(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の像が、前記試料塗布装置の像の第1像領域に位置付けられ、前記第2の像が、前記試料塗布装置の像の前記第1像領域とは異なる、第2像領域に位置付けられる請求項1記載の方法。
前記基板が、前記基板の直角な長エッジおよび短エッジによって形成される矩形表面を有し、前記方法は、前記矩形表面の長エッジに平行な方向で、前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、前記矩形表面上に複数の前記流体試料の列を供給することを含む請求項1記載の方法。
前記基板が、前記基板の直角な長エッジおよび短エッジによって形成される矩形表面を有し、前記方法は、前記矩形表面の短エッジと平行な方向で、前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、前記矩形表面上に複数の前記流体試料の列を供給することを含む請求項1記載の方法。
前記基板が、前記基板の直角な長エッジおよび短エッジによって形成される矩形表面を有し、前記方法は、前記矩形表面の長エッジおよび短エッジの両方に対して角度をなして、前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、前記矩形表面上に複数の前記流体試料の列を供給することを含む請求項1記載の方法。
前記基板上の前記血球の分布、および、前記基板上の前記血球の染色の均一性の、少なくとも1つに基づき、前記試料塗布装置を備える流体供給システムの動作パラメータを調整することをさらに含む請求項12記載の方法。
前記動作パラメータが、前記流体が前記試料塗布装置から供給される速度、および、前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動速度の、少なくとも1つを含む請求項13記載の方法。
前記流体試料が、複数の連続する列で前記基板上に供給され、前記動作パラメータが、隣接する流体列の間の間隔、および、前記流体列の長さ、の少なくとも1つを含む請求項13記載の方法。
前記一連のあらかじめ定められる動作パラメータが、前記試料塗布装置の目標高さ、前記流体試料が前記試料塗布装置から供給される速度、前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動速度、前記試料塗布装置によって前記基板上に供給される隣接する流体列間の間隔、前記試料塗布装置によって前記基板上に供給される流体列の長さ、前記流体試料の温度、および、前記流体供給システム内の相対湿度、からなる群から選択される少なくとも1つの要素を含む請求項20記載の方法。
前記電子プロセッサが、矩形表面の長エッジに平行な方向で、前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、前記基板の前記矩形表面上へ複数の前記流体試料の列を供給するように構成される請求項22記載のシステム。
前記電子プロセッサが、矩形表面の短エッジに平行な方向で、前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、前記基板の前記矩形表面上へ複数の前記流体試料の列を供給するように構成される請求項22記載のシステム。
前記電子プロセッサが、矩形表面の長エッジおよび短エッジの両方に対して角度をなして、前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、前記基板の前記矩形表面上へ複数の前記流体試料の列を供給するように構成される請求項22記載のシステム。
前記基板を支持するように構成されるステージをさらに含み、前記電子プロセッサは、前記ステージを動かすことによって前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動をもたらすように構成される請求項22記載のシステム。
前記基板上の前記流体試料から細胞の像を取得するように構成される第2検出器をさらに含み、前記電子プロセッサは、前記基板上の前記細胞の分布、および、前記基板上の前記細胞の染色の均一性の、少なくとも1つを判定するために、前記細胞の1つまたは2つ以上の像を分析するように構成される請求項22記載のシステム。
前記電子プロセッサが、前記基板上の血球の分布、および、前記基板上の血球の染色の均一性の、少なくとも1つに基づき、前記流体供給システムの動作パラメータを調整するように構成される請求項36記載のシステム。
前記動作パラメータが、前記流体試料が前記試料塗布装置から供給される速度、および、前記試料塗布装置と前記基板との間の相対的な移動速度の、少なくとも1つを含む請求項37記載のシステム。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示のシステムと方法は、試料塗布装置が顕微鏡スライドなどの基板上に液体試料を注意深く制御された方法で供給するのに用いられる自動試料調製の間に使用される。基板の全体にわたって比較的均一に分布した試料を得るために液体をうまく供給することは、ある程度、試料を受容する基板の表面に対して試料塗布装置の位置を制御することによる。試料塗布装置の正確な制御を実現するために、本明細書に開示された方法とシステムは、基板の表面から反射された像を含む塗布装置の1つまたは2つ以上の像に基づいて、基板の表面に対する試料塗布装置の位置を決めるように構成される。像は、基板の上方の試料塗布装置の直接の(例えば反射されていない)像に対応する直接像領域と、基板の表面から反射された試料塗布装置の像に対応する第1の反射像領域を含む。
【0007】
基板表面に対する塗布装置の位置は、直接像領域および第1の反射像領域における試料塗布装置のエッジ間の距離に基づいて決めることができる。その方法およびその方法を実行するシステムは、基板に対して複数の横方向の位置(transverse location)で試料塗布装置の位置を決めるために拡張され得る。基板表面に対する塗布装置の一連の適切な位置(例えば基板の角)を最初に決めることによって、塗布装置の所望の位置を作るための適切な制御信号が、基板表面上の他の位置で内挿され得る。この方法で、基板表面に対する試料塗布装置の位置の正確な制御が、液体試料を基板上に供給する間に実行され得る。
【0008】
概して、第1の態様において、本開示は、基板上に試料を調製する方法を特徴付け、これらの方法は以下を含む。(a)試料塗布装置に対応する直接像領域と、基板の表面から反射された試料塗布装置の像に対応する第1の反射像領域を含む、基板に近接した試料塗布装置の像を得る;(b)直接像領域における試料塗布装置のエッジの位置を判定する;(c)第1の反射像領域における反射された試料塗布装置のエッジの位置を判定する;(d)試料塗布装置のエッジと反射された試料塗布装置のエッジとの間の距離を判定する;(e)エッジ間の距離に基づいて、基板の表面に対する試料塗布装置の位置を判定する;(f)試料塗布装置を用いて基板上に試料を供給し、供給の間、基板に対する試料塗布装置の位置を維持する。
【0009】
これらの方法の実施形態は、以下の特徴の任意の1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0010】
これらの方法は、供給の間、基板に対して試料塗布装置を移動させることを含むことができる。試料塗布装置は、軸方向に沿って延びていてもよく、試料塗布装置の内面は、軸方向に対してある角度に傾斜されてもよい。試料塗布装置は、300ミクロン〜650ミクロンの内径を有するチャネルを含んでいてもよい。試料塗布装置は、中空の管状部材と、管状部材の外面に形成される被膜とを含んでいてもよい。試料塗布装置は針を含んでいてもよい。
【0011】
試料塗布装置は、試料が流れるチャネルを含んでいてもよく、チャネルは非円形の断面形状を有していてもよい。チャネルの断面形状は楕円形であってもよい。
【0012】
試料塗布装置は、供給の間、80mm/s〜90mm/sの間の速度で基板に対して移動され得る。試料は、0.05μL/s以上の速度で基板上に供給され得る。試料は、隣接する列のパターンで基板上に供給されてもよく、供給中の隣接する列の間の離間は、0.20mm〜0.60mmである。
【0013】
試料は血液を含んでいてもよく、基板は顕微鏡スライドであってもよい。
【0014】
方法の実施形態は、本明細書に開示される他の任意の特徴またはステップも、必要に応じてあらゆる組み合わせで含むことができる。
【0015】
別の態様において、本開示は、試料塗布装置および電子プロセッサを含むシステムを特徴とし、電子プロセッサは、上に開示した方法および/または本明細書の他の場所に開示する方法のいずれかを用いて、基板上に試料を供給するように構成される。システムの実施形態は、必要に応じて、本明細書に開示される特徴のいずれをもあらゆる組み合わせで含むことができる。
【0016】
さらなる態様において、本開示は、試料塗布装置の第1の像および試料塗布装置の第2の像を含む、基板に近接する試料塗布装置の像を取得すること、第1の像および第2の像の共通部分の間の距離に基づき、基板の表面に対する試料塗布装置の高さを判定すること、および、試料塗布装置を用いて基板上に流体試料を供給することを含み、供給することは、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動をもたらすために、試料塗布装置を移動させるか、基板を移動させるか、または試料塗布装置と基板の両方を移動させること、および、移動の間、基板の表面に対して、2ミクロンという目標高さ内に試料塗布装置を維持することを含んでいる、基板上に流体試料を供給する方法を特徴とする。
【0017】
これらの方法の実施形態は、以下の特徴の1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0018】
第1の像は、試料塗布装置の像の第1像領域に位置付けられ、第2の像は、試料塗布装置の像の第1像領域とは異なる、第2像領域に位置付けられ得る。第1の像は、試料塗布装置の直接の像であってもよく、第2の像は、基板の表面から反射した試料塗布装置の像であってもよい。
【0019】
基板の表面に対する試料塗布装置の高さを判定することは、第1の像において試料塗布装置のエッジの第1位置を判定すること、第2の像において対応する試料塗布装置のエッジの第2位置を判定すること、および、第1位置と第2位置との間の差に基づき、試料塗布装置の高さを判定することを含み得る。
【0020】
基板は顕微鏡スライドを含んでいてもよく、流体試料は血液であってもよい。
【0021】
基板は、基板の直角な長エッジおよび短エッジによって形成される矩形表面を有していてもよく、方法は、この矩形表面の長エッジと平行な方向で、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、矩形表面上に複数の流体試料の列を供給することを含むことできる。基板は、基板の直角な長エッジおよび短エッジによって形成される矩形表面を有していてもよく、方法は、矩形表面の短エッジと平行な方向で、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、矩形表面上に複数の流体試料の列を供給することを含むことができる。基板は、基板の直角な長エッジおよび短エッジによって形成される矩形表面を有していてもよく、方法は、矩形表面の長エッジおよび短エッジの両方に対してある角度をなす、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、矩形表面上に複数の流体試料の列を供給することを含むことができる。
【0022】
基板を移動させることは、試料塗布装置が固定された位置にある状態で、基板が取り付けられるステージを移動させることを含み得る。
【0023】
目標高さは、9ミクロン〜15ミクロンであってもよい。
【0024】
流体試料は血液を含んでいてもよい。方法は、流体試料の血球の像を基板上に取得し、基板上の血球の分布、および、基板上の血球の染色の均一性の、少なくとも1つを評価することを含み得る。方法は、基板上の血球の分布、および、基板上の血球の染色の均一性の、少なくとも1つに基づき、試料塗布装置を含む流体供給システムの動作パラメータを調整することを含み得る。動作パラメータは、流体試料が試料塗布装置から供給される速度、および、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動速度の、少なくとも1つを含み得る。流体試料は、複数の連続する列で基板上に供給されてもよく、動作パラメータは、隣接する流体列の間の間隔、および、流体列の長さの、少なくとも1つを含み得る。動作パラメータは、流体試料の温度、および、流体供給システム内の相対湿度の、少なくとも1つを含み得る。
【0025】
方法は、流体試料を供給するために、40mm/s〜90mm/sの、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動速度をもたらすことを含み得る。方法は、0.035μL/s〜0.075μL/sの速度で、試料塗布装置から流体試料を供給することを含み得る。方法は、複数の連続する列で基板上に流体試料を供給することを含んでいてもよく、隣接する列の間の間隔は、0.20mm〜0.60mmである。
【0026】
方法は、基板上に流体試料を供給する前に、試料の組成に関する情報を取得すること、その情報に基づき、一連のあらかじめ定められる動作パラメータを取得すること、および、あらかじめ定められる動作パラメータを適用して、試料塗布装置を備える流体供給システムを構成することを含み得る。一連のあらかじめ定められる動作パラメータは、試料塗布装置の目標高さ、流体試料が試料塗布装置から供給される速度、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動速度、試料塗布装置によって基板上に供給される隣接する流体列間の間隔、試料塗布装置によって基板上に供給される流体列の長さ、流体試料の温度、および、流体供給システム内の相対湿度、からなる群から選択される少なくとも1つの要素を含み得る。
【0027】
これらの方法の実施形態は、必要に応じて、本明細書に開示される他の特徴またはステップも、あらゆる組み合わせで含み得る。
【0028】
別の態様において、本開示は、試料塗布装置と、試料塗布装置の像を取得するように構成される検出器と、電子プロセッサとを含む、基板上に流体試料を供給するシステムを特徴とし、電子プロセッサは、試料塗布装置の第1の像および試料塗布装置の第2の像を含む、基板に近接する試料塗布装置の像を取得し、第1の像および第2の像の共通部分の間の距離に基づき、基板の表面に対する試料塗布装置の高さを判定し、試料塗布装置を用いて基板上に流体試料を供給するように構成され、供給することは、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動をもたらすために、試料塗布装置を移動させるか、基板を移動させるか、または試料塗布装置と基板の両方を移動させること、および、移動の間、基板の表面に対して、2ミクロンという目標高さ内に試料塗布装置を維持することを含んでいる。
【0029】
これらのシステムの実施形態は、以下の特徴の1つまたは2つ以上を含み得る。
【0030】
試料塗布装置は、軸方向に沿って延びていてもよく、試料塗布装置の内面は、軸方向に対してある角度に傾斜され得る。
【0031】
試料塗布装置は、内径が200ミクロン〜650ミクロンの内部流体搬送チャネルを含み得る。試料塗布装置は、内径に対する外径の比が1.5以下となるような外径を有し得る。
【0032】
試料塗布装置は、可撓性の中空の管状部材と、管状部材を取り囲む堅固な被覆とを含み得る。試料塗布装置は、非円形の断面形状を備える内部流体搬送チャネルを含み得る。流体搬送チャネルの断面形状は、楕円形であってもよい。試料塗布装置は、線形アレイで配置される複数の内部流体搬送チャネルを含み得る。
【0033】
第1の像は、試料塗布装置の直接像であってもよく、第2の像は、基板の表面から反射した試料塗布装置の像であってもよく、電子プロセッサは、第1の像において試料塗布装置のエッジの第1位置を判定し、第2の像において対応する試料塗布装置のエッジの第2位置を判定し、第1位置と第2位置との間の差に基づき試料塗布装置の高さを判定することによって、基板の表面に対する試料塗布装置の高さを判定するように構成され得る。
【0034】
電子プロセッサは、矩形表面の長エッジに平行な方向で、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、基板の矩形表面上へ複数の流体試料の列を供給するように構成され得る。電子プロセッサは、矩形表面の短エッジに平行な方向で、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、基板の矩形表面上へ複数の流体試料の列を供給するように構成され得る。電子プロセッサは、矩形表面の長エッジおよび短エッジの両方に対してある角度をなす、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動をもたらすことによって、基板の矩形表面上へ複数の流体試料の列を供給するように構成され得る。
【0035】
システムは、基板を支持するように構成されるステージを含んでいてもよく、電子プロセッサは、ステージを動かすことによって試料塗布装置と基板との間の相対的な移動をもたらすように構成される。
【0036】
目標高さは、9ミクロン〜15ミクロンの間であってもよい。
【0037】
システムは、基板上の流体試料から細胞の像を取得するように構成される第2検出器を含んでいてもよく、電子プロセッサは、基板上の細胞の分布、および、基板上の細胞の染色の均一性の、少なくとも1つを判定するために、細胞の1つまたは2つ以上の像を分析するように構成される。電子プロセッサは、基板上の細胞の分布、および、基板上の細胞の染色の均一性の、少なくとも1つに基づき、流体供給システムの動作パラメータを調整するように構成され得る。動作パラメータは、流体試料が試料塗布装置から供給される速度、および、試料塗布装置と基板との間の相対的な移動速度の、少なくとも1つを含み得る。電子プロセッサは、複数の連続する列で基板上に流体試料を供給するように構成されてもよく、動作パラメータは、隣接する流体列の間の間隔、および、流体列の長さ、の少なくとも1つを含み得る。動作パラメータは、流体試料の温度、および、流体供給システム内の相対湿度、の少なくとも1つを含み得る。
【0038】
これらのシステムの実施形態は、必要に応じて、本明細書に開示される特徴のいずれをもあらゆる組み合わせで含み得る。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「試料塗布装置」という語は、試料を基板上に供給する装置のことをいう。必ずではないが、通常は、試料塗布装置は流体試料を供給するための流体導管を含んでいる。試料塗布装置は例えば、ピペット、針、およびチューブを含むことができる。
【0040】
「試料」は、試料塗布装置によって基板の表面上に供給される溶液、懸濁液、液体、または他の種類の流体試料である。試料は、例えば血液などの生物学的標本であってもよい。
【0041】
「基板」は、試料をその上に供給することができる部材である。必ずではないが、通常は、基板は、試料塗布装置が試料をその上に供給できる平らな受容面を有する。基板の一例は顕微鏡スライド、または試料を支持できる任意の他の反射性材料である。
【0042】
基板の「上面」は、試料塗布装置に最も近い基板表面に相当する。基板の「下面」は、上面の反対側の基板表面に相当する。
【0043】
「直接像領域」は、試料塗布装置の直接の像を含む像の領域に相当する。直接の像は、基板の表面から反射されていない像である。「第1の反射像領域」は、通常、同じ像からの領域で、基板の表面(上面または下面)から反射された試料塗布装置の像を含む。「第2の反射像領域」もまた、通常、同じ像からの領域で、基板の表面から反射された試料塗布装置の像を含む。いくつかの実施形態において、第1および第2の反射像領域は、基板の異なる表面(例えば上面および下面のそれぞれ)から反射された試料塗布装置の像に相当する。
【0044】
「試料塗布装置のエッジ」は、直接像領域において他の特徴部から試料塗布装置を区別する、直接像領域における境界のことをいう。「反射された試料塗布装置のエッジ」は、第1の反射像領域において他の特徴部から試料塗布装置の反射像を区別する、第1の反射像領域における境界のことをいう。
【0045】
所定の像領域で、画素1および2のそれぞれの明度I(1)およびI(2)を比較すると、「明度変化」は、I(2)−I(1)に一致する。通常、ある像領域における試料塗布装置は、より明るい背景(例えば背景はより高い明度を有する)に対して暗い特徴部のように見える。したがって、明度変化は、画素2が背景の画素で、画素1が試料塗布装置に相当する場合、プラスになる。
【0046】
数量「コントラストレベル」は、1セットの画素における明度の変化度の尺度である。コントラストレベルは次にように算出することができる。まず、画素のセットからそのセットの画素の中で最高明度を有する第1の画素のサブセット、およびそのセットの画素の中で最低明度を有する第2のサブセットを選択する。次に、その2つのサブセットの平均明度の差を算出する。サブセットは一定数の画素でもよいし、画素セットの大きさに比例していてもよい(例えば、セット中の画素の1/5)。例えば、最高明度を有する画素のサブセットの平均明度は、ある像における特定の画素列のn個の最高画素明度の平均に一致し得る。最低明度を有する画素のサブセットの平均明度は、その特定の列のm個の最低画素明度の平均に一致し得る。nおよびmの値は、異なっていてもよいし同一であってもよい。例えば、nは10のうちのある値であってもよいし、1からその列の画素総数までの値で幅があってもよい。また、mは10のうちのある値であってもよいし、1からその列の画素総数までの値で幅があってもよい。通常、nおよびmの値は、選択される画素が第1のサブセットと第2のサブセットの両方に共通しないように、画素のセットに対して選択される。
【0047】
試料塗布装置の「高さ」は基板の上面と、上面に最も近い試料塗布装置の部分との最小距離のことをいう。基板表面に垂直な方向の延伸中心軸(例えば、ピペットまたはチューブ)を備える塗布装置に関しては、高さは中心軸に平行な方向に沿って測定される。延伸中心軸を有さない試料塗布装置や、中心軸が基板表面に垂直な方向ではない試料塗布装置に関しては、高さは、基板表面に垂直な面に平行の方向で測定される。
【0048】
基板に対する試料塗布装置の「位置」は、基板表面上の基準位置に対する基板の上面に平行な面における塗布装置の2次元変位に対応する。
【0049】
基板の「厚さ」は、上面と下面の間で、上面に垂直な方向に測定された基板の最大寸法に相当する。
【0050】
定義されない限りは、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載のものと同様または等しい方法および材料が、本発明の実施または検査において用いられ得るが、適切な方法および材料は以下に記載される。本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれている。争いがある場合、定義を含む本明細書が考慮される。また、材料、方法および実施例は例示的なものであって、限定を意図するものではない。
【0051】
1つまたは2つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および下記の記載に示される。他の特徴および利点が、記述、図面および請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0053】
様々な図面の同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【0054】
基板上の調製された試料から直接、正確に結果を定量化するために、配置された試料の成分、構成、および高さまたは厚さは、基板表面の全体にわたってできるだけ高度に均一であるべきであり、それによって、分析された試料のそれぞれのサブエリアは、総じて基板上で調製された試料の代表的なものであり、また試料が抽出された患者の代表的なものである。さらに、高度に一貫した、均一に調製された試料は、複数の患者における試料と分析結果を直接比較するための基準を与える。試料を一定の方法で調製することによって、自動的な方法が分析に使用することができ、著しく処理能力を向上させる。
【0055】
異なるさまざまな方法が、後続の分析のために試料を自動的に調製するのに使用され得る。均一性を向上させるために、液体試料(例えば液体、懸濁液、溶液、および例えば骨髄からの細胞、尿、膣組織、上皮組織、腫瘍、精液、唾、および他の体液などの、ヒトまたは動物の血液または体液と希釈液ありまたは希釈液なしの他の混合物)の既知量が、基板表面上の特定の位置で蓄積しない、または過度に薄く広げられないことを確実にするために(例えば、基板上に配置された試料の均一性をできるだけ厳密に実現するために)、制御された方法で、基板表面上に供給され得る。実施例として、以下の検討では顕微鏡スライド上での血液試料の分散および分析について言及する。しかしながら、本明細書で開示の方法とシステムは、さまざまな基板上に、上述のように、さまざまな液体試料の調製および分析に適用され得る。基板は、限定されるものではないが、ガラスまたはプラスチックの顕微鏡スライド、研磨されたまたは鏡面仕上げのセラミックスライド、研磨された金属基板、プラスチックまたは他の可撓性検体フィルム、および/または試料を支持できる任意の他の反射性材料を含むことができる。
【0056】
試料塗布システムおよび方法
本明細書で開示の方法およびシステムは、試料塗布装置を用いて顕微鏡スライドの表面上に既知量の血液を供給する自動試料調製システムとともに使用され得る。通常、塗布装置はスライドの表面に対して動き、スライドに対して動く間、血液の供給を続ける。血液は、試料塗布装置の移動に従ってさまざまなパターンで供給され得る。例えばいくつかの実施形態において、基板を支えるステージは、試料塗布装置の下で、スライドをラスターパターン(raster pattern)に移動させ、それによって基板表面上に連続的な血液の「塗布(painting)」列を作る。特定の実施形態において、塗布装置またはステージは、前の列の次に連続して塗布された列のそれぞれが、試料表面の全体にわたって反対方向で塗布されるように、スパイラルパターンまたは犂耕体パターン(boustrophedon pattern)で移動することできる。実施例として、以下の検討では基板表面上に犂耕体パターンで血液を供給することに言及する。しかしながら、より一般的には、本明細書に開示の方法およびシステムは、試料配置プロセスの間、試料塗布装置または基板を支えるステージのいずれかまたは両方が動くような、限定されるものではないが、ラスターパターンおよびスパイラルパターンを含むさまざまなパターンで液体を供給するのに適用することができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、血液が犂耕体パターンで供給されるとき、基板表面の上方の一定の高さに配置された試料塗布装置は、移動しながら一定量の血液を連続的に供給し、連続的な列を作って試料表面をさっと走る。血液の列が基板表面上で乾燥すると、血液の列は合体して血液の連続薄膜を形成する。薄膜の均一性は、血液の列が基板上に供給された方法に左右される。血液が供給される量および血液の連続的な列間の間隔または重なりは、血液の列が横方向に広がるまたは結合するとき、隣接する血液の列が、例えば厚さが1つの細胞分などのできるだけ均一に基板の全体にわたって細胞分配された薄膜を形成するように、選択される。理想的には薄膜内の細胞は、基板上にできるだけ密に、所望の厚さに配置され、同時に細胞間の一貫した間隔を維持し、隣接する細胞間の重なりまたは接触を最小限に抑える(例えば、基板の表面の全体にわたって均一に分配された細胞の1つの層は、各細胞が細胞の半分の厚さだけ隣接細胞から離れている)。
【0058】
薄膜全体の均一性に影響を及ぼす重要な要因の一つは、基板上に配置された血液の各列の幅の均一性である。通常、各列の幅の均一性が高いほど、基板上に形成される薄膜全体の均一性は高くなる。塗布装置が、塗布装置から供給される試料と連続する基板上の試料内の毛管力のために、表面に対して新たな位置に移動させられると、供給される血液のある列の幅は、基板の上面の上方の塗布装置の高さに関係する。基板の表面上に細胞の単層を有する均一な薄膜を実現するために、試料内の毛管力は、基板表面上に供給された列の広がりを引き起こす傾向にある分散力に対してバランスがとられる。これらの力がバランスをとることによって、隣接列が結合し、試料表面上に、細胞と他の試料成分が過度に薄くまたは過度に不規則に分散されない、均一な薄膜を形成する。
【0059】
基板の上方の塗布装置の高さを制御することによって、供給される血液の列の幅を制御することに加えて、液体試料の粘度や、塗布装置と基板が互いに対して移動する速度が、基板上に供給される血液の所定の列の幅に影響を及ぼす。一般に、表面の上方の塗布装置の高さが高いほど(例えば塗布装置と表面との隙間が大きいほど)、供給される列の幅は大きくなる。すなわち、血液がスライドの表面上に供給される量は、塗布装置と基板表面との間の領域の大きさに関係する。この領域の大きさの変化は、基板表面の上方の塗布装置の高さの変化に関係する。したがって、幅、高さ、細胞分布ができるだけ均一な列を供給するためには以下が重要である。(a)塗布装置が基板表面に対して位置を移動または動かされるとき、基板表面の上方の試料塗布装置の高さをできるだけ均一に維持する、(b)基板上に配置され、塗布装置の中の試料と連続する試料の中に存在する毛管力に負けない、またこれらの毛管力に過度に力を加えない量で試料を供給する。さらに、わずかに重複した(例えば試料塗布装置の直径の1/8、1/4、1/2、または1/3の重複)列を配置することは、基板上に配置された試料の全体的な均一性を向上させることができる。
【0060】
血液の粘度および表面張力がともに比較的高いため、供給される列の横方向の拡散量は、水または希釈液と混合された血液試料などのより低い表面張力を有する液体の列の場合と比べて少ない。したがって、粘度および表面張力は、血液の列間の間隔が確実に所望の全体的な被覆率を実現するのに適切であるように決め、また監視することができる。
【0061】
ガラス基板の表面上に600平方ミリメートルの面積を覆う血液の列を供給するのに使用される、外径約1500〜500ミクロンおよび内径約500〜100ミクロンを有する試料塗布装置(例えば外径約812ミクロンおよび内径約431ミクロンを有する試料塗布装置)に関して、基板(例えば顕微鏡スライド)の表面の上方の塗布装置の適切な高さは、約8〜20ミクロン(例えば10、12、14、16、または18ミクロン)であることが、入念な実験によって測定された。平均して、例えば、ガラス基板の表面の上方の試料塗布装置の高さは、約12ミクロンに維持することができる。この高さで、血液の列が確実に十分な均一性を持って供給されるためには、基板表面の上方の塗布装置の高さは2ミクロン以上変動すべきでない。
【0062】
さらに、通常の顕微鏡スライドは、スライドの上面と下面との間の厚さは、スライドによって25ミクロンのばらつきがありうることが観察されている。基板の厚さに関係なく、検査室の基準枠において塗布装置の位置が固定される場合、顕微鏡スライドの厚さを変えることによって、スライド上に配置された試料の一貫性または均一性が著しく変わり得る。基板の厚さが変わる場合、基板表面に垂直な軸に沿って固定された位置に塗布装置を保持することは、基板の厚さが変わることによって、塗布装置および基板が互いに対して動くとき、基板表面の上方の塗布装置の高さの変化につながり得る。さらに、顕微鏡スライドのような基板は、スライドの表面が平らで、名目上は塗布装置の中心軸に対して直角になるような方向に維持されるが、実際は、基板は、上面が塗布装置の中心軸に対していくらか角度をつけた向きとなる可能性があり、一定の塗布装置の高さに保つという作業をさらに困難にする。
【0063】
上記の制約がある場合、基板の上面の上方の試料塗布装置の高さを決めることができる方法とシステムは、自動化された方法が、基板表面の全体にわたって均一に分布された試料の中で分散された検体の一貫した量(例えば血液1マイクロリットル)に対応する血液試料を調製するのに使用できることを確実にするために重要である。さらに、塗布装置の高さの変化に対する比較的小さい公差のために、塗布装置の高さは、試料配置の間、または較正プロセス以外で、塗布装置が基板に物理的に接触しないように決定することが重要である。塗布装置と基板との制御されていない、または意図的でない物理的接触は、塗布装置先端に損傷を与える可能性があり、あるいは基板を元の位置から動かし、塗布装置位置の正確な判定を妨げる可能性がある。さらに、塗布装置先端が1滴の試料を含み、塗布装置が試料を基板上に配置する前にその1滴が基板に接触する場合、付加的な細胞が基板表面上に配置される可能性があり、それによって期待量の試料の定量的結果に誤った影響を及ぼす。
【0064】
本明細書で開示の方法およびシステムは、基板表面の上方の試料塗布装置の高さと基板の厚さの両方を測定するのに使用することができる。通常、高さ測定は、1つまたは2つ以上の基板表面の位置で行われる。それぞれの位置で、試料塗布装置は、基板表面に対して一連の変位を通してスキャンされる。それぞれの変位値で、基板表面の上方の塗布装置の高さが測定され、塗布装置の変位を制御する塗布装置マニピュレータの特定の設定と関連付けられる。それぞれの位置で、マニピュレータの設定は、基板表面の上方の塗布装置の目標高さ(例えば8、10、12、14、16、18、または20ミクロン)に対応するように決定される。この方法により、塗布装置の適切な位置は、基板表面上の複数の位置で測定される。それぞれの位置で、基板の厚さもまた、塗布装置の位置高さデータをさらに精緻化するために測定することができる。
【0065】
この情報が基板に対して測定された後、さらなる塗布装置の高さの測定をせずに、塗布装置は血液の列を供給することができる。実際には、塗布装置マニピュレータの適切な設定値を測定するのに使用される最初の一連の高さ測定値は、供給動作の較正データとして機能する。供給動作の前に較正することによって、血液が規則的に均一に供給されることを確実にするために、塗布装置の高さ測定を行うことなく、連続的な制御された塗布装置の高さ調整を可能にしながら、既知量の血液を連続的に供給することができ(例えば何列にも)、隣接する列が供給される前に、各列は同じ時間で乾燥することができる。この規則的で均一な列供給のパターンは、得られる血液試料が乾燥したときにできるだけ均一であることを確実にするのに役立つ。
【0066】
試料塗布装置高さ決定システムおよび方法
図1Aは、基板102の上面の上方に配置された試料塗布装置100を特徴とするシステム50の概略図を示す。試料塗布装置100は、流体試料104を基板102上に供給する。基板102は厚さtを有し、試料塗布装置100は、基板102の上面の上方の高さhに配置される。tとhの両方は、試料塗布装置100の中心軸108に平行の方向に沿って測定される。検出器106は、試料塗布装置100の中心軸108に対してある角度をなして伝わる試料塗布装置100および/または基板102からの光線110を検出するように配置される。試料塗布装置100はマニピュレータ150に機械的に接続され、基板102はステージ152に支持される。マニピュレータ150およびステージ152は、電子プロセッサ162を備える制御ユニット160に電気的に接続される(例えば有線で、または無線で)。
【0067】
図1Aにおいて、試料塗布装置100の中心軸108は、基板102の平面に対して名目上直角である。特定の実施形態において、試料塗布装置100の中心軸は、基板102の平面に対して直角でなくてもよい。
図1Bは、流体104を基板102の表面上に供給する試料塗布装置100の概略図を示す。
図1Bにおいて、基板102は試料塗布装置100の中心軸108に垂直の面に対して角度θに置かれる。角度θは、マニピュレータ150の座標系などの外部座標系における基板102の傾斜角に相当する。
図1Bにおいて、軸112は、試料塗布装置102がマニピュレータ150によって移動させられる方向に一致する。またマニピュレータ150は、
図1Bの面および軸112に直角の第2の軸に沿って試料塗布装置102を移動させることができる。基板102は、第2の軸に対して傾斜していなくてもよい(例えば
図1Aのように)。あるいは基板102は、第2の軸に対して傾斜させることができる。概して、第2の軸に対する傾斜角は、軸112に対する傾斜角と同じであってもよいし、あるいは異なってもよい。
【0068】
図2は
図1Aの実施形態の拡大図を示す。
図2において(
図1Aのように)、試料塗布装置100は、基板102の上面の上方の高さhに配置される。塗布装置100によって供給された流体104は、明確にするために
図2に示されていない。試料塗布装置100上の複数点から出る光線は、検出器106によって捉えられる。図面を参照すると、一連の光線は、試料塗布装置100の表面上の点100aから出ていることが示されている。光線110a、110b、および110cは、点100aから出て、検出器106によって直接検出される。これらの光線は、点100aの直接の(例えば反射されていない)像を形成する。検出器106上で形成される像において、光線110a〜cは、塗布装置100の直接の像に対応する直接像領域の一部を形成する。
【0069】
光線110d、110e、および110fもまた、点100aから出る。しかしながら、光線100d〜fは最初、基板102の上面102aに向かって下方向へ伝わる。上面102aにぶつかるとき、各光線100d〜fの一部が上面から検出器106の方へ反射される。反射された部分は光線110g、110h、および110iに対応する。これらの光線は、検出器106上で形成された像の第1の反射像領域における点100aの間接の(例えば反射された)像を形成する。
【0070】
図2における光線110d〜fの一部は、上面102aで反射するのではなく屈折する。このような屈折した光線は基板102の中を伝わり、基板102の下面102bから反射される。二度目に上面102aにぶつかるとき、光線は再び上面で屈折し、基板102から出て、光線110j、110k、110lとして検出器106の方へ伝わる。光線110j〜lは、検出器106上で形成された像の第2の反射像領域で、点100aの第2の間接の(例えば反射された)像を形成する。
【0071】
図3は検出器106上に形成された例示的な概略像300を示す。像300は試料塗布装置100の直接の像302、試料塗布装置100の第1の反射像304、および試料塗布装置100の第2の反射像306を含む。第1の反射像304は、基板102の上面102aから反射された光線によって形成される(例えば光線110g〜i)。第2の反射像306は、基板102の下面102bから反射された光線によって形成される(例えば光線110j〜l)。
【0072】
図2および
図3から明らかなように、検出器106上に形成された像の面において、光線110a〜cに対応する直接の像は、光線束110g〜iに対応する反射像から、量μhだけ横方向に変位されており、これは、基板102の表面102aの上方の試料塗布装置100の高さhに関連付けられる。試料塗布装置100が上面102aに近づくほど、試料塗布装置100の直接の像と反射像との間の変位μhは減少する。反対に、hが増加すると、像の変位μhも増加する。
【0073】
同様に、検出器106上の像の面において、光線110g〜iに対応する反射像は、光線110j〜lに対応する反射像から、量μtだけ横方向に変位されており、これは、基板102の厚さtに関連付けられる。より厚い基板(例えば、面102aと102bとの間の距離が大きい)では、変位μtも大きい。より薄い基板では、μtは減少される。
【0074】
したがって、検出器106によって捉えられた1つまたは2つ以上の像において、試料塗布装置100の直接の像と反射像との間の変位を判定することにより、基板102の上方の試料塗布装置の高さh、および基板102の厚さtが推測され得る。さらに、像の画素測定値を公知の直線変位を用いて較正することにより、高さおよび厚さの、画素ベースの測定値は、長さの単位(例えば、ミクロン)に変換され得る。
【0075】
基板102に対する試料塗布装置100の位置(例えば、基板102の上方の試料塗布装置の高さ)を判定するために、
図3の像302と304との間の変位μhが判定される。この距離の測定における第1のステップは、試料塗布装置100の直接の像302の先端位置(apex position)を判定することである。
図4は、試料塗布装置の直接の像の先端位置を判定するための一連のステップを含む、フローチャート400である。フローチャート400の第1のステップ402では、塗布装置の中心軸108に沿った明度勾配を計算するために用いられる画素のサブセットを選択するために、試料塗布装置100の直接の像が分析される。
図5Aは、試料塗布装置100の半分の像500を示す。半分の像に示す塗布装置の中心軸108は、像500の右端のエッジと一致している。
図5Aにおいて、画素縦列(column)502、504、506、508、510および512は、中心軸108と平行に延びる。したがって、これら画素縦列のそれぞれは、ステップ402においてさらなる分析のために選択される。
【0076】
次に、ステップ404において、ステップ402で識別された画素の、各サブセット(例えば、縦列)は、縦列に沿って明度勾配を計算することによって分離して分析される。特定の実施形態において、この勾配は、エッジ検出カーネル(例えば、[1、3、−3、−1]の4画素のカーネル)を用いて、画素縦列に沿って計算される。いくつかの実施形態において、この勾配は、縦列中の隣接する各画素の間の明度差を判定することよって計算され得る。任意の隣接する2つの画素1および2の間の明度変化ΔIは、ΔI=I(2)−I(1)のように計算され、式中、I(1)およびI(2)は、画素1および2それぞれの、測定された明度である。この工程は、
図5Bでは画素縦列506に関して図示されており、ここで明度変化は、左側の(縦)軸の縦列位置に対して、上側の(横)軸に沿ってプロットされている。例えば、縦軸に沿う最も上側のプロット点514は、縦列506中の、第1の画素516と第2の画素518との間の明度変化に対応している。点514の垂直座標は、画素間の分割線に対応しており、点514の水平座標は、画素間の、計算された明度変化に対応している。縦列506中の第2の画素518の明度は、第1の画素516の明度よりも大きい(例えば、第2の画素は第1の画素よりも明るく見える)ので、明度変化は正のものである。
図5Bから明らかなように、縦列506における最も大きな明度変化は、第4の画素520と第5の画素522との間で生じている。この明度変化は、
図5Bでは点524で表されている。
【0077】
図4に戻ると、ステップ406において、明度が最も変化する位置が、各画素縦列に関して判定される。各画素縦列に関して、明度が最も変化する位置を判定する工程は、一般に、ステップ404において列の隣接する画素間で計算された明度変化の値に対して、関数形式を当てはめることによって達成される。この工程は
図5Bに図示されており、曲線526は、計算された明度変化値のいくつかに当てはめられている。一般に、明度が最も変化する位置を判定するために、異なる様々な関数形式が用いられ得る。
図5Bにおいては、放物線の関数形式が、隣接する画素間の最大の明度変化(例えば、点524)、および最大値の両側で計算された明度変化値に当てはめられた。
図5Bに示すように、画素縦列506に関する明度が最も変化する位置は次に、当てはめられた放物曲線の頂点、点528として内挿された。
図5Bの例において、明度が最も変化する位置である、点528は、隣接する画素間の境界線のいずれかの位置と完全には一致していなかった。それよりもむしろ、明度が最も変化する位置は、画素520の範囲内にあった。
【0078】
各画素縦列に関して明度が最も変化する位置を判定するために、この工程は
図5A中の画素縦列のそれぞれに対して繰り返される。判定された最大値の位置は、
図5Aにおいて線530、532、534、536、538、および540として示されている。
図5Aおよび5Bを比較することによってわかるように、縦列506中の最大値の位置534は、
図5Bの点528の位置に対応している。
【0079】
図4に戻ると、ステップ406において、各画素縦列に関して明度が最も変化する位置が判定された後、試料塗布装置の先端位置は、ステップ408において判定される。一般に、試料塗布装置の先端位置は、最大の明度変化にほぼ対応しており、これは、
図5Aの像500の画素縦列のうち、暗いエッジ(すなわち、
図5Aに示される画素の、上部の水平列)から最も遠いものである。
図5Aを参照すると、試料塗布装置の像の、この暗いエッジは、試料塗布装置の本体に対応している一方で、明るいエッジは、基板102に最も近い塗布装置の端部に対応している。したがって、試料塗布装置100の先端位置、すなわち、試料塗布装置の反射像に最も近い、試料処理装置の直接の像は、画素縦列の全てから選択された、明度が最も変化する位置としておおよそ識別され、これは直接の像の明るいエッジに最も近い。
図5Aにおいて、画素縦列512の明度が最も変化する位置である、位置540は、像500の明るいエッジに最も近い(すなわち、
図5Aに示す、底辺の画素の水平列)。したがって、塗布装置の直接の像における、試料塗布装置の先端位置は、
図5Aにおいて点540としておおよそ識別される。
【0080】
いくつかの実施形態において、試料塗布装置の先端位置は、各画素縦列に関する明度が最も変化する位置に関数形式を当てはめることにより、さらに精緻化され得る。例えば、関数形式(例えば、放物線の関数形式)は、位置530、532、534、536、538、および540に当てはめられ、試料塗布装置の先端(apex)は、当てはめられた放物線形式の頂点(vertex)として判定され得る。
図5Aにおいて、位置530、532、534、536、538、および540に当てはめられた放物線は、位置540とほぼ一致する頂点を有する。より一般的には、しかしながら、当てはめられた関数形式は、例えば、撮像のアーチファクトや試料塗布装置100の形状の不均一性により、画素縦列に関する明度が最も変化する位置のいずれとも、完全には一致してはいない場合もある。
【0081】
放物線の関数形式は、通常、試料塗布装置に関する正確な先端位置を生じるということが経験的にわかっている。上述のように、塗布装置100の先端位置は、基板に最も近い、当てはめられた関数の最高点(例えば、放物線の頂点)として、直接の像から判定され得る。試料塗布装置に関する先端位置を判定するために、他の関数形式も用いられ得る。例えば、いくつかの実施形態においては、試料塗布装置の先端位置を判定するために、塗布装置のエッジ位置に楕円形の関数形式が当てはめられ得る。通常、塗布装置のエッジ外形は反射像において楕円形であることから、楕円形の関数形式は塗布装置のエッジに接近して一致する。
【0082】
上述の方法の少なくとも1つを用いて、直接の像中の試料塗布装置の先端位置を判定すると、
図4に示す工程はステップ410で終了する。
【0083】
基板102に対する試料塗布装置100の位置を判定する次の工程は、基板102の上面102aからの反射に対応する試料塗布装置100の像の先端位置を判定することである。
図6は、試料塗布装置の反射像の先端位置を判定するための、一連のステップを含んでいるフローチャート600を示す。フローチャート600の最初のステップ602は、基板102の上面102aからの反射に対応する試料塗布装置の像を識別することである。
【0084】
いくつかの実施形態では、試料塗布装置の直接の像の先端を特定するための、
図4に関してすでに開示した工程が、試料塗布装置の反射像の先端位置を判定するために用いられ得る。代替的に、特に試料塗布装置の反射像が直接の像ほど的を絞られていない場合には、先端位置を判定するために他の工程が用いられ得る。
図7Aは、検出器106によって捉えられた典型的な像700の概略図を示す。像700の直接像領域702は、試料塗布装置100の直接の像704を含んでいる。第1の反射像領域706は、試料塗布装置100の第1の反射像708を含んでいる。第2の反射像領域707は、試料塗布装置100の第2の反射像710(第1の反射像の一部に重なっている)を含んでいる。第1の反射像708は、上で説明したように、基板102の上面102aからの反射に対応している。
【0085】
図6に戻ると、フローチャート600の第2のステップ604は、反射像領域において、試料塗布装置100の中心軸108に垂直な方向に延びる画素列を識別することである。
図7Aにおいて、第1および第2の反射像領域の中心軸108は、像700の左側および右側のエッジに平行な方向に延びている。したがって、適切な画素列は、像700の上側および下側のエッジに平行な方向に延びている。
【0086】
試料塗布装置の反射像の先端位置を見つけるのに用いられる適切な画素列の識別は、特定の画素列を考慮から除外することも伴い得る。例えば、試料塗布装置の直接の像の先端位置である、点712は、フローチャート400に記載した工程を用いてすでに判定されている。したがって、像700に関して、点712よりも上方の画素列は、試料塗布装置の反射像はこれらの画素列には現れないことから、さらに考慮される必要がない。
【0087】
特定の実施形態において、画素列は、コンピュータの操作を加速するために短縮され得る。例えば、
図7Aを参照すると、試料塗布装置の直接の像のエッジ部分は、像704の分析から判定され得る。試料塗布装置の反射像708および710のエッジ部分は、直接の像704のエッジ部分とほぼ同じ位置にあると推測され得る。したがって、試料塗布装置の反射像の先端位置を見つけるのに用いられる画素列は、
図7Aのエッジ境界714および716を用いることにより短縮され得る。さらにエッジ境界は、第1の反射像領域から他の基板特徴部(例えば、彩色ロゴ、標本フレーム、基準マーク)を除外するために選択され得る。エッジ境界714および716は、
図7Aに示すように中心軸108に対して傾斜されていてもよいし、中心軸108と平行であってもよい。エッジ境界の中心軸108に対する角度は、5°以上(例えば、10°以上、15°以上、20°以上、25°以上、30°以上、40°以上、50°以上)であってもよい。
【0088】
再び
図6に戻ると、適切な画素列がステップ604で識別された後(これは、識別された列を短縮することも含み得る)、各画素列に対するコントラストレベルがステップ606において判定される。コントラストレベルは様々な方法で判定され得る。以下の記載は、この計算を行うための特定の一連のステップを示すが、各画素列に対する明度の変動を測定するためには、他の方法も用いられ得るということが理解されるべきである。
【0089】
特定の実施形態において、特定の画素列に関するコントラストレベルを判定する第1のステップは、所定の列内で最も明るい(例えば、最も明度の高い)画素のサブセットに関する、平均明度を判定することを含んでいる。画素列に関して、最も高い明度値を有する画素のサブセットに関する平均明度を判定することは、列内のn個の明度が最も大きい画素を判定することを伴う。nの値は、1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、8以上、10以上、15以上、20以上、30以上)であってもよいし、nは列内の合計画素数の分数(例えば、1/4以下、1/5以下、1/6以下、1/7以下)として表現されてもよい。通常、nの値は、最も明度の高い画素のサブセットが、試料塗布装置の反射像708に対応している画素を含まないように選択される。
【0090】
画素列に関するコントラストレベルを判定する次のステップは、列内の最も暗い(例えば、最も明度の低い)画素のサブセットに関する、平均明度を判定することである。列内の最も暗い画素に関する平均明度は、列内のm個の明度が最も小さい画素の平均として計算され得る。mの値は1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、8以上、10以上、15以上、20以上、30以上)であってもよいし、mは列内の合計画素数の分数(例えば、1/4以下、1/5以下、1/6以下、1/7以下)として表現されてもよい。通常、mの値は、最も明度の低い画素のサブセットが、像の背景部分に対応する画素を含まないように(すなわち、試料塗布装置の反射像708を含まないように)選択される。
【0091】
最後に、画素列に関するコントラストレベルは、列の最も明度が高い画素のサブセットに関する平均明度と、列の最も明度が低い画素のサブセットに関する平均明度との差として計算される。上記の工程は、ステップ604で識別された画素列のそれぞれに対して繰り返すことができるので、各画素列は関連したコントラストレベルを有する。
【0092】
次に、ステップ608において、試料塗布装置100の反射像の先端位置は、画素列のそれぞれの間のコントラストレベル値における変化に基づいて、判定され得る。
図7Bは、
図7Aの像700に関して、画素列(左側の縦軸上)の関数としてプロットされたコントラストレベル(上側の横軸上)を示す。試料塗布装置の反射像の先端位置の判定は、試料塗布装置の像に対応していない画素列では、コントラストレベルが比較的小さく、試料塗布装置の像に対応している画素列では、コントラストレベルが相当に大きいという観察に基づいている。例えば、
図7Aにおいて、画素列718は試料塗布装置の第1の反射像708に対応していないので、結果として、列718におけるコントラストレベルは、
図7Bの点722で示すように、小さい。一方で、画素列720は第1の反射像708に対応しているので、列720におけるコントラストレベルは、
図7Bの点724で示すように、列718よりも大きい。
【0093】
図7Bにおいて、画素列を関数としてコントラストレベルをプロットすることにより、反射像に対応していない画素列、第1の反射像708に対応している画素列、および第1および第2の反射像708、710の組み合わせに対応している画素列は、画素列の間のコントラストレベルの変化に基づいて識別され得る。
図7Aおよび7Bに示すように、
図7Aの第1の反射像領域において、塗布装置の端部は、第1の反射像領域706における画素列の間の最も大きなコントラストレベルの変化に対応しており、これは
図7Bでは点726として示されている。ステップ608で判定された試料塗布装置の第1の反射像708の先端位置を用いて、フローチャート600の工程はステップ610でその後終了する。以下に記載するように、
図7Bで点728として示す、試料塗布装置の第2の反射像710の先端位置を判定するために、同様の工程が繰り返され得る。
【0094】
塗布装置の高さの判定
直接の像704、および上述のような基板の上面からの第1の反射像708の先端位置を判定すると、基板102に対する試料塗布装置100の高さは、先端位置の間の離間hを計算することによって判定され得る。
図7Cは、直接の像の先端位置である、点712と、第1の反射像の先端位置である、点726とが判定されている、概略的な代表像を示す。像間の離間μhは、先端位置間の差から、簡単な方法で(像画素単位で)計算され得る。要望に応じて、離間μhは、すでに判定されている較正情報に基づき、長さ単位(例えば、ミクロン)へと変換され得る。
【0095】
較正−一般的な考察
ステージまたは塗布装置の既知の位置に基づく、試料塗布装置と基板の上面との間の既知の離間(ミクロンなどの長さ単位)を、反射像領域における、塗布装置と基板の上面との間の画素の離間距離に関連付けることにより、較正情報が定められ得る。その後、この較正情報は、所望の画素の離間をもたらすステージまたは塗布装置の所望の位置を見つけるために、画素の離間およびステージまたは塗布装置の位置を内挿するために用いることができ、また、ステージまたは塗布装置の位置は、塗布装置とスライドの上面との間の所望の離間を達成するために、較正された離間距離に基づいてオフセットされていてもよい。代替的には、制御ユニット160が、(a)検出器106が基板を含む試料塗布装置の像を取得すると、マニピュレータ150またはステージ152の位置をインスタンスに関連付け、(b)関連付けられたマニピュレータまたはステージの位置を、試料塗布装置と基板との間の所望の離間へと外挿できる。
【0096】
表面接触検出の較正
試料塗布装置の直接の像と反射像との間の離間μhの測定値を、基板102の表面の上方の試料塗布装置の高さhの測定値に変換できるように、本明細書に開示されるシステムを較正する目的で様々な方法が用いられ得る。このような方法の1つを以下に記載するが、較正のためには他の方法も用いられるということが理解されるべきである。
【0097】
いくつかの実施形態では、試料塗布装置の位置を制御するために用いられるアクチュエータ(例えば、マニピュレータ150および/またはステージ152に存在し、制御ユニット160によって制御されるアクチュエータ)は、Dover社(マサチューセッツ州、ウェストボロー)から市販されているような、線形クロス・ローラ・ベアリングやエアベアリングの線形アクチュエータなどの、ねじ駆動でない線形アクチュエータを含むことができ、モータ、ベアリングおよびエンコーダは直接接触していない。このようなアクチュエータは、適切な制御信号が伝達されると、軸に沿った動作を可能にすることに加えて、動作方向に沿う力の生成および測定も可能にする。このようなアクチュエータが本明細書に開示されるシステムにおいて用いられる場合、較正情報の取得は、通常、第1の「デジタル/アナログ変換機(「DAC」)較正」ステップと、第2の「塗布装置の配置」ステップとに分離された2ステップ工程にしたがって生じる。
【0098】
DAC較正ステップにおいて、試料塗布装置がスライドの表面と接触していない状態で、通常アクチュエータを駆動するサーボループが終了され、アクチュエータの増幅器は、一定のDACオフセット制御信号を用いてすぐに再び有効にされる。このDAC制御信号は、アクチュエータの「上側」方向(例えば、塗布装置の中心軸108と平行であって、基板102の表面から離れている)への動作を開始させるために、制御ユニット160からマニピュレータ150によってアクチュエータへと伝達される。結果として、アクチュエータおよび試料塗布装置は、一定のDACオフセット制御信号によって、一緒に上側へと駆動される。一定のDACオフセット制御信号により、アクチュエータおよび試料塗布装置を設定期間の間移動させた後、アクチュエータの位置が測定される。より小さいDACオフセット制御信号を用いて較正ルーチンが再び開始し、これは、設定期間中のアクチュエータの動作が、下側方向における所定の閾値条件を通過するまで、繰り返し続けられる。この閾値を満たすDACオフセット制御信号値が記憶される。記憶されたDACオフセット制御信号は、アクティブなサーボループなしに印加されると、重力がアクチュエータにかろうじて打ち勝つような、充分な上向きの力を作り出す。
【0099】
DACオフセット制御信号が較正されると、アクチュエータは、基板の表面の上方であると知られている位置まで、試料塗布装置を移動させる。重大な追従誤差の閾値は、サーボループ追従誤差が重大な追従誤差を超えるとサーボループが終了するように定められる(例えば、システムオペレータによる入力、記憶媒体からの取り出し、またはソフトウェアまたはハードウェアへのハード・コード化)。アクチュエータおよび試料塗布装置は、サーボループの制御の下で、基板の表面に向かってゆっくりと変位される一方で、制御ユニット160によりサーボループ追従誤差が測定される。試料塗布装置が基板の表面に物理接触し、下側に駆動し続けると、サーボループ追従誤差が増大し、すぐに重大な追従誤差を超えるので、サーボループは終了される。制御ユニット160はその後、アクチュエータの増幅器を再び有効にし、較正されたDACオフセット制御信号を作動させる。
【0100】
この、較正の第2段階の結果、試料塗布装置は、基板の表面上にほぼ無重力で載るようになる。アクチュエータが所定位置に落ち着くまで、所定期間の間待機した後、制御ユニット160はアクチュエータの位置を読み取り、任意には、その位置を位置単位(例えば、ミクロン)に変換する。この値は基板の表面位置(例えば、h=0の位置)として記憶される。試料塗布装置はその後、基板の表面の上方の位置へと移動され、その位置(例えば、アクチュエータのエンコーダから読み取ることによって測定される)は、上述の画素の離間に関連付けられ得る。
【0101】
正確な較正情報を作り出すために、このような測定は所望の回数だけ繰り返され得る。このような方法で作り出された較正情報は、500nmを超えるところまで再現でき、試料塗布装置と基板との間の接触は、1ミクロン以下の検出を基板に取り入れる。較正のために空気ベアリングのアクチュエータを用いる、付加的な特徴および態様は、例えば、Drives & Controlsに公開された(2002年3月)、Kevin McCarthy氏による、「Force Generation and Measurement(力の生成および測定)」と題された文書に開示されており、これは「http://www.dovermotion.com/WhitePapersPage.aspx」で、Dover Motionからインターネット上で入手でき、この文書の内容は全て、参照により本明細書に組み込まれている。さらに、表面接触検出の較正技術を実施するために、マニピュレータ150またはステージ152と一緒にサーボモータを用いることができるが、他の種類のモータ(例えば、ステッピング・モータ)もこの技術を達成するために用いられ得る。
【0102】
例として、上述の表面接触検出の較正工程は、自動の試料調製システムの初期化で実施されてもよいし、このようなシステムの通常動作またはメンテナンスの間に所定回数実施されてもよいし、または、基板上の調製試料の品質に関するシステムエラーメッセージを受信したとき(例えば、低倍率または高倍率の撮像ステーションが、試料中の1つまたは2つ以上の成分を正確に識別または計数できないなど)に実施されてもよい。
【0103】
基板の厚さの判定
本明細書に開示される方法およびシステムは、透明な基板の上面および下面から反射した像の先端位置を比較することにより、基板、例えば顕微鏡スライドの厚さを判定するために用いられ得る。
【0104】
上述の、フローチャート600に開示される工程は、基板102の下面102bから反射した試料塗布装置の像(すなわち、第2の反射像領域707の第2の反射像710)の、先端位置を判定するためにも用いられ得る。
図7Bに示すように、例えば、反射像に対応していない画素列と、第1の反射像708に対応している画素列とに関して、コントラストレベルに重大な差があるのと同様に、第1の反射像708および第2の反射像710の重複部分に対応する画素列と、第1の反射像708にのみ対応している画素列とに関しても、通常、コントラストレベルに重大な差がある。第2の反射像710に関する先端位置は、
図7Bおよび7Cにおいて、点728として示されている。
【0105】
図7Cに関して、基板102の厚さの判断の指標とするために、先端位置726および728の間の離間であるμtが計算され得る。離間μhに関して上述したように、
図7Cの像から画素単位で判定されるμtの値は、適切な較正情報を用いて線形単位に変換でき、この較正情報は、上述の工程と同様の方法で、または、既知の厚さを有する基板を用いて一連の較正ランを行い、μtの測定値と対応する既知の厚さtとの較正表を作ることを含む、様々な別の方法で取得され得る。本明細書に開示するシステムの、次の操作において、μtの測定値に対応する厚さtは、較正表の値から内挿され得る。
【0106】
所望の試料分配を供給するための、適切な塗布装置の高さの選択
上述の記載において、試料塗布装置100は、基板102の上面102aの上方の一定の高さhに配置されている一方で、離間μhは、
図7Cに示すような像から判定される。試料塗布装置100は、試料マニピュレータ100の移動を制御するマニピュレータに、3つの座標寸法で機械接続され得る。
図1Aに示す実施形態において、例えば、試料塗布装置100は、マニピュレータ150に接続されている。マニピュレータ150に関連するのは、軸に対応する座標系であって、この軸に沿って試料塗布装置100が移動され得る。例えば、試料塗布装置100は、基板102の上面102aの上方の試料塗布装置の高さhを変更するために、試料塗布装置100の中心軸108と平行に延びる、マニピュレータ150のz座標方向に沿って移動され得る。さらに、試料塗布装置100は、それぞれがz座標方向と垂直である、x座標方向およびy座標方向に沿って移動され得る。x座標方向およびy座標方向は、それぞれ、中心軸108と垂直に配向される面と平行である。基板102の傾斜角度θがゼロである場合、x座標方向およびy座標方向も基板102によって形成された面と平行である。試料塗布装置100をx座標方向およびy座標方向の一方または両方に移動させると、試料塗布装置は基板102に対して新しい位置へと配置されるが、基板102に対する試料塗布装置100の高さhは変わらない。
【0107】
代替的には、いくつかの実施形態においては、基板102を、試料塗布装置102に対してx、yおよびz座標方向に移動させるために、ステージ152が用いられ得る。さらに、特定の実施形態においては、試料塗布装置100を基板102に対して移動させるために、ステージ152およびマニピュレータ150の両方を用いることもでき、この場合x、yおよびz座標方向への動作は、ステージ152とマニピュレータ150との間で割り当てられている。以下の開示においては、マニピュレータ150を介した、試料塗布装置の高さの調整が記載されている。しかしながら、開示される方法は、ステージ152のみを用いた試料塗布装置100の高さの調整や、ステージ152のマニピュレータ150との併用によっても、実施され得るということが理解されるべきである。
【0108】
離間μhを判定するための、上述の方法において、試料塗布装置100は、基板102に対して一定の高さおよび一定の位置の両方を維持している。しかしながら、上述のように、入念な実験により、特定の基板上に特定の流体を供給するための、適切な高さが判定されている。特に、血液を顕微鏡スライド上に供給して、ほぼ細胞1個分の厚さのフィルムを形成するためには、試料塗布装置100はスライドの表面から、上方に約12ミクロンの高さで維持されるべきであるということが分かっている。この高さの値は、特定の試料供給速度(例えば、基板102に対する試料塗布装置100の移動速度)および特定の試料粘度に関して定められている。より一般的には、血液を顕微鏡スライド上に供給する場合、試料塗布装置100は、スライドの表面から、上方に8ミクロン〜20ミクロンの高さ(例えば、約8ミクロン、約10ミクロン、約12ミクロン、約14ミクロンの高さ)で維持されるべきである。
【0109】
一般に、以下の要因は、均等な供給で基板上に試料を均一に供給する能力に影響を与えるので、基板の表面の上方にある試料塗布装置の適切な高さにも影響を及ぼす。
(1)塗布装置から供給される試料の流量は、試料供給期間中に供給されるべき試料の所望の体積と等しくなるはずである。
(2)基板に対する試料塗布装置の移動速度が上昇するのに比例して、基板の上方の塗布装置の高さは減少するはずである(比例関係は線形でなくてもよいが、塗布装置の高さは、細胞に損傷を引き起こすような、最小の高さを下回って減少するべきではない)。
(3)試料が基板上に配置されるときの、試料フローにおける中断や「裂け目」を防ぐために、基板上に供給される試料の表面張力に対して、試料粘度が上昇するにつれて、基板の表面の上方の塗布装置の高さは減少するはずである。
(4)塗布装置の下の、基板上に供給されている試料の体積を一定に維持するために、基板の湿潤性が上昇するにつれて、基板の上方の試料塗布装置の高さが減少するはずである。
(5)塗布装置の下の、基板上に供給されている試料の体積を一定に維持するために、試料塗布装置の内径が上昇するにつれて、基板の上方の塗布装置の高さが減少する(ただし、細胞に損傷を引き起こすような、最小の高さを下回ることはない)はずである。
(6)試料塗布装置の外径に対する、試料塗布装置の内径の比は、塗布装置内および塗布装置と基板との間に印加されるせん断力(例えば、塗布装置上のペンダントドロップ内および試料配置中の基板の接触)が基板の形態を変形させないことを確実にするように選択されるべき(この比が上昇するにつれて、基板表面上に試料を供給するときに細胞に印加されるせん断は少なくなる)である。
【0110】
いくつかの実施形態において、流体104が後に基板上へ供給されるときに、試料塗布装置100が基板102の上方の適切な高さに配置されていることを確実にするために、試料塗布装置100は、基板102に対して特定の位置(例えば、マニピュレータの座標系における、特定のxおよびy座標位置)で維持され、基板102の上方の試料塗布装置100の高さは、変更される(例えば、試料塗布装置100は、マニピュレータ150の座標系における、z座標方向に沿って移動される)。マニピュレータの新たな高さ設定値のそれぞれでは、離間μhを判定するために、フローチャート400および600に開示した上述のステップが繰り返される。
【0111】
次に、測定された像の離間μhを、基板102の上方の試料塗布装置100の実際の高さh、および/または、マニピュレータ150の特定の制御の設定に関連付ける、較正情報を用いて、基板102に対する試料塗布装置100の特定の位置で、所望の目標の塗布装置の高さに対応する試料塗布装置の高さを生じさせるために、マニピュレータ用の適切な制御の設定が選択される。
【0112】
この工程は、
図8に関して図示され、
図8は、マニピュレータ150(またはステージ152)の制御の設定V
iを、一連の測定された像の離間μhに関連付ける、較正曲線800を示している。
図8に示す点を作り出すために、試料塗布装置100は、制御ユニット160を用いてマニピュレータ150(またはステージ152)に6つの異なる制御の設定を用いることよって、基板102の上面102aの上方の、異なる6つの一連の高さに配置された。試料塗布装置100の、基板102に対するx−y面での位置は、異なる高さのそれぞれ(z軸に沿っている)について同一であった。異なる高さのそれぞれにおいて、像は、試料塗布装置100の直接の像と試料塗布装置100の反射像の両方を示す、検出器106によって取得された。直接の像と反射像との間の離間μhが判定された。測定された6つの像の離間μh
1〜μh
6は、試料塗布装置100を6つの異なる高さに配置するためにマニピュレータ150(またはステージ152)に用いられた6つの異なる制御の設定V
1〜V
6の関数として、
図8の縦軸にプロットされている。
【0113】
すでに定められている較正情報から、目標の離間μh
tは、試料塗布装置100の基板102の上方の所望の目標の高さh
tに対応していることが知られている。例えば、血液試料を顕微鏡スライド上に供給するためには、上述の較正ステップが、基板102の表面の上方の目標の試料塗布装置の高さh
t(例えば、12ミクロン)がマニピュレータ150(またはステージ152)の特定のz座標位置に対応していることを判定している。
図8に示すように、目標の離間μh
tは、測定された離間μh
3およびμh
4の間にあり、これはそれぞれ、マニピュレータ(またはステージ)の制御の設定V
3およびV
4に対応している。
【0114】
目標の試料塗布装置の高さh
t(例えば、12ミクロン)を生じるマニピュレータ(またはステージ)の制御の設定を判定するために、測定点(V、μh)の間への内挿が用いられ得る。特に、点(V
3、μh
3)および(V
4、μh
4)の間の内挿は、目標の離間μh
tを生じる制御の設定V
1を判定するために用いられ得る。目標の離間μh
tは目標の塗布装置の高さh
tに対応しているので、マニピュレータ150(またはステージ152)に用いられる制御の設定V
1は、所望の目標の試料塗布装置の高さh
tを生じる。
【0115】
目標の制御の設定V
1を判定するために、
図8においては、合計で6つの異なるマニピュレータ(またはステージ)の設定値が用いられたが、より一般的には、あらゆる数のマニピュレータ(またはステージ)の高さ設定値が用いられ得る。例えば、試料塗布装置の高さ設定値の数(これは、マニピュレータまたはステージの制御の設定の数と同じである)は、2以上(例えば、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、15以上、20以上)であってもよい。
【0116】
基板102に対する試料塗布装置100の特定の位置に関して、本明細書に開示する工程は、試料塗布装置100がその位置で基板102の上面102aの上方の所望の高さに配置されていることを確実にする、マニピュレータ(またはステージ)の制御の設定V
1を生じる。
図9に示すように、上述の工程は、試料塗布装置100の、基板102に対する複数の異なる位置902、904、906、および908に対して繰り返され得る。各位置において、基板102の上方の試料塗布装置の高さは、マニピュレータ(またはステージ)に異なる制御の設定を用いることによって、マニピュレータのz座標軸に沿ってマニピュレータ150(またはステージ152)を移動させることによって変更され得る。異なる高さでの、測定された像の離間μhは、試料塗布装置100がその位置で基板102の上方の所望の高さに配置されていることを確実にする、マニピュレータ(またはステージ)の目標の制御の設定V
1を判定するために用いられ得る。
【0117】
適切な制御の設定は、基板102に対する試料塗布装置100の任意の数の位置で定められ得る。
図9において、適切な制御の設定は、4つの異なる位置で定められている。より一般的には、しかしながら、位置の数は1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、15以上、20以上、または30以上)である。
【0118】
一定の位置の数で、適切な制御の設定が定められた後、適切な制御の設定は、例えば内挿法を用いることにより、他の位置で推測され得る。例えば、
図9を参照すると、適切な制御の設定V
1は、位置902および904で定められている。基板102の上方の、例えば10ミクロンの試料塗布装置の高さを生じさせる、適切な制御の設定V
1は、位置902および904で定められた制御の設定の間で内挿することによって、位置903で推測され得る。
【0119】
基板102の厚さも、フローチャート600に関連して上述したステップを用いて、位置902、904、906、および908の全てで測定され得る。特に、試料塗布装置100の2つの反射像の間の離間μtは、各位置で一度だけ判定されていればよく、また、試料塗布装置100はマニピュレータ150(またはステージ152)のz座標軸に沿って移動されることから、この離間は変わることはない。したがって、μtは単一の高さで判定され得る。像の離間μtは、要望に応じて、較正情報を用いて線形単位(例えば、ミクロン)で測定された厚さtを生じるように変換されてもよい。
【0120】
試料塗布装置100の、基板102に対する特定の位置で定められた、マニピュレータ(またはステージ)に関する適切な制御の設定を用いて、マニピュレータ150(またはステージ152)は、試料塗布装置100が基板102に対する所望の位置に配置されるように、また、基板の上面の上方の試料塗布装置の高さが所望の値に維持されるように、配置され得る。ゆえに、流体104は、基板102の上方のほぼ一定の高さから供給でき、供給される流体の列は、可能な限りほぼ均一になっていることを確実にする。このようにして、製造される試料は、例えば手動の方法を用いて製造された試料よりも均一性が高い。
【0121】
基板の向きの判定
いくつかの実施形態においては、基板102の向きが判定され得る。
図1Bを参照すると、基板102の向きを判定することは、基板102によって画定される面と、試料塗布装置100の中心軸108に直角な面との間の、傾斜角度θを判定することを含み得る。また、基板102の向きを判定することは、マニピュレータ150(またはステージ152)の(x、y)座標面における位置を関数として、基板102の上面102aを説明する等式f(x、y)に関連付けられるパラメータを判定することを含み得る。一般に、面の向きは、面上の3点が既知である場合に判定され得る。したがって、記憶される制御の設定の数(これは通常、制御の設定が定められた、基板102に対する試料塗布装置100の異なる位置の数に対応している)が3つ以上である場合は、表面102aを説明する面の等式は、記憶された制御の設定から直接判定され得る。いくつかの実施形態においては、記憶された制御の設定はまず、較正情報を用いて線形単位(例えば、ミクロン)で表現される変位値に変換され、その後、この変位値を用いて表面102aの面の等式の係数が判定され得る。ステージ152によって支持される基板102の面の傾斜の結果、基板の表面102aの垂直座標(マニピュレータ150またはステージ152の座標系)は、基板の反対側の端部における(x、y)位置の間の、30ミクロンと同程度だけ変化し得る。表面102aを描く面の等式も、例えば、表面102aの傾斜角度を判定するために用いられ得る。また、4つ以上の記憶されている制御の設定を用いて、曲線表面を説明するより複雑な等式f(x、y)を制御の設定の値に当てはめることにより、わずかに湾曲した基板などの、表面が平面でない基板を追跡することが可能である。表面を描くか、または表面に関連する面の等式を判定するための方法は、2011年2月1日に出願された、同時係属の米国特許出願第13/019,118号明細書に見られ、この出願の内容は全て、参照により本明細書に組み込まれている。
【0122】
流体供給−他の考察
基板表面上に供給された、均一で高品質の試料の層を作り出すには、一般には、基板の表面の上方の試料塗布装置の高さが重要な考察事項となる。適切な高さ(例えば、12ミクロン)を選択し、流体列が基板上に供給される間、その高さを可能な限り一定に維持することは、通常は、均一で再現可能な試料が取得されることを確実にする際に重大な要因となる。本明細書に開示する方法およびシステムは、試料塗布装置の高さが正確に判定され、供給の間可能な限り一定に維持され得ることを確実にするように構成される。
【0123】
より一般的には、しかしながら、流体供給から取得される試料の均一性および品質の判定において、様々な相互に関連する要因が役割を果たしている。これらの要因が及ぼす影響は、細胞を含む流体を基板上に配置する間に起こる様々な物理現象に関連付けられる。
【0124】
このような、流体配置中に起こる物理現象の1つは、塗布装置100の先端内での渦形成である。
図11は、基板102の表面上に流体104を供給する試料塗布装置100の概略図を示す。流体104は通常、矢印2002の方向へと下方に流れ、塗布装置100を通って基板102上へ流れる。しかしながら、流体供給中および塗布装置100内では、流体が矢印2004によって示す方向へと再循環し、塗布装置100内に流体の渦を形成することが発見されている。渦形成は、通常、流体が塗布装置100を通って流れて基板102の表面に接触するときに、流体104に印加される様々な摩擦力により生じる。
【0125】
渦形成は、基板102上への均一な流体配置に対して、多数の障害を示す。例えば、列内の流体の供給は渦の中の再循環によって影響されるので、塗布装置100を通して供給される流体の列は不均一となり得る。さらに、血小板などの特定の種類の細胞は、渦内に捉えられ得るので、基板102上へのこれらの細胞の不均一な配置をもたらす。極端な例では、異なる種類の細胞がさまざまな程度で渦内に捉えられ得るので、基板102の表面での供給流体における細胞の分布は、もはやバルク流体内の分布を反映していないおそれがある。
【0126】
さらに、血小板などの細胞は、渦内の再循環によっても動かされ、このような動きは血小板の凝固をもたらし、これは基板102の表面上での血小板の均一な分散を妨げる。動かされた血小板は、通常はばらばらに染色され、動かされていない血小板と比較すると試料像中のコントラストがより低く、像において位置を特定したり他の試料成分と区別したりすることが困難となる。
【0127】
調製試料の品質に影響し得る別の現象は、流体供給の間に起こるせん断応力である。試料塗布装置100が、
図11の矢印2006によって示す方向に沿って基板102に対して移動すると、せん断応力は、試料塗布装置100の前方エッジ2008および後方エッジ2010の下の流体に加えられる。一般に、せん断力は、後方エッジ2010でのせん断力と比較すると、前方エッジ2008での方が大きい。流体供給の継続時間が長くなるほど、流体中のより多くの細胞がせん断力の影響を受ける。一般に、せん断力を受けた細胞は変形し、これら細胞の形態は永久に変更され得る。せん断力が充分に強い場合、細胞は断裂され得る。細胞の形態に対する永久的な変化は、どの程度細胞像から有用な診断情報および定量的計量が抽出され得るかに影響を与え得る。またせん断力は、血小板などの特定の種類の細胞を動かす場合もあり、上述のように、動かされた血小板はばらばらに染色され、動かされていない血小板と比較すると試料像中のコントラストがより低く、像中での位置特定がより困難となる。
【0128】
調製試料の品質に影響し得るさらなる現象は、細胞が基板102上への供給前に試料塗布装置においてどの程度凝集するかである。赤血球は、もともと互いに対する親和性が弱く、赤血球濃度が高い流体では、濃度が薄い流体よりも凝集の程度が高い傾向にある。結果として、赤血球のクラスタ化および積層は、基板102上に供給される流体の最初の数列の方が、後の列よりも程度が大きく、これは後の列は細胞数がより少ない流体から供給されるからである。結果として、赤血球の積層は、調製試料の一部において他の部分よりも頻度が高く、これは信頼性のある定量分析結果を得ることをより困難にする。
【0129】
調製試料の品質に影響し得るさらに別の現象は、供給される流体の列が、隣接する列が供給される前にどの程度乾燥するかである。赤血球は本来、細胞像において容易に視覚可能な陥凹した中央淡明を有する。赤血球が基板上で適切な速度で乾燥する場合、この形態は分析のために保たれる。しかしながら、赤血球の乾燥が遅すぎる場合、陥凹した中央淡明が失われるなど、その本来の形状から変形し得る。変形した細胞は、いわゆる「標的赤血球(target cell)」の形成を含む、様々な異なる形状をとり得る。標的赤血球は、細胞の形状、特に中央淡明の部分の形状が変更された赤血球であるので、撮像されると、異なる厚さの同心領域が観察され、細胞に「標的」が現れる。これらの形状は、変更されていない試料の赤血球の本来の形状は反映しない。このようにして、標的赤血球の情報は、試料から信頼性の高い定量情報を抽出することを困難にする。さらに、特定の病状は必然的に標的赤血球の情報をもたらし、このような細胞の観察はこれらの病状に対する重要な診断マーカーとなり得るが、これは標的赤血球の情報が試料調製の副産物でない場合に限る。
【0130】
配置される流体の乾燥速度は、流体の相対湿度、温度および組成などの要因によって影響される。これらの要因のいくつかは、流体配置の間制御され得る。さらに、流体配置の速度や連続する列の間の重複などの他の要因は、配置される流体の列が、次の列が基板の表面に加えられる前にどの程度乾燥するかを調節するために制御され得る。流体配置の重要な側面は、連続する列の付加の間の、「湿潤したエッジ」の維持である。すなわち、配置される最初の列が、次の列が配置される前にあまりに長い間乾燥される場合、流体列は適切に混合せず、基板の表面上への細胞の均一な分布を形成しない。かわりに、配置される列のエッジは、これらの領域における細胞の蓄積により、中央淡明よりも暗く見え得る。さらに、列のエッジに近い細胞は、溶血を経るか、および/または、その本来の形状(例えば、陥凹した中央淡明)を失う場合があるので、乾燥した細胞の形状は、もはやその変更されていない状態の細胞を示すものではない。
【0131】
上記の要因の影響は、塗布装置の高さを一定に維持することと組み合わせて、流体供給工程および試料塗布装置の特徴に関連する様々なパラメータを制御することによって軽減され得る。上述のように、重要なパラメータは、基板表面の上方の試料塗布装置の高さであり、これは本明細書に開示される方法およびシステムを用いて、正確に判定および維持され得る。
【0132】
例えば、方法およびシステムは、試料塗布装置が流体供給の間、基板表面の上方約12ミクロン(例えば、9〜15ミクロン、10〜13ミクロン、11〜14ミクロン、12〜15ミクロン)の高さで維持されることを可能にする。
【0133】
さらに、方法およびシステムは、試料塗布装置の高さが、比較的狭い範囲内に維持されることを可能にし、すなわち、方法およびシステムは充分に正確であるので、塗布装置が基板に対して移動されるときに、塗布装置の高さには比較的小さい偏差が生じるのみである。通常、流体配置の間、目標の塗布装置の高さが設定または決定され(例えば、12ミクロンの目標の塗布装置の高さ)、流体配置の間、塗布装置は目標高さを中心とする高さの範囲内に維持される。いくつかの実施形態では、例えば塗布装置は、基板の表面に対して、塗布装置の目標高さから2ミクロン以内(例えば、1.7ミクロン以内、1.5ミクロン以内、1.3ミクロン以内、1.0ミクロン以内、0.8ミクロン以内、0.6ミクロン以内、0.4ミクロン以内、0.2ミクロン以内)に維持される。
【0134】
調製試料の品質に影響を及ぼすために制御または調節され得る他の特徴およびパラメータは、以下に記載される。
【0135】
流体供給のためのパラメータの組み合わせの選択は、比較的短い処理時間で高品質の試料を生じるために、システム動作の様々な態様の均衡を反映する。様々な現象および要因が試料の全体的な品質に影響するので、特定のパラメータの組み合わせを決定することは、単にこれらパラメータを一度に1つずつ最適化すること以上のことを伴う。それとは反対に、充分に高品質な試料を達成するために、異なるパラメータ範囲の組み合わせが決定され、その後流体配置に用いられる。選択されたパラメータの組み合わせは、配置工程は、単に流体を基板表面に付加すること以上のことを伴うという事実を考慮に入れる。付加される流体は血球の担体として作用し、用いられるパラメータの組み合わせは、細胞の分布が均一で、細胞が可能な限りその本来の形状を維持している試料を生成するのに充分であるべきである。このように、パラメータの組み合わせの決定は、単に細胞を含んでいない流体の配置を最適化するために必要な工程よりも複雑な工程である。
【0136】
(i)塗布装置の壁の形状
いくつかの実施形態において、塗布装置の壁の断面形状は、供給中に流体の細胞に印加されるせん断力の量を制御するのを補助するように変更され得る。例えば、いくつかの実施形態において、塗布装置の壁は、せん断力が流体に印加される距離(例えば、壁の厚さ)を減少するように傾斜され得る。壁の傾斜は、細胞が供給の間せん断力に付される時間量を減少させるが、傾斜した壁は印加されるせん断力の大きさを増大させる。ゆえに、傾斜の形状は、印加されるせん断力の時間および大きさの両方が、流体中の赤血球を永久的に損傷させるには不充分であることを確実にするよう選択され得る。
【0137】
一般に、塗布装置の壁の厚さは、細胞に印加されるせん断力を減少し(例えば、壁の厚さが薄いほどせん断力を減少する)、塗布装置に構造的安定性を提供する(例えば、壁の厚さが厚いほど安定性を強化する)ように選択される。いくつかの実施形態において、例えば塗布装置の壁の厚さは、30ミクロン〜300ミクロン(例えば、40ミクロン〜200ミクロン、50ミクロン〜175ミクロン、60ミクロン〜150ミクロン、70ミクロン〜125ミクロン)であってもよい。
【0138】
(ii)試料塗布装置の寸法および材料
試料塗布装置100の内面の粗さは、基板102上に供給される流体中に存在する細胞を損傷するおそれがある。表面の粗さの影響を軽減するために、様々な方法が用いられ得る。いくつかの実施形態では、塗布装置100の内径が充分に大きい場合、あらゆる表面欠陥を滑らかにするために、例えばシリコンビーズを含むスラリーが塗布装置100に送り込まれ得る。
【0139】
通常、試料塗布装置100は、金属やプラスチックなどの押出材から形成される。特定の実施形態では、滑らかな内面は、押出により非常に滑らかな内面を形成するガラスなどの材料から塗布装置100を組み立てることによって得ることができる。いくつかの実施形態では、塗布装置100は押出金属材料で形成されるシャフトと、滑らかな押出内面を備えるガラスなどの材料で形成される同心端とを含み得る。このような塗布装置は、金属製の塗布装置を用いることにより生じる利点のほとんどを有する(例えば、安価な組立)と同時に、ガラスの先端によってもたらされる、滑らかな内面という利点も受ける。
【0140】
また、試料塗布装置の内径は、上述の現象のいくつかを軽減するようにも選択され得る。例えば、内径が200ミクロン以上650ミクロン以下(例えば、200ミクロン〜300ミクロン、200ミクロン〜400ミクロン、300ミクロン〜400ミクロン、400ミクロン〜650ミクロン、500ミクロン〜650ミクロン)の試料塗布装置を用いることにより、流体が供給されるときの塗布装置内の細胞の圧迫(pinching)は減少され得る。圧迫は、細胞の形態の永久的な変形をもたらすおそれがある。
【0141】
特定の実施形態では、試料塗布装置の内径(「ID」)に対する外径(「OD」)の比は、流体供給中のせん断力を減少させるように制御される。一般に、IDに対するODの比が小さいほど、塗布装置の断面積は小さくなるので、細胞に印加されるせん断力の大きさも小さくなる。例えば、せん断力を許容可能な限度内に維持するために、OD/ID比は1.5以下(例えば、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下)の大きさを有し得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、流体供給中のせん断力を減少させるために、試料塗布装置100はその外面および/または内面に、塗膜を含み得る。適切な塗膜は、テフロン(登録商標)、セラミックおよび金属などの材料で形成され得る。
【0143】
特定の実施形態では、試料塗布装置100の形状は、塗布装置が基板102の表面に対して移動されるときの、渦形成および/またはせん断応力を減少させるように選択され得る。一般に、塗布装置の内径が小さいほど渦の大きさを減少できるので、試料が基板上に供給されるときに試料に印加されるせん断力を減少させる。
図12Aは、塗布装置の先端がショルダ付きまたは段のある外形を備える試料塗布装置100の断面図である。流体は、ショルダに隣接する狭い円形開口2050を通して供給される。入念な実験により、
図12Aに示す実施例のような塗布装置100の実施形態では、同じ内径および外径を有するがショルダ付きまたは段のある塗布装置先端を有さない塗布装置を用いて調製された試料と比べて、調製試料の品質が向上していることがわかった。
【0144】
図12Bは、基板上に流体を供給する楕円形の開口2100を備える試料塗布装置100の端面図を示す概略図である。楕円形の開口の短い方の寸法dは、移動方向と平行に向けられる。いくつかの実施形態において、短い方の寸法dは、例えば、少なくとも200ミクロン(例えば、少なくとも250ミクロン、少なくとも300ミクロン、少なくとも400ミクロン、少なくとも500ミクロン)であってもよい。
【0145】
(iii)試料塗布装置の容積
いくつかの実施形態では、試料塗布装置100を通り基板102上へと移動する流体フローを始動させ、維持するために、シリンジポンプが用いられる。一般に、様々な異なる種類のシリンジポンプが用いられ得る。例えば、流体フローを調節するために、1つまたは2つ以上のステッパモータに基づくポンプが用いられ得る。しかしながら、特定の容積容量を備えるステッパモータに基づくポンプが、ポンプの容量よりも顕著に少ない流体体積を供給するために用いられる場合、ポンプ内で駆動されるピストンの変位における不均一性が比較的小さいものであっても、基板102上に供給される流体の体積を不均一にするおそれがある。このような影響を軽減するために、流体を供給するためには容積容量が小さいポンプが用いられ得る。例えば、基板上に0.8μL〜1.2μLの流体を供給するためには、12.5μLのポンプは、通常、25μLのポンプよりも高品質の試料を生成する。
【0146】
(iv)試料塗布装置の移動速度
上述のように、赤血球は大量に存在する場合には凝固する傾向があり、供給される流体の最初の数列において、後に供給される列よりも積層がより蔓延し、これは基板の表面上の赤血球の分布を不均一にする。細胞の積層を軽減するためには、基板の表面に対して移動される試料塗布装置の速度が増大され得る。一般に、試料塗布装置は、様々な技術を用いて基板の表面に対して移動され得る。例えば、いくつかの実施形態では、試料塗布装置が実質的に固定された位置にある状態で、基板を支持するステージ152が移動される。特定の実施形態では、ステージ152に取り付けられる基板が実質的に固定された位置にある状態で、マニピュレータ150が塗布装置を移動させる。いくつかの実施形態では、塗布装置および基板の両方が、マニピュレータ150およびステージ152のそれぞれによって移動される。上記技術の各々が、基板の表面に対する試料塗布装置の移動をもたらす。さらに、本明細書に特に開示しない限りは、塗布装置を「移動させること」への言及は、基板に対する塗布装置の相対的な移動を示し、これは基板が実質的に固定された位置にある状態で塗布装置を移動させること、塗布装置が実質的に固定された位置にある状態で基板を移動させること、ならびに塗布装置および基板の両方を移動させることによって実施され得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、塗布装置100と基板102との間の相対的な移動速度は、調製試料における赤血球の積層を顕著に減少または除外するために、40mm/s〜90mm/s(例えば、50mm/s〜80mm/s、60mm/s〜70mm/s)であってもよい。
【0148】
(v)流体供給速度
上述のように、赤血球が基板102の表面上に供給された後に乾燥する速度が遅すぎる場合、標的赤血球が形成される。標的赤血球の形成、および赤血球の中央淡明の形状の損失を減少または除外するために、細胞の乾燥速度は、塗布装置100を通る流体の供給速度を調節することによって制御され得る。供給速度を適切な高い値に調節することは、細胞の積層の防止も補助する。いくつかの実施形態では、例えば、塗布装置100を通した流体供給速度は、調製試料における標的赤血球の形成および細胞の積層を減少させるために、0.020μL/s以上(例えば、0.030μL/s以上、0.035μL/s以上、0.040μL/s以上、0.050μL/s以上、0.060μL/s以上、0.070μL/s以上、0.075μL/s以上、0.080μL/s以上、0.090μL/s以上、0.100μL/s以上)であってもよい。特定の実施形態では、上に開示した範囲内にある流体供給速度の範囲が用いられ得る。例えば、塗布装置100を通した流体供給速度は、0.035μL/s〜0.075μL/sであってもよい。
【0149】
より一般的には、流体供給速度および塗布装置の相対的な移動速度は、充分な品質の試料を生成するために、互いに対して整合される。塗布装置が、流体供給速度に対して速すぎる速度で基板表面に対して移動される場合、流体は塗布装置から「引かれ」、これは基板表面上での細胞の不均一な分布および細胞の本来の形状の損失(例えば、淡明の損失)をもたらすことが発見されている。反対に、塗布装置が、流体供給速度に対して遅すぎる速度で移動される場合、流体は塗布装置の先端近くでたまり、これも不均一な細胞分布をもたらす。したがって、細胞が均一に配置されること、細胞がその本来の形状を維持すること、および全体的な配置工程が適切な短い処理時間内に行われることを確実にするために、塗布装置の移動速度および流体供給速度は組み合わせて選択される。
【0150】
(vi)隣接する列の離間
列の離間を調節すること(例えば、隣接する列の流体の供給の間の、試料塗布装置100の変位を制御することによって)は、調製試料の品質に影響するいくつかの現象を補うために用いられ得る。一般に、隣接する列が重複する量が増加するにつれて、基板102上に供給される層の均一性は高くなる。しかしながら、重複の量が増加すると、配置された細胞が基板102上で乾燥するのにより長い時間がかかり、これは形状の変形(例えば、中央淡明の損失、および/または、標的赤血球の形成)をもたらし得る。一般に、このような要因を補うために、0.20mm〜0.60mm(例えば、0.25mm〜0.55mm、0.30mm〜0.40mm)の列の離間が用いられ得る。
【0151】
流体は粘度が異なり、血液などの特定の種類の流体の異なる試料であっても、粘度は異なる。列の離間を調節することは、このような試料間の変動を補い得る。一般に、試料の粘度が増加すると、非重複領域よりも細胞濃度が顕著に高い重複領域の形成を回避するために、隣接する列の離間が増加される(例えば、隣接する列の間の重複する程度が減少される)。粘度の高い流体は、粘度の低い溶液ほどは自由に流れないので、基板102上の細胞の不均一な分布は、粘度の低い溶液ほどには容易に分散しない。血液試料に関しては一般に、約0.4mmの列離間が、互いに対して流れるが触れるだけの列を生成し、高度に均一な試料を生成することが観察されている。
【0152】
また、供給される流体の粘度は、単一の基板上への配置の間に変化し得ることが観察されているので、最初の数列の粘度は、供給される最後の数列の粘度と異なる。例えば、供給される最後の数列では粘度が低く、これらは一緒に流れて、最初の数列よりも大きな範囲で重複する。この変動を補うために、隣接する列の間の離間は、単一の基板上への流体の供給中に調整され得る。例えば、隣接する列の間の離間は、流体の供給の間増加され得るので、粘度に差があったとしても、隣接する列の間の重複量は、およそ同一のままである。この離間は、連続する列の間で直線的に調整されてもよい。代替的には、この離間は直線的でない方法で調整されてもよい(例えば、指数関数にしたがって)。
【0153】
いくつかの実施形態では、隣接する流体の列の間の離間を制御するために、試料塗布装置100は複数の流体フローチャネルを含み得る。
図13は、4つの流体フローチャネル2202、2204、2206および2208を含む試料塗布装置100の断面図である。流体は、チャネルのそれぞれを通って基板102の表面上へと流れる。
図13では4つのチャネルが示されているが、より一般的には、試料塗布装置100は任意の数のチャネル(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、50以上)を含むことができる。特定の実施形態では、試料塗布装置100は充分な数のチャネルを含んでいてもよいので、基板全体を被覆するのに充分な流体が、一度の通過で配置され得る。流体を基板上に一度の通過で配置することにより、上述の要因のいくつか(例えば、標的赤血球の形成および細胞の積層)は大幅に軽減され得る。
【0154】
(vii)列の長さ
配置される列の長さも、細胞が基板の表面に均一な方法で供給されることを確実にするために調整され得る。詳細には、流体の列は順次的な重複パターンで配置されるので、列の長さを調整することにより、連続する列の供給の間の一時的な遅延が制御され得る。上に説明したように、連続する列の間の遅延は、特定の列が、重複する列が配置される前にどの程度乾燥するかに影響を及ぼす。
【0155】
基板上への流体の列の供給の間、「湿潤したエッジ」を維持することは、試料が均一であることを確実にする流体配置工程の重要な側面である。「湿潤したエッジ」とは、基板表面上へ現在供給されている流体の列に最も近い、すでに供給されている列のエッジのことをいう。「湿潤した」エッジの維持とは、現在の列に最も近いすでに供給されている列のエッジが、現在の列が配置される前に完全には乾燥せず、それゆえ現在供給されている列と一緒に流れるので、列が互いに対して接触するように、システムの特性を調整することをいう。前の列が完全には乾燥していないことを確実にすることにより、前の列および現在の列からの流体は、現在の列が配置されるときに一緒に流れることができ、試料が続いて乾燥されるときに、基板表面上のより均一な細胞の分布をもたらす。
【0156】
より一般的には、「湿潤したエッジ」を維持することは、各流体列が、後続の流体列が供給される前に一定の長さの時間だけ乾燥することを確実にするため、また、連続して供給される列が一緒に流れて互いに接触し、基板表面上の細胞の分布が、流体供給が完了し流体が乾燥すると、基板表面上で比較的均一になることを確実にするために、流体配置システムの特性を調整することをいう。「湿潤したエッジ」を維持することは、配置される細胞がその形状を保ち均一に分布することを確実にするための重要な側面であるので、列の長さの調整は、生成される試料の品質に直接的に影響を及ぼすために用いられ得る。
【0157】
通常、列の長さは、供給される流体の列が基板表面上で利用可能な領域の一定の割合を占めるように調整される。いくつかの実施形態では、例えば、基板表面の形状が矩形であり、供給される流体の列は、矩形表面の長寸法の60%以上(例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上)に沿って延びる。さらに、本明細書に開示されるシステムは、供給の間、列の長さを調整するように構成され得るので、全ての列が同じ長さというわけではない。例えば、列の長さは、流体の組成、温度、および/または、流体配置中の湿度の変動を考慮して変更され得る。
【0158】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるシステムは、基板表面上の異なる方向に沿って流体の列を供給するように構成され得る。例えば、矩形表面を備える基板上の列の長さを短くするために、流体の列は、矩形表面の短寸法に平行な方向に塗布装置を移動させることによって配置され得る。より一般には、流体の列は、基板表面の面に対してあらゆる方向に塗布装置を移動させることによって配置され得る。ゆえに、例えば、長さに関して矩形の基板表面の短寸法と長寸法との中間である流体の列を供給するためには、流体の列は、両方の表面エッジに対してある角度をなして供給でき、その角度は、連続する列の間の時間遅延を調整するように選択され得る。
【0159】
入念な実験を通して、矩形表面の短寸法と平行な方向に塗布装置を移動させる場合、特定の列の長さが、流体配置の間「湿潤したエッジ」を維持し、また配置された流体および細胞を乾燥させるために特に有利な条件を提供することが発見されている。詳細には、高品質の試料(例えば、細胞が均一に配置され、細胞の形態が保持される試料)は、供給される流体の列が、基板の矩形表面の短寸法の80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上)に沿って延びる場合に得られる。
【0160】
(viii)湿度および温度
相対湿度および温度の両方は、流体が塗布装置から供給されるときに、細胞が基板表面上に配置される際の品質に影響する。一般に、供給される流体が乾燥する速度は、相対湿度および温度の両方に影響される。相対湿度が高く、および/または、温度が低い環境では、供給される流体の乾燥は遅い。反対に、相対湿度が低く、および/または、温度が高い場合には、供給される流体の乾燥は早い。したがって、相対湿度および/または温度を制御することにより、供給される流体の列が基板表面上で乾燥する速度を制御する別の(補助的な)技術をもたらし、これは後に、どの程度均一な細胞の分布が基板表面に付加されるか、および、付加される細胞の形状が分析のためにどの程度保たれるかに影響を及ぼす。
【0161】
再び
図11を参照すると、いくつかの実施形態では、システムは、温度センサ2012および湿度センサ2014の一方または両方を含み得る。センサ2012および2014は、センサ2012および2014から温度および湿度の測定値を受け取り、温度および/または湿度の影響を軽減するためにシステムのパラメータ(例えば、流体供給速度、塗布装置の移動速度、隣接する列の離間、列の長さ)を調整するように構成される、制御ユニット160に接続され得る。
【0162】
また、いくつかの実施形態では、制御ユニット160は、システム全体の温度および/または相対湿度を制御するように構成され得る。例えば、高品質の試料が取得されることを確実にするために、流体の列が供給される温度は、約15℃〜約27℃の範囲内に維持され得る。
【0163】
別の例としては、高品質の試料が取得されることを確実にするために、流体の列が供給されるとき(すなわち、流体配置システム内)の相対湿度は、約40%〜約60%の範囲内に維持され得る。
【0164】
(ix)流体供給パラメータの選択
上述のように、塗布装置の高さ、流体供給速度、塗布装置の相対的な移動速度、隣接する列の離間、列の長さ、温度、および湿度を含む、様々な異なる動作パラメータが、基板表面上の細胞分布の品質(例えば、均一性)に影響を及ぼし、また、配置される細胞がどの程度までその本来の形状を保持するかに影響を及ぼす。本明細書に開示されるシステムは、高品質の試料が取得されることを確実にするために、これらパラメータの組み合わせを自動的に選択または決定し得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、システムは、特定の試料の種類または環境条件に特異な、所定の「プロファイル」を含んでいる。これらのプロファイルは、特定の試料または環境条件のためのシステムを構成するために用いられる、あらかじめ定められた一連のパラメータを含んでいる。例えば、システムは異なる湿度レベルに対するプロファイルを含むことができ、制御ユニット160は、相対湿度の測定値(例えば、センサ2014による)に基づき、特定の構成プロファイルを選択および適用するように構成され得る。別の例としては、システムは異なる温度に対するプロファイルを含むことができ、制御ユニット160は、センサ2012による温度の測定値に基づき、特定の構成プロファイルを選択および適用するように構成され得る。
【0166】
特定の構成プロファイルは、システムオペレータからのフィードバックに基づいて適用されてもよい。例えば、システムオペレータは、供給されている流体の性質に関する情報(例えば、全血、細胞などの血液成分の懸濁液、および/または、別の体液)を提供でき、制御ユニット160は、その流体に対してあらかじめ定められた構成プロファイルを適用するよう構成され得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるシステムは、配置により調製される試料の品質を向上させるために、上記のパラメータの1つまたは2つ以上を自動的に調整するように構成され得る。上述のように、適切でないパラメータの組み合わせが用いられると、配置される細胞は基板表面上で均質的に分布されない。また、このような細胞は均一に染色されないことも観察されている。結果として、細胞の分布、および/または、染色の均一性、および/または、細胞の形態、の測定は、システムの動作パラメータの調整を導くために用いられ得る。
【0168】
図14は、本明細書に開示されるシステムの1つまたは2つ以上の動作パラメータを調整するための、一連のステップを示すフローチャート2300である。ステップ2302では、動作パラメータの初期のセットが選択される(例えば、保管されている構成ファイルから、および/または、システムオペレータの入力に基づいて)。次に、ステップ2304では、流体の列は、ステップ2302で選択された動作パラメータ(例えば、塗布装置の高さ、流体供給速度、塗布装置の相対的な移動速度、隣接する列の離間、列の長さ、温度、および湿度)にしたがって基板の表面に配置される。その後、ステップ2306では、基板の表面上の供給された流体の列は、例えば、列の乾燥、1つまたは2つ以上の染色液、定着液、洗浄液の付加、および/または、他の処置によって処理され、検査のための調製試料を生成する。
【0169】
ステップ2308では、1つまたは2つ以上の試料の像を取得するために、調製試料が調べられる(通常は、比較的低い倍率で)。本明細書に開示される撮像検出器はいずれも、このような像を取得するために用いることができ、基板表面上の、細胞分布の均質性、および/または、染色の均一性を評価するために、像はその後ステップ2310において分析される(例えば、制御ユニット160によって)。分布または均一性を定量化するために、測定基準が計算され得る。例えば、基板上の試料の一部分にわたる(または基板上の試料全体にわたる)吸光の標準偏差は、供給される試料の分布および/または均一性を定量化および評価するために用いられ得る。標準偏差の比較的高い値は、通常、染料および/または細胞が、基板にわたってあまり均一に分布していないことを示す。
【0170】
次に、ステップ2312では、調製試料の品質を向上させる(例えば、配置される細胞が基板表面上により均質に分布されているか、および/または、より均一に染色される試料を生成する)ために、計算された測定基準に基づいて動作パラメータの1つまたは2つ以上が調整され得る。例えば、配置される細胞の不均一な染色は、溶血および/または細胞の変形によるものであり得る。不均一な染色の程度に応じて、本明細書に開示されるシステムは、溶血および/または細胞の変形を軽減するために、塗布装置の高さ、流体供給速度、塗布装置の相対的な移動速度、隣接する列の離間、列の長さ、温度、および/または湿度、の1つまたは2つ以上を調整するよう構成され得る。同様に、不均質な細胞分布は、供給中の不均一な流体フローである場合があり、本明細書に開示されるシステムは、供給中の流体フローの均一性を向上させるために、塗布装置の高さ、流体供給速度、塗布装置の相対的な移動速度、隣接する列の離間、列の長さ、温度、および/または湿度、の1つまたは2つ以上を調整するよう構成され得る。
【0171】
調製されている試料が分析に用いられる患者試料である場合、試料の分析がその後実施される。代替的に、試料が単に試験試料(例えば、システムを較正するために処理される試料)である場合には、試験試料は任意には廃棄され得る。新たな基板はその後ステップ2314において取得され、
図14に示す処理が繰り返される。
【0172】
いくつかの実施形態では、動作パラメータは、様々な制約の影響を受けて調整される。例えば、本明細書に開示されるシステムの相対湿度および温度は、特定の制限値内で調整され得るが、相対湿度および温度はどちらも、制約なく調整できるわけではなく、これは本明細書に開示されるシステムの他の構成要素の動作も、湿度および/または温度の変化によって影響を受け得るからである。
【0173】
パラメータの調整が受けるおそれのある別の制約は、基板表面上に流体体積を供給するときに消費される合計時間である。一般に、試料は基板表面の制御された領域上に制御された量を供給することによって調製される。高いシステム処理能力を達成するためには、流体の供給において消費される合計時間は、通常は上限を有する。したがって、流体配置の動作パラメータは、流体配置に対する上限の時間を超えないという制約を受けて調整される。ゆえに例えば、流体供給速度の調整によって合計の供給時間が上限を超える場合、流体供給速度は維持され、塗布装置の相対的な移動速度、隣接する列の離間、および/または、列の長さなどの、他のパラメータを調整して、得られる試料の品質を制御する。
【0174】
システム構成要素
再び
図1Aに戻ると、マニピュレータ150は、異なる様々な装置を含み得る。一般に、マニピュレータ150は、試料塗布装置100を、3つの異なる直角な座標方向に移動させるように機能する。適切なマニピュレータとしては、例えば、ステップアンドリピートモータにより駆動されるアクチュエータや、カム、圧電アクチュエータなどが挙げられる。
【0175】
検出器106は、試料塗布装置100の像を捉えるために、様々な装置を含み得る。いくつかの実施形態においては、例えば、検出器106はCCDアレイ検出器を含み得る。特定の実施形態において、検出器106は、CMOSベースのアレイ検出器を含み得る。また検出器106は、フィルタ、レンズ、ビームスプリッター、および分散光学素子などの、他の光学撮像素子も含み得る。
【0176】
ステージ152は、流体104の供給の間、基板102を支持するように構成されている。特定の実施形態において、ステージ152は、金属(例えば、アルミニウムおよび/またはステンレス鋼)および/またはプラスチック材料(例えば、テフロン(登録商標)ベースの材料)などの堅固な材料で形成されている。またステージ152は、例えば、x−y面などの、1つまたは2つ以上の座標方向に、基板102(およびステージ152の一部または全て)を移動させるためのアクチュエータを含んでいてもよい一方で、塗布装置100は、試料流体を供給するために静止したままである。いくつかの実施形態において、ステージ152は、基板102およびステージ152の一部または全ての向きを変更するためのアクチュエータを含み得る。制御ユニット160は、ステージ152に接続されており、基板102の移動および/または再配向を開始するために、制御信号を発することができる。
【0177】
いくつかの実施形態において、システム50は、試料塗布装置100上に入射光を向けるための光源170を含み得る。光源170は、
図1Aに示すように、制御ユニット160に電気接続され得る。光源170は、例えば、白熱、蛍光、ダイオードベース、および/またはレーザーの光源を含み得る。光源170によって生成される入射光は、電磁スペクトルの紫外領域、可視領域、および赤外領域の1つまたは2つ以上において波長を含み得る。
【0178】
制御ユニット160は、システム50内の様々な構成要素を制御し、本明細書に開示される方法ステップのいずれかを実施するように構成され得る、電子プロセッサ162を含んでいる。例えば、電子プロセッサ162は、本明細書に記載されるような試料塗布装置100の、1つまたは2つ以上の像を捉えるように、検出器106を指示するように構成され得る。さらに、電子プロセッサ162は、像捕捉の間試料塗布装置100を照射する、入射光を発するように、光源170を向けるように構成され得る。
【0179】
電子プロセッサ162はさらに、マニピュレータ150に制御信号を送信して、マニピュレータ150に、本明細書に開示されるような試料塗布装置100および/またはステージ152を移動させるように構成され得る。詳細には、電子プロセッサ162からの制御信号は、マニピュレータ150のxおよび/またはy座標方向に沿って、試料塗布装置100を基板102に対する新しい位置へ移動させるように、マニピュレータ150を指示する。代替的または付加的に、電子プロセッサ162は、塗布装置100が静止した状態で、基板102をxおよび/またはy方向に移動させるために、ステージ152に制御信号を送信し得る。また電子プロセッサ162は、マニピュレータ150のz座標方向に沿って試料塗布装置100を基板102の上方の新たな高さまで移動させるように、マニピュレータ150を指示する制御信号を送信でき、また、基板102を移動させて(例えば、試料塗布装置100を静止させたまま)基板102の上方の塗布装置100の高さを変えるために、ステージ152に制御信号を送信できる。
【0180】
いくつかの実施形態において、制御ユニット160は記憶装置164を含んでいる。記憶装置164は、例えば、光学的、電気的、および/または磁気的に情報を記憶するための、異なる様々な装置の1つまたは2つ以上を含み得る。例示的な装置としては、これらに限定されないが、ハードドライブやフロッピー(登録商標)ディスクなどの磁気記憶装置、CDおよび/またはDVDドライブならびにそれらの記憶媒体などの光学記憶装置、およびフラッシュメモリデバイスや半導体ドライブなどの電子装置が挙げられる。記憶装置164は、本明細書に開示されるあらゆる数値または量を記憶するように構成でき、これは、基板102に対する試料塗布装置100の位置、塗布装置が基板102の上面102aの上方の一定の高さで維持されていることを確実にする、試料塗布装置のために定められた制御の設定、基板102の上方の試料塗布装置の測定された高さ、像間の離間μhおよび/またはμt、基板102の測定された厚さ、および、実行されると本明細書に開示される機能またはステップの1つまたは2つ以上をプロセッサ162に実行させる、命令を備えたソフトウェアを含んでいる。
【0181】
自動の試料調製システム
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、異なる様々な自動の試料調製システムと一緒に用いられ得る。例示的なシステムは、2011年11月9日に出願された米国特許出願第13/293,050号明細書(現在は米国特許出願公開第2012/0149050として公開)に開示されており、この出願の内容は全て、参照により本明細書に組み込まれている。
【0182】
図10は、自動の試料調製システム1000の一実施形態の概略図を示す。システム1000は、基板を保管し、基板上に試料を配置し、基板上に調製された試料を検査し、調製された試料を保管するために、複数のサブシステムを含んでいる。
【0183】
基板保管サブシステム1010は、その上に試料が置かれる前の、基板を保管するように構成されている。基板は例えば、顕微鏡スライド、カバースリップ、および、同様の平面的で光学的に透明な材料を含み得る。基板は、様々な種類のガラスを含む、様々な非結晶性または結晶性の材料から形成され得る。サブシステム1010は、保管容器から個別の基板を選択し、選択された基板を試料配置サブシステム1020へ移す、マニピュレータを含み得る。
【0184】
試料配置サブシステム1020は、選択された量の、例えば血液試料などの対象となる試料を、基板上に置く。サブシステム1020は、一般に、試料を置くように構成される、様々な流体移送部品(例えば、ポンプ、流体チューブ、バルブ)を含んでいる。また流体移送部品は、洗浄溶液、試料に結合する1つまたは2つ以上の染色剤、固定溶液、および緩衝溶液を含む、様々な種類の溶液に基板を露出するように構成され得る。サブシステム1020はさらに、流体除去部品(例えば、バキュームサブシステム)、および、試料が基板に固定されていることを確実にするための、乾燥装置を特徴付け得る。基板のマニピュレータは、試料を保持している基板を、撮像サブシステム1030へと移し得る。
【0185】
上述のように、本明細書に開示される方法およびシステムは、基板の下面102bから反射した試料塗布装置の像に基づき、基板102の厚さを判定することを可能にする。この厚さ情報は、試料配置サブシステム1020によって用いられ得る。例えば、米国特許出願第13/293,050号明細書(上で参照により組み込まれている)に記載されるように、基板の厚さ情報は、標本処理位置における基板の向き、および配置工程の間に生じる撹拌の程度を判定するために用いられ得る。
【0186】
検査サブシステム1030は、試料の像を基板上に取得するため、および像を分析して試料についての情報を判定するために、様々な構成要素を含んでいる。例えば、検査サブシステム1030は、試料に入射光を向けるための、1つまたは2つ以上の光源(例えば、発光ダイオード、半導体レーザー、および/またはレーザー)を含み得る。撮像サブシステム1030はさらに、透過光および/または試料から反射した光を捉えるための光学装置(例えば、顕微鏡対物)を含み得る。光学装置に連結される検出器(例えば、CCD検出器)は、試料の像を捉えるように構成され得る。試料像の分析から導き出された情報は、後の検索および/またはさらなる分析のために、様々な光学的および/または電子的な記憶媒体に記録され得る。
【0187】
検査に続いて、基板のマニピュレータは、基板を保管サブシステム1040へ移送し得る。保管サブシステム1040は、例えば、基板に用いられている試料の供給源、分析時間、および/または、分析中に識別されたあらゆる異常に関する情報を用いて、個別の基板にラベル付けを行い得る。保管サブシステムは、処理された基板を複数の基板ラックに保管でき、基板ラックは基板で充填されるとシステム1000から取り外され得る。
【0188】
図10に示すように、システム1000の様々なサブシステムのそれぞれは、共通の電子プロセッサ1050(電子プロセッサ162と同一でもよいし、異なる電子プロセッサであってもよい)とリンクされ得る。プロセッサ1050は、システム1000の各サブシステムの動作を、システムオペレータからの入力をほとんど(または全く)用いずに、自動的な方法で制御するよう構成され得る。試料の分析の結果は、管理する技術者のために、システムのディスプレイ1060上に表示され得る。インタフェース1070によりオペレータは、システム1000に命令を発し、自動の分析結果を手動でレビューできる。
【0189】
ハードウェアおよびソフトウェアの実装
本明細書に記載される方法ステップおよび工程は、ハードウェアまたはソフトウェア、もしくはそれらの組み合わせに実装され得る。詳細には、電子プロセッサ(例えば、電子プロセッサ162)は上述した方法のいずれかを行うために、ソフトウェアおよび/またはハードウェアの命令を含み得る。この方法は、本明細書に開示する方法ステップおよび図面に付随する、標準のプログラミング技術を用いて、コンピュータプログラムに実装され、様々な、磁気ディスクなどの一時的でない媒体、コンパクトディスクやDVDなどの光学的記憶媒体、フラッシュメモリなどの半導体メモリデバイス、およびハードディスクなどの機械的記憶媒体に記憶され得る。本明細書に記載する機能を行うために、プログラムコードが入力データに加えられる。出力情報は、プリンタなどの出力装置、表示装置、または、例えば遠隔監視のためにウェブサイトへのアクセスを有するコンピュータモニタ上のウェブページなどの、1つまたは2つ以上に用いられる。
【0190】
各プログラムは、プロセッサと通信するために、好ましくは高水準の手続き型プログラミング言語またはオブジェクト指向言語で実装される。しかしながら、プログラムは、必要に応じて、アセンブリ言語または機械語で実装され得る。いずれの場合においても、言語はコンパイラ型言語またはインタープリタ型言語であり得る。プロセッサが本明細書に記載する工程を行うように構成および操作するために、各コンピュータプログラムは、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体または装置(例えば、電子メモリ)に記録され得る。
【0191】
[他の実施形態]
多数の実施形態が記載されている。それでもなお、本開示の要旨および範囲を逸脱しない限りは、様々な変更が行われ得ることを理解されたい。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲内にある。