【文献】
American Journal of Pathology,2009年,Vol.174,No.3,p1109−1119
【文献】
Journal of Cellular Physiology,2002年,Vol.193,No.1,p73−79
【文献】
International Journal of Biochemistry and Cell Biology,2003年,Vol.35,No.2,p113−118
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対象が、慢性腎疾患、血液透析およびII型糖尿病、動静脈グラフト/シャント、動脈および静脈グラフト、組織工学による血管および弁移植片、パジェット病、関節リウマチ、骨粗鬆症、または変形性関節症を含む、ミネラル不均衡またはカルシウム/リン酸障害を有する、請求項8記載の使用。
石灰化またはそれに起因する臨床的合併症の阻害を必要とする対象への投与用の、該対象における石灰化またはそれに起因する臨床的合併症を阻害するための医薬の製造における、治療有効量の化合物の使用であって、該化合物が核酸であり、かつSMC中のソルチリン1をコードする核酸の発現を阻害する、使用。
前記対象が、慢性腎疾患、血液透析およびII型糖尿病、動静脈グラフト/シャント、動脈および静脈グラフト、組織工学による血管および弁移植、パジェット病、関節リウマチ、骨粗鬆症、または変形性関節症を含む、ミネラル不均衡またはカルシウム/リン酸障害を有する、請求項13記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
一局面では、本明細書においてSMCの石灰化を低下、阻害、または予防する方法が提供される。概して本発明は、ソルチリン1を阻害することを含む。いくつかの態様では、該方法は、化合物をSMCと接触させる段階を含み、ここで、該化合物は、(i)SMC中のソルチリン1の活性もしくは量;(ii)SMC中のソルチリン1をコードする核酸の発現;または(iii)セリン819もしくは/および825のリン酸化を低下、阻害、予防、または低減する。
【0017】
ソルチリンの活性またはその発現を低下、阻害、予防、または低減することができる化合物は、また、本明細書においてソルチリンインヒビターと呼ばれる。
【0018】
ソルチリン1をコードする核酸の活性、量または発現に関する用語「低下する」、「阻害する」、「低減した」、または「低減」は、一般に、統計的に有意な量の低下を意味する。しかし、疑問を避けるために、「低減した」、「低減」または「低下する」または「阻害する」は、参照レベルに比べて少なくとも10%の低下、例えば少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%の低下であるが100%(例えば、参照試料に比べて不在のレベル)ではない低下を意味する。いくつかの態様では、低下は、100%(例えば、検出限界未満のレベル)でありうる。参照レベルは、インヒビターの不在下のレベルでありうる。
【0019】
本明細書に開示される方法は、アテローム動脈硬化性石灰化、中膜石灰化、大動脈弁石灰化、および心血管石灰化によって特徴づけられる他の状態を予防または治療するために使用することができる。例えば、本明細書に開示される方法は、血液透析で処置されている重症腎不全、血液透析AVグラフト/シャント、静脈グラフト、様々な血管吻合、糖尿病、パジェット病、関節リウマチ、骨粗鬆症、またはいくつかの形態の変形性関節症を含む、任意のミネラル不均衡障害を有する患者における石灰化を予防または治療するために使用することができる。理論に縛られることを望まないが、これらの適応において、血管または弁石灰化の進行は、数週間〜数ヶ月以内に発症しうる。いくつかの態様では、血管/弁(例えば大動脈弁、僧帽弁輪)の石灰化は、慢性腎不全または末期腎疾患に関連しうる。いくつかの態様では、血管/弁石灰化は、透析前もしくは透析後または尿毒症に関連しうる。いくつかの態様では、血管/弁石灰化は、IまたはII型糖尿病に関連しうる。いくつかの態様では、血管/弁石灰化は、心血管障害に関連しうる。いくつかの態様では、血管石灰化は、骨疾患(パジェット病、関節リウマチ、骨粗鬆症、変形性関節症)に関連しうる。
【0020】
したがって、対象における石灰化、例えば心血管石灰化を低下、阻害、予防または治療するための方法も、本明細書に提示される。該方法は、対象におけるソルチリン1の活性、量または発現レベルを阻害する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、それを必要とする対象に化合物を投与する段階を含み、ここで、該化合物は、
(i)SMC中のソルチリン1の活性もしくは量;
(ii)SMC中のソルチリン1をコードする核酸の発現;または
(iii)セリン819もしくは/および825のリン酸化
を低下、阻害、または低減する。
【0021】
いくつかの態様では、インヒビターは、細胞外マトリックスのヒドロキシアパタイト結晶沈着物の形成、核形成、凝集、成長または沈着を遅延または後退させる。いくつかの態様では、インヒビターは、細胞外マトリックスのヒドロキシアパタイト結晶沈着物の形成、核形成、成長または沈着を阻止する。いくつかの態様では、インヒビターは、マトリックス小胞の放出、核形成および石灰化を防止する。
【0022】
理論に縛られることを望まないが、インヒビターは、ソルチリン1自体または分子もしくは酵素に直接に、またはソルチリン1に作用する経路に作用しうる。例えば、本明細書において報告される研究が実証しているように、ソルチリン1はマイクロRNA 125b(mir-125b)のターゲットである。したがって、miR-125bはSORT1の3'UTRに結合してその発現を抑制するので、miR-125bレベルを増加させることができる化合物または組成物は、SORT1の発現を抑制しうる。
【0023】
本発明者らは、ソルチリン1のサイレンシングが、アルカリホスファターゼ活性、マトリックスミネラル化、マトリックス小胞の放出を顕著に低減し、そのような小胞の石灰化能力を増加させたことを発見した。したがって、いくつかの態様では、ソルチリンインヒビターは、組織非特異的アルカリホスファターゼ活性(TNAP)を少なくとも10%阻害または低減し、例えば少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%低下させるが、100%(例えば、参照試料に比べて不在のレベル)は低下させない。いくつかの態様では、低下は100%でありうる(例えば、検出限界未満のレベル)。参照レベルは、インヒビター不在下でのレベルでありうる。
【0024】
本発明者らは、ソルチリン1がTNAPおよびカベオリン-1に結合することを示した。したがって、いくつかの態様では、ソルチリンインヒビターは、TNAPおよび/またはカベオリン-1へのソルチリン1の結合を阻害しうる。いくつかの態様では、ソルチリンインヒビターは、TNAPおよび/またはカベオリン-1へのソルチリン1の結合を少なくとも10%、低下、阻害、防止または低減し、例えば少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%低下させるが、100%(例えば参照試料に比べて不在のレベル)は低下させない。いくつかの態様では、低下は100%(例えば、検出限界未満のレベル)でありうる。参照レベルは、インヒビター不在下のレベルでありうる。
【0025】
いくつかの態様では、ソルチリンインヒビターは、マトリックスミネラル化を少なくとも10%低下させることができ、例えば少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%低下させるが、100%(例えば、参照試料に比べて不在のレベル)は低下させない。いくつかの態様では、低下は、100%(例えば、検出限界未満のレベル)でありうる。参照レベルは、インヒビター不在下のレベルでありうる。
【0026】
本発明者らは、また、ソルチリン1とリン酸調節エンドペプチダーゼ(PHEX)との間に有意な逆相関があることを発見した。ソルチリン1の阻害は、PHEXの発現レベルを増加させた。したがって、いくつかの態様では、ソルチリンインヒビターは、PHEXの発現を少なくとも10%増加させることができ、例えば少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも1倍、少なくとも1.25倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍以上増加させる。参照レベルは、インヒビター不在下のレベルでありうる。参照レベルは、インヒビター不在下のレベルでありうる。
【0027】
本発明者らの研究に基づき、本発明者らは、さらに、ソルチリン1がマイクロRNA 125b(mir125b)に関するターゲットであることを発見した。mir125bは、SORT1の3'UTRに結合し、その発現を抑制する。したがって、理論に縛られることを望まないが、mir125bの発現を増加させる化合物または組成物は、SORT1の発現を抑制することによってソルチリン1を阻害するために使用することができる。したがって、いくつかの態様では、ソルチリンインヒビターは、マイクロRNA 125bの発現レベルを少なくとも10%増加させることができ、例えば少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも1倍、少なくとも1.25倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍以上増加させる。参照レベルは、インヒビター不在下のレベルでありうる。
【0028】
非限定的に、インヒビターは、有機または無機小分子;糖類(saccharine);オリゴ糖;多糖;生体高分子、例えばペプチド、タンパク質、ならびにペプチド類似体および誘導体;ペプチド模倣体;抗体およびその抗原結合フラグメント;核酸;核酸類似体および誘導体;細菌、植物、真菌、または動物細胞などの生物学的材料から調製された抽出物;動物組織;天然または合成組成物;ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されうる。
【0029】
いくつかの態様では、インヒビターは小分子である。本明細書に使用されるように、用語「小分子」は、「天然物様」である化合物を表しうるが、しかし、用語「小分子」は、「天然物様」化合物に限定されない。むしろ小分子は、典型的には、それが数個の炭素-炭素結合を含み、5000ダルトン(5kDa)未満、好ましくは3kDa未満、なおより好ましくは2kDa未満、最も好ましくは1kDa未満の分子量を有することで特徴づけられる。ある場合には、小分子が700ダルトン以下の分子量を有することが好ましい。
【0030】
いくつかの態様では、インヒビターは、核酸分子またはその類似体もしくは誘導体である。本明細書に使用されるように、用語「核酸」もしくは「オリゴヌクレオチド」または本明細書における文法的等価物は、一緒に共有結合している少なくとも2個のヌクレオチド(その類似体または誘導体を含む)を意味する。例示的なオリゴヌクレオチドには、非限定的に、一本鎖および二本鎖siRNAならびに他のRNA干渉試薬(RNAi剤またはiRNA剤)、shRNA(短鎖ヘアピン型RNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、リボザイム、およびマイクロRNA(miRNA)が含まれる。核酸は、一本鎖または二本鎖でありうる。核酸は、DNA、RNA、または核酸がデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの任意の組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシンおよびグアニンの任意の組み合わせを含有するハイブリッドでありうる。核酸は、1つまたは複数の主鎖改変、例えばホスホロアミダート(Beaucage et al., Tetrahedron 49(10):1925 (1993)およびその中の参考文献; Letsinger, J. Org. Chem. 35:3800 (1970))、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、O-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press参照)、またはペプチド核酸結合(Egholm, J. Am. Chem. Soc. 114:1895 (1992); Meier et al., Chem. Int. Ed. Engl. 31:1008 (1992);およびNielsen, Nature, 365:566 (1993)を参照されたい。これら全ての内容は、参照により本明細書に組み入れられる)を含みうる。核酸は、また、ヌクレオチドの核酸塩基および/または糖部分に改変を含みうる。糖部分での例示的な糖改変には、2'-OHからハロゲン(例えばフルオロ)、O-メチル、O-メトキシエチル、NH
2、SHおよびS-メチルへの置換が含まれる。いくつかの態様では、核酸はペプチド核酸(PNA)である。理論に縛られることを望まないが、核酸インヒビターは、複合体の構成要素をコードする核酸の発現または量を低下、阻害、または低減することができる。任意のターゲット配列にターゲティングされた核酸インヒビター、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、リボザイム、アプタマーなどを産生させるためのハイスループットスクリーニングアッセイを含む計算法および実験法は、当技術分野において公知であり、当業者に利用可能である。
【0031】
いくつかの態様では、インヒビターは短鎖干渉RNA(siRNA)である。本明細書において「低分子干渉RNA」とも呼ばれる用語「短鎖干渉RNA」(siRNA)は、ターゲット遺伝子の発現を、例えばRNAiによって阻害するように機能する薬剤として定義される。siRNAは、化学合成することができ、それはインビトロ転写によって産生させることができるか、または、宿主細胞内で産生させることができる。siRNA分子は、また、不活性化されるべきメッセージに一方の鎖が同一である二本鎖RNAの切断によって生成させることができる。用語「siRNA」は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する低分子干渉RNA二本鎖を表す。これらの分子は、長さが多様な場合があり(概して塩基対18〜30個)、アンチセンス鎖に、それらのターゲットmRNAに対する様々な程度の相補性を含みうる。全てではなく、いくつかのsiRNAは、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の5'または3'末端に不対のオーバーハング塩基を有する。用語「siRNA」には、2つの別々の鎖の二本鎖および二本鎖領域を含むヘアピン構造を形成できる一本鎖が含まれる。
【0032】
いくつかの態様では、インヒビターは、ソルチリン1をコードする核酸、例えばSORT1のアンチセンス配列の部分(例えば10〜50、12〜40、15〜30、16〜25、または18〜22個の連続ヌクレオチド)を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNA分子である。ヒトSORT1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_002959.4によってアクセスすることができる。いくつかの態様では、ソルチリン1をコードする核酸はSORT1 mRNAである。
【0033】
いくつかの態様では、インヒビターは、核酸配列
を含む。
【0034】
いくつかの態様では、インヒビターは、抗体またはそのフラグメントである。用語「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖Fv抗体フラグメント、Fabフラグメント、およびF(ab)
2フラグメントが含まれる。ソルチリン1に対して特異的結合親和性を有する抗体は、標準法により産生させることができる。または、抗体は、例えばR&D Systems, Inc., Minneapolis, Minnから市販されうる。
【0035】
本明細書に使用されるように、用語「抗体」は、無傷抗体、または特異的結合を無傷抗体と競合する、その結合フラグメントを表し、それらには、キメラ、ヒト化、完全ヒト、および二重特異性抗体が含まれる。いくつかの態様では、結合フラグメントは、組み換えDNA技法によって産生される。追加的な態様では、結合フラグメントは、無傷抗体の酵素的または化学的切断によって産生される。結合フラグメントには、非限定的に、Fab、Fab'、F(ab')
2、Fv、および単鎖抗体が含まれる。
【0036】
具体的に注記しない限り、抗体に関して本明細書において使用されるように、「そのフラグメント」は、免疫特異的フラグメント、すなわち抗原特異的または抗原結合フラグメントを表す。
【0037】
抗原内に含有される特定のエピトープに対する抗体の均一集団であるモノクローナル抗体は、標準的なハイブリドーマ技法を用いて調製することができる。特に、モノクローナル抗体は、Kohler, G. et al., Nature, 1975, 256:495によって記載されたような連続培養細胞系、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosbor et al., Immunology Today, 1983, 4:72; Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1983, 80:2026)、およびEBV-ハイブリドーマ技法(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 1983, pp. 77-96)により抗体分子の産生を提供する任意の技法によって得ることができる。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、およびそれらの任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスでありうる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養することができる。
【0038】
ポリクローナル抗体は、特定の抗原に特異的な抗体分子の不均一集団であって、免疫処置された動物の血清中に含有される不均一集団である。ポリクローナル抗体は、周知の方法を用いて産生される。キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するキメラ抗体などの、異なる部分が異なる動物種由来である分子である。キメラ抗体は、標準技法により産生させることができる。複合体の構成要素に対して特異的結合親和性を有する抗体フラグメントは、公知の技法によって生成させることができる。例えば、そのようなフラグメントには、非限定的に、抗体分子のペプシン消化によって産生されうるF(ab')
2フラグメントおよびF(ab')
2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成されうるFabフラグメントが含まれる。または、Fab発現ライブラリーを構築することができる。例えば、Huse et al., 1989, Science, 246: 1275を参照されたい。単鎖Fv抗体フラグメントは、アミノ酸架橋(例えばアミノ酸15〜18個)を経由してFv領域の重鎖および軽鎖フラグメントを連結して単鎖ポリペプチドを生じさせることによって形成される。単鎖Fv抗体フラグメントは、標準技法により産生させることができる。例えば、米国特許第4,946,778号を参照。
【0039】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウス性である。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントはウサギ由来である。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントはラット由来である。他の態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントはヒト性である。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、組み換え、操作、ヒト化および/またはキメラである。
【0040】
いくつかの態様では、本発明の方法に使用するための抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、ターゲット分子(例えばソルチリン1)の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合し、すなわち、それが無関係またはランダムなエピトープに結合するよりも容易にそのようなエピトープに結合し;ソルチリンの少なくとも1つのエピトープに優先的に結合し、すなわち、それが関係する、類似の、相同な、または類縁のエピトープに結合するよりも容易にそのようなエピトープに結合し;それ自体が、ターゲット分子(例えばソルチリン1)のエピトープに特異的または優先的に結合する参照抗体の結合を競合的に阻害し;あるいはターゲット分子(例えばソルチリン1)の少なくとも1つのエピトープに解離定数Kd約5×10
-2M、約10
-2M、約5×10
-3M、約10
-3M、約5×10
-4M、約10
-4M、約5×10
-5M、約10
-5M、約5×10
-6M、約10
-6M、約5×10
-7M、約10
-7M、約5×10
-8M、約10
-8M、約5×10
-9M、約10
-9M、約5×10
-10M、約10
-10M、約5×10
-11M、約10
-11M、約5×10
-12M、約10
-12M、約5×10
-13M、約10
-13M、約5×10
-14M、約10
-14M、約5×10
-15M、または約10
-15Mによって特徴づけられる親和性で結合する。
【0041】
いくつかの態様では、抗体またはそのフラグメントは、マウスソルチリンポリペプチドまたはそのフラグメントよりも優先的にヒトソルチリンポリペプチドまたはそのフラグメントに結合する。
【0042】
抗体結合解離定数に関連して使用されるように、用語「約」は、抗体親和性を測定するために利用される方法に固有の変動度を見込んでいる。例えば、使用される計装の精度レベル、測定される試料数に基づく標準誤差、および丸め誤差に応じて、用語「約10
-2M」は、例えば0.05M〜0.005Mを含みうる。
【0043】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法において使用するための抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、約5×10
-2sec
-1、約10
-2sec
-1、約5×10
-3sec
-1、約10
-3sec
-1、約5×10
-4sec
-1、約10
-4sec
-1、約5×10
-4sec
-1、約10
-4sec
-1、約5×10
-5sec
-1、約10
-5sec
-1、約5×10
-6sec
-1、約10
-6sec
-1、約5×10
-7sec
-1、または約10
-7sec
-1以下の解離速度(k(off))でソルチリンポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは変異体と結合する。
【0044】
他の態様では、本明細書に記載の方法において使用するための抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、約10
3M
-1sec
-1、約5×10
3M
-1sec
-1、10
4M
-1sec
-1、約5×10
4M
-1sec
-1、10
5M
-1sec
-1、約5×10
5M
-1sec
-1、10
6M
-1sec
-1、約5×10
6M
-1sec
-1、10
7M
-1sec
-1、または約5×10
7M
-1sec
-1以上の結合速度(k(on))でソルチリンポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは変異体と結合する。
【0045】
本明細書に記載の方法において使用するための抗体の結合親和性および解離速度は、当技術分野において公知の任意の方法によって決定することができる。例えば、結合親和性は、競合ELISA、RIA、BIACORE(商標)、またはKINEXA(商標)技法によって測定することができる。解離速度もまた、BIACORE(商標)またはKINEXA(商標)技法によって測定することができる。結合親和性および解離速度は、例えばBIACORE(商標)を使用する表面プラズモン共鳴によって測定される。
【0046】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法において使用するための抗体または抗原結合フラグメントは、ソルチリンへの第2の分子の結合を調節する。いくつかの態様では、調節は、ソルチリンへの第2の分子の結合の強化である。いくつかの態様では、調節は、ソルチリンへの第2の分子の結合の阻害である。そのような阻害のIC50は、当技術分野において公知の任意の方法、例えばELISA、RIA、または機能的拮抗によって測定することができる。いくつかの態様では、IC50は、0.1から500nMの間である。いくつかの態様では、IC50は、10から400nMの間である。なお他の態様では、抗体またはその部分は、60nMから400nMの間のIC50を有する。
【0047】
本発明の方法に使用するための抗体は、適切な宿主(例えばヒト、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、爬虫類、魚類、両生類を含む脊椎動物、および鳥類、爬虫類および魚類の卵の中)の免疫処置によって生成させることができる。そのような抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルでありうる。いくつかの態様では、宿主は、免疫原性ソルチリンで免疫処置される。他の態様では、宿主は、無傷細胞または破壊細胞の細胞膜に結合したソルチリンで免疫処置され、本発明の方法に使用するための抗体が、ソルチリンへの結合によって確認される。
【0048】
いくつかの態様では、ソルチリン抗原は、免疫応答を刺激するためのアジュバントと共に投与される。アジュバントは、多くの場合に、抗原に対する免疫応答を誘発するために、抗原に追加して投与する必要がある。これらのアジュバントは、通常、非特異的炎症を促進し、免疫処置部位に単核食細胞を動員する不溶性または非分解性物質である。アジュバントの例には、非限定的に、フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)、ISCOM(免疫賦活複合体)またはそのフラグメントが含まれる。
【0049】
抗体を調製するための方法の総説については、例えば、Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988);Yelton, D. E. et al., Ann. Rev. of Biochem. 50:657-80. (1981);およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (New York: John Wiley & Sons) (1989)を参照されたい。免疫原性ソルチリンポリペプチドとの免疫反応性の決定は、例えばイムノブロットアッセイおよびELISAを含む、当技術分野において周知の任意のいくつかの方法によって行うことができる。
【0050】
本明細書に記載の方法に使用するための抗ソルチリン抗体は、任意のアイソタイプでありうる。任意の所望のアイソタイプの抗体は、クラススイッチによって産生させることができる。クラススイッチのために、CLまたはCHをコードする任意のヌクレオチド配列を含まず、VLまたはVHをコードする核酸が、当技術分野において周知の方法を用いて単離される。次に、VLまたはVHをコードする核酸が、所望のクラスの免疫グロブリン分子由来のCLまたはCHをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結される。これは、上記のように、CLまたはCH鎖を含むベクターまたは核酸を使用して達成することができる。例えば、本来IgMであった本明細書に記載の方法に使用するための抗ソルチリン抗体を、IgGにクラススイッチすることができる。さらに、クラススイッチは、あるIgGサブクラスを別のサブクラス、例えばIgG1からIgG2に変換するために用いることができる。
【0051】
抗ソルチリン抗体のクラスおよびサブクラスは、当技術分野において公知の任意の方法によって決定することができる。一般に、抗体のクラスおよびサブクラスは、抗体の特定のクラスおよびサブクラスに特異的な抗体を使用して決定することができる。そのような抗体は市販されている。クラスおよびサブクラスは、ELISA、ウエスタンブロット、および他の技法によって決定することができる。または、クラスおよびサブクラスは、抗体の重鎖および/または軽鎖の定常ドメインの全てまたは一部を配列決定し、それらのアミノ酸配列を、多様な免疫グロブリンクラスおよびサブクラスの公知のアミノ酸配列と比較し、その抗体のクラスおよびサブクラスを決定することによって決定することができる。
【0052】
ある態様では、本明細書において開示された処置方法に使用するためのソルチリン抗体またはその免疫特異性フラグメントの可変領域および定常領域の両方は、完全にヒト性である。完全ヒト抗体は、当技術分野において公知の技法および本明細書に記載の技法を用いて調製することができる。例えば、抗原誘発に応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、内因性遺伝子座は無効にされたトランスジェニック動物に抗原を投与することによって、特異的抗原に対する完全ヒト抗体を調製することができる。そのような抗体を調製するために使用することができる例示的な技法は、米国特許第6,150,584号;同第6,458,592号;同第6,420,140号に記載されている。他の技法は、当技術分野において公知である。完全ヒト抗体は、同様に、本明細書の他の箇所により詳細に説明されるような様々なディスプレイ技法、例えばファージディスプレイまたは他のウイルスディスプレイ系によって産生させることができる。
【0053】
本明細書に開示された処置方法に使用するための抗体またはそのフラグメントには、例えば抗体がそのコグネイトエピトープに特異的に結合するのを、共有結合が阻止しないように、抗体に任意の種類の分子を共有結合させることによって改変された誘導体が含まれる。例えば、非限定的に、抗体誘導体には、例えばグリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、または公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質との連結によって改変された抗体が含まれる。多数の化学的改変の任意のものは、非限定的に特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化など...を含む公知の技法によって実施することができる。追加的に、誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有しうる。
【0054】
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法に使用するための抗体またはそのフラグメントは、処置されるべき哺乳動物、例えばヒトにおいて有害な免疫応答を誘発しないであろう。一態様では、本明細書に開示の方法に使用するための抗体またはそのフラグメントは、それらの免疫原性を低減するために当技術分野において認識されている技法を用いて改変することができる。例えば、抗体は、ヒト化、霊長類化、脱免疫化(deimmunized)されている場合があり、またはキメラ抗体を調製することができる。これらの種類の抗体は、親抗体の抗原結合性を保持または実質的に保持するが、ヒトにおいて免疫原性がより低い、非ヒト抗体、典型的にはマウスまたは霊長類抗体由来である。これは、(a)ヒト定常領域上に非ヒト可変ドメイン全体をグラフトしてキメラ抗体を生成させる段階;(b)重要なフレームワーク残基を保持して、もしくは保持せずにヒトフレームワークおよび定常領域内に1つもしくは複数の非ヒト相補性決定領域(CDR)の少なくとも部分をグラフトする段階;または(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換によってそれらをヒト様セクションで「覆い隠す」段階を含む様々な方法によって達成することができる。そのような方法は、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984); Morrison et al., Adv. Immunol. 44:65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:15341536 (1988); Padlan, Molec. Immun. 28:489-498 (1991); Padlan, Molec. Immun. 31:169-217 (1994)、ならびに米国特許第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第6,190,370号に開示されており、それらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0055】
脱免疫もまた、抗体の免疫原性を低下させるために使用することができる。本明細書に使用されるように、用語「脱免疫」には、抗体を変化させてT細胞エピトープを改変することが含まれる(例えば国際公開公報第9852976A1号、国際公開公報第0034317A2号参照)。例えば、出発抗体からVHおよびVL配列が、そして各V領域から、配列内の相補性決定領域(CDR)および他の主要残基に関してエピトープの位置を示すヒトT細胞エピトープ「マップ」が分析される。最終抗体の活性を変化させるリスクが低い代替アミノ酸置換を同定するために、T細胞エピトープマップから個別のT細胞エピトープが分析される。アミノ酸置換の組み合わせを含む一連の代替VHおよびVL配列が設計され、これらの配列は、本明細書に開示される方法に使用するために、続いて一連の結合ポリペプチド、例えば抗ソルチリン抗体またはその免疫特異性フラグメントに組み入れられ、次にそれらは機能について試験される。典型的には、12種から24種の間の変異型抗体が生成され、試験される。次に、改変V領域およびヒトC領域を含む完全重鎖および軽鎖遺伝子が発現ベクター中にクローニングされ、その結果生じたプラスミドが全抗体の産生のために細胞系に導入される。次に、抗体は、適切な生化学アッセイおよび生物学的アッセイで比較され、最適な変異体が同定される。
【0056】
完全ヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置のために特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ法を含む、当技術分野において公知の多様な方法によって調製することができる。例えば、米国特許第4,444,887号および同第4,716,111号;ならびにPCT出願である国際公開公報第98/46645号、国際公開公報第98/50433号、国際公開公報第98/24893号、国際公開公報第98/16654号、国際公開公報第96/34096号、国際公開公報第96/33735号、および国際公開公報第91/10741号を参照されたい。これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0057】
ヒト抗体は、また、機能的内因性免疫グロブリンを発現する能力がないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを使用して産生させることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、マウス胚性幹細胞に相同組み換えによってランダムに導入することができる。または、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域(diversity region)をマウス胚性幹細胞に導入することができる。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別々または同時に相同組み換えにより非機能性にすることができる。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生を防止する。改変された胚性幹細胞は、増大され、胚盤胞中にマイクロインジェクションされて、キメラマウスが産生される。次に、キメラマウスが繁殖され、ヒト抗体を発現するホモ接合型子孫が産生される。選択された抗原、例えば所望のターゲットポリペプチドの全てまたは一部が、通常の様式でトランスジェニックマウスに免疫処置される。抗原に対するモノクローナル抗体は、免疫処置されたトランスジェニックマウスから、従来のハイブリドーマ技法を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスの内部に有されるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中に再配列し、続いてクラススイッチおよび体細胞突然変異を受ける。したがって、そのような技法を用いて、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を産生させることが可能である。ヒト抗体を産生させるためのこの技法の概要については、Lonberg and Huszar, Int. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生させるためのこの技法の詳細な考察ならびにそのような抗体を産生させるためのプロトコールについては、例えばPCT公報である国際公開公報第98/24893号;国際公開公報第96/34096号;国際公開公報第96/33735号;米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318号;および同第5,939,598号を参照されたい。これらは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0058】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイド付き選択(guided selection)」と呼ばれる技法を用いて生成させることができる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体が、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドするために使用される。(Jespers et al., Bio/Technology 12:899-903 (1988))。米国特許第5,565,332号も参照されたい。[0162]別の態様では、所望のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定することができる(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合する能力があるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。単離およびサブクローニングされたハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。ひとたび単離されると、DNAは、発現ベクター内に配置することができ、それは次に、その他の場合に免疫グロブリンを産生しない、大腸菌(E. coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞などの原核または真核宿主細胞にトランスフェクトされる。より詳細には、単離されたDNA(本明細書に記載のように合成されたものでありうる)は、参照により本明細書に組み入れられる1995年1月25日出願の、Newmanら、米国特許第5,658,570号に記載されたような製造抗体についての定常領域および可変領域配列をクローニングするために使用することができる。本質的に、これは、選択された細胞からRNAを抽出すること、cDNAに変換すること、およびIg特異的プライマーを使用してPCRによって増幅することを伴う。この目的のために適切なプライマーは、また、米国特許第5,658,570号に記載されている。以下、より詳細に論じるように、所望の抗体を発現している形質転換細胞を比較的大量に成長させて、免疫グロブリンの臨床的および商業的供給を提供することができる。
【0059】
抗ソルチリン抗体は、Abcam(Cambridge、MA、USA)またはR&D Systems(Minneapolis, MN, USA)から購入することができる。さらに、ソルチリン1に特異的に結合する能力があるリガンドの同定および設計のための方法は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2011/1060439号に記載されている。
【0060】
細胞、例えばSMCは、例えばインビトロもしくはエクスビボの細胞培養でインヒビターと接触させることができ、またはインヒビターは、対象に、例えばインビボで投与することができる。いくつかの態様では、インヒビターは、石灰化を低下、阻害、予防、低減、および/または治療するために対象に投与することができる。いくつかの態様では、細胞は、弁間質細胞である。いくつかの態様では、細胞は骨芽細胞である。いくつかの態様では、細胞は破骨細胞である。いくつかの態様では、細胞は間葉系幹細胞である。いくつかの態様では、細胞は内皮細胞である。いくつかの態様では、細胞はマクロファージである。いくつかの態様では、細胞は単球である。いくつかの態様では、細胞は樹状細胞である。いくつかの態様では、細胞はリンパ球である。
【0061】
細胞を接触させることに関連して本明細書において使用されるように、用語「接触させる」または「接触」には、表示されたインヒビターを含む適切な培養培地に細胞を供することが含まれる。細胞がインビボの場合、「接触させる」または「接触」には、インヒビターが細胞とインビボで接触するように適切な投与経路を介して薬学的組成物中のインヒビターを対象に投与することが含まれる。
【0062】
本明細書に記載されるように、インヒビターは、薬学的に許容される担体に入れて投与することができ、当技術分野において周知の多様なメカニズムにより対象の細胞にインビボおよび/またはエクスビボで送達することができる。
【0063】
用語「エクスビボ」は、生きた生物から取り出され、その生物の外側で(例えば試験管内で)培養された細胞を表す。エクスビボ法が採用された場合、細胞または組織は、当技術分野において周知の標準プロトコールにより身体から取り出し、体外で維持することができる。この組成物は、当業者に公知または利用可能な方法により細胞内に導入することができる。例えば、細胞は、培養状態に保つことができ、インヒビターは、培養培地に添加することができる。次に、処理された細胞は、細胞型または組織型についての標準法により、注入(例えば、薬学的に許容される担体に入れて)または対象に同位置に移植し戻すことができる。対象への多様な細胞の移植または注入のための標準法は、公知である。
【0064】
概して、任意の量の化合物をSMCと接触させることができる。いくつかの態様では、化合物は、約0.1nM〜約1000mMの範囲の濃度で接触される。好ましくは、化合物は、約0.1μM〜約10μMの範囲で接触される。
【0065】
追加的に、化合物がSMCによって取り込まれ、そのターゲットと相互作用できるために十分な時間、化合物をSMCと接触させることができる。非限定的な例として、化合物は、SMCと少なくとも15分間接触させ、その後ソルチリン1の活性もしくは量について、またはソルチリン1をコードする核酸の量もしくは発現についてアッセイすることができる。
【0066】
対象に投与するために、インヒビターは、薬学的に許容される組成物中に製剤化することができ、該組成物は、1種または複数種の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と一緒に製剤化されたインヒビターを含む。インヒビターは、以下のために適合されたものを含む、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化することができる:(1)経口投与、例えば、飲薬(水性または非水性の液剤または懸濁剤)、トローチ剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、錠剤(例えば、口腔、舌下、および全身吸収のためにターゲティングされたもの)、巨丸剤、散剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト剤;(2)非経口投与、例えば皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による、例えば無菌溶液もしくは懸濁物、または徐放製剤として;(3)局所適用、例えば、皮膚に適用されたクリーム、軟膏、または制御放出パッチもしくはスプレーとして;(4)膣内または直腸内、例えばペッサリー、クリームまたはフォームとして;(5)舌下;(6)眼球;(7)経皮;(8)経粘膜;(9)鼻腔;または(10)局所投与(例えば薬物溶出性ステント、pluronicゲル)。追加的に、インヒビターは、薬物送達組成物を使用して患者内に植え込むか、または注射することができる。例えば、Urquhart, et al., Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 24: 199-236 (1984); Lewis, ed. "Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals"(Plenum Press, New York, 1981);米国特許第3,773,919号;および米国特許第35 3,270,960号を参照。
【0067】
本明細書に使用されるように、用語「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を有さずに、合理的な利益/危険率に釣り合った、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するために適切な化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を表す。
【0068】
ここで使用されるように、用語「薬学的に許容される担体」は、液体または固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルク性マグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、あるいは一器官または身体部分から別の器官または身体部分に対象化合物を運搬または輸送することに関与する溶媒封入材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者に傷害性ではないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ちうる材料のいくつかの例には:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンなどのデンプン;(3)セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの滑沢剤;(8)カカオバターおよび坐剤用ロウなどの賦形剤;(9)ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG)などのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質不含水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ酸無水物;(22)ポリペプチドおよびアミノ酸などの膨張性剤;(23)血清アルブミン、HDLおよびLDLなどの血清成分;(24)エタノールなどのC
2-C
12アルコール;(26)脂質ナノ粒子;ならびに(27)薬学的製剤中に用いられた他の無毒の適合性物質が含まれる。担体または賦形剤には、単独でもしくはロウと一緒のモノステアリン酸グリセリンもしくはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延物質(time delay material)、または当技術分野において周知の他の物質が含まれうる。湿潤剤、着色料、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料、香料、保存料および抗酸化剤もまた、製剤中に存在しうる。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などの用語が、本明細書において互換的に使用される。
【0069】
薬学的に許容される抗酸化剤には、非限定的に、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン(lectithin)、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が含まれる。
【0070】
薬学的組成物の調製は、当技術分野において周知であり、多数の文献および教科書に記載されている。例えば、その内容がその全体で参照により本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, Gennaro A.R. ed., Mack Publishing Co.., Easton, Pa., 1990を参照。
【0071】
薬学的組成物は、固体形態(顆粒剤、散剤もしくは坐剤を含む)または液体形態(例えば、液剤、懸濁剤、もしくは乳剤)に作ることができる。薬学的組成物は、滅菌などの従来の薬学的操作に供することができ、かつ/または保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などの従来の佐剤を含有しうる。
【0072】
経口投与用の固体投薬形態には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が含まれうる。そのような固体投薬形態では、活性化合物は、スクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1種の不活性希釈剤と混合することができる。そのような投薬形態は、また、通常時のように、不活性希釈剤、例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤以外に追加的な物質を含みうる。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、投薬形態は、また、緩衝剤を含みうる。錠剤および丸剤は、追加的に腸溶コーティングを用いて調製することができる。
【0073】
経口投与用の液体投薬形態には、当技術分野において水などの通常使用される不活性希釈剤を含有する、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれうる。そのような組成物は、また、湿潤剤、甘味料、香味料および香料などの佐剤を含みうる。
【0074】
非経口投与の目的のために、ゴマ油もしくはラッカセイ油中、または水性プロピレングリコール中の液剤、および対応する水溶性塩の無菌水性液剤を用いることができる。そのような水性液剤は、必要に応じて適切に緩衝化することができ、液体希釈剤は最初に十分な食塩水またはグルコースで等張にされる。これらの水性液剤は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内注射目的に特に適切である。これに関連して、用いられる無菌水性媒質は、全て、当業者に周知の標準技法によって容易に入手可能であり、一定量の活性成分を有する様々な薬学的組成物を調製する方法は、公知であるか、または本開示に照らして当業者に明白であろう。
【0075】
インヒビターは、また、低速放出または急速放出製剤などの制御放出製剤に入れて投与することができる。本発明の組み合わせのそのような制御放出製剤は、当業者に周知の方法を用いて調製することができる。投与方法は、対象の状態および必要性を評価した後に、担当の医師または他の当業者によって決定される。
【0076】
1回投薬形態を産生するために担体物質と組み合わせることができるインヒビターの量は、概して、治療効果を生じるインヒビターの量である。概して、この量は、100%のうち約0.01%〜99%のインヒビターであろう。いくつかの態様では、組成物中のインヒビターの量は、全組成物の約0.1%〜約99%(w/w)、約1%〜約90%(w/w)、約2%〜約80%(w/w)、約5%〜約75%(w/w)、約5%〜約50%(w/w)、約10%(w/w)〜約60%(w/w)、約0.01%〜約95%(w/v)、約0.1%〜約90%(w/w)、約1%〜約85%(w/w)、約10%〜約50%(w/w)、約1%〜約99%(w/w)、約0.05%〜約99%(w/w)、約0.1%〜約90%(w/w)、約0.5%〜約85%(w/w)、または約5%〜約80%(w/w)の範囲より選択することができる。
【0077】
いくつかの態様では、組成物は、心血管石灰化の治療または予防のための治療有効量の複合インヒビターを含む。
【0078】
本明細書に使用されるように、用語「治療有効量」は、所望の転帰を提供するために有効な治療薬の量を意味する。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。概して、治療有効量は、対象の病歴、年齢、状態、性別、ならびに対象における医学的状態の重症度および種類、ならびに神経変性障害における病理過程を阻害する他の薬剤の投与に応じて変動しうる。
【0079】
さらに、治療有効量は、当業者によって認識されるように、処置される特定の疾患、投与経路、選択された賦形剤、および併用療法の可能性に応じて変動する。いくつかの態様では、治療有効量は、ED
50からLD
50(それを投与されている対象の約50%が命を奪われる治療薬の用量)の間の範囲内でありうる。いくつかの態様では、治療有効量は、ED
50(それを投与されている対象の少なくとも約50%で治療効果が検出される治療薬の用量)からTD
50(症例の約50%で毒性が生じる用量)の範囲内でありうる。有効性、および治療有効量の化合物を送達するであろう投薬量に関する案内は、処置されるべき状態の動物モデルから得ることができる。
【0080】
毒性および治療有効性は、例えば、LD
50(集団の50%に致死的な用量)およびED
50(集団の50%に治療有効的な用量)を決定するための細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果の間の用量比は、治療指数であり、それは、比LD
50/ED
50として表現することができる。大きな治療指数を示す組成物が好ましい。
【0081】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のための薬用量の範囲設定に使用することができる。そのような化合物の薬用量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を有さずに、ED
50を含む循環濃度範囲内にある。薬用量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変動しうる。
【0082】
治療有効用量は、最初は細胞培養アッセイから推定することができる。1回量は、細胞培養で決定されたIC
50(すなわち、症状の半値阻害を達成する治療薬濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて用量設定することができる。血漿中レベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定の薬用量の効果は、適切なバイオアッセイによってモニターすることができる。適切なバイオアッセイの例には、DNA複製アッセイ、転写に基づくアッセイ、および免疫学的アッセイが含まれる。
【0083】
薬用量は、医師が決定することができ、必要に応じて、観察された処置効果に適するように調整することができる。概して、複合インヒビターは、インヒビターが1μg/kg〜150mg/kg、1μg/kg〜100mg/kg、1μg/kg〜50mg/kg、1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、100μg/kg〜100mg/kg、100μg/kg〜50mg/kg、100μg/kg〜20mg/kg、100μg/kg〜10mg/kg、100μg/kg〜1mg/kg、1mg/kg〜100mg/kg、1mg/kg〜50mg/kg、1mg/kg〜20mg/kg、1mg/kg〜10mg/kg、10mg/kg〜100mg/kg、10mg/kg〜50mg/kg、または10mg/kg〜20mg/kgの用量で与えられるように投与される。本明細書に示された範囲には、全ての中間範囲が含まれることを理解すべきであり、例えば、範囲1mg/kg〜10mg/kgには、1mg/kg〜2mg/kg、1mg/kg〜3mg/kg、1mg/kg〜4mg/kg、1mg/kg〜5mg/kg、1mg/kg〜6mg/kg、1mg/kg〜7mg/kg、1mg/kg〜8mg/kg、1mg/kg〜9mg/kg、2mg/kg〜10mg/kg、3mg/kg〜10mg/kg、4mg/kg〜10mg/kg、5mg/kg〜10mg/kg、6mg/kg〜10mg/kg、7mg/kg〜10mg/kg、8mg/kg〜10mg/kg、9mg/kg〜10mg/kgなどが含まれる。さらに、上記の中間の範囲もまた、本発明の範囲内であることを理解すべきであり、例えば、範囲1mg/kg〜10mg/kgには、2mg/kg〜8mg/kg、3mg/kg〜7mg/kg、4mg/kg〜6mg/kgなどの用量範囲が含まれる。タンパク質に基づくインヒビター(抗体など)について、ある好ましい薬用量は、0.1mg/kg〜100mg/kg体重(概して10mg/kg〜20mg/kg)である。
【0084】
本明細書において使用されるように、用語「投与する」は、所望の部位での薬学的活性薬剤の少なくとも部分的局在化を招く方法または経路による対象内への組成物の配置を表す。インヒビターは、任意の適切な仕方で投与することができる。投与の仕方は、例えば、局所処置または全身処置が望ましいかどうか、および処置されるべき領域に基づき選ぶことができる。したがって、組成物は、対象における有効な処置を招く任意の適切な経路によって投与することができ、すなわち投与は、薬学的活性薬剤の少なくとも一部が送達される、対象における所望の位置への送達を招く。例示的な投与様式には、非限定的に、移植、注射、注入、点滴、植え込み術、または経口摂取が含まれる。「注射」には、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、脳室内、関節包内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、経気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、脳脊髄内、および胸骨内の注射および注入が含まれる。
【0085】
いくつかの態様では、本明細書に記載の組成物は、対象に植え込むことができる。本明細書に使用されるように、用語「植え込まれた」および文法的に関係する用語は、対象における特定の場所に、一時的、半永久的、または永久的のいずれかで組成物を配置することを表す。この用語は、特定の位置または部位に組成物を永久に固定することを必要としない。
【0086】
投与または処置の期間および頻度に関して、処置が治療的利益を提供するときを決定するため、および薬用量を増加させるか、それとも低下させるか、投与頻度を増加させるか、それとも低下させるか、処置を中断するか、処置を再開するか、それとも処置方式に他の変更を加えるかどうかを決定するために、熟練の臨床医が対象をモニターすることが典型的である。投与計画は、ポリペプチドに対する対象の感受性などのいくつかの臨床因子に応じて、1週間1回から毎日まで変動しうる。所望の用量は、一度に投与するか、または部分用量、例えば2〜4回の部分用量に分割し、ある期間にわたり、例えば適切な間隔で1日にわたりもしくは他の適切な計画で投与することができる。そのような部分用量は、単位投薬形態として投与することができる。いくつかの態様では、投与は、長期、例えば、数週間または数ヶ月の期間にわたり1日に1回または複数回でありうる。投与計画の例は、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、または6ヶ月以上の期間にわたり、1ヶ月に1回、2週間毎に1回、1週間に1回、隔日1回、1日1回、1日2回、1日3回または1日4回以上の投与である。
【0087】
いくつかの態様では、インヒビターは、薬学的活性薬剤または治療薬と組み合わせて対象に同時投与することができる。非限定的に、インヒビターは、治療薬の投与の前、同時、または後に投与することができる。したがって、本明細書に使用されるように、用語「同時投与する」は、相互に24時間以内に2種以上の薬剤(例えばインヒビターおよび薬学的活性薬剤)を例えば臨床処置方式の部分として投与することを表す。他の態様では、「同時投与する」は、相互に12時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45以内、30分以内、20以内、15分以内、10分以内、または5分以内の投与を表す。他の態様では、「同時投与する」は、単一製剤の部分として、または同じもしくは異なる経路によって投与される複数製剤としてのいずれかで、同時に投与することを表す。インヒビターおよび薬学的活性薬剤が異なる薬学的組成物に入れられて、または異なる回数で投与される場合、投与経路は同じかまたは異なりうる。
【0088】
例示的な薬学的活性化合物には、非限定的に、Harrison's Principles of Internal Medicine, 13
th Edition, Eds. T.R. Harrison et al. McGraw-Hill N.Y., NY; Physicians' Desk Reference, 50
th Edition, 1997, Oradell New Jersey, Medical Economics Co.; Pharmacological Basis of Therapeutics, 8
th Edition, Goodman and Gilman, 1990; United States Pharmacopeia, The National Formulary, USP XII NF XVII, 1990; Goodman and Oilman's The Pharmacological Basis of Therapeuticsの最新版;およびThe Merck Indexの最新版に見いだされる化合物が含まれ、それらの全ての全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0089】
いくつかの態様では、薬学的活性薬剤には、ビタミンDステロールおよび/またはRENAGEL(登録商標)などの、心血管石灰化を処置するための当技術分野において公知の薬剤が含まれうる。ビタミンDステロールには、カルシトリオール、アルファカルシドール、ドキセルカルシフェロール、マキサカルシトールまたはパリカルシトールが含まれうる。
【0090】
いくつかの態様では、薬学的活性薬剤には、カルシウム模倣薬、ビタミンおよびそれらの類似体、抗生物質、炭酸ランタン、スタチン(例えばLIPITOR(登録商標))などの脂質低下剤、脂質プロフィールの他の修飾因子(例えばHDL増加薬)、降圧薬、抗炎症剤(ステロイド系および非ステロイド系)、炎症促進性サイトカインのインヒビター(ENBRELOR(登録商標)、KINERET(登録商標))、ならびに心血管作動薬が含まれうる。
【0091】
いくつかの態様では、薬学的活性薬剤には、当技術分野において炎症または炎症関連障害の処置で公知の薬剤が含まれる。
【0092】
いくつかの態様では、薬学的活性薬剤は、ビスホスホネート(アレンドロネート、リセドロネート(Risendronate)、イバンドロネート、ゾレドロン酸)でありうる。
【0093】
いくつかの態様では、薬学的活性薬剤は、ホルモン関連剤でありうる。
【0094】
いくつかの態様では、薬学的活性薬剤は抗炎症剤である。例示的な抗炎症剤には、非限定的に、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID - アスピリン、イブプロフェン、またはナプロキセンなど、コルチコステロイド(プレドニゾン(presnisone)など)、抗マラリア薬(ヒドロクロロキンなど)、メトトレキサート(methotrexrate)、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミド(cyclophosphamise)、ミコフェノレート、および炎症促進性シグナル伝達経路のインヒビターが含まれる。
【0095】
いくつかの態様では、薬学的活性薬剤は、免疫応答修飾因子である。本明細書に使用されるように、用語「免疫応答修飾因子」は、対象における自己免疫応答を阻害する化合物(例えば、小分子、抗体、ペプチド、核酸、または遺伝子治療試薬)を表す。理論に縛られることを望まないが、免疫応答修飾因子は、炎症性サイトカイン(例えばIL-12、IL-23もしくはIL-27)、またはSTAT-4の活性、活性化、または発現を阻害することによって自己免疫応答を阻害する。例示的な免疫応答修飾因子には、非限定的に、米国特許第6,774,130号記載のリソフィリン(LSF)ならびにLSF類似体および誘導体からなる群のメンバーが含まれ、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0096】
いくつかの態様では、薬学的活性薬剤は、抗生剤である。用語「抗生物質」は、本明細書において、微生物の生存率を低下させるか、または微生物の成長もしくは複製を阻害する、化合物または組成物を記載するために使用される。本開示に使用されるように、抗生物質には、さらに、抗微生物、静菌、または殺菌剤を含めることが意図される。例示的な抗生物質には、非限定的に、ペニシリン、セファロスポリン、ペネム、カルバペネム、モノバクタム、アミノグリコシド、スルホンアミド、マクロライド、テトラサイクリン、リンコシド(lincoside)、キノロン、クロラムフェニコール、バンコマイシン、メトロニダゾール、リファンピン、イソニアジド、スペクチノマイシン、トリメトプリム、スルファメトキサゾールなどが含まれる。
【0097】
本明細書に開示される併用療法で病状を処置するための投与方式は、患者のタイプ、年齢、体重、性別および医学的状態、疾患の重症度、投与経路ならびに用いられる特定の化合物を含む多様な要因により選択することができ、したがって、広く変動しうる。
【0098】
いくつかの態様では、インヒビターは、外科的および非外科的処置と共に投与することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示の方法は、透析と共に実施することができる。
【0099】
CRD(慢性腎疾患(CKD)としても公知である)の十分に認識されている一般的な合併症である血管石灰化は、心血管罹患率および死亡率のリスクを増加させる(Giachelli, C. J. Am. Soc. Nephrol. 15: 2959-64, 2004; Raggi, P. et al. J. Am. Coll. Cardiol. 39: 695-701, 2002)。CKDにおける血管石灰化の原因は、今のところ解明されておらず、関連するリスク因子には、年齢、性別、カルシウムおよびリン酸塩の不均衡、血清リン酸レベルの増加、高血圧、透析を受けている期間、糖尿病および耐糖能障害、肥満、脂質異常症、および喫煙が含まれる(Zoccali C. Nephrol. Dial. Transplant 15: 454-7, 2000)。しかし、これらの従来のリスク因子は、患者集団における心血管原因からの高い死亡率を十分には説明していない。最近の観察は、末期腎疾患の患者での血清カルシウム-リン産物の上昇を招くカルシウムおよびリン代謝におけるある種の異常が、動脈/弁石灰化の発症、およびおそらく心血管疾患の原因となることを示唆している(Goodman, W. et al. N. Engl. J. Med. 342: 1478-83, 2000; Guerin, A. et al. Nephrol. Dial. Transplant 15: 1014-21, 2000; Vattikuti, R. & Towler, D. Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 286: E686-96, 2004)。臨床報告は、さらに、血清リン酸濃度の上昇が実質的により大きな末期CKDのリスクに関連し、平均血清リン酸濃度が1.0mg/dL増加する毎にリスクが最大5倍増加することを示唆している(Mazhar, AR et al. Kidney Int 60: 324-332, 2001)。
【0100】
進行期CKDの別の特徴は、副甲状腺ホルモン(PTH)レベルの上昇および無機質代謝障害によって特徴づけられる二次性副甲状腺機能亢進症(HPT)である。二次性HPTの患者で観察されたカルシウム、リン、およびCa×Pの上昇は、血管石灰化リスクの増加に関連した(Chertow, G. et al. Kidney Int. 62: 245-52, 2002; Goodman, W. et al. N. Engl. J. Med. 342: 1478-83, 2000; Raggi, P. et al. J.Am. Coll. Cardiol. 39: 695-701, 2002)。カルシウム系リン吸着薬などの二次性HPTのために通常使用される治療的介入および活性ビタミンDステロールの用量は、高カルシウム血症および高リン酸血症を招くおそれがあり(Chertow, G. et al. Kidney Int. 62: 245-52, 2002; Tan, A. et al. Kidney Int 51: 317-23, 1997; Gallieni, M. et al. Kidney Int 42: 1191-8, 1992)、それらは、心血管石灰化の発症または悪化に関連する。
【0101】
血管石灰化は、慢性腎不全の重要で潜在的に重症の合併症である。2つの別個のパターンの血管石灰化が確認されており(Proudfoot, D & Shanahan, C. Herz 26: 245-51, 2001)、尿毒症患者に両方のタイプが存在することが一般的である(Chen, N. & Moe, S. Semin Nephrol 24: 61-8, 2004)。中膜石灰化は、SMCから骨芽細胞様細胞への表現型移行と共に血管中膜において起こり、一方でアテローム形成は、脂質蓄積マクロファージおよび内膜肥厚に関連する。
【0102】
中膜壁石灰化は、慢性腎不全を有する比較的若い人達に発症することがあり、糖尿病患者では腎疾患の不在下であっても一般的である。動脈の中膜壁におけるカルシウムの存在から、このタイプの血管石灰化とアテローム動脈硬化に関連する血管石灰化とが識別される(Schinke T. & Karsenty G. Nephrol Dial Transplant 15: 1272-4, 2000)。アテローム動脈硬化性血管石灰化は、動脈の内膜層に沿ったアテローム動脈硬化性プラークに起こる(Farzaneh-Far A. JAMA 284:1515-6, 2000)。石灰化は、通常、大型のよく発達した病変で最も大きく、年齢と共に増加する(Wexler L. et al. Circulation 94: 1175-92, 1996; Rumberger J . et al. Mayo Clin Proc 1999; 74: 243-52)。アテローム動脈硬化を有する患者における動脈石灰化の程度は、一般に、疾患の重症度に対応する。中膜壁石灰化とは異なり、アテローム動脈硬化性血管病変は、カルシウムを含有しようと、しなくとも、動脈内腔を侵し、血流を危険にさらす。アテローム動脈硬化性プラーク内のカルシウムの局所沈着は、マトリックス小胞の放出、アポトーシスまたは酸化脂質および他の酸化ストレスならびに単球およびマクロファージによる浸潤が原因の炎症のせいで起こりうる(Berliner J . et al. Circulation 91: 2488-96, 1995)。
【0103】
末期腎疾患を有する一部の患者は、カルシフィラキシスまたは尿毒症性細小動脈石灰化症と呼ばれる重症型の閉塞性動脈疾患を発症する。この症候群は、小動脈における広範なカルシウム沈着によって特徴づけられる(Gipstein R. et al. Arch Intern Med 136: 1273-80, 1976; Richens G. et al. J Am Acad. Dermatol. 6: 537-9, 1982)。この疾患を有する患者では、動脈石灰化および血管閉塞は、組織虚血および壊死に繋がる。末梢血管の波及は、下腿皮膚の潰瘍形成または足もしくは手の指の壊疽を引き起こすおそれがある。腹壁、大腿および/または臀部の皮膚および皮下脂肪組織の虚血および壊死は、近位型(proximal form)の尿毒症性細小動脈石灰化症の特徴である(Budisavljevic M. et al. J Am Soc Nephrol. 7: 978-82, 1996; Ruggian J. et al. Am. J. Kidney Dis. 28: 409-14, 1996)。この症候群は、肥満の個体においてより頻繁に起こり、理由は不明のままであるが、女性は男性よりも罹患する頻度が高い(Goodman W. J. Nephrol. 15(6): S82-S85, 2002)。
【0104】
本明細書に使用されるように、用語「心血管石灰化」は、血管中の細胞外マトリックス性ヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)結晶沈着物の形成、成長または沈着を意味する。心血管石灰化は、冠血管、大動脈、動脈、静脈グラフト、組織工学による血管、および他の血管の石灰化ならびに大動脈弁および僧帽弁輪石灰化を包含する。この用語には、血管におけるアテローム動脈硬化性石灰化および中膜壁石灰化が含まれる。
【0105】
本明細書に使用される用語ように、「アテローム動脈硬化性石灰化」は、動脈の内膜層に沿ったアテローム動脈硬化性プラークに起こる血管石灰化を意味する。
【0106】
内膜石灰化は、内弾性板の周界内でアテローム動脈硬化性プラークの部分として起こり、多くの場合にX線像上に孤立した点状病変として見られる。それは、炎症細胞、脂質、および血管平滑筋細胞に関連する。
【0107】
本明細書において使用されるように、用語「中膜石灰化」、「中膜壁石灰化」および「メンケベルグ硬化症」は、動脈の中膜壁におけるカルシウムの存在によって特徴づけられる石灰化を意味する。
【0108】
心血管石灰化を検出および測定する方法は、当技術分野において周知である。一局面では、石灰化を測定する方法には、血管中でのカルシウム-リン沈着の程度を検出および測定する直接法が含まれる。
【0109】
一局面では、心血管石灰化を測定する直接法は、単純X線撮影法、冠動脈造影法;デジタルサブトラクション蛍光透視法を含む蛍光透視法;透視シネ撮影法;コンベンショナル、ヘリカル、および電子線コンピュータ断層撮影法;血管内超音波法(IVUS);磁気共鳴画像法;ならびに経胸郭およびび経食道心エコー法などのインビボ画像化方法を含む。蛍光透視法およびEBCTは、石灰化を非侵襲的に検出するために最も一般的に使用され、一方で透視シネ撮影法およびIVUSは、血管形成術の前に特異的病変における石灰化を評価するために冠血管インターベンション専門家によって使用される。経胸郭心エコー法は、通常、大動脈弁石灰化を検出するために使用される。
【0110】
一局面では、心血管石灰化は、単純X線撮影法によって検出することができる。この方法の利点は、フィルムの入手性および方法が低コストであることであるが、欠点は、その低感度であることである。Kelley M. & Newell J. Cardiol Clin. 1: 575-595, 1983。
【0111】
別の局面では、蛍光透視法は、冠動脈における石灰化を検出するために使用することができる。蛍光透視法は、中程度から大型の石灰化を検出することができるものの、その小型の石灰沈着物の同定能力は低い(Loecker et al. J Am Coll Cardiol. 19: 1167-1172, 1992)。蛍光透視法は、入院患者と外来患者との両方の状況で広く利用可能であり、比較的安価であるが、いくつかの欠点を有する。低感度から中感度にすぎない上に、蛍光透視法によるカルシウムの検出は、操作者の技術および経験、ならびに検討される画像数に依存する。他の重要な要因には、蛍光透視装置のばらつき、患者の体形、覆っている解剖学的構造、および椎骨、弁輪などの構造に覆っている石灰化が含まれる。蛍光透視法では、カルシウムの定量が不可能であり、フィルム証拠資料は一般に得られない。
【0112】
なお別の局面では、コンベンショナルコンピュータ断層撮影法(CT)によって心血管石灰化を検出することができる。カルシウムはX線を減衰させるので、コンピュータ断層撮影法(CT)は、心血管石灰化の検出が極めて高感度である。コンベンショナルCTは、冠動脈石灰化を検出する能力が蛍光透視法よりも優れているように見えるものの、その限界は低速のスキャン時間であり、その結果、モーションアーチファクト、容積平均、呼吸によるミスレジストレーションおよびプラーク量の定量不能が生じる(Wexler et al. Circulation 94: 1175-1192, 1996)。大動脈弁石灰化は、多くの場合に、特に高齢者ではコンベンショナルCTによって検出される(Liu et al., American Journal of Roentgenology 186:342-349, 2006)。
【0113】
さらなる一局面では、石灰化は、コンベンショナルCTよりもかなり速いスキャン時間を有するヘリカルまたはスパイラルコンピュータ断層撮影によって検出することができる。重複する切片は、カルシウムの検出も改善する。Shemeshらは、ヘリカルCTによる冠動脈カルシウム造影が、血管造影で重大な冠動脈閉塞疾患に比べて感度91%および特異性52%を有すると報告した(Shemesh et al. Radiology 197: 779-783, 1995)。しかし、他の予備データから、これらの加速されたスキャン時間であっても、特にシングルヘリカルCTの場合、石灰性沈着物が心運動のせいでぼやけ、小さな石灰化が見えないおそれがあることが示された(Baskin et al. Circulation 92(suppl I): 1-651, 1995)。したがって、ヘリカルCTは、依然として蛍光透視法およびコンベンショナルCTよりも石灰化の検出に優れている。ダブルヘリックスCTスキャナーは、そのより高い分解能およびより薄いスライス能のため、シングルヘリックススキャナーよりも冠動脈石灰化の検出に高感度であるように見える(Wexler et al. Circulation 94: 1175-1192, 1996)。
【0114】
別の局面では、心血管石灰化の検出のために電子ビームコンピューター断層撮影法(EBCT)を使用することができる。EBCTは、X線を発生させるために標準のX線管ではなく電子銃および静止したタングステン「ターゲット」を使用し、非常に迅速なスキャン時間を可能にする。当初はシネまたは超高速CTと呼ばれたが、最新のスパイラルスキャナーもまたサブセカンドスキャン時間を達成しているので、現在は標準CTスキャンと区別するためにEBCTという用語が使用されている。冠動脈カルシウムを検出するために、EBCT画像は、3mmのスキャンスライス厚を用い、100msで得られる。テーブル移動により30から40の隣接するアキシャルスキャンが得られる。スキャンは、通常1回か2回の異なる息止めシーケンスの間に取得されるが、心拍動の影響を最小限にするために、拡張末期付近および心房収縮前に80%のRRインターバルの心電図信号により作動させる。速い画像取得時間は、心収縮に関連するモーションアーチファクトを実質的に除く。冠動脈において、動脈周囲脂肪のより低いCT密度が、血液と顕著なコントラストを生じるので、陰影のない冠動脈はEBCTにより容易に特定され、一方、壁在性カルシウムは、血液に対するその高いCT密度から、明白である。追加的に、スキャナーソフトウェアによりカルシウム面積および密度の定量が可能になる。X線減弱係数、またはハウンズフィールド単位で測定されたCT値、および石灰化沈着物の面積に基づく自由裁量による採点法が考案されている(Agatston et al. J Am Coll Cardiol. 15:827832, 1990)。冠動脈カルシウムのスクリーニング検査は、10または15分以内に終了することができ、わずか数秒のスキャン時間を必要とするのみである。電子ビームCTスキャナーは、コンベンショナルまたはスパイラルCTスキャナーよりも高価であり、比較的少数の施設において利用可能である。
【0115】
一局面では、血管石灰化、特に冠動脈硬化症を検出するために血管内超音波法(IVUS)を使用することができる(Waller et al. Circulation 85: 23052310, 1992)。カテーテル先端に取り付けられた回転反射鏡を備えるトランスデューサを用いることによって、心臓のカテーテル処置中の冠動脈の断面像を得ることができる。超音波画像は、動脈の内腔だけでなく、動脈壁の厚さおよび組織性状についての情報も提供する。石灰化は、シャドウイングを伴う高エコー域として見られる。線維性の非石灰化プラークは、シャドウイングを伴わない高エコー域として見られる。(Honye et al. Trends Cardiovasc Med. 1: 305-311, 1991)。他の画像処理様式に対して、IVUSの使用上の欠点は、IVUSが侵襲的であり、現在は選択的冠動脈造影法と併せてのみ実施され、冠動脈樹の限られた部分だけを可視化することである。この技法は、侵襲的ではあるものの臨床的に重要である。というのは、冠動脈造影図で正常所見の患者においてアテローム動脈硬化の波及を示すことができ、バルーン血管形成術およびアテローム動脈硬化切除デバイスの選択の前に、狭窄病変部の形態学的特性を規定するのに役立つからである(Tuzcu et al. J Am Coll Cardiol. 27: 832-838, 1996)。
【0116】
別の局面では、心血管石灰化は、磁気共鳴画像法(MRI)によって測定することができる。しかし、MRIが冠動脈石灰化を検出する能力にはある程度限界がある。微小石灰化は、多量の軟部組織を含有するボクセルの信号強度を実質的に変えないので、そのようなカルシウム貯留の正味のコントラストは低い。したがって、少量の石灰化をMRIで検出することは困難であり、初期冠動脈石灰化または微小石灰化の検出において、MRIに関する報告も、期待される役割もない。(Wexler et al. Circulation 94: 1175-1192, 1996)。
【0117】
別の局面では、心血管石灰化は、経胸郭(表面)心エコー法によって測定することができる。この方法は、特に僧帽弁および大動脈弁の石灰化の検出に感度が高い。しかし、冠動脈の可視化は、利用可能な外部音響窓が限られているのでまれにしか記述されていない。経食道心エコー法は、冠動脈近位部を可視化できることが多い、広く利用可能な方法である(Koh et al. Int J Cardiol. 43: 202-206, 1994. Fernandes et al. Circulation 88: 2532-2540, 1993)。
【0118】
別の局面では、心血管石灰化は、高感度カルシウム結合分子イメージング剤を用い、生体蛍光顕微鏡または反射蛍光イメージングシステムを使用する近赤外分子イメージング法を使用して評価することができる(Aikawa E et al 116: 2841-2850, Circulation, 2007; Aikawa E et al, 119: 1785-1794; Circulation, 2009; New EP et al. 108; 1381-1391, Circ Res, 2011)。しかし、分子イメージングが動脈および弁における微小石灰化の高分解能画像を提供するとはいえ、このシステムは動物研究のみに使用されている。
【0119】
別の局面では、心血管石灰化は、ヒトにおいて18F-フッ化ナトリウム(18F-NaF)を用いたポジトロン放出型断層撮影法(PET)を使用して評価することができる(George et al., J Am Coll Cardiol. 59:1549-50, 2012; Dweck et al., J Am Coll Cardiol. 59:1539-1548, 2012; Aikawa E, et al., Circulation 125:9-11, 2012; Dweck et al., Circulation 125:76-86, 2012)。
【0120】
別の局面では、血管石灰化は、フォン・コッサ法によってエクスビボで評価することができる。この方法は、電気化学系列におけるそれぞれの順位のために、銀イオンを炭酸イオンまたはリン酸イオンによって溶液から追い出すことができるという原理に依拠する。銀親和反応は、本質的に光化学的であり、活性化エネルギーは強力な可視光または紫外線から供給される。組織の炭酸イオンまたはリン酸イオンの実証しうる形態は、カルシウムイオンと常に結合しているので、この方法は、組織のカルシウム沈着部位を実証するものと見なすことができる。
【0121】
石灰化を直接測定する他の方法には、非限定的に免疫蛍光染色法およびデンシトメトリーが含まれうる。別の局面では、血管石灰化を評価する方法には、血管石灰化の決定因子および/またはリスク因子を測定する方法が含まれる。そのような因子には、非限定的にリン、カルシウム、およびカルシウム×リンの積、副甲状腺ホルモン(PTH)、低比重リポタンパクコレステロール(LDL)、高比重リポタンパクコレステロール(HDL)、トリグリセリドならびにクレアチニンの各血清レベルが含まれる。これらの因子を測定する方法は当技術分野において周知である。血管石灰化を評価する他の方法には、骨形成因子の評価が含まれる。そのような因子には、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)、オステオカルシン(OC)、オステオポンチン(OPN)、オステオネクチン(ON)、スクレロスチン(SOST)、dickkopf-1(DKK1)、I型コラーゲンカルボキシ末端プロペプチド(PICP)、およびI型コラーゲンアミノ末端プロペプチド(PINP)などの骨形成マーカー;I型コラーゲン架橋C−テロペプチド(ICTP)、酒石酸耐性酸性ホスファターゼTRACPおよびTRAP5B、コラーゲン架橋N−テロペプチド(NTx)、およびコラーゲン架橋C−テロペプチド(CTx)などの血清骨吸収マーカー; RUNX2/Cbfa1、Osterix、Msx-2などの骨形成転写マーカー、ならびにヒドロキシプロリン、遊離および総ピリジノリン(Pyd)、遊離および総デオキシピリジノリン(Dpd)、コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)、およびコラーゲン架橋C-テロペプチド(CTx)などの尿中骨吸収マーカーが含まれる。
【0122】
本明細書において報告される研究は、外因性ソルチリン1がアテローム動脈硬化性マウスにおいてマトリックスミネラル化を増加させ、血清ソルチリン1レベルが上昇することを示す。したがって、ソルチリン1の血液レベルは、石灰化またはCRDの重症度についてのバイオマーカーとして使用することができる。したがって、一局面では、対象における石灰化またはCRDのレベルまたは重症度を決定するためのアッセイが本明細書に提供される。そのアッセイは、(a)対象の試験試料を少なくとも1種の分析に供してソルチリン1のレベルを決定することを含み、ここで、参照試料または対照試料に比べて増加したレベルのソルチリン1は、対象が上昇した石灰化レベルを有する、対象に石灰化を発症するリスクがある、CRDがある、またはCRDを発症するリスクがあることを示す。ソルチリン1のレベルは、ソルチリン1自体の量またはソルチリン1をコードする核酸から決定することができる。
【0123】
上昇したレベルまたは増加したレベルのソルチリン1は、参照または対照レベルよりも少なくとも10%高い場合がある。参照または対照レベルは、健康な対象におけるソルチリン1レベルまたは同じ対象から以前に決定されたレベルでありうる。いかなる疑問も避けるために、ソルチリン1レベルに関連する用語「増加した」および「上昇した」は、参照レベルに比べて少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、もしくは100%以下の増加、または参照レベルに比べて10から100%の間の任意の増加、または少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または参照レベルもしくは対照レベルに比べて2倍から10倍以上の間の任意の増加を意味する。
【0124】
アッセイにおいて行われる少なくとも1種の分析および/または本明細書に記載の方法のための試験試料の収集法は、当業者に周知である。いくつかの態様では、アッセイにおいて行われる分析および/または本明細書に記載の方法に供される試験試料は、対象の生物学的試料から得られる。本明細書に使用されるように、用語「生物学的試料」は、生物学的生物から採取または単離された試料、例えば細胞溶解物、対象由来の組織試料のホモジェネートまたは対象由来の液体試料を意味する。用語「生物学的試料」には、また、未処理の、または予備処理(もしくは予備加工)された生物学的試料が含まれる。いくつかの態様では、生物学的試料は、非限定的に血液(全血、血漿、臍帯血および血清を含む)、泌乳産物(例えば、乳汁)、羊水、痰、唾液、尿、精液、脳脊髄液、気管支吸引液、汗、粘液、液状便、滑液、リンパ液、涙液、気管吸引液、およびその分画を含む生物学的液体でありうる。他の態様では、生物学的試料には、細胞溶解物およびその分画が含まれうる。例えば、細胞(赤血球、血小板、白血球および本明細書記載の生物学的液体中で循環している任意の細胞など)を回収および溶解して細胞溶解物を得ることができる。いくつかの態様では、生物学的試料は血液、血漿、または血清である。
【0125】
「生物学的試料」は、対象由来の細胞を含有しうるが、この用語は、また、ソルチリン1レベルを測定するために使用することができる、血液、唾液、または尿の非細胞性分画などの非細胞性生物学的材料を表しうる。いくつかの態様では、試料は、切除、生検、またはコア針生検からのものである。加えて、細針吸引試料を使用することができる。試料は、パラフィン包埋組織または凍結組織のいずれかでありうる。
【0126】
生物学的試料は、臨床試料でありうる。「臨床試料」は、ヒト対象から得られた試料である。生物学的試料は、また、「対象試料」と呼ぶことができる。試験生物学的試料は、分析、モニタリング、または観察の対象であった生物学的試料である。対照生物学的試料は、試験生物学的試料についての陽性対照または陰性対照のいずれかでありうる。多くの場合に、対照生物学的試料は、試験生物学的試料と同じ種類の組織、細胞および生物学的液体を含有する。試料は、対象から細胞試料を取り出すことによって得ることができるが、以前に単離された(例えば、別の人物によって単離された)細胞を使用することによって行うこともできる。加えて、生物学的試料は、新たに収集または以前に収集された試料でありうる。
【0127】
いくつかの態様では、試験試料または生物学的試料は、凍結された生物学的試料、例えば尿、血液、血清または血漿などの凍結組織または凍結試料でありうる。凍結試料は、本発明の方法、アッセイおよびシステムを用いる前に解凍することができる。解凍後、凍結試料は、本発明の方法、アッセイおよびシステムに供する前に遠心分離することができる。
【0128】
いくつかの態様では、試験試料または生物学的試料は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)後に増幅された核酸産物でありうる。本発明の核酸産物には、DNA、RNAおよびmRNAが含まれ、その核酸産物は、当技術分野において周知の任意のいくつかの手順、特に特定の生物学的試料に適切であると選択された特定の単離手順を用いて、特定の生物学的試料から単離することができる。上記の核酸変異体を単離および分析する方法は、当業者に周知であり、例えばthe Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Sambrook and Russel, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に見いだすことができる。
【0129】
いくつかの態様では、試験試料または生物学的試料は、化学試薬および/または生物学的試薬で処理することができる。化学試薬および/または生物学的試薬は、加工の間に、その中に生体分子(例えば、核酸およびタンパク質)を含む試料を保護および/またはその安定性を維持するために用いることができる。例示的な一試薬は、加工の間にタンパク質の安定性を保護または維持するために一般に使用されるプロテアーゼインヒビターである。追加的または代替的に、化学試薬および/または生物学的試薬は、試料から核酸またはタンパク質を放出させるために用いることができる。
【0130】
当業者は、本明細書に記載のソルチリン1レベルの決定のために必要な、試験試料または生物学的試料、例えば血液の予備加工に適した方法および工程を十分に認識している。
【0131】
いくつかの態様では、試験試料または生物学的試料は、血液試料、例えば全血、血漿、および血清である。いくつかの態様では、試験試料または生物学的試料は、全血試料である。いくつかの態様では、試験試料または生物学的試料は、血清試料である。いくつかの態様では、試験試料または生物学的試料は、血漿試料である。いくつかの態様では、血液試料は、室温で約1時間から一晩、または冷蔵庫(低湿度)中で最大数ヶ月間乾燥させ、その後分析に供することができる。
【0132】
血液試料を収集するために、ほんの一例として、熟練の医療関係者が患者の血液をクエン酸塩、EDTA PGE、およびテオフィリンなどの抗凝固剤中に直接採取することができる。全血は、3500gで2分間の冷却遠心分離により血漿部分、細胞、および血小板部分に分離することができる。遠心分離後、上清は血漿であり、ペレットはRBCである。血小板はガラスに接着する傾向があるので、収集チューブをシリコン処理することが好ましい。赤血球(RBC)を単離する別の方法は、Best, CA et al., 2003, J. Lipid Research, 44:612-620に記載されている。
【0133】
または、血清は、全血から収集することができる。一例として、血清約6mLのために全血約15mLを採血することができる。血液は、硬質プラスチックまたはガラスチューブ中に収集することができる。血液は、軟質プラスチック中では凝固しないであろう。血餅が形成するまで全血を室温で30分から2時間放置する。次に、ガラス棒または木製アプリケータースティックを使用して容器の脇から血餅を慎重に分離することができ、試料の残りを4℃で一晩放置することができる。その後、試料を遠心分離し、血清をきれいなチューブに移すことができる。血清は、遠心分離を4℃、1000gで10分間行うことによって透明にすることができる。血清は、分析前に-80℃で保存することができる。そのような態様では、カロテノイドは、長期間安定でありえない。収集チューブを使用して血清を得る詳細な説明は、米国特許第3,837,376号に見いだすことができ、その特許は参照により組み入れられる。血液収集チューブは、また、BD Diagnostic Systems、Greiner Bio-One、およびKendall Companyから購入することができる。
【0134】
全血は、最初に多血小板血漿および細胞(白血球および赤血球)に分離することができる。多血小板血漿(PRP)は、クエン酸塩添加全血の200gで20分間の血液遠心分離から単離することができる。次に、多血小板血漿は、新しいポリエチレンチューブに移される。次に、このPRPは、800gで遠心分離されて血小板がペレットにされ、上清(乏血小板血漿[PPP])は、その後の段階での例えばELISAによる分析のために保管することができる。次に、血小板は、1U/ml PGE2を含有するタイロード緩衝液などの緩衝液中に静かに再懸濁し、再度遠心分離によってペレットにすることができる。この仕方で洗浄を2回繰り返すことができ、その後、Triton Xを用いた遠心分離によって血小板の膜画分が取り出され、血小板由来PF4分析のために血小板のペレットが溶解される。血小板は、50mMトリスHCL、100〜120mM NaCl、5mM EDTA、1% Igepalおよびプロテアーゼインヒビター錠(complete(商標)混合物、Boehringer Manheim, Indianopolis, IN)を使用して溶解することができる。
【0135】
生物学的試料中の特異的タンパク質レベルおよび核酸レベルの量または存在を測定する方法は、当業者に周知である。例えば、分析物がタンパク質、すなわちソルチリン1であれば、試験試料は、ウエスタンブロット、酵素結合吸収アッセイ、質量分析、イムノアッセイ、フローサイトメトリー、免疫組織化学分析、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の分析に供することができる。例えば、ウエスタンブロット、ELISA、イムノアッセイ、フローサイトメトリー、または免疫組織化学分析は、抗ソルチリン1抗体を使用して行うことができる。本明細書に開示のアッセイに使用するための例示的な抗ソルチリン1抗体には、非限定的に、Santa Cruz Biotechnologyから入手可能なNTR3(E-9)、NTR3(G-11)、NTR3(C-19)、NTR3(F-15)、NTR(H-300)、およびNTR3(C-20)、NTR3(N-17);Abnovaから入手可能な、SORT1により精製されたMAxPabマウスポリクローナル抗体、SORT1ポリクローナル抗体、SORT1モノクローナル抗体(M01、クローン1B3)、およびSORT1ポリクローナル抗体(A01);US Biologicalから入手可能なニューロテンシン受容体3(NTR3、ソルチリン、100kD NT受容体、糖タンパク質95、Gp95、NT3、OTTHUMP00000013784、ソルチリン1、ソルチリン-1、SORT1);EMD Milliporeから入手可能な抗ソルチリン;ヒト/マウスソルチリン(Soritlin)Mab(クローン334708);ヒトソルチリン親和精製ポリクローナルAb;およびR and Systemsから入手可能なヒトソルチリン親和性精製ポリクローナルAb;Biorbystから入手可能なソルチリン抗体;GeneTexから入手可能なソルチリン1抗体[C1C3];LifeSpan BioSciencesから入手可能な抗SORT1/ソルチリン;Proteintechから入手可能なSORT1;Thermo Scientific Pierce Productsから入手可能なソルチリン1、ソルチリン、ニューロテンシン受容体3;Sigma-Aldrichから入手可能な、マウスにおいて産生されたモノクローナル抗SORT1抗体およびウサギにおいて産生された抗SORT1抗体が含まれる。
【0136】
分析物が核酸、例えばソルチリン1をコードする核酸ならば、試験試料は、プローブハイブリダイゼーション、プライマー伸長、増幅、配列決定、5'ヌクレアーゼ消化、分子ビーコンアッセイ、DNAチップ分析、オリゴヌクレオチド連結アッセイ、サイズ分析、一本鎖高次構造多型、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイム定量PCR、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の分析に供することができる。一態様では、Life TechnologiesからのHs00361747_ml TaqManプローブを使用してPCD分析を行うことができる。いくつかの態様では、ヒトSORT1(NCBI参照配列:NM_002959.4またはNM_002959.5)の少なくとも18個の連続ヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を有する第1プライマーおよびヒトSORT1(NCBI参照配列:NM_002959.4またはNM_002959.5)の少なくとも少なくとも18個の連続ヌクレオチドと相補的な配列を含むヌクレオチド配列を有する第2プライマーを有するPCRプライマー対を用いてPCR分析を行うことができる。
【0137】
いくつかの態様では、アッセイは、さらに、本明細書に記載のアッセイにおいて増加したレベルのソルチリン1を有する対象に、血管石灰化を低減もしくは阻害するため、または血管石灰化に関連した状態を処置するための治療または薬剤(例えば治療薬)を施すことを含む。石灰化を低減もしくは阻害するため、または血管石灰化に関連した状態を処置するために有用な薬剤および治療には、非限定的に、スタチン、ビスホスホネート、リン吸着薬、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。血管石灰化を低減もしくは阻害するため、または血管石灰化に関連した状態を処置するためのいくつかの例示的な組成物および方法は、PCT出願公開である国際公開公報第2000003677号、国際公開公報第2000033865号、国際公開公報第2001003774号、国際公開公報第2001070320号、国際公開公報第2002009683号、国際公開公報第2003013420号、国際公開公報第2004019923号、国際公開公報第2005044189号、国際公開公報第2006102061号、国際公開公報第2006122046号、国際公開公報第2007047969号、国際公開公報第2007112280号、国際公開公報第2008060139号、国際公開公報第2008115469号、国際公開公報第2008116215号、国際公開公報第2009017863号、国際公開公報第2009072132号、国際公開公報第2009102966号、国際公開公報第2010083613号、国際公開公報第2011005841号、国際公開公報第2011123518号、国際公開公報第2011133855号、国際公開公報第2012065059号、国際公開公報第2012100229号および国際公開公報第2013006372号;ならびに米国特許第7,422,607号に記載されており、それら全ての内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。抗RANKL抗体、抗スクレロスチン抗体および抗Wnt抗体は、前臨床試験において骨の処置のために使用される。これらの抗体もまた、ソルチリン1治療と組み合わせて使用することができよう。
【0138】
対象から得られた単離後の試料と、ソルチリン1と反応させるための第1の試薬とを含む組成物または組み合わせもまた、本明細書に提供される。試料は、上昇したレベルのソルチリン1を含むことが疑われる試料でありうる。いくつかの態様では、該組み合わせは、さらに、ソルチリン1および第1の試薬の存在下でシグナルを発生する第2の試薬を含む。
【0139】
第1および第2の試薬は、有機または無機小分子;糖類;オリゴ糖;多糖;ペプチド;タンパク質;ペプチド類似体および誘導体;ペプチド模倣体;糖タンパク質、糖ペプチド;抗体およびその抗原結合フラグメント;核酸;核酸類似体および誘導体;脂質、細菌、植物、真菌、または動物細胞などの生物学的材料から調製された抽出物;動物組織;天然または合成組成物;ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より独立して選択することができる。いくつかの態様では、第1の試薬は、ソルチリン1が作用する基質、ソルチリン1と結合する分子、第2の分子へのソルチリンの結合を阻害する分子、ならびにそれらの任意の組み合わせである。
【0140】
いくつかの態様では、第1または第2の試薬は、ソルチリン1が試料中に存在する場合にシグナルを発生する標識を含みうる。ソルチリンの存在下で発生するシグナルの量またはレベルは、試料中のソルチリンの量またはレベルに相関しうる。例示的な標識には、非限定的に、放射性標識、発色団、蛍光体、化学発光前駆体、化学発光反応体などが含まれる。
【0141】
本開示は、また、上述の組成物/組み合わせを含むシステムを提供する。
【0142】
本明細書に記載のソルチリン1レベルを決定するためのアッセイの任意の態様に使用するためのコンピュータシステムも提供される。例えば、本明細書に提供される一態様は、少なくとも1つの対象から得られた少なくとも1つの試験試料からデータを得るためのコンピュータシステムである。該システムは、(a)対象から少なくとも1つの被験試料を受け取り、少なくとも1つの試験試料に少なくとも1種の分析を行ってソルチリン1またはソルチリン1をコードする核酸のレベルまたは量を決定するように構成された決定モジュール;(b)決定モジュールからのデータ出力を記憶するように構成された記憶デバイス;および(c)決定モジュールからのデータ出力に部分的に基づき内容を表示するための表示モジュールを含み、ここで、内容は、ソルチリン1の量またはレベルと任意で石灰化またはCRDの存在または不在とを示すシグナルを含む。
【0143】
いくつかの態様では、決定モジュールは、さらに、決定モジュールからのデータ出力を、記憶デバイスに記憶された参照データと比較するように適合された比較モジュールを含みうる。
【0144】
いくつかの態様では、記憶デバイスは、さらに、少なくとも1つの対象の情報を、例えば少なくとも1つの対象の以前に決定されたソルチリン1レベルを、記憶するように構成されうる。
【0145】
いくつかの態様では、表示モジュール上に表示される内容は、さらに、ソルチリン1レベルが対照レベルの参照よりも少なくとも10%高いかどうかを示すシグナルを含みうる。いくつかの態様では、表示モジュール上に表示される内容は、さらに、石灰化を阻害するための処置方式を受けることが推奨される対象を示すシグナルを含みうる。
【0146】
コンピュータ上で方法を実行するためのソフトウェアモジュールを定義するためにコンピュータ読み取り可能な命令が記録されたコンピュータ読み取り可能な媒体も、本明細書に提供される。一態様では、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、(a)記憶デバイス上に記憶されたデータを参照データと比較して比較結果を提供するための命令であって、該比較が上昇したレベルのソルチリン1を同定する、命令;ならびに(b)決定モジュールからのデータ出力に部分的に基づく内容を表示するための命令であって、該内容が、上昇したレベルのソルチリン1のレベルと任意で石灰化またはCRDの存在または不在とを示すシグナルを含む命令を含む。
【0147】
いくつかの態様では、コンピュータ読み取り可能な媒体は、さらに、対象が参照レベルまたは対照レベルよりも少なくとも10%高いソルチリン1レベルを有するかどうかを決定または計算するための命令を含みうる。
【0148】
本発明の例示態様は、以下の数字を付した文章のいずれかによって記載することができる。
1.(i)血管平滑筋細胞もしくは弁間質細胞中のソルチリン1の活性もしくは量;
(ii)平滑筋細胞中のソルチリン1をコードする核酸の発現;または
(iii)ソルチリン1のリン酸化
を阻害する化合物を平滑筋細胞と接触させる段階を含む、平滑筋細胞(SMC)の石灰化を阻害するための方法。
2.前記化合物が、有機または無機小分子;糖類;オリゴ糖;多糖;ペプチド;タンパク質;ペプチド類似体および誘導体;ペプチド模倣体;糖タンパク質、糖ペプチド;抗体およびその抗原結合フラグメント;核酸;核酸類似体および誘導体;細菌、植物、真菌、または動物細胞などの生物学的材料から調製された抽出物;動物組織;天然または合成組成物;ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目1記載の方法。
3.前記化合物が、siRNAまたは抗体である、項目1または2記載の方法。
4.前記化合物が、ソルチリン1をコードする核酸の発現を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%阻害する、項目1〜3のいずれかに記載の方法。
5.前記化合物が、ソルチリン1の活性を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%阻害する、項目1〜4のいずれかに記載の方法。
6.前記化合物が、SMC中のソルチリン1の量を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%低下させる、項目1〜5のいずれかに記載の方法。
7.前記化合物が、組織非特異的アルカリホスファターゼ活性(TNAP)を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%低減する、項目1〜6のいずれかに記載の方法。
8.前記化合物が、リン酸調節エンドペプチダーゼ(PHEX)の発現を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%増加させる、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
9.前記化合物が、マトリックスミネラル化を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%低下させる、項目1〜8のいずれかに記載の方法。
10.前記化合物が、マイクロRNA 125bの発現レベルを対照または参照レベルに比べて少なくとも10%増加させる、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
11.前記化合物が、ソルチリン1と非特異的アルカリホスファターゼ活性(TNAP)、カベオリン-1との結合を低下させる、項目1〜10のいずれかに記載の方法。
12.ソルチリン1をコードする核酸がmRNAである、項目1〜11のいずれかに記載の方法。
13.接触がインビトロである、項目1〜12のいずれかに記載の方法。
14.接触がインビボである、項目1〜13のいずれかに記載の方法。
15.接触が哺乳動物における、項目14記載の方法。
16.接触がヒトにおける、項目14または15記載の方法。
17.接触が、石灰化の阻害を必要とする対象における、項目14〜16のいずれかに記載の方法。
18.石灰化が心血管石灰化である、項目17記載の方法。
19.石灰化が、弁または動脈の石灰化である、項目17または18記載の方法。
20.前記対象が、重症腎不全を有するか、または経カテーテル大動脈弁植え込み術を受けているか、または慢性冠動脈硬化を有するか、または大動脈弁狭窄を有する、項目17〜19のいずれかに記載の方法。
21.前記対象が、慢性腎疾患、血液透析およびII型糖尿病、動静脈グラフト/シャント、動脈および静脈グラフト、組織工学による血管および弁移植片、パジェット病、関節リウマチ、骨粗鬆症、または変形性関節症を含む、ミネラル不均衡またはカルシウム/リン酸障害を有する、項目17〜20のいずれかに記載の方法。
22.対象における石灰化またはそれに起因する臨床的合併症を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の化合物を投与する段階を含み、該化合物が、(i)SMC中のソルチリン1の活性、リン酸化、もしくは量;(ii)SMC中のソルチリン1をコードする核酸の発現;または(iii)ソルチリン1のリン酸化を阻害する、方法。
23.前記化合物が、有機または無機小分子;糖類;オリゴ糖;多糖;ペプチド;タンパク質;ペプチド類似体および誘導体;ペプチド模倣体;糖タンパク質、糖ペプチド;抗体およびその抗原結合フラグメント;核酸;核酸類似体および誘導体;細菌、植物、真菌、または動物細胞などの生物学的材料から調製された抽出物;動物組織;天然または合成組成物;ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目22記載の方法。
24.前記化合物がsiRNAまたは抗体である、項目22または23記載の方法。
25.前記化合物が、ソルチリン1をコードする核酸の発現を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%阻害する、項目22〜24のいずれかに記載の方法。
26.前記化合物が、ソルチリン1の活性を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%阻害する、項目22〜25のいずれかに記載の方法。
27.前記化合物が、SMC中のソルチリン1の量を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%低下させる、項目22〜26のいずれかに記載の方法。
28.前記化合物が、組織非特異的アルカリホスファターゼ活性を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%低減する、項目22〜27のいずれかに記載の方法。
29.前記化合物が、リン酸調節エンドペプチダーゼの発現を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%増加させる、項目22〜28のいずれか記載の方法。
30.前記化合物が、マトリックスミネラル化を対照または参照レベルに比べて少なくとも10%低下させる、項目22〜29のいずれかに記載の方法。
31.前記化合物が、マイクロRNA 125bの発現レベルを対照または参照レベルに比べて少なくとも10%増加させる、項目22〜30のいずれかに記載の方法。
32.前記化合物が、ソルチリン1と非特異的アルカリホスファターゼ活性(TNAP)、カベオリン-1との結合を低下させる、項目22〜31のいずれかに記載の方法。
33.ソルチリン1をコードする核酸がmRNAである、項目22〜32のいずれかに記載の方法。
34.投与が、移植、注射、注入、点滴、植え込み術、または経口摂取である、項目22〜33のいずれかに記載の方法。
35.治療有効量が、約1μg/kg〜約150mg/kg体重である、項目22〜34のいずれかに記載の方法。
36.投与が1日1回である、項目22〜35のいずれかに記載の方法。
37.前記対象が哺乳動物である、項目22〜36のいずれかに記載の方法。
38.石灰化が心血管石灰化である、項目22〜37のいずれかに記載の方法。
39.石灰化が、弁または動脈の石灰化である、項目22〜38のいずれかに記載の方法。
40.前記対象が、重症腎不全を有するか、または経カテーテル大動脈弁植え込み術を受けているか、または慢性冠動脈硬化を有するか、または大動脈弁狭窄を有する、項目22〜39のいずれかに記載の方法。
41.前記対象が、慢性腎疾患、血液透析およびII型糖尿病、動静脈グラフト/シャント、動脈および静脈グラフト、組織工学による血管および弁移植、パジェット病、関節リウマチ、骨粗鬆症、または変形性関節症を含む、ミネラル不均衡またはカルシウム/リン酸障害を有する、項目22〜40のいずれかに記載の方法。
42.臨床的合併症が、急性心筋梗塞、卒中などである、項目22〜41のいずれかに記載の方法。
43.前記対象が、参照レベルに比べて増加したレベルのソルチリンを有する、項目22〜42のいずれかに記載の方法。
44.前記対象由来の生物学的試料を、少なくとも1種の分析に供して生物学的試料中のソルチリン1のレベルを検出する段階;
試料中のソルチリン1のレベルを参照レベルと比較する段階;
試料中のレベルが参照レベルよりも高い場合、対象に石灰化または石灰化を発症するリスクがあると同定する段階;ならびに
石灰化を阻害もしくは低減するため、またはCRD、糖尿病、大動脈弁狭窄、およびいくつかの遺伝性障害(例えばゴーシェ病)などの血管石灰化に関連する状態を処置するための治療を施す段階
を含む方法。
45.治療が、(i)SMC中のソルチリン1の活性もしくは量;(ii)SMC中のソルチリン1をコードする核酸の発現;または(iii)ソルチリン1のリン酸化を阻害する、項目44に記載の方法。
46.対象由来の生物学的試料を少なくとも1種の分析に供して生物学的試料中のソルチリン1のレベルを検出することを含む、対象における石灰化を決定するためのアッセイであって、参照レベルに比べて増加したレベルのソルチリン1が、対象が石灰化を有する、石灰化を発症するリスクを有する、慢性腎不全(CRD)を有する、またはCRDを発症するリスクを有することを示す、アッセイ。
47.少なくとも1種の分析が、ウエスタンブロット、酵素結合吸収アッセイ、質量分析、イムノアッセイ、フローサイトメトリー、免疫組織化学分析、プローブハイブリダイゼーション、プライマー伸長、増幅、配列決定、5'ヌクレアーゼ消化、分子ビーコンアッセイ、DNAチップ分析、オリゴヌクレオチド連結アッセイ、サイズ分析、一本鎖高次構造多型、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイム定量PCR、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目46記載のアッセイ。
48.ソルチリン1のレベルが、参照または対照レベルよりも少なくとも10%高い、項目46または47記載のアッセイ。
49.生物学的試料が血液試料である、項目46〜48のいずれかに記載のアッセイ。
50.対象から得られた単離された試料であって、上昇したレベルのソルチリン1を含むことが疑われる試料と、
ソルチリン1と反応させるための試薬との
組み合わせ。
51.単離された試料が血液試料である、項目50記載の組み合わせ。
52.前記試薬が、有機または無機小分子;糖類;オリゴ糖;多糖;ペプチド;タンパク質;ペプチド類似体および誘導体;ペプチド模倣体;糖タンパク質、糖ペプチド;抗体およびその抗原結合フラグメント;核酸;核酸類似体および誘導体;脂質;細菌、植物、真菌、または動物細胞などの生物学的材料から調製された抽出物;動物組織;天然または合成組成物;ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目50または51記載の組み合わせ。
53.前記試薬が、ソルチリン1が作用する基質、ソルチリン1と結合する分子、第2の分子へのソルチリンの結合を阻害する分子、およびそれらの任意の組み合わせである、項目50〜52のいずれかに記載の組み合わせ。
54.前記試薬が、単離された試料中の上昇したレベルのソルチリン1を検出するようにシグナルを発生するための標識をさらに含む、項目50〜53のいずれかに記載の組み合わせ。
55.標識が、放射性標識、発色団、蛍光体、化学発光前駆体、化学発光反応体、またはそれらの組み合わせのうち任意の1種または複数種である、項目54記載の組み合わせ。
56.上昇したレベルが、対照または参照レベルよりも少なくとも10%高い、項目50〜55のいずれかに記載の組み合わせ。
57.(c)対象から得られた単離された試料であって、上昇したレベルのソルチリン1を含むことが疑われる試料;および
(d)ソルチリン1と反応させるための試薬
を含むシステム。
58.単離された試料が血液試料である、項目57記載のシステム。
59.前記試薬が、有機または無機小分子;糖類;オリゴ糖;多糖;ペプチド;タンパク質;ペプチド類似体および誘導体;ペプチド模倣体;糖タンパク質、糖ペプチド;抗体およびその抗原結合フラグメント;核酸;核酸類似体および誘導体;脂質;細菌、植物、真菌、または動物細胞などの生物学的材料から調製された抽出物;動物組織;天然または合成組成物;ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目57または58記載のシステム。
60.前記試薬が、ソルチリン1が作用する基質、ソルチリン1と結合する分子、第2の分子へのソルチリンの結合を阻害する分子、およびそれらの任意の組み合わせである、項目57〜59のいずれかに記載のシステム。
61.前記試薬が、単離された試料中の上昇したレベルのソルチリン1を検出するようにシグナルを発生するための標識をさらに含む、項目57〜60のいずれかに記載のシステム。
62.標識が、放射性標識、発色団、蛍光体、化学発光前駆体、化学発光反応体、またはそれらの組み合わせのうち任意の1種または複数種である、項目57〜61のいずれかに記載のシステム。
63.上昇したレベルが、対照または参照レベルよりも少なくとも10%高い、項目57〜62のいずれかに記載のシステム。
64.(a)対象から少なくとも1つの試験試料を受け取りかつ少なくとも1つの試験試料に少なくとも1種の分析を行って、ソルチリン1またはソルチリン1をコードする核酸のレベルまたは量を決定するように構成された、決定モジュール;
(b)決定モジュールからのデータ出力を記憶するように構成された、記憶デバイス;ならびに
(c)決定モジュールからのデータ出力に部分的に基づく内容を表示するための表示モジュールであって、該内容が、ソルチリン1の量またはレベルと、任意で石灰化またはCRDの存在または不在とを示すシグナルを含む、表示モジュール
を含む、少なくとも1つの対象から得られた少なくとも1つの試験試料からデータを得るためのコンピュータシステム。
65.コンピュータ上で方法を実行するためのソフトウェアモジュールを定義するためにコンピュータ読み取り可能な命令が記録された、コンピュータ読み取り可能な媒体であって、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が、
(a)記憶デバイス上に記憶されたデータを参照データと比較して比較結果を提供するための命令であって、該比較が、上昇したレベルのソルチリン1を同定する、命令;ならびに
(b)決定モジュールからのデータ出力に部分的に基づく内容を表示するための命令であって、該内容が、上昇したレベルのソルチリン1と、任意で石灰化またはCRDの存在または不在とを示すシグナルを含む、命令
を含む、コンピュータ読み取り可能な媒体。
66.前記化合物が、ソルチリン1のリン酸化を低下させる、項目1〜21のいずれかに記載の方法。
67.ソルチリン1のリン酸化が、セリン819および/または825のリン酸化である、項目1〜21または67のいずれかに記載の方法。
68.前記化合物が、ソルチリン1のリン酸化を低下させる、項目22〜43のいずれかに記載の方法。
69.ソルチリン1のリン酸化がセリン819および/または825のリン酸化である、項目22〜43または68のいずれかに記載の方法。
【0149】
いくつかの選択された定義
便宜上、本出願の明細書、実施例および添付の特許請求の範囲に用いられたいくつかの用語をここに集める。特に述べない限り、または文脈から暗に示されない限り、以下の用語および語句には、下記に示される意味が含まれる。特に明記しない限り、または文脈から明白でない限り、下記の用語および語句は、その用語または語句が属する技術分野において取得した意味を排除するものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるので、定義は、特定の態様の説明を助けるために提供されるのであって、請求された発明を限定するためのものではない。さらに、特に文脈によって必要とされない限り、単数の用語は、複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。
【0150】
特に定義しない限り、本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の専門家に通常理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験に任意の公知の方法、装置、および材料を使用することができるものの、これに関する方法、装置、および材料は、本明細書に記載される。
【0151】
本明細書に使用される用語「含んでいる」または「含む」は、本発明に不可欠な組成物、方法、およびその各構成要素の参照に使用されるが、不可欠であろうとなかろうと、不特定の要素の包含を受け入れる。
【0152】
単数の用語(「a」、「an」、および「the」)は、特に文脈が明示しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という言葉は、特に文脈が明示しない限り、「および」を含むためのものである。
【0153】
実施例以外で、または特に示した場合、本明細書に使用された成分の量または反応条件を表現している全ての数字は全ての場合に用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。パーセンテージと共に使用された場合の用語「約」は、参照されている値の±5%を意味しうる。例えば、約100は、95〜105を意味する。
【0154】
本明細書に記載の方法および材料に類似または等価の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるものの、適切な方法および材料が以下に記載される。用語「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する。略語「例えば(e.g.)」は、ラテン語のexempli gratia由来であり、本明細書において非限定的な例を示すために使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、用語「例えば(for example)」と同義である。
【0155】
本明細書において互換的に使用されるように、用語「本質的に」および「実質的に」は、少なくとも約60%、または好ましくは少なくとも約70%もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%もしくは少なくとも約99%以上、または70%から100%の間の任意の整数の比率を意味する。いくつかの態様では、用語「本質的に」は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%以上、または90%から100%の間の任意の整数の比率を意味する。いくつかの態様では、用語「本質的に」は100%を含みうる。
【0156】
用語「低下する」、「低減した」、「低減」、「低下」または「阻害する」は全て、本明細書において概して統計的に有意な量の低下を意味するために使用される。しかし、疑問を避けるために、「低減した」、「低減」または「低下」または「阻害する」は、参照レベルに比べて少なくとも10%の低下、例えば少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の低下または100%以下の低下(例えば、参照試料に比べて不在のレベル)、または参照レベルに比べて10から100%の間の任意の低下を意味する。
【0157】
用語「増加した」、「増加する」または「高める」または「活性化する」は全て、本明細書において概して統計的に有意な量の増加を意味するために使用される。いかなる疑問も避けるために、用語「増加した」、「増加する」または「高める」または「活性化する」は、参照レベルに比べて少なくとも10%の増加、例えば少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、または100%以下の増加、または参照レベルに比べて10から100%の間の任意の増加、または少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍もしくは少なくとも約10倍の増加、または参照レベルに比べて2倍から10倍以上の間の任意の増加を意味する。
【0158】
用語「統計的に有意な」または「有意に」は、統計的有意性を表し、一般に、参照レベルから少なくとも2標準偏差(2SD)離れていることを意味する。この用語は、差があるという統計的証拠を表す。それは、帰無仮説が実際は真である場合に帰無仮説を棄却する決定を行う確率として定義される。
【0159】
本明細書に使用されるように、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、霊長類、げっ歯類、家畜または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザルが含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えばイエネコ、イヌ種、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、トリ種、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ、および魚、例えばマス、ナマズおよびサケが含まれる。患者または対象には、前記の任意のサブセット、例えばヒト、霊長類またはげっ歯類などの1つまたは複数の群または種を除く上記の全てが含まれる。ある態様では、対象は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。用語「患者」および「対象」は、本明細書において互換的に使用される。
【0160】
本明細書に使用されるように、用語「対象」は、石灰化を示すまたは石灰化を発症するリスクがあるヒトまたは他の哺乳動物を意味するためのものである。そのような個体には、例えば、アテローム動脈硬化、狭窄、再狭窄、腎不全、糖尿病、人工的補填物移植、組織傷害または加齢性血管病などの状態に関連する血管石灰化があるか、またはそれを発症するリスクがありうる。これらの状態の予後および臨床的適応は、当技術分野において公知である。本発明の方法によって処置された個体は、例えば、糖尿病、慢性腎疾患、腎不全、腎移植または腎透析に関連する全身ミネラル不均衡を有しうる。
【0161】
いくつかの態様では、慢性腎疾患、慢性腎不全、血液透析、または糖尿病を含むミネラル不均衡およびカルシウム/リン酸障害を有する対象は、加速性の血管および弁の石灰化を患う。これらの対象では、非限定的に、血液透析アクセスのための動静脈グラフト/シャント、閉塞性末梢動脈疾患のための静脈グラフト、および閉塞冠動脈のための伏在静脈バイパスグラフトを含む血管グラフトが、多くの場合に1年以内に閉塞する。加えて、パジェット病、関節リウマチ、骨粗鬆症または変形性関節症を有する対象にも、石灰化のリスクがある。理論に縛られることを望まないが、リスクがあるこれらの患者における組織工学による血管および弁移植片は、短期間で閉塞すると予想される。
【0162】
いくつかの態様では、対象は重症腎不全を有するか、または対象は経カテーテル大動脈弁を有する。腎不全には、血液透析、血液透析AVシャント、静脈グラフト、血管吻合、パジェット病、または変形性関節症が併存しうる。非限定的に、これらの障害は、本明細書に記載の方法の効果の測定をより容易にすることができる高率または急性の石灰化変化を有する。
【0163】
対象は、免許を有する医師および/または権限のある医学専門家が最初に診断することができ、本明細書に記載の方法による予防的および/または治療的処置のための方式を示唆、推奨または処方することができる。したがって、いくつかの態様では、該方法は、心血管石灰化について処置するための対象を選択する段階を含む。
【0164】
ヒトアテローム動脈硬化、腎不全、高リン酸血症、糖尿病、加齢性血管石灰化および心血管石灰化に関連する他の状態の信頼できる指標である動物モデルは、当技術分野において公知である。例えば、血管壁石灰化の実験モデルは、Yamaguchi et al., Exp. Path. 25: 185-190, 1984によって記載されており、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0165】
「治療、予防または回復」は、障害の発症を遅延もしくは予防すること、または状態の進行もしくは重症度の進行、増悪もしくは悪化を後退、軽減、改善、阻害、減速もしくは停止させることを意味する。いくつかの態様では、少なくとも1つの症状が、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%軽減されるが、100%、すなわち完全な軽減ではない。いくつかの態様では、少なくとも1つの症状は、完全に軽減される。
【0166】
本明細書に使用されるように、心血管石灰化に関連して、用語「阻害する」、「低下する」、「予防する」および「治療する」は、細胞外マトリックスのヒドロキシアパタイト結晶沈着物の形成、成長または沈着を予防、遅延、または後退させることを意味するためのものである。非限定的に、障害の重症度の改善には、心血管石灰化の後退および血管石灰化の進行の減速が含まれる。
【0167】
本明細書に使用されるように、用語「タンパク質」および「ペプチド」は、本明細書において、隣接残基のα-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって相手に結合した一連のアミノ酸残基を示すために互換的に使用される。本明細書において互換的に使用される用語「タンパク質」および「ペプチド」は、そのサイズまたは機能にかかわらず、改変アミノ酸(例えばリン酸化、糖化など)およびアミノ酸類似体を含むタンパク質性アミノ酸の重合体を表す。「タンパク質」は、多くの場合に比較的大型のポリペプチドに関して使用され、「ペプチド」は、多く場合に小型ポリペプチドに関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は、重複し、様々である。本明細書に使用される用語「ペプチド」は、特に言及しない限り、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびタンパク質のフラグメントを表す。遺伝子産物およびそのフラグメントを表す場合、用語「タンパク質」および「ペプチド」は、本明細書において互換的に使用される。したがって、例示的なペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然のタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、フラグメントならびに前記の他の等価物、変異体、フラグメントおよび類似体が含まれる。
【0168】
本明細書に使用されるように、用語「ペプチド模倣体」は、天然ペプチドに類似の所定の三次元構造にフォールディングするか、またはその三次元構造を有する分子を表す。
【0169】
用語「重鎖」には、全長重鎖、およびソルチリン1に対する特異性を付与するために十分な可変領域配列を有するそのフラグメントが含まれる。全長重鎖は、可変領域ドメインVH、および3つの定常領域ドメインCH1、CH2、およびCH3を含む。VHドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にあり、CH3ドメインはカルボキシル末端にある。
【0170】
用語「軽鎖」には、全長軽鎖、およびソルチリン1に対する特異性を付与するために十分な可変領域配列を有するそのフラグメントが含まれる。全長軽鎖は、可変領域ドメインVL、および定常領域ドメインCLを含む。重鎖と同様に、軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。
【0171】
「Fabフラグメント」は、1つの軽鎖ならびに1つの重鎖のCH1および可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成できない。
【0172】
「Fab'フラグメント」は、1つの軽鎖および1つの重鎖を含み、該重鎖は、2つの重鎖の間で鎖間ジスルフィド結合を形成してF(ab')2分子を形成できるように、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域をより多く含む。
【0173】
「F(ab')
2フラグメント」は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含み、その重鎖は、2つの重鎖の間で鎖間ジスルフィド結合が形成されるようにCH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の部分を含む。
【0174】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域を欠如している。
【0175】
本明細書に使用されるように、用語「相補性決定領域」(CDR;すなわちCDR1、CDR2、およびCDR3)は、抗原結合のためにその存在が必要な抗体可変ドメインのアミノ酸残基を表す。各可変ドメインは、典型的にはCDR1、CDR2およびCDR3と特定される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatによって定義された「相補性決定領域」由来のアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)付近;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))および/または「超可変ループ」由来の残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)付近;Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含みうる。場合によっては、相補性決定領域は、Kabatにより定義されたCDR領域および超可変ループの両方に由来のアミノ酸を含みうる。
【0176】
「単鎖抗体」は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とがフレキシブルリンカーによって結合されてポリペプチド一本鎖を形成し、そのポリペプチド一本鎖が抗原結合領域を形成するFv分子である。単鎖抗体は、国際公開公報第88/01649号ならびに米国特許第4,946,778号および第5,260,203号(参照により本明細書に組み入れられる)に詳細に論じられている。
【0177】
表現「線状抗体」は、Zapata et al., Protein Eng., 8(10):1057-1062 (1995)に記載された抗体を表す。簡潔には、これらの抗体は、タンデムFdセグメント対(VH-CH1-VH-CH1)を含み、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒に抗原結合領域の対を形成する。線状抗体は、二重特異性または単一特異性でありうる。
【0178】
本明細書に使用されるように、表現「単鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む抗体フラグメントを意味するためのものであり、これらのドメインは、ポリペプチド一本鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、さらに、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間に含む。(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer- Verlag, New York, pp. 269-315 (1994))。
【0179】
本明細書に使用されるように、用語「二重特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有する小型抗体フラグメントであって、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中に軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含むフラグメントを表す。短すぎるリンカーを使用することによって、同じ鎖上で2つのドメインの間の対形成が不可能になり該ドメインは別の鎖の相補的ドメインと強制的に対形成され、2つの抗原結合部位を創出する。(EP404,097;国際公開公報第93/11161号; Hollinger et ah, Proc. Natl. Acad. Sd. USA, P0:6444-6448 (1993))。
【0180】
ある態様において、「多重特異性」または「多機能性」抗体以外の「二価抗体」は、同一の抗原特異性を有する結合部位を含むと理解される。
【0181】
「二重特異性」または「二機能性」抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、非限定的に、ハイブリドーマの融合体またはFab'フラグメントの連結を含む多様な方法によって産生されうる。例えば、Songsivilai & Lachmann (1990), Clin. Exp. Immunol. 79:315-321; Kostelny et al. (1992), J. Immunol. 148:15471553を参照されたい。
【0182】
本明細書に使用されるように、用語「ヒト化抗体」は、非ヒト配列の少なくとも部分がヒト配列に置換された抗体を意味する。ヒト化抗体を調製する方法の例は、例えば米国特許第6,054,297号;同第5,886,152号;および同第5,877,293号に見出すことができ、その全ての内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0183】
本明細書に使用されるように、用語「キメラ抗体」は、第1の抗体由来の1つまたは複数の領域、および少なくとも1つの他の抗体由来の1つまたは複数の領域を含む抗体を意味する。第1の抗体および追加的な抗体は、同じまたは異なる種由来でありうる。
【0184】
本明細書に使用されるように、用語「抗原」は、抗体などの選択的結合剤によって結合可能であり、追加的に、抗原のエピトープに結合可能である抗体の産生を誘発するために動物において使用可能な、分子または分子の部分を表す。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有しうる。用語「抗原」は、また、抗体によって結合可能な分子を表す。
【0185】
本明細書に使用されるように、用語「多糖」は、グリコシド結合によって互いに結合している多数の単糖分子から分子がなる高分子炭水化物を表す。多糖という用語は、オリゴ糖を包含するためのものでもある。多糖は、ホモ多糖またはヘテロ多糖でありうる。ホモ多糖は1種類だけのユニットを含む一方、ヘテロ多糖は、異なる種類のモノマーユニットからなる。
【0186】
用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、選択された配列に相補的な一本鎖DNAまたは一本鎖RNAを表す。アンチセンスRNAの場合、それらは、メッセンジャーRNA鎖に結合することによってそのタンパク質翻訳を阻止する。アンチセンスDNAは、特異的な相補的(コードまたは非コード)RNAをターゲティングするために使用することができる。結合を行う場合、このDNA/RNAハイブリッドを酵素RNアーゼHによって分解することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、概して〜30、15〜35、または18〜25ヌクレオチド長である。
【0187】
本明細書に使用される用語「shRNA」は、RNAiおよび/またはsiRNA種として機能する短鎖ヘアピン型RNAを表すが、shRNA種は、増加した安定性のために2本鎖ヘアピン様構造であることが異なる。本明細書に使用される用語「RNAi」は、干渉性RNAを表すか、またはRNA干渉分子は、核酸分子またはその類似体、例えば遺伝子発現を阻害するRNAに基づく分子である。RNAiは、選択的転写後遺伝子サイレンシングの手段を表す。RNAiは、特異的mRNAの破壊を招くことができ、またはmRNAなどのRNAのプロセッシングもしくは翻訳を阻止する。
【0188】
本明細書に使用されるように、用語「アプタマー」は、選択された非オリゴヌクレオチド分子または分子群を特異的に認識可能な、一本鎖、部分的一本鎖、部分的二本鎖または二本鎖ヌクレオチド配列を意味する。したがって、アプタマーは、対象となる特定の分子に高い親和性および特異性で結合する核酸またはペプチド分子である(Tuerk and Gold、Science 249:505 (1990); Ellington and Szostak, Nature 346:818 (1990))。大型タンパク質から小型有機分子までの多数の異なる実体と結合するDNAまたはRNAアプタマーが、首尾よく産生されている。Eaton, Curr. Opin. Chem. Biol. 1:10-16 (1997), Famulok, Curr. Opin. Struct. Biol. 9:324-9(1999) およびHermann and Patel, Science 287:820-5 (2000)を参照。アプタマーは、RNAまたはDNAに基づきうる。分子に結合するためのアプタマーを選択するための方法は、当技術分野において広く公知であり、当業者に容易に利用可能である。一般に、アプタマーは、小分子、タンパク質、核酸などの様々な分子ターゲット、さらには細胞、組織および生物に結合するために、インビトロ選択のラウンドを繰り返すこと、すなわち言い換えるとSELEX(試験管内進化法)によって操作される。アプタマーは、合成、組み換え、および精製方法を含む任意の公知の方法によって調製することができ、単独で、または同じターゲットに特異的な他のアプタマーと組み合わせて使用することができる。さらに、より完全に本明細書に説明される用語「アプタマー」には、具体的に、所与のターゲットに対する2つ以上の公知のアプタマーを比較することから得られたコンセンサス配列を含む「二次アプタマー」が含まれる。アプタマーには、非限定的に、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、改変ヌクレオチド、ならびに主鎖改変、枝分かれ部位および非ヌクレオチド性残基、基または架橋を含むヌクレオチドを含む、定義された配列セグメントおよび配列が含まれうる。いくつかの態様では、アプタマーは、ワトソン-クリック塩基対形成または三重鎖形成以外のメカニズムにより非オリゴヌクレオチド分子または分子群を認識する。
【0189】
本明細書に使用されるように、用語「リボザイム」は、エンドヌクレアーゼ活性を有する特異的触媒ドメインを有する一本鎖、部分的一本鎖、部分的二本鎖または二本鎖ヌクレオチド配列を意味する(Kim and Cech, Proc Natl Acad Sci U S A. 1987 Dec;84(24):8788-92; Forster and Symons, Cell. 1987 Apr 24;49(2):211-20)。現在のところ、天然酵素的RNAの少なくとも6つの基本的変種が公知である。一般に、酵素的核酸は、最初にターゲットRNAに結合することによって作用する。そのような結合は、酵素的核酸のターゲット結合部分によって起こり、ターゲット結合部分は、ターゲットRNAを切断するように作用するその分子の酵素的部分に近接して保持されている。したがって、酵素的核酸は、相補的塩基対形成によって最初にターゲットRNAを認識し、次にそれと結合し、正しい部位にひとたび結合すると、酵素的に作用してターゲットRNAを切断する。そのようなターゲットRNAの戦略的切断は、コードされたタンパク質の直接合成をターゲットが指令する能力を破壊する。酵素的核酸がそのRNAターゲットと結合し、それを切断した後に、それは、RNAから放出され、別のターゲットを探すので、新しいターゲットと繰り返し結合し、それを切断することができる。
【0190】
任意のターゲット配列にターゲティングされたリボザイムを産生させる方法は、当技術分野において公知である。リボザイムは、それぞれが参照により本明細書に具体的に組み入れられる国際公開公報第93/23569号および国際公開公報94/02595号に記載されているように設計することができ、該公報に記載のようにインビトロおよびインビボで試験するために合成することができる。
【0191】
転写因子は、比較的短鎖の結合配列を認識するので、周辺のゲノムDNAの不在下であっても、特異的転写因子のコンセンサス結合配列を担持する短鎖オリゴヌクレオチドは、生きた細胞での遺伝子発現を操作するためのツールとして使用することができる。この戦略は、そのような「デコイオリゴヌクレオチド」の細胞内送達を伴い、次にデコイオリゴヌクレオチドが認識され、ターゲット因子によって結合される。デコイによる転写因子のDNA結合部位の占有は、続いて転写因子がターゲット遺伝子のプロモーター領域に結合することを不可能にする。デコイは、転写因子によって活性化される遺伝子の発現を阻害するか、または転写因子の結合によって抑制される遺伝子をアップレギュレーションするために治療薬として使用することができる。デコイオリゴヌクレオチドの利用例は、Mann et al., J. Clin. Invest., 2000, 106: 1071-1075に見出すことができ、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0192】
本明細書に使用されるように、用語「カルシウム模倣化合物」は、カルシウム感知受容体に結合し、内因性リガンドCa
2+によるカルシウム感知受容体活性化の閾値を低減する高次構造変化を誘導し、それにより、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を低減する化合物を表す。これらのカルシウム模倣化合物は、また、カルシウム受容体のアロステリック調節因子と見なすことができる。
【0193】
例示的なカルシウム模倣化合物には、非限定的に、例えば欧州特許第933 354号および同第1 235 797号;国際公開公報第01/34562号、国際公開公報第93/04373号、国際公開公報第94/18959号、国際公開公報第95/11221号、国際公開公報第96/12697号、国際公開公報第97/41090号;米国特許第5,688,938号、同第5,763,569号、同第5,962,314号、同第5,981,599号、同第6,001,884号、同第6,011,068号、同第6,031,003号、同第6,172,091号、同第6,211,244号、同第6,313,146号、同第6,342,532号、同第6,362,231号、同第6,432,656号、同第6,710,088号、同第6,908,935号および米国特許出願公開第2002/0107406号に開示されたものが含まれ、これら全ての内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0194】
本明細書に使用される用語「蛍光体」は、特定の波長のエネルギーを吸収し、異なる波長でエネルギーを再放出する官能基および/または該官能基を含む分子を意味する。典型的には、蛍光体は、芳香族または複素環式芳香族化合物であり、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、シアニン、カルボシアニン、サリチラート、アントラニラート、クマリン、フルオレセイン、ローダミンまたは他の類似の化合物でありうる。例示的な蛍光体には、非限定的に、1,5 IAEDANS;1,8-ANS;4-メチルウンベリフェロン;5-カルボキシ-2,7-ジクロロフルオレセイン;5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM);5-カルボキシナフトフルオレセイン(pH10);5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA);5-FAM(5-カルボキシフルオレセイン);5-ヒドロキシトリプタミン(HAT);5-ROX(カルボキシ-X-ローダミン);5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン);6-カルボキシローダミン6G;6-CR 6G;6-JOE;7-アミノ-4-メチルクマリン;7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD);7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン;9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン;ABQ;酸性フクシン;ACMA(9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン);アクリジンオレンジ;アクリジンレッド;アクリジンイエロー;アクリフラビン;アクリフラビン-フォイルゲンSITSA;エクオリン(光タンパク質);Alexa Fluor 350(商標);Alexa Fluor 430(商標);Alexa Fluor 488(商標);Alexa Fluor 532(商標);Alexa Fluor 546(商標);Alexa Fluor 568(商標);Alexa Fluor 594(商標);Alexa Fluor 633(商標);Alexa Fluor 647(商標);Alexa Fluor 660(商標);Alexa Fluor 680(商標);アリザリンコンプレクソン;アリザリンレッド;アロフィコシアン(APC);AMC、AMCA-S;AMCA(アミノメチルクマリン);AMCA-X;アミノアクチノマイシンD;アミノクマリン;アニリンブルー;ステアリン酸アントロシル(Anthrocyl stearate);APC-Cy7;APTS;アストラゾンブリリアントレッド4G;アストラゾンオレンジR;アストラゾンレッド6B;アストラゾンイエロー7 GLL;Atabrine;ATTO-TAG(商標)CBQCA;ATTO-TAG(商標)FQ;オーラミン;Aurophosphine G;Aurophosphine;BAO 9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール);BCECF(高pH);BCECF(低pH);硫酸ベルベリン;βラクタマーゼ;BFP青方偏移GFP(Y66H);BG-647;ビマン;ビスベンズアミド;Blancophor FFG;Blancophor SV;BOBO(商標)-1;BOBO(商標)-3;Bodipy 492/515;Bodipy 493/503;Bodipy 500/510;Bodipy 505/515;Bodipy 530/550;Bodipy 542/563;Bodipy 558/568;Bodipy 564/570;Bodipy 576/589;Bodipy 581/591;Bodipy 630/650-X;Bodipy 650/665-X;Bodipy 665/676;Bodipy Fl;Bodipy FL ATP;Bodipy Fl-セラミド;Bodipy R6G SE;Bodipy TMR;Bodipy TMR-Xコンジュゲート;Bodipy TMR-X, SE;Bodipy TR;Bodipy TR ATP;Bodipy TR-X SE;BO-PRO(商標)-1;BO-PRO(商標)-3;ブリリアントスルホフラビンFF;カルセイン;カルセインブルー;Calcium Crimson(商標);Calcium Green;Calcium Green-1 Ca2+色素;Calcium Green-2 Ca2+;Calcium Green-5N Ca2+;Calcium Green-C18 Ca2+;Calcium Orange;カルコフロールホワイト;カルボキシ-X-ローダミン(5-ROX);Cascade Blue(商標);Cascade Yellow;カテコールアミン;CFDA;CFP - シアン蛍光タンパク質;クロロフィル;クロモマイシンA;クロモマイシンA;CMFDA;セレンテラジン;セレンテラジンcp;セレンテラジンf;セレンテラジンfcp;セレンテラジンh;セレンテラジンhcp;セレンテラジンip;セレンテラジンO;クマリンファロイジン;CPMメチルクマリン;CTC;Cy2(商標);Cy3.1 8;Cy3.5(商標);Cy3(商標);Cy5.1 8;Cy5.5(商標);Cy5(商標);Cy7(商標);シアンGFP;環状AMPフルオロセンサー(FiCRhR);d2;ダブシル;ダンシル;ダンシルアミン;ダンシルカダベリン;ダンシルクロリド;ダンシルDHPE;ダンシルフルオリド;DAPI;ダポキシル(Dapoxyl);ダポキシル2;ダポキシル3;DCFDA;DCFH(ジクロロジヒドロフルオレセインジアセタート);DDAO;DHR(ジヒドロローダミン123);ジ-4-ANEPPS;ジ-8-ANEPPS(ノンレシオ(non-ratio));DiA(4-ジ-16-ASP);DIDS;ジヒドロローダミン123(DHR);DiO(DiOC18(3));DiR;DiR(DiIC18(7));ドーパミン;DsRed;DTAF;DY-630-NHS;DY-635-NHS;EBFP;ECFP;EGFP;ELF 97;エオシン;エリスロシン;エリスロシンITC;エチジウムホモダイマー-1(EthD-1);オイクリシン(Euchrysin);塩化ユウロピウム(III);ユウロピウム;EYFP;ファストブルー;FDA;フォイルゲン(パラロザニリン);FITC;FL-645;フラゾオレンジ(Flazo Orange);Fluo-3;Fluo-4;フルオレセインジアセタート;フルオロ-エメラルド;フルオロ-ゴールド(ヒドロキシスチルバミジン);フルオロ-ルビー;FluorX;FM 1-43(商標);FM 4-46;Fura Red(商標)(高pH);Fura-2、高カルシウム;Fura-2、低カルシウム;ゲナクリルブリリアントレッドB;ゲナクリルブリリアントイエロー10GF;ゲナクリルピンク3G;ゲナクリルイエロー5GF;GFP(S65T);GFP赤方偏移(rsGFP);GFP野生型、非UV励起(wtGFP);GFP野生型、UV励起(wtGFP);GFPuv;グロキサン酸(Gloxalic Acid);グラニュラーブルー;ヘマトポルフィリン;Hoechst 33258;Hoechst 33342;Hoechst 34580;HPTS;ヒドロキシクマリン;ヒドロキシスチルバミジン(フルオロゴールド);ヒドロキシトリプタミン;インドジカルボシアニン(DiD);インドトリカルボシアニン(DiR);イントラホワイト(Intrawhite)Cf;JC-1;JO-JO-1;JO-PRO-1;LaserPro;Laurodan;LDS 751;Leucophor PAF;Leucophor SF;Leucophor WS;リサミンローダミン;リサミンローダミンB;LOLO-1;LO-PRO-1;ルシファーイエロー;Magグリーン;Magdalaレッド(フロキシンB);マグネシウムグリーン;マグネシウムオレンジ;マラカイトグリーン;マリーナブルー;Maxilon Brilliant Flavin 10 GFF;Maxilon Brilliant Flavin 8 GFF;メロシアニン;メトキシクマリン;MitotrackerグリーンFM;Mitotrackerオレンジ;Mitotrackerレッド;ミトラマイシン;モノブロモビマン;モノブロモビマン(mBBr-GSH);モノクロロビマン;MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン);NBD;NBDアミン;ナイルレッド;ニトロベンゾキサジドール(Nitrobenzoxadidole);ノルアドレナリン;ヌクレアファストレッド;ヌクレアイエロー;Nylosan Brilliant Iavin E8G;Oregon Green(商標);Oregon Green 488-X;Oregon Green(商標)488;Oregon Green(商標)500;Oregon Green(商標)514;パシフィックブルー;パラロザニリン(フォイルゲン);PE-Cy5;PE-Cy7;PerCP;PerCP-Cy5.5;PE-TexasRed(レッド613);フロキシンB(Magdalaレッド);Phorwite AR;Phorwite BKL;Phorwite Rev;Phorwite RPA;Phosphine 3R;PhotoResist;フィコエリトリンB[PE];フィコエリトリンR[PE];PKH26;PKH67;PMIA;Pontochromeブルーブラック;POPO-1;POPO-3;PO-PRO-1;PO-PRO-3;プリムリン;Procionイエロー;ヨウ化プロピジウム(Propidium Iodid)(PI);PyMPO;ピレン;ピロニン;ピロニンB;ピロザール(Pyrozal)ブリリアントフラビン7GF;QSY7;キナクリンマスタード;レゾルフィン;RH414;Rhod-2;ローダミン;ローダミン110;ローダミン123;ローダミン5GLD;ローダミン6G;ローダミンB540;ローダミンB200;ローダミンB extra;ローダミンBB;ローダミンBG;ローダミングリーン;ローダミンファリシジン(Phallicidine);ローダミンファロイジン;ローダミンレッド;ローダミンWT;ローズベンガル;R-フィコエリトリン(PE);赤方偏移GFP(rsGFP、S65T);S65A;S65C;S65L;S65T;サファイアGFP;セロトニン;Sevronブリリアントレッド2B;Sevronブリリアントレッド4G;SevronブリリアントレッドB;Sevronオレンジ;SevronイエローL;sgBFP(商標);sgBFP(商標)(スーパーグロー(super glow)BFP);sgGFP(商標);sgGFP(商標)(スーパーグローGFP);SITS;SITS(プリムリン);SITS(スチルベンイソチオスルホン酸);SPQ(6-メトキシ-N-(3-スルホプロピル)-キノリニウム);スチルベン;スルホローダミンB can C;スルホローダミンG Extra;テトラサイクリン;テトラメチルローダミン;Texas Red(商標);Texas Red-X(商標)コンジュゲート;チアジカルボシアニン(DiSC3);チアジンレッドR;チアゾールオレンジ;チオフラビン5;チオフラビンS;チオフラビンTCN;Thiolyte;チオゾールオレンジ;Tinopol CBS(カルコフロールホワイト);TMR;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;TOTO-1;TOTO-3;TriColor(PE-Cy5);TRITC(テトラメチルローダミン(Rodamine)イソチオシアナート);トゥルーブルー(True Blue);TruRed;ウルトラライト(Ultralite);ウラニンB;ユビテックスSFC;wt GFP;WW 781;XL665;X-ローダミン;XRITC;キシレンオレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;イエローGFP;YFP;YO-PRO-1;YO-PRO-3;YOYO-1;およびYOYO-3でありうる。これらの蛍光化合物の多数の適切な形態が入手可能であり、使用することができる。
【0195】
他の例示的な標識には、放射性標識(例えば
3H、
125I、
35S、
14C、または
32P)、酵素(例えばガラクトシダーゼ、グルコリニダーゼ、ホスファターゼ(例えばアルカリホスファターゼ)、ペルオキシダーゼ(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ)、およびコリンエステラーゼ)、ならびにコロイド金または色ガラスまたはプラスチック(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、およびラテックス)ビーズなどの比色(calorimetric)標識が含まれる。そのような標識の使用を教示している特許には、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号、および第4,366,241号が含まれ、それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0196】
そのような標識を検出する手段は、当業者に周知である。したがって、例えば、放射性標識は、写真用フィルムまたはシンチレーション計数器を使用して検出することができ、蛍光マーカーは、放射光を検出するために光検出器を使用して検出することができる。酵素標識は、典型的には酵素に酵素基質を提供し、酵素基質に対する酵素の作用によって産生された反応産物を検出することによって検出され、着色した標識を可視化することによって比色標識を検出することができる。
【0197】
本明細書に使用されるように、用語「発色団」は、可視波長、UV波長またはIR波長の光を吸収する分子を表す。
【0198】
「放射性標識」は、放射性物質を有する、または放射性核種が中に組み入れられた産物である。
【0199】
化学発光、化学発光性などの用語は、化学反応による光の生成を表す。この用語は、さらに、化学反応の電子的に励起された産物が基底状態に戻る時間の間に放射される光として定義することができる。
【0200】
本開示は、さらに、限定するものとして解釈すべきでない以下の実施例によって例示される。実施例は、単なる例示であり、本明細書に記載の局面のいずれかをいかなる方法によっても限定するためのものではない。以下の実施例は、いかなる方法でも本発明を限定しない。
【実施例】
【0201】
実施例1:ソルチリン1は血管石灰化の新規な誘導因子である
血管石灰化は、重大な罹患率および死亡率に関連する、慢性腎疾患(CRD)、糖尿病およびアテローム動脈硬化などの慢性炎症障害の顕著な特徴である。多数の臨床研究(Hyder et al., American journal of epidemiology. 2009;169:186-194)、組織学的研究(Liberman et al., Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology. 2008;28:463-470)、および動物研究(Bucay et al., Genes & development. 1998;12:1260-1268およびOkayasu et al., Okayasu et al. The Journal of biological chemistry. 2012;287:19229-19241)から、血管石灰化における過程が、骨リモデリング過程に類似していることが示唆されている(Khosla S. Nature medicine. 2011;17:430-431)。血管石灰化は、血管平滑筋細胞(SMC)がそれらのマーカー遺伝子の発現を喪失し、骨形成マーカーを獲得し、ミネラル化骨様マトリックスを沈着するおそれのある、能動的細胞調節過程である(Bostrom KI, Rajamannan NM, and Towler DA, Circulation research. 2011;109:564-577)。SMCは、骨芽細胞様状態に向けての移行、または石灰化マトリックス小胞もしくはアポトーシス小体の放出を経て、この過程に重要な役割を果たしうる。しかし、石灰化のメカニズムは、大部分が未知のままである。したがって、血管石灰化の分子メカニズムのより十分な理解は、より効率的な治療戦略の開発に繋がりうる。
【0202】
全ゲノム関連研究(GWAS)は、心血管疾患に関連する新規な遺伝子座を同定するための強力なツールである。GWASは、ソルチリン1をコードするSORT1遺伝子を有する1p13遺伝子座を血漿低比重リポタンパク質(LDL)性コレステロールレベル(Musunuru et al., Nature. 2010;466:714-719)、心筋梗塞の発症(Kathiresan et al., Nature genetics. 2009;41:334-341)、および冠動脈石灰化(O'Donnell et al., Circulation. 2011;124:2855-2864)と強く関連づけた。ソルチリン1は、血管タンパク質ソーティング10タンパク質(Vps10p)ドメインファミリーの機能的特徴を有するマルチリガンドソーティング受容体である(Mazella et al., The Journal of biological chemistry. 1998;273:26273-26276)。この受容体は、トランスゴルジ網または初期エンドソームに見られ、ゴルジ-リソソームおよび形質膜-リソソームタンパク質輸送に関与する(Willnow TE, Petersen CM, and Nykjaer A. Nature reviews. Neuroscience. 2008;9:899-909)。ソルチリン1は、プロペプチドとして合成される。後期トランスゴルジにおけるコンバターゼ介在性切断は、その専門化された組織特異的リガンドソーティングの役割を活性化する(Munck et al., The EMBO journal. 1999;18:595-604)。証拠は、リポタンパク質リパーゼ(Nielsen et al., The Journal of biological chemistry. 1999;274:8832-8836)、アポリポタンパク質(Apo)AV(Nilsson et al., The Journal of biological chemistry. 2008;283:25920-2592)、およびApoB100(Musunuru et al., Nature. 2010;466:714-719およびKjolby et al., Cell metabolism. 2010;12:213-223)へのソルチリン1の結合を示唆している。最近の2つの研究から、脂質代謝におけるSORT1の機能が報告された。肝臓特異的にソルチリン1を欠失または過剰発現しているヒト化マウスモデルを使用して、Musunuruらは、高ソルチリン1レベルが低減した肝臓超低比重リポタンパク質(VLDL)分泌およびより低いLDLコレステロールレベルと関連するという証拠を提供した(Musunuru et al., Nature. 2010;466:714-719)。対照的に、Kjolbyらは、Sort1の全体的な不在が、LDL受容体欠損マウスにおいて肝臓からのリポタンパク質分泌を低減し、高コレステロール血症およびアテローム動脈硬化を改善することを示した(Kjolby et al., Cell metabolism. 2010;12:213-223)。これらの脂質代謝に関する矛盾する結果は、議論の対象のままである。
【0203】
GWASがSORT1遺伝子を冠動脈石灰化に結びつけ、マウスにおけるSORT1の遺伝子欠失がアテローム動脈硬化性病変の形成を低減したものの、血管石灰化過程に果たすソルチリン1の役割は全く未知である。本明細書に提示されたデータは、ソルチリン1が血管石灰化の病理発症の原因になることを最初に実証している。
【0204】
材料および方法
細胞培養:ヒト冠動脈平滑筋細胞(HCASMC)は、Promocell(Heidelberg, Germany)から購入し、上皮成長因子(0.5ng/ml)、インスリン(5μg/ml)、塩基性線維芽細胞成長因子B(2ng/ml)およびウシ胎児血清(5%)を補充した平滑筋細胞成長培地2(SMC-GM2, Promocell)中で生育させた。細胞を37℃(5% CO2、湿度90%)で維持し、3回から8回の継代の間に使用した。3〜4人の独立したドナーから単離された細胞を使用した。
【0205】
ヒト組織:Brigham and Women's HospitalでIRBプロトコールにより血管内膜摘除術を受けている患者からアテローム動脈硬化性頸動脈(n=20)を得た。OCT化合物中に試料を包埋し、使用まで-80度で保存した。
【0206】
動物の手技:30週齢Apoe-/-マウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME, USA)は、10週齢からアテローム生成食(D12079B;乳脂肪41%、総コレステロール0.2%、Research Diet, New Brunswick, NJ, USA)を摂取していた。各群のマウスを20週齢で、アテローム生成高コレステロール食を継続するか、またはCRD群のいずれかに無作為化した。本発明者らは、2段階手順を用い、以前にAikawa et al., Circulation. 2009;119:1785-1794に記載されたようにCRDを作り出した。簡潔には、左半腎切除の1週間後に右腎全摘術を行った。術後10週間で、対比的組織分析のためにマウスを屠殺した。Beth Israel Deaconess Medical Centerの研究機関内動物管理使用委員会は、全ての手順を承認した(プロトコール#017-2010)。同齢の野生型C57/BL6マウス(Jackson Laboratory)を対照として役立てた。
【0207】
ヒト血管SMCの骨形成移行:SMCを、対照培地(DMEM、10%FBS、1%抗生物質)、または10nmol/lデキサメタゾン、10mmol/l β-グリセロールリン酸、および100mmol/l L-アスコルビン酸リン酸エステルを補充された対照培地からなる骨形成培地のいずれかの存在下で最大21日間培養した。培地を1週間に3回交換した。培地交換の度に、組み換えソルチリン1(200ng/ml; BioVendor, Candler, NC, US)を入れ替えた。
【0208】
ソルチリン1のRNA干渉:ソルチリン1のRNAサイレンシングは、以前にGoettsch et al., Endocrinology. 2011;152:4915-4926に記載されたように行った。簡潔には、Dharmafect 1(Dharmacon RNAi Technologies)を使用して50nmol/l siSORT1(ONTARGETplus SMART-pool(L-010620), Thermo Scientific, Lafayette, CO, USA)または非ターゲティングsiRNA(ON-TARGET Non-Targeting Pool, Thermo Scientific)をSMC中に移入した。全細胞培養期間にわたり、トランスフェクションを1週間に2回行った。
【0209】
アデノウイルスによるソルチリン1の過剰発現:ヒトSORT1(NM_002959.4)ORFEXPRESS(商標)Gateway(登録商標)PLUSシャトルクローンをGeneCopoeia(Rockville, MD, USA)から購入した。ViralPowerアデノウイルス発現系を、デスティネーション(destination)ベクターとしてのpAd/CMV/V5-DEST(Life Technologies, Grand Island, MY, USA)と一緒に使用した。LR Clonase II酵素ミックスを使用してattL部位とattR部位の間の組み換え反応を行い、pAd/CMV/SORT1を生じさせた。pAd/CMV/V5-GW/lacZを対照ベクターとして使用した。製造業者のプロトコールによりHEK293A細胞中にPacI消化後のベクターをトランスフェクトすることによってアデノウイルスを増幅した。感染多重度(MOI)をAdeno-X Rapid Titer Kit(Clontech, Mountain View, CA, USA)によって決定した。SMCにソルチリン1アデノウイルスおよび対照(LacZ)アデノウイルスを100 MOIで形質導入した。長期細胞培養のために、形質導入を7日毎に繰り返した。
【0210】
細胞生存率:Cell Titer Blueアッセイ(Promega, Heidelberg, Germany)を製造業者のプロトコールにより使用して細胞生存率を評価した。
【0211】
miRNAの阻害および誘導:以前にGoettsch et al., The American journal of pathology. 2011;179:1594-1600に記載されたようにmiRNAの阻害および促進を行った。miR-125bの機能を阻害するために、miRインヒビター(抗miR-125b;Life Technologies)および陰性対照(抗-陰性対照;Life Technologies)を使用した。miR前駆体(プレmiR-125b;Life Technologies)および陰性対照(プレ-陰性対照;Life Technologies)を使用してmiR-125bの機能を促進した。siPORT NeoFXトランスフェクション剤(Life Technologies)を使用するリポフェクションによって、50nmol/L RNAのトランスフェクションを行った。
【0212】
3'-UTRルシフェラーゼ結合アッセイ:ヒトSORT1(HmiT016537-MT01)および対照(CmiT000001-MT01)3'-UTRルシフェラーゼ構築物をGeneCopoeiaから購入した。Fugene HD(Roche)を使用して、SMC中へのルシフェラーゼベクターの一過性トランスフェクションを行った。方法の項に記載したように、平行して細胞に50nmol/L miRNA前駆体、インヒビター、または対応する対照をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後にLuc-Pair miR ルシフェラーゼアッセイ(GeneCopoeia)を使用してルシフェラーゼのシグナルを測定した。ホタルルシフェラーゼを同じウェル中のウミシイタケルシフェラーゼで基準化した。
【0213】
免疫組織化学/免疫蛍光法:細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で15分間固定した。細胞を0.5% Triton X-100中で10分間透過処理し、続いて洗浄し、PBS中の1% BSAで30分間ブロッキングした。ガラススライドを抗ソルチリン1(1:100; BD, San Diego, CA, USA)および抗オステオポンチン(OPN)(1:100; Abcam, Cambridge, MA, USA)抗体に2時間曝露し、次に、Alexa Fluor 488標識化二次抗体およびAlexa Fluor 594標識化二次抗体(Life Technologies)と共にインキュベートした。3回の洗浄段階後に、DAPIを用いた核染色を行い、封入剤(Dako, Glostrup, Denmark)を使用してスライドを被覆した。
【0214】
組織を7μmの薄切片に切り出し、凍結切片をアセトン中で固定した。適切な血清4%中でブロッキング後、切片を一次抗体[ヒトSORT1(1:100;BD)またはマウスSORT1(1:100;R&D systems, Minneapolis, MN, USA)]と共に、続いてビオチン標識化二次抗体(Vector Laboratories, Burlingame, CA, USA)およびストレプトアビジン結合Alexa Fluor 488抗体(Life Technologies)と共にインキュベートした。免疫蛍光二重標識のために、アビジン/ビオチンブロッキング(Vector Laboratories)後に、第2の一次抗体[RUNX2(Novus, St. Charles, MO, USA)またはOPN(Abcam)]を4度で一晩適用し、続いてビオチン標識化二次抗体およびストレプトアビジン結合Alexa Fluor 594抗体(Life Technologies)を適用した。切片をPBS中で洗浄し、DAPIを含有する封入剤中に包埋した。
【0215】
組織切片に関する明視野免疫組織化学的検査:最初のビオチン標識化二次抗体の後に、組織切片をストレプトアビジン標識化HRP溶液(Dako)と、続いてAEC溶液と共にインキュベートした。
【0216】
Eclipse 80i顕微鏡(Nikon, Melville, VY)または共焦点顕微鏡A1(Nikon)を使用してスライドを検査した。全ての画像は、Elements 3.20ソフトウェア(Nikon)で処理した。
【0217】
RNAの調製およびリアルタイムPCR:TriZol(Life Technologies)を使用して細胞培養から総RNAを単離し、QuantiTect逆転写キット(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して逆転写を行った。TaqManに基づくリアルタイムPCR反応(Life Technologies)によってmRNAの発現を決定した。以下のTaqManプローブを使用した:Hs00361747_m1(ヒトSORT1)、Hs01011692_m1(ヒトPHEX)、Hs01047978_m1(ヒトRUNX2)、および4326315E(ヒトβ-アクチン)。発現レベルをβ-アクチンに対して基準化した。ΔΔCt法を使用して結果を計算し、対照に対する増加倍率で提示した。Human Osteogenesis RT
2 Profiler(商標)PCRアレイ(Qiagen)を使用して、骨形成分化に関係する84種の遺伝子の発現をプロファイルした。
【0218】
ウエスタンブロット分析:プロテアーゼインヒビター(Roche)を含有するRIPA緩衝液で細胞を溶解した。BCA法(Thermo Scientific)を用いてタンパク質濃度を測定した。8〜12% SDS-PAGEによって総タンパク質を分離し、iBlotウエスタンブロッティングシステム(Life Technologies)を使用して移行させた。ヒトSORT1に対する一次抗体(1:1,000; Abcamまたは1:200; BD)、ヒトPHEX(1:200; OriGene, Rockville, MD, USA)およびヒトβ-アクチン(1:5,000; Novus)を使用した。Pierce ECLウエスタンブロッティング基質試薬(Thermo Scientific)およびImageQuant LAS 4000(GE Healthcare, Waukesha, WI, USA)を使用してタンパク質の発現を検出した。
【0219】
ミネラル化アッセイおよび組織非特異的アルカリホスファターゼ活性:アリザリンレッドS染色によってミネラル化マトリックス形成を評価した。SMCを4% PFA中で固定し、40mM アリザリンレッドS(pH4.2)を用いてRTで30分間染色した。プレートを蒸留水で洗浄することによって過剰の色素を除去した。
【0220】
ミネラル化マトリックス中に蓄積したカルシウムは、0.6N次亜塩素酸(hypochloric acid)を使用して溶出させ、カルシウム比色アッセイキット(BioVision, Milpitas, CA, USA)を使用して決定した。組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)活性は、アルカリホスファターゼ活性比色アッセイキット(BioVision)を使用して、細胞培養物から測定した。
【0221】
コラーゲンアッセイ:コラーゲン含量は、Sircol可溶性コラーゲンアッセイ(Biocolor, Northern Ireland, UK)を使用して細胞外マトリックスから決定した。簡潔には、洗浄段階後に、細胞を0.5M酢酸/0.1mg/mlペプシンと共に一晩インキュベーションした。中和後、コラーゲンを一晩濃縮した。翌日、Sircol試薬を添加してコラーゲンと結合させた。2回の洗浄段階後に、アルカリ試薬によってコラーゲン-色素複合体からSircol色素を放出させ、555nmでの吸光度を測定した。
【0222】
血清ソルチリン1およびFGF23の測定:血清ソルチリン1およびFGF23は、製造業者の説明書に従って酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定した。血清ソルチリン1は、Cusobio(Wuhan, China)製のイムノアッセイを用いて分析し、FGF23は、Millipore(Billerica, MA, USA)製のイムノアッセイを用いて決定した。
【0223】
免疫共沈:細胞を免疫沈降(IP)溶解緩衝液(Thermo Scientific)中で溶解させた。ソルチリン1抗体(5μg, Abcam)またはIgGウサギ対照抗体(5μg, Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA)をDynabeadsプロテインG(Life Technologies)と共に4度で2時間回転させながらのインキュベーションによってインキュベートし、続いて磁石を使用してPBS/Tween 20(0.002%)で3回洗浄した。タンパク質1mgをビーズ結合型IgG抗体と共に4度で1時間、回転条件でインキュベートすることによって予備浄化した。非IgG結合型タンパク質を分割し、ビーズ結合型ソルチリン1抗体またはビーズ結合型IgG抗体のいずれかに移し、4度で1時間、回転条件でインキュベートした。ビーズ-抗体-タンパク質複合体を1,000μl洗浄緩衝液(PBS)中で3回洗浄した。IPedタンパク質試料の90%をSDS-PAGEに供し、クマシー染色(BioRad, Hercules, CA, USA)によって可視化した。SORT1について予想される分子量(平行するウエスタンブロット分析によって確証された)に対応する顕著なバンドをゲル内トリプシン化のために切り出した。各共IP条件について残りのゲルレーンを8個のバンドに分け、ゲル内トリプシン化した。その後の質量分析のためにペプチドを試料ローディング緩衝液(0.1%ギ酸、5%アセトニトリル)20μl中に溶解した。
【0224】
質量分析:前部がナノスプレーFLEXイオン源であり、Easy-nLC1000 HPLCポンプ(Thermo Scientific)に連結した高分解能/精度LTQ-Orbitrap(Elite model)質量分析装置でペプチド試料を分析した。ペプチドを2カラム設定に供した:Acclaim PepMap RSLC C18トラップ用カラム、75μm×20mm;およびAcclaim PepMap RSLC C18分析用カラム50μm×150mm(Thermo Scientific)。250nl/minで溶媒B(アセトニトリル/0.1%ギ酸)10〜30%の分析勾配を30分間行い、続いて95%溶媒Bを5分間流した。溶媒Aは0.1%ギ酸であった。全ての試薬はHPLC等級であった。装置を分解能120Kに設定し、ペプチド配列決定(MS/MS)のために、上位20種までの前駆イオン(スキャンレンジ380〜2000m/z以内)を衝突誘起解離(衝突エネルギー35%)に供した。動的排除機能を無効にした。
【0225】
質量分析データの解析:可変改変としてメチオニンの酸化および固定改変としてシステイン残基のカルバミドメチル化を用い、Proteome Discoverer(PD)パッケージ(Thermo Scientific)によりSEQUEST検索アルゴリズム(Yates et al., Analytical chemistry. 1995;67:1426-1436)を使用して、MS/MSデータをヒトUniProtデータベース(2012年5月27日にダウンロード)と照合した。ペプチドの偽陽性ヒット率(FDR)は、PDによって提供されるパーコレータを使用して計算し:FDRは、逆のデコイ性ヒトデータベースに対して検索したときのMS/MSスペクトルヒットの数に基づき決定した(Elias JE and Gygi SP, Nature methods. 2007; 4:207-214およびKall et al., Journal of proteome research. 2008;7:29-34)。1%FDRに基づきペプチドをフィルタリングし、独特なペプチドを3種以上有するタンパク質を分析した。
【0226】
ソルチリン1特異的タンパク質は、対応するソルチリン1 IPのヒットからIgG対照由来のタンパク質ヒットを差し引くことによって、非特異的タンパク質と区別した。最終的共IPのリストは、IgG試料中に全く不在のタンパク質を含む。SORT1およびIgGの両方のIP中に存在したが、SORT1の共IPにより富化された可能性があるタンパク質については、ペプチドスペクトルマッチ(PSM)(Stevenson et al., Journal of proteomics. 2009;72:555-566)が(IgG対照に対して)20倍以上のタンパク質だけを分析に含めた。観察された
図6AにおけるミオシンバンドのPSMカウントによってPSMのカットオフを定めた。
【0227】
統計解析:データを平均±SDとして示し、nは、独立した実験の数を示す。Bonferroniの事後検定を行う一元配置ANOVAおよびStudentのt検定を用いる1群の比較を用いて統計解析を行った。相関分析はPearsonに従って行った。p<0.05の値を統計的に有意と見なした。
【0228】
結果および考察
ソルチリン1は、ヒト石灰化病変中に発現され、ヒト血管SMCの骨形成移行中に誘導される。石灰化ヒト頸動脈血管内膜摘除試料の染色から、石灰化領域中のソルチリン1の高発現が示された(
図1A)。これらの領域中の細胞は、弱い平滑筋α-アクチン(αSMA)染色を示し、マクロファージマーカーCD68について陰性であった(
図1A)。骨形成中にSMCマーカー遺伝子が失われるので、骨形成移行のマーカーであるRunx2/Cbfa1について切片を染色した。実際、ヒト石灰化病変において、ソルチリン1は、活性化した核局在Runx2と共に細胞中に高発現した(
図1B)。
【0229】
本発明者らは、続いて、ソルチリン1の発現が血管石灰化過程に関与するかどうかを検討した。骨形成培地(OM)中で培養されたヒト冠動脈SMC(HCASMC)は、時間依存的にソルチリン1の発現を誘導した。石灰化SMC(21日目)は、1日目に比べてそれぞれ15倍および22倍のソルチリン1のmRNAおよびタンパク質発現の増加、ならびに対照培地中で21日間培養された細胞に比べて2.5倍の誘導を示した(
図1Cおよび1D)。免疫蛍光染色から、石灰化SMCについての骨形成マーカーであるオステオポンチン(OPN)の高い免疫反応性と、ソルチリン1の高い免疫反応性が共局在した(
図1E)。
【0230】
ソルチリン1は、ヒト血管SMCのマトリックスミネラル化に直接影響する。SMCの石灰化にソルチリン1が果たす直接的な役割を実証するために、本発明者らは、機能獲得実験および機能喪失実験を行った。siRNAによるソルチリン1の長期サイレンシングは、21日後にソルチリン1 mRNAの発現を60〜70%(
図7A)、およびタンパク質の発現を一貫して抑制した(
図7B)。
【0231】
ソルチリン1のサイレンシングは、石灰化SMCにおけるTNAP活性の有意な低減を引き起こし(-30%、p=0.009)(
図2A)、その一方で組み換えソルチリン1を用いて増加させた外因性ソルチリン1レベルは、TNAP活性を37%促進した(p=0.016、
図2B)。その上、ソルチリン1のサイレンシングは、結節形成を低下させ(
図2C)、ミネラル化マトリックスの33%低減を実証した(p=0.004、
図2D)。対照的に、上昇した外因性ソルチリン1レベルは、マトリックスミネラル化を77%高めた(p=0.002、
図2E)。これらのデータは、さらに、アデノウイルスの過剰発現を用いて内因性ソルチリン1レベルを増加させることによって裏付けられた。アデノウイルス性ソルチリン1によるSMCの感染は、アデノウイルスLacZ対照に比べてTNAP活性が2倍に増加することを招き(p=0.015、
図2F)、マトリックスミネラル化を30%高めた(p=0.028、
図2G)。
【0232】
注目すべきことに、ソルチリン1の調節は、コラーゲンの蓄積および分泌に作用を及ぼさなかった。石灰化SMCのマトリックスコラーゲン含量(
図10Aおよび10B)および放出されたコラーゲン(データは示さず)は、ソルチリン1がサイレンシングされても、または外因性ソルチリン1が増加しても変化しなかった。
【0233】
まとめると、これらの結果から、石灰化したヒト血管SMCにおいてソルチリン1がマトリックスミネラル化およびTNAP活性を促進することが実証される。
【0234】
ソルチリン1は、石灰化ヒト血管SMCにおいてPHEXを調節する。次に、本発明者らは、ソルチリン1の作用の背後のメカニズムを検討した。最初に、本発明者らは、細胞生存率を分析したが、細胞生存率は、ソルチリン1のサイレンシング、過剰発現および刺激によって影響されなかった(
図3A)。予想外に、主要な骨形成転写因子Runx2は、ソルチリン1のサイレンシングによって有意に抑制されたが、ソルチリン1を用いた刺激によって影響されなかった(
図10C)。このため、本発明者らは、ソルチリン1のサイレンシングまたは組み換えソルチリン1を用いた刺激のいずれかを行った石灰化SMCにおける骨形成に関係する84種の転写物の発現を、PCRアレイを使用して分析した。本発明者らは、リン酸調節エンドペプチダーゼPHEXがソルチリン1のサイレンシングによって1.5倍誘導されたことを見いだした。対照的に、PHEXの発現は、外因性ソルチリン1の増加と共に77%低下した(
図3B)。本発明者らは、さらに、TaqManリアルタイムPCRおよびウエスタンブロット分析を用いてこれらのデータを検証した。PHEXの発現は、対照培地中で培養されたSMCでのソルチリン1のサイレンシングおよび組み換え発現のいずれかによっても影響されなかった(
図3C)。しかし、石灰化SMCは、PHEXの強い阻害を示し、それは、ソルチリン1のサイレンシング後に有意に回復した。石灰化条件でソルチリン1を用いた刺激は、PHEX mRNAを低下させた(
図3D)。PHEXとソルチリン1との間の可能な相互作用は、さらに、統計的に有意な負の相関関係によって裏付けられた(r=-0.865;R
2=0.748;p=0.0001;
図3E)。
【0235】
ソルチリン1は、miR-125bによって抑制される。本発明者らは、さらに、何がSMC石灰化に関連してソルチリン1の発現を調節するかを調べた。本発明者らの以前の研究から、石灰化したヒト血管SMCにおけるmiR-125bの抑制が実証された(Goettsch et al., The American journal of pathology. 2011;179:1594-1600)。3つの異なるデータベースを用いたインシリコ解析(www.targetscan.com、www.microRNA.org、http://pictar.mdc-berlin.de)から、高度に保存されたmiRNAであるmiR-125bが、3'UTRと結合することによってソルチリン1の発現を抑制しうることが明らかとなった(
図4A)。骨形成培地での処理は、SMCにおけるmiR-125b発現を抑制したが(-60%)(
図4B)、それは、
図1Cおよび1Dに示すようにソルチリン1の発現レベル増加と一致する。ソルチリン1の発現にmiR-125bが果たす役割を決定するために、本発明者らは、次に機能喪失実験および機能獲得実験を行った。対照培地中に抗miRを使用するmiR-125bの阻害は、ソルチリン1の発現を2倍に増加することを引き起こしたが(
図4B)、それは、スクランブル抗miRをトランスフェクトされた、骨形成培地中で培養された細胞に匹敵した(
図4C)。
【0236】
加えて、ソルチリン1およびmiR-125bの発現レベルは、統計的に有意な負の相関関係を示し(r=-0.825;R
2=0.681;p=0.043;
図4D)、このことから、直接相互作用が示唆される。次に、ルシフェラーゼアッセイを考案して、SORT1 3'UTRへのmiR-125bの直接結合を判定した。miR-125bの阻害は、SORT1の3'UTRレポーター活性を促進し、一方で模倣性miR-125bは活性を抑制した(
図4E)。これらの一連の証拠は、SORT1の3'UTRへのmiR-125b結合が、実際にソルチリン1の発現を抑制することを示し、石灰化SMCにおけるmiR-125bの発現低下が血管石灰化におけるソルチリン1誘導の原因になることを示唆している。
【0237】
ソルチリン1は、慢性腎疾患において増加する。本発明者らは、さらに、高脂肪食を給餌されたApoe-/-マウスおよび5/6腎切除によって誘導されたCRDを有するApoe-/-マウスにおけるソルチリン1の血管発現を評価した。注目すべきは、CRDは、Apoe-/-マウスモデルにおける内膜および中膜石灰化の両方を加速する(Aikawa et al., Circulation. 2009;119:1785-1794)。Apoe-/-マウスの大動脈中膜では、ソルチリン1の免疫陽性領域は野生型マウスの46倍であり、5/6腎切除によってさらに増加した(6.6倍、p=0.024)(
図5A〜5C)。石灰化内膜において、CRDの誘導はソルチリン1の免疫陽性領域を3.6倍に増加させた(p=0.029;
図5Bおよび5D)。これらのデータは、mRNAレベルで確認された(ソルチリン1 mRNAの相対発現:Apoe-/-;0.19±0.08、CRD;0.37±0.06;p=0.04)。CRDを有するおよび有さないApoe-/-マウスにおけるソルチリン1の血清レベルは、野生型マウスの2.7および3.3倍に上昇した(p=0.008;
図5E)。本発明者らのモデルで観察されたCRDの典型的な特徴である血清リン酸レベルの上昇(WT:6.6±0.1mg/dL;Apoe-/-:20.5±1.2mg/dL、CRD:54.3±10.2mg/dL、p<0.01)は、血清ソルチリン1の増加と相関した(r=0.831、R
2=0.691、p=0.008、
図5G)。さらに、CRDマウスの血清中のリン酸ホメオスタシスの公知の調節因子であるFGF23は、野生型マウスの4倍であった(
図5F)。
【0238】
本発明者らは、さらに、高いリン酸レベルがSORT1活性化をトリガーできるかどうかを検討した。リン酸を用いたSMCの刺激は、ソルチリン1のmRNA発現を用量依存的に増加させた(
図10)。高いリン酸レベルは、また、ソルチリン1タンパク質の発現を促進した(
図10)。
【0239】
主要なソルチリン-1相互作用タンパク質の同定:ソルチリン1によって調節される石灰化は、一部、PHEXに依存するので、追加的なタンパク質が直接的な物理結合によりソルチリン1活性の促進または阻害のいずれかを行うように作用すると提唱することが考えられる。したがって、本発明者らは、対照培地または骨形成/石灰化培地のいずれかの中で培養されたヒト血管SMCからのソルチリン1の免疫共沈(共IP)を行うことによって、および分析方法として高分解能質量分析(MS)を用いることによって、ソルチリン1の潜在的結合パートナーを検討しようと努めた。
【0240】
図6Aにおけるクマシー染色SDS-PAGEゲルは、3人のドナーのうち1人からのソルチリン1のインタラクトームを表す。本発明者らは、対照条件および石灰化条件の両方でソルチリン1と共IPするタンパク質を約150種同定し(
図6B)、顕著なバンドは、ソルチリン1、ビメンチン、ミオシン9、ミオシン10、およびα-アクチンに対応した(
図6A)。対照条件と石灰化条件との間のバンドパターンの顕著な差は、ミオシンおよびα-アクチンがほとんど消失したことであった(
図6A、緑の矢尻)。本発明者らは、対照条件に対して石灰化条件における全部で150種以上のタンパク質の相対的存在度を比較するためにペプチドスペクトル計数法(Stevenson et al., Journal of proteomics. 2009;72:555-566)を用いた。
図6Bは、SDS-PAGEゲルで観察された相対バンド強度およびイムノブロットデータと、対照条件に対する石灰化条件のスペクトル計数比との間の相関関係を実証する。ソルチリン1のレベルは、石灰化SMCで増加し、一方でミオシンおよびα-アクチンは低下し、ビメンチンは一定のままである。本発明者らの継続中の分析は、末梢結合タンパク質(低ストリンジェンシー)を含むタンパク質から、より強い結合性のソルチリン1-コア複合体(高ストリンジェンシー)を識別するために、高ストリンジェンシー条件で同じドナーからのソルチリン1の共IP分析を含む。継続中の分析は、また、追加のドナーからの共IPも含む。今のところ、本発明者らの予備データは、ソルチリン1のいくつかのタンパク質輸送相互作用物質の関与を示唆し、SMCの石灰化が、ソルチリン1タンパク質の細胞内再構築に依存することを示している。
【0241】
ソルチリン1は、ヒト血管SMCの石灰化においてPHEXを調節する:PHEXとソルチリン1の間の相互作用をさらに証明するために、本発明者らは、機能喪失研究を行った。PHEXのサイレンシングは、SMC石灰化のソルチリン-1依存性阻害を遮断しなかった(
図9)。結論として、PHEX発現に及ぼすソルチリン1の作用は、SMC石灰化に直接的には関与しない。
【0242】
ソルチリン1は、インビトロ骨芽細胞形成に影響しない:血管石灰化および骨リモデリングは、共通の経路を共用する。したがって、血管石灰化を治療または予防するために開発された薬物は、骨リモデリングに影響してはならない。本発明者らは、骨性骨芽細胞の前駆細胞であるヒト間葉系間質細胞(hMSC)から分化した骨芽細胞におけるソルチリン1の発現を分析した。骨芽細胞形成の間に、ソルチリン1タンパク質の発現は増加しない(
図10A)。さらに、ソルチリン1のサイレンシングまたは外因性ソルチリン1の増加は、ヒト骨芽細胞におけるアルカリホスファターゼ活性(
図10B)およびマトリックスミネラル化(
図10C)を変化させない。
【0243】
細胞外小胞はソルチリン1を含有する:本発明者らの研究において外因性ソルチリン1がマトリックスミネラル化を増加させ、アテローム動脈硬化性マウスで血清ソルチリン1レベルが上昇するという本発明者らの証拠に基づき、本発明者らは、また、循環中のソルチリン1が未知の細胞表面受容体に対するリガンドまたはデコイ受容体として作用し、それが細胞内事象をトリガーして石灰化に繋がりうると仮定した。実際、亜鉛メタロプロテアーゼおよびADAM10による内腔ドメインの脱落の結果、可溶型ソルチリン1が生じた(Navarro V, et al. Biochemical and biophysical research communications. 2002;298:760-764)。
【0244】
循環中のソルチリン1の形態(可溶性vs小胞)を理解するために、本発明者らは、細胞培養上清および同じく石灰化過程に寄与するSMC由来細胞外/マトリックス小胞を分析した。本発明者らは、細胞培養上清2mlからタンパク質を沈殿させ、ウエスタンブロット分析を行った。細胞培養上清を使用して、本発明者らは、アデノウイルスのソルチリン1過剰発現を用いてソルチリン1タンパク質を検出した(
図11A)。対照または石灰化細胞およびLacZ対照細胞からの細胞培養上清は、ソルチリン1タンパク質の発現を示さなかった。次に、本発明者らは、対照または石灰化SMCから細胞培養上清中に放出された細胞外小胞を単離し、石灰化SMCからの細胞外小胞中にソルチリン1タンパク質を検出することができた。
【0245】
主要なソルチリン-1相互作用タンパク質の同定:本発明者らは、自らのプロテオームデータを評価した。
図6Bにソルチリン1の選択された結合パートナーを示し、それらは、石灰化SMC中のソルチリン1と多かれ少なかれ、または等しく結合している。
【0246】
本発明者らは、ウエスタンブロットを用いてソルチリン1とミオシン-9の間の結合の喪失を確認した(
図12)。カベオリン-1(Cav-1)および組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)へのソルチリン1の結合は、石灰化SMCにおいて促進される(
図13)。次に、本発明者らは、Cav-1がSMC石灰化中に増加しているかどうかを調べた。実際にカベオリン-1およびTNAPは、石灰化SMCにおいて増加していた(
図14)。
【0247】
(表1)3回の独立した実験からのソルチリン1の結合パートナー
スペクトル計数の比(石灰化/対照)。NM;対照SMCにおいてソルチリン1と独特に結合、OM;石灰化SMCにおいてソルチリン1と独特に結合、-;検出されず。
【0248】
ソルチリン1は、マトリックス小胞(MV)中にロードされている。最近の研究から、SMC誘導型マトリックスミネラル化が石灰化MVの放出によっても進行しうることが確認された。実際に、本発明者らは、透過電子顕微鏡法に基づく免疫金アプローチを用いてヒトプラークの石灰化MV中のソルチリン1を検出した(
図17A)。対照培地または骨形成培地中で培養された細胞の上清から単離されたMV溶解物をウエスタンブロットすることで、石灰化条件においてソルチリン1が検出された(
図17B)。質量分析は、また、対照条件および骨形成条件の両方から得られたMV中のソルチリン1の存在を検証した(
図17Cおよび17D)。ペプチド数およびペプチドスペクトルマッチ(PSM)などの、ウエスタンブロットおよび質量分析に基づくパラメータによって実証されたように、MV中にロードされたソルチリン1は、ソルチリン1を過剰発現しているSMCで増加し、石灰化SMCからのMV中でさらに上昇した(
図17D)。本発明者らは、また、MVの放出がソルチリン1のロードに依存しないことを判定した。Nanosightナノ粒子追跡システムによって分析したとき、対照に比べてsiRNAでターゲティングされたソルチリン1 SMCにおいて放出されたMVの数は同様であった(
図17E)。
【0249】
ソルチリン1は、石灰化SMCにおいて脂質ラフト/カベオラ富化膜に再分布する。ソルチリン1は、細胞内輸送されることが公知である。最近の研究から、脂質ラフトが調節型エキソサイトーシス経路に不可欠な役割を果たすことが示唆されている。SMCの石灰化がソルチリン1の細胞性再分布に影響するかどうかを検討するために、本発明者らは、カベオラ富化膜/脂質ラフト(CEM)を、CEMに結合していない他の細胞性構成要素(nCEM)から分離するために不連続スクロース密度勾配を利用する水力学的方法を行った。対照条件で、本発明者らは、CEM画分およびnCEM画分の両方でソルチリン1を確認した(
図18A)。本発明者らは、陽性対照として役立てたカベオリン-1の発現についてこれらと同じ画分をアッセイした。SMCの石灰化後、CEM画分へのソルチリン1の再分布があったが、これは、SMCの石灰化時に専門の膜ドメインにソルチリン1が富化されていることを示唆している(
図18A)。石灰化SMCは、CEMに局在するカベオリン-1の発現の増加(
図18A)およびカベオリン-1のリン酸化(Tyr-14)を示した(
図18B)。カベオリン-1のサイレンシングは、石灰化SMCからの全細胞溶解液中(
図18Bおよび18C)およびCEM中(
図18C)のソルチリン1のタンパク質レベルを低減した。さらに、カベオリン-1のサイレンシングは、TNAP活性(-31%、p<0.001)およびSMC石灰化(-47%、p<0.001;
図18Dおよび18E)を低減した。カベオリン-1欠損マウスから単離されたSMCは、TNAPおよび石灰化のソルチリン1介在性誘導が打ち消されたことを明らかにした(
図18Fおよび18G)。次に、本発明者らは、ソルチリン1の改変がMVの石灰化能に影響するかどうかを検討した。細胞性ソルチリン1のサイレンシングは、MV内のTNAP活性を低減した(-45%;p<0.001)(
図18H)。さらに本発明者らは、MV中におけるカベオリン-1およびTNAPも同様に検出し、それらは、石灰化SMC中に豊富に存在した(
図17B)。
【0250】
S
825およびS
819でのリン酸化は、細胞ALP活性およびマトリックスミネラル化に影響する。本発明者らは、ソルチリン1のC末端細胞内ドメイン尾部
のリン酸化の増加を観察した。S
825A、S
825D、S
819A、S
819Dの突然変異およびC末端アミノ酸6個の欠失を配列決定によって確認した。構築物の機能性をウエスタンブロットによって確認した。目標は、C末端セリンリン酸化部位の機能的重要性を確認することであった。
【0251】
ソルチリン1の過剰発現は、ALP活性を2倍に促進する。S
825およびS
819でのリン酸化阻止ならびにC末端アミノ酸6個の欠失は、ALP活性を有意に低減し(p<0.05、n=3);一方で、S
825およびS
819の構成性活性リン酸化は、ALP活性をそれぞれ0.5倍および2.8倍に促進した。これらの結果に一致して、ソルチリン1誘導型マトリックスミネラル化は、S
825およびS
819の過剰発現ならびにC末端アミノ酸6個の欠失によって阻止された。構成性活性S
819リン酸化の過剰発現は、さらに、マトリックスミネラル化を促進した。結果を
図19に示す。
【0252】
本研究は、ソルチリン1を心血管石灰化の新規な原因として確認した。本明細書に記述された主要な結果は、(1)高いソルチリン1発現がヒトおよびマウスの組織および細胞においてインビトロおよびインビボで骨形成マーカーと共局在したことを明らかにし;(2)マウスCRDモデルでの血清ソルチリン1レベルの誘導および大動脈中膜におけるソルチリン1の増加を実証し;(3)ソルチリン1の調節因子としてmiR-125bを決定し;(4)機能獲得研究および機能喪失研究を用いて骨形成変化にソルチリン1が果たす直接的な役割のメカニズムについてのインビトロの証拠を提供した。加えて、本発明者らは、ソルチリン1レベルの増加がPHEX依存性メカニズムを介して血管石灰化を促進し、一方でソルチリン1レベルの低下が石灰化を阻止することをインビトロで実証した。その上、本研究は、ソルチリン1経路が、Runx2経路に独立した方法で、骨芽細胞表現型に向けての血管SMCのリン酸およびマイクロRNA依存性骨形成移行の新規なメカニズムであるという証拠を提供する。
【0253】
以前に、ソルチリン1をコードするSORT1遺伝子を有する1p13遺伝子座は、冠動脈疾患(Samani et al., The New England journal of medicine. 2007;357:443-453)、特に冠動脈石灰化(O'Donnell et al., Circulation. 2011;124:2855-2864)に関連した。したがって、本研究は、観察された連鎖について生物学的および分子的説明を提供しうる。ソルチリン1は、SMCの石灰化を促進する。本発明者らのデータは、SORT1/LDL受容体ダブルノックアウトマウスにおけるアテローム動脈硬化性病変の低減に関連した証拠に一致する(Kjolby et al., Cell metabolism. 2010;12:213-223)。さらに、肥満の高脂肪食モデルにおいて非血管性ソルチリン1の発現が、リポタンパク質依存的な方法で抑制された(Ai et al., The Journal of clinical investigation. 2012;122:1677-1687およびKaddai et al., Diabetologia. 2009;52:932-940)。CRDの動物モデルを用いて、本発明者らは、血管性ソルチリン1の発現の強い増加およびソルチリン1の血清レベル上昇を観察した。CRDは、血清リン酸レベルの増加および脂質プロフィールの無変化によって特徴づけられる。したがって、CRDでの血管石灰化にソルチリン1が果たす役割は、高脂血症と部分的に独立し、リン酸血症と共に高まる可能性がある。本発明者らの研究では、5/6腎切除は、Apoe-/-マウスでの中膜SMC中のソルチリン1発現を有意に増加させ、CRDおよび心血管疾患を有する患者のアテローム動脈硬化性プラークが内膜石灰化を有する一方で、中膜石灰化は多くの場合にCRD患者だけに起こったという観察の説明となりうるものを提供している(Nakamura et al., Clinical journal of the American Society of Nephrology: CJASN. 2009;4:1892-1900)。さらに、動脈中膜石灰化は、血清リン酸レベル(El-Abbadi et al., Kidney international. 2009;75:1297-1307およびIshimura et al., American journal of kidney diseases: the official journal of the National Kidney Foundation. 2005;45:859-865)と高度に相関する。実際に、本発明者らは、リン酸によるソルチリン1の誘導を観察し、それは、さらにCRDマウスモデルにおける血清ソルチリン1とリン酸レベルとの有意な相関関係によって裏付けられた。加えて、本発明者らの研究は、ソルチリン1がSMCにおいてリン酸調節エンドペプチダーゼPHEXを阻害することを示した。PHEXの不活性化突然変異は、細胞外リン酸濃度に対する骨細胞の反応性を変化させ、それが「正常な」リン酸レベルについてより低い設定値を生み出す可能性があり(Ichikawa et al., Journal of bone and mineral research: the official journal of the American Society for Bone and Mineral Research. 2012;27:453-460)、その突然変異はFGF23遺伝子の転写を刺激した(Liu et al., American journal of physiology. Endocrinology and metabolism. 2006;291:E38-49およびMartin et al., FASEB journal: official publication of the Federation of American Societies for Experimental Biology. 2011;25:2551-2562)。この証拠と一致して、本発明者らは、CRDマウスにおけるソルチリン1レベルの増加に平行してFGF23レベルが上昇することを観察した。まとめると、本発明者らの結果は、FGF23経路を伴う高リン酸血症に関連した血管石灰化にソルチリン1が関与することを示唆している。この考えを裏付けることに、血清FGF23の血清レベル増加が、男性における腹部大動脈石灰化(Schoppet et al., The Journal of clinical endocrinology and metabolism. 2012;97:E575-583)およびCRD患者における血管石灰化に関連することが示された(Desjardins et al., Osteoporosis international: a journal established as result of cooperation between the European Foundation for Osteoporosis and the National Osteoporosis Foundation of the USA. 2012;23:2017-2025)。
【0254】
リン酸が、骨形成/軟骨形成性分化の刺激、マトリックス小胞の放出、アポトーシス、インヒビターの喪失、および細胞外マトリックスの分解によってSMCの石灰化に直接的に影響することが十分に証明されている(Shanahan et al., Circulation research. 2011;109:697-711)。ソルチリン1は、ニューロンの生存を制御するシグナル伝達複合体の重要な構成要素として認識されている(Jansen et al., Nature neuroscience. 2007;10:1449-1457およびVaegter et al., Nature neuroscience. 2011;14:54-61)。しかし、本研究においてソルチリン1の調節は細胞生存率に影響しなかった。証拠から、ソルチリン1が分泌経路および/またはエンドソーム経路におけるターゲットタンパク質のソーティングを援助することが実証されている。ソルチリン1は、リポタンパク質リパーゼに結合し、エンドサイトーシスを仲介し(Nielsen et al., The Journal of biological chemistry. 1999;274:8832-8836)、したがって骨形成を促進および間葉系幹細胞の脂肪生成を阻害することが示された(Maeda et al., Journal of cellular physiology. 2002;193:73-79)。加えて、ソルチリン1は、TGF-β-ファミリー前駆タンパク質と結合して、分解のためにリソソームへのそれらの輸送を促進することが確認された(Kwon et al., The Journal of biological chemistry. 2011;286:21876-21885)。TGF-βは、高リン酸環境によって骨マトリックス産生に重要な役割を果たす。したがって、ソルチリン1が石灰化インヒビターを含むトリガー分子と結合し、それをソーティングおよび分解することによって血管石灰化を促進すると提唱することが妥当である。
【0255】
理論に縛られることを望まないが、本発明者らの研究において外因性ソルチリン1がマトリックスミネラル化を増加させ、アテローム動脈硬化性マウスで血清ソルチリン1レベルが上昇するという本発明者らの証拠に基づくと、循環中のソルチリン1は、未知の細胞表面受容体に対するリガンドまたはデコイ受容体として作用し、それが細胞内事象をトリガーして石灰化に繋がりうる。実際、亜鉛メタロプロテアーゼおよびADAM10による内腔ドメインの脱落の結果、可溶型ソルチリン1が生じた(Navarro et al., Biochemical and biophysical research communications. 2002;298:760-764)。したがって、中和抗体は、ソルチリン1介在性石灰化促進経路を妨害するために使用することができる。しかし、本発明者らは、マウスおよびヒト血液中でソルチリン1のレベルが増加していることを見出したが、これまでにヒト血液中の可溶性ソルチリン1のレベルを実証した刊行物はない。
【0256】
miRNAは、心血管疾患に主要な役割を果たすことが確認されている(Creemers et al., Circulation research. 2012;110:483-495)。以前に、本発明者らは、SMCの骨形成移行にmiR-125bが果たす役割を実証した。本研究で本発明者らは、miR-125bがSORT1の3'末端に結合部位を有することを見いだした。実際に、本研究で実証されたように、miR-125bはソルチリン1に直接結合する。石灰化SMCにおけるmiR-125bの発現低下(Goettsch et al., The American journal of pathology. 2011;179:1594-1600)は、ソルチリン1を増加させた。したがって、本発明者らの研究は、miR-125bをソルチリン1発現の抑制因子として同定した。
【0257】
ソルチリン1の共IPプロテオームに関する本発明者らのこの検討は、ソルチリン1のさらなる結合パートナーを特徴づけるだけでなく、SMC石灰化の状況で活性依存性パートナーと、細胞内輸送の直接ターゲットである結合パートナーとを区別することも目指すものである。本発明者らのデータは、ソルチリン1依存性石灰化事象に果たす細胞内輸送の役割を実証している。本発明者らが、現況技術の質量分析戦略を利用できることを考えれば、本発明者らは、同定に基づく方法だけでなく、一連の定量的方法も用いてソルチリン1に関する徹底的な生化学研究を行うことができる。そのようなMSワークフローは、例えば循環中のソルチリン1の絶対レベル
42,43;ソルチリン1の結合パートナー/基質の相対的化学量論組成(Singh et al., Journal of proteome research. 2009;8:2201-2210)、およびソルチリン1に関する潜在的石灰化依存性翻訳後事象の量的マッピングさえも決定することができる(Singh et al., Flexiqinase, a mass spectormetry-based assay, to unveil multikinase mechanisms. Nature methods. 2012;9:504-508)。
【0258】
結論として、本発明者らの知見は、
図6に示すように、miR-125bとSORT1との相互作用を経由してCRDにおける心血管石灰化を促進する新規なメカニズムを実証している。本発明者らの実験は、高リン酸血症がトリガーする血管SMCの骨形成移行および石灰化の新規な調節因子としてのソルチリン1の役割を解明し、治療ターゲットとしてのソルチリン1の役割を証明した。
【0259】
ヒトアテローム動脈硬化性プラークの石灰化領域において、細胞は、ソルチリン1を共発現し、骨芽細胞分化の調節因子であるRunx2を活性化した。ヒトSMCにおいて、骨形成性リン酸富化培地は骨芽細胞様表現型を誘導し、これは、ソルチリン1 mRNA/タンパク質の発現の22倍への増加と同時発生した。siRNAによるソルチリン1のサイレンシングは、石灰化SMCにおけるアルカリホスファターゼ活性(TNAP)(30%)およびマトリックスミネラル化(33%)を有意に低減した。対照的に、内因性または外因性ソルチリン1の増加は、TNAP活性を37%、マトリックス ミネラル化を最大77%促進した。PCRアレイから、リン酸調節エンドペプチダーゼ(PHEX)とソルチリン1との間の有意な逆相関関係が明らかとなった。ソルチリン1 siRNAは、PHEXを1.5倍に誘導し、一方でソルチリン1の増加はPHEXの発現を77%減少させた。インシリコ解析から、ソルチリン1がマイクロRNA-125bのターゲットであることが示唆された。本発明者らは、miR-125bが実際にSORT1の3'UTRに結合し、その発現を抑制することを証明した。ソルチリン1と免疫共沈したプロテオームの解析から、SMC石灰化に応じて差次的に調節されうる候補結合タンパク質が同定された。Apoe-/-マウスにおける5/6腎切除によるCRDの誘導により、血清リン酸レベルおよび血清ソルチリン1レベルがそれぞれ2.8倍および3.3倍に増加し、これら2つの因子の間に有意な相関関係があることが示された。その上、CRDは、中膜SMCにおけるソルチリン1の発現を劇的に増加させた(+667%)。
【0260】
血管石灰化は、慢性腎疾患(CRD)およびアテローム動脈硬化などの慢性炎症障害の顕著な特徴であり、内科療法がない。ヒト全ゲノム関連研究から、ソルチリン1をコードするSORT1遺伝子が心血管疾患および冠動脈石灰化のリスク増加と連鎖されたが、その根底にあるメカニズムは未知である。本明細書において報告された研究は、ソルチリン1が血管平滑筋細胞(SMC)の骨形成移行の原因となることを実証している。本研究は、血管石灰化にソルチリン1が果たす直接的な役割を最初に示し、ソルチリン1がCRD患者のための治療ターゲットであることを実証するものである。
【0261】
全ゲノム関連研究(GWAS)は、ソルチリン1をコードするSORT1遺伝子を有する1p13遺伝子座を、血漿低比重リポタンパク質(LDL)コレステロールレベル、心筋梗塞の発症および冠動脈石灰化と強く関連づけた(Musunuru K et al, Nature, 2010; Kathiresan S et al, Nature Genetics, 2009; O'Donnell CJ et al, Circulation, 2011)。さらに、Sort1の全体的不在は、LDL受容体欠損マウスにおける肝臓からのリポタンパク質分泌を低減し、高コレステロール血症およびアテローム動脈硬化を改善した(Kjolby M et al, Cell Metabolism, 2010)。ソルチリン1が血管石灰化に直接的な役割を果たすということは、本発明者らによる新規な知見である。ヒトアテローム動脈硬化性プラークの石灰化領域において、細胞はソルチリン1を共発現し、骨の骨芽細胞分化の調節因子であるRUNX2を活性化する。ヒトSMCでは、骨形成性リン酸富化培地は、ソルチリン1のmRNA/タンパク質の発現増加と同時発生的に骨芽細胞様表現型を誘導する。ソルチリン1のサイレンシングは、アルカリホスファターゼ活性およびマトリックス-カルシウムの量によって測定されるSMCの石灰化を有意に低減する。対照的に、内因性または外因性ソルチリン1の増加は、SMC石灰化を促進する。プロテオミクスアプローチを用いて、本発明者らは、SMC石灰化に応じて差次的に調節される候補結合タンパク質を同定した。石灰化SMCにおいて、ソルチリン1とサイトソル性タンパク質(例えばミオシン9)との結合が失われ、一方で石灰化SMCにおいてアルカリホスファターゼ、カベオリン-1、エルリン-1およびカテプシン-Dとの結合は強く増加した。Apoe欠損マウスにおける5/6腎切除によるCRD誘導は、血清リン酸およびソルチリン1の血清レベルを増加させ、これら2つの因子の間に有意な相関関係があることを示している。その上、CRDは、中膜SMCにおけるソルチリン1の発現を劇的に増加させる。まとめると、本明細書に報告された研究は、ソルチリン1が高リン酸血症によってトリガーされる血管SMCの骨形成性移行および石灰化の新規な調節因子であることを示している。本発明者らの知るところでは、これは、血管石灰化にソルチリン1が果たす直接的な役割を実証している最初の報告である。
【0262】
本発明者らの研究は、石灰化アテローム動脈硬化性プラークにおいて、病変内の骨形成細胞によって発現されたソルチリン1が存在するという新規な知見を実証している。ソルチリン1の阻害は、SMCのミネラル化をインビトロで予防する。インビボでは、CRDのマウスモデルにおいて、ソルチリン1は、石灰化血管中膜および内膜で高度に増加した。血清ソルチリン1レベルはCRDマウスにおいて増加し、リン酸レベルと正の相関関係を示す。
【0263】
明細書および実施例に特定された全ての特許および他の刊行物は、全ての目的で参照により本明細書に明示的に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日に先立ってもっぱらその開示のために提供される。これに関して、本発明者らは先行発明の理由でまたは他のいかなる理由によっても、そのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきものは何もない。日付に関する陳述またはこれらの書面の内容に関する表現は全て、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの書面の日付または内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。
【0264】
好ましい態様を本明細書において詳細に描写し記述してきたが、さまざまな改変、追加、代用などを本発明の精神から逸脱することなく実施でき、それゆえ、これらは後続の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内であると考えられることが当業者には明らかであろう。さらに、既には示されていない範囲で、本明細書において記述され例示されるさまざまな態様のいずれか1つをさらに改変して、本明細書において開示される他の態様のいずれかに示される特徴を組み入れられることが当業者によって理解されよう。