(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の記載は、本質的に単なる例示であって、本発明の開示、応用または使用を制限するものではない。
【0034】
図1を参照すると、患者の血糖(bG)を測定する際に用いることができ、ボーラス計算または炭水化物提案を実行する、携帯型の、糖尿病管理装置10の一実施形態の上位の図が示されている。典型的には、装置10は、ユーザユニット制御スイッチ14(たとえばON/OFF)を含み得るハウジング12、タッチスクリーンディスプレイ16、およびbGテストストリップ20を挿入可能なポート18を含む。ディスプレイ16は、様々な選択のうち、ソフトウェア駆動メニュー16a、ユーザがボーラス情報を入力することを可能にする選択16b、軽食または食事の炭水化物情報を入力することを可能にする選択16c、および、装置10により読み取られる、ユーザのbG測定に影響を与え得る健康イベント(たとえば、食事、運動、ストレスの期間、月経周期など周期的な生理学的イベントなど)に関係する情報をユーザが入力することを可能にする選択16dに、ユーザがアクセスすることを可能にするためのユーザが選択可能なオプションを表示することができる。ディスプレイ16は本明細書においてはタッチスクリーンディスプレイとして記載されるが、ディスプレイの他の適切な形態(たとえばLED等)が含まれてもよいことが理解される。タッチスクリーンディスプレイが用いられない場合、ユーザ制御スイッチ14は、ユーザが様々なオプションを選択し、ボーラス計算または炭水化物提案を実行するために必要なマーカーを入力することを可能にする、特定のボタンまたは制御装置を含む必要があり得る。上記は、装置10の上位の記載であり、より一層装置の実用性または他のコンポーネントおよび装置(たとえば、ラップトップコンピュータ、注入ポンプ等)との使用性を向上させる要求に応じて、実際は追加の制御装置、入力ポート、出力ポートなどを含むことができることが理解される。したがって、装置10の上記記載は、何らその構造または特徴に限定されるものと受け止めるべきではない。
【0035】
図2を参照すると、装置10の上位のブロック図が示されている。この装置10は、装置10の様々な電子部品に給電する再充電可能なまたは再充電不可能なバッテリー21を含むことができる。処理サブシステム22(たとえば、マイクロプロセッサベースのサブシステム)が含まれており、それはbGアナライザ24から情報を受け取る。このbGアナライザ24は、ハウジング12のポート18に隣接して位置し、bGアナライザ24がbGテストストリップ20を読み取ることを可能にする。bGアナライザ24は、読み取られるbGテストストリップ20用の較正情報を含むコードキーを含むことができる。処理サブシステム22はまた、bGアナライザ24から得られたbGテスト値およびユーザ用の他の重要な健康関連情報を記憶するために使用されるデータベース26と通信することができる。特に、データベース26は、現在および将来のアドバイスの影響にいまだアクティブである推奨されたボーラスおよび炭水化物アドバイスヒストリーレコード(以下、「アドバイスヒストリーレコード」)を記憶するためのサブセクション26a、および、ユーザに関連する、薬剤(インスリン)、健康、炭水化物およびbG関連変数(たとえば、その日の様々な時間セグメントのユーザのインスリン感度)を含むことができる。データベース26は、不揮発性メモリにより形成されることが理解される。さらに、ユーザのインスリン感度のようなbG関連変数は、全体的なパラメータとして記憶可能であり、アドバイスヒストリーレコード内にはないかもしれない。
【0036】
処理サブシステム22は、ディスプレイ16、ユーザ制御スイッチ14、および、装置10を他の外部装置とインターフェース接続する1つまたは2つ以上のインターフェース28とも通信することができる。処理サブシステム22は、ユーザにより入力される様々なタイプの情報(たとえば、食事および就寝時間)および、一時的なまたは常時の記憶が要求される他の任意の情報を記憶するためのメモリ(たとえばRAM)30とも通信することができる。しかし、データベース26およびメモリ30は、
図2にファントムで示されるように、単一のメモリ装置(たとえばRAM)で実行されてもよいことが理解される。処理サブシステム22は、可聴信号、触覚信号(たとえば、バイブレーション信号)または、もしかすると照射光(たとえばLED)のような視覚信号を含む警報を装置10で発生させるために用いられる警報発生サブシステム32と通信することができる。処理サブシステム22は、装置10がユーザ用のグルコース情報を用いて連続して更新されるように、ユーザの体に取り付けられた遠隔の連続グルコース監視(CGM)装置34から入力を受け取ることもできる。最後に処理サブシステム22は、遠隔のインスリン注入ポンプ36(本明細書において、「インスリンポンプ36」と呼ぶ)と通信することができ、装置10はボーラス情報をインスリンポンプ36に伝達することができる。「遠隔」により、CGM装置34およびインスリンポンプ36がそれぞれ装置10の外部に位置するが、その他の点では装置10となお通信することを意味する。装置10はインスリンポンプ36と有線接続または無線接続のいずれかで通信することが理解される。
【0037】
装置10は、処理サブシステム22により実行される、非一時的な機械読取可能なコード、たとえばボーラス計算機ソフトウェアモジュール22a(本明細書において、「ボーラス計算機22a」と呼ぶ)を実装するために用いられる。ボーラス計算機22aは、単一のモジュールとして形成されるか、または処理サブシステム22上で同時に実行される独立したモジュールの集合体として形成され得る。ボーラス計算機22aと関連して機能する処理サブシステム22は、タッチスクリーンパネル16を通じてユーザによりなされる幅広い様々なユーザ入力を受け取り、推奨補正ボーラス、推奨食事ボーラス、推奨総ボーラス、または適時提案炭水化物量を発生させる。提案炭水化物量は、低血糖bGテスト値の装置10による検出に応じて提供されてもよい。装置10の動作および性能については、後の段落において詳細に説明する。装置10は、ユーザがユーザに関連する固有の健康情報を用いて装置10をプログラムすることを可能にする、複数のカスタマイズ可能な入力の実行を通じて、ユーザへの利便性および使用の簡便さを著しく向上させる。より具体的には、装置10は、ユーザに影響を与える固有の健康状態、そして、装置10によりなされるボーラス計算および炭水化物計算に影響がある可能性がある、定期的に生じる健康イベントおよび不定期で生じる健康イベントを装置10が考慮に入れることがより完全にできる健康情報を用いてユーザが装置10をプログラムすることを可能にする。
【0038】
例示的実施形態において、ボーラス計算機22aは、ボーラスおよび炭水化物計算、ならびに装置10によりなされるボーラス推奨を示すアドバイスヒストリーレコードを生成するように構成されている。ボーラス計算機22aはさらに、推奨からの患者の支持または不一致を示すデータを、アドバイスヒストリーレコード内に含むように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、アドバイスヒストリーレコードは、アドバイスヒストリーレコードの時間を規定する時間フィールド、テストフラグフィールド、アドバイスヒストリーレコード内で規定される1つまたは2つ以上のイベントの種類を示すレコードコンテンツフィールド、およびレコードコンテンツフィールドにおいて示されたイベントに応じた値を規定する1つまたは2つ以上のフィールドを含む、複数のフィールドを含むことができる。
【0039】
例示的実施形態において、アドバイスヒストリーレコードは時間フィールドを含む。時間フィールドは、アドバイスヒストリーレコードに対応する時間を示す。この時間は、アドバイスヒストリーレコードの年、月、日、時間、分を示す値を含む。時間フィールドはこの値のそれぞれのための複数のサブフィールドに分割することができることが理解されるべきである。新たなアドバイスヒストリーレコードが生成されるとき、アドバイスヒストリーレコードが生成された時間が時間フィールドに追加される。
【0040】
例示的実施形態において、テストフラグフィールドは、1つまたは2つ以上のテストの結果を示す。このテストフィールドは、1つまたは2つ以上のテストに対応するテストフラグを含んでいてもよい。理解すべきであるように、テストフラグは、結果が真である場合は1に、結果が偽である場合は0に設定されるビットとすることができる。テストフラグは、bG濃度値が装置10により表示され得る値の上方域の外側にあるかを示すHIテストフラグを含んでいてもよい。このHI値が1に設定されるとき、HIテストフラグは、bG濃度値が、装置10により表示され得るbG濃度値の範囲の上にあることを示す。テストフラグはさらにLOテストフラグを含んでいてもよい。LOテストフラグが1に設定されるとき、LOテストフラグは、bG濃度値が、装置10により表示され得るbG濃度値の範囲の下にあることを示す。テストフラグはHYPOテストフラグを含んでいてもよい。HYPOテストフラグが1に設定されるとき、HYPOテストフラグは、患者のbG濃度値が、低血糖状態に対応するか、またはターゲット範囲の下限よりも下であることを示す。テストフィールドは追加のテストフィールドを含んでもよいことが理解される。
【0041】
述べたように、レコードコンテンツフィールドは、アドバイスヒストリーレコード内で規定される1つまたは2つ以上のイベントの種類、またはそのイベントに関する所定の条件が満たされたかを示す。様々な種類のイベントは、血糖濃度、患者の食料摂取に関連した炭水化物量、ユーザにより選択された健康パーセンテージ値、患者に推奨されたインスリン量、インスリンが患者に投与されたことの確認、ボーラス推奨が患者により受け入れられたことの確認、補正ボーラスが投与されたことの表示(indication)、食事ボーラスが患者に推奨されたことの表示を含むことができる。理解されるべきであるように、1つまたは2つ以上のイベントが、アドバイスヒストリーレコードのレコードコンテンツフィールド内に表示される場合、アドバイスヒストリーレコード内の対応するフィールドには値が追加される。
【0042】
例示的実施形態において、アドバイスヒストリーレコードはbG濃度フィールドを含む。レコードコンテンツフィールドが、bG濃度値がアドバイスヒストリーレコードと関連していたことを示すとき、bG濃度フィールドは、有効な値を追加される。bG濃度値は、装置10により行われたbG測定からのbG濃度値を示し、そうでなければ患者により与えられる。bG濃度値は、mg/dLまたはmmol/Lで表され得ることが理解されるべきである。
【0043】
例示的実施形態において、アドバイスヒストリーレコードは、炭水化物量フィールドを含む。レコードコンテンツフィールドが、炭水化物量の値がアドバイスヒストリーレコードと関連していたことを示すとき、炭水化物量フィールドは、有効な値を追加される。炭水化物量の値は、患者が最近の食料摂取において消費した炭水化物の量である。以下でさらに詳細に説明するように、炭水化物量の値は、「軽食サイズ(snack size)」の閾値よりも大きいか、または、小さい可能性がある。炭水化物量の値が「軽食サイズ」の閾値よりも大きい場合、食料摂取は、軽食ではなく食事であるとみなされる。炭水化物の値は、装置10のユーザインターフェースを介して患者により与えられることが可能であり、たとえばグラムで表され得る。
【0044】
例示的実施形態において、アドバイスヒストリーレコードは、健康パーセンテージ量を含む。レコードコンテンツフィールドが、1つまたは2つ以上の健康パーセンテージがアドバイスヒストリーレコードと関連していたことを示すとき、健康パーセンテージ量は、有効な値を追加される。上述したように、ユーザは様々な健康イベント、たとえば運動、ストレスの期間、月経周期または習慣の健康イベントなど、周期的な生理学的イベントを入力することができる。患者または別のユーザは、患者のbG濃度(またはインスリンの必要性)を増大または減少することへの、健康イベントが有する効果の量を表すパーセンテージを提供することができる。
【0045】
例示的実施形態において、アドバイスヒストリーレコードは、補正ボーラスフィールドを含む。レコードコンテンツフィールドが、ヌル値でない補正ボーラス量がアドバイスヒストリーレコードと関連していたことを示すとき、補正ボーラスフィールドは、有効な値を追加される。補正ボーラス量は、bG濃度値を増加または減少させるために患者により選択されたボーラス量を示す。負のボーラス量は、患者のbG濃度がターゲットbG値よりも低いシナリオに対応し、正のボーラス量は、患者のbG濃度がターゲットbG値よりも高いシナリオに対応する。なお、いくつかの実施形態において、ボーラス計算機22aにより提供された補正ボーラス推奨をユーザが受け付けないときに、補正ボーラスフィールドが追加される。
【0046】
例示的実施形態において、アドバイスヒストリーレコードは、食事ボーラスフィールドを含む。レコードコンテンツフィールドが、ヌル値でない食事ボーラス量がアドバイスヒストリーレコードと関連していたことを示すとき、食事ボーラスフィールドは、有効な値を追加される。食事ボーラス量は、食事、たとえば炭水化物の摂取の効果を相殺する(offset)ために患者により選択されたボーラス量を示す。いくつかの実施形態において、ボーラス計算機22aにより提供された食事ボーラス推奨をユーザが受け付けないときに、食事ボーラスフィールドが追加される。
【0047】
例示的実施形態において、アドバイスヒストリーレコードは、確認済み(confirmed)補正ボーラスフィールドを含む。レコードコンテンツフィールドが、確認済みインスリン量およびヌル値でない補正ボーラス量がアドバイスヒストリーレコードと関連していたことを示すとき、確認済み補正ボーラスフィールドは、有効な値を追加される。確認済み補正ボーラス量は、患者によりセーブされた補正ボーラスに応じて、インスリンポンプ36により患者に送り込まれたボーラス量を示す。
【0048】
例示的実施形態において、アドバイスヒストリーレコードは、確認済み食事ボーラスフィールドを含む。レコードコンテンツフィールドが、確認済みインスリン量およびヌル値でない食事ボーラス量がアドバイスヒストリーレコードと関連していたことを示すとき、確認済み食事ボーラスフィールドは、有効な値を追加される。確認済み食事ボーラス量は、患者によりセーブされた食事ボーラスに応じて、インスリンポンプ36により患者に送り込まれたボーラス量を示す。
【0049】
アドバイスヒストリーレコードは、上述したこれらのフィールド、または代替的または追加のフィールドの変形を含んでいてもよい。提供されるアドバイスヒストリーレコードのフィールドは、例示目的のみで提供され、限定する意図はない。
【0050】
いくつかの実施形態において、アドバイスヒストリーレコードは、アドバイスヒストリーレコード内で規定されたイベントに関連する、1つまたは2つ以上の異なるパラメータ値を含んでいてもよい。たとえば、アドバイスヒストリーレコードは、ターゲット値、食事上昇値(meal rise value)、オフセット時間(offset time)、作用時間値(acting time value)を含んでいてもよい。ターゲット値は患者のターゲットbGレベルである。ターゲット値は、患者のbGレベルのための上限および下限の関数として表され得る。食事上昇値は、炭水化物摂取の結果として、患者のbGレベルがターゲット値に対して上昇し得る量である。いくつかの実施形態において、食事上昇値は、時間とインスリン投与の関数であり、食事上昇は、患者がインスリンを投与した後の第1の所定の時間量、すなわちオフセット時間、の間は一定であり、その後、第1の所定の時間量の後、線形的に減少する。インスリンの投与患者のbGレベルに影響を及ぼすトータルの時間量が、作用時間である。後述するように、インスリン投与の効果の結果として食事上昇値がグラフ化される場合、その結果は作用形状(action shape)と呼ばれる。いくつかの実施形態において、作用形状は、オフセット時間が、短い方の底を規定し、作用時間が、長い方の底を規定するような台形である。アドバイスヒストリーレコードに含まれ得る他のパラメータは、炭水化物比率の値、インスリン感度値、軽食サイズ値を含んでいてもよい。これらのパラメータ値は、患者または患者を治療する医師のようなユーザにより与えられてもよい。これらのパラメータ値はアップロードされてもよく、また、装置10のタッチディスプレイ16を介して与えられてもよい。これらのパラメータ値は、患者用のボーラス推奨を決定するためにボーラス計算機22aにより利用されてもよい。
【0051】
図3Aを参照すると、フローチャート100は、ユーザの要求に装置10を合わせるのに必要な様々な入力を構成するためにユーザが実行することができる、例示的な予備構成手順を示している。工程102において、ユーザは、自身が使用するインスリンタイプと、特定のインスリンに関連する「作用時間」および「オフセット時間」を規定することができる。ユーザは、工程104において、軽食サイズも設定する。ユーザが装置10に入力する軽食サイズよりも多い任意の炭水化物量は、その量がユーザが決定した軽食サイズよりも大きい場合に、装置10により「食事」とみなされる。(bG単位により表される)食事上昇グルコースの大きさ(amplitude)も、工程105においてユーザにより規定される。工程106において、ユーザは24時間の期間の間、様々な時間ブロックを規定することができる。1つの例示的な実施において、ユーザは24時間の期間の間、8つの連続的、または非連続的な時間ブロックまで規定することができる。しかし、より多いまたは少ない数の時間ブロックを提供することができることが理解される。ユーザのインスリン感度は、一日の経過にわたって変化すると考えられるので、工程108に示されるように、それぞれの時間ブロック用に異なるインスリン感度値を設定することができる。工程110において、ユーザは、炭水化物比率(carb ratio)についてもそれぞれの時間ブロック用に設定することができ、これは、この比率が一日の経過を通じて、異なるユーザで変化すると考えられるからである。工程112において、ユーザはそれぞれの時間ブロック用にbGターゲット範囲を設定することができ、これは、この範囲もまた、一日の経過にわたってわずかに変化すると推測されるからである。bGターゲット範囲は、bGターゲット範囲の上限および下限をそれぞれ定める、上側bGターゲット値および下側bGターゲット値から構成される。処理サブシステム22が、以前に受け取った補正ボーラスの作用形状を考慮して動作することが理解され、この作用形状は、以前に受け取った補正ボーラス、そして、以前に受け取った補正ボーラスに関連するインスリンのオフセット時間および作用時間の、bG低下可能性により規定される。この作用形状は、新たなボーラス推奨を生成するときに、処理サブシステム22により考慮され、以下においてより詳細に説明される。
【0052】
工程114において、ユーザは、n個までの異なる健康イベントのうちのそれぞれ1つに、タッチスクリーンディスプレイ16を用いたラベルによりラベル付けし、ラベル付けされた健康イベントのそれぞれについて、パーセンテージbG調整(percentage bG adjustment)を割り当てる。ユーザが事前に知っており、自身のbGテスト値に影響を与えるであろう、ユーザが定めた複数の健康イベントのそれぞれについての、これらの様々なパーセンテージ調整を、ユーザがプログラムできることは装置10の有用な特徴である。たとえば、「運動」、「病気」、「ストレス」のような健康イベントについて、または月経周期のような繰り返す状態についてさえ、ユーザは異なるbGパーセンテージ調整値で装置をプログラムしてもよい。ユーザが定めた健康イベントのそれぞれについてユーザにより選択された正確なパーセンテージは、過去のヒストリーおよびユーザの経験に基づいていても、または、ユーザが自身の血糖レベルを管理するのを補助する健康管理専門家のアドバイスに一部基づいてもよい。一例として、食事直後に行われた運動イベントが、必要とされた食事ボーラスを約20%減少させることを、ユーザが経験から知っている場合、その後ユーザはディスプレイ16の表示された領域に「−20」を入力してもよい。運動イベントが選択されたとき、処理サブシステム22は、その後、食事ボーラスおよび補正ボーラスの計算にあたって、この20%の減少を用いる。これらの特徴は以下の段落においてより詳細に説明される。
【0053】
図3B〜
図3Fを参照すると、様々な形式の情報が、装置10のディスプレイ16上においてどのようにユーザに表示されるかが示されている。
図3Bは、ユーザが、得られたbGテスト値を含むレコードに特定の健康イベントを割り当てることを選択したときに、ディスプレイ16に表示することができる多数の「健康リスト項目」ボックスを提供するスクリーン15を示す。
図3Cは、この情報がどのようにディスプレイ16上に表示することができるかを示すスクリーン表示150aを示す。ユーザは
図3Cにおいて、ボックス152の1つを選択することができ、これによって丁度得られたbGテスト値にユーザがプログラムした特定の健康事象を入れる。したがって、ユーザがプログラムしたパーセント調整を丁度得られたbGテスト値に適用する。ユーザが、単一のbGテスト値に2つまたは3つ以上の健康イベントを選択する場合、装置10は、丁度得られたbGテスト値に適用される「特定の」健康イベントパーセントをユーザに選択させる、異なるスクリーンを表示することができる。かかるスクリーン配置154は、
図3Dに示される。実際の例示的なスクリーン表示156は、スクリーン配置154に対応する
図3Eに示される。
図3Eの「健康」フィールド158は、
図3Cのスクリーン表示150aのボックス152にチェックを入れたすべての健康イベントを表示する。フィールド160において、ユーザは、矢印162aおよび162bの存在によって示されるように、特定の健康調整パーセントを入力するかおよび/または調整することができる。また、矢印164aおよび164bを表示することができ、これらは、ユーザが提案されたボーラスを増やしたりまたは減らしたりすることを可能にする。ユーザ操作166は、ユーザが健康イベント調整をキャンセルすることを可能にし、ユーザ操作168は、ユーザがフィールド160内の特定の健康パーセントの選択(すなわち、適用)を確認することを可能にする。
図3Fは、様々な情報項目(たとえば、bGテストの結果値;炭水化物情報;健康調整パーセント;補正ボーラス;食事ボーラス;および推奨ボーラスの総ユニット)が、ディスプレイ16においてユーザにどのように表示することができるかを示す。
【0054】
図4Aおよび4Bを参照すると、ユーザにより装置10にプログラムされた設定を考慮に入れた、ユーザ用の合計ボーラス推奨を決定するうえで、装置10により実行され得る例示的な工程のフローチャート200が示されている。工程202において、初期化工程が実行され、処理サブシステム22のレコードコンテンツが「0」に設定される。工程204において、処理サブシステム22は、データベース26に記憶された直近のレコードを取得し、工程206において、これが関連するbGテスト値を有するかの判定をするために確認を行う。もし有しなければ、その後工程208において、最大許容bG値が算出され、ユーザに表示される。工程210において、処理サブシステム22は現在時間ブロックを決定する。工程212において、処理サブシステム22は、ユーザが2つ以上の健康イベントオプションを選択したか、および、ユーザが2つ以上のオプションを選択したかを判定するために確認をし、工程214に示されるように、ユーザに向けて、カスタムパーセンテージ値を入力するように、ディスプレイ16上で要求がされ、これはその後の食事ボーラスおよび補正ボーラスの計算に適用される。工程216において、処理サブシステム22は、食事ボーラスを算出し、(ユーザにより任意の調整が選択された場合)ユーザにより定められた、選択された健康イベント調整を適用する。工程218において、処理サブシステム22は合計ボーラスを算出する。工程220において、処理サブシステム22は出力を更新し、工程222において、データベース26にレコードとともに出力を記憶する。
【0055】
さらに
図4Aおよび4Bを参照すると、工程206における確認により、直近のレコードと関連するbG値があることが明らかになると、工程224において、装置10の表示限度より上のbG読取を示す、レコードの「HI」テストフラグが設定されているかを見るために確認がなされ、これは、推奨補正ボーラスの計算をするためには使用されない。この確認で「イエス」の回答の場合、その後、工程225において、高bG読取についての適切な警告が表示された後、食事ボーラスについての推奨のみを取得するために、工程208〜222が実行され得る。工程224における確認が「ノー」の回答をした場合、その後、工程226に示されるように、直近のレコード(Advice Record_IN)について「LO」または「HYPO」テストフラグが設定されているかを判定するために確認がなされる。これは、低血糖状態または装置10の表示限度よりも低いbG読取のいずれかにおいて、ボーラスの推奨を防ぐための追加の確認である。「イエス」の回答の場合、フローチャート200のルーチンは終了する(そして、
図5に示されるフローチャート300が、炭水化物提案の計算のために開始される)。工程226における確認で「ノー」の回答の場合、その後、
図4Bの工程228において、処理サブシステム22は最大許容bG値を算出し、それをユーザにディスプレイ16上に表示する。
【0056】
続いて
図4Bにおいて、工程230において、処理サブシステム22は、ユーザが定めた現在の時間ブロックを決定する。工程232において、処理サブシステム22は確認をし、ユーザが2つ以上の健康イベントオプションを選択したか、およびユーザが2つ以上のオプションを選択したかを判定し、工程234に示されるように、ユーザに向けて、カスタムパーセンテージ値を入力するように、ディスプレイ上で要求がされ、これは工程236において、補正ボーラスの計算に適用される。工程236において、処理サブシステム22は、補正ボーラスを算出し、(ユーザにより任意の調整が選択された場合)ユーザにより定められた、選択された健康イベント調整を適用する。
図4Aの工程216〜222がその後適用される。工程232における確認で「ノー」の回答の場合、ユーザ設定の健康イベント調整を用いて、工程236が実行される。
【0057】
図5に移ると、装置10を用いて炭水化物提案が計算され得ることを示す例示的な工程を図示したフローチャート300が示されている(このフローは、
図4Aの工程230において「イエス」方向に基づいて生じる)。工程302において、初期化手順が実行され、処理サブシステム22の出力コンテンツ内に存在する可能性のある既存のデータが確実にクリアされる。その後、工程304において直近のレコードが取得される。工程306において、分析される現在のbGテスト値について低血糖状態を示す、直近のレコードのHYPOテストフラグが設定されているかを判定するために、確認がなされる。もしそうであれば、処理サブシステム22は工程308において、従来の方法で炭水化物(「carb」)比率を算出する。工程310において、インスリン感度が従来の方法で計算される。工程312において、現在許容されたbGが算出され、これについては以下でより詳細に説明する。工程314において、現在のデルタbGが、直近のレコードbG濃度から、現在許容されたbGを減ずることにより算出される。要するに、工程314は、ユーザのbGを低下させるように作用するであろう、事前に取得された補正ボーラスが、現在のデルタbGを決定するための式の因子となることを許容する。工程316において、現在のデルタbGは、インスリン感度を用いて、そして炭水化物比率係数(carbohydrate ratio factors)により、炭水化物提案に変換される。工程318において、炭水化物提案および現在のデルタbGの出力が記憶される。
【0058】
つぎに
図6を参照すると、健康イベント調整で食事ボーラスを算出する1つの例示的な方法を図示したフローチャート400(このフローは、
図4Bの工程216において呼び出される)が示されている。工程402において、初期化が実行され、推奨食事ボーラスを既知の値に設定する。工程404において、データベース26から処理サブシステム22により引き出された直近のレコードが、以下の計算における使用に利用できる炭水化物量を有しているかを判定するために、確認がなされる。回答が「イエス」の場合、その後工程406において、炭水化物比率の分母が「0」でないことを確実にするために確認がなされる。もし、そうでなければ、その後工程408において、処理サブシステム22により生成された出力についてビットが設定され、推奨食事ボーラスがそれに関連することを示す。工程410において、ワーキング食事ボーラスが計算される。工程412において、健康イベント調整パーセンテージが直近のレコード内で設定された場合、確認がなされる。その場合、その後工程414において、ワーキング健康パーセンテージが、直近のレコード内に含まれる健康パーセンテージに等しく設定され、推奨食事ボーラスがこのワーキング健康パーセンテージを用いて計算される。たとえば、関連する健康イベントについての自身のパーセンテージ調整において、ユーザが「−20」を示した場合、工程414はこの情報を用い、この「−20」を80%に変換し、この80%の数字は、推奨食事ボーラスを提示するために、ワーキング食事ボーラスを変更するのに用いられる。このように、この例では、推奨食事ボーラスは、20%減らされるであろう。工程418において、処理サブシステム22により生成されたばかりの推奨食事ボーラス出力は、データベース26のログ記録部26aにされる。
【0059】
工程412における確認により、直近のレコードにおいて健康パーセンテージ調整が示されていないことが示される場合、その後ワーキング健康調整パーセンテージが工程416においてゼロに等しく設定され、その後工程414および418が繰り返される。工程404において、推奨食事ボーラスが計算可能な炭水化物量がないと理解される場合、ゼロの推奨食事ボーラスが単純に工程418においてされる。もし、直近のレコードの炭水化物比率の分母が工程406において「0」であるとわかると、その後エラー状態でルーチンが終了する。
【0060】
図7を参照すると、ユーザによるパーセンテージ健康調整入力を考慮に入れた、補正ボーラスを算出するのに実行され得る工程を記述する例示のフローチャート500が示されている。フローチャート500の工程は、
図4Bの工程236により呼び出されることが理解されるだろう。
【0061】
工程502において、推奨補正ボーラスは、既知の値に初期化される。工程504において、ワーキングbG補正ボーラスが、(現在のbG値、直近の食事および/または前の補正レコードから算出される)現在のデルタbGから計算され、インスリン感度が直近のレコードから計算される。工程506において、直近のレコード内に存在する任意の健康調整パーセンテージがワーキング健康パーセンテージに適用される。再び、直近のレコードに関連したbGテスト値用の健康調整パーセンテージを選択するときに、ユーザが「なし(None)」を特定すると、その後ワーキング健康パーセンテージは、工程510に示されるように、パーセンテージ値により変更されない。工程508において、推奨補正ボーラスは、健康パーセンテージ調整によるワーキングbG補正ボーラスを変更することによって取得される。したがって、ユーザが、直近レコードに関連するbGテスト値用の健康調整パーセンテージを「−25」に設定した場合、その後工程512における計算で、ワーキングbG補正ボーラスを75%で乗算する。新たに計算された推奨補正ボーラスでの出力は、その後工程514においてデータベースヒストリーログブックレコード26aにされる。
【0062】
補正デルタbGの計算にあたって、装置10の利点は、ワーキングデルタbGは、負の値が許容されることである。これは、ユーザが、LOまたはHYPObG値について補償するために事前にいくつかの炭水化物を取った場合など、新たに計算された補正デルタbGから取り除かれるべき任意の補正の一部が、新たに計算された補正デルタbGの因子となることを許容する。もう1つの利点は、ユーザ用の炭水化物提案の算出用に、この推奨がbGターゲット範囲の中心にではなく、現在の許容bG値に対して計算され得る。
【0063】
図5について説明したように、現在の許容bG値は工程312において算出される。同様に、現在の許容bG値は
図7の工程504において算出される。いくつかの実施形態では、ボーラス計算機22aは、患者の現在bG測定が患者のターゲットbG値未満であるかどうかに基づいて、現在の許容bG値を算出する。
図8は現在の許容bG値を算出するための例示の方法600を図示している。現在の許容bG値は、現在の時間において、補正ボーラスを要求することなく患者のbG値が増大する可能性のある値を示す。理解すべきであるように、この方法600は、装置10の処理サブシステム22により実行されてもよく、具体的には、ボーラス計算機22aの一部として実行されてもよい。説明の目的のために、この方法600は、ボーラス計算機22aにより行われるものとして説明する。
【0064】
工程610において、ボーラス計算機22aは補正デルタbG値を算出する。補正デルタbG値は、1つまたは2つ以上の患者のアクティブなアドバイスヒストリーレコードにおいて規定されたイベントの、総bG低下効果を示す。補正デルタbG値を決定するための例示方法は、以下において、
図9に関してさらに説明する。
【0065】
工程612において、ボーラス計算機22aはターゲットbG値を算出する。いくつかの実施形態において、ターゲットbG値は、上側ターゲットbG値および下側ターゲットbG値の平均として決定される。上側ターゲットbG値および下側ターゲットbG値は、患者または治療する医師などの他のユーザにより装置10に提供され得る。さらに、上側ターゲットbG値および下側ターゲットbG値は、アドバイスヒストリーレコード内に記憶されてもよい。代わりに、ターゲットbG値は、ユーザにより手動で入力されてもよい。
【0066】
工程614において、ボーラス計算機22aは、現在bG測定値を受け取る。上述したように、患者が血液試料を提供し、血液試料が装置10により分析されるときに、現在bG測定値が決定され得る。
【0067】
工程616において、ボーラス計算機22aは、複数のアドバイスヒストリーレコードのうち、特定のアドバイスヒストリーレコードに基づいて、補正食事上昇値を決定する。以下で説明するように、用いられる特定のアドバイスヒストリーレコードは、i)軽食サイズよりも多い食事を食べる患者に対応するイベント、ii)食事ボーラス量に対応するイベント、および、iii)患者またはインスリンが患者に実際に投与されたことを確かめるインスリンポンプに対応したイベントを含むことができる。補正食事上昇値は、患者のbGレベルが、患者が食べる食事の結果として、そして追加の補正ボーラスの要求なしにターゲットbG値に対して上昇し得る量を示す。補正食事上昇値を決定するための例示の技術は、以下で
図10に関してより詳細に説明する。
【0068】
工程618において、ボーラス計算機22aは最大許容bG値を決定する。最大許容bG値は、補正ボーラスを患者に推奨する前の患者のbG測定についての最大値を示す。いくつかの実施形態では、最大bG値は、ターゲットbG値、補正デルタbG値および補正食事上昇値を合計することにより決定され得る。
【0069】
工程620において、ボーラス計算機22aは、現在bG測定値をターゲットbG値と比較する。ボーラス計算機22aが、現在bG測定値がターゲットbG値よりも大きいと判定する場合、ボーラス計算機は、工程622に示されるように、許容bG値を最大許容bG値と等しく設定する。ボーラス計算機22aが、現在bG測定値がターゲットbG値よりも小さいと判定する場合、ボーラス計算機22aは、工程624に示されるように、現在の許容bG値を、ターゲットbG値および補正デルタbG値の合計と等しく設定する。工程626において、ボーラス計算機22aは、現在の許容bG値および最大許容bG値を記憶する。
【0070】
例示的な方法600は例示目的のみで提供されることが理解されるべきである。方法600の変形例が考えられ、本開示の範囲内となる。さらに、工程の順序は限定することを意図するものではなく、異なる順序が考えられ、本開示の範囲内となる。
【0071】
前述したように、ボーラス計算機22aは、補正デルタbG値を決定する。補正デルタbG値は、アドバイスヒストリーレコードにおいて規定されたイベントの、総bG低下効果を示す。言い換えると、補正デルタbG値は、患者の体内で未だ作用するインスリンの全体としての低下効果を示す。いくつかの実施形態では、ボーラス計算機22aは、そこで規定されたイベントの総bG低下効果を決定するために、最も古いアクティブなアドバイスヒストリーレコードから直近のアドバイスヒストリーレコードまで、アクティブなアドバイスヒストリーレコードを分析する。
図9は補正デルタbG値を決定するための例示的な方法700を図示している。説明の目的で、方法700は、ボーラス計算機22aにより実行されるものとして説明される。
【0072】
工程710において、ボーラス計算機22aは、複数のアクティブなアドバイスヒストリーレコードを引き出す。前述したように、複数のアクティブなアドバイスヒストリーレコードは、患者のbGレベルに未だ影響を与えるイベントを規定するアドバイスヒストリーレコードである。たとえば、アドバイスヒストリーレコードにおいて規定されたイベントが、現在の時間より3時間前に投与された補正ボーラスであり、インスリン投与の有効な時間が3時間またはそれ以上であった場合、アドバイスヒストリーレコードは、複数のアクティブなアドバイスヒストリーレコード内に含まれるであろう。逆に、現在の時間よりも48時間前に対応するアドバイスヒストリーレコードの場合、そのアドバイスヒストリーレコードは複数のアクティブなアドバイスヒストリーレコードには含まれないであろう。工程712において、ボーラス計算機22aは、複数のアクティブなアドバイスヒストリーレコードのうち、最も古いアドバイスヒストリーレコードを選択する。
【0073】
工程714において、ボーラス計算機22aは、選択されたアドバイスヒストリーレコードのHYPOテストフラグまたはLOテストフラグのいずれかが1に設定されたかを判定する。もしそうであれば、ボーラス計算機22aは、工程716に示されるように、アドバイスヒストリーレコード内で規定された患者の炭水化物摂取に基づいたワーキングデルタbG値を決定する。選択されたアドバイスヒストリーレコードにおいて、HYPOテストフラグもLOテストフラグも1に設定されていない場合、ボーラス計算機22aは、工程718に示されるように、選択されたアドバイスヒストリーレコードに対応する時間に患者に投与されたインスリンに基づいたワーキングデルタbG値を決定する。ワーキングデルタbG値は、選択されたアドバイスヒストリーレコードにおいて規定されたイベントの結果として、患者のbGレベルが現在減少または増大する量である。
【0074】
工程720において、ボーラス計算機22aは、選択されたアドバイスヒストリーレコードが生成されてから経過した時間の量を決定する。検討したように、アドバイスヒストリーレコードはアドバイスヒストリーレコードに対応した時間を含む。ボーラス計算機22aは、アドバイスヒストリーレコードに規定された時間を利用し、アドバイスヒストリーレコードが生成されてから経過した時間の量を決定する。
【0075】
工程722において、ボーラス計算機22aは、アドバイスヒストリーレコードが生成されてから経過した時間の量が、アドバイスヒストリーレコードに規定されたオフセット時間よりも大きいかを決定する。その時間の量がオフセット時間よりも短い場合、その後ボーラス計算機22aは、工程724に示されるように、ワーキングデルタbG値の完全な量の分、補正デルタbG値を増加させる。時間の量がオフセット時間よりも長い場合、ボーラス計算機22aは、工程726に示されるように、所定の式の結果により補正デルタbG値を増加させる。たとえば、いくつかの実施形態において、補正デルタbG値は、以下の量だけ増加される。
【数1】
ここで、Acting_Time(作用時間)は、選択されたアドバイスヒストリーレコードにおいて規定されたイベントが患者のbGレベルに影響を与える間の持続期間であり、Offset_Time(オフセット時間)は、選択されたアドバイスヒストリーレコードにおいて規定されたイベントの完全な効果が与えられる間の持続期間であり、Time(時間)は、現在の時間と、アドバイスヒストリーレコードが生成されたときの時間との間の差異である。理解すべきであるが、時間の差異、たとえば、Acting_Time−Offset_TimeおよびActing_Time−Timeは、分または秒で表すことができる。さらに、Acting_TimeおよびOffset_Timeは、選択されたアクティブなヒストリーレコード内で規定されてもよい。
【0076】
工程728において、ボーラス計算機22aは、補正デルタbG値の累計(running total)を所定の閾値、たとえば0と比較する。理解すべきであるように、ボーラス計算機22aは、補正デルタbGを計算するために、複数のアクティブなアドバイスヒストリーレコードで規定されたbG影響イベントの総効果を合計する。各反復、たとえば、もう1つのアクティブなアドバイスヒストリーレコードの分析後において、累計が0未満の場合、ボーラス計算機22aは、工程730において補正デルタbGについての累計を0に設定する。そうでなければ、補正デルタbGについての累計は変更されない。
【0077】
工程732において、ボーラス計算機22aは、分析のために残された、複数のアクティブなアドバイスヒストリーレコード内に残っている、残りのアクティブなアドバイスヒストリーレコードがあるかを決定する。もしそうであれば、ボーラス計算機22aは、工程734に示されるように、次のアドバイスヒストリーレコードを得て、上述した工程を繰り返す。そうでなければ、ボーラス計算機22aはルーチンを停止し、合計された補正デルタbG値を記憶する。
【0078】
前述の方法700は、例示目的のみで提供され、限定することを意図するものではないことが理解される。補正デルタbG値を決定する他の技術が考えられ、それは本開示の範囲内となる。
【0079】
上述したように、ボーラス計算機22aは、患者のbGレベルが食事ボーラスを要求することなくターゲットbG値に対して増加し得る量を示す、補正食事上昇値を決定するように構成される。いくつかの実施形態において、ボーラス計算機22aはアクティブなアドバイスヒストリーレコードを分析し、直近の関連するアクティブなアドバイスヒストリーレコードを選択する。選択されたアクティブなアドバイスヒストリーレコードを用いて、ボーラス計算機22aは、補正食事上昇値を決定するためにレコードが生成されてから経過した時間の量を決定する。
図10は、補正食事上昇値を決定するための例示の方法800を図示している。説明の目的のために、方法800はボーラス計算機22aにより実行されるものとして説明される。
【0080】
工程810において、ボーラス計算機22aは、複数のアクティブなアドバイスヒストリーレコードを得る。前述したように、複数のアクティブなアドバイスヒストリーレコードは、作用時間内に生成されたアドバイスヒストリーレコードである。すなわち、アドバイスヒストリーレコードにおいて規定されたイベントは、患者のbG測定に未だ影響を与える可能性がある。工程812において、ボーラス計算機22aは、直近のアドバイスヒストリーレコードを選択する。
【0081】
工程814において、ボーラス計算機22aは、選択されたアドバイスヒストリーレコードを分析し、アドバイスヒストリーレコードが、i)軽食サイズよりも多い食事を食べる患者に対応するイベント、ii)食事ボーラス量に対応するイベント、およびiii)患者またはインスリンが実際に患者に投与されたことを確かめるインスリンポンプ36に対応するイベントを含むかを決定する。
【0082】
1つまたは2つ以上の条件が満たされない場合、工程816に示されるように、ボーラス計算機22aは、次の直近のアドバイスヒストリーレコードを得る。上記で識別された全ての条件が満たされた場合、ボーラス計算機22aは、工程818に示されるように、選択されたアドバイスヒストリーレコードの時間を決定する。なお、ボーラス計算機22aが上述した基準を満たすレコードを識別できない場合、方法は終了し、食事上昇値は0に等しく設定される。
【0083】
工程820において、ボーラス計算機22aは、選択されたアドバイスヒストリーレコードが生成されてから経過した時間量を決定する。工程822において、ボーラス計算機22aは、選択されたアドバイスヒストリーレコードで規定されたオフセット時間よりも、経過した時間量が短いかを決定する。工程824に示されるように、その時間量がオフセット時間よりも短い場合、食事上昇値を規定する作用形状において示されるように、補正食事上昇値は、食事上昇値の全量と等しく設定される。説明したように、作用形状の値は、患者または治療医師のようなユーザにより入力されてもよい。しかし、その時間量がオフセット時間よりも長い場合、ボーラス計算機22aは、826において示されるように、補正食事上昇値を調整された食事上昇値に等しく設定する。いくつかの実施形態において、ボーラス計算機22aは、826において示されるように、補正食事上昇値を所定の式の結果に等しく設定する。たとえば、調整された食事上昇値は、以下の式の結果と等しく設定され得る。
【数2】
ここで、Meal_Rise(食事上昇)は、選択されたアドバイスヒストリーレコードに対応する作用形状で規定された完全な食事上昇値であり、Acting_Time(作用時間)は、選択されたアドバイスヒストリーレコードが患者のbGレベルに影響を与える間の持続時間であり、Offset_Time(オフセット時間)は、選択されたアドバイスヒストリーレコードに規定されたイベントの全効果が与えられる間の持続期間であり、Time(時間)は選択されたアドバイスヒストリーレコードが生成されてからの時間量である。Acting_TimeおよびOffset_Timeは、選択されたアドバイスヒストリーレコードで規定されてもよい。工程828において、補正食事上昇値が記憶される。
【0084】
前述の方法800は、例示目的のみで提供され、限定することを意図するものではないことが理解される。補正食事上昇値を決定する他の技術が考えられ、それは本開示の範囲内となる。
【0085】
図9に関して前で説明したように、ボーラス計算機22aが、特定のアドバイスヒストリーレコードについてワーキング補正デルタbG値を決定するとき、ボーラス計算機22aは、HYPOまたはLOフラグが真に設定されたかを決定する。もし、いずれのフラグも設定されていない場合、ボーラス計算機は、患者のインスリンヒストリーに基づいてワーキングデルタbG値を決定する。
図11Aおよび11Bはともに、患者のインスリンヒストリーに基づいてワーキングデルタbG値を決定するための例示方法900を図示している。
【0086】
工程910において、ボーラス計算機22aは、ワーキング補正デルタbG値が計算されるためにアドバイスヒストリーレコードを得る。工程912において、ボーラス計算機22aは、アドバイスヒストリーレコードに規定されたイベントがインスリンポンプ36により患者にインスリンが投与されたことの確認を含むかを決定する。もしそうであれば、工程914および916においてそれぞれ示されるように、ワーキング補正ボーラス値が、アドバイスヒストリーレコードで識別された確認された補正ボーラス値と等しく設定され、ワーキング食事ボーラス値が、アドバイスヒストリーレコードで識別された、確認された食事ボーラス値と等しく設定される。アドバイスヒストリーレコードに規定された確認されたインスリンがない場合、ボーラス計算機22aは、工程918および920においてそれぞれ示されるように、ワーキング補正ボーラス値はアドバイスヒストリーレコードで識別されたユーザにより選択された補正ボーラス値と等しく設定され、ワーキング食事ボーラス値は、ユーザにより選択された食事ボーラス値と等しく設定される。
【0087】
工程922において、ボーラス計算機22aは、アドバイスヒストリーレコードに規定された健康パーセンテージ値が規定されたかを決定する。健康パーセンテージ値が規定された場合、ワーキング補正ボーラスは、
【数3】
に等しく設定される。ここで、WorkingCorrectionBolus(ワーキング補正ボーラス)は、上記で決定されたワーキング補正ボーラス値であり、HealthPercentage(健康パーセンテージ)は、工程924に示されるように、アドバイスヒストリーレコードに規定された健康パーセンテージ値である。健康パーセンテージ値は、パーセンテージの少数表現とすることができることが理解される。さらに、工程926において、ワーキング食事補正ボーラス値は、
【数4】
に等しく設定される。ここで、WorkingMealBolus(ワーキング食事ボーラス)は、上記で決定されたワーキング補正ボーラス値である。健康パーセンテージ値は、パーセンテージの少数表現とすることができることが理解される。工程922において、健康パーセンテージが規定されない場合、ワーキング補正ボーラス値およびワーキング食事ボーラス値は変更されないままである。
【0088】
工程928において、ボーラス計算機22aは、ワーキング補正bG値は0に等しいかを決定する。もしそうであれば、ボーラス計算機22aは、工程930に示されるように、ワーキングデルタbG値を0に等しく設定し、プロセスはワーキングデルタbG値を戻す。
【0089】
ワーキング補正bG値が0に等しくない場合、ボーラス計算機22aは、工程930に示されるように、ワーキング補正ボーラス値およびワーキング食事ボーラス値の合計が0未満かを決定する。もしそうであれば、ボーラス計算機22aは、工程932に示されるように、ワーキングデルタbG値を、
【数5】
により計算する。ここで、WorkingMealBolus(ワーキング食事ボーラス)は、上記で決定されたワーキング食事ボーラス値であり、InsulinSensitivitybG(インスリン感度bG)およびInsulinSensitivityInsulin(インスリン感度インスリン)は、アドバイスヒストリーレコード内で患者または他のユーザにより提供された所定の値である。一旦ワーキングデルタbG値が決定されると、方法900は終了する。
【0090】
しかし、ワーキング補正ボーラス値およびワーキング食事ボーラス値の合計が0未満でない場合、ボーラス計算機22aは、工程934に示されるように、患者がアドバイスヒストリーレコード内で識別されたボーラス推奨を受け入れたかを決定する。もしそうであれば、工程936において、ボーラス計算機22aはワーキングデルタbG値を、
【数6】
により決定する。ここで、bG_Concentration(bG濃度)は、アドバイスヒストリーレコード内で識別された測定されたbG濃度値であり、Currently_Allowed_bG(現在許容bG)は、アドバイスヒストリーレコード内で現在の許容bG値であり、その計算は上記でより詳細に説明した。アドバイスヒストリーレコードが、ボーラス推奨が受け入れられたことを示さない場合、工程938において、ボーラス計算機22aは、ワーキングデルタbG値を、
【数7】
により決定する。ここで、WorkingCorrectionBolus(ワーキング補正ボーラス)は、上述したワーキング補正ボーラス値であり、InsulinSensitivitybG(インスリン感度bG)およびInsulinSensitivityInsulin(インスリン感度インスリン)は、アドバイスヒストリーレコード内で患者または他のユーザにより提供された所定の値である。一旦ワーキングデルタbG値が決定されると、ワーキングデルタbG値が戻され、方法900は実行を終了する。
【0091】
前述の方法900は、例示目的のみで提供され、限定することを意図するものではないことが理解される。ワーキングデルタbG値を決定する他の技術が考えられ、それは本開示の範囲内となる。
【0092】
図9に関して前で説明したように、ボーラス計算機22aが、特定のアドバイスヒストリーレコードについてワーキング補正デルタbG値を決定するとき、ボーラス計算機22aは、HYPOまたはLOフラグが真に設定されたかを決定する。もし、1つまたは両方のフラグが設定される場合、ボーラス計算機22aは、患者の炭水化物ヒストリーに基づいてワーキングデルタbG値を決定する。
図12は、患者の炭水化物ヒストリーに基づいてワーキングデルタbG値を決定するための例示方法1000を図示している。
【0093】
工程1010において、ボーラス計算機22aは、ワーキング補正デルタbG値が計算されるために、アドバイスヒストリーレコードを受け取る。工程1012において、ボーラス計算機22aはLOテストフラグが設定されたかを決定する。LOテストフラグが設定されない場合、工程1014において、ボーラス計算機22aは、アドバイスヒストリーレコード内で示されたボーラス推奨が受け入れられたかを決定する。ボーラス推奨が受け入れられた場合、工程1016において、ボーラス計算機22aはワーキングデルタbG値を、以下の
【数8】
により決定する。ここで、bG_Concentration(bG濃度)は、アドバイスヒストリーレコード内で識別された測定されたbG濃度値であり、Currently_Allowed_bG(現在の許容bG)は、アドバイスヒストリーレコード内の現在の許容bG値である。
【0094】
アドバイスヒストリーレコードが、LOテストフラグが真であること、またはボーラス推奨が受け入れられなかったことを示す場合、ボーラス計算機22aは、工程1018に示されるように、炭水化物量の値がアドバイスヒストリーレコードに関連していたかを決定する。もしそうでなければ、工程1020に示されるように、ワーキングデルタbG値は0に等しく設定される。炭水化物値がアドバイスヒストリーレコードと関連していた場合、工程1022において、ボーラス計算機22aは、ワーキングデルタbG値を、
【数9】
により決定する。ここで、CarbAmount(炭水化物量)はアドバイスヒストリーレコードに関連した炭水化物量の値であり、InsulinSensitivitybG(インスリン感度bG)、InsulinSensitivityInsulin(インスリン感度インスリン)、CarbRatioInsulin(炭水化物比率インスリン)およびCarbRatioCarbs(炭水化物比率炭水化物)は、アドバイスヒストリーレコード内で患者または他のユーザにより提供された所定の値である。一旦ワーキングデルタbG値が決定されると、ワーキングデルタbG値が戻され、方法1000は実行を終了する。
【0095】
前述の方法1000は、例示目的のみで提供され、限定することを意図するものではないことが理解される。ワーキングデルタbG値を決定する他の技術が考えられ、それは本開示の範囲内となる。
【0096】
いくつかの実施形態において、患者は、インスリン投与が近い将来、たとえば約10分以内に投与されることの指示をボーラス計算機22aに提供することができる。これらの実施形態において、ボーラス計算機22aは、後に投与されるインスリンから生じるラグタイムの補償のために、アドバイスヒストリーレコード内のオフセット時間を調整することができる。
図13Aおよび13Bは、そのような状況について補償されるラグタイムの一例を図示している。
図13Aにおいて、作用形状1100が図示されている。
図13Aの作用形状は、ボーラス推奨のときに、患者がインスリンを投与すると仮定する。しかし、インスリンが短時間の後に投与されることの指示を患者が提供する場合、ボーラス推奨とインスリンが投与されるときとの間のラグタイムを考慮するために、ボーラス計算機22aは、作用形状において定められたオフセット時間および作用時間を調整することができる。
図13Bは、ラグタイムが考慮された後の、作用形状1100の例を図示している。理解されるべきであるが、オフセット時間および作用時間は、両方ともラグタイムの分増加している。
【0097】
いくつかの実施形態において、患者は、ボーラスアドバイス機能をオンまたはオフにすることができる。ボーラスアドバイス機能がオフにされたとき、ボーラス計算機22aは、様々なイベントに対してアドバイスヒストリーレコードを生成しないように構成することができる。しかし、患者がボーラスアドバイス機能をオンにすると決定した場合、ボーラス計算機22aは前のアドバイスヒストリーレコードを要求することができ、上述した方法を実行する。したがって、いくつかの実施形態において、患者がボーラスアドバイス機能をオンにしたとき、ボーラス計算機22aは複数のアドバイスヒストリーレコードを生成し、たとえば患者または患者の医師等のユーザにより提供された値により、上述したパラメータ値を補充(back-fill)する。これらの実施形態において、たとえば、bG測定値および食事ヒストリーなど、それらの値を満たすための特定のデータが、記録されていないかもしれないときは、様々な領域が空のままである可能性がある。しかし、データが維持されていた場合、そのデータはアドバイスヒストリーレコードにも自動的に補充されてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、患者はインスリンポンプ36に、ボーラスを送り込むように指示を与えることができる。ユーザは手動でボーラスを送り込む選択肢を有している。ボーラスが投与されるとき、ボーラス計算機22aは患者に送り込まれるボーラスの量を含んでいる。しかし、患者が推奨されたインスリンの量を含む、ボーラス推奨を有するが、推奨されたインスリンの量に合わないボーラス量を手動で送り込む状況が生じ得る。これは、患者がインスリンポンプ36のユーザインターフェースを用いて正確な量を入力できなかったこと、または、ポンプによる部分的な送り込みエラーが原因となる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、ボーラス計算機22aは、送り込まれたボーラス量として患者により手動で入力された量を、ボーラス推奨量と比較するように構成される。不一致がある場合、ボーラス計算機22aは、たとえば入力された量がボーラス推奨の「ステップサイズ(step-size)」内である場合など、その不一致が、患者がインスリンポンプ36のユーザインターフェースを使用して正確な量を入力できないことに起因するものであったかを決定する。その場合、ボーラス計算機22aは、(たとえば工程934において)「真」として受け入れられた推奨を記憶する。しかし、入力された量が、ボーラス推奨よりもはるかに大きいまたははるかに小さい場合、ボーラス計算機22aは、「偽」として受け入れられた推奨を記憶し、患者により手動で入力されたインスリンの量に従う。
【0099】
次に、
図14を参照すると、インスリンポンプ36の例が示される。その例示的な実施形態において、インスリンポンプ36は、患者に所定の量のインスリンを送出する指示を受け取るように構成されている。この指示は、装置10から受け取ることができ、またはユーザインターフェースを経由してユーザにより提供されることも可能である。指示は、所定の量のインスリンを送出する指示を提供するように構成された任意の遠隔装置から受け取ることができるということが理解されるべきである。インスリンポンプ36は、患者にインスリンを送出し、インスリンの送出を記録する1つまたは2つ以上のインスリン送出レコードを生成する。インスリンポンプ36は、かかる1つまたは2つ以上のインスリン送出レコードを装置10に伝達し、装置10は次にヒストリーレコードまたはアドバイスヒストリーレコードにインスリンの送出を記録する。例示的な実施形態において、インスリンポンプ36は、インスリン送出制御部1210、インスリン送出機構1212、インスリンカートリッジ1214、送受信器1216、バッテリー1218、およびインスリン送出レコードデータ記憶部1220を備える。インスリンポンプ36は、図示されないさらなる構成部品、たとえばディスプレイ、ボタン、タッチスクリーンまたはタッチパッドなどのユーザインターフェースを備えることができることが理解されるべきである。
【0100】
いくつかの実施形態において、インスリン送出制御部1210は、患者に所定の量のインスリンを送出する指示を受け取るように、およびかかる指示に基づいてインスリン送出機構1212を制御するように構成された1つまたは2つ以上のプロセッサである。インスリン送出機構1212は、患者にインスリンを送出するための任意の適切な機構とすることが可能である。インスリン送出機構1212は、たとえばチューブによってインスリンカートリッジ1214と接続される。インスリン送出制御部1210は、患者にインスリンを送出するために、インスリン送出機構1212を、および/またはインスリンカートリッジ1214内の圧力を制御することができる。
【0101】
患者へのインスリンの送出が完了するか、または停止されるとき、インスリン送出制御部1210は、1つまたは2つ以上のインスリン送出レコードを生成し、これらはインスリン送出レコードデータ記憶部1220に記憶することができる。以下に説明されるように、インスリン送出制御部1210は、インスリンの送出が中断されたときに、インスリンポンプ36を「休止モード」で操作するように構成される。インスリンポンプ36は、インスリンの送出が、インスリン送出の再開前に予め決められた時間量よりも少ない時間の間停止される場合、休止モードにあったと言われる。インスリンポンプが休止モードにあったか、またはインスリンの送出が中断されることがなかったと、インスリン送出制御部1210が判定する場合、インスリン送出制御部1210は、インスリンの全量が患者に送出されたことを示すインスリン送出レコードを生成する。しかしながら、インスリン送出が中断された時間量が予め決められた時間量よりも多い場合、インスリン送出制御部1210は、インスリンの送出が中断される前に送出されたインスリン量を示す1つのレコード、およびインスリンの送出が再開された後に送られたインスリン量を示す他のレコードという2つのインスリン送出レコードを生成する。
【0102】
インスリン送出機構1212がインスリンを送出している間、インスリン送出制御部1210は、インスリンポンプ36がインスリンの全量を送出することができるかどうかを判定する。特に、インスリン送出制御部1210は、インスリンの送出を完了することができないことを示し得るインスリンポンプの1つまたは2つ以上の状態をモニターする。たとえば、いくつかの実施形態において、インスリン送出制御部1210は、インスリンカートリッジ1214が空か、または取り外されているかどうかを判定するために、インスリンカートリッジをモニターすることができる。同様に、インスリン送出制御部1210は、インスリン送出機構1212が閉塞しているかどうかを判定するために、インスリンカートリッジ1214内の圧力をモニターすることができる。すなわち、圧力が圧力閾値を超えて増大する場合、インスリン送出制御部1210は、インスリン送出機構1212が閉塞したと判定することができる。さらに、インスリン送出制御部1210は、バッテリー1218が充分に充電されていないか、またはインスリンポンプ36から取り外されているかどうかを判定するためにバッテリー1218をモニターすることができる。インスリン送出制御部1210が、また、インスリン全量の送出を完了することができないことを示し得る他の状態に関してインスリンポンプをモニター可能であることが理解されるべきである。
【0103】
インスリン送出制御部1210が、インスリンポンプがインスリン全量を送出することができないことを示す状態を検知するとき、インスリン送出制御部1210は、タイマーを継続することを開始することができる。たとえば、いくつかの実施形態において、インスリン送出制御部1210は、インスリンポンプがインスリンを送出することができないとインスリンポンプが判定するときに、たとえば、その状態が検知されたときに、第1の時間スタンプを生成することができ、その状態が解消されたときに、第2の時間スタンプを生成することができる。これらの実施形態において、インスリン送出制御部1210は、第1および第2の時間スタンプに基づいて、状態が持続した時間量を判定することができる。タイマーを継続するその他の技術が企図され、それらは本開示の範囲内にある。
【0104】
状態が解消されたと判定されると、たとえば、新しいインスリンカートリッジまたは注入セットが適切に取り付けられ、装着されたときに、インスリン送出制御部1210は、患者へのインスリンの送出を再開し、完了する。状態が解消された後、インスリン送出制御部1210は、タイマーによって示された時間量を予め決められた時間閾値、たとえば、15分と比較する。時間量が、時間閾値よりも少ない場合、インスリン送出制御部1210は、インスリンポンプ36が「休止モード」で操作されていたと判定し、インスリンの全量が患者に投与されたことを示す第1のレコードを生成する。しかしながら、時間量が、時間閾値よりも多い場合、次に、インスリン送出制御部1210は、インスリンの送出が停止されたと判定し、インスリンの送出が中断される前に患者に投与されたインスリンの量を示す第2のレコード、およびインスリンの送出が再開された後に患者に送出されたインスリンの量を示す第3のレコードを生成する。インスリン送出制御部1210は、生成されたインスリン送出レコードをインスリン送出レコードデータ記憶部1220に記憶する。インスリン送出制御部1210は、送出の完了後に、または予め決められたスケジュールに従って、たとえば一日に1回生成されたインスリン送出レコードを装置10に伝達することができる。
【0105】
インスリン送出レコードが装置10に伝達されると、ボーラス計算機22aは、アドバイスヒストリーレコード内の1つまたは2つ以上のフィールドを満たすためにインスリン送出レコードに入っている情報を利用することができる。たとえばボーラス計算機22aは、インスリン送出レコードによって示された、送られたインスリンの量をアドバイスヒストリーレコードの確認された総ボーラスフィールド、または補正ボーラスフィールド、または食事ボーラスフィールド内に挿入することができる。さらに、アドバイスヒストリーレコードに示されたボーラス推奨およびインスリン送出レコードに示されたインスリン量に基づいて、ボーラス計算機22aは、確認されたインスリンがボーラス推奨に従ったかどうかを判定することができる。
【0106】
図15は、インスリンを患者に送出する方法1300の例を示す。方法1300は、インスリンポンプ36の1つまたは2つ以上のプロセッサによって実行することができる。方法1300は、工程1310に示されるように、インスリンポンプ36が一定量のインスリンを送出するという指示を受取り、インスリンの送出を開始するときに、実行を開始することができる。前に説明したように、指示は、装置10から受け取ることができるか、またはインスリンポンプ36のユーザインターフェースを用いて手動で入力することができる。インスリンの送出を開始すると、インスリンポンプ36は、工程1312に示されるように、インスリンの全量を送出することができないことを示す1つまたは2つ以上の状態をモニターすることができる。説明されたように、インスリンポンプ36は、状態の1つの存在に対して、バッテリー1218およびインスリンカートリッジ1214をモニターすることができる。
【0107】
工程1314において、インスリンポンプ36は、インスリンの送出が完了しているか、すなわちインスリンの全量が送出されたかどうかを判定するために、患者に送出されたインスリンの量を確認することができる。インスリンの送出が完了した場合、インスリンポンプ36は、工程1324に示されるように、インスリンの全量が患者に送出されたことを示す第1のレコードを生成する。しかしながら、インスリンの送出が完了していない場合、インスリンポンプ36は、工程1316に示されるように、上に述べた状態のうちの1つが生じたかどうかを判定する。状態のうちのいずれもが生じなかった場合、インスリンポンプ36は、インスリンの送出を継続し、状態をモニターする。しかしながら、状態のうちの1つが生じた場合、たとえば、インスリンカートリッジ1218が空の場合、インスリンポンプ36は、工程1318に示されるように、状態が解消されるまでタイマーを継続する。上で説明されたように、タイマーは、状態が現れたときに、第1時間スタンプを生成し、状態が解消されるときに、第2時間スタンプを生成することにより継続することができる。状態が解消されると、たとえば、インスリンカートリッジ1218が取り換えられるか、または再充填されると、インスリンポンプは、工程1320に示されるように、インスリンの送出を再開し、完了する。いくつかの実施形態において、インスリンの送出の再開前に、インスリンポンプ36は、グラフィカルユーザインターフェースにおいて、患者がインスリン送出の再開を希望することを確認するように、患者への要求を表示することができる。いくつかの実施形態において、要求は、時間量が時間閾値未満の場合にのみ患者に提供される。患者が確認を提供すると、インスリンポンプ36は、インスリンの送出を再開することができる。
【0108】
状態が解消されるか、またはインスリン送出が完了すると、インスリンポンプ36は、インスリンポンプ36が「休止モード」で作動していたかまたは停止されていたかどうかを判定することができる。したがって、インスリンポンプ36は、工程1322に示されるように、タイマーによって表示された時間量を時間閾値と比較することができる。時間量が時間閾値未満の場合、インスリンポンプ36は、インスリンポンプ36が「休止モード」であったと判定し、工程1324に示されるように、インスリンの全量が患者に送出されたことを示す第1のインスリン送出レコードを生成する。工程1330に示されるように、第1のインスリン送出レコードを、インスリン送出レコードデータ記憶部1220に記憶することができる。
【0109】
しかしながら、時間量が時間閾値より多い場合、インスリンポンプ36は、インスリンポンプ36が停止されたと判定する。この状況で、インスリンポンプ36は、工程1326に示されるように、インスリンの第1の量が患者に送出されたことを示す第2のインスリン送出レコードを生成する。インスリンの第1の量は、インスリンポンプ36の操作が中断された前に患者に送出されたインスリンの量である。インスリンポンプ36は、また、工程1328に示されるように、インスリンの第2の量が患者に送出されたことを示す第3のインスリン送出レコードを生成する。インスリンの第2の量は、インスリンの送出が推奨された後に患者に送出されたインスリンの量である。インスリンポンプ36は、工程1330に示されるように、第2および第3のインスリン送出レコードをインスリン送出レコードデータ記憶部1220に記憶することができる。方法1300が完了すると、インスリンポンプ36は、いずれのインスリン送出レコードをも装置10に提供することができる。
【0110】
方法1300は、例示のみのために提供され、限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。方法の変形が企図され、それらは本開示の範囲内にある。
【0111】
いくつかの実施形態において、装置10は、マルチウェーブボーラスを患者に送出する要求を受け取るように構成される。マルチウェーブボーラスは、2回またはそれ以上のインスリンの投与に亘って送出されたボーラス量である。したがって、マルチウェーブボーラスは、インスリンの最初の急速な投与とそれに続く1回またはそれ以上の追加のより遅いインスリンの投与を含む。インスリンの追加の投与は、インスリンの最初の量の投与やインスリンの他の投与とは予め決められた時間間隔によって分けられる。インスリンの追加の投与のそれぞれを分ける時間間隔は、消費された食事の種類もしくは量、患者のbGレベル、患者のインスリン感度、または任意のその他の適切な要素などの異なる要素に基づくことができる。
【0112】
ボーラス計算機22aがマルチウェーブボーラス送出の要求を受け取ると、ボーラス計算機22aは、マルチウェーブボーラスの各投与において含むインスリンの量を決定することができる。さらに、ボーラス計算機22aは、遅い投与のインスリンが送出される時間間隔を決定することができる。ボーラス計算機22a(または患者)が、最初の急速なおよび遅い投与におけるインスリンの量、および遅い投与が送出される時間を決定すると、ボーラス計算機22aは、インスリン投与を送出するようにインスリンポンプ36に指示を与えることができる。
【0113】
デバイス10がマルチウェーブボーラスをサポートするように構成されているいくつかの実施形態において、ボーラス計算機22aは、インスリンの最初の投与において送出されるインスリンの量を、患者へのボーラス推奨に基づいて決定するように構成することができる。特に、ボーラス計算機22aは、ボーラスが補正ボーラスを含むかどうかを判定する。ボーラスが補正ボーラスを含む場合、ボーラス計算機22aは、インスリンの最初の投与において送出されるインスリンの量を、補正ボーラスより大きいか、または補正ボーラスに等しい値と等しくなるように設定する。言い換えれば、患者がボーラスを要求し、最新のボーラスが補正ボーラスを含む場合、インスリンの最初の投与は、補正ボーラスに示されたインスリンの全量を少なくとも含む。ボーラスが食事ボーラスを含む場合、食事ボーラス量は、インスリンの最初の投与と追加の投与との間に分配することができる。食事ボーラスは、最初の投与と追加の投与との間に任意の適切な方法で分配することができることが理解されるべきである。しかしながら、ボーラスが食事ボーラスを含まない場合、ボーラス計算機22aは、マルチウェーブボーラスを送出する要求を拒絶する(または、マルチウェーブボーラスの選択を全く除去する)ことができ、インスリンの最初の投与のみ、すなわち補正ボーラス量を送出するようにインスリンポンプ36に指示することができる。
【0114】
図16は、患者に送出するためのインスリンの量を決定する方法1400の例を示す。説明の目的のために、方法1400は、ボーラス計算機22aによって実行されるように説明される。方法1400は、工程1410に示されるように、患者にマルチウェーブボーラスを送出する要求が受け取られると、実行を開始することができる。説明されたように、要求は、装置10のタッチディスプレイ16などのユーザインターフェースを介して患者から受け取ることができる。要求を受け取ると、ボーラス計算機22aは、工程1412および1414にそれぞれ示されるように、要求されたマルチウェーブボーラスに対応する補正ボーラス量および要求されたマルチウェーブボーラスに対応する食事ボーラス量を決定することができる。いくつかの実施形態において、ボーラス計算機22aは、ボーラス推奨がなされた最新のヒストリーレコードから、補正ボーラス量および食事ボーラス量を決定する。
【0115】
ボーラス計算機22aが補正ボーラス量を決定すると、ボーラス計算機22aは、工程1416に示されるように、補正ボーラス量がゼロよりも大きいかどうかを判定することができる。補正ボーラス量がゼロよりも大きい場合、ボーラス計算機22aは、工程1418に示されるように、最初の投与におけるインスリンの最初の量を全補正ボーラス量に等しくなるように設定する。
【0116】
ボーラス計算機22aは、さらに、工程1420に示されるように、食事ボーラス量がゼロよりも大きいかどうかを判定する。食事ボーラス量がゼロよりも大きい場合、工程1422に示されるように、ユーザは、食事ボーラス量を複数の投与に分配するように選択することができる。食事ボーラス量を追加の投与のみに分配することができるか、または最初の投与および追加の投与に分配することができることが理解されるべきである。
【0117】
マルチウェーブボーラスの各投与において送出するインスリンの量をユーザが確認すると、ボーラス計算機22aは、工程1424に示されるように、インスリンの最初の投与を送出するようにインスリンポンプ36に指示することができる。食事ボーラス推奨なしに補正ボーラス推奨が患者に行われる場合、ボーラス計算機22aは、インスリンの最初の投与を送出するようにインスリンポンプ36に指示するだけである。逆に、食事ボーラス推奨が行われる場合、ボーラス計算機22aは、追加の投与も送出するようにインスリンポンプ36に指示することができる。
【0118】
図16に示された方法1400は、例示のために提供され、限定することを意図するものではない。方法1400の変形が企図され、それらは本開示の範囲内にある。