(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サトウキビ由来生成物が、モラセス、バガス、第一圧搾液、ミルマッド、清澄化された糖液、清澄化されたシロップ、トリクル、ゴールデンシロップ、畑屑、サトウキビから剥がされた葉、及び/又はダンダーから選択される、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、機能上より有効な量でポリフェノール及び/又はフラボノイドを含み、味が改善され、色が少なく、多糖含量がより低いサトウキビ由来抽出物を製造するプロセスを開発した。本発明の抽出物は、ポリフェノールと、従来技術には企図されていない他の成分との相乗的な組み合わせを提供すると考えられる。その結果、抽出物は、食品又は飲料の嗜好性及び/又は色に著しく影響を与えずに、より少ない量で製品に加えることができる。
【0009】
したがって、一態様において、本発明は、サトウキビから誘導された抽出物を製造するプロセスであって、
i)サトウキビ由来生成物をエタノールと混合して、少なくとも約50%v/vのエタノールを含む抽出混合物を製造する工程;
ii)前記抽出混合物中に沈殿物を形成させる工程;
iii)前記沈殿物を前記抽出混合物から除去して、上澄み液を得る工程;及び
iv)前記上澄み液からエタノールを除去して、サトウキビから誘導された抽出物を製造する工程
を含むプロセスを提供する。
【0010】
抽出物は、凍結乾燥された粉末又は脱水された粉末を含む粉末でよい。好ましくは、抽出物は液体抽出物であり、より好ましくは水性抽出物である。
【0011】
一実施形態において、前記プロセスは、
i)サトウキビ由来生成物をエタノールと混合して、予備抽出混合物(例えば、少なくとも約25%v/vエタノールを含む)を製造する工程;
ii)前記予備抽出混合物中に沈殿物を形成させる工程;及び
iii)前記予備抽出混合物から前記沈殿物を除去し、予備上澄み液を得る工程
をさらに含み得る。
次いで、予備上澄み液を、上述の本発明のプロセスに付すことができる。
【0012】
当業者には明らかである通り、エタノールの代りに、イソプロパノールを使用できる。やはり当業者には明らかである通り、任意の好適な食品グレードの極性溶媒もエタノールの代りに使用できる。好適な食品グレードの極性溶媒には、ブタノール、アセトン、酢酸エチル、及び/又は酢酸プロピルがある。
【0013】
一実施形態において、前記プロセスは、抽出物から、好ましくは真空下での蒸発により水を除去して、約65°Bx(ブリックス)を有する水性抽出物を製造することをさらに含む。
【0014】
サトウキビ加工又は精製プロセスからの任意の好適な廃棄物を、本発明のプロセスにおいてサトウキビ由来生成物として使用できる。一実施形態において、サトウキビ由来生成物は、モラセス、バガス、第一圧搾液(first expressed juice)、ミルマッド、清澄化された糖液、清澄化されたシロップ、トリクル、ゴールデンシロップ、畑屑、サトウキビから剥がされた葉(cane strippings)、及び/又はダンダーから選択される。
【0015】
ある特定の実施形態において、サトウキビ由来生成物は、モラセス又はダンダー、好ましくはモラセスである。
【0016】
当業者は、場合によって、サトウキビ生成物とエタノールとの効率よい及び/又は均一な混合を可能にして抽出混合物を形成するために、サトウキビ由来生成物が水と混合されることを認識するだろう。したがって、一実施形態において、サトウキビ由来生成物は、水と、モラセス、バガス、第一圧搾液、ミルマッド、清澄化された糖液、清澄化されたシロップ、トリクル、ゴールデンシロップ、畑屑、サトウキビから剥がされた葉、及び/又はダンダーから選択される生成物との混合物を含む。
【0017】
サトウキビ由来生成物が固体成分を含む場合、エタノールと混合する前に最初にサトウキビ由来生成物をブレンド又は均質化して、抽出混合物を形成することが望ましいことがある。そのため、別な実施形態において、サトウキビ由来生成物は、水とブレンド又は均質化されたバガス、畑屑、及び/又はサトウキビから剥がされた葉である。
【0018】
当業者は、反応混合物中に沈殿物を形成させる好適な期間を容易に決定できる。一実施形態において、沈殿物は、沈殿物除去に先立ち、約10分から約24時間形成される。
【0019】
一実施形態において、沈殿物は、濾過、遠心分離により、及び/又は沈殿物を沈降させることにより、抽出混合物から除去される。
【0020】
別な実施形態において、抽出混合物は、約20℃から約30℃の温度に維持される。
【0021】
さらに別な実施形態において、エタノールは、真空下での蒸発により上澄み液から除去される。
【0022】
一実施形態において、プロセスはバッチで実施される。代りの実施形態において、プロセスは、連続流で実施される。
【0023】
別な実施形態において、プロセスは、上澄み液を、膜濾過、及び/又はイオン交換、疎水性、若しくはサイズ排除クロマトグラフィーに付す工程、並びにフラボノイド及び/又はポリフェノールを含む1つ以上のフラクションを回収して、サトウキビから誘導された
抽出物を製造する工程をさらに含む。
【0024】
好ましくは、サトウキビから誘導された抽出物は、フラボノイド及び/又はポリフェノールの混合物を含む。より好ましくは、抽出物は、無機物、ビタミン、炭水化物、有機酸、及び/又は繊維など、サトウキビ中でフラボノイド及び/又はポリフェノールと共に存在する成分をさらに含む。より好ましくは、抽出物は、フラボノイド及び/又はポリフェノールの混合物を、グリコン及びアグリコンとして含む。
【0025】
一実施形態において、上澄み液は、サイズ排除膜濾過又はサイズ排除クロマトグラフィーに付される。
【0026】
別な実施形態において、プロセスは、上澄み液を、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LCMS)、及び/又はマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)に、好ましくは疎水性相互作用クロマトグラフィーに付して、抽出物を製造する工程をさらに含む。
【0027】
一実施形態において、プロセスは、上澄み液を、食品グレード樹脂、好ましくはFPX66、又は類似のグレードの疎水性相互作用クロマトグラフィーに付す工程をさらに含む。
【0028】
本発明のプロセスの一実施形態において、抽出混合物は、約70%から約85%のエタノールを含む。
【0029】
一実施形態において、抽出物は、トリシン、アピゲニン、ルテオリン、コーヒー酸、ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、及びこれらの誘導体の1つ以上を含む。
【0030】
一実施形態において、本発明のプロセスにより製造された抽出物は、従来技術組成物に比べて、ポリフェノールの単位濃度あたりの色が低減している。抽出物の色は、上澄み液の吸光度を420nmで測定することにより分析できる。好ましくは、上澄み液は、420nmでの吸光度が約800から約140ミリ吸光(mAU)単位である。抽出物の色は、ICUMSAプロトコルを利用しても分析できる。
【0031】
別な態様において、本発明は、本発明のプロセスにより製造された抽出物を提供する。
【0032】
一実施形態において、本発明のプロセスにより製造された抽出物は、少なくとも25mg/mlのフラボノイド及び/又は少なくとも25mg/mlのポリフェノールを含む。
【0033】
特定の一実施形態において、本発明のプロセスにより製造された抽出物は、トリシン、アピゲニン、ルテオリン、コーヒー酸、ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、及びこれらの誘導体の1つ以上を含む。
【0034】
一実施形態において、本発明のプロセスにより製造された抽出物は、α−グルコシダーゼ阻害活性及び/又はα−アミラーゼ阻害活性を有する。
【0035】
一実施形態において、本発明のプロセスにより製造された抽出物は抗炎症活性を有する。
【0036】
一実施形態において、本発明のプロセスにより製造された抽出物は、カロリー値低下性及び/又は炭水化物、特に単糖類の、消化管から血液への流れを緩徐化する活性を有する。任意に、抽出物は、グリセミックス指数(glycemix index)低下性も有する。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、サトウキビから誘導された抽出物であって、少なくとも25mg/mlのフラバノイド(flavanoids)及び/又は少なくとも25mg/mlポリフェノールを含む抽出物を提供する。
【0038】
一実施形態において、サトウキビから誘導された抽出物は、トリシン、アピゲニン、ルテオリン、コーヒー酸、ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、及びこれらの誘導体の1つ以上を含む。
【0039】
別な実施形態において、サトウキビから誘導された抽出物は、α−グルコシダーゼ阻害活性及び/又はα−アミラーゼ阻害活性を有する。
【0040】
一実施形態において、サトウキビから誘導された抽出物は抗炎症活性を有する。
【0041】
一実施形態において、サトウキビから誘導された抽出物は、カロリー値低下性及び/又は炭水化物、特に単糖類の、消化管から血液への流れを緩徐化する活性を有する。任意に、抽出物は、グリセミックス指数低下性も有する。
【0042】
別な態様において、本発明は、本発明の抽出物を含む組成物を提供する。
【0043】
一実施形態において、前記組成物は、機能性食品、栄養補助食品、スポーツ栄養製品、食品コーティング、又は医薬組成物である。好ましくは、前記組成物は、栄養補助食品又は医薬組成物である。
【0044】
別な実施形態において、前記組成物は1種以上の追加の有効成分を含み得る。有効成分には、フコディアン(fucodian)及びアルカボース(arcabose)があり得るが、これらに限定されない。そのような組み合わせは相乗効果を持ち得ると考えられている。
【0045】
別な態様において、本発明は、本発明の抽出物又は本発明の組成物を含む食品又は飲料を提供する。
【0046】
一実施形態において、食品又は飲料は、ベーカリー製品、氷砂糖、菓子類、朝食用シリアル、天然誘導繊維、化学誘導繊維、酪農製品、ソフトドリンク、水、コーヒー、ココア、茶、又はアルコール飲料から選択される。
【0047】
別な実施形態において、食品又は飲料は、フルーツジュース含有飲料及び炭酸入りソフトドリンクから選択されるソフトドリンクである。
【0048】
別な態様において、本発明は、食品又は飲料のグリセミック指数を低下させる方法であって、本発明の抽出物及び/又は本発明の組成物を食品又は飲料に加えることを含む方法を提供する。
【0049】
別な態様において、本発明は、食品又は飲料の利用可能カロリー値を低下させる方法であって、本発明の抽出物及び/又は本発明の組成物を食品又は飲料に加えることを含む方法を提供する。さらに、又は代りに、前記方法は、本発明の組成物を、食品又は飲料の消費の前に、消費と組み合わせて、又は消費の後に対象に投与することを含む。
【0050】
一実施形態において、食品又は飲料は、ベーカリー製品、氷砂糖、菓子類、朝食用シリアル、天然誘導繊維、化学誘導繊維、日記製品(diary product)、ソフトドリンク、水、コーヒー、ココア、茶、又はアルコール飲料から選択される。
【0051】
特定の一実施形態において、前記食料は氷砂糖である。
【0052】
別な態様において、本発明は、対象の疾病を治療又は予防する方法であって、前記対象に、本発明の抽出物、本発明の組成物、及び/又は本発明の食品若しくは飲料を投与することを含む方法を提供する。
【0053】
一実施形態において、治療又は予防される疾病は、糖尿病及び/又は代謝症候群である。特定の一実施形態において、糖尿病はII型糖尿病である。別な実施形態において、糖尿病はI型糖尿病である。
【0054】
別な態様において、本発明は、疾病の治療又は予防に使用するための、本発明の抽出物、本発明の組成物、及び/又は本発明の食品若しくは飲料を提供する。
【0055】
別な態様において、本発明は、疾病の治療又は予防のための医薬品の製造における、本発明の抽出物、本発明の組成物、及び/又は本発明の食品若しくは飲料の使用を提供する。
【0056】
明らかである通り、本発明のある態様の好ましい特徴及び特性は、本発明の他の多くの態様に適用可能である。
【0057】
本明細書全体にわたり、「含む(comprise)」という言葉、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」などの変形体は、述べられている要素、整数、若しくは工程、又は要素、整数、若しくは工程の群の包含を意味するが、他の要素、整数、若しくは工程、又は要素、整数、若しくは工程の群の排除を意味しないと理解されるだろう。
【0058】
本発明は、下記の非限定的な例により、添付される図面を参照して、以下で説明される。
【発明を実施するための形態】
【0060】
一般的な技術及び定義
他に具体的に定義されない限り、本明細書に使用される技術用語及び科学用語は全て、当分野(例えば、化学、生化学、食品及び栄養学、細胞培養、分子生物学、及び免疫学)の技術者により通常理解されるのと同じ意味を有すると解釈するものとする。
【0061】
特記されない限り、本発明に利用される組換え型タンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は、当業者に周知である標準手順である。そのような技術は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edn, Cold Spring Harbour Laboratory Press (2001), R. Scopes, Protein Purification - Principals and Practice, 3rd edn,
Springer (1994), T.A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D.M. Glover and B.D. Hames (editors), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995 and 1996), and F.M. Ausubel et al. (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988, 現在までの全ての改訂含む), Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour
Laboratory, (1988), and J.E. Coligan et al. (editors) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons(現在までの全ての改訂含む)などの出典の文献全体にわたって記載及び説明されている。
【0062】
本明細書での「投与すること」は広く解釈されるものとし、本明細書に記載される抽出物又は前記抽出物を含む組成物を対象に投与すること、並びに本明細書に記載される抽出物又は前記抽出物を含む組成物を細胞に与えることを含む。
【0063】
本明細書では、用語「治療すること」、「治療する」、又は「治療」は、明示された疾病の発症若しくは進行を低減若しくは遅延させるか、又は疾病の少なくとも1つの症状を低減若しくは無くすのに充分な、治療上有効な量の本明細書に記載される抽出物又は前記抽出物を含む組成物を投与することを含む。
【0064】
本明細書では、「予防すること」、「予防する」、又は「予防」は、明示された病態の少なくとも1つの症状の発生を停止又は妨げるのに充分な、治療上有効な量の抽出物又は前記抽出物を含む組成物を投与することを含む。
【0065】
本明細書での用語「約」は、明示された値の±5%の範囲を意味する。
【0066】
本明細書での用語「栄養補助食品」は広く解釈されるものとし、対象の通常の食事に加えられるか、又は他の方法で含められ、通常の食事に加えて存在する調製物又は製剤を意味する。栄養補助食品は、食品又は飲料の消費の前にでも、消費と組み合わせても、消費の後にでも対象に投与できる。
【0067】
サトウキビから誘導された抽出物を製造するプロセス
抽出プロセスの原材料
機械的に回収された後、サトウキビは加工工場に輸送され、鋸歯状ローラーの間で粉砕される。次いで、粉砕されたサトウキビは圧搾されて粗糖液が抽出され、バガス(残った繊維状物質)は典型的には燃料用に使用される。次いで、粗液はその沸点まで加熱されて不純物が抽出され、次いで石灰及び漂白剤が加えられて、ミルマッドが除去される。粗液はさらに真空下で加熱されて、濃縮され、ブリックス値が増加する。濃縮されたシロップに種晶が加えられて、バルクの糖結晶及びモラセスとして知られる濃いシロップが生成する。この2つは遠心分離により分離され、典型的には、モラセス廃流は、下級の動物原材料として使用するために回収される。
【0068】
本発明のプロセスにより製造された抽出物は、サトウキビ加工プロセス、サトウキビ精製プロセス、及びサトウキビ生成物を利用する他のプロセスの間に製造されたものを含む、どのようなサトウキビ由来生成物からも誘導できる。
【0069】
したがって、本明細書での用語「サトウキビ由来生成物」は、サトウキビ加工及び精製プロセスの生成物、例えば、モラセス、バガス、第一圧搾液、ミルマッド、清澄化された糖液、清澄化されたシロップ、トリクル、ゴールデンシロップ、畑屑、サトウキビから剥がされた葉、成長している先端(growing tips)、パルプ、及びダンダーを意味する。これらのサトウキビ由来生成物は、フラボノイド、フラボン、及びポリフェノールを含む物質の複雑な混合物(Duarte-Almeida et al., 2006; Colombo et al., 2006; Payet et al., 2006; 米国特許公開第2012/0115941号)、並びにフィトステロール、オリゴ糖、多糖類、単糖類及び二糖類、有機酸(例えば、シス及びトランスアコニット酸)、ペプチド、及びタンパク質を含む。これらの成分の種類及び量は、異なるサトウキビ由来生成物の間で様々である。例えば、モラセスは単糖類及び二糖類を含むが、ダンダーにはほとんど糖成分がない。これは、ダンダーから誘導された抽出物に比べてモラセスから誘導された抽出物の嗜好性を高めるが、ダンダーは苦くあまり味が良くない。これは、例えば、ダンダーと比較したモラセスから誘導された抽出物中のポリフェノールの組成にも影響する。モラセスは、単糖類、二糖類、及び多糖類並びにセルロース及びヘミセルロース物質の炭化水素骨格に結合した、リグニンなどのポリフェノールを含む。したがって、モラセスとダンダーでは、ポリフェノールの組成が異なる。サトウキビ由来生成物から抽出されたポリフェノール及びフラボノイドなどの化合物を含む抽出物は、例えば、機能性食品及び飲料並びに栄養補助剤の製造に使用できる。好都合なことに、物質の複雑な混合物を含む抽出物は、単離された成分、例えば、トリシン、ルテオリン、若しくはアピゲニンなどの抽出物、又は合成化合物の組み合わせに比べて、向上した特性を示す。したがって、本発明による抽出物は、トリシン、アピゲニン、ルテオリン、コーヒー酸、ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、及びこれらの誘導体の1つ以上を含み得る。天然の生物学的混合物が相乗効果を有することがあり、合成された又は個別に単離された天然の生成物よりも良好になり得ると考えられている。
【0070】
本発明のプロセスにおいて、サトウキビ由来生成物は原材料として使用され、エタノールと混合されて、抽出混合物を形成する。エタノールは、フラボノイド及び/又はポリフ
ェノールの抽出に使用される。対照的に、従来技術は、エタノールを、スクロースの抽出において、又は個々のポリフェノールの単離の間のいずれかで、不純物の分解に使用する(国際公開第2004/014159号)。当業者は、フラボノイド及び/又はポリフェノールの混合物の抽出を促進するために、混合の程度すなわち均質性と同様に、原材料をエタノールと混合する速度を制御する必要があり得ることを理解するだろう。
【0071】
当業者は、サトウキビ由来生成物とエタノールの混合を促進するために、サトウキビ由来生成物が液体、典型的には水と混合され、且つ/又は所望の粘度を達成するために加熱される必要があり得ることを理解するだろう。例としては、モラセスは室温で粘性があり、その結果、モラセスとエタノールの混合は、モラセスの粘度が調整されなければ、一様に、効率よく、均一に達成するのが困難になり得る。サトウキビ由来生成物がモラセスである本発明の実施形態において、例えば、モラセスを、モラセスと水の比が約75:25から約25:75で水と混合することができる。一実施形態において、モラセスと水の比は約50:50である。
【0072】
サトウキビ由来生成物は、水と混合されていてもいなくても、加熱して粘度を下げることができる。例えば、サトウキビ由来生成物を、約25℃から約60℃に、より好ましくは約25℃から約40℃に、より好ましくは約26℃から約30℃に加熱できる。
【0073】
バガス、畑屑、及びサトウキビから剥がされた葉などの固体物質を含むサトウキビ由来生成物では、生成物が最初に、エタノールと混合して抽出混合物を形成する前に水とブレンド又は均質化されることが望ましい。サトウキビ由来生成物がブレンド又は均質化される水の量は、エタノールとの混合に好適な粘度を有するサトウキビ由来生成物を得て抽出混合物を形成するために、当業者により容易に決定できる。
【0074】
好ましくは、サトウキビ由来生成物は、約100センチポイズ以下、より好ましくは約50から約100センチポイズの粘度を有するだろう。
【0075】
モラセスの高粘度は、高い総固形分(特に可溶性炭水化物)の結果であり、これは、典型的にはブリックス度の決定により測定される。好ましくは、サトウキビ由来生成物は、約20°から約50°ブリックスを有するだろう。高いブリックス(50°を超える)を有する原材料は、エタノールの濃度を上げることによりポリフェノールの分離及び色の点で、低いブリックスを有する原材料(30°未満)とは、異なる挙動を示す。この観察は、小規模と大規模の両方の分離プロセスで重要である。
【0076】
本発明のプロセスにおいて、極端なpHが抽出混合物において避けられることも望ましい。極端なpHは、抽出混合物の成分に有害な作用を持つことがある。したがって、一実施形態において、抽出混合物は、約pH4から約pH7.5のpHを有する。
【0077】
本発明のプロセスから誘導された抽出物は、さらに精製せずに使用できる。任意に、抽出物を、精製に、好ましくは疎水性相互作用クロマトグラフィーに付してよい。精製工程により、抽出物の色の原因である色素などの不純物が除去される。対照的に、従来技術はクロマトグラフィーを利用して、個々のポリフェノールのフラクションを単離している(国際公開第2004/014159号)。
【0078】
サトウキビ由来生成物へのエタノールの添加
ポリフェノール及びフラボノイドなどの化合物を抽出するために、サトウキビ由来生成物はエタノールと混合されて、抽出混合物が形成する。本発明者らは、少なくとも50%v/vエタノールを含む抽出混合物を製造すると、反応混合物において沈殿物形成を増加させることを見出した。沈殿物を除去すると、保持された上澄み液は、好都合なことに、
50%v/v未満のエタノールを含む抽出混合物から調製された上澄み液と比較して、少ない色及び苦みを有する。
【0079】
さらに、本発明者らは、抽出混合物中のエタノールの濃度を50%v/vを超えて増やすことにより、沈殿物が除去されると、保持された上澄み液の色がさらに少なくなることを見出した(
図1)。したがって、一実施形態において、抽出混合物は、少なくとも50%v/vエタノールを含む。別な実施形態において、抽出混合物は、少なくとも51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、65%、70%、若しくは75%v/vのエタノール、又は少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、若しくは85エタノールv/vを含む。
【0080】
本発明者らは、上澄み液の色を除去する一方でポリフェノールの減少を最低にする抽出混合物中のエタノールの最適な濃度が約75%から約85%v/vであることを見出した。したがって、一実施形態において、抽出混合物は、約75%から約85%v/vのエタノールを含む。別な実施形態において、抽出混合物は約83%v/vのエタノールを含む。
【0081】
本発明者らは、約70%v/vのエタノールを含む反応混合物で色の除去が実質的に達成されるが、約80%から約83%v/vのエタノールを含む抽出混合物が、安定で6か月にわたり沈殿物を全く発生させない抽出物を生み出すことも見出した。そのため、本発明によるプロセスの一実施形態において、抽出混合物は、約80%から約83%v/vのエタノールを含む。
【0082】
沈殿物及びエタノールの除去
抽出混合物中の沈殿物の形成の後で、沈殿物は、当分野に公知である任意の好適な方法により混合物から除去できる。例えば、沈殿物は、遠心分離により分離され、上澄み液を得ることができる。或いは、沈殿物を、例えば重力下での沈降などにより、沈殿物を残す一方で上澄み液を得るのに充分な時間放置して沈降させてよい。当業者は、サトウキビから誘導された抽出物を製造するために、濾過などの他の技術を、単独又は遠心分離若しくは沈降と組み合わせて利用できることを理解するだろう。
【0083】
いったん上澄み液が得られると、エタノールは、当分野に公知である技術により除去される。非限定的な例として、エタノールは、およそ45℃以上の加熱浴と共にロータリーエバポレーターを使用することなどにより、蒸発により上澄み液から除去できる。場合によっては、上澄み液からさらに水を除去して、約64〜65°Bx(ブリックス度)を有する水性抽出物を得ることが望ましくなり得る。
【0084】
多数の抽出プロセス
本発明のプロセスの一実施形態において、前記プロセスは、複数の抽出を含む。
【0085】
予備抽出において、サトウキビ由来生成物はエタノールと混合されて、予備抽出混合物(例えば、少なくとも約25%v/vのエタノールを含む)が製造され、沈殿物が予備抽出混合物中に形成され、沈殿物が予備抽出混合物から除去され、予備上澄み液が得られる。
【0086】
次いで、さらなる抽出において、予備上澄み液はエタノールと混合されて、少なくとも約50%v/vのエタノールを含むさらなる抽出混合物が形成され、沈殿物がさらなる抽出混合物中に形成され、沈殿物がさらなる抽出混合物から除去され、さらなる上澄み液が得られ、エタノールがさらなる上澄み液から除去され、サトウキビから誘導された抽出物が生成される。さらなるエタノールは、50%抽出上澄み液に、75〜83%のエタノー
ルのエタノールレベルまで加えることができる。さらなる沈殿物が形成し、回収することができる。上澄み液は最終抽出物になり得る。
【0087】
抽出物の分別
本発明のプロセスの一実施形態において、エタノールを含む上澄み液又はエタノールが除去された抽出物は分別されて、サトウキビから誘導された抽出物が生成される。非限定的な例としては、上澄み液又は抽出物を、膜濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーに付すことができる。
【0088】
化合物を大きさに基づいて分離するための当分野に公知である技術がいくつかある。例えば、特定の分子量範囲内にある上澄み液又は抽出物の成分が、ゲル浸透クロマトグラフィー又は限外濾過などのサイズ排除処理法により分離できることが当分野に公知である。
【0089】
上澄み液又は抽出物中の成分の分離は、クロマトグラフィー技術又は技術の組み合わせ、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、段階的なpH上昇による、若しくは好適な溶媒による分別溶出を利用し得る、例えばXAD若しくは好ましくはFPX66樹脂などの食品グレード樹脂での疎水性相互作用クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LCMS)、及び/又はマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)などにより達成して抽出物を製造することもできる。
【0090】
上澄み液又は抽出物を、精密濾過、逆浸透、ゲル浸透、真空蒸発、並びに凍結乾燥、噴霧乾燥、及びトンネル乾燥があるがこれらに限定されない標準的な技術によりさらに処理することができる。
【0091】
生物学的活性に関する抽出物の試験
本発明のサトウキビ由来抽出物は、公知の技術及びアッセイを利用して生物学的活性に関して試験できる。例えば、本発明の抽出物を酵素活性に関して試験できる。非限定的な例として、抽出物をα−グルコシダーゼ阻害活性及び/又はα−アミラーゼ阻害活性に関して試験できる。
【0092】
当分野に公知である通り、α−グルコシダーゼ阻害活性は、公知の技術を利用して、酵母菌(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))α−グルコシダーゼによる4−メチルウンベリフェリル−α−D−グルコピラノシダーゼの加水分解を防ぐ試験試料の能力として測定できる。当業者により理解される通り、アカルボースを、陽性対照として前記アッセイに含めることができる。
【0093】
さらに、α−アミラーゼ阻害活性は、ブタすい臓アミラーゼが、標識されたスターチ(E−11954、Molecular Probes)を加水分解する速度を減速させる試料の能力により測定できる。当分野において理解されている通り、アカルボースを、陽性対照として前記アッセイに含めることができる。
【0094】
本発明の抽出物は、抗炎症活性に関しても試験できる。非限定的な例としては、抽出物は、プロスタグランジンE2(PGE2)活性に関して試験できる。当分野に公知である通り、PGE2阻害活性は、カルシウムイオノフォアにより刺激されるときの3T3細胞におけるPGE2産生を阻害する試験試料の能力により測定できる。当分野において公知である通り、アスピリン及びイブプロフェンを、陽性対照として前記アッセイに含めることができる。
【0095】
サトウキビから誘導された抽出物の使用
本発明のプロセスにより製造された抽出物は、経済的に有用な多種多様な用途に利用できる。
【0096】
食品及び飲料
本発明の一実施形態において、本発明のプロセスにより製造された抽出物は、食品又は飲料製品に含められる。本発明の食品又は飲料は、公知の技術を利用して当業者により製造できる。そのような食品又は飲料製品の非限定的な例は、焼いてある製品、乳製品タイプの食品及び飲料、スナックなどである。食品又は飲料に使用すべき抽出物の量は、抽出物自体が栄養分であるので、可変になり得る。
【0097】
そのため、抽出物は、あらゆる食品又は食品製品、例えば、非限定的に、砂糖、例えば氷砂糖、菓子類、スナック(甘味及び辛味)、ココア含有食品、香料、チーズ、バター、アイスクリーム、ヨーグルト、及び他の乳製品スプレッドを含む酪農製品;マーガリン、スプレッド、マヨネーズ、ショートニング、調理用油及び揚げ油、並びにドレッシングを含む油脂系製品;調理されているか、焼かれているか、他の方法で加工されているかを問わず、パン及びパスタを含む穀類系及びベーカリー製品;チョコレート、キャンディー、チューイングガム、デザート、乳製品でないトッピング、シャーベット、アイシング、及び他のフィリングを含む菓子類;並びに卵及び卵製品、スープ及び調理済みパスタなどの加工食品を含む他の多岐にわたる食品製品に使用され得る。
【0098】
そのため、抽出物は、パン、パスタ、ビスケット、ソース、スープ、バー、酪農製品(例えば、牛乳、ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム)、ケーキ、すぐに食べられる調理済みの食事、及び朝食用シリアルを含むがこれらに限定されない加工食品に組み込まれ、又は加えられることがある。
【0099】
さらに、抽出物は、ホットかコールドかを問わず、コーヒー、茶、ココア、穀類、チコリ及び他の植物抽出物系飲料、コーラ及び他の炭酸及び非炭酸ソフトドリンクを含むアルコール又は非アルコール飲料、フルーツジュース、ジュースドリンク、乳製品系飲料、及び食事代替飲料を含む飲料に使用できる。
【0100】
抽出物を、可溶性繊維(例えば、フラクトオリゴ糖)、不溶性繊維(例えば、カカオ豆繊維、サトウキビ繊維、オート麦のふすま)、天然誘導繊維(例えば、ヘミセルロース、リグノセルロース)、化学誘導繊維(例えば、イヌリン)、小麦粉、スターチ、変性スターチ、ゼラチン、又は他の食品などの食品グレード成分に加えて、ポリフェノール、フラボノイド、及び/又はサトウキビから誘導された他のファイトケミカルの濃度が高い独特な組成物又は成分を生み出すことができる。
【0101】
本発明の抽出物は、苦みを増さずにコーヒー製品の活性ファイトケミカル含量を増加させるのに特に有用である。コーヒー豆を焙煎すると、望ましいコーヒーの香りが数多く発生する。焙煎は、酸化防止剤、クロロゲン酸ラクトン、及びフェニルインダンの濃度の上昇に関連するコーヒーの苦みも生じさせる。コーヒー豆の焙煎が進むほど、クロロゲン酸ラクトン及びフェニルインダンが多く生じる。本発明の抽出物は、コーヒー製品中の活性ファイトケミカル(ポリフェノールなど)の濃度を増加させるために使用できる。
【0102】
本発明の食品又は飲料は、経口摂取可能な希釈剤又は担体を含む追加の成分を含み得る。経口摂取可能な多くの希釈剤又は担体が食品科学において知られている。それらには、製造されたシリアル、果実又は野菜製品、飲料又は飲料濃縮物、ひき肉製品又はその野菜類似品、及び医薬分野に公知である不活性な任意の希釈剤、担体、又は賦形剤があるが、これらに限定されない。
【0103】
栄養補助剤及びスポーツ栄養製品
本発明のプロセスにより製造された抽出物は、栄養補助剤に加えられても、含められてもよい。本明細書では、「栄養補助剤」は、活動における対象の全体的な栄養、健康、幸福、若しくは動作を向上させるために消費される経口摂取可能な製品及び/又は対象に追加の認識可能な栄養的若しくは生物学的利益を与える経口摂取可能な製品である。理解されるだろうが、栄養補助剤は濃縮された形態で与えてもよく、それにより食品又は飲料製品への栄養補助剤の添加ができ、適度な供給サイズで望まれる量の本発明の抽出物を消費できる。
【0104】
一実施形態において、栄養補助剤はスポーツ栄養製品である。そのため、抽出物は、非限定的な例として、スポーツパウダー、スポーツドリンク、エネルギードリンク、プレミックス、ジュース、エネルギーバー、エネルギーゲル、等張性ドリンク、及びゼラチン、スターチ系又はペクチンゼリーを含むスポーツ栄養製品に加えられてよい。
【0105】
本発明の栄養補助剤及びスポーツ栄養製品は追加の成分を含み得る。いくつかの実施形態において、本発明の2種以上の抽出物が、同じ栄養補助剤又はスポーツ栄養製剤に含まれ得る。他の追加成分には、任意の摂取可能な製品がある。好ましい追加成分には、ビタミン及び無機物などの微量栄養素又は多価不飽和脂肪酸若しくは繊維などの多量栄養素などの他の活性食品補助成分があるが、これらに限定されない。食品添加剤は、許容される分散剤及び懸濁化剤並びに水も含み得る。他の従来の栄養補助剤も、望まれる場合含まれてよい。栄養補助剤又はスポーツ栄養製品は、粉末、液体、タブレット、カプセル、溶液、濃縮液、シロップ、懸濁液、又は分散液を含むがこれらに限定されない多くの形態をとり得る。
【0106】
低GI製品
グリセミック指数すなわちGIは、炭水化物を、血糖値に対するその影響によって等級付けする。GIが低いほど、食品が消費されるとき血糖値の上昇がゆっくりだろう。いくつかの研究により、より低いGIを有する食事を食べることにより、例えば糖尿病の人々が、その平均血糖値を低下できることが示された。これは、糖尿病関連合併症にかかるリスクを下げるのに重要である。
【0107】
食品のGI値を決定するには、10〜50グラムの炭水化物を含む食品の測定された部分が、一晩絶食後に少なくとも10名の健康な人々に与えられる。指先穿刺血液試料が、次の2時間にかけて15〜30分間隔で採取される。これらの血液試料を使用して、2時間の期間の血糖反応曲線が作図される。曲線下面積(AUC)が、試験食品を食べた後の血糖値の全体的な上昇を反映するように計算される。GI値(%)は、試験食品のAUCを、基準食品(通常、グルコース又は白パン)のAUCで割り、100をかけて計算される。55以下のGI値が「低」と考えられ、56〜69が「中」と、70超が「高」と考えられる。
【0108】
低めのグリセミック指数は、炭水化物の遅い消化吸収速度を示唆し、より低いインスリン需要、より良い長期血糖制御、及び血液脂質の低下に等しいと考えられる。長年にわたり低GI食事を守った個人が、2型糖尿病と白内障並びに冠動脈性心疾患などの関連する病態の両方にかかるリスクが著しく低かったことが示された。高い血糖値又は食事後の反復する血糖「乱高下」は、脈管構造への酸化損傷を増すこととインスリン濃度の直接的な上昇の両方により、これらの疾病を促進し得る。食後高血糖症は、主に糖尿病に関連する危険因子と考えられてきたが、現在では、非糖尿病性人口のアテローム性動脈硬化及び他の病態のリスク増加も表すと考えられている。
【0109】
低GI食品は、そのゆっくりとした消化吸収のため、血糖値及びインスリン濃度の緩や
かな増加を生み出し、糖尿病(1型及び2型)の人々の血糖値及び脂質濃度の両方を改善することが示され、食欲の制御を助け空腹を遅延させるので体重制限のために利点を有することが示された。低GI食事は、インスリン濃度及びインスリン抵抗性も低下させる。
【0110】
そのため、本発明のプロセスにより製造された抽出物は、食品又は飲料に使用されて、例えば、食品又は飲料のGIを低下又は低減することができる。例としては、液体抽出物の形態の本発明の抽出物は、標準的な砂糖(サトウキビ由来でもサトウダイコン由来でも)に噴霧され、低GI砂糖が製造される。液体抽出物の形態の本発明の抽出物は、他の担体、例えば小麦粉、スターチ、バガス、又は繊維に噴霧され、これらの食品成分中のポリフェノール及び/又はフラボノイドの濃度を増加させることもできる。
【0111】
内因性で「吸着された」ポリフェノール及び他のサトウキビファイトケミカルは繊維を使用して、これらの化合物を消化管中の早い代謝変化から保護し、結腸中の特定の部位への送達を増加させるが、そこで、これら化合物は、腸の発癌又はポリープ形成に関与するシクロオキシゲナーゼ酵素を含む炎症及び他の疾病プロセスを減少させる(Cai et al.)。
【0112】
低い利用可能カロリー値製品
食品又は飲料の利用可能カロリー値は、消化されたとき食品又は飲料から利用可能なエネルギーの量に関連する。食品又は飲料中のカロリー並びに食品又は飲料のGIは、消化吸収の速度に影響を与えるが、食品又は飲料の利用可能カロリー値に寄与する。例えば、チョコレートは低GI食品であるが、それはカロリーが高く、したがって、ボンベ熱量測定を含む従来の方法により決定される利用可能カロリー値が高い。
【0113】
本発明のプロセスにより製造された抽出物は、食品又は飲料に使用されて、例えば、食品又は飲料の利用可能カロリー値を低下又は低減することができる。さらに、又は代替的に、本発明のプロセスを利用して、食品又は飲料の消費の前に、消費と組み合わせて、又は消費の後に栄養補助食品及び/又は医薬組成物を含む本発明の組成物を対象に投与することにより、食品又は飲料の利用可能カロリー値を低下又は低減することができる。このようにすると、食品又は飲料が消化されるとき、吸収される炭水化物の量は低下する。これにより、消化されるとき食品又は飲料から利用可能なエネルギーの量が効果的に低減される。例としては、液体抽出物の形態の本発明の抽出物が標準的な砂糖(サトウキビ由来でもサトウダイコン由来でも)に噴霧され、利用可能カロリー値が低下した砂糖(スクロース)が生じる。液体抽出物の形態の本発明の抽出物は、他の担体、例えば、小麦粉、スターチ、又は繊維に噴霧され、これらの食品成分中のポリフェノール及び/又はフラボノイドレベルを増加させる。当業者には明らかである通り、凍結乾燥された粉末又は脱水された粉末などの粉末を、液体抽出物の代りに使用できる。
【0114】
治療法及び予防法
西洋の食事において、食事カロリーの50〜70%は炭水化物から誘導される。およそ半分は単糖(グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、及びトレハロース)由来であり、残りは複合糖質(ヘミセルロース、ガラクタン、マンナン、及びスターチ)から生じる。スターチ以外の複合糖質は食物繊維と呼ばれ、大腸内で部分的又は完全に消化される。
【0115】
食事性炭水化物の消化は、消化管中の生理学的に制御されたプロセスである。このプロセスにおいて重要な酵素には、唾液及びすい臓のα−アミラーゼ及び腸のα−グルコシダーゼがある。口に始まって、食品は咀嚼され、唾液のα−アミラーゼと混合される。放出されるスターチは、即座に分解し始める。この加水分解プロセスは、胃の中でpH変化のために遅くなるか停止するが、すい臓α−アミラーゼが分泌される十二指腸で再開する。その結果、マルトース及びマルトトリオースがアミラーゼから、マルトース、マルトトリ
オース、グルコース、及びデキストリンがアミロペクチンから生じる。
【0116】
1960年代及び70年代に、糖尿病、肥満、及び心血管疾患におけるスクロース及びフルクトースの可能性のある寄与的役割について議論が始まった。多くの研究グループが、糖及びフルクトースを大量に消費すると血液脂質、グルコース、インスリン、及び尿酸が増加することを示して、糖及びフルクトースが糖尿病及び心臓疾患のリスクを高めることを示唆した。したがって、栄養における合衆国上院特別委員会は、個人が食事における糖の量を減らすように推奨した。
【0117】
オーストラリア、英国、及び米国における1980年から2003年の砂糖消費の分析は、精製されたスクロースの一人あたりの消費が、それぞれ23%、10%、及び20%減少したことを明らかにする。同じ時間枠にわたる肥満の罹患率は、オーストラリアで3倍増加した。高フルクトーストウモロコシシロップを含む栄養のある甘味剤全ての源が考慮される場合、一人あたりの消費はオーストラリア(−16%)及び英国(−5%)で依然として低下したが、米国では増加した(+23%)。これは、総エネルギー摂取が考慮されると、一人あたりのスクロースから得るエネルギーの変化が肥満の発生率の変化を説明しないかもしれないことを示唆する。スクロース、グルコース、又はスターチが一日あたり>100gのフルクトースに代えられた場合、0.44kg/週の体重増加が成人に観察された。最近のエビデンスは、新規のサトウキビファイトケミカルがGIを低下させ、したがって、肥満及び糖尿病のリスクを低下させることを表す。
【0118】
ヒトの体内で炭水化物の分解を担っている主要な酵素はα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼであり、これらの酵素の一方又は両方の阻害は食品のGIの低下につながり得る。インビトロでα−グルコシダーゼ及びα−アミラーゼの活性の阻害を示す本発明の抽出物は、インビボで炭水化物の吸収を遅らせ、そのため食後の血糖上昇を低減させるだろう。さらに、本発明の抽出物は、食品又は飲料のGIを低下させることができる。
【0119】
そのため、本発明のプロセスにより製造された抽出物は、糖尿病及び代謝症候群を含む疾患に関連する生物学的経路の調節に役立つ。そのため、一態様において、本発明は、本発明の抽出物、本発明の組成物、及び/又は本発明の食品若しくは飲料を対象に投与することにより、疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0120】
組成物及び投与
特定の実施形態において、本発明は、本発明の抽出物及び好適な担体又は賦形剤を含む組成物を提供する。一実施形態において、前記組成物は、薬剤的に許容できる担体を含む医薬組成物である。抽出物は、哺乳動物対象、例えばヒトへの投与に好適な医薬組成物に組み込まれる。抽出物は、剤形の被覆により医薬組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的には、「活性」化合物(すなわち、サトウキビから誘導された抽出物)及び「薬剤的に許容できる担体」を含む。以下では、「薬剤的に許容できる担体」という言葉は、医薬投与と適合性のある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張性で吸収遅延性の薬剤などを含むものとする。薬剤的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当分野において周知である。従来の媒体又は薬剤が活性化合物と非適合性である場合を除いて、そのような媒体は本発明の組成物に使用できる。補足的な活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0121】
本抽出物は、糖由来の他の抽出物に比べて、ポリフェノールの濃度(ポリフェノール(mg)/抽出物(ml))が高く、色が少ないので、抽出物は、生物活性のある化合物の治療量を送達するのに「より効果的」である。本発明に従って調製されたいくつかのシロップのより少ない色及び感覚器を刺激する渋み(organoleptic astringency)は、様々な食品及び担体における潜在的なその使用及び用途を広げる。
【実施例】
【0122】
実施例1.抽出物の調製
原材料調製
【0123】
100mlのMackay terminalモラセスをガラスビーカーに室温で(RT)量り入れた。重量は140gであった。次いで、100mlの蒸留水を加え、粘性のあるモラセスのほとんどが水と混合されるまで、ガラス撹拌棒を使って手作業で撹拌した。次いで、ビーカーをマグネティックスターラーに載せ、10〜15分間混合した。温度を26〜28℃に保った。この溶液のpHは5.4〜5.6であった。
【0124】
最終体積は200mlであった。1mlの試料を取り除き、1mlの水で希釈し、充分混合して、一滴をElla屈折計に置いた。ブリックスの読み取り値は48であった。
ARエタノール(100%v/v)による処理
【0125】
原材料(200ml)をマグネティックスターラー上のガラスビーカーに入れ、はっきりした渦が形成されるように調整し、エタノールを渦の中にゆっくりと入れて、原材料とエタノールの迅速な混合を確実にした。約30分かけて、950mlのエタノールを加えた。温度を26〜28℃に保った。これにより、混合物中の最終エタノール濃度が83%v/vになった。混合物をさらに30分撹拌した。いくつかの副試料を、エタノールの添加の間に取り、エタノールの%が増加するのにつれて溶液の色が変わり異なる色の沈殿物が形成する際の観察を支持した。
【0126】
83%エタノール上澄み液/抽出物の回収
最終混合物は濁っており、ビーカーの底に肉眼でわかるように存在している凝固した黒色のゼラチン状沈殿物があった。上澄み液を取り除き、4000rpm(2500×g)で5分間遠心分離した。黒色沈殿物の栓を遠心分離管に残して、透明な黄色上澄み液を静かに注いだ。約950mlの混合物を遠心分離して、回収された上澄み液の最終体積は880mlであった。
【0127】
上澄み液からのエタノールの除去
Buchiロータリーエバポレーターを使用して真空下でエタノールを除去した。浴温度は45℃であった。最終濃縮物(エタノールの臭気がない)体積は62mlであり、ブリックス値は64〜65であった。エタノール、そのアゼオトロフ(azeotroph)、及び水は全てこのプロセスの間に除去された。
【0128】
生物活性抽出物
最終生物活性抽出物は、濃い黄色で、粒状物質が全くなく、ゴールデンシロップ又はトリクルに類似の新鮮な甘い香りであった。
【0129】
実施例2.抽出物の調製
原材料の調製
200mlの原材料を、実施例1ですでに記載した通りMackay terminalモラセスから調製した。ブリックス値は48であった。
【0130】
ARエタノール(100%)の添加
1000mlのエタノールを、エタノールのパーセンテージの増加と共に沈殿物の形成、色、及び外観が観察できるように200mlずつ加えた。50、66、75、80、及び83%エタノール(v/v)で観察をしたが、試料は全く集めなかった。最終混合物体積(83%エタノール、v/v)は1200mlであり、これを20〜25℃で一晩放置
した(およそ18時間)。上述の通り、混合物の迅速な磁気的撹拌により作られる混合渦の中に、エタノールをゆっくりと加えた。
【0131】
83%上澄み液の回収
上澄み液を、実施例1に記載の方法と同じ方法で回収した。体積は1050mlであった。
【0132】
エタノールの除去
実施例1に記載の通り、エタノールを45℃で真空下で除去した。最終シロップ体積は78mlであり、ブリックス値は63〜65であった。それは、実施例1で回収したシロップに類似の、ほとんど同一の濃い黄色及び味であった。
【0133】
観察
50%v/vエタノールで、非晶質様凝集粒子/沈殿物が形成し、混合物は黒から灰色であった。その粒状性は、コーヒー中の凝固した牛乳の外観に類似している。
【0134】
さらにエタノールを66%v/vまで加えると、ねばねばするゼラチン状の黒色の塊が溶液から現れて、自然に沈降し始めるにつれて著しい変化が生じる。それはガラスビーカーの側面に粘着しているように見えるが、急速にビーカーの底に沈殿する。この黒い沈殿物が形成するにつれ、混合物は、より明るい黄色だが依然として濁った外観を帯びる。50%で形成した灰色の非晶質沈殿物は消失したようであり、すなわち、この新しい黒色沈殿物により「捕捉」された。別な可能性は、50と66%エタノールの間で、50%沈殿物が変化(又は再溶解する)することである。66%エタノールまでのこれらの最初の2種の沈殿物は、溶液から除かれる物質の量という点で極めて重要である。
【0135】
より多くのエタノールが加えられるにつれ、さらに濁ったカラメル色の微細な沈殿物が、最終83%上澄み液に至るまで形成した(少量)。66%と75%エタノールの間では、66%エタノールまでで生じたものに類似の、小さなねばねばするさらなる黒色沈殿物が形成した。
【0136】
実施例3.抽出物の調製
原材料の調製
一次糖加工工場から得た100mlのモラセスを使用した。粗製モラセスは、Atago−Pal 2デジタル屈折計を使用して78のブリックス値を有した。物質の重量は145gであった。先の実験に記載した通り、100mlの蒸留水を100mlのモラセスに加え、混合し、15分間撹拌して、確実に均質な原材料をつくった。最終的な原材料は49〜50のブリックス値を有した。
【0137】
増加する量のエタノール(100%v/v)を加える効果
2つの別なロットの7本の遠心分離管を使用して、10mlの原材料をそれぞれに加えた。最初の7本の管には、蒸留水を下記の通り加えた:0、10、20、30、40、50、及び60ml。2番目の7本の管には、100%v/vエタノールを下記の通り加えた:0、10、20、30、40、50、及び60ml。全ての管を混合し、室温で(25℃)90分間放置している間に3回振とうした。
【0138】
沈殿物の除去
全ての管を、先に記載の通り遠心分離した。上澄み液を回収し測定した。初期の混合物並びに上澄み液及び沈殿物の外観を、写真(データ示さず)及び目視の記述により記録した。
【0139】
原材料に対するエタノール濃度増加の概要
50%エタノールで形成した灰色の沈殿物は、他の全てのものより比較的大きく、外観が極めて異なっていた。エタノールを66%に増加させると、体積が小さい密な黒色沈殿物が生じ、50%エタノールで最初に形成した初期の灰色沈殿物の痕跡は消失した。66%エタノールで、上澄み液は透明で暗い黄色であった。エタノール濃度が増加すると、恐らくは66%で形成したよりはわずかに多く、類似の黒色沈殿物が生じた。エタノールのパーセンテージが増すにつれて、上澄み液はより明るい黄色になった。66%以降の全ての上澄み液が透明になった(残っている濁りはない)。これらの観察の概要を表1に表す。
【0140】
【表1】
【0141】
実施例4.抽出物ポリフェノール及び色の分析
上澄み液を、ポリフェノール(比色定量)及び色(A420nm)に関して分析し、エタノール濃度上昇に伴うポリフェノールの回収率及び色の除去の程度を決定した。上澄み液中のポリフェノール濃度の分析は表2に与えられており、上澄み液試料中のトリシンの分析は表3に与えられており、上澄み液試料の色の分析は表4に与えられている。
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
実施例5.α−グルコシダーゼ阻害
α−グルコシダーゼ阻害活性は、酵母(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae))α−グルコシダーゼによる4−メチルウンベリフェリル−α−D−グルコピラノシダーゼの加水分解を防ぐ試験試料の能力として測定される。
【0146】
表5は、試験した試料を列記するものである。各試料(0.5mL)を秤量し、凍結乾燥させて、その乾燥分%を決定した。次いで、試料をジメチルスルホキシド(DMSO)とDMSO:水(1:1)のいずれかに、15mg/mLの濃度で再懸濁させて、その後試料を連続的に希釈した。
【0147】
【表5】
【0148】
基質、4−メチルウンベリフェリル−α−D−グルコピラノシド、及び酵素、酵母α−グルコシダーゼを、アッセイ緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中に調製した。基質(最終濃度83μM、45μL)を、45μL酵素(最終濃度1.7mU/mL)及び10μLの試料を含む96ウェルプレートに加えた。プレートをオービタルシェーカーで30秒間混合し、20分間37℃でインキュベートした。100mMグリシンナトリウム緩衝液(100μL、pH10.6)の添加により反応を停止させ、プレートをさらに30秒間振とうし、蛍光強度を、λ
ex355nm及びλ
em460nmで測定した。フコイダンを陽性対照として使用し、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を陰性対照として使用した。
【0149】
試料は全て、ある程度のα−グルコシダーゼ阻害活性を示した。最高の活性は試料4で見られIC
50=64μg/mLであり、最低の活性は試料3で見られIC
50=1,037μg/mLであった。試料は全て陽性対照フコイダン(IC
50=0.17μg/mL)より低い活性を示した。試料6は、試料3よりもより効果的な酵素活性の低下を生み出した。当業者は、さらに濃縮すると、抽出物はより多量のポリフェノールを含み、α−グルコシダーゼ活性を阻害するのによりさらに効果的になり得ることを認識するだろう。
【0150】
実施例6.PEG2阻害
3T3細胞からのPEG2のインビトロの産生を、Cayman Chemical Prostaglandin E2モノクローナルEIA(酵素免疫アッセイ)キットを使用して測定した。細胞を、試料3及び6に曝露させて、カルシウムイオノフォアにより刺激した。次いで、細胞上澄み液をPEG2産生に関してアッセイした。試料の細胞の細胞傷害性を3T3細胞に対して試験し、観察されたPEG2阻害が細胞の細胞傷害性によるものではないことを確認した。アスピリン及びイブプロフェンを陽性対照として使用した。
【0151】
試料3及び試料6で観察された最高のPEG2阻害は、0.488μg/mLでそれぞれ29.90%及び42.33%であった。
図3に示される通り、試料6のPEG2阻害反応は、イブプロフェン(0.488μg/mLで42.14%)のものに類似していた。試料に曝露されていない対照細胞に対する、細胞中のPEG2産生の阻害は、試料がインビトロで抗炎症剤として作用することを示す。
【0152】
実施例7.イオン交換樹脂を使用するモラセスからのポリフェノールの抽出
イオン交換樹脂は、白砂糖製造に向けた第一工程の後で製造されるアフィネーション液から廃着色物質を除くために、製糖所で利用されることがある。これらの着色物質には、メラノイジン、カラメル(これらは、温度及びアルカリ性pHにより推進される糖とアミノ酸の間の反応により生成したメイラード反応生成物である)、並びにポリフェノール及びフラボノイドなどの天然の着色物質がある。アフィネーション液は樹脂により処理され、糖及び微量の着色物質は通り過ぎ、次いでこの物質はさらに加工されて食品グレードモラセスが生じる(一次加工モラセスとは極めて異なる)。樹脂は酸洗液により再生され、着色物質の一部及び少量のポリフェノールを含む洗液は廃棄される。次いで、樹脂はアルカリ性pH12〜13溶液により洗浄されるが、それにより、結合したポリフェノール及びフラボノイドが取り除かれ、この流出液が酸によりpH6.5から7.0に調整され、或いは、好ましくは酸性樹脂カラムに通されて、流出液pHが7未満であるように、アルカリがH
+イオンに「交換」される。このプロセスを、小規模に実験室で再現した。
【0153】
ポリフェノールの液体クロマトグラフィープロファイルを、最初にアフィネーション液(pH5.0〜6.0)中で、次いでアルカリ性樹脂抽出物(pH12〜13)中で、次いでこれらの抽出物を調整した後(pH6.5〜7.0)モニターした。ポリフェノールは高いpH条件に非常に敏感であり、フラボンを形成する。そのような変化はこれらの化合物の生物活性を変えることがあり、pHをアルカリから中性に反転させても、それらをその以前の生物活性特性に必ずしも戻すわけではない。
【0154】
アルカリ性pH12〜13抽出物の液体クロマトグラフィーフィンガープリントは、同じ抽出物由来であるがpH6.5〜7.0に調整されたフィンガープリントと著しく異なっていた。アルカリ性抽出物中のいくつかの大きなピークは、恐らくはフラボンへの構造変化を反映して、クロマトグラフ上で低溶離時間にシフトしたようであった。これらのアルカリ性抽出物のpHを中性pHに調整すると、ピークは長い溶離時間へシフトし、元の液体原材料から得られたピークと一致した。
【0155】
アルカリ性抽出物を14日まで室温で保存しても、液体クロマトグラフィーフィンガープリントは著しく変化せず、フラボンへのさらなる変化が時間とともに起こっていなかったことを示唆する。さらに、アルカリ性抽出物を直ちに中性に戻すと、ポリフェノールピークは14日の保存にわたって安定なままであった。
【0156】
実施例8.色の低減及びポリフェノール回収
本発明者らは、驚くべきことに、ポリフェノールを著しく喪失することなく効率よく色を除去できることを見出した。エタノール濃度を40%超に増加させる場合、より好適な抽出物が製造された。
【0157】
表6は試験した種々の試料を詳述する。
【0158】
【表6】
【0159】
試料1:遠心分離により清澄化されたTownsville Terminalモラセス。粗製モラセス(約75ブリックス)を水で25ブリックスに調整し、遠心分離した(4,000rpmで10分間)。沈殿物を廃棄した。最初の清澄化された原材料は変わらず25ブリックスであり、それを使用して75%エタノール上澄み液を製造して試料2とする。この清澄化された原材料200mlを使用して、75%上澄み液(super)抽出物を製造した。総CE/100g=808mg。ICUMSA 32,240。
【0160】
試料2:この75%上澄み液を、最初に50%沈殿物を除去し、50%上澄み液を回収し、次いで、エタノールをさらに加えて75%にすることにより製造した。沈殿物を除去し、75%上澄み液を回収し、エタノールを除去した。最終体積は80mlであり、40ブリックスであった。総CE/100mg=1356mg。ICUMSA 37,710。
【0161】
試料3:22ブリックスの(砂糖が全て除去されたため)ダンダー。ダンダーを上記と同様に遠心分離し、沈殿物を廃棄した。この清澄化されたダンダー200mlを使用して、75%上澄み液抽出物を製造した(試料4)。総CE/100mg=1169mg。ICUMSA 65,210。
【0162】
試料4:この75%上澄み液を、最初に50%沈殿物を除去し、50%上澄み液を回収し、次いでエタノールをさらに75%まで加えることにより製造した。沈殿物を除去し、75%上澄み液を回収し、エタノールを除去した。最終体積は80mlであり、32ブリックスであった。
【0163】
試料5:試料4の疎水性クロマトグラフィー抽出物。15mlの試料4から回収したFPX66物質。70%エタノールにより除かれたピークをまとめ(アリコートを合わせた)、エタノールを除去した。最終体積は25mlであった。
【0164】
試料6:試料2の疎水性クロマトグラフィー抽出物。15mlの試料2から回収したFPX66物質。70%エタノールにより除かれたピークをまとめ(アリコートを合わせた)、エタノールを除去した。最終体積は40mlであった。
【0165】
ポリフェノール回収及び色の低減計算を以下に詳述する。
【0166】
試料1及び2:(i)ポリフェノール回収−200mlの25ブリックスモラセス=808mgCE。希釈、抽出、及び縮小の後、25ブリックスは40ブリックスに増加し(
40/25=1.6)、体積は200mlから80mlに減少した(200/80=2.5)。したがって、フェノールの100%回収を達成していれば、総フェノール類は808mgCE×2.5=2020CEに増加していただろう。1356CEの総フェノールが検出され、それは1356CE/2020CE×100=67.13%の総CEが回収されたことを意味する。(ii)色の低減−色は、理論的には、32,240から80,600 ICUMSAに2.5倍増加したはずである。しかし、検出された色はわずか37,710 ICUMSAであった。したがって、色は、(80,600/37,710)2.14分の1に、又は42,890 ICUMSA単位低減された。
【0167】
試料3及び4:(i)ポリフェノール回収−200mlの22ブリックスダンダー=1,169mgCE。希釈、抽出、及び縮小の後、22ブリックスは32ブリックスに増加し(32/22=1.45)、体積は200mlから80mlに減少した(200/80=2.5)。したがって、フェノールの100%回収を達成していれば、総フェノール類は1,169mgCE×2.5=2,922CEに増加していただろう。1,797CEの総フェノールが検出され、それは、1,797CE/2,922CE×100=61.5%の総CEが回収されたことを意味する。(ii)色の低減−色は、理論的には、65,210から163,025 ICUMSAに2.5倍増加したはずである。しかし、検出された色はわずか66,030 ICUMSAであった。したがって、色は、(163,025/66,030)2.5分の1に、又は96,995 ICUMSA単位低減された。
【0168】
試料5:(i)ポリフェノール回収−15mlの出発体積から製造された25mlの試料4。したがって、フェノールの理論的希釈は(15ml/25ml=0.6)又は1,797×0.6=1,078mgCEである。試料5の分析は943mgCEであった。これは、(943mgCE/1,078mgCE)87.5%の総フェノール類が回収された(12.5%が失われた)ことを意味する。(ii)色の低減−色は、理論的には、66,030から39,618 ICUMSAに40%低減したはずである。しかし、検出された色は32,440 ICUMSAであった。したがって、色は、(39,618−32,440=7,178/39,618=18.1%)、又は7,178 ICUMSA単位低減した。したがって、FPX66クロマトグラフィー法は、フェノール類の等価な喪失なしに、ダンダーの色を低減するのにより効果的であった。12.5/18.1=69.1%。これは、除去されるICUMSA色単位ごとに、わずか30.9%のフェノール類しか除去されなかったことを意味する。
【0169】
試料6:(i)ポリフェノール回収−15mlの出発体積から製造された40mlの試料2。したがって、フェノール類の理論的希釈は(15ml/40ml=0.375)又は1,356×0.375=508mgCEであった。試料6の分析は349mgCEであった。これは、(349mgCE/508mgCE)68.7%の総フェノール類が回収された(31.3%が失われた)ことを意味する。(ii)色の低減−色は、理論的には、37,710から25,907 ICUMSAに31.3%減少したはずである。しかし、検出された色は10,960 ICUMSAであった。したがって、色は、(25,907−10,960=14,947/25,907=57.7%)又は14,947
ICUMSA単位低減した。したがって、FPX66クロマトグラフィー法は、フェノール類の等価な喪失なしに、モラセスの色を低減するのに非常に効果的であった。57.7/31.3=54.25%。これは、除去されるICUMSA色単位ごとに、わずか54.25%のフェノール類しか除去されなかったことを意味する。
【0170】
図4は、試料のHPLCフィンガープリント並びに種々の保持時間での同定されていないフェノール類及びフラボノイドのいくつかのスペクトルを示す。
【0171】
図5に示される通り、本発明者らは、75〜85%EtOHが、ポリフェノールの著しい損失無しに最大の色の低減を生み出すので最適濃度である(国際公開第2004/014159号に報告のものとは異なる)ことを観察した。
【0172】
本発明者らは、モラセスが、25ブリックスに、次いで48ブリックスに希釈され、抽出は2ステージに分けられる場合、最終抽出物の色がより少なく、ポリフェノール回収率がより高いことも観察した。したがって、標準化された抽出物を生み出す抽出方法は、
図6に示した通りである。
【0173】
本開示の広い全般的範囲から逸脱せずに、数多くの変形及び/又は改良が上述の実施形態になされ得ることが当業者により認識されるだろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で説明的であり、限定的なものでないと考えられるものとする。
【0174】
本明細書に開示されるか、又は本願の明細書に個別又は集合的に示される工程、特徴、整数、組成物、及び/又は化合物、並びに2つ以上の前記工程又は特徴のありとあらゆる組み合わせ。
【0175】
本明細書で議論及び/又は参照された全刊行物は、その全体として本明細書に組み込まれる。
【0176】
本明細書に含まれてきた文書、行動、材料、装置、物品などのどのような議論も、単に、本発明に文脈を与える目的のみのものである。これらの事柄のいずれか又は全ては、それが本願の各請求項の優先日より前に存在したので、先行技術基準の一部を形成しているか、又は本発明に関連する分野の共通一般知識であったことを認めるとはとられないものとする。
参考文献
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Duarte-Almeida et al. (2006) Plant Foods for Human Nutrition, 61:187-192.
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Payet et al. (2006) J Agric Food Chem, 54:7270-7276.