびMDA−MB−468細胞の生存能を示す。
図16図16は、トラスツズマブ−化合物55の抗体−薬物複合体に対するSK−BR−3、HCC1954、MCF7、およびMDA−MB−468細胞の生存能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
ある態様は、活性薬物複合体を提供する。ある態様において、活性薬物複合体は、薬物複合体である。ある態様において、薬物複合体は、標的化分子を含む。ある態様において、標的化分子はモノクローナル抗体(mAB)を含む。ある態様において、薬物複合体は、スペーサーまたは多官能性リンカーを含む。ある態様において、スペーサーは、N(窒素)原子を含む基によりmABに結合している。ある態様において、多官能性リンカーは、N(窒素)原子を含む基によりmABに結合している。ある態様において、スペーサーまたは多官能性リンカーは、要すれば補助的部分(auxiliary moiety)に結合していてよい。ある態様において、補助的部分は、mABおよびペプチドのような第二の標的化分子であり得る。ある態様において、補助的部分は、ポリエチレングリコール(PEG)などのような親水性ポリマーであり得る。ある態様において、スペーサーまたは多官能性リンカーは、N(窒素)原子を含む基を含み得る。ある態様において、スペーサーまたは多官能性リンカーは、N(窒素)原子を含む環状基を含み得る。
【0017】
ペイロードを含むポリペプチドを誘導体化する複合体形成法は、リシン側鎖とのアミド結合の形成により達成され得る。同様の反応性を有する多数のリシン側鎖アミンが存在するため、この複合体形成法は、極めて複雑な不均一混合物を製造し得る。本明細書に記載の組成物および方法は、リシンを介する複合体を提供し、ある態様において、リシンの増強された選択性が、不均一性のより低い混合物をもたらし得る。
【0018】
略語
本明細書で用いる、通常の有機化学における略語は以下に定義される。
【表1】
【0019】
用語“薬学的に許容される塩”は、化合物の生物学的有効性および特性を保持する塩を意味し、それは、医薬における使用に生物学的にも、または他の方法にも望ましくない塩ではない。多くの場合に、本明細書に記載の化合物は、アミノおよび/またはカルボキシル基またはそれらに類似の基の存在に基づいて酸性および/または塩基性塩を形成し得る。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸と形成され得る。塩が由来し得る無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。塩が由来し得る有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイヒ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基と形成され得る。塩が由来し得る無機塩基としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが挙げられる。特に好ましいのは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩類である。塩が由来し得る有機塩基としては、例えば、一級、二級、および三級アミン類、天然に生じる置換アミン類を含む置換アミン類、環状アミン類、塩基性イオン交換樹脂などが挙げられ、とりわけイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンが挙げられる。多くのそのような塩が当技術分野で公知であり、11、1987年9月11日に公開されたWO87/05297、Johnstonらに記載されている(参照によりその全体を本明細書中に包含させる)。
【0020】
本明細書で用いる“C−C”または“Ca−b”(ここで、“a”および“b”は、整数である。)は、特定の基における炭素原子の数を意味する。すなわち、該基は、“a”ないし“b”(その数を含む)個の炭素原子であり得る。故に、例えば“C−Cアルキル”または“C1−4アルキル”基は、1ないし4個の炭素を有する全てのアルキル基、すなわちCH−、CHCH−、CHCHCH−、(CHCH−、CHCHCHCH−、CHCHCH(CH)−、および(CHC−を意味する。
【0021】
本明細書で用いる用語“ハロゲン”または“ハロ”は、元素周期表第7列の放射線安定原子(radio-stable atom)のいずれか1つ、例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味し、フッ素および塩素が好ましい。
【0022】
本明細書で用いる“アルキル”は、完全飽和である(すなわち、二重または三重結合を含まない)直鎖または分枝状炭化水素を意味する。アルキル基は、1ないし20個の炭素原子を有し得る(本明細書に記載される場合は、“1ないし20”のような数値範囲は、所定の範囲の各整数を意味する。例えば、本明細書の定義は、数の範囲が明示されない用語“アルキル”の場合も包含するが、“1ないし20個の炭素原子”とは、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから、20個までの(20個を含む)炭素原子から構成され得ることを意味する)。アルキル基はまた、1ないし9個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルも意味し得る。アルキル基はまた、1ないし4個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。該アルキル基は、“C1−4アルキル”または同様の記載で示され得る。例示のみの目的で、“C1−4アルキル”とは、アルキル鎖中に1ないし4個の炭素原子が存在することを示し、すなわち、該アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルからなる群より選択される。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で用いる“アルコキシ”は、式−OR(式中、Rは、上記のアルキルである。)のような“C1−9アルコキシ”のような基を意味し、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、1−メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、およびtert−ブトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で用いる“アルキルチオ”は、式−SR(式中、Rは、上記のアルキルである。)のような“C1−9アルキルチオ”のような基を意味し、メチルメルカプト、エチルメルカプト、n−プロピルメルカプト、1−メチルエチルメルカプト(イソプロピルメルカプト)、n−ブチルメルカプト、イソブチルメルカプト、sec−ブチルメルカプト、tert−ブチルメルカプトなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で用いる“アルケニル”は、1個またはそれ以上の二重結合を含む直鎖または分枝状炭化水素鎖を意味する。アルケニル基は、本明細書の定義は、数の範囲が明示されない用語“アルケニル”の場合も包含するが、2ないし20個の炭素原子を有し得る。アルケニル基はまた、2ないし9個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルケニルでもあり得る。アルケニル基はまた、2ないし4個の炭素原子を有する低級アルケニルであってもよい。該アルケニル基は、“C2−4アルケニル”または同様の記載で示され得る。例示のみの目的で、“C2−4アルケニル”とは、アルケニル鎖中に2ないし4個の炭素原子が存在することを示し、すなわち、該アルケニル鎖は、エテニル、プロペン−1−イル、プロペン−2−イル、プロペン−3−イル、ブテン−1−イル、ブテン−2−イル、ブテン−3−イル、ブテン−4−イル、1−メチル−プロペン−1−イル、2−メチル−プロペン−1−イル、1−エチル−エテン−1−イル、2−メチル−プロペン−3−イル、ブタ−1,3−ジエニル、ブタ−1,2,−ジエニル、およびブタ−1,2−ジエン−4−イルからなる群より選択される。典型的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で用いる“アルキニル”は、1個またはそれ以上の三重結合を含む直鎖または分枝状炭化水素鎖を意味する。アルキニル基は、本明細書の定義は、数の範囲が明示されない用語“アルキニル”の場合も包含するが、2ないし20個の炭素原子を有し得る。アルキニル基はまた、2ないし9個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキニルでもあり得る。アルキニル基はまた、2ないし4個の炭素原子を有する低級アルキニルであってもよい。該アルキニル基は、“C2−4アルキニル”または同様の記載で示され得る。例示のみの目的で、“C2−4アルキニル”とは、アルキニル鎖中に2ないし4個の炭素原子が存在することを示し、すなわち、該アルキニル鎖は、エチニル、プロピン−1−イル、プロピン−2−イル、ブチン−1−イル、ブチン−3−イル、ブチン−4−イル、および2−ブチニルからなる群より選択される。典型的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
用語“芳香族”は、パイ電子共役系を有する環または環系を意味し、炭素環式芳香族(例えば、フェニル)およびヘテロ環式芳香族基(例えば、ピリジン)の両方を包含する。該用語は、環系全体が芳香族性を提供する単環式または縮合多環式(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を包含する。
【0028】
本明細書で用いる“アリールオキシ”および“アリールチオ”は、RO−およびRS−(ここでは、Rは、上記に定義のアリールである。)のような“C6−10アリールオキシ”または“C6−10アリールチオ”などを意味し、フェニルオキシが挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
“アラルキル”または“アリールアルキル”は、“C7−14アラルキル”などのような、アルキレンを介して置換基として結合するアリール基であり、ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、およびナフチルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。ある場合において、アルキレン基は、低級アルキレン基(すなわち、C1−4アルキレン基)である。
【0030】
本明細書で用いる“ヘテロアリール”は、1個またはそれ以上のヘテロ原子、すなわち窒素、酸素および硫黄を含むが、これに限定されない炭素以外の元素を環の骨格上に含む、芳香環または環系(すなわち、2個の隣接原子を共有する2個またはそれ以上の縮合環)を意味する。ヘテロアリールが環系であるとき、該環系のそれぞれの環は、芳香族性である。ヘテロアリール基が5−18員環(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含む、環骨格を構成する原子の数)であってよいが、本明細書の定義は、数値範囲が記載されていない用語“ヘテロアリール”の場合も包含する。ある態様において、ヘテロアリール基は、5ないし10員環または5ないし7員環である。ヘテロアリール基は、 “5−7員のヘテロアリール”、“5−10員のヘテロアリール”または同様の記載で示され得る。ヘテロアリール環の例としては、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリル、およびベンゾチエニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
“ヘテロアラルキル”または“ヘテロアリールアルキル”は、アルキレン基を介して置換基として結合するヘテロアリール基である。例としては、2−チエニルメチル、3−チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソキサゾリルアルキル、およびイミダゾリルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。ある場合において、アルキレン基は、低級アルキレン基(すなわち、C1−4アルキレン基)である。
【0032】
本明細書で用いる“カルボシクリル”は、環系の骨格中に炭素原子のみを含む非芳香族性環式環または環系を意味する。カルボシクリルが環系であるとき、2個またはそれ以上の環が、それらが一体となって縮合環、架橋環またはスピロ縮合環を構成し得る。カルボシクリルは、環系の少なくとも1個の環が芳香族ではないとの条件で、任意の飽和度を有していてもよい。故に、カルボシクリルとしては、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルが挙げられる。カルボシクリル基は、本明細書の定義が、用語“カルボシクリル”が数値範囲を示さずに記載される場合を包含するが、3ないし20個の炭素原子を有していてよい。カルボシクリル基は、3ないし10個の炭素原子を有する中程度のサイズのカルボシクリルであってもよい。カルボシクリル基は、3ないし6個の炭素原子を有するカルボシクリルでもあり得る。該カルボシクリル基は、“C3−6カルボシクリル”または同様の記載で示され得る。カルボシクリル環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3−ジヒドロ−インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、およびスピロ[4.4]ノナニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
“(カルボシクリル)アルキル”は、置換基として、アルキレン基を介して結合するカルボシクリル基であり、例えば、“C4−10(カルボシクリル)アルキル”などであり、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルブチル、シクロブチルエチル、シクロプロピルイソプロピル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチルメチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ある場合において、アルキレン基は低級アルキレン基である。
【0034】
本明細書で用いる“シクロアルキル”は、完全飽和カルボシクリル環または環系を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
【0035】
本明細書で用いる“シクロアルケニル”は、少なくとも1個の二重結合を有するカルボシクリル環または環系であって、該環系中に芳香族環がないものを意味する。例としては、シクロヘキセニルが挙げられる。
【0036】
本明細書で用いる“ヘテロシクリル”は、環骨格中に少なくとも1個のヘテロ原子を含む、非芳香族環式環系または環系を意味する。ヘテロシクリルは、縮合、架橋またはスピロ結合により共に結合されていてよい。ヘテロシクリルは、環系中の少なくとも1個の環が芳香族ではないとの条件で、任意の飽和度を有していてもよい。ヘテロ原子は、環系中の非芳香族環または芳香環のいずれかに存在していてよい。ヘテロシクリル基は、本明細書の定義が、用語“ヘテロシクリル”が数値範囲を示さずに記載される場合を包含するが、3ないし20員環(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含む、環骨格を構成する原子数)であってよい。ヘテロシクリル基はまた、3ないし10員環を有する中程度のサイズのヘテロシクリルであってよい。ヘテロシクリル基はまた、3ないし6員環を有するヘテロシクリルであってもよい。該ヘテロシクリル基は、“3−6員のヘテロシクリル”または同様の記載で示され得る。好ましい6員の単環式ヘテロシクリルにおいて、ヘテロ原子は、1ないし3個のO、NまたはSから選択され、好ましい5員の単環式ヘテロシクリルにおいて、ヘテロ原子は、O、N、またはSから選択される1または2個のヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例としては、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、オキシラニル、オキセパニル、チエパニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキソピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリジオニル、4−ピペリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3−ジオキシニル、1,3−ジオキサニル、1,4−ジオキシニル、1,4−ジオキサニル、1,3−オキサチアニル、1,4−オキサチイニル、1,4−オキサチアニル、2H−1,2−オキサジニル、トリオキサニル、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジニル、1,3−ジオキソリル、1,3−ジオキソラニル、1,3−ジチオリル、1,3−ジチオラニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、1,3−オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロ−1,4−チアジニル、チアモルホリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンズイミダゾリジニル、およびテトラヒドロキノリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
“(ヘテロシクリル)アルキル”は、置換基として、アルキレン基を介して結合するヘテロシクリル基である。例としては、イミダゾリニルメチルおよびインドリニルエチルが挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
本明細書で用いる“アシル”は、−C(=O)R(式中、Rは、本明細書で定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルである。)を意味する。限定されない例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイル、およびアクリルが挙げられる。
【0039】
“O−カルボキシ”基は、“−OC(=O)R”基(式中、Rは、本明細書で定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。)を意味する。
【0040】
“C−カルボキシ”基は、“−C(=O)OR”基(式中、Rは、本明細書で定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。)を意味する。限定しない例としては、カルボキシル(すなわち、−C(=O)OH)が挙げられる。
【0041】
“シアノ”基は、“−CN”基を意味する。
【0042】
“シアナト”基は、“−OCN”基を意味する。
【0043】
“イソシアナト”基は、“−NCO”基を意味する。
【0044】
“チオシアナト”基は、“−SCN”基を意味する。
【0045】
“イソチオシアナト”基は、“−NCS”基を意味する。
【0046】
“スルフィニル”基は、“−S(=O)R”基(式中、Rは、本明細書で定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。)を意味する。
【0047】
“スルホニル”基は、“−SOR”基(式中、Rは、本明細書で定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。)を意味する。
【0048】
“S−スルホンアミド”基は、“−SONR”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。) を意味する。
【0049】
“N−スルホンアミド”基は、“−N(R)SO”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。)を意味する。
【0050】
“O−カルバミル”基は、“−OC(=O)NR”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。) を意味する。
【0051】
“N−カルバミル”基は、“−N(R)C(=O)OR”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。) を意味する。
【0052】
“O−チオカルバミル”基は、“−OC(=S)NR”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。) を意味する。
【0053】
“ウレア”基は、“−N(R)C(=O)NR”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。) を意味する。
【0054】
“N−チオカルバミル”基は、“−N(R)C(=S)OR”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。) を意味する。
【0055】
“C−アミド”基は、“−C(=O)NR”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。) を意味する。
【0056】
“N−アミド”基は、“−N(R)C(=O)R”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。) を意味する。
【0057】
“アミノ”基は、“−NR”基(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書に定義の通り、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−7カルボシクリル、C6−10アリール、5−10員のヘテロアリール、および5−10員のヘテロシクリルから選択される。) を意味する。限定しない例としては、遊離アミノ(すなわち、−NH)が挙げられる。
【0058】
“アミノアルキル”基は、アルキレン基を介して結合するアミノ基を意味する。
【0059】
“アルコキシアルキル”基は、アルキレン基を介して結合するアルコキシ基を意味し、例えば“C2−8アルコキシアルキル”などである。
【0060】
本明細書で用いる「置換された基」は、非置換の親基に由来し、そこに、1個またはそれ以上の水素原子が別の原子または基に交換されている基である。特記しない限り、基が“置換”されていると記載されるとき、それは、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cカルボシクリル(所望によりハロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシで置換されていてよい)、C−C−カルボシクリル−C−C−アルキル(所望によりハロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシで置換されていてよい)、5−10員のヘテロシクリル(所望によりハロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシで置換されていてよい)、5−10員のヘテロシクリル−C−C−アルキル(所望によりハロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシで置換されていてよい)、アリール(所望によりハロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシで置換されていてよい)、アリール(C−C)アルキル(所望によりハロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシで置換されていてよい)、5−10員のヘテロアリール(所望によりハロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシで置換されていてよい)、5−10員のヘテロアリール(C−C)アルキル(所望によりハロ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルキル、およびC−Cハロアルコキシで置換されていてよい)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C−C)アルキル(例えば、−CF)、ハロ(C−C)アルコキシ(例えば、−OCF)、C−Cアルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミノ(C−C)アルキル、ニトロ、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、アシル、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニル、およびオキソ(=O)から独立して選択される1個またはそれ以上の置換基で置換されていることを意味する。基が“所望により置換されていてよい”と記載されるときは、該基は、上記の置換基で置換され得る。
【0061】
あるラジカル命名法は、文脈によって異なるが、モノラジカルまたはジラジカルの何れも包含し得ることが理解されるべきである。例えば、置換基が、分子の他の部分に2つの結合点を必要とするとき、置換基はジラジカルであると理解される。例えば、2つの結合点を必要とするアルキルとして特定される置換基としては、−CH−、−CHCH−、−CHCH(CH)CH−などのようなジラジカルが挙げられる。他のラジカル命名法は、ラジカルが、“アルキレン”または“アルケニレン”のようなジラジカルであることを明確に記載する。
【0062】
置換基がジラジルカル(すなわち、分子の他の部分に2つの結合点を有する)であることが示されるとき、他に特記しない限り、置換基は、任意の指向性配置(directional configuration)で結合し得ることが理解されるべきである。故に、例えば、−AE−または
【化9】

で示される置換基としては、Aが分子の最左の結合点に結合するように、ならびにAが分子の最右の結合点に結合する場合のように配向される置換基が挙げられる。
【0063】
本明細書で用いる“対象”は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類または鳥類、例えば、ニワトリ、ならびに何れかの他の脊椎動物または無脊椎動物を意味する。
【0064】
化合物
当業者は、本明細書に記載されるいくつかの構造が、動態的にも他の化学的構造によっても正しく示され得る、化合物の共鳴構造または互変異性体であり得ることを認識するだろう。当業者は、そのような構造が、そのような化合物のサンプルの極めて少量部分を表しているだけであり得ることを理解する。そのような共鳴構造または互変異性体は本明細書中に示されないが、かかる化合物は、示される構造の範囲内であると考えられる。
【0065】
同位体が記載される化合物に存在し得る。本明細書に具体的または一般的に記載される化合物中に存在するそれぞれの化学元素は、該元素の何れかの同位体であり得る。例えば、本明細書に具体的または一般的に記載される化合物において、水素原子は、明示的に記載されるか、または化合物中に存在することが理解され得て、かかる各水素原子は、水素−1(プロチウム)および水素−2(重水素)を含むが、これらに限定されない水素のいずれかの同位体である。故に、本明細書中の化合物への言及は、文脈中これと異なる記載がない限り、全ての可能性のある同位体形態を包含する。
【0066】
結合方法、スペーサーおよびリンカーによる
いくつかの態様は、スペーサーまたは多官能性リンカーを介する標的分子の結合方法を提供する。ある態様において、スペーサーまたは多官能性リンカーは、N(窒素)原子を含む基を包含し得る。ある態様において、該方法は、単一工程または連続的結合方法を包含する。ある態様において、薬物複合体は、スペーサーまたは多官能性リンカーを包含する。ある態様において、スペーサーまたは多官能性リンカーは、ペプチドまたはジスルフィド結合のような非切断型または切断型ユニットを包含し得る。
【0067】
有用性および適応症
いくつかの態様は、本明細書に開示または記載される活性薬物複合体を必要とする患者における処置方法であって、該患者にそれを投与することを含む方法を提供する。ある態様において、患者は、癌、免疫疾患、感染症または糖尿病のような代謝性疾患を有し得る。
【0068】
いくつかの態様は、本明細書に開示または記載される活性薬物複合体を個人に投与することを含む、診断またはイメージング法を提供する。
【0069】
構造
いくつかの態様は、式I
【化10】

[式中、
Aは、標的部分であり得て、
Bは、第二の標的部分を含んでいてよい補助的部分であるか、水溶性ポリマーであるか、またはBは存在せず、
は、1個のN(窒素)原子を含む基であり、
Dは、それぞれ独立して選択され、ここで、各Dは活性薬物であり、
は、それぞれ独立して、リンカーであり、ここで、少なくとも1個のLはLに結合し、そして
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。]
で示される構造を有する活性薬物複合体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0070】
ある態様において、Aは、モノクローナル抗体(mAB)であり得て、より具体的には、Aはヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0071】
ある態様において、Aは、抗体フラグメント、サロゲート、または変異体であり得る。
【0072】
ある態様において、Aは、タンパク質リガンドであり得る。
【0073】
ある態様において、Aは、タンパク質骨格であり得る。
【0074】
ある態様において、Aはペプチドであり得る。
【0075】
ある態様において、Aは小分子リガンドであり得る。
【0076】
ある態様において、Bは、親水性ポリマーであり得る。ある態様において、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)などであり得る。ある態様において、Bは、生分解性ポリマーであり得る。ある態様において、生分解性ポリマーは、構造化されていないタンパク質、ポリアミノ酸、ポリペプチド、多糖類およびそれらの組み合わせであり得る。
【0077】
ある態様において、Bは、モノクローナル抗体(mAB)であり得る。
【0078】
ある態様において、Bは、抗体フラグメント、サロゲート、または変異体であり得る。
【0079】
ある態様において、Bは、タンパク質リガンドであり得る。
【0080】
ある態様において、Bは、タンパク質骨格であり得る。
【0081】
ある態様において、Bはペプチドであり得る。
【0082】
ある態様において、Bは、RNAまたはDNAであり得る。
【0083】
ある態様において、Bは、RNAまたはDNAフラグメントであり得る。
【0084】
ある態様において、Bは、小分子リガンドであり得る。
【0085】
ある態様において、Dは、生物学的活性化合物であり得る。
【0086】
ある態様において、Dは薬物であり得る。
【0087】
ある態様において、Dは、化学療法薬であり得る。
【0088】
ある態様において、Dは、天然生成物であり得る。
【0089】
ある態様において、Dは、免疫モジュレーターであり得る。
【0090】
ある態様において、Dは、チューブリンバインダーであり得る。
【0091】
ある態様において、Dは、DNA−アルキル化剤であり得る。
【0092】
ある態様において、Dは、RNAポリメラーゼ阻害剤であり得る。
【0093】
ある態様において、Dは、DNAトポイソメラーゼ阻害剤であり得る。
【0094】
ある態様において、Dは、抗エピジェネティック薬であり得る。
【0095】
ある態様において、Dは、タンパク質合成阻害剤であり得る。
【0096】
ある態様において、Dは、抗代謝剤であり得る。
【0097】
ある態様において、Dは、酵素阻害剤であり得る。
【0098】
ある態様において、Dは、ペプチドであり得る。
【0099】
ある態様において、Dは、ペプチド模倣薬であり得る。
【0100】
ある態様において、DはsiRNAであり得る。
【0101】
ある態様において、Dは、アンチセンスDNAであり得る。
【0102】
ある態様において、Dは、DNAインターカレーター(intercalactor)であり得る。
【0103】
ある態様において、Lは、スペーサーまたは多官能性リンカーを含み得る。ある態様において、Lは、スペーサーおよび多官能性リンカーを含み得る。ある態様において、Lは多官能性リンカーを含み得る。ある態様において、各Lはリンカーであり得て、ここで、リンカーは、生物学的条件下で切断型または非切断型であり得る。ある態様において、リンカーは酵素により切断され得る。ある態様において、Lはリンカーを含み得る。
【0104】
ある態様において、Lは、少なくとも1個のN(窒素)原子を含む環式基を含む。ある態様において、Lは、少なくとも2個のN(窒素)原子を含む環式基を含む。ある態様において、Lは、少なくとも1個のN(窒素)原子およびスペーサーを含む環式基を含む。ある態様において、Lは、少なくとも2個のN(窒素)原子およびスペーサーを含む環式基を含む。ある態様において、スペーサーは、アミド結合によりmABに結合している。ある態様において、スペーサーは、アミン結合を介してmABに結合している。
【0105】
ある態様において、Aは、少なくとも1個の修飾n−ブチル L−α−アミノ酸を包含する。ある態様において、少なくとも1個の修飾L−リシン残基は、複合体形成前のペプチドのL−リシン残基に由来する。ある態様において、Lの少なくとも1個の窒素は、複合体形成前のペプチドの少なくとも1個の修飾n−ブチル L−α−アミノ酸に由来する。ある態様において、AおよびLは一体となって、少なくとも1個の修飾L−リシン残基を含む。ある態様において、複合体形成前のペプチドのL−リシン残基の側鎖の末端窒素は、Lの少なくとも1個のN(窒素)原子である。ある態様において、Aは、Lの少なくとも1個のN(窒素)原子を提供する、複合体形成前のペプチドのL−リシン残基の側鎖の−(CH−を含む。ある態様において、Aは、修飾n−ブチル L−α−アミノ酸残基を含む。
【0106】
ある態様において、リンカーはペプチドであり得る。
【0107】
ある態様において、リンカーはオリゴ糖を含み得る。例えば、リンカーはキトサンを含み得る。ある態様において、Lは、リンカーおよび−(CH−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。)を含み得る。ある態様において、Lは、リンカーおよび−(CHCHO)−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。)を含み得る。
【0108】
ある態様において、リンカーは、−(CH−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。)を含み得る。
【0109】
ある態様において、リンカーは、−(CHCHO)−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。)を含み得る。
【0110】
ある態様において、リンカーは、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB、PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PABなどを含み得る。
【0111】
ある態様において、リンカーは、ペプチド、オリゴ糖、−(CH−、−(CHCHO)−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB、PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PABなどの何れかの組み合わせを含み得る。
【0112】
ある態様において、スペーサーは、ペプチドを含み得る。
【0113】
ある態様において、スペーサーはオリゴ糖を含み得る。例えば、スペーサーはキトサンを含み得る。
【0114】
ある態様において、スペーサーは、−(CH−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。)を含み得る。ある態様において、Lは、4−炭素架橋および−(CH−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。)を含む構成成分を含み得る。
【0115】
ある態様において、スペーサーは、−(CHCHO)−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。) を含み得る。ある態様において、Lは、4−炭素架橋および−(CHCHO)−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。)を含む構成成分を含み得る。
【0116】
ある態様において、スペーサーは、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−Ala−Asn−PAB、Ala−PAB、PABなどを含み得る。
【0117】
ある態様において、スペーサーは、ペプチド、オリゴ糖、−(CH−、−(CHCHO)−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB、PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PABなどの何れかの組み合わせであり得る。
【0118】
ある態様において、Lは、
【化11】
などを含み得るが、これらに限定されない。
【0119】
ある態様において、式Iの構造を有する薬物複合体は、式Ia:
【化12】

[式中、Xは、N(窒素)、CH−またはCH−C(=O)−である。Yは、N(窒素)、CH−またはCH−CH−である。mは、0、1、または2であり得る。そして、L1Aは、リンカーであり得るか、または存在しない。Lは、−NH−C(=O)−、−NH−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−O−であるが、これに限定されない。]
で示される構造を有する
【0120】
ある態様において、構成要素Aは、モノクローナル抗体(mAB)を含む。ある態様において、構成要素Aは、抗体フラグメント、サロゲート、または変異体を含む。ある態様において、構成要素Aはタンパク質リガンドを含む。ある態様において、構成要素Aは、タンパク質骨格を含む。ある態様において、構成要素Aはペプチドである。ある態様において、構成要素Aは小分子リガンドを含む。ある態様において、構成要素Aは、少なくとも1個の修飾L−アラニン残基を含む。ある態様において、構成要素Aは、少なくとも2個の修飾L−アラニン残基を含む。ある態様において、少なくとも1個のLは、−(CH−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。) を含む。ある態様において、少なくとも1個のLは、−(CHCHO)−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。) を含む。ある態様において、少なくとも1個のLは、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB、PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PABを含む。ある態様において、少なくとも1個のLは、ペプチド、オリゴ糖、−(CH−、−(CHCHO)−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB、PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PAB、またはそれらの組み合わせを含む。ある態様において、Lは、−C(=O)−を含む。ある態様において、Lは、−C(=O)−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−O−を含む。ある態様において、Lは、−C(=O)−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−O−であり得る。ある態様において、Lは、−C(=O)−である。ある態様において、少なくとも1個のLは、
【化13】
【0121】
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

を含む。
【0122】
ある態様において、式Iの構造を有する薬物複合体は、
【化20】

(式中、リンカーは、ペプチド、オリゴ糖、−(CH)−、O(酸素)、S(硫黄)、−NH−、−(CHCHO)−、Val、Cit、PAB、Phe、Lys、D−Val、Leu、Lys、Gly、Ala、Asnなどからなる群より選択される少なくとも1個の構成成分である。)
で示される構造を有する。
【0123】
ある態様において、リンカーは、−(CH−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。) を含み得る。
【0124】
ある態様において、リンカーは、−(CHCHO)−(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。) を含み得る。
【0125】
ある態様において、リンカーは、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB、PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PABなどを含み得る。
【0126】
ある態様において、リンカーは、ペプチド、オリゴ糖、−(CH−、−(CHCHO)−、Val−Cit−PAB、Val−Ala−PAB、Val−Lys(Ac)−PAB、Phe−Lys−PAB、Phe−Lys(Ac)−PAB、Ala−PAB、PAB、D−Val−Leu−Lys、Gly−Gly−Arg、Ala−Ala−Asn−PABなどの何れかの組み合わせなどを含み得る。
【0127】
複合体形成方法の説明
一般的方法A:ある態様は、式I−Aのアミンと式I−Bのジアルデヒドを反応させて、式(Iab)の活性薬物複合体を提供することを含む化学的合成法を提供する。
【化21】
【0128】
一般的方法B:ある態様は、式II−Aのアミンと式II−Bの活性化カルボキシル成分を反応させて、式(Ia”)の活性薬物複合体を提供することを含む化学的合成法を提供する。
【化22】
【0129】
アミノ基と選択的に反応して6員環を形成するとき、例としては、
【化23】

などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
ある態様において、薬物複合体は、アミノ酸、アミノ酸残基、アミノ酸類縁体、および修飾アミノ酸からなる群より選択される1個またはそれ以上の構成成分を含み得る。
【0131】
本明細書で用いる用語“標的部分”は、生物学的部分またはそのフラグメントと結合または相互作用する構造を意味する。
【0132】
ある態様において、標的部分は、モノクローナル抗体(mAB)であり得る。ある態様において、標的部分は、抗体フラグメント、サロゲート、または変異体であり得る。ある態様において、標的部分は、タンパク質リガンドであり得る。ある態様において、標的部分は、タンパク質骨格であり得る。ある態様において、標的部分は、ペプチドであり得る。ある態様において、標的部分は、RNAまたはDNAであり得る。ある態様において、標的部分は、RNAまたはDNAフラグメントであり得る。ある態様において、標的部分は、小分子リガンドであり得る。
【0133】
ある態様において、標的部分は、Janthur et al., “Drug Conjugates Such as Antibody Drug Conjugates (ADCs)、Immunotoxins and Immunoliposomes Challenge Daily Clinical Practice,” Int. J. Mol. Sci, 2012, 13, 16020-16045に記載される抗体フラグメントであり得る。該文献の記載は、引用によりその全体を本明細書中に包含させる。ある態様において、標的部分は、Trail, PA, “Antibody Drug Conjugates as Cancer Therapeutics,” Antibodies 2013, 2, 113-129に記載の抗体フラグメントであり得る。該文献の記載は、引用によりその全体を本明細書中に包含される。
【0134】
ある態様において、標的部分は、HuM195−Ac−225、HuM195−Bi−213、Anyara(ナプツモマブ・エスタフェナトクス;ABR−217620)、AS1409、ゼバリン(イブリツモマブ チウキセタン)、BIIB015、BT−062、ノイラジアブ(Neuradiab)、CDX−1307、CR011−vcMMAE、トラスツズマブ−DM1(R3502)、ベクサール(トシツモマブ)、IMGN242、IMGN388、IMGN901、131I−ラベツズマブ、IMMU−102(90Y−エピラツズマブ)、IMMU−107(90Y−クリバツズマブテトラキセタン)、MDX−1203、CAT−8015、EMD273063(hu14.18−IL2)、ツコツズマブセルモロイキン(EMD273066;huKS−IL2)、188Re−PTI−6D2、コタラ、L19−IL2、Teleukin(F16−IL2)、Tenarad(F16−131I)、L19−131I、L19−TNF、PSMA−ADC、DI−Leu16−IL2、SAR3419、SGN−35、またはCMC544であり得る。ある態様において、標的部分は、HuM195−Ac−225、HuM195−Bi−213、Anyara(ナプツモマブ・エスタフェナトクス;ABR−217620)、AS1409、ゼバリン(イブリツモマブ チウキセタン)、BIIB015、BT−062、Neuradiab、CDX−1307、CR011−vcMMAE、トラスツズマブ−DM1(R3502)、ベクサール(トシツモマブ)、IMGN242、IMGN388、IMGN901、131I−ラベツズマブ、IMMU−102(90Y−エピラツズマブ)、IMMU−107(90Y−クリバツズマブテトラキセタン)、MDX−1203、CAT−8015、EMD273063(hu14.18−IL2)、ツコツズマブセルモロイキン(EMD273066;huKS−IL2)、188Re−PTI−6D2、コタラ、L19−IL2、Teleukin(F16−IL2)、Tenarad(F16−131I)、L19−131I、L19−TNF、PSMA−ADC、DI−Leu16−IL2、SAR3419、SGN−35またはCMC544の抗体部分を含み得るか、これらからなり得るか、または本質的にこれらからなり得る。
【0135】
ある態様において、標的部分は、ブレンツキシマブ・ベドチン、トラスツズマブ・エムタンシン、イノツズマブ・オゾガマイシン、ロルボツズマブ・メルタンシン、グレンバツムマブ・べドチン、SAR3419、モキセツモマブ・シュードトクス、モキセツモマブ・シュードトクス、AGS−16M8F、AGS−16M8F、BIIB−015、BT−062、IMGN−388、またはIMGN−388であり得る
【0136】
ある態様において、標的部分は、ブレンツキシマブ・ベドチン、トラスツズマブ・エムタンシン、イノツズマブ・オゾガマイシン、ロルボツズマブ・メルタンシン、グレンバツムマブ・べドチン、SAR3419、モキセツモマブ・シュードトクス、モキセツモマブ・シュードトクス、AGS−16M8F、AGS−16M8F、BIIB−015、BT−062、IMGN−388、またはIMGN−388の抗体部分を含み得るか、これらからなり得るか、または本質的にこれらからなり得る。
【0137】
ある態様において、標的部分は、ブレンツキシマブ、イノツズマブ、ゲムツズマブ、ミラツズマブ、トラスツズマブ、グレンバツムマブ、ロルボツズマブまたはラベツズマブを含み得るか、これらからなり得るか、または本質的にこれらからなり得る。
【0138】
本明細書で用いる用語“ペプチド”は、アミノ酸、アミノ酸残基、アミノ酸類縁体、および修飾アミノ酸からなる群よりそれぞれ独立して選択される1個またはそれ以上の構成成分を含む構造を意味する。該構成成分は、典型的に、アミド結合を介して互いに結合される。
【0139】
本明細書で用いる用語“アミノ酸”は、天然に存在するアミノ酸、アミド結合形成に利用可能な窒素およびカルボン酸を有する分子、一般式NH−CHR−COOHの分子または親アミノ酸を担持するペプチド内の残基を含み、ここで、“R”は多くの種々の側鎖の一つである。“R”は、天然に存在するアミノ酸に見られる置換基であり得る。“R”はまた、天然に存在するアミノ酸のものではないものに関連する置換基でもよい。
【0140】
本明細書で用いる用語“アミノ酸残基”は、他のアミノ酸を結合したとき、水分子の喪失後に残るアミノ酸の部分を意味する。
【0141】
本明細書で用いる用語“アミノ酸類縁体”は、アミノ酸親化合物の構造誘導体を意味し、これは、しばしば一元素が異なる。
【0142】
本明細書で用いる用語“修飾アミノ酸”は、20種の遺伝子によりコードされたアミノ酸の1つに対応しない、“R”置換基を担持するアミノ酸を意味する。
【0143】
本明細書で用いる遺伝子によりコードされたL−エナンチオマーアミノ酸の略語は、下記の通り慣用的表記に従っている。D−アミノ酸は小文字で示し、例えばD−プロリン=pなどである。
【表2】
【0144】
活性薬物複合体におけるあるアミノ酸残基は、顕著に有害に影響することなく他のアミノ酸残基と置き換えることができ、多くの場合ペプチドの活性を増強させさえする。すなわち、好ましい態様によりまた意図されるのは、構造内の少なくとも1個の定義されるアミノ酸残基が他のアミノ酸残基またはその誘導体および/または類縁体で置換されている、活性薬物複合体の改変または変異形態である。好ましい態様において、アミノ酸置換は保存的であり、すなわち、置換アミノ酸残基は、置換されるアミノ酸残基と類似の物理的および化学的特性を有すると認識され得る。
【0145】
保存的アミノ酸置換を決定する目的で、アミノ酸は、アミノ酸側鎖の物理的−化学的特長に主に依存して、親水性および疎水性の2つの主カテゴリーに都合よく分類され得る。これらの2つの主カテゴリーは、さらに、アミノ酸側鎖の特徴によりさらに明瞭に定義されたサブカテゴリーに分類され得る。例えば、親水性アミノ酸の群は、酸性、塩基性および極性アミノ酸にさらに細分できる。疎水性アミノ酸の群は、非極性および芳香族アミノ酸にさらに細分できる。アミノ酸の種々のカテゴリーの定義は次のとおりである。
【0146】
用語“親水性アミノ酸”は、Eisenberg et al., 1984, J. Mol. Biol. 179:125-142の標準化コンセンサス疎水性尺度に従い、0未満の疎水性を示すアミノ酸を意味する。遺伝子によりコードされた親水性アミノ酸は、Thr(T)、Ser(S)、His(H)、Glu(E)、Asn(N)、Gln(Q)、Asp(D)、Lys(K)およびArg(R)を含む。
【0147】
用語“疎水性アミノ酸”は、Eisenberg, 1984, J. Mol. Biol. 179:1.25-142の標準化コンセンサス疎水性尺度に従い、0を超える疎水性を示すアミノ酸を意味する。遺伝子によりコードされた疎水性アミノ酸は、Pro(P)、Ile(I)、Phe(F)、Val(V)、Leu(L)、Trp(W)、Met(M)、Ala(A)、Gly(G)およびTyr(Y)を含む。
【0148】
用語“酸性アミノ酸”は、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を意味する。酸性アミノ酸は、典型的に、水素イオンの喪失により、生理的pHで負に荷電した側鎖を有する。遺伝子によりコードされた酸性アミノ酸は、Glu(E)およびAsp(D)を含む。
【0149】
用語“塩基性アミノ酸”は、7を超える側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を意味する。塩基性アミノ酸は、典型的に、ヒドロニウムイオンとの結合により、生理的pHで正に荷電された側鎖を有する。遺伝子によりコードされた塩基性アミノ酸は、His(H)、Arg(R)およびLys(K)を含む。
【0150】
用語“極性アミノ酸”は、2個の原子により共有されている電子の対が、原子の一方により近接して維持された少なくとも1個の結合を有するが、生理的pHでは荷電していない、側鎖を有する親水性アミノ酸を意味する。遺伝子によりコードされた極性アミノ酸は、Asn(N)、Gln(Q)、Ser(S)およびThr(T)を含む。
【0151】
用語“非極性アミノ酸”は、生理学的pHで荷電しておらず、2個の原子により共有されている電子の対が、一般に2個の原子のそれぞれに均等に維持された結合を有する側鎖を有する疎水性アミノ酸(すなわち、側鎖は極性ではない)を意味する。遺伝子によりコードされた非極性アミノ酸はLeu(L)、Val(V)、Ile(I)、Met(M)、Gly(G)およびAla(A)を含む。
【0152】
用語“芳香族性アミノ酸”は、少なくとも1個の芳香族またはヘテロ芳香環を有する側鎖を有する疎水性アミノ酸を意味する。ある態様において、該芳香族またはヘテロ芳香環は、−OH、−SH、−CN、−F、−Cl、−Br、−I、−NO、−NO、−NH、−NHR、−NRR、−C(O)R、−C(O)OH、−C(O)OR、−C(O)NH、−C(O)NHR、−C(O)NRRなど(ここで、Rは、それぞれ独立して、(C−C)アルキル、置換(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、置換(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、置換(C−C)アルキニル、(C−C20)アリール、置換(C−C20)アリール、(C−C26)アルカリール、置換(C−C26)アルカリール、5−20員のヘテロアリール、置換5−20員のヘテロアリール、6−26員のアルコヘテロアリールまたは置換6−26員のアルコヘテロアリールである。)のような1個またはそれ以上の置換基を含み得る。遺伝子によりコードされた芳香族アミノ酸は、Phe(F)、Tyr(Y)およびTrp(W)を含む。
【0153】
用語“脂肪族アミノ酸”は、脂肪族炭化水素側鎖を有する疎水性アミノ酸を意味する。遺伝子によりコードされた脂肪族アミノ酸は、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)およびIle(I)を含む。
【0154】
アミノ酸残基Cys(C)は、他のCys(C)残基または他のスルファニル含有アミノ酸とジスルフィド架橋を形成できる点で、独特である。Cys(C)残基(および−SH含有側鎖を有する他のアミノ酸)が、ペプチド内で、還元的遊離−SHまたは酸化的ジスルフィド架橋形態で存在できる能力は、Cys(C)残基がペプチドの正味の疎水性または親水性特徴のいずれに寄与するかに影響する。Cys(C)は、Eisenberg(上記のEisenberg, 1984)の標準化コンセンサス尺度に従い0.29の疎水性を示すが、好ましい態様の目的で、Cys(C)は、上に定義した一般的分類に関わらず、極性親水性アミノ酸として分類されることが理解されるべきである。
【0155】
当業者には当然であるが、上に定義したカテゴリーは相互排他的ではない。すなわち、2種またはそれ以上の物理的−化学的特性を示す側鎖を有するアミノ酸が、複数カテゴリーに包含され得る。例えば、Tyr(Y)のような極性置換基でさらに置換された芳香族部分を有するアミノ酸側鎖は、芳香族疎水性特性と極性または親水性特性の両方を示すことができ、それゆえに芳香族および極性カテゴリーの両方に包含され得る。任意のアミノ酸の適切な分類は、とりわけ本明細書に提供した詳細な記載に照らして、当業者には明らかであり得る。
【0156】
上に定義したカテゴリーは、遺伝子によりコードされたアミノ酸の観点で例示されているが、アミノ酸置換は、遺伝子によりコードされたアミノ酸に限定される必要はなく、ある態様において、限定されないのが好ましい。ある態様において、該活性薬物複合体は、遺伝子によりコードされないアミノ酸を含み得る。すなわち、天然に存在する遺伝子によりコードされたアミノ酸に加えて、該活性薬物複合体におけるアミノ酸残基は、天然に存在する非コード化アミノ酸および合成アミノ酸で置換され得る。
【0157】
該活性薬物複合体のために有用な置換を提供する、ある一般に見られるアミノ酸としては、β−アラニン(β−Ala)および3−アミノプロピオン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4−アミノ酪酸などのような他のオメガ−アミノ酸;α−アミノイソ酪酸(Aib);ε−アミノヘキサン酸(Aha);δ−アミノ吉草酸(Ava);N−メチルグリシンまたはサルコシン(MeGly);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t−ブチルアラニン(t−BuA);t−ブチルグリシン(t−BuG);N−メチルイソロイシン(MeIle);フェニルグリシン(Phg);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle);ナフチルアラニン(Nal);4−フェニルフェニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン(Phe(4−Cl));2−フルオロフェニルアラニン(Phe(2−F));3−フルオロフェニルアラニン(Phe(3−F));4−フルオロフェニルアラニン(Phe(4−F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(Tic);β−2−チエニルアラニン(Thi);メチオニンスルホキシド(MSO);ホモアルギニン(hArg);N−アセチルリシン(AcLys);2,4−ジアミノ酪酸(Dbu);2,3−ジアミノ酪酸(Dab);p−アミノフェニルアラニン(Phe(pNH));N−メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys)、ホモフェニルアラニン(hPhe)およびホモセリン(hSer);ヒドロキシプロリン(Hyp)、ホモプロリン(hPro)、N−メチル化アミノ酸およびペプトイド(N−置換グリシン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
本明細書に具体的に記載していない他のアミノ酸残基は、ここに提供する定義に照らして、その観察される物理的および化学的特性に基づき、容易に分類され得る。
【0159】
上に定義したカテゴリーに従う遺伝子によりコードされたアミノ酸および一般的非コード化アミノ酸の分類を、下記の表2にまとめる。表2は説明のみを目的とし、本明細書に記載する活性薬物複合体の置換に使用され得るアミノ酸残基および誘導体の網羅的リストであることを意図しないことが理解されるべきである。
【0160】
【表3】
【0161】
本明細書に具体的に記載していない他のアミノ酸残基は、ここに提供する定義に照らして、その観察される物理的および化学的特性に基づき、容易に分類され得る。
【0162】
ほとんどの場合、本活性薬物複合体のアミノ酸は、L−エナンチオマーアミノ酸で置換され得るが、置換はL−エナンチオマーアミノ酸に限定されない。ある態様において、ペプチドは、有利に少なくとも1個のD−エナンチオマーアミノ酸を含む。このようなD−アミノ酸を含むペプチドは、L−アミノ酸だけからなるペプチドよりも口腔、消化管または血清での分解に対してより安定であると考えられる。
【0163】
ある態様において、ここに提供する組成物および方法は、標的とするリシン側鎖アミノ基の増大した選択性を提供し得る。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>80%が、2種以内の活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>70%が、2種以内の活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>60%が、2種以内の活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>50%が、2種以内の活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>40%が、2種以内の活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>30%が、2種以内の活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>80%が、2種のみの活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>70%が、2種のみの活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>60%が、2種のみの活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>50%が、2種のみの活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>40%が、2種のみの活性成分からなる。ある態様において、本明細書に開示および記載の活性薬物複合体を含む組成物の>30%が、2種のみの活性成分からなる。
【0164】
1工程複合体形成法−ジアルデヒド還元的アミノ化
一般的複合体形成法I:
バッファー(pH3.0−8.0)中の0.5−50mg/mLの標的分子Aの溶液に、2−6当量のジアルデヒド成分および2−50当量のNaBCNH3を添加した。反応を、0−40℃にて、0.5−50時間、緩やかに撹拌または振盪しながら行い、HIC−HPLCでモニターした。得られた粗ADC生成物に、本願出願時の技術水準の方法を用いて、脱塩、バッファー交換/製剤化、および要すれば、精製のような必要な下流工程を行った。最終ADC生成物を、HIC−HPLC、SEC、RP−HPLC、および要すればLC−MSにより同定した。平均DARを、UV吸収および/またはMS分光学により計算した。
【化24】
【0165】
一般的スキームIにより製造され得る化合物の例としては、以下の一般的化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【化25】

【化26】
【0166】
【化27】

【化28】

【化29】
【0167】
一般的複合体形成法II:
0−30%有機溶媒含有バッファー(pH6.0−9.0)中の0.5−50mg/mLの標的分子Aの溶液に、0.1−10当量の活性カルボン酸成分を少しずつまたは連続的に添加した。反応を、0−40℃にて、0.5−50時間、緩やかに撹拌または振盪しながら行い、HIC−HPLCでモニターした。得られた粗ADC生成物に、本願出願時の技術水準の方法を用いて、脱塩、バッファー交換/製剤化、および要すれば、精製のような必要な下流工程を行った。最終ADC生成物を、HIC−HPLC、SEC、RP−HPLC、および要すればLC−MSにより同定した。平均DARを、UV吸収および/またはMS分光学により計算した。
【化30】
【0168】
一般的複合体形成法II(段落0167)におけるある活性カルボン酸成分は、−F、−Cl、−Br、−I、−N、−OR(R=置換アルキル、置換アリール、ヘテロ環、置換ヘテロ環)、SR(R=アルキル、アリール、置換アリール)、−ON(R)R、RC(=O)O−、およびRSO−O−から選択される脱離基Gを保持する。
【0169】
ある活性カルボン酸成分は、一般的複合体形成法IIに従い式Iの活性薬物複合体を提供するために、以下の基から選択されるが、これに限定されない。
【化31】

【化32】
【0170】
【化33】

【化34】

【化35】
【0171】
ある態様において、一般的複合体形成法IIに従い製造される式Iの活性薬物複合体は、以下の構造を有するが、これに限定されない。
【化36】

【化37】

【化38】

など。
【実施例】
【0172】
実施例
一般的合成法
一般的方法A−HATU仲介アミド結合形成
酸(アミンに対して1.1当量)の無水DMF溶液に、HATU(酸に対して1当量)およびDIEA(酸に対して2当量)を添加し、混合物を室温で1分撹拌した。次いで、混合物をアミンのDMF溶液に添加し、反応混合物を反応が完了するまで室温で撹拌した(LC/MSによりモニター)。溶媒を減圧下で除去し、残渣を所望により逆相HPLCで精製して、最終純粋生成物を得た。
【0173】
一般的方法B−DIC/HOAt仲介アミド結合形成
無水DMF中のカルボン酸(1.1当量)、アミンおよびHOAt(1.1当量)の撹拌溶液に、DIC(1.1当量)を添加し、反応混合物を室温で撹拌した。反応が完了したら(LC/MSによりモニター)、溶媒を減圧下で除去し、残渣を所望により逆相HPLCで精製して、最終純粋生成物を得た。
【0174】
一般的方法C−HCl/ジオキサンを用いる酸感受性保護基(Boc、THP、t−Bu)の除去
酸感受性保護基含有化合物を4N HCl/ジオキサンに溶解し、混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、溶液を減圧下で濃縮し、残渣を冷エーテルで2回洗浄した。必要であれば、逆相HPLCで精製した。
【0175】
一般的方法D−Fmoc基の除去
Fmoc含有化合物を2−5%ピペリジンのDMF溶液に溶解した。混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。必要であれば、逆相HPLCで精製した。
【0176】
一般的方法E−還元的アルキル化
アミンをDMFに溶解し、アルデヒド(5当量)を添加し、その後、ナトリウムシアノボロハイドライド(5当量)を添加した。HOAcを添加して、反応混合物のpHを4〜5に調整した。混合物を、反応が完了するまで室温で撹拌した(1〜4時間、HPLCでモニター)。必要であれば、逆相HPLCで精製した。
【0177】
一般的方法F−鹸化−エステルからのMe/Etの除去
MeOH中のエステルの撹拌溶液に、1M LiOH水溶液を、混合物のpHが約13〜14になるまで添加し、反応混合物を、反応が完了するまで室温で撹拌した(〜16時間、HPLCでモニター)。クエン酸(〜10%水溶液)を添加して反応物を中和し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を所望によりRP−HPLCで精製するかまたは次工程に直接用いた。
【0178】
一般的方法G−ビス(p−ニトロフェニル)カーボネートでのヒドロキシル/フェノール基活性化
THF/DMF(2/1)中のアルコール/フェノールの撹拌溶液に、ビス(p−ニトロフェニル)カーボネート(3〜5当量)、続いてDIEA(2〜4当量)を添加し、反応混合物を室温で出発物質の大部分が消費されるまで撹拌した。反応の進行をLC/MSによりモニターした。粗生成物を所望によりフラッシュカラムクロマトグラフィーまたは沈殿と洗浄により精製した。
【0179】
一般的方法H−アミンと環状無水物(グルタル酸無水物またはコハク酸無水物)の反応
アミン含有化合物をDMFに溶解した。グルタル酸無水物(3当量)を添加し、その後、DIEA(4当量)を添加した。反応混合物を室温で出発物質の大部分が消費されるまで撹拌した。反応の進行をLC/MSによりモニターした。粗生成物をRP−HPLCにより精製して、純粋カルボン酸を得た。
【0180】
一般的方法I−p−ニトロフェニルカーボネート(例えばFmocVC−PAB−PNP)でのカルバメートの形成
アミン含有化合物をDMFに溶解し、アルキル/アリールp−ニトロフェニルカーボネート(1.5当量)を添加し、その後、DIEA(2当量)およびHOBt(触媒、5%)を添加した。反応混合物をアミンの大部分が消費されるまで室温で撹拌した。反応の進行をLC/MSによりモニターした。粗生成物を場合によりRP−HPLCにより精製して、純粋カルバメートを得た。
【0181】
一般的方法J−酸からの活性化エステル(例えば、NHS)の形成
酸をDCMに溶解し、必要であればDMFを添加して溶解を助けた。N−ヒドロキシスクシンイミド(1.5当量)、その後、EDC.HCl(1.5当量)を添加した。反応混合物を酸の大部分が消費されるまで室温で1時間撹拌した。反応の進行をRP−HPLCでモニターした。混合物をDCMで希釈し、クエン酸(10%水溶液)および塩水で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮乾固した。粗生成物を所望によりRP−HPLCまたはシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0182】
活性薬物複合体形成のための一般的スキーム
複合体形成法A。活性化環状カルボン酸を介するLys残基上のコンジュゲーション
【化39】

環状カルボン酸部分は、環状酸が直接結合されないときでも、直鎖カルボン酸誘導体から容易に得られ得る。例えば、
【化40】
【0183】
複合体形成法B。活性化環状カルボン酸を介するLys残基上のコンジュゲーション
【化41】
【0184】
実験の記載
工程1。薬物リンカー構築物合成(−L2−D)
薬物リンカー構築物合成の方法としては以下が挙げられるが、これに限定されない。
方法1−1:カルバメート結合を介して結合したリンカーおよび薬物。以下の一般的方法を用いた。
活性化およびカルバメート形成のために一般的方法GおよびI、さらなる誘導体化のための保護基の除去のために一般的方法C、DおよびF。
【化42】

【化43】
【0185】
方法1−2:還元的アルキル化を介して結合したリンカーおよび薬物(一般的方法E)
【化44】
【0186】
方法1−3。ヒドロキサメートの形成を介してアルコキシアミノリンカーに結合したカルボン酸部分を含む活性分子(一般的方法AまたはB)、その後の保護基の除去。
【化45】
【0187】
ヒドロキサム酸である活性分子について、構築物が酵素開裂条件下でヒドロキサム酸を遊離するため、上記方法をなお使用できる。対応するカルボン酸から反応を開始する必要がある。
【化46】
【0188】
工程2。官能基のL1−(L2−D)への導入
複合体形成反応に適する官能基の導入方法は、以下であるが、これらに限定されない。
方法2−1。カルボン酸を導入するために環状無水物と反応させるための遊離アミノ基担持化合物(一般的方法H)
【化47】
【0189】
方法2−2。カルボン酸を導入するために二酸と反応させるための遊離アミノ基担持化合物(一般的方法B)
【化48】
【0190】
方法2−3。遊離カルボン酸を復活させるためのカルボン酸保護基除去(一般的方法C、F)
【化49】

または
【化50】
【0191】
方法2−4。出発物質として直鎖カルボン酸を用いる環状カルボン酸部分の導入
【化51】
【0192】
NHSエステル(20mg)を、アセトニトリル/水(6/4、v/v)に溶解し、ピペリジン 4−カルボン酸(12mg)の飽和重炭酸ナトリウム水溶液(0.3mL)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、RP−HPLCで直接精製して、所望の生成物を凍結乾燥後に、白色固体として得た(18mg)。MS実測値:1261.5(M+H)
【0193】
方法2−5。カルボン酸部分担持ジアルデヒドでの1級アミンの還元的アルキル化(一般的方法E)
【化52】

アミン(NH−Ahx−マイタンシノール)(20mg)をアセトニトリル(2mL)に溶解し、1mLのNaOAc緩衝液(100mM、pH=4.0)を添加した。ジアルデヒド(0.5M水溶液、0.2mL)、続いてNaCNBH(10mg)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、RP−HPLCで直接精製して、所望の酸を凍結乾燥後に、白色固体として得た(16mg)。MS実測値:790.5(M+H)
【0194】
ジアルデヒドカルボン酸を次のスキームに従い、合成した。
【化53】
【0195】
エステル、2H−ピラン−4−カルボン酸、2−エトキシl−3,4−ジヒドロ−エチルエステルを文献(Chem Communications, (1) 25-26, 1998)に記載の方法に従い合成し、一般的方法Fを使用して鹸化し、その後、室温で1時間、1N HCl水溶液で処理した。ジアルデヒド水溶液を、さらに精製することなく直接用いた。
【0196】
工程3。複合体形成前の最終官能基導入
複合体形成反応前の最終官能基の導入方法は、以下であるが、これらに限定されない。
方法3−1。カルボン酸のその対応する活性化形態への活性化
【化54】
【0197】
Gは、−F、−Cl、−Br、−I、−N、−OR(R=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリール)、SR(R=置換アルキル、置換アリールヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリール)、−ON(R)R(R、Rは、それぞれ独立して、−(C=O)−Rから選択され、R=H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールであるか、またはRおよびRは一体となって環状構造を形成するか、またはR=R=(=C−R)、RC(=O)O−、およびRSO−O−(R=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールである。)から選択される脱離基である。
【0198】
カルボン酸を、活性化形態を提供する種々の方法を使用して活性化できる。例えば、カルボン酸を、次の方法を用いて活性化できる:A)Tetrahedron 61 (2005) 10827−10852;B)Beckwith, A. L. J. In The Chemistry of Amides; Zabicky, J., Ed.; Synthesis of Amides; Interscience: London, 1970; pp 105−109;C)Handbook of Reagents for Organic Synthesis: Activating Agents and Protecting Groups; Pearson, A. J., Roush, W. R., Eds.; Wiley: New York, 1999; pp 370−373;D)Lloyd−Williams, P., Albericio, F., and Giralt, E. (1997). Chemical approaches to the synthesis of peptide and proteins (Series ed. C. W. Rees). CRC Press, New York;E)Peptide chemistry: A practical textbook: By M Bodansky. Springer−Verlag, Heidelberg. 1988;およびF)The practice of peptide synthesis, 2nd ed., by M. Bodansky and A. Bodansky, Springer−Verlag, New York(それらは各々、引用によりその全体を本明細書に包含される)。
【0199】
方法3−2。複合体形成反応のためのジアルデヒド部分の導入
エトキシピラン誘導体を酸水溶液で処理して、所望のジアルデヒドを得た。
【化55】
【0200】
実施例I。化合物10の合成
【化56】

スキームI。試薬および条件:i. SOCl、EtOH;ii. DEPC、TFA、DCM;iii. TFA、DCM;iv. BrOP、DCM、DIEA;v. TFA、DCM;iv 。DIEA、DCM、HOBt。
【0201】
化合物1(23.4g、81.53mmol)の乾燥EtOH溶液(200mL)に、SOCl(100mL)を0℃で添加した。混合物を一晩撹拌し、溶媒を真空下の蒸発により除去した。残渣をさらに精製することなく直ぐに次工程に用いた。化合物2(81.53mmol)、化合物3(50g、163.1mmol)の乾燥DMF(150mL)溶液に、DEPC(15.9g、97.8mmol)、TEA(41g、0.408mol)を0℃で添加した。混合物を2時間、0℃で撹拌した。その後、混合物を一晩、室温で撹拌した。溶媒を真空下の蒸発により除去した。残渣を酢酸エチル−トルエン(2:1、900mL)で希釈し、1M KHSO、水、飽和NaHCOおよび塩水で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮して、残渣を得て、これをカラム(ヘキサン:酢酸エチル:DCM=5:1:1)で精製して、38gの化合物4を得た。
【0202】
Boc−Val−OH(30.6g、0.142mol)、化合物5(25gの化合物4から)のDCM溶液(400mL)に、BrOP(28g、70.87mmol)、DIEA(30g、0.236mol)を0℃で添加した。混合物を遮光し、0.5時間、0℃で撹拌した。混合物を48時間、室温で撹拌した。溶媒を真空下の蒸発により除去した。残渣を酢酸エチル−トルエン(3:1、900mL)で希釈し、1M KHSO、水、飽和NaHCOおよび塩水で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮して、残渣を得て、これをシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル:DCM=3:1:1)で精製して、22gの化合物7を得た。
【0203】
化合物7(40g、66.7mmol)のTHF溶液(600mL)に、LiOH(14g、0.33mol)の水(300mL)中の混合物を10℃未満で添加した。混合物を5日、25℃で撹拌した。THFを蒸発により除去した。水層をEtO(200mL×3)で洗浄した。水層を0℃にて1N HClでpH2まで酸性化し、混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および塩水で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮して、残渣を得て、これをPrep−HPLCで精製して、14gの化合物8を得た。
【0204】
化合物8(3g)のDCM溶液(100mL)に、化合物9(3g、一般的方法Jに従い、Boc−N−Me−Val−OHからEDCおよびペンタフルオロフェノールを用いて製造)を添加した。DIEA(2.6mL)を添加し、次いでHOBt(触媒100mg)を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラムで精製して、化合物10を、白色粉末(3.1g)として得た。C3564のMS m/z計算値684.5、実測値707.6([M+Na])。
【0205】
実施例II−1。化合物13の合成
【化57】

スキームII−1。試薬および条件:i. DIC/HOAt、DMF、室温、16時間;ii. HCl/ジオキサン
【0206】
アミノ酸スルホンアミド誘導体11を、既報の方法(ARKIVOC 2004 (xii) 14-22、またはWO 2007146695)に従い、Boc保護アミノ酸およびシクロプロピル/メチルスルホンアミドを用いて合成し、その後、Bocを除去した(一般的方法C)。
【0207】
化合物13を、上記の一般的方法を用いて下記の通りに合成した:Boc−N−Me−Val−Val−Dil−Dap−OH(化合物1)とアミン11との間のDIC/HOAt仲介アミド結合形成(一般的方法B)、その後の、Bocの除去(一般的方法C)。最終化合物を、逆相HPLCにより精製して、化合物13を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C4270SのMS m/z 計算値 834.5、実測値835.6([M+H])。
【0208】
実施例II−2。化合物16の合成
【化58】

スキームII−2。試薬および条件:i. DIC/HOAt、DMF、室温、16時間;ii. HCl/ジオキサン。
【0209】
アミノ酸スルホンアミド誘導体14を、既報の方法(ARKIVOC 2004 (xii) 14-22、またはWO 2007146695)に従い、Boc保護アミノ酸およびシクロプロピル/メチルスルホンアミドを用いて合成し、その後、Bocを除去した(一般的方法C)。
【0210】
化合物16を、上記の一般的方法を用いて下記の通りに合成した:Boc−N−Me−Val−Val−Dil−Dap−OH(化合物10)とアミン14との間のDIC/HOAt仲介アミド結合形成(一般的方法B)、その後の、Bocの除去(一般的方法C)。最終化合物を、逆相HPLCにより精製して、化合物16を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C417010SのMS m/z 計算値 838.5、実測値839.6([M+H])。
【0211】
実施例II−3。化合物20の合成
【化59】

スキームIIC。試薬および条件:i. ビス(ニトロフェニル)カーボネート、DIEA、THF/DMF、室温;ii. 6−アミノヘキサノン酸、NaHCO(水溶液);iii. HCl/ジオキサン(4N);iv. HCHO、NaCNBH、DMF、HOAc;
【0212】
フェノール16(1mmol)を3当量のビス(p−ニトロフェニル)カーボネートで処理して、活性化カーボネート17を形成した(一般的方法G)。粗生成物をさらに精製することなく直接使用した。6−アミノヘキサン酸(5当量)を飽和NaHCO水溶液(5mL)に溶解し、溶液を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。クエン酸(10%水溶液)を添加して反応物を酸性化し(pH=4〜5)、その後EtOAc(150mL)で希釈した。有機層を乾燥させ(NaSO)、濃縮して、粗生成物18を得て、これを次の方法に付した:Boc除去(一般的方法C)、HCHOを使用する還元的アルキル化。最終生成物をRP−HPLCで精製して、化合物20を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C488113SのMS m/z 計算値995.6、実測値996.4([M+H])。
【0213】
実施例III。アルコキシアミンリンカー24、25、26、および27の合成
【化60】
【0214】
【化61】

スキームIII。試薬および条件:i. SOCl、THF、1時間;ii. N−ヒドロキシフタルイミド、NaHCO、DMF、室温、48時間;iii. NHNH.HO、HOAc、DMF。
【0215】
実施例III−1。化合物24の合成
撹拌中のFmoc−VA−PAB(21)(Bioconjugate Chem., 2002, 13, 855-859)(9g、15mmol)のTHF溶液(200mL)に、塩化チオニル(18mmol)を滴下した。添加の完了後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。TLC分析(酢酸エチル/ヘキサン、1/1、v/v)が、反応の完了を示した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をヘキサン(100mL)で洗浄して、化合物22をわずかに黄色がかった固体として得た(8.8g)。
【0216】
化合物22(6.2g、10mmol)を、無水DMF(100mL)中に溶解した。N−ヒドロキシ−フタルイミド(3.2g、20mmol)を添加し、次いで固体NaHCO(3.4g、40mmol)を添加した。反応混合物を室温で48時間撹拌した。TLC分析は、ほとんどの化合物61が消費されたことを示した。その後、反応物を酢酸エチル(500mL)で希釈し、飽和NaHCO水溶液(3x200mL)および塩水(200mL)で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮して、化合物23を褐色固体として得て、それをさらなる精製なしに直接用いた。
【0217】
上記の工程からの粗化合物23をDMF(100mL)中に溶解した。HOAc(6mL)を添加し、次いでヒドラジン水和物(5mL)を添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。LC/MSは、反応の完了を示した。次いで、反応混合物を、1Lの水を含むビーカーに撹拌しながら注いだ。沈殿した固体を濾過により集め、水で2回洗浄して、化合物24を白色固体として得た(純度>85%、直接使用可能)。純粋な化合物63を、RP−HPLC精製後に得た。C3034のMS m/z 計算値530.3、実測値 531.4([M+H])。
【0218】
実施例III−2。化合物25の合成
化合物25を、化合物25の合成について上記の方法を用いて、化合物Fmoc−VC−PAB(Bioconjugate Chem., 2002, 13, 855-859)から出発して合成した。C3340のMS m/z 計算値616.3、実測値617.5([M+H])。
【0219】
実施例III−3。化合物26の合成
化合物26を、化合物26の合成について上記の方法を用いて、化合物 Fmoc−A−PAB(既報の方法に従い合成: Bioconjugate Chem., 2002, 13, 855-859)から出発して合成した。C2525のMS m/z 計算値431.2、実測値432.6([M+H])。
【0220】
実施例III−4。化合物27の合成
化合物27を、化合物27の合成について上記の方法を用いて、化合物 Fmoc−Ahx−PABから出発して合成した。C2831のMS m/z 計算値473.2、実測値474.3([M+H])。
【0221】
実施例IV。−L−(L−D)−の合成
【化62】

【化63】
【0222】
【化64】

スキームIV。試薬および条件:i. DIC、HOAt、DMF、室温;ii. ピペリジン、DMF;iii. グルタル酸無水物、DIEA、DMF、室温;iv. EDC、HOSu、DCM、DMF、室温。v. ピペリジン4−カルボン酸、NaHCO、MeCN/水。
【0223】
実施例IV−1。化合物32の合成
化合物32を、上記の一般的方法を用いて以下の通りに合成した:オーリスタチン(Auristatin)Fと化合物24との間のDIC/HOAt仲介アミド結合形成(一般的方法B)、その後の、Fmoc除去(一般的方法D)、グルタル酸無水物との反応(一般的方法H)、および酸の対応するNHSエステルへの変換(一般的方法J)。
【0224】
NHSエステル(20mg)を、アセトニトリル/水(6/4、v/v)中に溶解し、ピペリジン 4−カルボン酸(12mg)の飽和重炭酸ナトリウム水溶液(0.3mL)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、直接RP−HPLCにより精製して、所望の生成物を凍結乾燥後に、白色固体として得た(18mg)。MS 実測値1261.5(M+H)
【0225】
実施例IV−2。化合物34の合成
【化65】
【0226】
化合物34を、上記の一般的方法を用いて以下の通りに合成した:化合物ジメチルオーリスタチンFと化合物26との間のDIC/HOAt仲介アミド結合形成(一般的方法B)、その後、Fmocの除去(一般的方法D)、およびHATUを用いる酸33とのアミド形成(一般的方法A)、その後、鹸化して、メチルエステルを除去(一般的方法F)。最終化合物を、逆相HPLCにより精製して、化合物34を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C6410115のMS m/z 計算値1235.7、実測値1236.4([M+H])。
【0227】
実施例V −L−(L−D)−の合成
【化66】

【化67】

【化68】

【化69】

【化70】
【0228】
実施例V−1。化合物48の合成
【化71】

スキームIX。試薬および条件:i. DIEA、HOBt(5%)、DMF、室温、48時間;ii. ピペリジン、DMF。
【0229】
化合物48を、上記の一般的方法を用いて以下の通りに合成した:化合物13とFmoc−VC−PAB−PNPとの間のカルバメート形成(一般的方法I)、その後、Fmocを除去して(一般的方法D)、中間体化合物47を得て、それを、化合物34の合成について記載の方法と同様の方法を用いて、最終化合物に変化させた。最終化合物を逆相HPLCにより精製して、化合物48を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C711101218SのMS m/z 計算値1450.8、実測値1451.7([M+H])。
【0230】
実施例V−2。化合物49の合成
【化72】
【0231】
化合物49を、上記の一般的方法を用いて以下の通りに合成した:化合物13とアルデヒド50を、還元的アルキル化条件化で反応させ(一般的方法E)、次いでMe エステルを除去した(一般的方法F)。最終化合物を逆相HPLCにより精製して、化合物49を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C559114SのMS m/z 計算値1105.6、実測値1106.4([M+H])。
【0232】
実施例V−3。化合物55の合成
【化73】

スキームV−3。試薬及び条件:i. ビス(ニトロフェニル)カーボネート、DIEA、THF/DMF、室温;ii. ピペリジン 4−カルボン酸、NaHCO(水溶液);iii. HCl/ジオキサン(4N);iv. HCHO、NaCNBH、DMF、HOAc。
【0233】
フェノール51(1mmol)を、3当量のビス(p−ニトロフェニル)カーボネートで処理して、活性化カーボネート52を形成した(一般的方法G)。粗生成物をさらに精製することなく直接用いた。ピペリジン 4−カルボン酸(5当量)を飽和NaHCO水溶液(5mL)に溶解し、該溶液を添加した。反応混合物を室温にて8時間撹拌した。クエン酸(10%水溶液)を添加して、反応物を酸性化し(pH=4〜5)、次いでEtOAc(150mL)で希釈した。有機層を乾燥させ(NaSO)、濃縮して、粗生成物53を得て、これを次の方法に付した:Boc除去(一般的方法C)、HCHOを使用する還元的アルキル化(一般的方法E)。最終化合物を逆相HPLCで精製して、化合物55を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C508113SのMS m/z 計算値1019.6、実測値1020.8([M+H])。
【0234】
実施例V−4。化合物60の合成
【化74】

スキームV−4。試薬および条件:i. t−ブチルブロモ酢酸、KCO、DMF、室温、2時間;ii. HCl/ジオキサン(4N);iii. HCHO、NaCNBH、HOAc、DMF。
【0235】
撹拌中、化合物59(0.2mmol、190mg)の無水DMF溶液(5mL)に、t−ブチルブロモ酢酸(0.3mmol)を添加し、次いで、固体の炭酸カリウム(55mg、0.4mmol)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。LC/MSにより、反応の完了を確認した。混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、10%クエン酸水溶液および塩水で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮乾固させて、粗化合物57を得て、それを以下の方法に付した:Bocおよびt−Buの除去(一般的方法C)、およびHCHOを用いる還元的アルキル化(一般的方法E)。最終化合物を逆相HPLCにより精製して、化合物59を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C457412SのMS m/z 計算値922.5、実測値923.7([M+H])。
【0236】
【化75】

化合物60を、上記の一般的方法を用いて以下の通りに合成した:化合物59とイソニペコチン酸メチルとの間のHATU仲介アミド結合形成(一般的方法A)、次いで、鹸化して、エステルからメチル基を除去(一般的方法F)。最終化合物を逆相HPLCにより精製して、化合物60を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C518313SのMS m/z 計算値1033.6、実測値1034.7([M+H])。
【0237】
実施例V−5。化合物61の合成
【化76】

化合物61を、上記の一般的方法を用いて以下の通りに合成した:化合物59と化合物26の間のDIC/HOAt仲介アミド結合形成(一般的方法B)、次いで、Fmocの除去(一般的方法D)、酸62を用いるHATU仲介アミド化反応(一般的方法A)、および鹸化により、エステルからメチル基を徐去(一般的方法F)。最終化合物を逆相HPLCにより精製して、化合物61を凍結乾燥後に、白色粉末として得た。C651001017SのMS m/z 計算値1324.7、実測値1325.9([M+H])。
【0238】
実施例VI。複合体形成前の最終官能基の導入
【化77】
【0239】
化合物85を、上記の一般的方法を用いて以下の通りに合成した:化合物83と酸86との間のDIC/HOAt仲介アミド結合形成(一般的方法B)。中間体84をRP−HPLCにより精製して、得られた純粋な生成物をアセトニトリル/水(6/4、v/v)中の1N HCl水溶液(20当量)で1時間処理した。粗生成物をさらに精製することなく直接用いた。MS 実測値:1136.6(M+H)
【0240】
抗体−薬物複合体
一般的複合体形成法II:
0−30%有機溶媒含有バッファー(pH6.0−9.0)中の0.5−50mg/mLの標的分子Aの溶液に、0.1−10当量の活性カルボン酸成分を少しずつまたは連続的に添加した。反応を、0−40℃にて、0.5−50時間、緩やかに撹拌または振盪しながら行い、HIC−HPLCでモニターした。得られた粗ADC生成物に、本願出願時の技術水準の方法を用いて、脱塩、バッファー交換/製剤化、および要すれば、精製のような必要な下流工程を行った。最終ADC生成物を、HIC−HPLC、SEC、RP−HPLC、および要すればLC−MSにより特性化した。平均DARを、UV吸収および/またはMS分光学により計算した。
【0241】
トラスツズマブおよびエムタンシンを、米国特許番号第8,435,528号およびその引用文献に記載の条件下で、常套の2工程法を用いて、コンジュゲーションした。
【0242】
トラスツズマブ−エムタンシン 2工程複合体形成反応の生成物を、以下の条件下でHIC−HPLCを用いて分析した:HPLC カラム:Tosoh TSKゲル ブチル−NPR、4.6mmx3.5cm、2.5mm;バッファーA:20mM リン酸ナトリウム、1.5M 硫酸アンモニウム、pH7.0;バッファーB:20mM リン酸ナトリウム、25% v/v イソプロパノール(isopronal)、pH7.0;流速:1ml/分;勾配:10分 10%バッファーBないし80%バッファーB、4分 100%バッファーB;20μl サンプル。
【0243】
図1は、トラスツズマブ−エムタンシンン 2工程複合体形成反応生成物のHIC−HPLCクロマトグラムを示し、ここでは、DARは、UV252およびUV280に基づき、1抗体当たりにコンジュゲートした薬物の数を示す。コンジュゲートしない抗体(DAR=0)の量は、約1%である。
【0244】
トラスツズマブおよびエムタンシンを、米国特許番号第435,528号およびその引用文献に記載の条件下で、常套の1工程法を用いてコンジュゲーションした。トラスツズマブ−エムタンシン 1工程複合体形成反応の生成物を、図2に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。コンジュゲートしない抗体(DAR=0)の量は、約1%である。
【0245】
トラスツズマブおよび化合物34を、米国特許番号第8,435,528号およびその引用文献に記載の条件下で、常套のNHS法を用いてコンジュゲーションした。トラスツズマブ−化合物34 NHS複合体形成反応の生成物を、図3に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。
【0246】
トラスツズマブおよび化合物34を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションした。サンプルを、20時間反応後および40時間反応後に取り出した。トラスツズマブ−化合物34 選択的複合体形成反応の生成物を、図4に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。1抗体当たりにコンジュゲートした薬物の数(DAR)は、図4に示す通り、主として0、1および2であった。
【0247】
トラスツズマブおよび化合物67を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションした。トラスツズマブ−化合物67 選択的コンジュゲーション反応の生成物を、図5に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。
【0248】
トラスツズマブおよび化合物62を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションし、ここで、複合体形成反応に用いた化合物62とトラスツズマブの比は、1:4であった。トラスツズマブ−化合物62 選択的複合体形成反応の生成物を、図6に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。1抗体当たりにコンジュゲートした薬物の数(DAR)は、図6に示す通り、0(4%)、1(29%)および2(45%)であった。
【0249】
トラスツズマブおよび化合物62を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションし、ここで、複合体形成反応に用いた化合物62とトラスツズマブの比は、1:6であった。トラスツズマブ−化合物62 選択的複合体形成反応の生成物を、図7に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。1抗体当たりにコンジュゲートした薬物の数(DAR)は、図7に示す通り、0(3%)、1(26%)および2(47%)であった。
【0250】
トラスツズマブおよび化合物62を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションし、ここで、複合体形成反応に用いた化合物62とトラスツズマブの比は、1:7.5であった。トラスツズマブ−化合物62 選択的複合体形成反応の生成物を、図8に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。1抗体当たりにコンジュゲートした薬物の数(DAR)は、図8に示す通り、0(1%)、1(18%)および2(46%)であった。
【0251】
トラスツズマブおよび化合物49を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションした。トラスツズマブ−化合物49 選択的複合体形成反応の生成物を、図9に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。1抗体当たりにコンジュゲートした薬物の数(DAR)は、図9に示す通り、0(11%)、1(26%)および2(45%)であった。
【0252】
トラスツズマブおよび化合物73を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションした。トラスツズマブ−化合物73 選択的複合体形成反応の生成物を、図10に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。1抗体当たりにコンジュゲートした薬物の数(DAR)は、図10に示す通りである。
【0253】
トラスツズマブおよび化合物60を、常套のNHS法を用いてコンジュゲーションした。非選択的リンカーと複合体形成したトラスツズマブ−化合物60の生成物を、図11に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。図11に示す通り、非選択的リンカーを用いるとき、主なADCピークは観察されなかった。
【0254】
トラスツズマブおよび化合物60を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションした。最適リンカーと複合体形成したトラスツズマブ−化合物60の生成物を、図11に示す通り、HIC−HPLCを用いて分析した。図11に示す通り、最適リンカーを用いるとき、2つの主なADCピークが観察された。
【0255】
インビトロ細胞毒性実験
抗体−薬物複合体を細胞毒性について分析した。使用した細胞株は、SK−BR−3ヒト乳腺癌(HER2三重陽性)、HCC1954ヒト腺管癌(HER2三重陽性)、MCF7ヒト乳腺癌(HER2正常)、およびMDA−MB−468ヒト乳腺癌(HER2陰性)であった。これらの細胞はATCCから入手可能であった。SK−BR−3細胞を、10%ウシ胎児血清添加マッコイ5A培地(Caisson Labs, North Logan, UT)で増殖させた。HCC1954細胞を、10%ウシ胎児血清添加RPMI−1640培地(Caisson Labs, North Logan, UT)で増殖させた。MCF7細胞およびMDA−MB−468細胞を、10%ウシ胎児血清添加DMEM/F12培地(Caisson Labs, North Logan, UT)で増殖させた。SK−BR−3細胞、MCF7細胞およびMDA−MB−468細胞を、約7,500細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングし、HCC1954細胞を、約20,000細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングした。化合物または抗体−薬物複合体を同日にデュプリケートで添加した。72時間、37℃にてインキュベーション後、CellTiter-Glo(Promega, Madison, WI)を添加し、細胞生存能を、製造者のプロトコルに記載の通りに決定した。生存能パーセントは次の通りに決定した。
生存能%=デュプリケートの平均発光値(処理ウェル)/未処理ウェルの平均発光値
【0256】
トラスツズマブおよび化合物55を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションした。トラスツズマブ−化合物55 選択的複合体形成反応の生成物を、図12に示す通り、SK−BR−3細胞における細胞毒性について分析した。
【0257】
トラスツズマブおよび化合物61を、一般的複合体形成法IIの条件下、選択的複合体形成法を用いてコンジュゲーションした。トラスツズマブ−化合物61 選択的複合体形成反応の生成物を、図13に示す通り、SK−BR−3、HCC1954、MCF7、およびMDA−MB−468細胞における細胞毒性について分析した。
【0258】
図5について上記の通り、トラスツズマブおよび化合物67 選択的複合体形成の生成物を、図14に示す通り、SK−BR−3、HCC1954、MCF7、およびMDA−MB−468細胞における細胞毒性について分析した。
【0259】
図6について上記の通り、トラスツズマブおよび化合物62 選択的複合体形成の生成物を、図15に示す通り、SK−BR−3、HCC1954、MCF7、およびMDA−MB−468細胞における細胞毒性について分析した。
【0260】
図12について上記の通り、トラスツズマブおよび化合物55 選択的複合体形成の生成物を、図16に示す通り、SK−BR−3、HCC1954、MCF7、およびMDA−MB−468細胞における細胞毒性について分析した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]