特許第6239644号(P6239644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6239644-消毒剤 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239644
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】消毒剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/16 20060101AFI20171120BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20171120BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20171120BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20171120BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20171120BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20171120BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20171120BHJP
   A61L 101/36 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   A01N37/16
   A01N25/30
   A01N25/02
   A01N59/00 A
   A01P3/00
   A61L2/18 102
   A61L101:22
   A61L101:36
【請求項の数】17
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-546775(P2015-546775)
(86)(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-537049(P2015-537049A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】AU2013001463
(87)【国際公開番号】WO2014089633
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】2012905481
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】510339197
【氏名又は名称】サバン ベンチャーズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール、ベレンツベイグ
(72)【発明者】
【氏名】ディピカ、パテル
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−519702(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0081693(US,A1)
【文献】 特表2012−516930(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128734(WO,A1)
【文献】 特表2001−506971(JP,A)
【文献】 特表平08−504797(JP,A)
【文献】 特表2010−501569(JP,A)
【文献】 特表2009−545523(JP,A)
【文献】 特表2009−523155(JP,A)
【文献】 特開2012−126741(JP,A)
【文献】 特開2011−121912(JP,A)
【文献】 国際公開第99/065317(WO,A1)
【文献】 特開昭52−025011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.10〜0.30重量%のペルオキシ酢酸と、
過酸化水素と、
炭酸バッファーと
含んでなり、
過酸化水素:ペルオキシ酢酸の比が15:1以上であり、かつ、
該炭酸バッファーが、炭酸水素アニオンおよび水酸化物アニオンまたは炭酸水素アニオンおよび炭酸アニオンを含んでなる、
水性消毒液。
【請求項2】
ペルオキシ酢酸の濃度が0.2重量%より高い、請求項1に記載の水性消毒液。
【請求項3】
過酸化水素:ペルオキシ酢酸の比が30:1以上である、請求項1または2に記載の水性消毒液。
【請求項4】
前記炭酸バッファーが、炭酸水素アニオンおよび水酸化物アニオンを含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性消毒液。
【請求項5】
前記炭酸バッファーが、炭酸水素アニオンおよび炭酸アニオンを含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性消毒液。
【請求項6】
炭酸バッファーの量が、5〜7の間のpHを提供するように選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性消毒液。
【請求項7】
界面活性剤を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性消毒液。
【請求項8】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項に記載の水性消毒液。
【請求項9】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、(ポリエチレングリコール p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)およびココアミドプロピルアミノオキシドからなる群から選択される、請求項に記載の水性消毒液。
【請求項10】
記界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェートである、請求項に記載の水性消毒液。
【請求項11】
腐食防止剤を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性消毒液。
【請求項12】
前記腐食防止剤がベンゾトリアゾールである、請求項11に記載の水性消毒液。
【請求項13】
消泡剤を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の水性消毒液。
【請求項14】
物品の消毒のための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水性消毒液。
【請求項15】
消毒が15〜40℃の温度範囲で実施される、請求項14に記載の、物品の消毒のための水性消毒液
【請求項16】
消毒が20〜35℃の温度範囲で実施される、請求項15に記載の、物品の消毒のための水性消毒液
【請求項17】
消毒が周囲温度で実施される、請求項14に記載の、物品の消毒のための水性消毒液
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、真菌、ウイルス、真菌または細菌の胞子、プリオンなどに感染している可能性がある器具、露出面または空間の消毒または滅菌における使用に好適な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書を通じての先行技術のいかなる考察も、このような先行技術が、当分野において広く知られているまたは共通一般知識の一部を形成するということの承認と決して考えてはならない。
【0003】
発明の背景
「滅菌」は、あらゆる微生物、胞子およびそれらの病原性産物の破壊プロセスと定義されている。好適な無菌性保証レベルを提供するには、上記病原体の量の6log減少が一般的に必要とされる。「消毒」は同様のプロセスであるが、結果として生じる殺生物効果の程度が、特に細菌胞子に対して、より低いことが異なっている。従って、消毒は滅菌よりも達成しやすい。
【0004】
滅菌剤または消毒剤は、通常液体であり、消毒または滅菌を必要とする物品に様々な方法で適用することができる。近年では、滅菌剤または消毒剤を分配する使用ガスまたはエアゾール分配技術が普及している。ガスまたはエアゾール法は、使用する液体の滅菌剤または消毒剤の量が減少するため、特に魅力的である。微量の液体を使用することの主な利点は、立ち上げ工程(rising steps)をなくすことができる場合があり、乾燥時間が、例えば、浸漬浴の使用と比べて著しく短縮されることが多いということである。このサイクル時間短縮により、いかなる器具の所要時間も短縮され、次には、このことによって器具に関連する資本支出がはるかに小さくなる。
【0005】
ガスまたはエアゾール法はまた、閉鎖系で行われる傾向があり、これは、作業者が大量の散開した滅菌剤または消毒液に曝される従来の方法と比べて操作者の安全も高められていることを意味する。
【0006】
バルク液体の超音波処理によって噴霧化が起こるエアゾールに基づくアプローチが知られており、微量の滅菌剤を用いて高い滅菌効力を達成する特に優れた方法である。
【0007】
近年では、病院および医療環境において特に問題があると確認されている微生物の数、種類および耐性のレベルが著しく増加し続けている。そのような時に、過酸化水素またはペルオキシ酢酸を消毒剤として使用することが非常に好まれるようになった。1990年代より前は、これらの過酸化物はあまりにも不安定で有害であり、使用することができないと考えられていた。
【0008】
ペルオキシ酢酸は微生物に対して特に効果的である。ペルオキシ酢酸は、好適な条件下で、グラム陰性およびグラム陽性両方の細菌、真菌および酵母およびウイルスに対して効果的な、非常に広範囲にわたる殺菌剤である。ペルオキシ酢酸はまた、殺胞子性であるとも考えられている。ペルオキシ酢酸は、低濃度で有効であり、比較的高い有機負荷の存在下でも依然として極めて効果的である。また、ペルオキシ酢酸の分解生成物、すなわち、酢酸、水および酸素も環境に優しい。
【0009】
ペルオキシ酢酸は、過酸化水素とは異なり、微生物のカタラーゼまたはペルオキシダーゼによって不活性化されないことから、過酸化水素よりも有利である。また、ペルオキシ酢酸に対する微生物の馴化もほとんどまたは全くない。
【0010】
ペルオキシ酢酸水溶液は市販されている。ペルオキシ酢酸は、典型的には、下式によって表されるように、過酸化水素と酢酸の平衡水性混合物として存在する:
【化1】
【0011】
そのような市販ペルオキシ酢酸溶液の一例が、約5%ペルオキシ酢酸、7.5%酢酸および24%Hを含有する、Solvay社製のProxitanである。これらの量は、上記平衡混合物で見出される比、すなわち、ペルオキシ酢酸:酢酸:過酸化水素比1:1.5:5の典型である。
【0012】
ペルオキシ酢酸溶液は、かなり酸性であり、腐食性が強い。滅菌分野でこれらを使用する場合には、腐食を低減するため、およびはるかに一般的に生理学上許容可能なpHをもたらすために、pHを下げる緩衝成分を添加することが通常必要である。リン酸バッファーは、典型的には、この目的のために使用される。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを克服もしくは改良すること、または有用な代替案を提供することである。
【0014】
概要
第1の面によれば、本発明は、
ペルオキシ酢酸と、
過酸化水素と、
炭酸バッファーと
を含んでなる水性消毒液を提供する。
【0015】
文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、本明細書および特許請求の範囲を通じて、「含んでなる(comprise)」、「含んでなる(comprising)」などの単語は、排他的または網羅的な意味ではなく包括的な意味で、つまり、「含むが、それらに限定されない(including, but not limited to)」という意味に解釈されるべきである。
【0016】
好ましくは、ペルオキシ酢酸の濃度は0.1重量%より高いが、代替実施形態では、0.15重量%より高くてよく、または0.2重量%より高くてよい。ペルオキシ酢酸の量が0.10〜0.30重量%である場合が一般的に好ましい。
【0017】
好ましくは、過酸化水素:ペルオキシ酢酸の比は5:1以上であるが、別の実施態様では、過酸化水素:ペルオキシ酢酸の比は、10:1以上、15:1以上、あるいは30:1以上である。
【0018】
好ましくは、前記炭酸バッファーは、炭酸水素アニオンおよび水酸化物アニオンまたは炭酸水素アニオンおよび炭酸アニオンを含んでなる。
【0019】
好ましくは、炭酸バッファーの量は、5〜7の間のpHを提供するように選択される。
【0020】
前記消毒液は、好ましくは、界面活性剤、好ましくは、非イオン性界面活性剤を含むことができる。前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、(ポリエチレングリコール p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)およびココアミドプロピルアミノオキシドからなる群から選択してよい。
【0021】
界面活性剤の特に好ましい種類は、リン酸塩系陰イオン性界面活性剤、特にポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、例えば、Monafax M1214またはMultitrope 1214という商品名でCroda社によって販売されているものである。
【0022】
前記消毒液は、好ましくは、腐食防止剤、例えば、ベンゾトリアゾールまたは尿素、を含むことができる。
【0023】
前記消毒液は、好ましくは、消泡剤を含むことができる。
【0024】
第2の面によれば、本発明は、第1の面による水性消毒液と物品を接触させる工程を含む、物品の消毒方法を提供する。
【0025】
好ましくは、前記方法は、15〜40℃、より好ましくは、20〜35℃の温度範囲で、最も好ましくは、周囲温度で実施される。
【0026】
炭酸水素アニオンおよび水酸化物アニオンを含んでなるバッファーでは、炭酸水素塩:水酸化物のモル比は、約0.9:1〜約1.1:1、より好ましくは、約1:1である。好ましいナトリウム塩形態では、炭酸水素塩(hydrogen carbonate):水酸化物のw:w比は、約2.5:1〜2:1、より好ましくは、約2.3:1、または炭酸塩(carbonate):水酸化物の比は、約2.9:1〜2.4:1、より好ましくは、約2.65:1である。
【0027】
炭酸水素アニオンおよび炭酸アニオンを含んでなるバッファーでは、炭酸水素塩:炭酸塩のモル比は、約0.15:1〜約0.25:1、より好ましくは、約0.18:1である。好ましいナトリウム塩形態では、炭酸水素塩:炭酸塩のw:w比は、約0.1:1〜約0.2:1、より好ましくは、約0.14:1である。
【0028】
「バッファー」という用語を使用しているが、前記炭酸塩成分が真の緩衝系を形成している必要はないことを理解することが重要である、すなわち、前記炭酸塩成分をpH調整剤として使用するだけで十分であることが見出されている。重要な考慮すべき事項は、最終使用液における0.1〜0.3重量%ペルオキシ酢酸のpH6.3〜6.8の間への調整である(このpHで、炭酸水素塩は主要緩衝種またはpH調節種(controlling species)となる)。
【0029】
必要な時間は、好ましくは、物品の意図される使用に許容される微生物負荷を結果として達成するための時間である。言い換えると、本発明の水性消毒剤によって室温で微生物負荷の6log減少を達成するのに必要な時間は、好ましくは、5分未満、あるいはより好ましくは、4分未満である。
【0030】
本発明は、小消毒室、生物学的安全キャビネット、アイソレーター、グローブボックス、インキュベーター、マテリアルエアロック(materials airlocks)などに入れられた器具および物品の消毒または滅菌の両方に適用可能である。また、本発明は、食品容器などおよび製造機械の消毒または滅菌に適用可能であり、非常に大きな空間の消毒にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1
【発明の具体的説明】
【0032】
説明
ペルオキシ酢酸は、過酸化水素またはペルオキシ塩などの過酸化剤に酢酸を添加することによって生成される。ペルオキシ酢酸を生成するために使用される最も一般的で安価な方法は、酢酸と過酸化水素水の組合せを使用することであり、その場合、ペルオキシ酢酸は、示すように、複数の他の種と平衡状態にある:
【化2】
【0033】
述べたように、そのような平衡混合物で見出される天然の割合は、典型的には、ペルオキシ酢酸:酢酸:過酸化水素比1:1.5:5を与える。つまり、このような系における活性消毒剤種、ペルオキシ酢酸および過酸化水素の比は、典型的には、約1:5である。
【0034】
また、ペルオキシ酢酸は、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過酸化カルバミド(過酸化尿素)またはフッ化カリウムペルオキソソルベート(potassium fluoride peroxosolvate)などの固体の過酸化物前駆体から、ペルオキシ酢酸を生成するための酢酸と組み合わせて、生成することもできる。酢酸/過酸化水素アプローチよりも少し費用がかかるが、これらのペルオキシ酢酸源は、ペルオキシ酢酸よりも作用が弱い殺生物剤と考えられている過酸化水素を大量に含まないことから、望ましいとみられている。
【0035】
場合によって、固体過酸化物前駆体を過酸化水素/酢酸系と組み合わせて使用することができる。
【0036】
生成方法にかかわらず、ペルオキシ酢酸のpHは非常に低く、約2.8である。このような低pHは、ペルオキシ酢酸は腐食性が強いということを意味する。また、このような低pHは、患者と密接に接触して使用されるシステムと基本的に不適合であるということも意味する。これは、高感度医療機器に使用するためには、バッファーによってpHを調節する必要があるということを意味する。腐食を最小限に抑えるとともに人間の接触に対して最大限の適合性をもたらす理想的なpH範囲は、約pH5.5〜pH7の間である。
【0037】
典型的には、リン酸バッファーが、ペルオキシ酢酸系のpHを調節するために使用されている。しかしながら、水酸化物または炭酸塩などの他の一般的な塩基もペルオキシ酢酸のpHを調整するために使用されている。
【0038】
驚くべきことに、本出願人は、特定の濃度(約0.2重量%)を上回るペルオキシ酢酸の殺生物活性は、胞子に対しても、炭酸バッファーと過剰の過酸化水素(典型的には、ペルオキシ酢酸の重量で5倍、またはそれ以上)の組合せの存在下で増強することができることを見出した。
【0039】
これらの結果は2つの理由で驚くべきことであった。第1に、いかなる状況下でも、ペルオキシ酢酸よりも弱い殺生物剤である過酸化水素の添加によって、殺生物活性の効力が実際に高まるということは直観に反していると思われる。第2に、前記バッファーの性質が前記滅菌剤の殺生物活性と何らかの関係があることはこれまでに観察されていなかった。
【0040】
当業者は、炭酸塩/炭酸水素塩/水酸化物化学系が様々な平衡、すなわち、第1に、pKa 6.37の、溶存CO(炭酸として記載)の解離
【化3】
、および第2に、pKa 10.33の、炭酸塩への炭酸水素塩の解離
【化4】
によって支配されることを理解するであろう。従って、pH6.37〜pH10.33の間では、支配種はHCOである。pH6.37より低いと、溶存COが支配し、pH10.33より高いと、炭酸塩が支配する。従って、本発明の場合では、好ましいpH範囲、約6.5での支配バッファー種は、炭酸水素塩である。
【0041】
明らかに、ペルオキシ酢酸および酢酸などの酸性種の存在下では、本発明において見出されるように、本発明の炭酸バッファーに使用することができる水酸化物(OH)について、平衡は、存在する前記種総ての量に依存して動的にシフトするであろう。
【0042】
前記バッファー中の炭酸水素塩(HCO)および炭酸アニオン(CO32−)および/または水酸化物アニオン(OH)は、理想的には、等モル量またはほぼ等モル量で存在する。それらは、通常、それらそれぞれのナトリウム塩またはカリウム塩の形態で提供されるが、任意の好適なカチオン性対イオンが存在してよい。
【0043】
前記バッファーは、pH5.5〜pH7の間、可能ならば、約6〜6.5を維持する量で添加することが最も有利であることが見出されている。バッファーの添加量がこれらの量より少ないと腐食問題が起こり、一方、バッファーの添加が多すぎると、弱塩基性条件に向かい、組合せの効力が低減する。
【0044】
上記の式は、ペルオキシ酢酸を含む一平衡方程式を示しており、本発明は、そのような平衡混合物単独を使用して十分に機能する。
【0045】
しかしながら、過剰の過酸化水素溶液の添加は、殺生物効力を高め、微生物負荷の1または2log減少、すなわち、効力の10倍または100倍増加程度に寄与し得ることが見出された。
【0046】
加えて、界面活性剤の存在によっても上記消毒液の殺生物効力が増加し得ることが見出された。性能の改善を与える界面活性剤の特に好ましい種類は、リン酸塩系陰イオン性界面活性剤、特にポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、例えば、Monafax M1214またはMultitrope 1214という商品名でCroda社によって販売されているものであった。Triton X−100(ポリエチレングリコール p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)および/またはココアミドプロピルアミノオキシドの添加は、そのような添加剤を含まない系と比べて性能に何らかの改善を与えることが示された。
【0047】
本発明の消毒液はpH約5.5〜6.5の間でうまく機能するが、このようなpHはまだ腐食性であり得る。本発明の緩衝系は、添加した腐食防止剤の存在下で十分に機能し続けることが見出された。尿素は、H−1,2,4−ベンゾトリアゾール系があるように、特に好適な腐食防止剤であることが見出された。これらは通常の腐食防止組成物にまで使用することができ、例えば、0.3%までのベンゾトリアゾールの添加によって銅を保護することができた。
【0048】
尿素は、尿素と過酸化水素の複合体である過酸化カルバメートの形態で添加することができるため、特に適している。この化合物は、安定な固体であり、酢酸との混合前に緩衝成分とともに含めることができるし、または別個の成分として添加することができる。水に溶解すると、過酸化カルバメートは、尿素と過酸化水素を生成し、従って、腐食防止剤として働く尿素と、本殺生物組成物で必要とされる過酸化水素とを生成する。
【実施例】
【0049】
処方物
本発明の消毒剤は、多成分系として調製し得ることが有利でありうる。典型例を本明細書に記載する。成分Aはペルオキシ酢酸溶液であり、成分Bはバッファーである。追加の過酸化水素は、例えば、成分Aとともにもしくは成分Aの一部として、またはAとBを混合した後で、導入することができる。
【0050】
成分Aは、ペルオキシ酢酸(約5%)、酢酸(約7.5%)、および過酸化水素(約25%)を含有し、残部は水であった。総量は約40mlであった。
【0051】
35%H 56.3gを成分Aに添加して、過剰の過酸化水素を確保した。この混合物を、次に、総量1lに希釈した。
【0052】
成分B、バッファー成分は、NaHCO 2.9g(0.03モル)、NaOH 1.24g(0.03モル)および界面活性剤Triton X−100 0.6g(または同様の好適な量のMonafax)を含有した。成分Bを前記1l使用液に添加した。
【0053】
代替バッファー成分Bは、NaCO3 4.5g(0.042モル)およびNaHCO3 0.63g(0.0075モル)および界面活性剤Triton X−100 0.6g(または同様の好適な量のMonafax)を含有した。この成分Bも同様に前記1l使用液に添加することができた。
【0054】
得られた使用液は、容量1l、ペルオキシ酢酸濃度約0.20%、過酸化水素濃度約3.08%およびpH6.26であった。これらの数値は、ペルオキシ酢酸濃度(0.1〜0.3%)およびpH(5.3〜6.3)の最も望ましい範囲にある。
【0055】
出発成分AおよびBは3〜4年間安定していると考えられるが、緩衝溶液は混合の8時間以内に使用する必要がある。
【0056】
試験方法
採用した下記試験方法は、生物学的負荷を測定するために本発明において使用する総ての試験方法の典型である。
【0057】
前記使用液を、枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC 19659の胞子に対して室温で試験した。培地は、TSB+1%チオ硫酸Na+10%Tween 80+1mlカタラーゼであった。
【0058】
試験方法には、サンプル9mlを採取し、培養物(5%ウマ血清含有)1mlを添加し、その後、必要であれば、所望の温度でインキュベートすることが含まれた。次に、各時点において、インキュベートしたサンプル1mlを取り出し、中和剤9mlで中和した。結果として得られたものを、生理食塩水で希釈し、プレーティングし、プレートを37℃で48時間インキュベートした。次に、結果をlog減少で表すことができた。当技術分野では通常であるように、log減少はlog10減少である。4log減少は10生物中1生物が生存したことを意味し、5logは10生物中1生物の生存に相当するなど。高レベル消毒は、広く定義され、6log以上の減少と理解される、すなわち(than is)、その処理に耐えるのは1,000,000微生物中1微生物以下である。
【0059】
実施例1
表1は、過剰の過酸化水素を含まないペルオキシ酢酸系の効力に対する様々なバッファーの効果を示す比較例を提供する。その他の点では、組成物の濃度を一定にし、総ての場合において、必要量のバッファーを用いてpHを可能な限り一定に近づけた。従って、処方物間の唯一の違いは、所定のpHを達成するのに必要なバッファーの性質および量であった。
【0060】
存在する過酸化水素の量は約1%であった、つまり、使用したペルオキシ酢酸の重量の約5倍の量であった。組成物Iは、従来のリン酸バッファーを使用し、組成物IIは水酸化物バッファーを使用したのに対し、組成物IIIおよびIVは、様々な出発成分から調製された炭酸バッファーを使用した。総ての場合において、バッファーの性質が、殺生物活性に対して意義のある効果を及ぼしているようには思えなかった。あるとすれば、炭酸バッファーはリン酸バッファーよりもわずかに性能が悪かった。
【0061】
実施例2.過剰の過酸化水素の効果
表2は、表1に示す量を上回る過酸化水素の添加の結果を示し、過酸化水素:ペルオキシ酢酸比は約15:1となるように変更されている。他の総ての手順要素は同じままであった。
【0062】
結果は、使用したバッファーに応じて劇的に異なっていた。リン酸バッファーおよび水酸化物バッファーの場合の、過剰の過酸化水素の添加は、意義のある効果をほとんどまたは全く及ぼさなかったが、炭酸バッファーを使用した本発明の組成物では、微生物の減少が6.4logに上昇した、すなわち、炭酸バッファーの場合、過剰の過酸化水素を添加するだけで殺生物活性の10倍増加がもたらされた。
【0063】
リン酸バッファーおよび水酸化物バッファーの場合、結果はほとんど予想通りであった−ペルオキシ酢酸より弱い殺生物剤である過酸化水素の添加によって、殺生物活性に対する顕著な効果はもたらされなかった。しかしながら、予想外にも、ペルオキシ酢酸に対して5:1比を上回る過酸化水素の添加によって、炭酸バッファーを使用した場合において、顕著な相乗効果がもたらされた。
【0064】
従って、過酸化水素:ペルオキシ酢酸比5:1では、増強を観察することができなかったが、過酸化水素:ペルオキシ酢酸比15:1では、増強が明らかに視認できた。増強は10:1比で観察できるようになると考えられる。増強は、過酸化水素:ペルオキシ酢酸比が5:1〜10:1の間である場合に、始まる可能性が最も高い。
【0065】
実施例3 微生物(MICROORGANIMS)
表3は、種々の生物に対する添加した過酸化水素の効果を示している。組成物IおよびIa、ならびにIIおよびIIaでは、過剰の過酸化水素を含むまたは含まない組成物が非常に有効であったため、全死滅(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)では7.1log減少、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)では8.3log減少)が1分以内に達成されたことから効果を証明するのは容易ではない。しかしながら、1分までに完全には消滅しなかった細菌、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)および枯草菌では、過酸化水素の量を増やした場合の観察結果に有意差があった(それぞれ、100倍および10倍)ことが結果によって示されている。
【0066】
実施例4−最小ペルオキシ酢酸濃度
上記の結果は、一定のペルオキシ酢酸濃度0.2%についてのものであった。表4は、増強を示すのに必要なペルオキシ酢酸の最小濃度レベルを示している。0.2%のペルオキシ酢酸組成を有する、組成物IおよびIIは、上に示した相乗効果を示し、過剰の過酸化水素によって、効力の100倍増加が生じた。
【0067】
組成物IIIで示されるように、ペルオキシ酢酸の量を4分の1減らして0.15重量%にし、同様の過剰の過酸化水素を添加することによって、ペルオキシ酢酸量はより多いが、過酸化水素を含まない場合に得られた結果とおおむね一致した結果が与えられる。この結果は、炭酸バッファーを使用した場合、ペルオキシ酢酸の一部が除去され(腐食性が低い組成物となる)、過酸化水素に置き換えられ得ることを示しており、結果として得られた相乗効果は、全体的殺生物効力の喪失がほとんどまたは全くないことを意味している。
【0068】
さらに、ペルオキシ酢酸の量を半分減らして0.1重量%にすることにより、効力の顕著な低下が示された。従って、ペルオキシ酢酸の最小有効量は0.0〜0.15重量%の間である。
【0069】
実施例5−過剰の過酸化水素の効果
表5は、添加した追加の過酸化水素の量の効果を示している。組成物Iは過酸化水素:過酢酸5:1を有し、このレベルは、バッファーが混合物において相乗効果を及ぼさないレベルと考えられる。組成物IIは、前記比が3%:0.22%、または約15:1であるような過酸化水素の添加を示す。これにより、炭酸バッファーによって可能になる殺生物効果の増加が示される。殺生物効果は、3分後では中程度であるが、4分後には明らかに異なっている。組成物IIは、はるかに多い過剰の過酸化水素、7%:0.22%、または約31:1を示す。相乗効果は、明らかにまだ存在し、過酸化水素量の増加に伴って増加する効果を示している。4分時点での組成物IIおよびIIIの値の比較は、完全死滅が達成されていたことからあまり意義はないが、3分時点での結果から、32:1の割合の過酸化水素:ペルオキシ酢酸でも炭酸バッファーによってもたらされた相乗的増強を観察することができることが示されている。
【0070】
実施例6 温度および過酸化水素源の効果
示した通り、過酸化水素源は過酸化水素溶液である必要はない。過酸化尿素は、腐食防止効果を有する尿素だけでなく、過酸化水素も生成することができ、また、取扱いも容易であることから、特に魅力的な選択肢である。
【0071】
表6は、過酸化水素を尿素/過酸化水素複合体として与えた場合の炭酸バッファーの効果を示している。使用量は、3重量%濃度の過酸化水素を生成するように選択し、他の数値と適合させた。データから、本発明の方法および組成物は過酸化水素源と関係なく機能することが示される。
【0072】
さらに、結果から、予想通り、温度の上昇によって死滅時間が短縮されることが示されている。組成物IIは、組成物への曝露が20℃の代わりに35℃で行われたことを除いて組成物Iと同じであった。35℃では、全死滅(5.5log減少)までの時間は、20℃で約5分に対して、3分以下に短縮された。
【0073】
図1は、腐食防止に対する尿素の効果を示している−尿素の存在下での腐食電位は高くなり、金属に対して生じる腐食作用が低いことが示される。
【0074】
本発明の緩衝溶液のpHは、腐食が問題となる可能性が低く、本溶液(they present solutions)を、例えば、銅またはアルミニウムなどの種々の金具とともに使用することができることを意味している。しかしながら、腐食防止剤の使用が緩衝溶液の性能に悪影響を与えないことが判明していることから、必要に応じて、腐食防止剤を添加してもよい。試験した好適な腐食防止剤には、尿素またはH1,2,4−ベンゾトリアゾール(0.3%)が含まれる。過酸化尿素は、酢酸の過酸化剤として使用することができる化合物の一例であり、腐食防止剤である溶液中に尿素を放出するという利点も有する。
【0075】
実施例7 界面活性剤の効果
表7は、本発明に対する界面活性剤、Monafax M1214の効果を示している。Monafaxの存在によって本発明の殺生物効果が著しく高められることが分かる。0.1%Monafaxによって0.7log増加がもたらされた。また、はるかに多い量の0.38%のMonafaxによって、得られる利益はさらにある程度増加した。Monafaxはポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェートである。他の界面活性剤、好ましくは、非イオン性界面活性剤、例えば、triton x(ポリエチレングリコール p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)またはココアミドプロピルアミノオキシドは、本発明の組成物に対して有害な影響を及ぼさないことが示されている。
【0076】
実施例8 添加剤の効果
表8は、界面活性剤および腐食防止剤の組合せの効果を示している。ペルオキシ酢酸、過剰の過酸化水素および炭酸バッファーの組合せの結果として示される相乗効果を妨害すると思われるものはこれらにはなかった。
【0077】
実施例9 消泡剤
重要な1つの実際的な要件は、消毒に使用される組成物が発泡に耐性であることであり、発泡によって処理の選択肢が厳しく抑制され得る。消泡成分を用いて、本発明の混合物をさらに試験した。この場合も、ペルオキシ酢酸、過剰の過酸化水素および炭酸バッファーの組合せの結果として示される相乗効果に影響を及ぼさないことが分かった。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
【表10】
【0088】
【表11】
図1