特許第6239679号(P6239679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239679熱放射伝播に対する改善された抵抗力を備えた膨張体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239679
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】熱放射伝播に対する改善された抵抗力を備えた膨張体
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/08 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   A47C27/08 Z
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-89427(P2016-89427)
(22)【出願日】2016年4月27日
(62)【分割の表示】特願2013-550652(P2013-550652)の分割
【原出願日】2012年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-172015(P2016-172015A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年5月13日
(31)【優先権主張番号】61/461,808
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501055031
【氏名又は名称】キャスケイド デザインズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・マーソン
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ジャコット
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/094208(WO,A2)
【文献】 米国特許第03286285(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/08−27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張体であって、
少なくとも部分的に、実質的に流体不透過性である包囲体を提供するように、共通の周辺部で実質的に相互接着された第1および第2の実質的に対向する側部パネルと、
前記包囲体内に提供され、中空開端角柱形状体を含んだ少なくとも2つの行を有したセルマトリックスと、を含んでおり、それぞれの前記角柱形状体は主軸を有し、反復的幾何模様を提供し、結合位置を有した平坦部材によって分離されており、
前記角柱形状体の主軸は前記包囲体の周辺に対して略垂直であり、前記セルマトリックスの部分は結合位置にて前記対向側部パネルの内面に直接的または間接的に接着されており、前記セルマトリックスは、前記膨張体のために引張手段として機能し、
当該膨張体は、少なくとも1つの熱放射伝播緩和要素をさらに含んでおり、前記少なくとも1つの熱放射伝播緩和要素は、前記膨張体が膨張状態にあるとき、前記セルマトリックスを除く空気で満たされたチャンバを提供するために、前記平坦部材に直接に結合されていることを特徴とする、膨張体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの熱放射伝播緩和要素は、前記セルマトリックスと隣接側部パネルとの間に提供された1つの中間熱放射防御体を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の膨張体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの熱放射伝播緩和要素は、前記セルマトリックスと第1の隣接側部パネルとの間に提供された第1の中間熱放射防御体と、前記セルマトリックスと第2の隣接側部パネルとの間に提供された第2の中間熱放射防御体と、を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の膨張体。
【請求項4】
前記第1および第2の側部パネルは対向していることを特徴とする、請求項3に記載の膨張体。
【請求項5】
当該膨張体が膨張状態にあるとき、側部パネルの結合位置間の距離は、中間熱放射防御体の結合位置間の距離とは異なることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の膨張体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ここで開示する熱性能データは4℃に保たれた温度管理されている試験容器を使用して得られたものであり、試験容器の内部には従来の膨張体および本発明に従って構成された複数の膨張体が収容され、それら膨張体は、一方側で絶縁熱源(コンピュータにリンクされた3領域保護熱板)に曝され、他方側で放熱部(コンピュータにリンクされた複数の温度プローブを備えた大型アルミ板)が管理された外部環境に曝された。対象のマットレスの熱性能は、一定の温度33.3℃に熱源を維持し、周囲温度に放熱部を維持するのに必要な電力量を測定することで確定された。一旦、安定状態が得られたら、この安定状態を維持するのに必要な電力量は、熱源から対象マットレスを通過して放熱部に入り、最終的には環境内に放出される熱エネルギーと関連付けられた。このようにして熱透過伝播率を表す相当電力値が決定可能であった。
【0002】
これら試験は、対面パネルに共延伸的に接着された膨張ポリウレタン発泡体で成るコア部を含んだ従来の膨張体が、1インチ(約2.5cm)厚のコア部では熱絶縁値(断熱価)がR種値で約R−3、2インチ(約5.0cm)厚コア部では約R−5、および3インチ(約7.5cm)厚コア部では約R−7を有することを示した。さらに、これら試験は、ここで言及するタイプのポリマーフィルムで製造されたとき、約2.5インチ(約6.25cm)厚で、バッフルを使用していない空気マットレスのごとき従来の膨張体が約R−1の熱絶縁値を有していることも示した。そのような膨張体の“上方”部分および“下方”部分を区画化するために従来フィルムを使用した分断バッフルを導入することによって熱絶縁値を約R−2に倍増することができ、熱対流による熱損失を大きく低減させた。
【0003】
しかしながら、そのような非発泡体コア部で成る膨張体のために追加の実質的な熱絶縁利得が望まれるなら、熱対流以外の熱移動形態にも対処することが必要になる。なぜなら、そのようなマットレスにおいては、熱伝導はさほどの影響を及ぼさないので、残る熱移動形態は熱放射伝播である。この熱移動を緩和(低減)するため、従来技術で教示されているように、前述したバッフル型膨張体の金属化(表面金属加工)されていないバイセクト(二分)フィルムの代用として、金属化されたポリマーバイセクトフィルムを利用できる。この代用の結果、フィルムが1.0の光学密度を有しているときには、熱絶縁性能が約1の追加“R”種値、例えば、約R−3に増加する。
【0004】
国際公開番号WO2009094208A2は、種々な材料で成るセルマトリックスコア部を有した膨張体を開示する。マトリックスコア部の一部の成分を、金属化フィルム及び/又は存在する材料(平面状、波形状またはパネル状)の金属化されたものと交換することで、そのような膨張体の熱放射伝播を介した熱移動を緩和するための可能な手段が提供される。この公開文献は、そのような交換または処理に関して一切詳細を開示あるいは暗示しないが、それは4ページ上で適合性がある接着面条件に関する問題点を特定している。しかし、その文献は接着先となる膨張体構造に関して詳細は提供していない。加えて、熱放射伝播を介した熱移動を緩和するために、12ページから13ページにかけて開示されている「発明の好適実施例は、蛇行または波形シートとしての、少なくとも1つの不織材料またはバッティングタイプ(断熱材を含んだ)の材料が選択式に接着された発泡平坦シートと、好適にはその内側面に放射熱移動緩和処理が施された少なくとも1つの包囲体パネルとを含んでいる」こと以外に、どの形態のものが好適であるか、あるいはさらに効果的であるかを一切開示していない。
【0005】
しかし、試験によって、WO2009094208A2で言及されている膨張体のセルマトリックスコア部を封入する可撓性パネルの単純な金属化は、期待された程度の熱性能の改善を実現せず、不織波形材料の金属化であっても期待された改善をもたらさないことが示された。分岐された金属化されていないフィルムを、約1.0である光学密度を有した金属化ポリマーフィルムで置換することによって、基礎の膨張マットレスにおいて約+R−1の増加がもたらされるが、約2.0の光学密度を有した追加分岐金属化ポリマーフィルムを追加しても熱性能は数十%程度の増加(2枚のフィルムでは+R−0.6であり、3枚のフィルムでは+R−0.8)のみであった。
【0006】
前記データが示すように、膨張体内で膨張した発泡コア部の厚みを徐々に増加させることで、膨張した発泡コア部に特有な複数の熱緩和様相によって、熱性能においてほぼ直線的に改善がなされる。しかし、そのような膨張体または実質的に開いたコア膨張体の単純な“金属化”は必ずしも類似した性能改善をもたらさない。さらに、そのような膨張体への金属及び/又は金属化された材料の組み入れは、金属化フィルム及び/又は処理材料による熱伝導のために膨張体の熱性能全般を低減させるかも知れず、また、必然的に膨張体の重量が増加する。その結果、“1つが良ければ、2つ以上であればさらに良いに違いない”という考えは必ずしも真ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開公報WO2009094208A2
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、膨張体の片側から反対側への熱放射伝播が改善された緩和手段を有する膨張体に関する。この緩和改善手段は、少なくとも1つの選択式に結合され、間隔が開けられた内部熱放射防御体を含んでおり、以下で説明するような特定の環境条件においては有用性がないかも知れないものの、膨張体のための熱性能において期待以上の効果を提供する。
【0009】
ここで使用する用語「膨張体」とは、あらゆる形態の収縮崩壊/膨張可能な流体保持構造体のことであり、自己膨張式であろうがなかろうが、少なくとも部分的にて、実質的に流体不透過性包囲体を提供し、包囲体内部の引張手段によって互いに選択的に結合されている(別々の部材、または複数の部材あるいは複数の部材のシステムによって、直接的であるか否かを問わず)。すなわち、その結合は包囲体内で行われている第1側部と第2側部(別々のシートあるいはパネル、または1枚のシートまたはパネルによって形成されているか否かを問わず)を含んでいるものである。両側部のこの選択的結合は、本願の出願人が製造するTHERM−A−RESTマットレスのごとき、実質的に両側部に接着された開孔発泡コア部に依存する従来の自己膨張体で見られる実質的に共延伸結合構造を有した膨張体のものとは異なる。本発明の実施態様の膨張体は膨張すると両側部を相互分離または相対移動させるが、両側部にわたる分離または移動の程度は均質ではなく、各側部の非選択的に結合された部分は選択結合位置を含んだ仮想平面から膨張する。その結果、側部は両側部が結合していない表面立体形状部または突起部を有することになる。本発明の実施態様による膨張体の第1側部および第2側部を、包囲体に面した内面と、外気に面した外面とをそれぞれ有したパネルとすることができる。
【0010】
いくつかの本発明の実施態様で利用される収縮可能なセルマトリックスコア部は、反復幾何模様(“行”)を共同で提供するように形状化あるいは結合されている複数のほぼ同形状である区画部(複数の中空開端角柱(プリズム)形状体であり、それぞれ主軸を有する)を含んでいる。これら角柱形状体の主軸は膨張体の周辺部分に対して略垂直であり、マトリックスの選択部分(“結合位置”)は両側部のパネルの内側面に直接的または間接的に接着されており、このマトリックスは膨張体の引張手段として機能する。
【0011】
本発明の多数の実施態様では、複数の略三角形の中空開端角柱形状体はセルマトリックスを含み、少なくとも一部の角柱形状体(全部の角柱形状体ではない)のそれぞれは、スパン(紡糸)または不織フィラメントによるバッティング(断熱加工)のごとき2部分の波形フィルムまたは薄シート材料と、スパンまたは不織フィラメントバッティングのごとき略平坦フィルムまたは薄シート材料の1部分の波形フィルムまたは薄シート材料で提供される。従って、マトリックスの外側行は一般的に“V”形状溝に類似した開口空間を交互に含んだ三角柱形状体を含んでいる。言い換えると、視覚的には、この形状物は任意の外側行においてWWWWWの形状となる。従来の技術では、結合位置を構成する外向頂点がそこに接着されると、膨張体の包囲体を形成する対向パネルは“V”形状溝に蓋をするか閉鎖し、外側行の他の角柱形状体の実質的にそれぞれに対して第3の壁を構築した。
【0012】
第1シリーズの本発明の実施態様においては、ここで言及するセルマトリックスを含んだ膨張体は、ここで解説するような熱放射伝播を緩和するために少なくとも1つの手段を備える。このシリーズ内の複数のグループを形成する種々な実施態様の熱放射防御手段は、マトリックスと、隣接する膨張体のパネルとの中間に提供された少なくとも1つのフィルムを基礎とした熱放射防御体とを含んでいる。それぞれのそのような中間熱放射防御体は、好適には、膨張体の任意の他の従来部材、すなわち、非特殊化部材または非金属化部材よりもさらに大きなエネルギー反射性能を有する。
【0013】
セルマトリックスとパネルとの間のこの中間位置のため、中間熱放射防御体(複数の中間熱放射防御体の場合には最内側の防御体)は、従来のセルマトリックスを基礎とする膨張体の(場合によっては)隣接または近接パネルではなく、少なくともいくつかの三角中空開端角柱形状体の第3壁部を提供するように機能する。いずれにしろ、このセルトリックスの結合位置とパネルの結合位置との間の整合状態に変化はない。
【0014】
このシリーズ内の様々な本発明の実施態様に関する以下の説明は、中間熱放射防御体と隣接パネルとの間に好適な空間関係を提供するが、熱放射伝播を緩和する実際の手段は、そのような空間関係の重要な結果を要求するだけである。すなわち、膨張体の膨張によって発生する、防御体とパネルとの間における実際または潜在的な空間または空隙の創出を要求するだけである。従って、パネルと中間熱放射防御体との間の空間または空隙が膨張体の膨張後に発生するなら、中間熱放射防御体上の隣接結合位置間の少なくとも1方向における距離は、隣接パネルの対応する結合位置間の距離と同じである。このような結果は、膨張によるセルマトリックスの変形及び/又はマトリックスとパネルの機械的特性の相違、並びに重力配向性に対応して発生するであろう。
【0015】
よって、このシリーズ内の第1グループの発明実施態様は、セルマトリックスと隣接膨張体パネルとの間に提供される1つの中間熱放射防御体を含んでおり、中間熱放射防御体での隣接結合位置間の少なくとも1つの方向における距離は、パネル上の対応結合位置間の距離よりも短い。この構成の結果として、膨張体が膨張すると、中間熱放射防御体は引張状態となり、パネルは押圧され、結合位置を含む仮想平面から膨張し、自身と中間熱放射防御体との間で空間または空隙を形成する。この相対移動は膨張体の膨張によるものであるため、空間または空隙の形成は空間配向性とは無関係である。言い換えると、膨張体のパネルはマットレスのごとき膨張体の上方パネルまたは下方パネルである得る。さらに、このような可撓性は自身を膨張体のそれぞれのマトリックスとパネルの境界部で中間熱放射防御体として利用させる。
【0016】
上記の実施態様の別形態は、少なくとも1つの方向で、パネルにおける対応結合位置間の距離よりも大きい中間熱放射防御体における隣接結合位置間の距離を有する。この構成の結果、パネルが膨張体の膨張による等で引張状態になっても中間熱放射防御体は緩んだままであり、少なくとも部分的に隣接パネルから移動可能または分離可能となり、それらの間に空間または空隙が形成される。しかし、この別形態例の構成における空間または空隙の形成能力は、重力が実質的に影響を及ぼす可能性があるので、空間配向性によってさらに大きく影響を受ける。
【0017】
約1.0である光学密度を有した金属化ポリマーフィルムが、これら第1シリーズの実施態様において熱放射伝播を緩和する手段を含むとき、試験によって、約+R−1の膨張体の熱性能の増加が認められた。この構成が膨張体の反対側部でも与えられると、約R−1の追加利得が実現した。これら構成の追加の利点は追加的な膨張体の区画化の提供であり、これによって、対流による熱移動がさらに緩和される。
【0018】
このシリーズの第2グループの本発明の実施態様では、複数の中間熱放射防御体が、セルマトリックスと膨張体パネルとの間に提供される。それぞれの追加中間熱放射防御体は、前記の中間熱放射防御体の内側(セルマトリックス側)に提供され、前記の中間熱放射防御体において考察されたように、同一方向の隣接結合位置間の距離は、前記の中間熱放射防御体の対応結合位置間の距離よりは小さい(または大きい)。この構成および第1実施態様の結果、最内側の中間熱放射防御体(セルマトリックスに直接的に結合した防御体)は膨張体の膨張等によって引張状態となり、パネルは押圧され、結合位置を含んだ仮想平面から膨張し、自身と中間熱放射防御体との間で空間または空隙を形成する。最内側の熱放射防御体とパネルとの間のこれら中間熱放射防御体は、最内側の熱放射防御体とパネルの両方から少なくとも部分的に移動可能または分離可能となる。上述の別例による実施態様の膨張からも同様な結果が得られる。
【0019】
上述のごとく、対流による熱移動を緩和する、これら第2グループの構成を含んだ膨張体の増加した区画化に加えて、隣接中間熱放射防御体のフィルム間での空間または空隙の創出は、熱伝導及び/又は微小対流により発生する可能性がある熱移動を実質的に減少させる。この結果、膨張体の“金属化”を単に増加させるだけで、熱性能に関する値が進行的に低下するということが少なくとも部分的に説明できる。
【0020】
本発明の実施態様の第2シリーズでは、ここで説明した膨張体で使用されるタイプのセルマトリックスは、ここで説明した熱放射伝播を緩和する少なくとも1つの手段を備える。このシリーズの様々な実施態様の熱放射防御手段は、セルマトリックスの部分を形成する2行の三角中空開端角柱形状体の中間に提供された少なくとも1つのフィルムを基礎とした熱放射防御体を含んでいる。第1シリーズの第1グループの場合と同様に、この第2シリーズの第1グループは、存在する要素の交換及び/又は補強ではなく、追加の要素を膨張体に提供することを求める。従って、好適にはフィルムを基礎とした熱放射防御体である本発明の熱放射緩和手段は、スパンまたは不織フィラメントのバッティングのごとき存在する略平坦フィルムまたは薄シート材料、2行の角柱形状体の中間にある自身、および隣接行の角柱形状体の間に提供されている。また、第1シリーズの第1グループの場合と同様に、この熱放射防御体は、代わりに、少なくともいくつかの三角中空開端角柱形状体の第3壁を、存在する実質的に平坦なフィルムまたはシートに関して提供するように機能する。その結果、ある行の角柱形状体の中で隣接する行の角柱形状体と共通包囲壁を共有するものは存在しない。
【0021】
角柱形状体の行間には共通の包囲壁が存在しないため、空間または空隙をこれら2つの行内要素間に提供することが可能であり、好適であると考えられている。特に、存在する実質的に平坦なフィルムまたはシート自体が熱放射伝播を緩和するものであるなら、さらに好適であると考えられる。よって、少なくとも1方向における、中間熱放射防御体での隣接結合位置間の距離は、好適には存在する実質的に平坦なフィルムまたはシートの対応結合位置間の距離よりも小さいが、大きくともよい。もし、存在する実質的に平坦なフィルムまたはシートがフィルム状ではないことが最良であると特徴付けられたら、等しい距離も2種の材料間の異なる機械的特性によって本発明の範囲内であると考えられる。
【0022】
最後に、第3のシリーズの本発明実施態様は最初の2つのシリーズの構成を組み合わせたものであり、現在において好適であると考えられる実施態様を提供する。特に、このシリーズの膨張体は、セルマトリックスと両方の対向パネルとの中間、および2行の三角中空開端角柱形状体の中間で熱放射伝播を緩和する熱放射防御手段を備えたセルマトリックスを有している。試験によって、約2.5インチ(約6.25cm)の厚みを有し、これら修正を含んだ膨張体は熱絶縁値が約R−4.9であることが示されている。比較すると、2インチ(約5.0cm)厚で0.9の密度の開孔ポリウレタン発泡体を含んだ従来の膨張マットレスは同様な“R”値を有するが、ほぼ5倍の重量があり、収納のために手で圧縮されると約1/4になる。存在する略平坦フィルムまたは薄シート材料は、中間熱放射防御体と同じであるか、または類似する熱放射伝播の緩和特性を有すると特徴付けができ、その熱絶縁値は約R−5.7に増加する。
【0023】
ここで記述されている膨張体はキャンプ用マットレスに限定されず、その重要な特徴の多くを利用できる、例えば熱制御、コンパクト収納、利用容易性(膨張性)、軽量および構造安定性を利用できる任意の適用形態において活用できる。ポータブル構造物、またはテント、腰掛、光除け、断熱ボックスまたは容器、水冷および加熱システム、寒冷地着衣、寝袋および就寝システム、並びに衝撃または衝突緩和システムにおける利用も可能である。
【0024】
本明細書で使用される用語である“領域”、“境界”、“部位”、“部分”、“表面”、“区域”およびそれらの同義語、均等語および複数形は、本発明の説明を目的とした例用であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、セルマトリックスの形態の引張手段を備えた従来技術による膨張体の斜視図であり、対向パネルはそのマトリックスを含んだ複数の三角中空開端角柱形状体を形成している。
図2図2は、本発明による第1シリーズの実施例の膨張体の斜視図であり、中間熱放射防御体はセルマトリックスとパネルとの間に提供されている。
図3図3は、図2の実施例の派生体の斜視図であり、第2の中間熱放射防御体がセルマトリックスと反対側パネルとの間に提供されている。
図4図4は、本発明による第2のシリーズの実施例の特徴を採用している図3の実施例の派生体の斜視図であり、第3の中間熱放射防御体がセルマトリックス内で角柱形状体の行間に提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
序文:図面のリード線の端は、構造物または方法、ここで説明される指定物または特色に関係するとき、そのような対象物あるいは方法の解説に関して、そのような構造物または方法、指定物あるいは特色を図面で特定および関連付けるものである。図面および明細書において特に明確に記載または図示されていない限り、言及される対象物または方法の境界を限定することは意図されていない。また、図面および明細書において特に明確に記載または図示されていない限り、全ての説明内容および図面は通常の意味合いで解釈されるものである。
【0027】
以下の説明は、当該技術の専門家に請求項の発明を実施させるように提供されている。説明されている実施例の様々な改良および変更は、当該技術の専門家には容易に着想できるものであり、ここで開示する発明の原理は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および利用形態に適用可能である。よって、請求項の発明は、開示及び/又は説明した実施例に限定されず、ここに開示する原理と特徴の最も広い範囲が適用されるべきものである。
【0028】
以下においていくつかの実施例を解説する。まず図1を説明する。従来技術による膨張マットレス10は、外側パネル20aと20b、平坦または分岐部材30および波形あるいは蛇行部材40aと40bを有している。これら部材は角柱形状体50を構成し、全体で行Iと行IIを形成する。それぞれの角柱形状体50はさらに3つの結合位置を含む。交互に、2つはパネル20aまたは20bとの結合用であり、1つは部材30との結合用である。あるいは、1つはパネル20aまたは20bとの結合用であり、2つは部材30との結合用である。これら結合位置は前述のパネルおよび部材での相補的結合位置に対応する。
【0029】
図2は本発明の1実施例によるマットレス10の改良版を図示する。改良マットレス100は中間熱放射防御体60bを含む。これは行IIとパネル20bとの間に提供される。図示のように、パネル20bの結合位置間の距離は、熱放射防御体60bの結合位置間の距離よりも長いため、空間または空隙70bを形成する。
【0030】
図3は、本発明の別実施例のマットレス100をさらに改良したものを図示する。改良マットレス200は中間熱放射防御体60aを含む。これは行Iとパネル20aとの間に提供される。図示のように、パネル20aの結合位置間の距離は、熱放射防御体60aの結合位置間の距離よりも大きいため、空間または空隙70aを形成する。
【0031】
最後に、図4は、本発明の別実施例の改良マットレス200をさらに改良したものを図示する。改良マットレス300は中間熱放射防御体60cを含む。これは平坦または分岐部材30と、行Iの波形あるいは蛇行部材40aとの間に提供される。図示のように、平坦または分岐部材30の結合位置間の距離は、熱放射防御体60cの結合位置間の距離よりも小さいため、空間または空隙70cを形成する。
なお、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、以下にそのまま付記しておく。
[1]
膨張体であって、
少なくとも部分的に、実質的に流体不透過性である包囲体を提供するように、共通の周辺部で実質的に相互接着された第1および第2の実質的に対向する側部パネルと、
前記包囲体内に提供され、中空開端角柱形状体を含んだ少なくとも2つの行を有したセルマトリックスと、を含んでおり、それぞれの前記角柱形状体は主軸を有し、反復的幾何模様を提供し、結合位置を有した平坦部材によって分離されており、
前記角柱形状体の主軸は前記包囲体の周辺に対して略垂直であり、前記セルマトリックスの部分は結合位置にて前記対向側部パネルの内面に直接的または間接的に接着されており、前記セルマトリックスは、前記膨張体のために引張手段として機能し、
当該膨張体は、熱放射伝播を緩和する少なくとも1つの手段をさらに含んでいることを特徴とする、
膨張体。
[2]
熱放射伝播を緩和する前記少なくとも1つの手段は、前記セルマトリックスと隣接側部パネルとの間に提供された1つの中間熱放射防御体を含んでいることを特徴とする、
[1]記載の膨張体。
[3]
熱放射伝播を緩和する前記少なくとも1つの手段は、前記セルマトリックスと第1の隣接側部パネルとの間に提供された第1の中間熱放射防御体と、前記セルマトリックスと第2の隣接側部パネルとの間に提供された第2の中間熱放射防御体と、を含んでいることを特徴とする、
[1]記載の膨張体。
[4]
前記第1および第2の側部パネルは対向していることを特徴とする、
[3]記載の膨張体。
[5]
当該膨張体が膨張状態にあるとき、側部パネルの結合位置間の距離は、中間熱放射防御体の結合位置間の距離とは異なることを特徴とする、
[1]から[3]のいずれか1項に記載の膨張体。
[6]
熱放射伝播を緩和する前記少なくとも1つの手段は、前記セルマトリックスの部分を形成する角柱形状体の2行間に提供された1つの中間熱放射防御体を含んでいることを特徴とする、
[1]記載の膨張体。
[7]
前記1つの中間熱放射防御体は、1行の少なくとも一部の角柱形状体の部分を選択的に形成することを特徴とする、
[6]記載の膨張体。
[8]
前記平坦部材の結合位置間の距離は、前記1つの中間熱放射防御体の結合位置間の距離とは異なることを特徴とする、
[6]または[7]記載の膨張体。
図1
図2
図3
図4