【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、膨張体の片側から反対側への熱放射伝播が改善された緩和手段を有する膨張体に関する。この緩和改善手段は、少なくとも1つの選択式に結合され、間隔が開けられた内部熱放射防御体を含んでおり、以下で説明するような特定の環境条件においては有用性がないかも知れないものの、膨張体のための熱性能において期待以上の効果を提供する。
【0009】
ここで使用する用語「膨張体」とは、あらゆる形態の収縮崩壊/膨張可能な流体保持構造体のことであり、自己膨張式であろうがなかろうが、少なくとも部分的にて、実質的に流体不透過性包囲体を提供し、包囲体内部の引張手段によって互いに選択的に結合されている(別々の部材、または複数の部材あるいは複数の部材のシステムによって、直接的であるか否かを問わず)。すなわち、その結合は包囲体内で行われている第1側部と第2側部(別々のシートあるいはパネル、または1枚のシートまたはパネルによって形成されているか否かを問わず)を含んでいるものである。両側部のこの選択的結合は、本願の出願人が製造するTHERM−A−RESTマットレスのごとき、実質的に両側部に接着された開孔発泡コア部に依存する従来の自己膨張体で見られる実質的に共延伸結合構造を有した膨張体のものとは異なる。本発明の実施態様の膨張体は膨張すると両側部を相互分離または相対移動させるが、両側部にわたる分離または移動の程度は均質ではなく、各側部の非選択的に結合された部分は選択結合位置を含んだ仮想平面から膨張する。その結果、側部は両側部が結合していない表面立体形状部または突起部を有することになる。本発明の実施態様による膨張体の第1側部および第2側部を、包囲体に面した内面と、外気に面した外面とをそれぞれ有したパネルとすることができる。
【0010】
いくつかの本発明の実施態様で利用される収縮可能なセルマトリックスコア部は、反復幾何模様(“行”)を共同で提供するように形状化あるいは結合されている複数のほぼ同形状である区画部(複数の中空開端角柱(プリズム)形状体であり、それぞれ主軸を有する)を含んでいる。これら角柱形状体の主軸は膨張体の周辺部分に対して略垂直であり、マトリックスの選択部分(“結合位置”)は両側部のパネルの内側面に直接的または間接的に接着されており、このマトリックスは膨張体の引張手段として機能する。
【0011】
本発明の多数の実施態様では、複数の略三角形の中空開端角柱形状体はセルマトリックスを含み、少なくとも一部の角柱形状体(全部の角柱形状体ではない)のそれぞれは、スパン(紡糸)または不織フィラメントによるバッティング(断熱加工)のごとき2部分の波形フィルムまたは薄シート材料と、スパンまたは不織フィラメントバッティングのごとき略平坦フィルムまたは薄シート材料の1部分の波形フィルムまたは薄シート材料で提供される。従って、マトリックスの外側行は一般的に“V”形状溝に類似した開口空間を交互に含んだ三角柱形状体を含んでいる。言い換えると、視覚的には、この形状物は任意の外側行においてWWWWWの形状となる。従来の技術では、結合位置を構成する外向頂点がそこに接着されると、膨張体の包囲体を形成する対向パネルは“V”形状溝に蓋をするか閉鎖し、外側行の他の角柱形状体の実質的にそれぞれに対して第3の壁を構築した。
【0012】
第1シリーズの本発明の実施態様においては、ここで言及するセルマトリックスを含んだ膨張体は、ここで解説するような熱放射伝播を緩和するために少なくとも1つの手段を備える。このシリーズ内の複数のグループを形成する種々な実施態様の熱放射防御手段は、マトリックスと、隣接する膨張体のパネルとの中間に提供された少なくとも1つのフィルムを基礎とした熱放射防御体とを含んでいる。それぞれのそのような中間熱放射防御体は、好適には、膨張体の任意の他の従来部材、すなわち、非特殊化部材または非金属化部材よりもさらに大きなエネルギー反射性能を有する。
【0013】
セルマトリックスとパネルとの間のこの中間位置のため、中間熱放射防御体(複数の中間熱放射防御体の場合には最内側の防御体)は、従来のセルマトリックスを基礎とする膨張体の(場合によっては)隣接または近接パネルではなく、少なくともいくつかの三角中空開端角柱形状体の第3壁部を提供するように機能する。いずれにしろ、このセルトリックスの結合位置とパネルの結合位置との間の整合状態に変化はない。
【0014】
このシリーズ内の様々な本発明の実施態様に関する以下の説明は、中間熱放射防御体と隣接パネルとの間に好適な空間関係を提供するが、熱放射伝播を緩和する実際の手段は、そのような空間関係の重要な結果を要求するだけである。すなわち、膨張体の膨張によって発生する、防御体とパネルとの間における実際または潜在的な空間または空隙の創出を要求するだけである。従って、パネルと中間熱放射防御体との間の空間または空隙が膨張体の膨張後に発生するなら、中間熱放射防御体上の隣接結合位置間の少なくとも1方向における距離は、隣接パネルの対応する結合位置間の距離と同じである。このような結果は、膨張によるセルマトリックスの変形及び/又はマトリックスとパネルの機械的特性の相違、並びに重力配向性に対応して発生するであろう。
【0015】
よって、このシリーズ内の第1グループの発明実施態様は、セルマトリックスと隣接膨張体パネルとの間に提供される1つの中間熱放射防御体を含んでおり、中間熱放射防御体での隣接結合位置間の少なくとも1つの方向における距離は、パネル上の対応結合位置間の距離よりも短い。この構成の結果として、膨張体が膨張すると、中間熱放射防御体は引張状態となり、パネルは押圧され、結合位置を含む仮想平面から膨張し、自身と中間熱放射防御体との間で空間または空隙を形成する。この相対移動は膨張体の膨張によるものであるため、空間または空隙の形成は空間配向性とは無関係である。言い換えると、膨張体のパネルはマットレスのごとき膨張体の上方パネルまたは下方パネルである得る。さらに、このような可撓性は自身を膨張体のそれぞれのマトリックスとパネルの境界部で中間熱放射防御体として利用させる。
【0016】
上記の実施態様の別形態は、少なくとも1つの方向で、パネルにおける対応結合位置間の距離よりも大きい中間熱放射防御体における隣接結合位置間の距離を有する。この構成の結果、パネルが膨張体の膨張による等で引張状態になっても中間熱放射防御体は緩んだままであり、少なくとも部分的に隣接パネルから移動可能または分離可能となり、それらの間に空間または空隙が形成される。しかし、この別形態例の構成における空間または空隙の形成能力は、重力が実質的に影響を及ぼす可能性があるので、空間配向性によってさらに大きく影響を受ける。
【0017】
約1.0である光学密度を有した金属化ポリマーフィルムが、これら第1シリーズの実施態様において熱放射伝播を緩和する手段を含むとき、試験によって、約+R−1の膨張体の熱性能の増加が認められた。この構成が膨張体の反対側部でも与えられると、約R−1の追加利得が実現した。これら構成の追加の利点は追加的な膨張体の区画化の提供であり、これによって、対流による熱移動がさらに緩和される。
【0018】
このシリーズの第2グループの本発明の実施態様では、複数の中間熱放射防御体が、セルマトリックスと膨張体パネルとの間に提供される。それぞれの追加中間熱放射防御体は、前記の中間熱放射防御体の内側(セルマトリックス側)に提供され、前記の中間熱放射防御体において考察されたように、同一方向の隣接結合位置間の距離は、前記の中間熱放射防御体の対応結合位置間の距離よりは小さい(または大きい)。この構成および第1実施態様の結果、最内側の中間熱放射防御体(セルマトリックスに直接的に結合した防御体)は膨張体の膨張等によって引張状態となり、パネルは押圧され、結合位置を含んだ仮想平面から膨張し、自身と中間熱放射防御体との間で空間または空隙を形成する。最内側の熱放射防御体とパネルとの間のこれら中間熱放射防御体は、最内側の熱放射防御体とパネルの両方から少なくとも部分的に移動可能または分離可能となる。上述の別例による実施態様の膨張からも同様な結果が得られる。
【0019】
上述のごとく、対流による熱移動を緩和する、これら第2グループの構成を含んだ膨張体の増加した区画化に加えて、隣接中間熱放射防御体のフィルム間での空間または空隙の創出は、熱伝導及び/又は微小対流により発生する可能性がある熱移動を実質的に減少させる。この結果、膨張体の“金属化”を単に増加させるだけで、熱性能に関する値が進行的に低下するということが少なくとも部分的に説明できる。
【0020】
本発明の実施態様の第2シリーズでは、ここで説明した膨張体で使用されるタイプのセルマトリックスは、ここで説明した熱放射伝播を緩和する少なくとも1つの手段を備える。このシリーズの様々な実施態様の熱放射防御手段は、セルマトリックスの部分を形成する2行の三角中空開端角柱形状体の中間に提供された少なくとも1つのフィルムを基礎とした熱放射防御体を含んでいる。第1シリーズの第1グループの場合と同様に、この第2シリーズの第1グループは、存在する要素の交換及び/又は補強ではなく、追加の要素を膨張体に提供することを求める。従って、好適にはフィルムを基礎とした熱放射防御体である本発明の熱放射緩和手段は、スパンまたは不織フィラメントのバッティングのごとき存在する略平坦フィルムまたは薄シート材料、2行の角柱形状体の中間にある自身、および隣接行の角柱形状体の間に提供されている。また、第1シリーズの第1グループの場合と同様に、この熱放射防御体は、代わりに、少なくともいくつかの三角中空開端角柱形状体の第3壁を、存在する実質的に平坦なフィルムまたはシートに関して提供するように機能する。その結果、ある行の角柱形状体の中で隣接する行の角柱形状体と共通包囲壁を共有するものは存在しない。
【0021】
角柱形状体の行間には共通の包囲壁が存在しないため、空間または空隙をこれら2つの行内要素間に提供することが可能であり、好適であると考えられている。特に、存在する実質的に平坦なフィルムまたはシート自体が熱放射伝播を緩和するものであるなら、さらに好適であると考えられる。よって、少なくとも1方向における、中間熱放射防御体での隣接結合位置間の距離は、好適には存在する実質的に平坦なフィルムまたはシートの対応結合位置間の距離よりも小さいが、大きくともよい。もし、存在する実質的に平坦なフィルムまたはシートがフィルム状ではないことが最良であると特徴付けられたら、等しい距離も2種の材料間の異なる機械的特性によって本発明の範囲内であると考えられる。
【0022】
最後に、第3のシリーズの本発明実施態様は最初の2つのシリーズの構成を組み合わせたものであり、現在において好適であると考えられる実施態様を提供する。特に、このシリーズの膨張体は、セルマトリックスと両方の対向パネルとの中間、および2行の三角中空開端角柱形状体の中間で熱放射伝播を緩和する熱放射防御手段を備えたセルマトリックスを有している。試験によって、約2.5インチ(約6.25cm)の厚みを有し、これら修正を含んだ膨張体は熱絶縁値が約R−4.9であることが示されている。比較すると、2インチ(約5.0cm)厚で0.9の密度の開孔ポリウレタン発泡体を含んだ従来の膨張マットレスは同様な“R”値を有するが、ほぼ5倍の重量があり、収納のために手で圧縮されると約1/4になる。存在する略平坦フィルムまたは薄シート材料は、中間熱放射防御体と同じであるか、または類似する熱放射伝播の緩和特性を有すると特徴付けができ、その熱絶縁値は約R−5.7に増加する。
【0023】
ここで記述されている膨張体はキャンプ用マットレスに限定されず、その重要な特徴の多くを利用できる、例えば熱制御、コンパクト収納、利用容易性(膨張性)、軽量および構造安定性を利用できる任意の適用形態において活用できる。ポータブル構造物、またはテント、腰掛、光除け、断熱ボックスまたは容器、水冷および加熱システム、寒冷地着衣、寝袋および就寝システム、並びに衝撃または衝突緩和システムにおける利用も可能である。
【0024】
本明細書で使用される用語である“領域”、“境界”、“部位”、“部分”、“表面”、“区域”およびそれらの同義語、均等語および複数形は、本発明の説明を目的とした例用であり、本発明を限定するものではない。