特許第6239625号(P6239625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239625車両サスペンションシステムのためのノイズサプレッサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239625
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】車両サスペンションシステムのためのノイズサプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20171120BHJP
   B60G 17/052 20060101ALI20171120BHJP
   B60G 11/27 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F04B39/00 101N
   B60G17/052
   B60G11/27
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-532461(P2015-532461)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公表番号】特表2015-534620(P2015-534620A)
(43)【公表日】2015年12月3日
(86)【国際出願番号】EP2013069943
(87)【国際公開番号】WO2014048975
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年5月21日
(31)【優先権主張番号】1217110.4
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1217117.9
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513208973
【氏名又は名称】ジャガー・ランド・ローバー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JAGUAR LAND ROVER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ジョイス
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・スパーデン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ホーキンス
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン・ダンクリー
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−148123(JP,A)
【文献】 特開2003−214405(JP,A)
【文献】 特開2001−278603(JP,A)
【文献】 特開2007−126990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
B60G 11/27
B60G 17/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエアサスペンションシステムのためのコンプレッサシステムであって、
シリンダ内に取り付けられたピストンを備えコンプレッサにして、前記シリンダが、流体を受け入れるための入口、及び圧縮された流体の移送のための出口管に連結可能な出口を有し、該コンプレッサがピストンを作動させるための駆動機構を備えるコンプレッサと、
前記出口管を通って伝達される聴覚ノイズを低減するための、前記シリンダの出口に連結されるノイズサプレッサとを備えるコンプレッサシステム。
【請求項2】
前記ノイズサプレッサは、前記圧縮された流体の流体路の一部を形成する請求項1に記載のコンプレッサシステム。
【請求項3】
車両のためのサスペンションシステムであって、車両の最低地上高を調整するための空気圧式アクチュエータを備え、前記空気圧式アクチュエータは、圧縮空気を移送するための導管を介して、前記空気圧式アクチュエータを作動させるために空気を圧縮するためのコンプレッサの出力部に連結され、前記導管は、前記コンプレッサと前記空気圧式アクチュエータとの間に加圧路を形成し、前記サスペンションシステムは、前記導管から放射される聴覚ノイズを低減するためのノイズサプレッサを備え、前記ノイズサプレッサは、前記加圧路に配置されるサスペンションシステム。
【請求項4】
前記ノイズサプレッサは反応又は反射サイレンサーである請求項3に記載のサスペンションシステム。
【請求項5】
前記ノイズサプレッサは前記導管に連結された拡張室を備える請求項3又は4に記載のサスペンションシステム。
【請求項6】
前記拡張室は、第1端壁及び第2端壁を有する円筒管を備え、前記第1及び第2端壁各々は孔を備え、第1端壁の孔は入口孔を形成し、第2端壁の孔は出口孔を形成する請求項5に記載のサスペンションシステム。
【請求項7】
第1管が前記拡張室の入口孔を前記コンプレッサに連結し、前記拡張室の出口孔が第2管により空気圧式アクチュエータに連結される請求項6に記載のサスペンションシステム。
【請求項8】
一つ又は複数の弁により前記コンプレッサにそれぞれ連結される複数の空気圧式アクチュエータを備える請求項7に記載のサスペンションシステム。
【請求項9】
車両の各主車輪を前記車両の本体又はシャーシに連結する空気圧式アクチュエータを備える請求項8に記載のサスペンションシステム。
【請求項10】
前記コンプレッサは、車体によって規定される空間内に取り付けられ、前記導管は、前記空間内に少なくとも一部が配置される請求項3に記載のサスペンションシステム。
【請求項11】
前記空間は、車両の客室を含む請求項10に記載のサスペンションシステム。
【請求項12】
前記導管は、車両の客室内に少なくとも一部が配置される請求項3に記載のサスペンションシステム。
【請求項13】
前記コンプレッサはハウジング内に取り付けられ、前記ノイズサプレッサは、前記ハウジング内に配置される請求項3に記載のサスペンションシステム。
【請求項14】
前記コンプレッサはハウジング内に取り付けられ、前記ノイズサプレッサは、前記ハウジングの外部に取り付けられる請求項3に記載のサスペンションシステム。
【請求項15】
前記コンプレッサは、車両の貨物スペース内に取り付けられる請求項3に記載のサスペンションシステム。
【請求項16】
前記コンプレッサはハウジング内に取り付けられ、前記ハウジングは、前記車両のスペア主車輪を受け入れるための凹部に配置される請求項3に記載のサスペンションシステム。
【請求項17】
前記ハウジングは、車両のスペア主車輪の凹部内に収容されるように形作られる請求項16に記載のサスペンションシステム。
【請求項18】
請求項1又は2のコンプレッサシステム、又は請求項3〜17のいずれか1項のサスペンションシステムを備える車両。
【請求項19】
車体内に配置された導管から放射されるノイズを低減する方法であって、
コンプレッサと車両の最低地上高を調整するための空気圧式アクチュエータとの間に導管を設け、
前記導管内に加圧流体をポンプ送りし、
ノイズサプレッサにより、前記導管を通じて伝達される聴覚ノイズを減衰し、これにより、前記導管から車体中へと放射される聴覚ノイズを低減する方法。
【請求項20】
車両のためのコンプレッサシステムであって、コンプレッサがシリンダ内に取り付けられたピストンを備え、前記シリンダは、流体を受け入れるための入口、及び、圧縮流体の移送のための出口管に連結可能な出口を有し、前記コンプレッサは、前記ピストンを作動させるための駆動機構を備え、前記シリンダの出口はサプレッサに連結され、前記サプレッサは、圧縮流体の圧力変動が前記サプレッサの下流に伝達されることを抑制するためのものであるコンプレッサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両サスペンションシステムのためのノイズサプレッサに関し、特に、限定はしないが、車両サスペンションシステムのエアコンプレッサのためのノイズサプレッサ、及び、車両サスペンションシステムのためのコンプレッサによって引き起こされるノイズを抑制する方法に関する。本発明の側面は、コンプレッサシステム、サスペンションシステム、車両、及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
車両の車輪を車体又はシャーシに結合するために、車両にサスペンションシステムを設けることが知られている。ある車両の用途において、最低地上高、すなわち車両の車体と地面との間の間隔を調整可能なサスペンションシステムを提供することが望ましい。特に、これは、オフロード(オフロード車両、四輪駆動、四輪駆動四輪車又はスポーツユーティリティ車両(SUV))使用を企図した車両で有利である。そのような車両は、オフロード使用の際の地上クリアランスを改善するために、増長した最低地上高を有する。車両への出入りを助長するため、サスペンションシステムは、地面(地上レベル)に対して車体を低くし得る。車両が使用されている環境に依存して、出発する前に車体を上げることが望ましいか又はそれが必要であり得る。
【0003】
他の車両用途において、質量変化(例えば、ユーザの車両への乗り込み又は降車、荷物の取り外し又は付加)の場合に車両を水平にするために使用可能なサスペンションシステを提供することが望まれる。
【0004】
気体ばね又は空気ばねを備える車両のサスペンションシステムが知れている。これら空気ばねは、車両の高さを高めもしくは低くするため、又は車両を水平にするために、膨張又は収縮させられる蛇腹又は空気袋を使用する。
【0005】
蛇腹を膨らませるため、コンプレッサは、エアラインを介して空気ばねに連結される。ある車両用途において、特にオフロード車両において、車体内に、コンプレッサ、エアライン、槽又はタンク、及び弁等の他の構成要素を取り付けることが望まれ得る(例えば、コンプレッサは貨物又は積荷スペース内に取り付けられ得る;管又はエアラインは、車両の各車輪にてコンプレッサを空気ばねに連結するため、貨物又は積荷スペース及び客室を通じて配管され得る。)。これにより、例えば平らでない路面又は緩んだ地面上の走行時において、これらの構成要素に対する損傷のリスクを低減する。
【0006】
車両客室内の耳に聞こえる(可聴)雑音を最小にすることが望ましく、そのため、車両サスペンションシステムによって引き起こされるノイズ、例えばエアコンプレッサによって生じるノイズ等を抑制することが望まれる。耳に聞こえるノイズの認識は、例えば、エステートワゴンもしくはステーションワゴン又はSUV等の共用乗客/貨物空間(容積)を含むボディスタイルを有する車両において特に鋭くなり得る。これは、コンプレッサ及び関連構成要素が乗客と同じ空間(容積)にあり得るからである。コンプレッサに関連した耳に聞こえるノイズのため、エアサスペンションシステムが取り付けられた多くの車両は、車両の乗員によって知覚されるようなインテリアサウンドの品質を管理するため、構成要素位置について妥協を強いられる。
【0007】
車両の主車輪の一つ又は複数に対しタイヤを膨らませる目的で、車両にエアコンプレッサを設けることも知られている。そのようなシステムは、セントラル・タイヤ・インフレーション・システム(CTIS)として知られている。本発明は、そのようなシステムにおいて用途を見出し得ることが想定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、エアコンプレッサの分野に改良を提供することを求め、車両に対する特定の用途を有する。本発明は、車両以外の用途に利用され得る。例えば、本発明は、他の家庭用又は工業用用途を有し得ることが予想される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の側面は、特許請求の範囲に記載した、コンプレッサシステム、サスペンションシステム、車両、及び方法を提供する。
【0010】
保護が求められる本発明の一側面によれば、車両のためのコンプレッサシステムが提供される。該コンプレッサシステムは、シリンダ内に取り付けられたピストンを備え、前記シリンダは、流体を受け入れるための入口、及び圧縮された流体の移送のための出口管に連結可能な出口を有し、該コンプレッサはピストンを作動させるための駆動機構を備え、前記シリンダの出口は、前記出口管を通って伝達される聴覚ノイズを抑制するためのノイズサプレッサに連結される。
【0011】
随意的に、前記ノイズサプレッサは、前記圧縮された流体の流体路の一部を形成する。
【0012】
保護が求められる本発明の別の側面によれば、車両のためのサスペンションシステムが提供される。該サスペンションシステムは、車両の最低地上高を調整するための空気圧式アクチュエータを備え、前記空気圧式アクチュエータは、前記空気圧式アクチュエータを作動させるために空気を圧縮するためのコンプレッサに連結され、前記空気圧式アクチュエータは、圧縮空気を移送するための導管を介して、コンプレッサの出力部に連結され、前記導管は、前記コンプレッサと前記空気圧式アクチュエータとの間に加圧路を形成し、前記サスペンションシステムは、前記導管から放射される聴覚ノイズを低減するためのノイズサプレッサを備え、前記ノイズサプレッサは、前記加圧路に配置される。
【0013】
ある実施形態において、前記ノイズサプレッサは反応又は反射サイレンサーである。
【0014】
随意的に、前記ノイズサプレッサは前記導管に連結された拡張室を備える。
【0015】
前記拡張室は、第1端壁及び第2端壁を有する円筒管を備え得る。前記第1及び第2端壁各々は孔を備え、第1端壁の孔は入口孔を形成し得、第2端壁の孔は出口孔を形成し得る。
【0016】
ある実施形態において、第1管は前記拡張室の入口孔を前記コンプレッサに連結し、前記拡張室の出口孔は、第2管により空気圧式アクチュエータに連結される。
【0017】
随意的に、前記サスペンションシステムは、一つ又は複数の弁により前記コンプレッサにそれぞれ連結される複数の空気圧式アクチュエータを備える。
【0018】
前記サスペンションシステムは、車両の少なくとも一つの主車輪を前記車両の本体又はシャーシに連結する空気圧式アクチュエータを備え得る。
【0019】
随意的に、前記コンプレッサは、車体によって規定される空間内に取り付けられ、前記導管は、前記空間内に少なくとも一部が配置される。
【0020】
ある実施形態において、前記空間は、車両の客室を含む。
【0021】
前記導管は、車両の客室内に少なくとも一部が配置され得る。
【0022】
ある実施形態において、前記コンプレッサはハウジング内に取り付けられ、前記ノイズサプレッサは、前記ハウジング内に配置される。
【0023】
他の実施形態において、前記コンプレッサはハウジング内に取り付けられ、前記ノイズサプレッサは、前記ハウジングの外部に取り付けられる。
【0024】
随意的に、前記コンプレッサは、車両の貨物スペース内に取り付けられる。
【0025】
ある実施形態において、前記コンプレッサはハウジング内に取り付けられ、前記ハウジングは、前記車両のスペア主車輪を受け入れるための凹部に配置される。
【0026】
随意的に、前記ハウジングは、前記車両のスペア主車輪をより収容するよう構成された凹部内に収容されるように形作られる。
【0027】
保護が求められる本発明の更なる側面によれば、先行する段落に記述したコンプレッサシステム又はサスペンションシステムを備える車両が提供される。
【0028】
保護が求められる本発明の更なる側面によれば、車体内に配置された導管から放射されるノイズを低減する方法が提供される。該方法は、導管内に加圧流体をポンプ送りし、ノイズサプレッサにより、前記導管を通じて伝達される聴覚ノイズを減衰し、これにより、前記導管から車体中へと放射される聴覚ノイズを低減する。
【0029】
保護が求められる本発明の更なる側面によれば、車両のためのコンプレッサシステムが提供される。該コンプレッサシステムは、コンプレッサがシリンダ内に取り付けられたピストンを備え、前記シリンダは、流体を受け入れるための入口、及び、圧縮流体の移送のための出口管に連結可能な出口を有し、前記コンプレッサは、前記ピストンを作動させるための駆動機構を備え、前記シリンダの出口はサプレッサに連結され、前記サプレッサは、圧縮流体の圧力変動が前記サプレッサの下流に伝達されることを抑制するためのものである。
【0030】
この出願の範囲内において、先行する段落、特許請求の範囲、及び/又は以下の説明及び図面に記載した種々の側面、実施形態、例、及び代替、特にそれらの個々の特徴は、独立に採用されるか又は任意の組み合わせで採用され得ることが明白に想定される。一つの実施形態に関連して記述した特徴は、そのような特徴が不適合な場合を除き、すべての実施形態に適用可能である。
【0031】
単なる例示目的として、付随図面を参照して、本発明の一つ又は複数の実施形態が以下に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明に従うエアサスペンションシステムを備える車両の平面図である。
図2図2は、図1のエアサスペンションシステムの一部の斜視図であり、説明目的のために上部カバーが取り去られている。
図3図3は、本発明の実施形態に従うノイズサプレッサの断面図である。
図4図4は、図2のエアサスペンションシステムの前記部分の斜視図であり、上部カバーが示される。
図5図5は、内径50mm、長さ50mm及び、内径5.5mmの同心状の入口孔及び出口孔を有する円筒拡張消音器の形態のノイズサプレッサのための周波数に対する減衰のシミュレーションを示すグラフである。
図6図6は、内径50mm、長さ50mm及び、内径5.5mmの同心状の入口孔及び出口孔を有する、アルミニウムから構成された円筒拡張消音器の形態のノイズサプレッサを有する車両キャビン内の周波数に対する放射ノイズの測定と、そのようなノイズサプレッサを有しない車両キャビン内の周波数に対する放射ノイズの測定との比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のノイズサプレッサ、車両サスペンションシステム及び方法の特定の実施形態の詳細な説明がここに開示される。開示した実施形態は、本発明のある側面が実施可能である態様の単なる例示であり、本発明が具現化され得る態様のすべての網羅的なリストを提示するものではないことが理解される。実際、ここに記述したノイズサプレッサ、車両サスペンションシステム及び方法は、種々の形態及び代替的な形態で具現化され得ることが理解される。図面は、必ずしも縮尺ではなく、いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張され又は最小化され得る。周知の構成要素、材料又は方法は、本開示を不明瞭にすることを避けるため、必ずしも詳細には記述されない。ここに開示したいかなる特定の構造及び機能も限定的に解釈されるべきではなく、単に、特許請求の範囲の基礎、及び、本発明を様々に使用すべく当業者に教示するための典型的基礎として解釈されるべきである。
【0034】
図1を参照して、四つの主車輪13a、13b、13c、13dが取り付けられた車体11を備える車両10が示される。車両10は、二組の車輪13a/13b、13c/13d、すなわち、一組の前主車輪13a、13bと一組の後主車輪13c、13dである。車輪の一方の組又は両方の組は、図示しない駆動系、例えば燃焼エンジン及び/又は電気モータに結合され得ることが想定される。各主車輪13a、13b、13c、13dは、空気ばね又はアクチュエータの形態のサスペンション手段(図示せず)により車体11に結合される。サスペンション手段は、サスペンションシステム12の一部を形成する。
【0035】
サスペンションシステム12は、エアコンプレッサの形態の流体圧縮手段14を含む。流体圧縮手段14は、エアライン又は管の形態の連結手段24、26、28、30、32、34、36により各主車輪13a、13b、13c、13dのサスペンション手段に結合される。連結手段24、26、28、30、32、34、36は、一般に高圧で圧縮空気を移送するための導管を提供する。該高圧は、随意的に約700kPa〜約3000kPa(7〜30Bar)、代替的に約700kPa〜約1000kPa(7〜10Bar)、他の実施形態において約900kPa〜約1400kPa(9〜14bar)である。他の実施形態において、他の圧力範囲が有益である。
【0036】
随意的に、サスペンションシステム12は、圧縮空気を貯蔵するための槽又は貯蔵タンクの形態の貯蔵手段20を備える。貯蔵手段20は、例えば、低最低地上高(該低最低地上高において、車体11は車両10に対する容易な乗り/降りを助長するために地面に対して下げられている)から、車両10が駆動される動作最低地上高へと車体11を移動させる際、車体11の高さを地面上で迅速に高めるために使用可能である。これは、車両10が動作可能となる前の遅延を低減する利点を有する。
【0037】
ある実施形態において、サスペンションシステムは、例えばセダンもしくはサルーンカー、又は主として平らな路面で使用することが企図された他の車両タイプ等の車両10を水平にする目的で単独で使用され得る。そのような用途において、貯蔵手段20は省かれ得る。これらの実施形態において、サスペンションシステム12には、ドライバーが最低地上高の変更を要求することができるシステムが設けられないかもしれない。そのため、槽20に対するニーズはより低い。槽20を省くことは、スペンションシステム12に必要なパッケージングスペースを縮小し、重量及びコストを低減する。槽20が無い場合、コンプレッサ14は、必要な場合に比べて低い車速で作動されることが必要かもしれない。より低い車速では、ロードノイズ及び/又はエンジンノイズがより少なく、そのため、コンプレッサ14からの耳に聞こえるノイズを抑制する要求が大きくなる。
【0038】
コンプレッサ14からの耳に聞こえるノイズを抑制するニーズは、車両を推進するために電気モータ等の電気推進手段を使用する完全電気車両又はハイブリッド電気車両において一層大きくなり得る。
【0039】
サスペンションシステム12は、第1リア弁ブロック16及び第2フロント弁ブロック18の形態の誘導手段を備える。第1及び第2弁ブロック16、18は、コンプレッサ14からの空気を他の構成要素、例えばサスペンションシステム12の空気ばね又は槽20等に向けるための一つ又は複数の弁を備える。付加的に、弁ブロック16、18は、空気ばね又は槽20又は他の構成要素からの空気をコンプレッサ14へと戻すように誘導するために使用され得る。
【0040】
例示の実施形態において、コンプレッサ14は、車両10の後方において貨物スペース15内に配置される。他の実施形態において、コンプレッサ14は、車体11内の他の位置に配置され得る。管24、26、28、30、32、34、36は、車体11内に、少なくとも一部が配置される。管24、26、28、30、32、34、36の一部は、車体11が少なくとも一部を形成する客室を通過する。管24、26、28、30、32、34、36は、コンプレッサ14によって引き起こされる圧力値に耐えることができるナイロン管又は他の適切な材料から構成され得る。
【0041】
コンプレッサ14及び配管24、26、28、30、32、34、36を車体11内に配置した場合、コンプレッサ14及び配管24、26、28、30、32、34、36は、客室内に耳に聞こえるノイズを発生させることが分かっている。特に、車体11内に配置された配管24、26、28、30、32、34、36は、車体11内へとノイズを発することが分かっている。これは、客室を含む車体11の空間内において特に望ましくない。この耳に聞こえるノイズは、コンプレッサ14のピストンによって作り出される圧力脈動によって引き起こされることが分かっている。該ノイズは、ピストンの動作の周波数に依存する基本周波数と、基本周波数の調波とを含む。
【0042】
この可聴の又は聴覚上のノイズは、配管24、26、28、30、32、34、36内で移送されている流体(空気等)の圧力脈動又は圧力の変動の結果である。圧力変動は、配管24、26、28、30、32、34、36の壁を振動させる。配管24、26、28、30、32、34、36の壁の振動は、配管24、26、28、30、32、34、36から車体11内への聴覚(音響)ノイズとして放射される。圧力脈動は、コンプレッサ14のピストンの相互運動の結果である。圧力脈動の周波数は、コンプレッサ14のピストンの動作速度又はポンプ周波数の特性である。圧力脈動は、ポンプ周波数に相互に関連がある基本周波数を有する。
【0043】
ある実施形態において、圧力脈動は、例えば、配管24、26、28、30、32、34、36が車体11に固定される位置における構造伝達騒音として、伝導により配管24、26、28、30、32、34、36から車体11の構造内へと伝達される聴覚ノイズ又はエネルギーを生じさせ得る。
【0044】
サスペンションシステム12は、消音器又はサプレッサの形態のノイズ抑制手段22を備える。消音器12は、拡張室を含む拡張型消音器であり、以下に詳述される。
【0045】
コンプレッサ14は、第1管34により消音器22に結合される。第2管32は、消音器22をリア弁ブロック16に連結する。リア弁ブロック16は、第3管28により第4車輪13dの空気ばねに結合される。リア弁ブロック16は、第4管28によりフロント弁ブロック18に連結される。リア弁ブロック16は、第5管36により第3車輪13cの空気ばねに連結される。リア弁ブロック16は、第6管30により槽20に結合される。フロント弁ブロック18は、第7管24により第1車輪13aの空気ばねに連結されると共に、第8管25により第2車輪13bの空気ばねに結合される。
【0046】
図2は、サスペンションシステム12の一部を例示し、また、コンプレッサ14及び消音器22を示す。コンプレッサ14は、電気モータ42の形態の駆動手段に連結されるピストン/シリンダ構成40を備える。モータ42の回転運動をピストンの直線運動へと変換するために、クランク又は他の適切な機構が使用され得る。ピストン/シリンダ構成40は、シリンダ内の空気について2段圧縮を与えるように構成される。ピストンは、第1段階において空気を圧縮するために第1方向に移動する。圧縮された空気は、シリンダの第1端部からシリンダの反対側の第2端部へと強制的に移される。この圧縮空気は、次いで、ピストンを反対方向に移動させることにより、第2端部にて第2段階において再度圧縮させられる。
【0047】
圧縮空気は、次に、乾燥ステーション44を通過する。乾燥ステーション44において、圧縮空気から湿気が除去される。乾燥ステーション44は、シリカゲル等の乾燥剤を含む室を備える。
【0048】
コンプレッサ14は、図4に最も良く示されるハウジング46/47内に取り付けられる。図2において、ハウジング46/47の上部又は蓋47は、説明目的のために取り去られている。ハウジング46は、ブラケット50に取り付けられる。ブラケット50は、車両バッテリー(図示せず)を受け入れるための空洞を含むエンクロージャ52に結合される。ブラケット50は、ブラケット50をエンクロージャに固定的に取り付けるためのボルト又はねじの形態の固定手段を含む。ブラケット50はまた、ブラケット50をエンクロージャ52(従って、コンプレッサ14が配置されるハウジング46/47)にヒンジ状に取り付けるためのヒンジ機構を含む。コンプレッサ14の電気モータ42に電力を単独で供給するため、エンクロージャ52に設けられたバッテリーが使用され得、又は、エンクロージャ52に設けられたバッテリーが、車両10に設けられた付加装置、例えば、限定はしないが、始動モータ及び点火システム又は電気車両推進モータ等に電力を供給し得ることが想定される。
【0049】
乾燥ステーション44の出口45は、第1管34に連結される。第1管34は、ハウジング46/47の壁の孔(図示せず)を通過する。第1管34は、コネクタ35により消音器22に接続される。第1管34は、コネクタ35内に押し込まれ、Oリング又は他の適切なデバイスで封止され得る。他の実施形態において、他の適切な連結手段が使用され得る。
【0050】
次に図3を参照して、消音器22は、拡張室70を規定する側壁64及び端壁60、62を有する本体を備える。第1コネクタ35は、第1端60に取り付けられる。第2コネクタ37は、第2端壁62に取り付けられる。第1端壁60は、圧縮空気が圧力下で第1コネクタ35を介して第1管34から拡張室70へと流れることを許容するように構成された入口孔66を備える。第2端壁62は出口孔68を備える。例示の実施形態において、側壁64はシリンダ(円筒)によって形成されるが、代替的断面形状を有する他の管状形態、例えば、限定はしないが、正方形管、矩形管、長円管、六角形管も想定される。例示実施形態において、入口管(第1管34)及び出口管(第2管32)は、拡張室70に対し管軸線に沿って実質上同心状に取り付けられる。他の実施形態において、入口管及び出口管の一方又は両方は、管軸線からオフセットされて(片寄らされて)取り付けられ得る。入口管及び出口管は、互いに正反対でなくてもよい。入口管及び/又は出口管は、例示の実施形態に示すように第1又は第2壁60、62で終端するのではなく、入口管又は出口管が拡張室70内で終端するように、それぞれの端壁60、62を越えて拡張室70内へと部分的に延び得る。圧縮空気は、出口孔68を通じて拡張室70を出て、第2コネクタ37を介して第2管32内へと入る。入口孔66及び出口孔68それぞれは、第1又は第2管34、32の各一方の内側断面積の寸法と実質的に等しい寸法を有する。例示の実施形態において、第1及び第2管34、32は円形断面を有し、内部面積は内径d1に依存する。第2管32は、第1管34と同じ寸法を有する。
【0051】
拡張室70は、第1端壁60及び第2端壁62において、導管の断面積の急激な変化を与える。拡張室70の内側断面積は、第1管34の内側断面積よりも大きくなるように選択される。断面積の変化は、第1管34内で移送されている音響エネルギーの一部を反響し又は消散する。
【0052】
拡張室70は、反応又は反射サイレンサーを形成する。音響エネルギーは、室内の第1端壁60及び第2壁62で反射される。音響エネルギーの減衰又は伝達ロスは、第1管34と拡張室70との間の断面積の変化に依存する。第1管34及び/又は第2管32の内部断面積に対して拡張室70の内部断面積が大きくなるほど、最大減衰は増長する。音響エネルギーの減衰又は伝達ロスも拡張室70の長さに依存する。拡張室70の長さが、伝達されるノイズの波長の1/4の奇数倍と一致する場合、最大減衰が成し遂げられる。このように、消音器22は、フィルタ固有ノイズ周波数に対して最適化又は同調可能である。ある実施形態において、消音器22の長さは、関心のある周波数範囲内に定常波又は共振を引き起こすことを避けるために調整され得、又は、代替的に、コンプレッサ14によって引き起こされた可聴周波数(基本周波数又は高調波周波数)に対し、減衰又は伝達ロスにおいて任意の消音点(ヌル)が異なる周波数で生じることを確実にするために調整され得る。
【0053】
消音器22は、ノイズ又は音響エネルギーが配管24、26、28、30、32、34、36に沿って所定の音響スペクトル又は帯域幅にわたって伝達されることを抑制する。配管24、26、28、30、32、34、36に沿って又はそれらを通ってノイズが伝達されることを抑制することにより、配管24、26、28、30、32、34、36から又はそれらにより車体11中へと放射されるノイズは低減される。
【0054】
ノイズ抑制手段22は、圧力変動の振幅を、拡張室70の下流に伝達されることから低減することも認識される。特に、ノイズ抑制手段22は、圧力変動、特に圧力脈動の基本周波数よりも高い周波数における圧力変動を低減又は抑制する。配管24、26、28、30、32、34、36における圧力動脈を抑制することにより、ノイズ抑制手段22は、配管24、26、28、30、32、34、36の壁における、そうでなければ生じる振動を減らすように動作する。これにより、車体11が規定する空間中に放射されるか又は車体11の構造に伝導される配管24、26、28、30、32、34、36から車体11内への聴覚ノイズの伝達を抑制する。
【0055】
一実施形態において、配管24、26、28、30、32、34、36は、5.5mmの内径を有し、拡張室の内径は50mm、拡張室の長さは50mmであった。図5は、0から2kHzの周波数範囲における消音器22の減衰のシミュレーションを示す。該シミュレーションは、250Hzから2kHzの周波数範囲にわたっての20dB又はそれ以上の減衰を示す。該シミュレーションは、消音器22の壁60、62、64が完全に剛性であり、かつ消音器が50mmの内径、50mmの長さ及び内径5.5mmで同心状の入口孔及び出口孔を有する円筒拡張消音器として形成されることを前提とする。
【0056】
図6は、ノイズサプレッサを有する車両キャビン内とのノイズサプレッサを有しない車両キャビン内との周波数に対する放射ノイズの測定の比較を示す。ノイズサプレッサは、アルミニウムから形成された円筒拡張消音器として構成された。該円筒拡張消音器は、50mmの内径、50mmの長さ、及び、内径5.5mmの同心状の入口孔及び出口孔を有する。図6は、消音器22が500Hz付近から1600Hzへと車体11内における放射ノイズの20dB減衰を実現したことを例示する。実線は、ノイズサプレッサを使用しない車両キャビン内の聴覚ノイズレベルを示す。破線は、ノイズサプレッサが高圧エアラインに取り付けられた場合の車両キャビン内の聴覚ノイズレベルを示す。
【0057】
次に図4を参照して、コンプレッサは、ハウジング46/47によって覆われる。車両10内の適所で示される。コンプレッサ14は、貨物スペース15内に配置され、かつ貨物スペース15の床76における凹部74に取り付けられる。該凹部は、スペア又は非常時主車輪(図示せず)を受け入れるように適合される。コンプレッサハウジング46/47は、前記スペア又は非常時車輪における空隙内に受け入れられるように適合及び構成されている。このように、スペア又は非常時車輪は、凹部74内のコンプレッサハウジング46/47にわたって配置される。コンプレッサハウジング46/47は、スペア又は非常時車輪(図示せず)を固定するための凹部49を備える。凹部49には、車両床76にスペア車輪を確実に固定するためのボルト等の手段が更に設けられる。コンプレッサハウジング46/47は、実質的に半円形又はU字形である。ハウジング46/47の蓋部47は輪郭を浮き上がらせ、半径方向に配列される起伏を含む。蓋47のこれらの起伏は、スペア又は非常時主車輪に設けられたスポーク又は他の特徴を収容するように構成され得る。これは、コンプレッサハウジング46/57に対する車輪の整列を助長し得、及び/又は、蓋部47の強さ又は剛性を高め得ることが想定される。
【0058】
例えば、本発明の他の実施形態において、本発明の範囲内で種々の変更がなされ得ることが理解され得る。消音器22は、十分な硬さを有する代替的な材料から構成され得ることが想定される。一実施形態において、消音器22は、配管24、26、28、30、32、34、36と同じ材料から構成され得る。例えば、消音器22はナイロンから構成され得る。ある実施形態において、消音器22は、配管24、26、28、30、32、34、36と一体成形され得る。ある実施形態において、消音器22の外側面は、拡張室70の剛性を高めるために、リブ又は他の壁の肉厚化の形態の強化手段を備え得る。他の実施形態において、消音器22は、コンプレッサハウジング46/47内に取り付けられ得る。消音器22は、コンプレッサ出口45に直接的に連結され得、又は、乾燥ステーション44とピストン/シリンダ構成42との間に配置され得る。本発明の更なる実施形態において、消音器22は、拡張室内に取り付けられる一つ又は複数のバッフルを備え得る。ある実施形態において、消音器22は、乾燥ステーション44又はピストン/シリンダ構成40と一体化され得る。更に別の実施形態において、消音器22は、異なる形態、例えば、限定はしないが、第1管34の横に並ぶサイドブランチ又は管として形成される四分の一波長共鳴器の形態、又は、例えばスロートを介して第1管34と連通する閉じた空間(例えば球)として実現されるヘルムホルツ共鳴器の形態を採り得る。
【0059】
本開示は以下を記述する。
1.車両のエアサスペンションシステムに対するコンプレッサであって、コンプレッサは、空気等の流体を受け入れるための入口、及び、圧縮流体の移送のための出口管に連結可能な出口を有する圧縮手段を備える。前記コンプレッサは、圧縮手段を作動させるための駆動機構を備える。前記出口は、聴覚ノイズが前記出口管を通じて伝達されることを抑制するためのノイズサプレッサに連結される。
【0060】
2.車両のためのサスペンションシステムであって、車両の最低地上高を調整するためのバイアス手段を備える。バイアス手段は、バイアス手段を作動させるために空気を圧縮するためのコンプレッサに連結される。バイアス手段は、圧縮空気を移送するための導管によりコンプレッサの出力部に連結される。前記導管は、コンプレッサとバイアス手段との間に加圧路を形成する。前記システムは、前記導管から放射される聴覚ノイズを低減するためのノイズサプレッサを備える。前記ノイズサプレッサは前記加圧路に配置される。
【0061】
3.バイアス手段が空気ばねである上記段落2のサスペンション手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6