特許第6239698号(P6239698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239698
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】メンブラン
(51)【国際特許分類】
   C25B 13/02 20060101AFI20171120BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20171120BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20171120BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20171120BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C25B13/02 301
   H01M8/02 P
   H01M8/10
   H01M4/86 M
   H01B1/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-131858(P2016-131858)
(22)【出願日】2016年7月1日
(62)【分割の表示】特願2012-554418(P2012-554418)の分割
【原出願日】2011年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-20107(P2017-20107A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】1003230.8
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512269535
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、フュエル、セルズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY FUEL CELLS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【弁理士】
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン、デイビッド、ブレアトン、シャーマン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル、イアン、ペッチ
【審査官】 宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−310454(JP,A)
【文献】 特開2007−323938(JP,A)
【文献】 特開2007−250468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00− 9/20
C25B 13/00−15/08
H01M 8/00− 8/02
H01M 8/08− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化メンブランであって、
(i)ポリマーより得られた、平らな強化部材と、及び
(ii)イオン-伝導性物質とを備えてなり、
前記イオン-伝導性物質が、固体の、プロトン-伝導性ポリマーであり、
前記平らな強化部材が、多数の個別のセルを含むハニカム構造を有する多孔性物質であり、
前記各セルの壁が、前記部材の厚さを通して延び、前記イオン-伝導性物質が、前記セル壁に対して浸透しないものであり、
前記平らな強化部材における全ての前記セルが、前記イオン-伝導性物質により満たされたものであり、
前記強化部材の孔隙率(n)(=V/V×100)が、70%超過である(式中、Vはセルボイド(void)体積、Vは平らな強化部材の全体体積である)、強化メンブラン。
【請求項2】
前記プロトン-伝導性ポリマーが、平らな強化部材の厚さ方向において、前記満たされたセルを超えて延び、前記平らな強化部材の少なくとも一面に、強化されない固体プロトン-伝導性ポリマーの層を形成する、請求項1に記載の強化メンブラン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の強化メンブランと、及び
前記強化メンブランの少なくとも一方の側に位置する電気化学的触媒層とを備えてなる、触媒コーティング強化メンブラン。
【請求項4】
請求項1〜の何れか一項に記載の強化メンブランを備えてなる、メンブラン電極組立体。
【請求項5】
請求項による触媒コーティング強化メンブランを備えてなる、メンブラン電極組立体。
【請求項6】
請求項1または2に記載の強化メンブラン、
請求項に記載の触媒コーティング強化メンブラン、或いは
請求項又はに記載のメンブラン電極組立体を備えてなる、燃料電池。
【請求項7】
請求項1または2に記載の強化メンブラン、
請求項に記載の触媒コーティング強化メンブラン、或いは
請求項又はに記載のメンブラン電極組立体を備えてなる、電解槽。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、強化メンブラン(薄膜)に関し、特に燃料電池又は電解槽に用いるのに適した強化メンブランに関する。
【0002】
燃料電池は、電解液により分離された2つの電極を含む電気化学的電池である。水素又はアルコール(例えば、メタノール又はエタノール)のような燃料がアノードに提供され、酸素又は空気のような酸化剤がカソードに提供される。電気化学的反応が電極で発生し、燃料と酸化剤の化学的エネルギーは電気的エネルギーと熱に変換される。アノードでの燃料の電気化学的酸化とカソードでの酸素の電気化学的還元を促進するために電気化学的触媒が用いられる。
【0003】
プロトン交換メンブラン(PEM:Proton Exchange Membrane)燃料電池において、電解液は固体ポリマーメンブランである。このようなメンブランは、電子的には絶縁性であるが、イオン的には伝導性である。PEM燃料電池において、このようなメンブランはプロトン伝導性であり、アノードで発生したプロトンは、メンブランを経てカソードに伝達され、ここでプロトンは酸素と結合して水を形成する。
【0004】
PEM燃料電池の主要材(部材)は、メンブラン電極組立体(MEA)として知られており、基本的に5つの層からなる。中間層は、ポリマーイオン-伝導性メンブランである。イオン-伝導性メンブランの両側には、特定の電気化学的触媒反応のために設計された電気化学的触媒を含む電気化学的触媒層が備えられる。結局、各電気化学的触媒層の近くにガス拡散層が備えられる。ガス拡散層は、反応物が電気化学的触媒層に到達するのを許容しなければならず、電気化学的反応により発生した電流を伝達しなければならない。従って、ガス拡散層は、多孔性であり、電気的に伝導性でなければならない。
【0005】
従来は、MEAが以下で説明する幾つかの方法により形成され得る。
(i)電気化学的触媒層がガス拡散電極を形成するために、ガス拡散層に塗布され得る。2つのガス拡散電極がイオン-伝導性メンブランの両側に位置し、5つの層のMEAを形成するために共にラミネートされ得る。
(ii)前記電気化学的触媒層が触媒コーティングイオン-伝導性メンブランを形成するために、イオン-伝導性メンブランの両面に塗布され得る。次に、ガス拡散層が触媒-コーティングされたイオン-伝導性メンブランの両面に塗布される。
(iii)MEAは電気化学的触媒層で一方の側にコーティングされたイオン-伝導性メンブラン、電気化学的触媒層に隣接するガス拡散層、イオン-伝導性メンブランの他側に形成されたガス拡散電極で形成され得る。
【0006】
一般に、大部分の応用分野で十分なパワーを提供するために、数十又は数百個のMEAsが必要であるので、多重MEAsが燃料電池スタックを形成するように組み立てられる。フィールドフロープレート(field flow plate)がMEAsを分離するために用いられる。前記プレートは、様々な機能(MEAsに反応物を供給、生成物の除去、電気的連結の提供、物理的支持の提供)を行う。
【0007】
PEM燃料電池で用いられる従来のイオン-伝導性メンブランは、一般にスルホン化完全-フッ化ポリマー物質(sulphonated fully-fluorinated polymeric material)(一般に、PFS(perfluorinated sulphonic acid)イオノマーであるとよく言及される)から形成される。このようなイオノマーから形成されたメンブランは、商品名Nafion(商品名:例えば、E.I. DuPont de Nemours and Co.のNR211又はNR212)、Aciplex(商品名:Asahi Kasei)及びFlemion(商品名:Asahi Glass KK)として販売される。他のフッ素化したタイプのメンブランは、商品名FumapemF(例えば、商品名:FuMA-Tech GmbHのF-930又はF-1030)、Solvay Solexis S.p.AのAquivion(商品名)及びGolden Energy Fuel Cell Co.,Ltd.のGEFC-10Nシリーズとして販売されるものを含む。
【0008】
過フッ化(perfluorinated)、及び部分-フッ化(partly-fluorinated)、ポリマー系のイオン-伝導性メンブランの代りに、非フッ化(non-fluorinated)スルホン化又はホスホン酸化(phosphonated)炭化水素ポリマー、及び特にポリアリーレン(polyarylene)ポリマー系のイオン-伝導性メンブランを用いることが可能である。商業的に利用可能なポリマーは、Solvay Advanced PolymersのUdel(商品名)ポリアリーレンスルホン(PSU)とVeradel(商品名)ポリアリーレンエーテルスルホン(PES)、及びVictrex plc.のVictrex(商品名)ポリアリーレンエーテルエーテルケトン(PEEK(商品名))を含む。FuMA-Tech GmbHのFumapem(商品名)P、E及びKタイプ、JSR CorporationのJHYとJEMメンブラン、Toyobo Co.,Ltd.のSPN、及びToray Industries Inc.の開発メンブランのような炭化水素ポリマー系のメンブランも説明される。
【0009】
より高い温度(例えば、150℃〜190℃)で作動するように設計されたPEM燃料電池において、メンブランはポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole)、又はポリマーマトリックス(matrix)のようなリン酸で含浸されたポリマーであり得る。このようなメンブランで製造されたMEAsの例は、BASF Fuel Cell GmbHのCeltec(商品名)-Pシリーズを含む。他のMEAsは、ピリジン(pyridine)形態の構造を作る芳香族ポリエーテルポリマー系のAdvent TPS(商品名)シリーズを含むが、これはAdvent Technologies S. Aのリン酸で含浸されることもあり得る。アリル又はアルキル置換されたポリベンゾイミダゾール(例えば、polybenzimidazole-N-benzylsulfonate)、ポリベンゾオキサゾール(polybenzoxazole)及びポリベンゾチアゾール(polybenzothiazole)のようなポリベンザゾール(polybenzazole)ポリマーが用いられることもあり得る。
【0010】
PFSA又は炭化水素系のイオン-伝導性メンブランは、増加した引裂き抵抗(tear resistance)及び水化(hydration)と脱水(dehydration)での減少した寸法変化(dimensional change)のような改善された機械的性質を提供するための強化部(一般に、メンブラン内に全体的に設置)を含むことができる。用いられている強化部の例は、ノードとフィブリル(fibril)構造を有するウェブ(逆相分離(inverse phase segregation)に引き続くストレッチングにより形成)、電気放射されたウェブ及び不織布ウェブを含む。
好ましい強化部は、US6,254,978、EP0814897及びUS6,110,330で説明されたPTFE(polytetrafluoroethylene)のようなフルオロポリマー(fluoropolymer)の多孔性ウェブ又は繊維、又はPVDF(polyvinylidene fluoride)、又はPEEK又はポリエチレンのような代替物質(これに限定されるものではない)に基づくこともあり得る。
【0011】
しかしながら、たとえ現在使用可能な強化メンブランがMEAで用いられたとき、非強化メンブランを用いるMEAで達成できる寿命に比べて耐久性と作動寿命を向上させることができても、多くの応用分野のために、MEAの耐久性を更に改善させる必要がある。
メンブラン内のピンホールは、作動時に容易に形成されることができ、最新の強化メンブランでこのようなピンホールは、平面上で(x-及びy-)伝播され得、非強化メンブランで更に折り曲げられるが、メンブランとメンブラン電極組立体の失敗につながる。また、最新のメンブランは、z-軸方向による圧縮性に対する抵抗力が不足し、変形と動作スタックで発生する圧縮応力による以降の失敗に再びつながり得る。最新の強化メンブランは、湿潤-乾燥サイクル間の膨張と収縮に損傷しやすいため、膜が薄くなったり、弱い地点で機械的損傷を更に悪化させる。より薄いメンブランであるほど、このような問題は更に顕著なものとなる。
【0012】
本発明の目的は、耐久性に優れ、前述した最新のメンブランの問題を克服する改善された強化メンブラン、特に燃料電池用メンブランを提供することにある。
【0013】
それにより、本発明の第1の側面は、燃料電池に用いるのに適した強化メンブランを提供し、前記強化メンブランは:
(i)金属、炭素、ポリマー又はこれらの複合材で製造された平らな(平坦、平面状の)強化部材、及び
(ii)イオン-伝導性物質を含み、
前記平らな強化部材は、多数の個別の(離散した)セルを含むセル状構造(cellular structure;多孔質構造、細胞状構造)であり、前記各セルの壁は、各セル壁がプロトン伝導性物質が浸透しないように、前記部材の厚さを通して延び、前記プロトン-伝導性物質は、前記平らな強化部材の前記セルを満たすことを特徴とする。
【0014】
前記平らな強化部材は、その厚さ(z-方向)を介して延びるセルを備える多孔性物質であって、一のセルから他のセルまで互いに連結されない。これは、セル間でプロトン-伝導性物質の伝達がないことを意味する。しかしながら、複数の実施例において、セルの壁とストラッツ(struts)は、微細なスケールで多孔性であり得るものと予想される。セル壁のこのような孔隙は、プロトン-伝導性物質による浸透が不可能になるように、十分に微細であるが、水が孔隙を満たせるように十分に親水性を有する。従って、適切な燃料電池において、液体の水が存在する場合に、このような孔隙は、水を強化部の厚さ又は平面を経て水を移動させることができる。
【0015】
セルは、形態的に規則的であるか、不規則的であってもよく、各個別のセルは、適切には10nm〜1.0mmの断面直径を有する。セルは、何れも基本的に類似の大きさであるか、一定の範囲内の大きさであってよい。好適な実施例において、前記平らな強化部材はハニカム構造である。前記平らな強化部材のz-方向の大きさは、1μm〜500μmであり得、好ましくは10μm〜200μmである。正確な大きさは、最終の構造と強化メンブランの用途によって左右される。z-方向への大きさは、当業者が容易に決定できる。
【0016】
前記平らな強化部材の孔隙率は、適切には30%超過、好ましくは50%超過、最も好ましくは70%超過。孔隙率(n)は、式n=V/V×100により計算されるが、ここでnは孔隙率、Vはボイド(void)体積、Vは平らな強化部材の全体体積である。前記ボイド体積と前記平らな強化部材の全体体積は、当業者が知られた方法を用いて決定できる。
【0017】
セル状構造を有する平らな強化部材の例は、押出し及びスライシングにより、又はストリップの部分ラミネーション及び引き続くテンション下の伸張により(例えば、DuPontのNomex(商品名)又はTyvec(商品名))又は他の手段により製造されたもの、その後、カレンダー処理される織物、連続したシート内のスリットを切断し、伸張したメッシュを形成するために、引張応力を加えて製造されたメッシュ、シートの厚さを通して(例えば、レーザにより)パンチされたり、切り取られた孔を備える平らなシート、及び鋳造により製造された多孔性シートを含む。適切には、前記平らな強化部材は、押出し及びスライシングにより、又はストリップの部分ラミネーション及び引き続くテンション下の伸張により、又は他の手段により製造されたもの、その後、カレンダー処理される織物、連続したシート内のスリットを切断し、伸張したメッシュを形成するために引張応力を加えて製造されたメッシュ及び鋳造により製造された多孔性シートを含む。
【0018】
平らな強化部材は、メンブランの要求される強化部を提供するあらゆる物質から製造され得る。前記強化部材の適切な材質は、金属、炭素、ポリマー又はその複合材である。多くの実施例において、前記物質は、電気絶縁体であることが好ましいが、他の場合に、弱い電気伝導体でなければならず、ある場合には、その物質の伝導性如何とは関係がない。
好ましくは、前記物質は燃料電池環境で安定的であり、強化セルを満たすのに用いられるイオン-伝導性物質と共に接着剤を形成できる。前記平らな強化部材の材料は、僅かな固有なイオン-伝導性性質を有し得るが、例えば、高い当量バージョンのPFSAポリマーから製造され得る。
【0019】
前記イオン-伝導性物質は、固体であってもよく、液体であってもよい。一実施例において、前記イオン-伝導性物質は、プロトン-伝導性ポリマー又はアニオン-伝導性物質のような、ヒドロキシルアニオン-伝導性ポリマーのような固体である。適切なプロトン-伝導性ポリマーの例は、パーフルオロスルホン酸イオノマー(perfluorosulphonic acid ionomer)(例えば、Nafion(商品名)(E.I. DuPont de Nemours and Co.)、Aciplex(商品名)(Asahi Kasei)、Aquivion(商品名)(Solvay Solexis SpA)、Flemion(商品名)(Asahi Glass Co.)、Fumion(商品名)F-series(FuMA-Tech GmbH))、又は炭化水素ポリマーから製造されたイオノマー(例えば、ポリアリーレンスルホン酸系のFumion(商品名)P-シリーズ(FuMA-Tech GmbH)又はリン酸含浸ポリベンゾイミダゾール(例えば、PBIをジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)に溶解させ、PBIを含浸させるためにリン酸を追加することで)を含む。適切なアニオン-伝導性ポリマーの例は、Tokuyama CorporationのA901とFuMA-Tech GmbHのFumasep FAAを含む。
【0020】
本発明の第2の実施例において、前記イオン-伝導性物質は、プロトン-伝導性液体又はアニオン-伝導性液体(例えば、強化メンブランを形成するために毛細力(capillary force)により平らな強化部材内で維持されるヒドロキシルアニオン-伝導性液体)のような液体である。適切なプロトン-伝導性液体の例は、リン酸と硫酸を含む。
アニオン-伝導性液体は、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液を含む。
【0021】
本発明の強化メンブランにおいて、前記平らな強化部材の少なくとも一部のセルは、イオン-伝導性物質で満たされてなる(充填されてなる)。一実施例において、全てのセルは、イオン-伝導性物質で充填され、前記平らな強化部材は、イオン-伝導性物質で完全に充填される。第2の実施例において、前記平らな強化部材のエッジの周りのセルは、イオン-伝導性物質で充填されないため、平らな強化部材の周辺部の周りに、領域イオン-伝導性物質が存在しない領域(「第1エッジ領域」)が形成される。
【0022】
本発明の他の側面において、イオン-伝導性物質は、固体イオン-伝導性物質であり、固体イオン-伝導性物質は、z-方向に沿って充填されたセルを通って延び、前記平らな強化部材の少なくとも一面に強化されない固体イオン-伝導性物質の層が形成される。また、固体イオン-伝導性物質が存在しない第1エッジ領域があり得る。
【0023】
イオン-伝導性物質が固体であるとき、前記平らな強化部材に適切な液体に分散され、本技術分野で知られたあらゆる技術(例えば、スクリーンプリンティング、ロータリースクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、スプレー(spraying)、ペインティング、イマージョン(immersion)又はディッピング(dipping)、バーコーティング(bar coating)、パッドコーティング、グラビア、ナイフ又はドクターブレードオーバーロール(doctor blade over roll)(コーティングが基材に塗布された後、ナイフと支持ローラとの間のスプリットを通って通過する)のようなギャップコーティング技術、スロットダイ(スロット、押出し)コーティング(コーティングは重力により又は基材上にスロットを通じて加えられる圧力下で圧着される)、メイヤバー(Meyer bar)とグラビアコーティングなどと共に行うメータリングロッドアプリケーション(metering rod application))により塗布され得る。適切には、充填された強化部材は前記液体を除去し、固体イオン-伝導性物質を形成するために乾燥する。
【0024】
前記イオン-伝導性物質が液体であるとき、前記平らな強化部材に本技術分野で知られたあらゆる技術(例えば、スクリーンプリンティング、ロータリースクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、スプレー、ペインティング、イマージョン又はディッピング、バーコーティング、パッドコーティング、グラビア、ナイフ又はドクターブレードオーバーロール(コーティングが基材に塗布された後、ナイフと支持ローラとの間のスプリットを通って通過する)のようなギャップコーティング技術、スロットダイ(スロット、押出し)コーティング(コーティングは重力により又は基材上にスロットを通じて加えられる圧力下で圧着される)、メイヤバーとグラビアコーティングなどと共に行うメータリングロッドアプリケーション))により塗布され得る。
【0025】
本発明の強化メンブランは、イオン-伝導性メンブランを必要とする電気化学的装置で使用され得る。従って、本発明の他の側面は、前述した強化メンブランを含む電気化学的装置を提供する。これとは異なり、前述した強化メンブランの電気化学的装置での使用が提供される。本発明の好適な実施例において、強化メンブランは、燃料電池で用いられる。本発明の他の好適な実施例において、強化メンブランは電解槽で用いられる。それにより、本発明の更に他の側面は、燃料電池又は電解槽の部材を提供するが、前記部材は、本発明の強化メンブランを含む。
【0026】
それにより、本発明は、本発明に係る強化メンブランと前記強化メンブランの少なくとも一方の側に位置する電気化学的触媒層を含む触媒-コーティング強化メンブランを更に提供する。一実施例において、触媒コーティング強化メンブランは、前記強化メンブランの両側に位置する電気化学的触媒層を備える。
【0027】
前記電気化学的触媒層は、微細に分離された非支持(unsupported)金属粉末であるか、支持された触媒であり得る電気化学的触媒を含み、小さな金属粒子が電気的に伝導性である粒子性炭素支持体に分散される。前記電気化学的触媒金属は、以下から適切に選択される。
(i)白金族金属(白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びオスミウム)、
(ii)金又は銀、
(iii)非金属、
又はこれらの金属のうち1つ以上又はその酸化物を含む合金又は混合物。好ましい電気化学的触媒金属は白金であるが、これは他の貴金属又は非金属と合金化され得る。もし前記電気化学的触媒が支持された触媒であれば、前記炭素支持物質上の金属粒子の含有量は、最終的な電気化学的触媒の重量に対して10-90重量%のものが適切であり、好ましくは15-75重量%である。
【0028】
前記電気化学的触媒層は、イオン伝導性を向上させるために、層の内部に含まれるイオン-伝導性ポリマーのような他の部材を適切に含むことができる。
【0029】
本発明の更に別の側面は、前述した強化メンブラン又は触媒コーティング強化メンブランを含むMEAを提供する。前記MEAは、次を含む(これに制限されるものではない)幾つかの方法により製造され得る。
(i)本発明の強化メンブランが2つのガス拡散電極(1つはアノード、もう1つはカソード)の間でサンドイッチされ得る。
(ii)電気化学的触媒層により一方の側にのみコーティングされた本発明の触媒コーティング強化メンブランがガス拡散層とガス拡散電極との間にサンドイッチされ得、前記ガス拡散層は前記触媒層でコーティングされた前記強化メンブランの側面と接触する。又は
(iii)電気化学的層で両側に何れもコーティングされた本発明の触媒コーティング強化メンブランは、2つのガス拡散層の間に挟持されてよい。
【0030】
前記アノードとカソードガス拡散層は、従来のガス拡散基材を適切に基盤とする。典型的な基材は、炭素繊維と熱硬化性樹脂バインダのネットワークを含む不織紙(non-woven paper)又は不織布(non-woven web)(例えば、日本のToray Industries Inc.の炭素繊維紙TGP-Hシリーズ又はドイツのFreudenberg FCCT KGのH2315シリーズ、又はドイツのSGL Technolgies GmbHのSigracet(商品名)シリーズ又はBilliard Power System IncのAvCarb(商品名)シリーズ)又は炭素繊維織物(woven carbon cloths)を備える。前記炭素紙、ウェブ又は織物は、MEAに結合される前に、湿潤性(親水性)を高めるか、耐湿性(疏水性)を高めるために追加で処理され得る。処理は、燃料電池の形態及び用いられる動作条件により左右される。基材は、無定形のカーボンブラックのような物質は、液体サスペンションの含浸を通じた結合により湿潤性が高くなったり、PTFE又はFEP(polyfluoroethylenepropylene)のようなコロイド性サスペンションで基材の孔隙構造を含浸することによって耐湿性を高めることができ、次いで、乾燥し、ポリマーの溶融点以上に加熱される。PEMFCのような分野において、微細多孔性層が電気化学的触媒層と接着する面上のガス拡散基材に塗布されることもあり得る。前記微細多孔性層は、一般にカーボンブラックとPTFEのようなポリマーの混合物を含む。
【0031】
前記MEAは、MEAのエッジ領域を封止及び/又は強化する部材を更に含むことができる(例えば、WO2005/020356に説明)。前記MEAは、当業者に知られた従来の方法により組み立てられる。
【0032】
本発明の前記強化メンブラン、触媒コーティング強化メンブラン又はMEAは、添加剤を更に含むことができる。前記添加剤は、前記強化メンブラン、触媒コーティング強化メンブラン又はMEA内に内部的に存在するか、触媒コーティング強化メンブラン又はMEAの場合には、多様な層間の接触面及び/又は1つ以上の層間の内部に存在し得る。
【0033】
前記添加剤は、水素過酸化物分解触媒、ラジカルスカベンジャ、自由ラジカル分解触媒、セルフ再生抗酸化剤、水素ドナー(H-donor)第1次抗酸化剤(primary antioxidant)、自由ラジカルスカベンジャー第2次抗酸化剤(secondary antioxidant)、酸素吸収剤(酸素スカベンジャー)からなる群より選択される1つ以上であり得る。これらの他の添加剤の例は、WO2009/040571及びWO2009/109780から見つけることができる。好ましい添加剤は、セリウム二酸化物(セリア)である。
【0034】
本発明の他の側面は、前述した強化メンブラン、触媒コーティング強化メンブラン又はMEAを含む燃料電池を提供する。本発明の好適な実施例において、前記燃料電池又は電解槽は、PEM燃料電池又はPEM電解槽である。
【0035】
本発明の前記強化メンブランの長所は、柔軟でありながら、相変わらずメンブランに要求される耐久性を提供するという点にある。柔軟性は、前記強化メンブランと強化メンブランを含む部材がリール・トー・リール(reel-to-reel)工程を用いて製造され得るようにするが、このような工程は強化部材が硬く、柔軟でない場合、強化メンブランに対して使用され得ない。
【0036】
本発明は、主にPEM燃料電池を参照して説明されたが、本発明は殆ど修正なしに他の形態の燃料電池又は電気化学的装置に同一に使用され得る。例えば、従来のリン酸燃料電池(PAFCs)で2つの電極は粒子性物質(例えば、38%超過の孔隙率を有するポリエーテルスルホンと結合されている炭化珪素)により分離される(P. StonehartとD. Wheeler, Modern Aspect of Electrochemistry, Number 38,B.E. Conwayなどにより編集、Kluwer Academic/Plenum Publisher, New York、 2005,p.400以下参照)。本発明は、高温のリン酸に対して適切に抵抗性を有し、リン酸により湿潤され得る物質が用いられるという条件で、前記マトリックスがリン酸で含浸された前記平らな強化部材により交換されるようにする。
【0037】
アルカリ燃料電池において、電解液は一般に強いナトリウム又はカリウムであり、電極はPAFCsで説明されたのと類似の方式でマトリックスにより分離される。本発明は、前記平らな強化部材が安定的であり、アルカリ電解液により濡れる場合、アルカリ燃料電池で用いられるMEAsに適している。
【0038】
PEM燃料電池用として説明されたあらゆる実施例がPEM電解槽用MEAsに同一に適用される。このようなPEM電解槽において、装置に提供される水がカソードとアノードのそれぞれで水素と酸素とに分離されるように前記メンブラン電極組立体に電圧が印加される。MEAsは、PEM燃料電池とは異なる触媒部材(例えば、アノードでIrとRu系の物質)を必要とし得るが、他の部分では燃料電池のために、MEAsと非常に類似なものが用いられる。
【実施の態様】
【0039】
本発明は、次の例を参照して更に説明される。
【0040】
Sefar AGのPEEK(Polyetheretherketone)織物メッシュ(SEFAR(商品名)PEEKTEX)(セル状構造を形成するためにカレンダー処理される)は、DuPontの2つのNafion(商品名)N117の間に位置する。Nafion(商品名)N117/PEEKサンドイッチ構造がPTFEシート、プレッシングクッション及びチタニウムプレートの間に位置する。Nafion(商品名)N117/PEEKサンドイッチ構造が177℃、1600psiで5分間ラミネートされ、圧力下で冷却された。プレッシングの前に、前記構造に対して気泡、シワ及び整列検査が行われた。前記強化メンブランは、前記チタニウムプレート、プレッシングクッション及びPTFEシートから除去され、エッジは切断された。