(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のソフトシール仕切弁の第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図3】ソフトシール仕切弁の弁閉状態を示した一部省略拡大断面図である。
【
図7】
図6の中央貫通穴付近を示す一部拡大断面図である。
【
図10】(a)、(b)は
図5におけるC−C断面図である。
【
図16】(a)は本発明のソフトシール仕切弁の第2実施形態の弁体を示す底面図である(b)は本発明のソフトシール仕切弁の第2実施形態の弁体を示す縦断面図である。
【
図17】(a)は本発明のソフトシール仕切弁の第3実施形態の弁体を示す底面図である(b)は本発明のソフトシール仕切弁の第3実施形態の弁体を示す縦断面図である。
【
図18】ストッパ部の他例を示す要部拡大断面図である。
【0014】
以下に、本発明におけるソフトシール仕切弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明のソフトシール仕切弁の実施形態を示しており、
図2は
図1の中央縦断面図、
図3においてはソフトシール仕切弁の弁閉状態を示している。
【0015】
図に示すように、本発明のソフトシール仕切弁は、弁体1、弁箱2、ふた3、弁棒4を有しており、弁体1が弁箱2内の流路5に対して弁棒4により交叉方向に昇降動自在に取付けられている。弁体1にはEPDM、フッ素ゴムなどのゴム材料によりゴムライニングが施され、このゴムライニングで弁箱2内に設けられた弁座部6と止水面7とをシールすることで弁箱2の流路5を開閉するようになっている。
【0016】
図4〜
図11における弁体1は、
図12〜
図14に示した母材10を有し、この母材10は、例えば、球状黒鉛鋳鉄(例えば、FCD450−10)もしくはステンレス鋼(SCS)等の材料により鋳造成形される。母材(例えば、球状黒鉛鋳鉄)10には表面処理がなされて表面処理部11が設けられ、この表面処理部11は、例えば、エポキシ・ポリアミド樹脂等の樹脂の流動浸漬・静電粉体塗装、或は、琺瑯加工により設けられる。このうちの適宜の表面処理部11を母材に施すようにすればよいが、特に、エポキシ・ポリアミド樹脂を流動浸漬により加工して表面処理部11を設けることが望ましい。この場合、エポキシ・ポリアミド樹脂の静電粉体塗装により表面処理する場合に比較して膜厚が均一になって安定しやすく、ガラス質を焼き付けによる琺瑯加工の場合よりも表面の割れが生じにくくなって運搬時などの取り扱いも容易になる。これによってゴムライニングを施す際に、流路5に露出する表面処理部11への傷付きが極力抑えられる。この表面処理部11の均一の膜厚に対してゴム材料の密着精度を高めつつ加硫成形を施すことが可能になる。
【0017】
このように、母材10の表面にポリアミド合成樹脂(ナイロン樹脂)等の樹脂塗装を施すことで、後述する止水部32に位置し、母材10に一体成形されたストッパ部36にこの樹脂塗装でストッパ機能を発揮させることが可能になっている。
【0018】
母材10は、
図14に示すように弁棒挿入穴12、この弁棒挿入穴12の両側に位置する上流側面13、下流側面14を有し、流路5に対して左右対称形状の楔型に設けられる。弁棒挿入穴12は、母材10の中央位置に貫通して設けられ、この弁棒挿入穴12の上部側にはやや拡径した段部面15が形成されている。母材10の上流側面13、下流側面14の上方円弧部位と下方端部位とには、
図13に示したゴム固着部16が設けられる。このうち、上方円弧部位におけるゴム固着部16は円弧状溝部からなり、係合面17aを残して小穴である中央貫通穴17、貫通穴18を有している。母材10の両側にはガイド部19、19が形成されている。
【0019】
図14において、中央貫通穴17は、母材10の弁棒挿入穴12に貫通して円弧状溝部16の略中央位置に溝幅より小さく形成される。貫通穴18は、上方円弧部位に設けたゴム固着部16の上流側面と下流側面とを貫通するように、
図13において、中央貫通穴17を中心に左右対称に設けられる。本実施形態では、4つの貫通穴18が長穴形状により形成されているが、この貫通穴18の数を増減したり異なる穴形状に設けることも可能である。その場合にも、中央貫通穴17を中心に左右対称の貫通穴18を配置することが望ましい。この場合、係合面17aにゴムが係合されながら中央貫通穴17に確実に固着される。
【0020】
ガイド部19は、弁体1の両側に突設形成され、弁箱2内部の両側に形成されたガイド溝20に遊嵌状態で装着される。このようにして弁体1を弁箱2の所定位置に装着することで、弁体1は弁箱2内を上下動可能になっている。図示しないが、ガイド部19のガイド溝との当接面は、弁棒4が上下動する方向に対して上部側から下部側にやや傾斜する傾斜面とし、この当接面の傾きを後述する流体圧による弁体1の傾きと同じ傾きに設けておくことが望ましい。
【0021】
一方、母材10のゴム固着部16の下方端部位においては、
図12に示すように環状下端面25、テーパ側面26が設けられる。環状下端面25は母材10の弁棒挿入穴12の下端に形成され、テーパ側面26はこの環状下端面25の両側から続けて環状下端面25から傾斜するように形成される。
図12に示すように、環状下端面25とテーパ側面26との間には溝部27が形成され、この溝部27は、母材10の下方端部位にテーパ保持部28aを延設した外筒保持部28と仕切壁29aを延設した内筒保持部29とが形成される。更に、外筒保持部28とテーパ保持部28aには溝部27に貫通する長穴状の複数の貫通部30が形成されている。貫通部30は、上記した貫通穴18と同様に、その数や形状を任意に設定することが可能である。その場合にも、貫通穴18のように母材10に対して左右対称に設けることが望ましい。
【0022】
弁体1を製作する場合には、上記した母材10のゴム固着部16にゴム材料を加硫成形する。これにより、
図4〜
図6に示すように弁座部6にシールする弁体シール部31と、止水面7に圧接シールする止水部32とがそれぞれ設けられる。このとき、弁体シール部31と止水部32とは同時に成形加工される。
その際、母材10の上方円弧部位側においては、
図7に示した中央貫通穴17を介してゴムライニングを施すことにより弁体シール部31が母材10に一体成形される。具体的には、円弧状溝部16と中央貫通穴17と段部面15とにゴム加硫成形を施すことにより、
図6、
図7に示すように円弧状溝部16に膨出した弁体シール部31と段部面15に環状保持部33とが設けられ、これらが中央貫通穴17を介して一体に設けられる。これにより、上流側面13、下流側面14の弁体シール部31、31同士が中央貫通穴17と環状保持部33とにより一体化される。
【0023】
これと同時に、
図8、
図9に示すように貫通穴18に対してもゴムライニングが施され、これによって上流側面13、下流側面14の弁体シール部31、31同士がこの貫通穴18を介して一体化される。このようにして、上方円弧部位の弁体シール部31は、円弧状溝部16、中央貫通穴17、段部面15、貫通穴18を介して母材10に一体成形される。
【0024】
一方、母材10の下方端部位側においては、
図12における貫通部30を介して環状下端面25とテーパ側面26とにゴムライニングを施すことで止水部32が母材10に一体成形される。具体的には、外筒保持部28の外側から貫通部30を介して溝部27にゴム加硫成形を施すことにより、止水部32が環状下端面25、テーパ側面26に一体成形される。
【0025】
この場合、
図11に示すように、テーパ側面26における止水面7とのシール部位にはそれぞれ2条の突条部35、35が突設形成されていてもよい。この場合、弁体1の締め切り時にこの2条の突条部35、35が止水面7に当接シール可能になる。更に、これらの2条の突条部35、35の間には、後述するストッパ部36が配設されている。
【0026】
図15のゴムライニングの模式図に示すように、前記の弁体シール部31と止水部32とに設けられる加硫ゴム材料は、円弧状溝部16とテーパ側面26とにおいて一体に繋がっており、ゴム加硫成形を施す際に弁体シール部31と止水部32とが前記のように一度に成形される。このように、弁体シール部31と止水部32とは流路5の交叉方向において環状に一体成形され、流路5側に露出するゴム材料部分が最小限に抑えられている。
【0027】
ゴム加硫成形を施す場合には、接着剤を塗布することのない加硫成形によって加工でき、このゴム加硫成形によって母材10にゴム材料を強固に固定・密着できることで、弁体1としての機能を十分に発揮できる。更に、ゴムライニングの経年変化を考慮した場合、接着剤を塗布しながら加硫成形する加硫接着によってゴム加硫成形を施すようにしてもよい。
【0028】
図3、
図4に示したストッパ部36は、樹脂製又は硬質ゴム製或は樹脂塗装からなり、止水部32において環状下端面25を中心に各テーパ側面26、26に左右対称に設けられている。ストッパ部36は、止水部32を成すゴム材料よりも硬度が高い材料により形成される。しかも、この実施形態では、テーパ側面26の圧接部位にこのストッパ部36が設けられ、テーパ側面26の圧接部位がこのストッパ部36より突設して形成される。
【0029】
図3、
図10において、ストッパ部36は、止水面7に対向する当接面37と、この当接面37の両側から垂直方向に延びる保持部38、38と、この保持部38、38同士を繋ぐ補強部39とを有し、断面略コ字形状に形成される。当接面37は、テーパ側面26の圧接部位が止水面7に圧接して変形したときに止水面7に当接可能になっている。保持部38は、母材10とゴムライニング部分との間に保持され、この保持部38の保持によりストッパ部36が母材10に一体化される。補強部39は、保持部38、38同士を繋ぐように設けられることで保持部38を補強し、かつ、この補強部39が母材10に形成された取付凹溝10aに嵌合装着されることでストッパ部36を位置決め可能になっている。
【0030】
ストッパ部36は、補強部38を取付凹溝10aに嵌め込みつつ両保持部38、38で下方端部位を挟むようにして表面処理された母材10の所定位置に仮着される。更に、この一体化した母材10とストッパ部36とに対して加硫成形により部分ゴムライニングを施すことで、母材10からのストッパ部36の抜け出しが阻止された状態でこれらが一体化される。
【0031】
上述したストッパ部36は、弁体1の締め切り時に止水面7に当接可能であれば、止水部32の任意の位置に配設することができ、また、このストッパ部36を省略することも可能である。ストッパ部36を設ける場合、本実施形態のような部分ゴムライニングの弁体以外の弁体に適用することも可能であり、例えば、全面ゴムライニングや嵌め込みによりゴムシール材を装着するタイプの弁体にも前記と同様にストッパ部を設けることができる。この場合にも、部分ゴムライニングの場合と同様にストッパ部による機能を発揮できる。
【0032】
上記の弁体1を弁箱に装着する場合、
図3に示すように、弁体1は、弁棒4、めねじこま41を介して上下動自在に取付けられる。弁棒4は、例えば、ステンレス鋼からなり、その外周の一部にはおねじからなるねじ部42が設けられている。弁棒4の上部側には環状鍔部43が形成され、弁棒4はこの環状鍔部43が弁箱2被蓋用のふた3の上に当接した状態で装着される。そのため、弁棒4は、弁箱2に対して上下動が阻止された状態で回動するようになっている。
図1、
図2において、環状鍔部43とふた3との間にはスラストワッシャ等の緩衝部材45が介在されており、この緩衝部材45により、環状鍔部43とふた3とが直接接触することが防止されている。
【0033】
同図に示した弁箱2、ふた3は、例えば、FCD450−10等の球状黒鉛鋳鉄を材料として成形され、これらの全面には、弁体1の場合と同様にエポキシ樹脂が塗装により表面処理される。弁箱2とふた3とは、ゴム製のシール部材46を介してボルト等の固着部材57により固着されている。
【0034】
めねじこま41は、例えば、銅合金から成り、内周にねじ部42に螺合するめねじ部47が形成され、
図2の弁体1の上部側に形成された鉤状の係止部48の内側に抜け止め状態で収容される。弁棒4を弁閉又は弁開方向に回転させると、ガイド部19がガイド溝20により回転規制されていることで、ねじ部42とめねじ部47との螺合によって弁体1が弁棒4に対して上下動する。弁体1の係止部48の一方側にはこの係止部48を補強するための連結部49が形成されているが、この連結部49を省略するようにしてもよい。この場合には、弁体1が流路方向において左右対称になる。
弁棒4は、図示しないハンドルにより手動で回動操作されるが、この弁棒4を図示しない電動アクチュエータ等により自動操作で操作することもできる。
【0035】
図1に示すように、この実施形態におけるソフトシール仕切弁では弁棒4のねじ部42が弁箱2内に隠れ、弁体1の開閉操作時に弁棒4が定位置で回動する内ねじ式の仕切弁になっている。図示しないが、ソフトシール仕切弁は、外ねじ式の仕切弁構造であってもよい。外ねじ式の仕切弁は、弁棒のねじ部が弁箱の外部にあり、バルブの開操作により弁棒が上昇し、閉操作により弁棒が下降するようになっている。
【0036】
また、このソフトシール仕切弁は、
図3に示すように、弁箱2に対して楔型の弁体1(母材10)を上下動させて流路5を弁体1で閉止する際に、弁体シール部31、止水部32を弁座部6、止水面7にシールさせる、いわゆる楔型構造と呼ばれる態様の仕切弁であるが、この弁体は、楔型形状に限られることはない。例えば、図示しないが、上流側面と下流側面とが略平行の弁体を上下動させて弁体シール部を弁体の弁座部分に圧着させて弁閉状態とする、いわゆる圧着型と呼ばれる態様の仕切弁とすることもできる。
【0037】
更に、図示しないが、弁体の両側のガイド部を溝状に設け、この溝状ガイド部に弁箱に形成した図示しない凸状ガイド部を遊嵌させるようにして弁体を弁箱に装着してもよい。このように弁棒4の回動動作によって弁体1が回転停止した状態でガイド部を上下方向にスライドできる構造であれば、ガイド部分の構造も限定されるものではない。
【0038】
本発明のソフトシール仕切弁では、母材10の上流側面13と下流側面14の上方円弧部位と下方端部位とにおけるゴム固着部16にゴムライニングを施し、このゴムライニングにより弁体シール部31と止水部32とをそれぞれ設けているので、部分ゴムライニングによる弁体のシール部位を構成できる。これにより、水道水などの流体に接触するゴム材料を少なくでき、特に、弁閉時において、流体側に露出するゴム材料を最小限に抑えることができる。その結果、浸出性の改善をすると同時に弁体シール部31と止水部32のゴム材料の劣化によるカーボンなどの剥離を最小限に抑えることができる。
【0039】
このようにゴム材料の使用料を必要最小限にできるため、より性能の高い高価なゴム材料を使用することも可能になる。この場合には全面ゴムライニングや取付け用固定部材を用いてゴムシール材を設ける場合よりもソフトシール仕切弁全体の重量を軽減できる。
【0040】
上方円弧部位のゴム固着部16が円弧状溝部からなり、この円弧状溝部16と中央貫通穴17と弁棒挿入穴12の段部面15にゴム加硫成形を施して、弁体シール部31に環状保持部33を中央貫通穴17を介して一体成形していることにより、上流側面13、下流側面14の弁体シール部31、31をこの環状保持部33により抜け止めした状態で一体化できる。更に、貫通穴18にゴム加硫成形を施して上流側面13、下流側面14の弁体シール部31、31を母材10に一体成形していることにより、母材10を固定しながら円弧状溝部16に嵌り込んだ弁体シール部31を一体化できる。これらにより、ゴム加硫成形で接着剤を使用することなく母材10にゴム材料を強固に固定し、円弧状溝部16から弁体シール部31がずれたり剥離することを確実に防ぎつつ、弁体1と弁体シール部31との隙間を防いで嵌め込みや取付け用の固定部材を用いるような部分的なゴムシート装着の場合よりも高いシール性を発揮でき、流体への接着剤の溶出がないため、接着剤の塗布による作業工数が増えることもない。更に、加硫接着の場合のように接着剤の浸出試験を実施する必要もなくなる。
【0041】
一方、弁体1の下方端部位では、環状下端面25とテーパ側面26とに溝部27を形成し、この溝部27を介して外筒保持部28と内筒保持部29とを設け、外筒保持部28に溝部27に貫通する複数個の貫通部30を形成し、環状下端面25とテーパ側面26とにこの貫通部30を介してゴム加硫成形を施して止水部32を母材に一体成形していることにより、外筒保持部28の外側と溝部27に設けられるゴム材料で外筒保持部28を巻き付けるように貫通部30を介して止水部32を一体化できる。このため、弁体シール部31の場合と同様に、止水部32がずれたり剥離したりすることが無く、母材10に止水部32を強固に固定できる。
【0042】
しかも、上記の弁体シール部31と止水部32とが一体成形され、母材10にこの環状シール部位を巻き付けるように加硫成形していることで母材10からよりゴム材料が外れ難くなっている。そのため、弁体1が上下移動して弁座部6に着座或いは弁座部6から離間する際にも、ゴム材料がずれたり外れたりすることを防止できる。この場合、弁体1を楔型に設けていることにより、この弁体1を
図2の弁開状態から
図1の弁閉状態まで下降させる際に、弁閉シール状態になる直前まで弁体シール部31、止水部32が弁箱2内に擦れることがない。このため、弁体シール部31、止水部32の摩耗が最小限に抑えられてゴム材料の消耗が少なくなり、弁体1動作時の摺動抵抗も少なくなる。
【0043】
ストッパ部36を母材10のテーパ側面26側に設けており、
図10(a)に示すように、テーパ側面26側の止水部32の止水面7への圧接部位をストッパ部36より突設形成している。
図3の弁閉シール時には、先ずテーパ側面26の圧接部位が止水面7に当接し、続いて弁体1を締め付けたときにこの圧接部位がゴム材料の弾性により変形しながら弁体1の下降によりストッパ部36が止水面7に当接する。ストッパ部36は樹脂製又は硬質ゴム製、或は樹脂塗装であるため止水面7に当接したときにゴム材料よりも変形しにくくなっている。これにより、部分ライニング構造や突条部35を形成することで圧接部位の接触面積が小さくなるにもかかわらず、テーパ側面26における圧接部位の過剰な変形を防止でき、止水部32の負担を軽減してこの止水部32が傷付いたり破断したりすることを防止できる。このストッパ部36により、弁箱2の表面処理部位も剥がれ難くなる。
【0044】
弁体1の締め切り完了時には、止水部32を成すゴム材料よりも硬質のストッパ部36が止水面7に当接することで、弾性材料であるゴム材料が緩やかに変形する場合に比較して締め切りトルクが急激に変化する。このため締め切り時の感覚が伝わりやすくなり、弁体1の締め切り完了状態を確実に把握できる。
【0045】
テーパ側面26のシール部位に2条の突条部35、35を突設形成しているため、弁閉シール時には、この突条部35が止水面7に線接触状態で圧接し、この小さい接触面積による圧接で締め付け時の面圧力が高まることで、密着性を向上して高シール性を発揮できる。この場合、突条部は1条でも良い。
【0046】
その際、
図1において、2条の突条部35を設けていることで突条部35の止水面7への圧接力を高めることができ、確実に漏れを防ぐことができる。この場合、上記したストッパ部36によって強い圧接力による突条部35の破断も防がれる。
【0047】
更に、ガイド部19におけるガイド溝20との当接部位を弁棒4の上下動の方向に対して上部側から下部側にやや傾斜させ、この当接部位の傾きを弁体1の流体圧による傾きと同じ傾きに設けていることにより、弁体1が流体圧で傾いたときに当接部位がガイド溝20に面接触により接触する。この面接触は、弁閉状態に限らず弁体1を昇降動させる際に流体圧により継続することになる。このため、ガイド部19とガイド溝20とが極部的に圧接することを防いで、弁体1のガイド部の表面処理19が傷付いたり剥離することを防止できるとともに、この面接触によって弁体1をスムーズに昇降動できる。ガイド部の表面処理19の剥がれを防ぐことで、母材10の錆の発生を防止できる。
【0048】
流体圧は、弁体1における表面処理部11、弁体シール部31、止水部32に働くことになるが、このときの弁体1と弁箱2とのシール性は、弁体シール部31及び止水部32が弁座部6及び止水面7にシール或は圧接シールすることで発揮されている。弁体シール部31において、上方円弧部位の中央貫通穴17・貫通穴18の無い部分では弁体シール部31に伝わる流体圧を母材10で直接受け、この流体圧による力が弁体1から弁座部6に伝達される。このように二次側に母材10が位置しているため、この母材10で流体圧の力を受けることによりゴム材料の弁体内部方向への抜け出しを防ぎ、かつ、流体圧によりゴム材料と母材10とが密接して高シール性を発揮する。
【0049】
上方円弧部位の貫通穴18付近では、流体圧が上流側のゴムライニング部分から貫通穴18を介して下流側のゴムライニング部分に伝わり、この流体圧による力が弁座部6に伝達される。このように貫通穴18の二次側には弁座部6が位置しており、この弁座部6で流体圧の力を受けることによりゴム材料の二次側への抜け出しを防止する。
【0050】
一方、止水部32において、下方端部位の貫通部30の無い部分では、止水部32に伝わる流体圧をテーパ保持部28aと外筒保持部28とで直接受ける。このため、この付近のゴム材料は、流体圧によりゴム材料と母材10とが密接して高シール性を発揮する。
下方端部位の貫通部30付近では、流体圧が貫通部30を介して溝部27に施されたゴムライニング部分に伝わる。このゴムライニング部分の二次側には内筒保持部29と仕切壁29aとを設けているため、この流体圧による力を内筒保持部29と仕切壁29aとで受けてゴムの固着性を保持する。このように溝部27に設けられたゴムライニング部分の二次側には内筒保持部29と仕切壁29aとが位置しているため、この部分でゴム材料の二次側への抜け出しを確実に防止している。
【0051】
しかも、円弧状溝部16からなる形状のゴム固着部を弁体1に形成し、この円弧状溝部16にゴム加硫成形を施して弁体シール部31を設けているため、弁閉時の面圧力を保持しつつ弁箱2に摺動などの摩擦が生じた場合でも円弧状溝部16に囲まれるように装着された構造によりゴム材料のずれが防がれる。止水部32は弁体シール部31に一体に設けられているため、この止水部32も弁体からずれ難くなっている。
このような部分ゴムライニング構造で弁体1を設けていることで、例えば、日本水道協会の規格による水道用ソフトシール仕切弁(JWWA B 120)の耐久試験で、弁体の全開、全閉作動を500回以上繰り返したとしても、弁体シール部31や止水部32が抜け出したりシール性の悪化により漏れを生じたりすることを回避でき、長期に渡ってソフトシール仕切弁としての止水性能を維持できる。
【0052】
弁棒4の環状鍔部43とふた3との間に緩衝部材45を設けているため、弁体1の昇降動時に弁棒4を回転させるとこの緩衝部材45がスラスト荷重を受け、環状鍔部43の回転によるふた3の表面処理の剥がれを防止する。
【0053】
図16においては、本発明のソフトシール仕切弁の第2実施形態の弁体を示している。この実施形態におけるストッパ部70は、環状下端面71に位置する環状ストッパ部72と、各テーパ側面73、73に位置する当接面74、保持部75、補強部76を有するテーパストッパ部77とを有し、環状ストッパ部72に左右対称にこのテーパストッパ部77が一体成形されて円弧状に形成されている。
このソフトシール仕切弁では、弁体78の環状下端面71とテーパ側面73の圧接部位にストッパ部70が一体に設けられ、環状下端面71とテーパ側面73の圧接部位がこのストッパ部70より突出した状態に設けられている。
【0054】
弁閉時には、環状ストッパ部72の当接部位とストッパ部70の当接面74とが図示しない止水面に当接するため、環状下端面71及びテーパ側面73全体の圧接部位の過剰な変形を防止しながら止水部79が止水面をシールし、止水部79全体の傷付きや破断を防いで高シール性を維持できる。この実施形態では一体のストッパ部70としているが、図示しない環状ストッパ部とテーパストッパ部とを別体に形成し、これらをそれぞれ環状下端面とテーパ側面の圧接部位に設け、環状下端面とテーパ側面の圧接部位とを各ストッパ部より突出させるようにしてもよい。
【0055】
図17においては、本発明のソフトシール仕切弁の第3実施形態の弁体を示している。この実施形態におけるストッパ部80は、各テーパ側面73に位置するテーパストッパ部81を有し、これらのテーパストッパ部81が接続部82によって接続されて円弧状に形成されている。更に、このストッパ部80では延設部83が形成され、この延設部83は、止水部79のテーパ側面73に設けられるテーパストッパ部81の両端がガイド部19まで延設されて形成されている。
【0056】
弁体85の締め切り時には、延設部83を介してガイド部19が図示しない止水面に接触するため、ガイド部19の端面側と止水面が直接接触することがない。そして、延設部83が緩衝剤としての機能を発揮するため、ガイド部19及び止水面が傷付くことを防止できる。更に、弁体締め切り完了時に延設部83を介してガイド部19が止水面に当接する構造であることから、弁体85がこれ以上下降することを強制的に防ぐことができる。そのため、弁体締め切り時の感覚を確認することなく、回転が停止する位置まで図示しない弁棒を回転させることで所定の締め切り状態まで操作できる。
【0057】
図18、
図19においては、ストッパ部の他例を示している。図に示すように、このストッパ部90の図示しない止水面に当接する当接面91の周囲において、突条部35との間に空隙部93が形成され、かつ、当接面91が突条部35の先端側にやや近づくように延長して形成されている。このストッパ部90においては、当接面91を迅速に止水面に当接させることで突条部35の弾性変形量を最小限に抑えて止水面の損傷を防ぐことが可能になる。しかも、空隙部93を設けていることで突条部35がこの空隙部93側に弾性変形しやすくなるため突条部35に加わる圧縮力を緩和できる。