特許第6239704号(P6239704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6239704
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電動雲台システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/222 20060101AFI20171120BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20171120BHJP
   G03B 17/00 20060101ALI20171120BHJP
   G03B 17/56 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H04N5/222 100
   G03B15/00 P
   G03B17/00 B
   G03B17/56 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-165037(P2016-165037)
(22)【出願日】2016年8月25日
【審査請求日】2016年8月25日
【審判番号】不服2017-8218(P2017-8218/J1)
【審判請求日】2017年6月7日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170734
【氏名又は名称】株式会社日本ビデオシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】橋口 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】沢野 義秋
(72)【発明者】
【氏名】杉田 秀岳
(72)【発明者】
【氏名】山田 信幸
【合議体】
【審判長】 鳥居 稔
【審判官】 篠原 功一
【審判官】 渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−104738(JP,A)
【文献】 特開2001−245196(JP,A)
【文献】 特開平5−130460(JP,A)
【文献】 特開2010−278808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222-5/257
G03B 17/56-17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーター制御の電動雲台システムにおいて、チルトを電動雲台コントローラーによりリモート制御可能な電動雲台システムであって、前記電動雲台システムのチルト部が、互いに離間された支軸とモーター軸部を備え、
前記モーター軸部は、カメラを搭載するチルトプレートの、前記支軸から前方に離れた位置を、前記チルトプレートの下側から駆動するように構成され、
前記チルトプレートは、前記チルトプレートの後端が前記支軸よりも後方に位置し、前記チルトプレートの前端が前記支軸よりも前方に位置し、かつ前記チルトプレートの下面が前記支軸よりも上方に位置するように設けられ、
前記カメラは、前記支軸の上方に搭載されることを特徴とする電動雲台システム。
【請求項2】
電動雲台コントローラーにて複数の位置記憶をし、その記憶した位置の実行ボタンを押してその位置に制御される際、複数の位置チャンネル位置ごとにモーション時間設定ボリウムを有し、記憶された位置まで到達する速度設定ができることを特徴とする請求項1に記載の電動雲台システム。
【請求項3】
前記モーター軸部が伸縮することによって前記支軸から離れた位置が駆動されるように構成されている、請求項1又は請求項2に記載の電動雲台システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動雲台に関するものであり、映像撮影装置、おもにビデオカメラ、プロンプター装置を併用するビデオカメラも想定し、また、超高倍率レンズで撮影時に高倍率での位置を電動で調整するための電動雲台システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送の撮影には、超望遠レンズや、プロンプターがよく使われるようになった。大きな箱型レンズを使用したり、プロンプターを使用したりする機会が増えてきている。また、リモコンによるカメラマンがつかない電動雲台撮影が増えてきている。舞台撮影等では高画質化に伴い、高度な撮影技術が要求されるとともに、離れた撮影位置から高倍率で撮影する機会が多くなっている。そういった撮影を電動雲台システムで運用し、その撮影するフレーム位置を何カ所も記憶して遠隔操作する撮影が増えてきている。このような電動雲台システムは、電動雲台部ではパーン部とチルト部分に駆動部があり、電動雲台コントローラーによって制御して、パーンモーターは左右方向、チルトモーターは上下方向の位置の調整を行うことができる。また、その位置を記憶させることができる機種もある。現在、市販されている電動雲台システムのコントローラにおいては、パーン方向、チルト方向の位置調整用のジョイスティックが設けられており、このノブを上下左右させることによって電動雲台の移動方向を自在に調整することが可能になっている。雲台の種類はおおまかに電動雲台の真上にカメラを取付けるタイプと、チルトの軸をサイドに延ばしてカメラを装着する場合の2種類がある。前記の真上にカメラを装着する場合は、横幅があるプロンプターを装着して運用が可能であるが、頂点を通過する際にバックラッシュが発生することが多い。チルトの軸をサイドに延ばしたタイプはカメラを水平付近でバックラッシュが発生しやすいが重心がチルト回転軸より下にあるため目立ちにくい。しかしプロンプターや、ショルダーカメラ等の比較的大きなシステムには装着幅が広い場合や、搭載するカメラの重量が重い際、取付けたカメラ側にしなる傾向にあるため、撮影している画面が傾く傾向にあるので、重量の重い搭載物の際はサイドに延ばしたタイプの電動雲台は向いていない。パーン、チルト位置を複数記憶して、記憶した位置への移動を実行した場合、次の位置に移動するスピードを1つのボリウムで毎回操作するものしかなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような電動雲台を使えば、操作する人の手元で位置の調整を行うことができるので、非常に便利なものであるが、本発明者が実際にこのような電動雲台システムを使用してリモコン操作をして撮影を行ったところ、雲台に装着されたカメラのレンズの倍率をあげると被写体をジョイスティックを離して、欲しい画角で止めようとしても通り過ぎて止まったりするなど、微妙な調整が容易ではなかった。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、電動雲台システムの電動雲台に装着されたカメラでの撮影で、高倍率でも微妙なフレーム位置決めができ、バックラッシュがほとんど発生しない電動雲台と、簡単に位置を記憶して思いどおりのスピードでカメラをパーン及びチルト操作を再現できる電動雲台システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、電動雲台システムであって、電動雲台の支点となる軸に駆動部を設けず、支点から離れた場所に駆動装置を設けることが提供される。
【0006】
本発明によれば電動雲台を制御するリモコンによりその位置を複数記憶し、その記憶位置の実行ボタンを押した際に記憶したそれぞれのポジションへ移動する実行スピードを変えることができることが提供される。
【0007】
本発明によればさらにチルトモーター及びパーンモーターの速度を別のボリウムにより独立して調整できるので、パーンとチルトの記憶している到達距離が違っても任意にチルトモータ及びパーンモーターの動作時間を調節可能なため、パーンとチルトの移動する時間をほぼ同じに調整できる機能を備える電動雲台システムが提供される。
【0008】
上記の通り、バーン及びチルトの位置調整を行うための電動雲台は市販されているが、レンズの倍率を高くして使用した場合使い勝手がいいものではない。撮影スタジオなどでプロンプターを装着した場合は重量がかさむことと、レンズの倍率を上げて電動雲台をパーン、チルトをした場合、パーン、チルトのジョイスティックノブを操作して位置を調整する際に、少しパーンをして旋回下場合や、少しチルトを上下した場合は、フレーム位置が少し行き過ぎて少し戻るため画面にそのバックラッシュがある状態が撮影されてしまう。倍率をあげて撮影している際、少し動かしても画面上では大きく動いてしまい、適正な位置で止めるためには熟練した技術と集中力が必要であった。つまり、ジョイスティックを離した際、雲台が停止する時にバックラッシュがおこる場合があり、画像が揺れることがあった。
【0009】
このような状況においては、本発明者は、電動雲台でビデオカメラを運用した場合、レンズの倍率を高倍率にした場合は、パーン、チルト操作が非常に難しいことに気づいた。プロンプター等を装着した際に電動雲台に搭載する装置が大型化するため、チルト支軸で駆動する電動雲台では微調整が効きにくい。チルトを上下した際には倒れる角度とともに搭載しているカメラ重心が変わるため倒れたところより逆に中心に戻す際には大きなモーター負荷がかかる。それにより速度ムラがおこった。超望遠、20倍付近にレンズ倍率を上げた場合は電動雲台を動かしながらの撮影は揺れが画面に現れ、操作が非常に難しかった。
【0010】
このことに気づき、電動雲台のチルト部の支軸より駆動部を外し、別に離れた部分に駆動部を設けた。支点とは別の所にモーター駆動部を設けることにより、同じトルクのモーターを使用しても微妙に調整ができ、且つ支点で駆動しないため、より重量のある装置を搭載してもスムーズに上下パーンをすることができ、支点が2つになることによりバックラッシュが発生しない機構を考え、本発明の完成に至った。
【0011】
この電動雲台システムを使用すれば、カメラで撮影する際に高倍率での微妙な位置調整を向上させるとともに、スムーズな位置調整を行うことができ、位置調整を高分解能で実現し、スムーズな動作を実現することができる。そのためリモコンの記憶部から記憶の位置実行ボタンを押して、正確に再現することができる。
【0012】
また、本発明によれば、撮影時に、構図の選択等の位置調整以外の作業に集中できるため、得られる映像の品質が向上し、高倍率で微妙な位置が調整出来るため、経験の浅いオペレーターであっても高度な映像の撮影を簡単に実現できるという利点も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態のシステム構築装着形態を示す。
図2】本発明の一実施形態の電動雲台部の透視図を示す。
図3】本発明の一実施形態の電動雲台部の角度が変わった際の透視図を示す。
図4】本発明の一実施形態の電動雲台コントローラー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.全体構成
図1は、本発明の一実施装着形態。電動雲台の上にビデオカメラが装着され、電動雲台の下に三脚が装着され、電動雲台と電動雲台コントローラーの間がリモートケーブルで接続された状態を示す。
【0015】
図1に示すように、電動雲台AAは、三脚Eに装着されており、電動雲台AAの上にはカメラB、レンズD、ビルドアップユニットC、ビューファインダーAが搭載されている。
【0016】
電動雲台AAと電動雲台コントローラーGとの間は、リモートケーブルFで接続される。電動雲台コントローラーGはパーン、チルト制御がジョイスティック1でコントロールできる。記憶部2、で記憶して、実行部3で実行ボタンを押してその位置へ制御され、モーション時間設定ボリウム4を操作することにより、各チャンネル毎にその記憶された位置まで到達する速度設定でき実行できる。
【0017】
2.電動雲台AAの詳細
次に、図2電動雲台AAの透視図を用いて電動雲台AAのチルト部の詳細を説明する。電動雲台AAは、チルト部5のチルトプレート9に、カメラ等を搭載する。チルト部5は支軸6と筐体サイドパネル7の間にベアリング8が装着されていて、チルトプレート部9にチルト上下モーターユニット駆動部10が接続シャフト11で接続し、チルト上下モーターユニット駆動部10と筐体サイドパネル7が接続シャフト12で接続する。チルト上下モーターユニット駆動部10では、モーターが回転することによりモーター軸部15が伸縮し図3のようにチルトの角度を変えることができる。チルト部支軸6とモーター軸部15が離れて配置されるのが本発明の必須の構成であり、それ以外の構成は任意要素である。また、本文はチルトでの説明であるが、パーン方向(パーン部)にも支軸とモーター軸部を設けることで同じ効果を得られることができる。
【0018】
次に、図4を用いて電動雲台コントローラーGについて説明する。電動雲台コントローラーGはジョイスティック1が備わり、ジョイスティック1を左に動かすと電動雲台AAが左に旋回し、右に動かすと電動雲台AAが右旋回、ジョイスティック1を上に動かすと電動雲台AAのチルト部10が上に向き動き、ジョイスティックEを下向きに動かすと電動雲台AAのチルト部10が下に動く。記憶部2を押すと位置が記憶され、実行部3を押すと実行されその位置に動く、その際、モーション時間設定ボリウム4を設定することにより、押された記憶部の各チャンネル毎にボタンへのモーター動作時間が個々に設定できる。また、チルト速度調整ボリウム13によりチルト速度のモーター動作時間が変更可能なため、例えばチルトの移動距離が短くバーンの距離が長い等の場合、ボリウムの調整で到達点をほぼ同じに設定できるため、斜めにカメラが動くように設定できるのが特徴である。チルトモーター動作時間がパーンモーターとの動作時間が別設定できることと、記憶してそれを実行する際、各チャンネル毎にスピード調整ができることが本発明の必須の構成であり、それ以外の構成は任意要素である。
【0019】
以上の仕組みで互いに離間された支軸とモーター軸部によって駆動部を構成することにより支軸を直接駆動する方式よりもバックラッシュがほとんどなく、また大掛かりな撮影機材においてもカメラの撮影画角の微妙な調整が可能となり位置調整の分解能が格段に向上する。また、この電動雲台システムを運用することにより簡単に高度な撮影が可能になる。
【符号の説明】
【0020】
A:ビューファインダー
B:カメラ
C:ビルドアップユニット
D:レンズ
E:三脚
F:リモートケーブル
G:電動雲台コントローラー
AA:電動雲台部
1:ジョイスティック
2:記憶部
3:実行部
4:モーション時間設定ボリウム
5:チルト部
6:チルト部支軸
7:筐体サイドパネル
8:ベアリング
9:チルトプレート部
10:チルト上下モーターニュット駆動部
11:接続シャフト
12:接続シャフト
13:チルト速度調整ボリウム
15:モーター軸部
【要約】

【課題】高倍率ビデオ撮影において揺れの少ない画像が撮影できることと、バックラッシュが少なく、有線接続された電動雲台コントローラーから電動雲台のポジションを記憶しスムーズな動きができ、且つその電動雲台の方向位置を容易に調整可能な電動雲台システムを提供する。
【解決手段】電動雲台システムのパーン及びチルト部が支軸とモーター軸部で構成され、バックラッシュの発生を抑えることを提供する。電動雲台コントローラーにて複数の位置記憶をし、その記憶した位置に実行ボタンを押してその位置に制御される際、各チャンネルごとにモーション時間設定ボリウムを有し、記憶された位置まで到達する速度設定ができることを提供される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4