特許第6239645号(P6239645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン グラス フランスの特許一覧

特許6239645化合物半導体を生成するための方法および薄膜太陽電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239645
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】化合物半導体を生成するための方法および薄膜太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0749 20120101AFI20171120BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01L31/06 460
   H01L31/04 420
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-548366(P2015-548366)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2016-500484(P2016-500484A)
(43)【公表日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2013076158
(87)【国際公開番号】WO2014095503
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】12198612.9
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨスト,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】レヒナー,ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】ダリボール,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エレルツ,パトリック
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0005586(US,A1)
【文献】 特許第3897622(JP,B2)
【文献】 特開2012−007194(JP,A)
【文献】 特開2012−142342(JP,A)
【文献】 特開平09−213977(JP,A)
【文献】 特開2011−249494(JP,A)
【文献】 特表2012−518281(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/094048(WO,A1)
【文献】 特開2003−318424(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/091170(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/143858(WO,A1)
【文献】 特開平08−316230(JP,A)
【文献】 米国特許第05728231(US,A)
【文献】 国際公開第2011/061583(WO,A1)
【文献】 特開平04−212430(JP,A)
【文献】 特開2009−267332(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0218827(US,A1)
【文献】 特開2009−277945(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0226717(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
H01L 31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)を生成するための方法であって:
第1の前駆体層(5.1)、第2の前駆体層(6)および第3の前駆体層(5.2)からなる、少なくとも1つの前駆体層積層体(11)を生成するステップであり、
第1の段階では、第1の前駆体層(5.1)が、銅金属、インジウム金属およびガリウム金属を本体(12)上に堆積することによって生成され、当該本体(12)は、基板(3)及び背後電極層(4)又は前面電極層を含み、
第2の段階では、第2の前駆体層(6)が、少なくとも1種のカルコゲンを第1の前駆体層(5.1)上に堆積することによって生成され、
第3の段階では、第3の前駆体層(5.2)が、銅金属、インジウム金属およびガリウム金属を第2の前駆体層(6)上に堆積することによって生成されるステップ;
第1の前駆体層(5.1)の金属、第2の前駆体層(6)の少なくとも1種のカルコゲンおよび第3の前駆体層(5.2)の金属が反応によって変換されて化合物半導体(2)を形成するように、第1の時間間隔中に少なくとも1つの前駆体層積層体(11)をプロセスチャンバ(13)内で熱処理するステップを含み、
ここで、少なくとも1種のプロセスガスは、少なくとも1つの前駆体層積層体(11)の熱処理中に少なくとも1つの第2の時間間隔の間にプロセスチャンバ(13)に供給され、この第2の時間間隔は、熱処理全体の時間の第1の時間間隔よりも短いかまたは等しいものであり、定められた硫黄深さプロファイルが、少なくとも1種のプロセスガスによって、化合物半導体(2)中に形成され、
第2の前駆体層(6)がセレンを第1の前駆体層(5.1)上に堆積することによって生成され、硫黄および/または硫黄含有化合物が、熱処理中に供給された少なくとも1種のプロセスガスに含有され;または
第2の前駆体層(6)が、カルコゲンである硫黄およびセレンを第1の前駆体層(5.1)上に堆積することによって生成され、硫黄および/または硫黄含有化合物が、熱処理中に供給された少なくとも1種のプロセスガスに含有され;
化合物半導体(2)の1つの表面(9)から本体(12)との界面(10)までの硫黄深さプロファイルは、
硫黄含量が、表面(9)で最大値を有し、界面(10)に向かって減少し、界面(10)で最小値を有するように;または
硫黄含量が、表面(9)で最小値を有し、界面(10)に向かって増加し、界面(10)で最大値を有するように;または
硫黄含量が、表面(9)で第1の最大値を有し、界面(10)に向かって最小値に至るまで減少し、次いで再び増加し、界面(10)で第2の最大値を有するように;または
硫黄含量が、表面(9)で第1の最小値を有し、界面(10)に向かって最大値に至るまで増加し、次いで再び減少し、界面(10)で第2の最小値を有するように
構成され、
化合物半導体(2)の1つの表面(9)から本体(12)との界面(10)までのガリウム深さプロファイルは、ガリウム含量が表面(9)で第1の最大値を有し、界面(10)に向かって最小値に至るまで減少し、次いで再び増加し、界面(10)で第2の最大値を有するように構成される、
方法。
【請求項2】
第1の前駆体層(5.1)および/または第3の前駆体層(5.2)が、銅−ガリウム合金ターゲットおよびインジウムターゲットからの、または銅−インジウム合金ターゲットおよび銅−ガリウム合金ターゲットからの、または銅−ガリウム−インジウム合金ターゲットからの、1つまたは複数の個々の層のスパッタリングによって堆積され、および/または
カルコゲンの硫黄および/またはセレンの個々の層で作製された第2の前駆体層(6)が堆積される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第4の前駆体層が第3の前駆体層(5.2)上に堆積され、第4の前駆体層が、硫黄または硫黄およびセレンを含有し、第4の前駆体層が、第3の前駆体層(5.2)よりも薄い、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前駆体層積層体(11)が、連続して数回堆積される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ガリウム深さプロファイルは、ガリウム含量の相対的変化が、深さプロファイルの少なくとも一部分において少なくとも20%であるように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
銅、インジウムおよびガリウムがスパッタリングによって堆積され、セレンが気相成長によって堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
硫黄深さプロファイルは、硫黄含量の相対的変化が深さプロファイルの少なくとも一部分において少なくとも20%であるように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
薄膜太陽電池(20)または薄膜ソーラーモジュールの吸収体(2)を生成するための、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物半導体を生成するための方法の使用。
【請求項9】
本体(12)上に配置構成された、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)で作製された吸収体(2)を有する薄膜太陽電池(20)であって、当該本体(12)は、基板(3)及び背後電極層(4)又は前面電極層を含み、化合物半導体(2)が、化合物半導体(2)の1つの表面(9)から本体(12)との界面(10)までの、定められたガリウム深さプロファイルを有し、ガリウム深さプロファイルは、ガリウム含量が表面(9)で第1の最大値を有し、界面(10)に向かって最小値に至るまで減少し、次いで再び増加し、界面(10)で第2の最大値を有するように構成され、
化合物半導体(2)が、化合物半導体(2)の1つの表面(9)から本体(12)との界面(10)までの、定められた硫黄深さプロファイルを有し、
硫黄深さプロファイルは、
硫黄含量が、表面(9)で最大値を有し、界面(10)に向かって減少し、界面(10)で最小値を有するように;または
硫黄含量が、表面(9)で最小値を有し、界面(10)に向かって増加し、界面(10)で最大値を有するように;または
硫黄含量が、表面(9)で第1の最大値を有し、界面(10)に向かって最小値に至るまで減少し、次いで再び増加し、界面(10)で第2の最大値を有するように;または
硫黄含量が、表面(9)で第1の最小値を有し、界面(10)に向かって最大値に至るまで増加し、界面(10)で第2の最小値を有するように
構成される、薄膜太陽電池(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜太陽電池を生成する技術領域にあり、黄銅鉱化合物半導体を生成するための方法、ならびに4元化合物半導体Cu(In,Ga)S、4元化合物半導体Cu(In,Ga)Seまたは5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)からなる吸収体を持つ薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池およびソーラーモジュール用の薄膜システムは、基板およびその表面に付着される材料に応じて様々なデザインのものが、十分に公知であり市場で入手可能である。材料は、入射太陽スペクトルが最大限に利用されるように、選択される。物理的性質および技術的取扱い品質により、非晶質、ミクロモルファスまたは多結晶質シリコン、テルル化カドミウム(CdTe)、ヒ化ガリウム(GaAs)、銅インジウム(ガリウム)セレン化物(Cu(In,Ga)Se)、銅インジウム(ガリウム)硫化物(Cu(In,Ga)S)、銅インジウム(ガリウム)硫セレン化物(Cu(In,Ga)(S,Se))および銅亜鉛錫スルホセレン化物(黄錫亜鉛鉱の群から得たCZTS)ならびに有機半導体を有する薄膜系が、太陽電池には特に適している。5元半導体Cu(In,Ga)(S,Se)と4元半導体Cu(In,Ga)SeおよびCu(In,Ga)Sは、黄銅鉱半導体の群に属し、CIS(銅インジウム二セレン化物または硫化物)またはCIGS(銅インジウムガリウム二セレン化物、銅インジウムガリウム二硫化物または銅インジウムガリウム二スルホセレン化物)と頻繁に略される。略称において、Sはセレン、硫黄または2種のカルコゲンの混合物を表すことができる。
【0003】
黄銅鉱化合物半導体を生成するための様々な方法は文献に記載されており:したがって例えば、1段階法での基板上への半導体成分の同時蒸着は、DE 10024882 A1およびDE 102005040087 A1により知られるように使用される。
【0004】
黄銅鉱化合物半導体を生成するための代替方法は、2段階プロセスからなる。そのような2段階法は、例えば、J.Palmら、「CIS module pilot processing applying concurrent rapid selenization and sulfurization of large area thin film precursors」、Thin Solid Films 431−432、414−522頁(2003)により公知である。そこでは、モリブデンで作製された背後電極が最初に基板上に、例えばガラス基板上に付着される。モリブデン層は、例えば、レーザでパターニングされる。次いで銅、インジウム及びガリウムで作製された様々な前駆体層が、モリブデン層上に、例えばマグネトロンスパッタリングにより堆積される。さらに、セレン層および/または硫黄層が、この層列上に、熱蒸着によって堆積される。得られた層構造を、第2のプロセスで熱処理する。実際の半導体層を形成するための、前駆体層の実際の結晶形成および相変換は、熱処理によって実現される。
【0005】
対照的に、本発明の目的は、黄銅鉱化合物半導体を生成し、薄膜太陽電池と化合物半導体とを適合させるための、従来技術の方法を有利に改善することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10024882号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005040087号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Palmら、「CIS module pilot processing applying concurrent rapid selenization and sulfurization of large area thin film precursors」、Thin Solid Films 431−432、414−522頁(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の要旨)
これらおよびその他の目的は、化合物半導体を生成するための方法によって、化合物半導体、および独立請求項の特徴を有する薄膜太陽電池によって、本発明の提案により達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の特徴により示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、有利には薄膜太陽電池または薄膜ソーラーモジュールを生成するための方法の部分である、黄銅鉱化合物半導体を生成するための方法が提示される。ここで、および下記において、「薄膜太陽電池」という用語は、厚さが数ミクロンしかない光起電力層システムを指す。そのような層システムは、適切な機械的安定性を提供するのにキャリア基板を要する。薄膜太陽電池用の公知のキャリア基板は、無機ガラス、ポリマーまたは金属合金を含有し、層厚および材料特性に応じて、剛性板またはフレキシブルフィルムとして構成することができる。
【0010】
本発明による方法は、下記のステップを含む:
3段階で、第1の前駆体層、第2の前駆体層および第3の前駆体層からなる少なくとも1つの前駆体層積層体を生成するためのステップ:第1の段階では、第1の前駆体層が、銅金属(Cu)、インジウム(In)およびガリウム(Ga)を本体上に堆積することによって生成される。第2の段階では、第2の前駆体層が、硫黄(S)およびセレン(Se)から選択される少なくとも1種のカルコゲンを第1の前駆体層上に堆積することによって生成される。第3の段階では、第3の前駆体層が、銅金属(Cu)、インジウム(In)およびガリウム(Ga)を第2の前駆体層上に堆積することによって生成される。
【0011】
第1の前駆体層の金属、第2の前駆体層の少なくとも1種のカルコゲンおよび第3の前駆体層の金属が、反応により変換されて5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)、4元化合物半導体Cu(In,Ga)Seまたは4元化合物半導体Cu(In,Ga)Sを形成するように、第1の時間間隔中にプロセスチャンバ内で少なくとも1つの前駆体層積層体を熱処理するための別のステップ。ここで「Cu(In,Ga)(S,Se)」という表示は、カルコゲンである硫黄(S)およびセレン(Se)が組み合わされて化合物半導体中に含有されることを意味する。同じことが、2種の金属インジウム(In)およびガリウム(Ga)にも当てはまる。
【0012】
本発明による方法の有利な改善において、少なくとも1つの前駆体層積層体の熱処理は、少なくとも断続的に、少なくとも1種のカルコゲン、即ち硫黄(S)および/またはセレン(Se)、または少なくとも1種のカルコゲン含有化合物を含有し、硫黄および/またはセレンが結合された形で含有されている、プロセスガス雰囲気中で行われる。このために、硫黄およびセレンから選択される少なくとも1種の元素状カルコゲン、および/または少なくとも1種のカルコゲン含有化合物を含有し、硫黄および/またはセレンが結合された形で、例えば硫化水素(HS)またはセレン化水素(HSe)の形またはその他のイオンもしくはセレン含有ガスの形で含有されている、1種または複数のプロセスガスは、少なくとも1つの前駆体層積層体の熱処理中に少なくとも断続的に、プロセスチャンバに供給される。
【0013】
少なくとも1種のプロセスガスは、プロセスチャンバに、連続的に、熱処理の第1の時間間隔中に、または、そうでなければ第1の時間間隔よりも短い少なくとも第2の時間間隔中に、供給することができる。例えば、少なくとも1種のプロセスガスは、熱処理の早期および/または後期にプロセスチャンバに供給することができる。特に、本発明による方法では、生成された化合物半導体の組成にそのように選択的に影響を及ぼすために、熱処理中にプロセスチャンバ内のカルコゲン含有雰囲気の組成が変化するよう少なくとも1種のプロセスガスを供給することが可能である。
【0014】
有利には、第2の前駆体層の堆積中、本体の温度は150℃未満であり、より好ましくは100℃未満であり、これは既に前駆体材料の堆積中に、意図しない(部分)反応を確実に防止できることを意味する。銅金属、インジウムおよびガリウムの堆積中と、少なくとも1種のカルコゲンの堆積中の両方において、1種または複数のドーパント(例えば、ナトリウムまたはカリウム)を堆積することができる。同じことが、第2の前駆体層上への第3の前駆体層の堆積にも当てはまる。また、ドーパントの添加は、別の前駆体層として行うこともできる。
【0015】
生成された化合物半導体の結晶品質に、特に薄膜太陽電池の効率に影響を及ぼすために、第1の前駆体層の堆積では、銅金属、インジウムおよびガリウムの個々の層で作製された層積層体(個々の層のそれぞれは、1種の単一金属からなる。)を続けて数回堆積させることは、有利であるとすることができる。このために、第2の前駆体層の堆積用に、カルコゲンである硫黄およびセレンの個々の層で作製された層積層体(個々の層のそれぞれは、1種の単一カルコゲンからなる。)を続けて数回堆積させることも、有利であり得る。同様に、結晶品質に関し、前駆体層積層体が続けて数回堆積されることが有利であるとすることができる。
【0016】
4元化合物半導体Cu(In,Ga)SeまたはCu(In,Ga)Sが本発明による方法によって生成される場合、第2の前駆体層は、硫黄およびセレンから選択される1種のカルコゲンを第1の前駆体層上に堆積することによって生成されることが有利であり、熱処理中に少なくとも断続的に供給される少なくとも1種のプロセスガスには、
・第2の前駆体層にあるものと同じ、硫黄およびセレンから選択されるカルコゲンおよび/または
・第2の前駆体層にあるものと同じカルコゲンを有する、硫黄含有化合物およびセレン含有化合物から選択されるカルコゲン含有化合物
が含有される。
【0017】
5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)が生成される場合、第2の前駆体層は、硫黄およびセレンから選択される1種のカルコゲンを第1の前駆体層上に堆積することによって生成されることが有利であり、第2の前駆体層にあるもの以外の硫黄およびセレンから選択されるその他それぞれのカルコゲン、および第2の前駆体層にあるもの以外のその他それぞれのカルコゲンを有する硫黄含有化合物およびセレン含有化合物から選択されるカルコゲン化合物は、熱処理中に少なくとも断続的に供給される少なくとも1種のプロセスガスに含有される。
【0018】
一方、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)を生成するために、第2の前駆体層は、2種のカルコゲンである硫黄およびセレンを第1の前駆体層上に堆積することによって生成することが有利とすることができ、硫黄および/またはセレン、および/または硫黄含有化合物および/またはセレン含有化合物は、熱処理中に少なくとも断続的に供給される少なくとも1種のプロセスガスに含有される。
【0019】
本発明による層構造を用いて、定めることが可能なまたは定められたガリウム深さプロファイルが、4元化合物半導体Cu(In,Ga)SeもしくはCu(In,Ga)Sまたは5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)の生成中に形成される。特に、化合物半導体の1つの表面から、本体との界面までのガリウム深さプロファイルは、化合物半導体の表面でのガリウム含量が第1の最大値を有し、本体界面に向かって最小値に至るまで減少し、次いで再び増加して、本体界面で第2の最大値を有するように形成することができる。
【0020】
本発明の文脈において、「ガリウム含量」は、インジウムおよびガリウムの合計含量に対するガリウムの原子比、言い換えればGa/(In+Ga)を意味する。
【0021】
黄銅鉱化合物半導体における高いガリウム含量は、バンドギャップにおいて局所的な増加をもたらす。薄膜太陽電池の吸収体として化合物半導体を使用する場合、背後電極との界面および表面でのバンドギャップの増加は、開路電圧の有利な増加をもたらす。
【0022】
好ましくは、ガリウム深さプロファイルは、少なくとも深さプロファイルの一部における、即ち化合物半導体の層厚の少なくとも一部における、特に半導体表面から本体界面までの、ガリウム含量の絶対的な変化が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%であるように構成される。特に好ましくは、ガリウム含量の相対的な変化が少なくとも20%である。
【0023】
したがって本発明は、ガリウム含量に2重の最大値がある化合物半導体を2段階法で生成するための新規な方法であって、1つの最大値が本体との界面に配置構成されており第2の最大値が半導体表面にある新規な方法を提示する。
【0024】
従来技術による黄銅鉱化合物半導体を生成するための2段階法では、2つの前駆体層のみ使用した。これらは、背後電極上に配置構成された金属性の第1の前駆体層および、第1の前駆体層上に配置構成された第2のカルコゲン含有前駆体層である。化合物半導体の所望のカルコゲン化を得るために、過剰なセレンを使用することができる。これは、付着されるカルコゲンの原子比が、銅金属、インジウムおよびガリウムの合計よりも大きいことを意味する。さらに、前駆体層積層体の周りのプロセススペースを限定し後続の熱処理中のカルコゲンの損失を最小限に抑えるプロセスボックスが、頻繁に使用される。
【0025】
カルコゲン成分が第2の前駆体層内に配置構成され第3の金属前駆体層によって覆われる、本発明による層構造には、対照的に、プロセス技術の観点から多数の利点があり:金属前駆体上へのカルコゲンの結合は、ある状況下で、従来技術により公知の過剰なカルコゲンおよび/またはプロセスボックスを用いたプロセススペースの低減がない状態で済ますことが可能になるように、特に有効である。代替としてまたは組み合わせにより、熱処理中にカルコゲン含有プロセスガスをさらに供給する状態が完全にまたは部分的にない状態で済ますことも可能である。
【0026】
本発明による方法の有利な実施形態では、硫黄およびセレンから選択される少なくとも1種のカルコゲンを含有する第4の前駆体層が、第3の前駆体層上に配置構成される。第4の前駆体層は、好ましくは、第2の前駆体層よりも薄く設計される。
【0027】
これには、例えばSeで作製された第2の前駆体層およびSeで作製された第4の前駆体層の場合、HS含有プロセスガスから化合物半導体中へのSの取込みが、特に十分に制御できるという特別な利点がある。さらに、生成された化合物半導体の結晶品質は、追加の、上に重なる第4の前駆体層を用いて、さらに改善することができる。
【0028】
定めることが可能なまたは定められた硫黄深さプロファイルは、少なくとも1種のプロセスガスを用いる5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)の生成中に形成することが、特に有利である。特に、硫黄深さプロファイルは、化合物半導体の1つの表面から、本体との界面まで
・半導体表面での硫黄含量が最大値を有し、本体界面に向かって減少し、本体界面では最小値を有するように;または
・硫黄含量が半導体表面で最小値を有し、本体界面に向かって増加し、本体界面では最大値を有するように;または
・硫黄含量が半導体表面で第1の最大値を有し、本体界面に向かって最小値に至るまで低下し、次いで再び増加し、本体界面では第2の最大値を有するように;または
・硫黄含量が半導体表面で第1の最小値を有し、本体界面に向かって最大値に至るまで増加し、次いで再び減少し、本体界面では第2の最小値を有するように
構成することができる。
【0029】
本発明の文脈において、「硫黄含量」は、セレンおよび硫黄の合計含量に対する硫黄の原子比、言い換えれば、S/(Se+S)を意味する。
【0030】
好ましくは、硫黄深さプロファイルは、少なくとも深さプロファイルの一部における、即ち化合物半導体の層厚の少なくとも一部における、特に半導体表面から本体界面までの、硫黄含量の絶対的な変化が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%であるように構成される。特に好ましくは、硫黄含量の相対的な変化は少なくとも20%である。
【0031】
このように、本発明による方法を用いることにより、熱処理では、硫黄含量に関して(セレンおよび硫黄の合計含量に対して、即ちS/(Se+S))5元化合物半導体Cu(In,Ga)(Se,S)の組成に選択的に影響を及ぼすことが可能である。言い換えれば、時間に関して、また硫黄および/またはセレンの濃度が可変であるカルコゲン含有プロセス雰囲気中で熱加工を用いることにより、層厚上での半導体の組成、したがってそのバンドギャップおよびバンドギャッププロファイルに、影響を及ぼすことができる。特に、硫黄含量に関して、均質な組成を有する化合物半導体を生成することが可能であり、その硫黄含量は、層厚全体で変化するものではない。
【0032】
特に有利には、定められた(所定の)または定めることが可能な(予め決定することが可能な)硫黄深さプロファイル(S/(Se+S))を有する5元化合物半導体を生成することができ、その硫黄含量(セレンおよび硫黄の合計含量に対する。)は、層厚において変化する。特定の理論に拘泥するものではないが、その吸収体が化合物半導体で作製されている薄膜太陽電池の効率の上昇は、結果として期待される。
【0033】
例えば、吸収体の表面で比S/(Se+S)の最大値を有し、界面に向かって比S/(Se+S)の低い値を有する硫黄深さプロファイルを、設定することができる。吸収体表面でこのように増大したバンドギャップは、薄膜太陽電池において、開路電圧の増大をもたらす。
【0034】
一方、短絡電流の高さは、吸収体内部のバンドギャップの最小値によって決定される。これは、吸収体の表面で比S/(Se+S)の最大値を有し、界面に向かって比S/(Se+S)の減少する値を有する硫黄深さプロファイルを用いて、設定することもできる。
【0035】
ガリウム深さプロファイルの設定と組み合わせることにより、硫黄深さプロファイルの設定は、薄膜太陽電池の効率の上昇をもたらす。
【0036】
バンドギャップ深さプロファイルの設定に加え、半導体層の結晶品質の改善によって薄膜太陽電池の効率が上昇する可能性が存在する。例えば、材料系Cu−In−Ga−Se−Sによる実験から、異なる金属は異なるカルコゲンに対して異なる反動動態を有することが知られている。これは、種々の金属−カルコゲナイド相の形成温度に明らかな相違をもたらし、したがって、Cu(In,Ga)(S,Se)化合物半導体の結晶品質に悪影響を及ぼす可能性がある。特に、加熱プロセスでは、Cu−In−Ga前駆体層のカルコゲン化は、変性させたカルコゲンガス雰囲気(Se/S組成)により影響を受ける可能性があると想定することができる。このように、カルコゲン化動態の相違は、一時的に変性させたプロセスガス雰囲気(Se/S組成)によって補償することができる。結晶品質および効率は、これにより良い影響を受けることができると予測される。
【0037】
本発明による方法では、第1の前駆体層および第3の前駆体層は、原則として、
・銅含量が、インジウムおよびガリウムの合計含量よりも少なくなるように、または
・銅含量が、インジウムおよびガリウムの合計含量と同じになるように、または
・銅含量が、インジウムおよびガリウムの合計含量よりも多くなるように
実施することができる。
【0038】
本発明の文脈において、「銅含量」は、インジウムおよびガリウムの合計含量に対する銅の原子比、即ち、Cu/(In+Ga)を意味する。
【0039】
一方、第1の前駆体層は、原則として、
・インジウム含量がガリウム含量よりも少なくなるように、または
・インジウム含量がガリウム含量と同じになるように、または
・インジウム含量がガリウム含量よりも多くなるように
実施することができる。
【0040】
本発明の文脈において、「インジウム含量」は、インジウムおよびガリウムの合計含量に対するインジウムの原子比、即ち、In/(In+Ga)を意味する。
【0041】
特に有利には、第1の前駆体層は、銅含量がインジウムおよびガリウムの合計含量よりも少なくなると同時にガリウム含量がインジウム含量よりも少なくなるように実施されるが、この措置により、薄膜太陽電池の結晶品質および効率に好ましい影響が得られることを前提とする。
【0042】
本発明による方法の別の有利な実施形態では、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)を生成するために、3つの前駆体層は、カルコゲンの合計含量と金属の合計含量との原子比が1以上になるように実施される。同様にこの措置により、薄膜太陽電池の結晶品質および効率に好ましい影響を得ることができる。
【0043】
本発明はさらに、4元化合物半導体Cu(In,Ga)Se、4元化合物半導体Cu(In,Ga)Sまたは5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)で作製された吸収体を本体上に持ち、この吸収体が、半導体表面から本体界面に向かって、定めることが可能なまたは定められたガリウム深さプロファイルを有している(ガリウムおよびインジウムの合計含量に対して)、薄膜太陽電池にまで及ぶ。
【0044】
吸収体の化合物半導体は、上述の方法により有利に生成される。
【0045】
本発明による薄膜太陽電池では、ガリウム深さプロファイルは、吸収体の表面でのガリウム含量が第1の最大値を有し、本体との界面に向かって、したがって背後電極に向かって最小値に至るまで減少し、次いで再び増加し、界面で第2の最大値を有するように、実施される。
【0046】
黄銅鉱化合物半導体中の高いガリウム含量は、バンドギャップの局所的な増大をもたらす。背後電極との界面での、および表面での、バンドギャップの増大は、薄膜太陽電池の開路電圧の有利な増大をもたらす。
【0047】
本発明による吸収体の有利な改善では、ガリウム深さプロファイルは、深さプロファイルの少なくとも一部分でのガリウム含量の相対的な変化が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%になるように実施される。この範囲でのガリウム含量の変化は、薄膜太陽電池の開路電圧および効率に特に有利である。
【0048】
本発明による薄膜太陽電池の有利な実施形態において、吸収体は、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)で作製され、この吸収体は、1つの半導体表面から本体界面に向かって、定めることが可能なまたは定められた硫黄深さプロファイルを有し(セレンおよび硫黄の合計含量に対して)、この硫黄深さプロファイルは、
・半導体表面での硫黄含量が最大値を有し、本体界面に向かって減少し、本体界面では最小値を有するように;または
・半導体表面での硫黄含量が最小値を有し、本体界面に向かって増加し、本体界面では最大値を有するように;または
・半導体表面の硫黄含量は第1の最大値を有し、本体界面に向かって最小値に至るまで減少し、次いで再び増加し、本体界面で最大値を有するように;または
・硫黄含量が半導体表面で第1の最小値を有し、本体界面に向かって最大値まで増加し、次いで再び減少し、本体界面で第2の最小値を有するように
実施される。
【0049】
好ましくは、硫黄深さプロファイルは、深さプロファイルの少なくとも一部分での、即ち化合物半導体の層厚の少なくとも一部分での、特に半導体表面から本体界面までの、硫黄含量の相対的な変化が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%になるように実施される。特に好ましくは、硫黄含量の相対的な変化は少なくとも20%である。
【0050】
上記にて既に説明したように、黄銅鉱化合物半導体中の高いガリウム含量は、バンドギャップの局所的な増大をもたらす。薄膜太陽電池の吸収体としての化合物半導体の使用において、背後電極との界面でのおよび表面でのバンドギャップの増大は、開路電圧の有利な増大をもたらす。一方、短絡電流の高さは、吸収体内部のバンドギャップの最小値により決定される。吸収体の中心に最小値がある硫黄深さプロファイルを用いることにより、吸収体内部のバンドギャップは低減され、それが短絡電流の強度を増大させる。ガリウム深さプロファイルの設定と組み合わせることにより、そのような硫黄深さプロファイルは、表面に向かう(したがって、緩衝層に向かう)および界面に向かう(したがって、背後電極に向かう)バンド勾配の最適化された適応をもたらし、したがって、薄膜太陽電池の効率の特に有利な増大をもたらす。
【0051】
本発明の別の態様は、薄膜太陽電池または薄膜ソーラーモジュールの吸収体を生成するための、Cu(In,Ga)Se、Cu(In,Ga)SまたはCu(In,Ga)(S,Se)型の黄銅鉱化合物半導体を生成するための上述の方法の使用にまで及ぶ。
【0052】
本発明の様々な実施形態は、個々にまたは任意の組合せで実現できることが理解される。特に、上述のおよび以下に説明される特徴は、示される組合せでだけでなく、本発明の範囲から逸脱することのないその他の組合せでもまたは単独でも使用することができる。
【0053】
次に本発明について、例示的な実施形態および添付される図を参照しながら詳細に説明する。それらは単純化された表示で示され、縮尺は正確ではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明による黄銅鉱化合物半導体を生成するための概略的な方法を示す、断面図である。
図2A】4元化合物半導体Cu(In,Ga)Seを生成するための特定の手順を示す、断面図である。
図2B】吸収体に沿ったガリウム深さプロファイルを備えた、4元化合物半導体Cu(In,Ga)Seの断面図である。
図3A】5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)を生成するための特定の手順を示す、断面図である。
図3B】吸収体に沿ったガリウム深さプロファイルおよび硫黄深さプロファイルを備えた、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)の断面図である。
図3C】吸収体に沿ったガリウム深さプロファイルおよび硫黄深さプロファイルを備えた、代替の5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)の断面図である。
図4A】代替の5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)を生成するための特定の手順を示す、断面図である。
図4B】吸収体に沿ったガリウム深さプロファイルおよび硫黄深さプロファイルを備えた、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)の断面図である。
図5A】代替の5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)を生成するための特定の手順を示す、断面図である。
図5B】吸収体に沿ったガリウム深さプロファイルを備えた、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)の断面図である。
図6】本発明による薄膜太陽電池の断面図である。
図7】フローチャートに関連した本発明によるプロセスステップの、例示的な実施形態である。
図8】比較例と共に、本発明による吸収体のガリウムおよびインジウム含量の深さプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、全体が符号1で示される薄膜太陽電池の層構造で、下記において吸収体2と呼ばれる光吸収化合物半導体層を生成するための、一般的な方法の概略断面図を示す。層構造1は、モノリシックに集積される手法で、大規模な配置構成で互いに直列に接続される複数の薄膜太陽電池を生成するのに使用できることが理解される。
【0056】
層構造1は、この場合、基板構成を有し、複数の薄層からなる層構造7が(キャリア)基板3上に付着される。基板3は、ここでは例えば無機ガラスで作製され、この材料と共に、薄膜太陽電池の生成中に行われるプロセスステップに対して適切な強度ならびに不活性な挙動を有するその他の絶縁材料を使用することが等しく可能である。この材料に関するその他の例は、プラスチック、特にポリマーまたは金属であり、特に金属合金である。層厚および特定の材料特性に応じて、基板3は、剛性板またはフレキシブルフィルムとして設計することができる。本発明の例示的な実施形態では、基板3の層厚が例えば1から5mmである。
【0057】
基板3上に付着される層構造7は、基板3の光進入側の面上に配置構成され例えば不透明な金属で作製された、背後電極層4を含む。背後電極層4は、例えば、気相成長または磁場支援型陰極スパッタリング(スパッタリング)により基板3上に堆積することができる。背後電極層4は、例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、またはそのような金属、例えばモリブデン(Mo)との多層系で作製される。背後電極層4の層厚は、この場合、1μm未満であり、好ましくは300nmから600nmの範囲にあり、例えばおよそ500nmである。背後電極層4は、薄膜太陽電池の裏面接点または背後電極として働く。例えばSi、SiONまたはSiCNで作製されたアルカリ障壁は、基板3と背後電極層4との間に配置構成することができる。背後電極4は、多層系とすることができ、窒化チタン層が例えば銅層とモリブデン層との間に配置構成されている。多層系で作製されたそのような背後電極は、例えばEP 2 369 634 A2により公知である。これは図1に詳細には示していない。
【0058】
第1の前駆体層5.1、第2の前駆体層6および第3の前駆体層5.2が、背後電極層4上に連続して配置構成されている。3つの前駆体層5.1、6、5.2は、矢印8で示される熱処理によって、反応により光起電活性吸収体2に変換することができる。吸収体2の層厚は、例えば0.5−5μmの範囲にあり、特におよそ2μmである。
【0059】
図1に示される層構造1は、薄膜太陽電池の生成における中間体生成物を表す。層構造1のさらなる加工は、本発明の理解のためには不要であり、したがって詳細に扱う必要はない。この図はまた、吸収体2上に、表面接点として働き可視スペクトル範囲の放射線を透過する前面電極層(「窓層」)が形成されることを示すだけである。概して、ドープされた金属酸化物(TCO=透明導電性酸化物(transparent conductive oxide))、例えばn型導電性のアルミニウム(Al)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)、ホウ素(B)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)、またはガリウム(Ga)がドープされた酸化亜鉛(ZnO)を、前面電極層に使用する。概して、例えばCdS、In、(In,Ga,Al)(S,Se)、ZnS、Zn(O,S)、Zn(Mg,O)で作製された薄い緩衝層は、場合によって真性i−ZnOと組み合わせて、吸収体2と前面電極層との間に配置構成される。緩衝層を用いることにより、吸収体2に対する前面電極層の改善された適応を、格子定数およびバンド勾配に関して得ることができる。前面電極、緩衝体および背後電極層は、一緒になってヘテロ接合を形成し、即ち反対の導電型の連続層を形成する。前面電極層の層厚は、例えばおよそ300nmから1500nmであり、緩衝層の層厚は例えばおよそ50nmである。環境の影響から保護するために、例えばポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)またはDNPで作製されたプラスチック層(封入フィルム)を、前面電極層に付着させることができる。さらに、鉄含量が少なく厚さが例えば1から4mmの、例えば特別な白色ガラス(フロントガラス)で作製された日光を透過させるカバー板を、設けることができる。
【0060】
既述される薄膜太陽電池または薄膜ソーラーモジュールの構造は、市販の薄膜太陽電池により、ならびに例えばDE 19956735 B4により、当業者に公知である。
【0061】
図1に示される基板構成において、背後電極層4は、基板3に隣接している。層構造1は、スーパーストレート構成も有することができると理解され、この構成では、基板3が透明であり、光進入面とは反対の方向を向く基板3の表面上に、前面電極層が配置構成されている。
【0062】
既に述べたように、層構造1は、直列に接続された薄膜太陽電池を集積させて生成するのに役立てることができ、この場合、層構造1は、様々なパターニング線によって、それ自体が公知の手法によりパターニングされる(「P1」は背後電極用、「P2」は前面電極/背後電極の接触用、「P3」は前面電極の分離用)。あるいは、薄膜太陽電池の構造には、前面電極およびグリッドを設けることができる。
【0063】
図1に示される方法は、黄銅鉱化合物半導体のタイプの光吸収薄膜半導体層からなる吸収体2を、生成するために使用される。吸収体2は、特に、4元化合物半導体Cu(In,Ga)Se、4元化合物半導体Cu(In,Ga)S、または5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)で作製される。
【0064】
第1の前駆体層5.1および第3の前駆体層5.2は、金属のCu、InおよびGaで作製され、好ましくは純粋な金属源から背後電極層4上に、または基板3および背面電極層4(ならびに、場合によってはその他の層)からなる(多層)本体12上に堆積される。本体12上への金属Cu、InおよびGaの堆積は、特に、場合によってはNaなどの1種または複数のドーパントがおそらくは供給されるような以下に述べる方法によって、実現することができる。これらは、典型的には真空コーティング法であり、固体または液体材料がエネルギーの入力により気相に変換され、本体12上で凝縮する(PVD=物理気相成長(physical vapor deposition))。
【0065】
金属のCu、InおよびGaの典型的な堆積法の例は、下記の通りである:
・ターゲットからの、元素であるCu、In、Gaのスパッタリングであり、これらの金属は元素形態で含有されている(元素ターゲット)。好ましくは、元素ターゲットは、それぞれの場合に純度≧4Nを有し、より好ましくは≧5Nを有する。
・ターゲットからの、元素であるCu、In、Gaのスパッタリングであり、これらの金属の2元および/または3元合金が例えばCuIn、CuGa、GaInもしくはCuInGa、および/またはこれらの組合せで含有されている(合金ターゲット)。好ましくは、合金ターゲットは、それぞれの場合に純度≧4Nを有し、より好ましくは≧5Nを有する。場合によって、元素Cu、In、Gaは、望み通り第1の前駆体層5.1または第3の前駆体層5.2の組成(化学量論)を調節するために、元素ターゲットからさらにスパッタリングすることができる。
・供給源からの、元素であるCu、In、Gaの熱蒸着、電子ビーム蒸着またはレーザ材料アブレーションであって、これらの金属は、元素形態で含有されている(元素ソース)。好ましくは、元素ソースは、それぞれの場合に純度≧4Nを有し、より好ましくは≧5Nを有する。
・供給源からの、元素であるCu、In、Gaの熱蒸着、電子ビーム蒸着またはレーザ材料アブレーションであって、これらの金属の2元および/または3元合金が例えばCu−In、Cu−Ga、In−GaもしくはCu−In−Ga、および/またはこれらの組合せで含有されている(合金ソース)。好ましくは、合金ソースは、それぞれの場合に純度≧4Nを有し、より好ましくは≧5Nを有する。場合によって、元素Cu、In、Gaは、望み通りに第1の前駆体層5.1または第3の前駆体層5.2の組成(化学量論)を調節するために、元素ソースからさらに堆積することができる。
・個々にまたは合金としてまたは化合物としての、Cu、InおよびGaの電気化学堆積。
【0066】
元素ターゲットまたは元素ソースを使用する、金属Cu、In、Gaの堆積の場合、第1の前駆体層5.1および/または第3の前駆体層5.2は、多数の金属の個々の層を含み、個々の層のそれぞれはCu、InまたはGaで作製されている。例えば、個々の層は、層の順序Cu/In/Gaで堆積することができるが、その他の層の順序も可能である。好ましい実施形態では、金属Cu、In、Gaの個々の層からなる層列、例えばCu/In/Gaは、第1の前駆体層5.1および/または第3の前駆体層5.2が、同一のまたは異なる層列がn回繰り返された積層体からなるように(例えば、n×Cu/In/Ga)、連続して数回堆積される。好ましくは2から20層列が連続して堆積される(n=2から20)。
【0067】
合金ターゲットまたは合金ソースを使用して金属Cu、In、Gaを堆積する場合、第1の前駆体層5.1および/または第3の前駆体層5.2は、元素Cu、Inおよび/またはGaの2元または3元合金で作製された1つまたは複数の金属の個々の層を含む。さらに、元素ターゲットまたは元素ソースから堆積が行われる場合、個々の層は、元素Cu、In、および/またはGaも含むことができる。金属の個々の層は、定められた層列で堆積することができる。好ましい実施形態では、金属Cu、In、および/またはGaの2元または3元合金(ならびに、場合によっては元素のCu、Inおよび/またはGa)で作製された個々の層からなる層列を連続して数回堆積させて、第1の前駆体層5.1および/または第3の前駆体層5.2が、同一のまたは異なる層列をn回繰り返した積層体からなるようにする。好ましくは2から20層列が連続して堆積される(n=2から20)。
【0068】
層構造1において、第1の前駆体層5.1および/または第3の前駆体層5.2は、それらの組成が下記のようになるように実施することができる。
・組成は銅が少なく、これは銅含量がInおよびGaの合計含量よりも少ないことを意味し(Cu/(In+Ga)<1)、または代替として
・組成は化学量論的であり、これは銅含量がInおよびGaの合計含量に等しいことを意味し(Cu/(In+Ga)=1)、または代替として
・組成は銅に富み、これは銅含量がInおよびGaの合計含量よりも多いことを意味する(Cu/(In+Ga)>1)。
【0069】
銅含量に関する3つの変形例全ては、本発明による方法で提供することができる。
【0070】
さらに、層構造1では、第1の前駆体層5.1および/または第3の前駆体層5.2は、それらの組成が下記のようになるように実施することができる。
・組成はインジウムが少なく、これはインジウム含量がガリウム含量よりも少ないことを意味し(In/Ga<1)、または代替として
・組成は化学量論的であり、これはインジウム含量がガリウム含量に等しいことを意味し(In/Ga=1)、または代替として
・組成はインジウムに富み、これはインジウム含量がガリウム含量よりも多いことを意味する(In/Ga>1)。
【0071】
インジウム含量に関する3つの変形例全ては、本発明の方法により提供することができる。銅含量に関する各変形例は、インジウム含量に関する各変形例と組み合わせることができる。薄膜太陽電池の特に良好な効率に鑑み、本発明によれば、第1の前駆体層5.1および/または第3の前駆体層5.2は、それらの組成で銅が少なく(Cu/(In+Ga)<1)なると同時にインジウムに富む(In/Ga>1)ように実施されることが好ましい。このために、例えば吸収体2は、銅含量がインジウムおよびガリウムの合計含量に対して0.8であり(Cu/(In+Ga)=0.8)、インジウム含量がガリウムに対して1.22である(In/Ga=1.22)。
【0072】
第2の前駆体層6は、第1の前駆体層5.1上に堆積される。第2の前駆体層6は、少なくとも1種のカルコゲン、即ちSおよび/またはSeで作製される。少なくとも1種のカルコゲンは、金属成分なしで堆積される。好ましくは、少なくとも1種のカルコゲンの堆積中の基板3の温度は、150℃未満であり、特に好ましくは100℃未満であり、その結果、有利には、第1の前駆体層5.1の金属と第2の前駆体層6の少なくとも1種のカルコゲンとの、既に開始されている部分反応を予防することができる。
【0073】
Sおよび/またはSeの堆積は、例えば、以下に述べる方法によって実現することができ、全ての方法において、Naなどの1種または複数のドーパントを場合によって供給することができる:
・場合によって、ドーパントまたはドーパント含有化合物を蒸発させることによりNaなどのドーパントが添加される、1つまたは2つの蒸発源からのSおよび/またはSeの熱蒸着(逐次または同時);
・それぞれのカルコゲン(SまたはSe)が元素形態で含有されるターゲット(元素ターゲット)からのスパッタリング。
【0074】
3つの前駆体層5.1、6、5.2は一緒になって、前駆体層積層体11を形成する。本発明によれば、前駆体層積層体11を連続して数回堆積することが有利であるとすることができる。この措置は、特に、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)の結晶形成および/または硫黄の所望の深さプロファイルの設定(カルコゲンの合計量に対して)で有利であるとすることができる。本発明による方法の一実施形態によれば、3つの前駆体層5.1、6、5.2は、カルコゲン/金属の比が1以上になるような組成を有することが好ましいとすることができる。
【0075】
矢印8によって図1に概略的に示されるように、3つの前駆体層5.1、6、5.2は、急速熱処理(RTP:rapid thermal processing)の形の熱処理に供され、この処理によって、金属Cu、In、Gaおよび少なくとも1種のカルコゲンSおよび/またはSeの反応変換が行われ、その結果、4元化合物半導体Cu(In,Ga)SeもしくはCu(In,Ga)Sまたは5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)が形成される。
【0076】
3つの前駆体層5.1、6、5.2の熱処理は、層構造1が入っているプロセスチャンバ13内のカルコゲン含有雰囲気中で少なくとも断続的に、有利に実施され、発生する化合物半導体に応じて、1種または複数のプロセスガス(硫黄および/またはセレンおよび/または硫化水素(HS)および/またはセレン化水素(HSe)またはこれらの組合せ)が、制御された手法でプロセスチャンバ13内に供給される。各プロセスガスは、熱処理中に少なくとも1つの(所定の)時間間隔の間に供給され、この時間間隔は、熱処理全体の時間よりも短くまたは熱処理全体の時間に等しいものである。時間単位当たり供給される各プロセスガスの量は、添加中に変更しなくてもよくまたは変えることができる。特に、カルコゲン含有雰囲気の組成は、熱処理中に変更しなくてもよくまたは変えることができる。
【0077】
熱処理は、下記であることを要する:
・数cal/秒の範囲の高速昇温速度、
・400℃超、好ましくは500℃超の最高温度、
・基板表面全体(横方向)および層厚での高温均質性、
・熱加工中の、少なくとも1種のカルコゲン(Seおよび/またはS)の、十分に高い、制御可能な、再現可能な分圧が、確実であること(Seおよび/またはSの損失の回避)、
・場合によって、適切なガスの温度/時間プロファイルを有する、例えばH、N、Ar、Sガス、Seガス、HS、HSeおよびこれらの組合せの制御可能なプロセスガス供給。
【0078】
3つの前駆体層5.1、6、5.2の熱処理は、例えば、層構造1を収容するプロセスボックスを使用して、トンネル内で、または層構造1を取り囲むプロセスフード内で行うことができる。熱処理の性能に関し、平行基板3を有する1つまたは複数の層構造1は、EP 2360720 A1、EP 2360721 A1、EP 2368860 A1およびWO 2012/025607 A1により公知であるように、互いの隣りにまたは上に配置構成することができる(2重基板または多重レベルプロセス)。
【0079】
5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)の生成では、3つの前駆体層5.1、6、5.2の熱処理は、吸収体2における比S/(Se+S)、即ちSおよびSeの合計含量に対する硫黄含量が定められた深さプロファイルを有するように、制御された温度のプロセスガスのプロファイルを使用して好ましくは行われる。
【0080】
「(硫黄)深さプロファイル」という用語は、層構造7の積層体列に直交する方向にまたは層厚の方向に、基板3とは反対の方向を向く吸収体2の表面9から始まって基板3に面する界面10に至る、吸収体2の長さ寸法に沿った吸収体2における硫黄含量または商S/(Se+S)の値の曲線を指す。
【0081】
第1の変形例によれば、熱処理(RTP加工)は、層厚全体にわたる硫黄深さプロファイルが減少曲線を有するように行われ、即ち、比S/(Se+S)の値が表面9でその最大値を有し、表面9から界面10に向かって減少して、比S/(Se+S)の値が界面10で最小値を有するように行われる。
【0082】
第2の変形例によれば、熱処理(RTP加工)は、層厚全体にわたる硫黄深さプロファイルが増加曲線を有するように行われ、即ち、比S/(Se+S)の値が表面9でその最小値を有し、表面9から界面10に向かって増加して、比S/(Se+S)の値が界面10で最大値を有するように行われる。
【0083】
第3の変形例によれば、熱処理(RTP加工)は、層厚全体にわたる硫黄深さプロファイルが最初に減少曲線を有し、次いで増加曲線を有するように行われる。言い換えれば、比S/(Se+S)の値は、表面9で第1の最大値を有し、最初に表面9から界面10に向かって減少し、表面および界面9、10の間では(単一の)最小値を想定し、次いで再び増加して比S/(Se+S)の値が界面10で第2の最大値を想定するようにし、ここで第2の最大値は、第1の最大値に等しくすることができるが概して異なっている。
【0084】
第4の変形例によれば、熱処理(RTP加工)は、層厚全体にわたる硫黄深さプロファイルが最初に増加曲線を有し、次いで減少曲線を有するように行われ、即ち、比S/(Se+S)の値は、表面9で第1の最小値を有し、最初に表面9から界面10に向かって増加し、表面および界面9、10の間では(単一の)最大値を想定し、次いで再び減少して比S/(Se+S)の値が界面10で第2の最小値を想定するようにし、ここで第2の最小値は、第1の最小値に等しくすることができるが概して異なっている。
【0085】
本発明による方法では、特に銅に富む加工(Cu/(In+Ga)>1)の場合にセレン化銅および/または硫化銅を除去するために、例えばKCNによるエッチングが場合によっては可能である。
【0086】
以下、図2から図5を参照しながら、図1の層構造1において5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)で作製されたまたは4元化合物半導体Cu(In,Ga)SeもしくはCu(In,Ga)Sで作製された吸収体2を生成するための、様々な手順について報告する。
【0087】
例示的な実施形態1
図2Aは、4元化合物半導体Cu(In,Ga)Seで作製された吸収体2を生成するための、第1の手順を示す。
【0088】
最初に、第1の前駆体層5.1を、例えば3つの元素ターゲットから元素Cu、In、Gaをスパッタリングすることによって、背後電極層4上に堆積する。次いでカルコゲンであるセレンで作製された第2の前駆体層6を第1の前駆体層5.1上に堆積するが、これは例えば熱気相成長(PVD)によって行うことができる。次いで第3の前駆体層5.2を、第2の前駆体層6上に元素Cu、In、Gaをスパッタリングすることによって堆積する。第3の前駆体層5.2の堆積は、例えば、第1の前駆体層5.1の堆積に相当する。この例示的な実施形態では、第1の前駆体層5.1および第3の前駆体層5.2は、構造とCu、InおよびGa含量とが同じであり、第1の前駆体層5.1および第3の前駆体層5.3が等量のCu、InおよびGaを有するようになされている。
【0089】
したがって層構造7は、前駆体元素または前駆体相Cu−In−Ga/Se/Cu−In−Gaを含み、以後、「Cu−In−Ga/Se/Cu−In−Ga前駆体」と呼ぶ。
【0090】
次いでCu−In−Ga/Se/Cu−In−Ga前駆体を、急速熱処理(RTP)にさらす。この処理は、Seガスおよび/またはHSeガスを、層構造1が入っているプロセスチャンバ13に供給することによって、行うことができる。熱処理中の温度は、好ましくは400℃よりも高く、特に好ましくは500℃よりも高い。熱処理を用いることにより、Cu−In−Ga/Se/Cu−In−Ga前駆体から、吸収体2を形成する4元化合物半導体Cu(In,Ga)Seへの反応変換が行われる。
【0091】
図2Bは、左側に、吸収体2を有する層構造1を示し、右側に、層構造7の積層体列に直交する方向zに沿った、ガリウムおよびインジウムの合計含量に対する吸収体2のガリウム深さプロファイルを示す。ガリウム深さプロファイルは、吸収体2の表面9から本体12との界面10に向かって、ガリウム含量が吸収体の表面9で第1の最大値を有し、本体界面10に向かって最小値に至るまで減少し、次いで再び増加し、本体界面10で第2の最大値を有するように構成される。
【0092】
これは、セレン化の前線がそれぞれの場合に第2のセレン含有前駆体層6から第1の前駆体層5.1内に、したがって本体界面10の方向に、ならびに第3の前駆体層5.2内に、したがって吸収体2の表面9の方向に移動するという事実により、単純なモデルで説明することができる。これは、背後電極4に対する本体界面10で、したがって太陽電池の裏面電界で、ガリウムの高濃度化をもたらす。ここで「裏面電界」は、化合物半導体中の多量のGaによって引き起こされた、界面10の方向での伝導帯の増加を指す(バック接点)。さらに、後続のフロント接点用の吸収体2の表面9でのガリウムの高濃度化は、この領域でのバンドギャップの拡幅をもたらす。両方とも、開路電圧の有利な増加と薄膜太陽電池の温度係数の低下をもたらす。
【0093】
例示的な実施形態2
図3Aは、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)で作製された吸収体2を生成するための方法を示す。不要な繰返しを避けるために、例示的な実施形態1との相違のみについて説明し、その他に関しては、そこに記述される内容を参照されたい。層構造1のおよびCu−In−Ga/Se/Cu−In−Ga前駆体の構造は、例示的な実施形態1の構造に該当する。
【0094】
次に、Cu−In−Ga/Se/Cu−In−Ga前駆体を、硫黄含有雰囲気中で急速熱処理(RTP)にさらす。このために、Sガスおよび/またはHSガスを、層構造1が入っているプロセスチャンバ13に供給する。熱処理中の温度は、好ましくは400℃よりも高く、特に好ましくは500℃よりも高い。熱処理を用いることにより、Cu−In−Ga/Se/Cu−In−Ga前駆体の反応変換が行われ、それが、吸収体2を形成する5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)を形成する。
【0095】
図3Bは、左側に、完成した吸収体2を備えた層構造1を表し、中央に、方向zに沿ったガリウムおよびインジウムの合計含量に対する吸収体2のガリウム深さプロファイルを表す。ガリウム深さプロファイルは、吸収体2の面9から本体12との界面10に向かって実現され、吸収体の表面9でのガリウム含量が第1の最大値を有し、本体界面10に向かって最小値にまで減少し、次いで再び増加し、本体界面10で第2の最大値を有するようになされている。吸収体2の、発生したバンドギャッププロファイルを用いて、薄膜太陽電池の効率の改善を得ることができる。
【0096】
硫黄含有雰囲気中でのセレン含有Cu−In−Ga/Se/Cu−In−Ga前駆体の加工は、第2の前駆体層6とプロセス雰囲気との間でのセレンおよび硫黄の交換プロセスを可能にする。この手段により、硫黄含量、したがって形成されたCu(In,Ga)(S,Se)化合物半導体のバンドギャップは、ガリウム深さプロファイルに加え、層形成プロセス中に選択的に影響を受ける可能性がある。したがって、所望の手法による熱加工中の反応ガス雰囲気中での硫黄含量の時間および/または濃度依存性変動によって、形成されたCu(In,Ga)(S,Se)化合物半導体の層厚zに沿って定められた硫黄濃度プロファイル(深さプロファイル)を、発生させることができる。吸収体2の、発生したバンドギャッププロファイルを用いることにより、薄膜太陽電池の効率のさらなる改善を、得ることができる。
【0097】
例えば、方法の特殊な実施形態では、第1の(初期)段階において不活性プロセスガス(例えば、窒素(N)またはアルゴン(Ar))を、第2の(後期)プロセス段階においてSガスおよび/またはHSガス(または異なるS含有ガス)を、プロセスガスとして供給することができる。例えば、必須ではないが、Sガスおよび/またはHSガスは、熱処理の時間間隔の後半にのみ供給してもよく、この供給の時間間隔は、熱処理の終わりまで続けることができまたは既に早期に終わらせることができる。HSガスおよび/またはSガスを供給することによって、硫黄プロファイルは、Sの取込みと後続の拡散プロセスとにより、比S/(Se+S)が表面9で最大値を有し界面10に向かって減少するように、発生する。
【0098】
図3Bは、右側に、方向zに沿った硫黄およびセレンの合計含量に対する吸収体2で得られた硫黄深さプロファイルを示す。
【0099】
あるいは、硫黄深さプロファイルに選択的に影響を及ぼすために、Sガスおよび/またはHSガスを熱処理の第1の(初期)段階中(例えば、必須ではないが時間間隔の前半の間)に供給し、場合によっては不活性ガスを第2の(後期)プロセス段階中に供給することが可能と考えられる。例えば、SガスおよびHSガスが供給される2つの時間間隔は、不活性ガスのみが供給される時間間隔によって中断されてもよい。しかし、Sガスおよび/またはHSガスを完全な熱処理中に供給することも考えられる可能性がある。
【0100】
例示的な実施形態2A
例示的な実施形態2の変形例では、硫黄深さプロファイルに選択的に影響を及ぼすために、第1の(初期)段階でSガスおよび/またはHSガスが供給され、熱処理の第2の(後期)段階で不活性ガスが供給され、第3の(さらに後期)段階でSガスおよび/またはHSガスが供給される。
【0101】
図3Cは、右側に、方向zに沿った硫黄およびセレンの合計含量に対する、吸収体2で得られた硫黄深さプロファイルを示す。硫黄深さプロファイルは、吸収体2の表面9と界面10とで最大値を有する。
【0102】
表面9および界面10でのガリウム高濃度化によるバンドギャップの増大は、薄膜太陽電池(20)において、開路電圧および効率の増大をもたらす。一方、短絡電流の高さは、吸収体2の内部のバンドギャップの最小値によって決定される。組合せでは、ガリウム含量および硫黄含量の2重最大値構造によって、薄膜太陽電池の効率の上昇が有利にもたらされる。
【0103】
例示的な実施形態3
図4Aは、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)で作製された吸収体2を生成するための別の方法を示す。不要な繰返しを避けるために、例示的な実施形態2に対する相違のみを説明し、その他については、そこに記述される内容を参照されたい。
【0104】
図によれば、第2の前駆体層6を生成するためのSeの堆積の代わりに、カルコゲンSの堆積が提示され、層構造7が前駆体元素Cu−In−Ga/S/Cu−In−Ga(Cu−In−Ga/S/Cu−In−Ga前駆体)を含むようになされている。Cu−In−Ga/S/Cu−In−Ga前駆体を、Se含有雰囲気中で急速熱処理にさらす。このために、Seガスおよび/またはHSeガスを、層構造1が入っているプロセスチャンバ13に供給する。熱処理を用いることにより、Cu−In−Ga/S/Cu−In−Ga前駆体の反応変換が行われて5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)が形成され、それが吸収体2を形成するということが達成される。
【0105】
Se含有雰囲気中でのS含有Cu−In−Ga/S/Cu−In−Ga前駆体の加工は、第2の前駆体層6と気相との間のSおよびSeの交換プロセスを可能にする。この手段により、形成されたCu(In,Ga)(S,Se)化合物半導体の硫黄含量は、層形成プロセス中に選択的に影響を受ける可能性がある。
【0106】
例えば、方法の特殊な実施形態では、第2の(後期)段階でSeガスおよび/またはHSeガス(または異なるSe含有ガス)を、第1の(初期)プロセス段階で不活性ガス(例えば、窒素(N)またはアルゴン(Ar))を、プロセスガスとして供給することができる。例えば、必須ではないが、Seガスおよび/またはHSeガスを、熱処理の時間間隔の後半のみに供給してもよい。HSeガスおよび/またはSeガスを供給することによって、硫黄プロファイルは、Seの取込みおよび後続の拡散プロセスにより発生し、比S/(Se+S)は、表面9で最小値を有し界面10に向かって増加するようになされている。
【0107】
図4Bは、左側に、完成した吸収体2を備えた層構造1を示し、中央に、吸収体2に沿った方向zに沿って得られたガリウム深さプロファイルを示し、右側に、得られた硫黄深さプロファイルを示す。
【0108】
例示的な実施形態4
図5Aは、5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)で作製された吸収体2を生成するための別の方法を示す。不要な繰返しを避けるために、例示的な実施形態2に対する相違のみを説明し、その他については、そこに記述される内容を参照されたい。
【0109】
例示的な実施形態2とは対照的に、開始点は、第1の前駆体層5.1および第3の前駆体層5.2が同じ構造および同じ量のCu、InおよびGaを含有するCu−In−Ga/Se/Cu−In−Ga前駆体ではない。
【0110】
図5Aは、Cu、In、Gaの合計量のおよそ80%が第1の前駆体層5.1内に配置構成され、およそ20%が第3の前駆体層5.2内に配置構成されている、層構造1を示す。Cu、In、Gaの量の比は、それぞれの層厚により設定される。熱処理は、例示的な実施形態2の下で提示されるように、例えば硫黄含有プロセス雰囲気で行われる。
【0111】
図5Bは、得られた吸収体2の、ガリウム深さプロファイルを示す。ガリウム深さプロファイルは、本体12との界面10と、吸収体2の表面9とで、ガリウムおよびインジウムの合計含量に対して最大値を有する。ガリウム含量の最小値は、吸収体2の表面9にシフトし、吸収体の厚さのおよそ20%である。
【0112】
例示的な実施形態5
図6は、本発明による薄膜太陽電池20の例示的な実施形態を示す。薄膜太陽電池20は、例えば2.1mmの厚さのソーダ石灰ガラスパネルを含む基板3を有する。基板3から出て薄膜太陽電池20の半導体層に入るナトリウムの拡散を防止する拡散障壁層3.1は、基板3上に配置構成されている。拡散障壁層3.1は、例えば、100nmの厚さの窒化ケイ素層で作製される。
【0113】
背後電極層4は、拡散障壁層3.1上に配置構成される。背後電極層4は、例えば、450nmの厚さのモリブデン層を含む。本発明による薄膜太陽電池20の有利な改善では、背後電極層4を多層系とすることができ、例えば、窒化チタン層が、モリブデンで作製された2つの個別の層の間に配置構成される。
【0114】
モリブデンと、吸収体2に応じて硫黄および/またはセレンとを含有する背後電極遷移層4.1は、背後電極層4上に配置構成される。背後電極遷移層4.1は、例えば、50nmから500nmの厚さを有する。
【0115】
本発明による吸収体2は、背後電極遷移層4.1上に配置構成される。吸収体2は、4元化合物半導体Cu(In,Ga)Se、4元化合物半導体Cu(In,Ga)Sまたは5元化合物半導体Cu(In,Ga)(S,Se)で作製される。吸収体2の層厚は、例えば、1μmから2μmである。吸収体2は、最小値が1.0eVのバンドギャップを有する。吸収体2は、基板3、拡散障壁層3.1、背後電極層4および背後電極遷移層4.1で作製された本体12との、界面10を有する。
【0116】
図7は、フローチャートを使用した、吸収体2を生成するための本発明によるプロセスステップの例示的な実施形態を示す。吸収体の生成は、例えば、下記のプロセスステップにより行われる:
第1のステップでは、Cu、InおよびGaで作製された第1の前駆体層5.1が、背後電極遷移層4.1上に堆積される。このため、例えば、銅およびガリウムは、原子の割合がCu 85%およびGa 25%のターゲットからスパッタリングによって堆積され、インジウムは、スパッタリングによってインジウムターゲットから堆積される。銅−ガリウムターゲットおよびインジウムターゲットは、例えば、99.99%よりも高い純度(≧4N)を有する。
【0117】
第1の前駆体層5.1は、例えば、およそ400nmの層厚を有し、これはおよそ0.2mg/cmから0.25mg/cmのCu、InおよびGaの合計質量密度に相当する。これは例えば、Cu/GaおよびInの3つの2重層によって付着される。
【0118】
次いで第2の前駆体層6の所望の量のセレンを、例えば熱気相成長によって第1の前駆体層5.1上に堆積する。第2の前駆体層6の層厚は、例えばセレンが1000nmから1500nmである。
【0119】
次いで第3の前駆体層5.2を、第2の前駆体層6上に堆積する。第3の前駆体層5.2は、例えば、Cu/GaおよびInの2重層またはInおよびCu/Gaの2重層を含有する。
【0120】
前駆体層5.1、6、5.2の堆積中、例えばナトリウムのドーパント添加を行うことができる。
【0121】
第2のステップにおいて、前駆体層5.1、6、5.2は、約500℃の温度への急速加熱によって、黄銅鉱構造を有する化合物半導体に変換される。熱処理は、例えば、カルコゲン含有雰囲気中で、特に硫黄含有雰囲気中で(例えば、HSの添加またはSガスによって)行うことができる。得られた化合物半導体は、薄膜太陽電池20の吸収体2を形成する。
【0122】
本発明による吸収体2は、この場合、定められたガリウム深さプロファイルを有し、このプロファイルは、ガリウム含量が表面9で第1の最大値を有し、界面10に向かって最小値に至るまで減少し、次いで再び増加し、界面10で第2の最大値を有するように構成されている。
【0123】
緩衝層14が、吸収体2の表面9上に配置構成される。緩衝層14は、例えば、硫化インジウム層および真性ドープ型酸化亜鉛層を含む。例えばアルミニウムドープ型酸化亜鉛で作製された前面電極層15が、緩衝層14上に配置構成される。前面電極層15の厚さは、例えば1200nmである。
【0124】
図8は、3つの異ならせて調製した吸収体2の、高分解能飛行時間2次イオン質量分光法(ToF−SIMS:time−of−flight secondary ion mass spectrometry)により測定されたガリウムおよびインジウムの深さプロファイルを示す。図8 i)および図8 ii)は比較例を示し、図8 iii)は、本発明による実施例を示す。
【0125】
試験をした吸収体2を、背後電極層4上に堆積した。金属前駆体層を、銅−ガリウムターゲットおよびインジウムターゲットから層ごとにスパッタリングした。カルコゲン含有前駆体層を、セレンの熱気相成長により生成した。前駆体層にはナトリウムをドープしなかった。化合物半導体を形成するための熱処理は、プロセスチャンバ内で硫黄を添加せずに行った。
【0126】
表1は、堆積され、加工され、次いで特徴付けられた、前駆体の概要を示す。
【0127】
【表1】
【0128】
比較例1では、Cu/In/Ga−Se前駆体について調査し;比較例2では、Se−Cu/In/Ga前駆体について;実施例では、本発明によるCu/In/Ga−Se−Cu/In/Ga前駆体について調査した。本発明によるCu/In/Ga−Se−Cu/In/Ga前駆体では、個々のCu/In/Ga前駆体層の層厚が、ほぼ、比較例のCu/In/Ga層の層厚である。このように、化合物半導体中の金属成分は、等量の比であることを保証することができた。
【0129】
このように調製された吸収体層のTOF−SIMS分析の結果を、図8 i)−iii)に示し:図8 i)−iii)では、水平軸上に、それぞれの場合に、吸収体2の厚さに対して正規化されたスパッタ深さがプロットされ、この分析は、吸収体2の表面9で開始されている。吸収体2は、水平軸の領域0から1に該当し、背後電極層4は、値>1の領域に該当する。垂直軸上には、ガリウムまたはインジウムのカウントの強度がプロットされる。
【0130】
図8 i)は、従来技術による比較例1に関する、TOF−SIMSによる深さプロファイル分析を示し、吸収体2は、Cu/In/Ga−Se前駆体から出発して生成したものである。深さプロファイル分析は、吸収体2の表面9で(スパッタ深さ=0)、ガリウム含量が最小値を示す。スパッタ深さの増大と共に、ガリウム含量は増加し、背後電極4との界面10に相当するスパッタ深さ1で、その最大値に到達する。同時に、インジウム含量は、吸収体2の表面9(スパッタ深さ=0)で最大値を有する。スパッタ深さの増大と共に、インジウム含量は減少し、背後電極4との界面10にほぼ相当するスパッタ深さ1で、最小値に到達する。
【0131】
図8 ii)は、比較例2に関するTOF−SIMSによる深さプロファイル分析を示し、吸収体2は、Se−Cu/In/Ga前駆体から出発して生成されたものである。深さプロファイル分析は、吸収体2の表面9で(スパッタ深さ=0)、ガリウム含量が最大値を示す。スパッタ深さの増大と共に、ガリウム含量は減少し、背後電極4との界面10に相当するスパッタ深さ1で、その最小値に到達する。同時に、インジウム含量は、吸収体2の表面9(スパッタ深さ=0)で最小値を有する。スパッタ深さの増大と共に、インジウム含量は増加し、背後電極4との界面10にほぼ相当するスパッタ深さ1で、最大値に到達する。
【0132】
図8 iii)は、本発明による実施例に関する、TOF−SIMSによる深さプロファイル分析を示し、吸収体2はCu/In/Ga−Se−Cu/In/Ga前駆体から出発して生成されたものである。深さプロファイル分析は、吸収体2の表面9で(スパッタ深さ=0)、ガリウム含量が最大値を示す。スパッタ深さの増大と共に、ガリウム含量は減少し、吸収体2の厚さのほぼ半分に相当するスパッタ深さで、最小値に到達する。次いでガリウム含量は再び増加し、背後電極4との界面10にほぼ相当するおよそ1のスパッタ深さで、第2の最大値に到達する。同時に、インジウム含量は、吸収体2の表面9(スパッタ深さ=0)で最小値を有する。スパッタ深さの増加と共に、インジウム含量は減少し、吸収体2の厚さのほぼ半分に相当するスパッタ深さで、最大値に到達する。より大きなスパッタ深さでは、インジウム含量が再び減少し、背後電極4との界面10に相当するスパッタ深さ1で、最小値に到達する。
【0133】
したがってCu/In/Ga−Se−Cu/In/Ga前駆体の本発明による層構造は、吸収体2の表面9と界面10とにガリウムの最大値がある、所望のガリウム2重プロファイルをもたらす。
【0134】
本発明によるガリウムプロファイルの形成は、下記のモデルの文脈において理解することができ:ガリウムは、セレンと比較した場合、例えば銅またはインジウムよりも反応性が明らかに低い。Cu/In/Ga−Se−Cu/In/Ga前駆体では、熱処理中プロセス中に、液体セレンがCu、InおよびGa成分と反応して、2元セレン化物を形成する。この反応は、第2のセレン含有前駆体層6のCu/In/Ga−Se−Cu/In/Ga前駆体で開始し、第1の前駆体層5.1内に下がるまで、また第3の前駆体層5.2内に上がるまで継続する。金属Cu、In、Gaのセレン化動態における既存の相違により、セレンとは反対の方向を向く面上のGa含有金属合金の高濃度化が存在する。ガリウムの完全な相互拡散はなく、インジウムに富む中心領域があり、表面9および界面10のガリウム含量が最大値である化合物半導体のままである。
【0135】
このように、本発明によれば、層堆積および熱処理(RTP)の2段階プロセスを使用して、吸収体の上部および底部にガリウムの最大値を有するガリウム2重プロファイルを設定することが初めて可能になる。これは例えば、熱処理プロセス中にHS供給を用いることにより、硫黄プロファイルと組み合わせて設定することができる。ガリウム2重プロファイルによって、さらに硫黄プロファイルによって最適化された吸収体2のバンドギャップ曲線は、高い短絡電流強度と組み合わせて高い開路電圧をもたらす。両方とも、薄膜太陽電池の効率が高くなる。また、薄膜太陽電池の温度係数は、有利に低減する。
【0136】
これは当業者にとって、予期せぬ驚くべきことであった。
【符号の説明】
【0137】
1 層構造
2 化合物半導体、吸収体
3 基板
3.1 拡散障壁層
4 背後電極層
4.1 背後電極遷移層
5.1 第1の前駆体層
5.2 第3の前駆体層
6 第2の前駆体層
7 層構造
8 矢印
9 表面
10 界面
11 前駆体層積層体
12 本体
13 プロセスチャンバ
14 緩衝層
15 前面電極層
20 薄膜太陽電池
z 層厚
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8