【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省「移動通信システムにおける三次元稠密セル構成及び階層化セル構成技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
マイティ ソウラブ,外2名,セルラ移動通信システムにおける端末移動速度推定法に関する検討,電子情報通信学会技術研究報告,一般社団法人電子情報通信学会,2015年 1月15日,第114巻第395号,p.31-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは、ユーザによる無線通信の多様な利用を想定し、低データレート通信から高データレート通信、静止画から動画ストリーミング伝送、静止状態や歩行状態での利用から高速移動状態での利用、あるいは屋内での使用から屋外での使用など様々な形態による無線通信サービスを提供している。
【0003】
無線通信システムを提供する事業者は、このような利用形態に加え、都市部や農村部などサービスを提供する場所、サービスを利用するユーザの人口分布やデータ量(トラフィック密度)など、様々な条件を考慮したシステム構築を行っている。システム構築の一環として、事業者は、どのような場所や時間においても、ユーザが遅滞なく無線通信システムに接続することができ、満足するサービスの提供を受けられるように、利用形態やトラフィック密度を考慮して基地局(またはセル)の配置設計を行う。
【0004】
しかし、利用形態の更なる多様化やトラフィック量の増加に伴い、平面的なセル配置では、十分なサービスを提供することは困難となる。このため、複数の種類のセルを組み合わせることにより、多様な利用形態やトラフィック特性に合致したサービスを提供するオーバーレイセル構成の構築が進められている。オーバーレイセル構成の1つの例において、セルサイズの大きいマクロセル内にセルサイズの小さい極小セルを重畳(オーバーレイ)させる。極小セルは、マイクロセル、ピコセル、フェムトセルなどである。このような極小セルは、マクロセル内のトラフィック密度が高い場所、高データレート通信が想定される場所、マクロセル基地局からの電波受信が困難な場所等に設置される。
【0005】
オーバーレイセル構成において、周波数利用効率を向上させるため、あるいは、ハンドオーバの頻度を抑制するために、端末の移動速度に応じて、マクロセルと極小セルの階層を適切に選択する階層選択制御が必要となる。
【0006】
移動速度が速い端末は、マクロセルのみに接続し、極小セルには接続されないようにする。一方、移動速度の遅い端末は、極小セル内にある場合は極小セルと接続し、極小セルが重畳されていない場所では、マクロセルと接続する。このような階層選択制御により、高速移動中の端末が極小セルに頻繁にハンドオーバすることを防止して、ハンドオーバの制御シグナリングの増加やハンドオーバ増加に伴う通信断を減らすことができる。また、低速移動の端末が極小セルに接続することで、送信電力が抑制されて、システム内の干渉電力を減らすことができる。
【0007】
階層選択制御を適切に実行するためには、端末の移動速度を正確に測定し、その移動速度に基づいて、マクロセル又は極小セルに接続させることが重要である。
【0008】
端末の移動速度を推定する方法の1つとして、ドップラースペクトルを利用する方法がある(非特許文献1)。ここでドップラースペクトルとは、伝搬路応答の時間変動をフーリエ変換した結果得られる周波数軸(ドップラー周波数シフト)上の電力波形である。端末と基地局間の無線伝搬環境が電波の到来方向分布が一様である全周散乱モデルと見なせる場合、ドップラースペクトルは、最大ドップラー周波数においてピークを示す。このため、スペクトルのピークを検出することにより、最大ドップラー周波数を測定することができ、最大ドップラー周波数から端末の移動速度を算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照して、ドップラースペクトルを用いた端末の速度推定方法について説明する。しかしながら、本発明が、図面又は以下に記載される実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0018】
図1にドップラースペクトルの例を示す。この例は、無線伝搬環境が全周散乱モデルとみなせる理想的な場合を表している。図において、横軸は周波数を表し、縦軸は相対電力を表す。ただし、
図1ではベースバンド帯域に変換した後の処理結果を示しているため、実際には横軸の周波数0 Hzがキャリア周波数に対応することに注意が必要である。以降のドップラースペクトルの図においても横軸の周波数の定義は
図1と同様である。この例において、最大ドップラー周波数は、100 Hzであり、ドップラースペクトルの周波数100 Hz及び-100 Hzにおいて、高い電力の成分が生じている。このように、受信信号の伝搬路変動を用いて算出されたドップラースペクトルから、電力の高い成分の周波数を検出することで、最大ドップラー周波数を推定することができる。
【0019】
図2は、ドップラースペクトルから最大ドップラー周波数を算出する方法を簡単に説明した図である。周波数の負側において、最大電力が得られる周波数をf(1)とし、正側において、最大電力が得られる周波数をf(2)とする。理想的なフェージング環境下においては、f(1)とf(2)の間でU字型のスペクトルを示し、f(1)とf(2)は、同じ周波数絶対値を示す。この周波数絶対値が最大ドップラー周波数f
Dとなる。即ち、f(1)=-f
Dであり、f(2)=f
Dとなる。そして、f(1)とf(2)の間の周波数がドップラースペクトル幅となる。
【0020】
最大ドップラー周波数f
Dが得られると、端末の移動速度νは、f
D×λで算出することができる。ここで、λは、キャリア周波数の波長である。
【0021】
ドップラースペクトルから最大ドップラー周波数を検出する方法が幾つか考えられる。以下に、ドップラースペクトルに対して固定のしきい値を設定し、しきい値以上となる有効成分について、そのうちの最大周波数の成分と最小周波数の成分から最大ドップラー周波数を算出する方法を説明する。
【0022】
図3は、ドップラースペクトルにおけるしきい値の設定の一例を示した図である。ここでは、雑音電力N
0 [dBm]を算出し、更に、ΔN [dB]を加算した値をしきい値とする。
図3に示されるように、N
0+ΔN [dBm]をしきい値とすることで、ドップラースペクトルの外側の雑音成分を除外することができる。そして、しきい値以上となる有効成分は、直接波成分など幾つかの電力が高い成分を含む。これらの有効成分の中から、最大の周波数を持つ成分(即ち、
図3の「A」で示される100 Hzの成分)と最小周波数を持つ成分(即ち、
図3の「B」で示される-100 Hzの成分)を選択することで、最大ドップラー周波数を決定することができる。
【0023】
図4は、最大ドップラー周波数算出の方法を示すフローチャートである。S10において、無線接続している基地局または端末から参照信号を受信する。ここで、参照信号としたが、システムにより、パイロット信号やビーコンなどとも呼ばれ、伝搬路推定に使用される既知の信号である。S11において、受信した参照信号をベースバンド信号に変換し、復調した後、受信電力を測定することにより、受信信号の伝搬路の時間変動データを作成する。伝搬路の時間変動データは、一定区間毎にバッファに格納される。
【0024】
受信信号は、端末の移動速度に比例して変動するため、受信信号の伝搬路変動をフーリエ変換することにより、ドップラースペクトルが得られる。S12において、一定区間毎に格納された伝搬路の時間変動データに高速フーリエ変換(FFT)を掛ける。ここで、一定区間は、FFTのポイント数に相当する。S13において、FFTの出力からドップラースペクトルが算出される。
【0025】
S14において、スペクトルのしきい値を設定し、しきい値以上となる有効成分を検出する。S15において、有効成分の中から最大周波数を持つ有効成分E
f_maxを選択し、その周波数f(E
f_max)を検出する。S16において、有効成分の中から最小周波数を持つ有効成分E
f_minを選択し、その周波数f(E
f_min)を検出する。
【0026】
S17において、検出された2つの周波数を用いて、最大ドップラー周波数を算出する。ここでは、2つの周波数f(E
f_max)と周波数f(E
f_min)からドップラースペクトル幅を算出し、その半値を最大ドップラー周波数f
Dとすることができる。即ち、f
D=(f(E
f_max)−f(E
f_min))/2とする。
【0027】
このように、しきい値を設定し、しきい値以上となる有効成分を抽出することで、雑音成分によるスペクトルを除外して、受信信号によるスペクトルのみを選択することができる。さらに、適切なしきい値を設けることで、雑音成分による誤検出を抑制し、より正確な最大ドップラー周波数を推定することができる。
【0028】
上記例において、しきい値を雑音電力N
0にΔNを加算した値に設定したが、これに限定されるものではない。例えば、測定されるSNRなどの無線伝搬状況に応じて、しきい値を可変とすることも可能である。
【0029】
また、周波数f(E
f_max)と周波数f(E
f_min)とのうち、絶対値の大きい方を最大ドップラー周波数f
Dとする方法もある。即ち、f
D=max(|f(E
f_max)|, |f(E
f_min)|)とする。
【0030】
次に、周辺移動散乱体によるドップラースペクトル算出への影響とその検知方法について説明する。端末搭載自動車が、一般道路や高速道路を走行する際、対向車や同方向車が存在する。このように端末搭載自動車周辺を移動する車両体(周辺移動散乱体)は、端末から出力される電波、または端末で受信される電波を散乱させる。
【0031】
周辺移動散乱体が存在すると、端末のドップラースペクトル検出において、端末単体によるドップラースペクトルとは別に、周辺移動散乱体のよるドップラースペクトル成分が発生する。簡単な例を
図5に示す。端末単体によるドップラースペクトルは、端末の移動速度に応じた最大ドップラー周波数f
0と-f
0により示される。この端末単体によるドップラースペクトルより高い周波数位置(f
1)において、周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分が発生している。このドップラースペクトル成分の電力は、通常、端末単体によるドップラースペクトルの電力より小さくなる。
【0032】
しかし、周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分を端末のドップラースペクトルの有効成分として検出してしまうと、ドップラースペクトル幅は、-f
0〜f
1となり、本来のドップラースペクトル幅より広く検出される。
図4に示すフローチャートに従い、最大ドップラー周波数を算出すると、ドップラースペクトル幅の半値は(f
1+f
0)/2となり、実際の最大ドップラー周波数より大きくなる。また、最大周波数と最小周波数の絶対値の大きい方から最大ドップラー周波数を算出しても最大ドップラー周波数はf
1となる。
【0033】
図6に端末が搭載される自動車Aと対向車Bの関係を簡単に示す。対向車Bが周辺移動散乱体となる。自動車Aは速度v
0で走行し、その最大ドップラー周波数はf
0とする。一方、対向車Bは速度vで走行し、その最大ドップラー周波数はfとする。また、時刻tにおける自動車Aと対向車Bとがなす角度をθ(t)とすると、自動車Aと対向車Bの相対速度v
1は、v
1=v
0+v×cosθ(t)となる。このため、対向車Bによるドップラースペクトル成分の周波数f
1は、f
1=f
0+f×cosθ(t)となる。
【0034】
対向車Bが自動車Aに近づくと、角度θ(t)が90°に近づくため、対向車Bによるドップラースペクトル成分の周波数f
1は、f
0に近づく。即ち、
図7に示されるように、対向車Bによるドップラースペクトル成分は、自動車A単体によるドップラースペクトルより高い周波数位置に現れ、両者が接近するに従い、自動車A単体によるドップラースペクトルの中心に近づく。
【0035】
対向車Bが自動車Aの横を通り、離れると、対向車Bによるドップラースペクトル成分の周波数f
1は、f
1= -f
0-f×cosθ(t)となり、自動車A単体によるドップラースペクトルより低い周波数位置に移動する。
【0036】
周辺移動散乱体が同方向車の場合も同様に考えることができる。同方向車の速度が自動車Aの速度より速く、自動車Aを追い抜いて行く場合、同方向車によるドップラースペクトル成分は、自動車A単体によるドップラースペクトルより高い周波数位置で発生し、追い抜いた後、低い周波数位置に移動する。
【0037】
更に、自動車Aの近傍に対向車や同方向車が複数存在する場合、自動車A単体によるドップラースペクトルの片外側または両外側に複数のドップラースペクトル成分が出現することも考えられる。以下に示す本発明による速度推定方法は、このように複数のドップラースペクトル成分が存在している場合においても正確に速度推定を行うことができる。
【0038】
上記のように周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分が存在すると、端末のドップラースペクトルの正確な検出を妨げることになる。周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分を検出し、端末のドップラースペクトルと区別することで、端末単体によるドップラースペクトルを算出し、正確な速度推定を行うことができる。
【0039】
本発明の1つの実施例における周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分の検出方法を説明する。
【0040】
図8は、端末の移動速度の推定を行う時間と、その時のドップラースペクトルの例を示す図である。移動速度の推定は、時間... t
-3、t
-2、t
-1、t
0、t
1、t
2、t
3 ...において行われるとする。その時間間隔Δt
iはシステムや端末により設定される。
【0041】
現在時刻t
0において算出されるドップラースペクトルP(t
0)は、端末単体のみによるドップラースペクトルであるか、端末単体のドップラースペクトルと周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分とが混在したスペクトルであるかの区別はできない。このため、ドップラースペクトル幅から算出される現在時刻t
0における速度推定値v(t
0)が、実際の速度を表すものであるかの信頼性を確認する。
【0042】
現在時刻t
0における速度推定値v(t
0)の信頼性を確認するために、ΔT前の速度推定値v(t
-ΔT)との比較を行う。即ち、時間t
-ΔTとt
0との間で、ドップラースペクトル幅に大きな変動があり、速度推定値に影響が生じたかを判定する。ΔTは任意に設定することができる。速度推定値の比較においては、速度推定時の誤差や実際の移動速度の若干の変化を考慮し、現在時刻t
0における速度推定値v(t
0)が、ΔT前の速度推定値v(t
-ΔT)に係数αで重み付けした速度より大きくなるかを調査する。即ち、v(t
0)>α×v(t
-ΔT)となるかを判定する。αは、1.3程度を想定するが、これに制限されるものではない。
【0043】
v(t
0)がα×v(t
-ΔT)以下となる場合、時刻t
-ΔT〜t
0において、次の例が想定される。
1.周辺移動散乱体がなく、車の速度が維持されている、又は若干速くなっているが、重み付け係数αの範囲内である。
2.周辺移動散乱体がなく、車が減速中である。
3.時刻t
0において周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分が存在するが、重み付け係数αの範囲内である。
4.時刻t
-ΔTにおいて周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分が存在していたが、時刻t
0において周辺移動散乱体が存在しない。
【0044】
v(t
0)がα×v(t
-ΔT)以下となる場合、速度推定値v(t
0)の信頼性があると判断され、時刻t
0の速度推定値としてv(t
0)がそのまま使用される。
【0045】
一方、v(t
0)がα×v(t
-ΔT)を超える場合、時刻t
-ΔT〜t
0において、次の例が想定される。
1.周辺移動散乱体がなく、車が加速中である。
2.時刻t
-ΔTにおいて周辺移動散乱体がなく、時刻t
0において周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分が発生している。
【0046】
図8の例では、現在時刻t
0におけるドップラースペクトルP(t
0)には、端末単体のドップラースペクトルに加え、周波数の低い側に周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分が存在している。このため、算出されるドップラースペクトル幅は、実際の端末単体のドップラースペクトル幅に比べ広くなり、移動速度の推定値v(t
0)も実際より高くなる。
【0047】
図8では、時刻t
-3を現在時刻のΔT前としている。時刻t
-3において算出されたドップラースペクトルP(t
-3)は、端末単体のドップラースペクトルのみを含んでいる。このため、現在時刻t
0において検出されたドップラースペクトル幅は、時刻t
-3において検出されたドップラースペクトル幅に比べ広くなり、移動速度の推定値v(t
0)は、v(t
-3)より高くなる。
【0048】
上記の処理において、v(t
0)がα×v(t
-ΔT)を超えると判断されると、更なる信頼性を確認するため、速度推定値v(t
0)とΔT後の速度推定値v(t
ΔT)との比較を行う。速度推定値の比較において、速度推定値v(t
ΔT)と速度推定値v(t
0)を係数αで重み付けした速度とを比較する。即ち、v(t
ΔT)>α×v(t
0)であるかを判定する。αは、1.3程度を想定するが、これに制限されるものではない。また、ΔT前の速度推定値との比較において用いたαと同じ値とすることも、異なる値とすることもできる。
【0049】
v(t
ΔT)がα×v(t
0)を超える場合、時刻t
0〜t
ΔTにおいて、t
-ΔT〜t
0に継続して、車が加速中であることが想定される。この場合、時刻t
0における速度推定値v(t
0)の信頼性があると判断され、時刻t
0における速度推定値としてv(t
0)がそのまま使用される。
【0050】
一方、時刻t
0において周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分が発生したことにより、速度推定値v(t
0)が増加した後、時刻t
ΔTにおいてそのドップラースペクトル成分が消滅した場合、速度推定値は減少する。このため、v(t
ΔT)はα×v(t
0)より小さくなる。この場合、時刻t
0における速度推定において、周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分の影響があったものと判断し、速度推定値v(t
0)をΔT前の速度推定値v(t
-ΔT)に設定する。
【0051】
図8の例では、現在時刻t
0におけるドップラースペクトルP(t
0)の算出において、端末単体のドップラースペクトルに加えて、周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分が存在している。このため、移動速度の推定値v(t
0)も高くなる。一方、ΔT後である時刻t
3において、周辺移動散乱体によるドップラースペクトル成分は消滅し、端末単体によるドップラースペクトルのみ残っている。このため、速度推定値v(t
3)は、α×v(t
0)より小さくなる。この場合、時刻t
0において、周辺移動散乱体による影響があったと判断し、現在時刻の速度推定値v(t
0)は、v(t
-3)に設定される。
【0052】
図9に上記処理のフローチャートを示す。これは、
図4に示されるフローチャートのS17の後に行われるものである。
【0053】
図9のS21において、現在時刻t
0におけるドップラースペクトル幅の算出から、移動速度v(t
0)の推定を行う。S22において、移動速度推定値v(t
0)の信頼性を検証するため、ΔT前の移動速度推定値v(t
-ΔT)に係数αを掛けた速度との比較を行う。v(t
0)がα×v(t
-ΔT)以下の場合、時刻t
0において、周辺移動散乱体の影響がなく、時刻t
-ΔTから速度が維持されているか減速中であると判断し、S25において、v(t
0)= v(t
0)と設定する。
【0054】
S22において、v(t
0)がα×v(t
-ΔT)を超える場合、S23において、ΔT後の移動速度推定値v(t
ΔT)とv(t
0)に係数αを掛けた速度との比較を行う。v(t
ΔT)がα×v(t
0)を超える場合、時刻t
-ΔTからt
ΔTにかけて端末が加速中であり、周辺移動散乱体の影響がないと判断し、S24において、v(t
0)= v(t
0)と設定する。これに対し、v(t
ΔT)がα×v(t
0)以下の場合、時刻t
0において、周辺移動散乱体の影響があったと判断し、S26において、v(t
0)= v(t
-ΔT)と設定する。
【0055】
図10は、本発明の装置構成を簡単に説明するブロック図である。このような構成は、基地局側、端末側のどちらにも設置することができ、両局のどちらにおいても、最大ドップラー周波数の測定を可能にする。
【0056】
図10において、30は信号受信部、31は受信信号電力測定部、32はFFT、33は信号選択部、34は最大ドップラー周波数算出部、35は端末速度推定部、36はバッファ、37は端末速度比較部を表す。信号受信部30は、無線通信を行う送信側局からの信号を受信し、受信信号の中から参照信号を取り出す。参照信号の挿入方法は、システムにより規定される。受信信号電力測定部31は、受信した参照信号をベースバンド信号に変換し、復調した後、受信電力を測定して、受信信号の伝搬路の時間変動データを生成する。受信信号電力測定部31は、伝搬路推定の一部として実装することも可能である。FFT 32は、伝搬路の時間変動データにFFTを掛けて、ドップラースペクトルを算出する。信号選択部33は、ドップラースペクトルの中より、最大ドップラー周波数を算出するために使用する成分を選択する。
図4のフローチャートにおいて、信号選択部33は、しきい値を設定し、有効成分中の最大周波数の成分と最小周波数の成分を選択する。最大ドップラー周波数算出部34は、信号選択部33で選択された成分の周波数から、最大ドップラー周波数を算出する。
図4の例において、2つの周波数の成分からドップラースペクトル幅を算出し、その半値を最大ドップラー周波数とする。端末速度推定部35は、検出された最大ドップラー周波数より、端末の移動速度を算出する。バッファ36は算出された端末の移動速度を所定期間保存する。端末速度比較部37は、現在時刻に算出された移動速度とバッファ36に保存されるΔT時間前の移動速度を比較する。あるいは、ΔT時間後において、バッファ36に保存される現在時刻の移動速度とΔT時間後の移動速度を比較する。