特許第6239707号(P6239707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6239707
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】燃料電池スタック、及び燃料電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20171120BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20171120BHJP
【FI】
   H01M8/02 Y
   !H01M8/12
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-167115(P2016-167115)
(22)【出願日】2016年8月29日
【審査請求日】2017年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 遥平
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 徳之
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−051688(JP,A)
【文献】 特開2009−218110(JP,A)
【文献】 特開2015−170453(JP,A)
【文献】 特開2005−135729(JP,A)
【文献】 特表2007−531240(JP,A)
【文献】 特開2013−175306(JP,A)
【文献】 特開2003−331874(JP,A)
【文献】 特開2001−342056(JP,A)
【文献】 特開平11−171549(JP,A)
【文献】 特開平07−138069(JP,A)
【文献】 特開2013−012423(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0195334(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料マニホールドと、
長手方向に沿って延びるガス流路を含む支持基板、前記支持基板上において前記長手方向に沿って互いに間隔をあけて配置される複数の発電素子部、及び前記各発電素子部と電気的に接続される複数のインターコネクタを有し、前記燃料マニホールドから延びる燃料電池セルと、
を備え、
前記各インターコネクタのうち、最もガス供給側に配置された基端側インターコネクタの面積は、他のインターコネクタの面積の平均値よりも大きい、
燃料電池スタック。
【請求項2】
前記各インターコネクタのうち、前記基端側インターコネクタの面積が最も大きい、
請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記基端側インターコネクタの面積は、前記各インターコネクタのうち前記長手方向の中央部に配置される中央インターコネクタの面積よりも大きい、
請求項1又は2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記他のインターコネクタの面積の平均値(S0)に対する、前記基端側インターコネクタの面積Saの割合(Sa/S0)は、1.1以上である、
請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
長手方向に沿って延びるガス流路を含む支持基板と、
前記支持基板上において前記長手方向に沿って互いに間隔をあけて配置される複数の発電素子部と、
前記各発電素子部を電気的に接続する複数のインターコネクタと、
を備え、
前記各インターコネクタのうち、最もガス供給側に配置された基端側インターコネクタの面積は、他のインターコネクタの面積の平均値よりも大きい、
燃料電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック、及び燃料電池セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックは、燃料マニホールドと、燃料マニホールドから延びる複数の燃料電池セルとを備えている(特許文献1)。各燃料電池セルは、支持基板と、複数の発電素子部と、複数のインターコネクタとを有している。支持基板は、長手方向に延びるガス流路を有している。各発電素子部は、支持基板上において長手方向に間隔をあけて配置されている。各発電素子部は、インターコネクタによって電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5551803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような燃料電池スタックにおいて、発電効率を向上させることが要求されている。そこで、本発明の課題は、発電効率をより向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ガス供給側のインターコネクタが、燃料電池セルの発電効率の低下の要因となることを見出した。すなわち、各発電素子部は、燃料ガス及び空気が供給されて発電する。ここで、供給される燃料ガス又は空気が十分に予熱されていない場合、最もガス供給側に配置された基端側インターコネクタが燃料ガス又は空気によって冷却されてしまう。この結果、他のインターコネクタに比べて基端側インターコネクタの電気抵抗が大きくなってしまい、燃料電池セルの発電効率が低くなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の第1側面に係る燃料電池スタックは、燃料マニホールドと、燃料電池セルとを備えている。燃料電池セルは、燃料マニホールドから延びている。燃料電池セルは、支持基板、複数の発電素子部、及び複数のインターコネクタを有する。支持基板は、長手方向に沿って延びるガス流路を含む。各発電素子部は、支持基板上に配置されている。また、各発電素子部は、長手方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。各インターコネクタは、各発電素子部と電気的に接続されている。各インターコネクタのうち、最もガス供給側に配置された基端側インターコネクタの面積は、他のインターコネクタの面積の平均値よりも大きい。
【0007】
この構成によれば、最もガス供給側に配置された基端側インターコネクタの面積が、他のインターコネクタの面積の平均値よりも大きいため、基端側インターコネクタの電流密度が小さくなり、基端側インターコネクタの電気抵抗を小さくすることができる。この結果、温度低下によって基端側インターコネクタの電気抵抗が大きくなった場合であっても、基端側インターコネクタの電気抵抗と他のインターコネクタの電気抵抗との差を小さくすることができる。したがって、燃料電池セルの発電効率を向上させることができる。
【0008】
好ましくは、各インターコネクタのうち、基端側インターコネクタの面積が最も大きい。
【0009】
好ましくは、基端側インターコネクタは、各インターコネクタのうち長手方向の中央部に配置される中央インターコネクタの面積よりも大きい。通常、長手方向の中央に配置される中央インターコネクタの温度が最も高くなるため、中央インターコネクタの電気抵抗と基端側インターコネクタの電気抵抗との差が最も大きくなる。そこで、基端側インターコネクタの面積を中央インターコネクタの面積よりも大きくすることで、基端側インターコネクタの電気抵抗と中央インターコネクタの電気抵抗との差を小さくすることができる。この結果、燃料電池セルの発電効率を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、他のインターコネクタの面積の平均値(S0)に対する、基端側インターコネクタの面積(Sa)の割合(Sa/S0)は、1.1以上である。
【0011】
本発明の第2側面に係る燃料電池セルは、支持基板と、複数の発電素子部と、複数のインターコネクタとを備えている。支持基板は、長手方向に沿って延びるガス流路を含んでいる。各発電素子部は、支持基板上において長手方向に沿って互いに間隔をあけて配置される。各インターコネクタは、各発電素子部を電気的に接続している。各インターコネクタのうち、最もガス供給側に配置された基端側インターコネクタの面積は、他のインターコネクタの面積の平均値よりも大きい。
【0012】
この構成によれば、最もガス供給側に配置された基端側インターコネクタの面積が、他のインターコネクタの面積の平均値よりも大きいため、基端側インターコネクタの電流密度が小さくなり、基端側インターコネクタの電気抵抗を小さくすることができる。この結果、温度低下によって基端側インターコネクタの電気抵抗が大きくなった場合であっても、基端側インターコネクタの電気抵抗と他のインターコネクタの電気抵抗との差を小さくすることができる。したがって、燃料電池セルの発電効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る燃料電池スタックによれば、発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】燃料電池スタックの斜視図。
図2】燃料電池スタックの断面図。
図3】燃料マニホールドの斜視図。
図4】燃料電池セルの斜視図。
図5】燃料電池セルの断面図。
図6】燃料電池セルの断面図。
図7】燃料電池セルの断面図。
図8】燃料電池セルと燃料マニホールドとの接合部を示す図。
図9】燃料電池スタックへのガス供給方法を示す図。
図10】電流の流れ方向を示す燃料電池セルの断面図。
図11】燃料電池スタックの製造方法を示す図。
図12】燃料電池スタックの製造方法を示す図。
図13】実施例に係る燃料電池セルの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る燃料電池スタックの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、燃料電池スタック100は、燃料マニホールド200と、複数の燃料電池セル301と、を備えている。
【0017】
[燃料マニホールド]
図3に示すように、燃料マニホールド200は、燃料ガスを各燃料電池セル301に分配するように構成されている。燃料マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。燃料マニホールド200の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスが供給される。燃料マニホールド200は、互いに間隔をあけて並ぶ複数の貫通孔202を有している。各貫通孔202は、燃料マニホールド200の天板203に形成されている。各貫通孔202は、燃料マニホールド200の内部空間と外部とを連通する。
【0018】
[燃料電池セル]
図2に示すように、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200から延びている。詳細には、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200の天板203から上方(x軸方向)に延びている。すなわち、各燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)は、上方に延びている。図4及び図5に示すように、燃料電池セル301は、複数の発電素子部10と、支持基板20と、複数のインターコネクタ31を備えている。
【0019】
[支持基板]
支持基板20は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に沿って延びる複数のガス流路21を内部に有している。各ガス流路21は、互いに実質的に平行に延びている。図5に示すように、支持基板20は、複数の第1凹部22を有している。各第1凹部22は、支持基板20の両面に形成されている。各第1凹部22は支持基板20の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第1凹部22は、支持基板20の幅方向(y軸方向)の両端部には形成されていない。
【0020】
支持基板20は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板20は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板20は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板20の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0021】
[発電素子部]
各発電素子部10は、支持基板20の両面に支持されている。なお、各発電素子部10は、支持基板20の片面のみに支持されていてもよい。各発電素子部10は、支持基板20の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル301は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。長手方向に隣り合う発電素子部10は、電気的接続部30によって互いに電気的に接続されている。
【0022】
各発電素子部10は、燃料極4、電解質5、及び空気極6を有している。また、各発電素子部10は、反応防止膜7をさらに有している。燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。燃料極4は、燃料極集電部41と燃料極活性部42とを有する。
【0023】
燃料極集電部41は、第1凹部22内に配置されている。詳細には、燃料極集電部41は、第1凹部22内に充填されており、第1凹部22と同様の外形を有する。各燃料極集電部41は、第2凹部41a及び第3凹部41bを有している。燃料極活性部42は、第2凹部41a内に配置されている。詳細には、燃料極活性部42は、第2凹部41a内に充填されている。
【0024】
燃料極集電部41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部41は、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部41の厚さ、並びに第1凹部22の深さは、50〜500μm程度である。
【0025】
燃料極活性部42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部42は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部42の厚さは、5〜30μmである。
【0026】
電解質5は、燃料極4上を覆うように配置されている。詳細には、電解質5は、あるインターコネクタ31から他のインターコネクタ31まで長手方向に延びている。すなわち、燃料電池セル301の長手方向において、電解質5とインターコネクタ31とが交互に配置されている。
【0027】
電解質5は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。電解質5は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質5は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質5の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0028】
反応防止膜7は、緻密な材料からなる焼成体であり、平面視(z軸方向視)において、燃料極活性部42と略同一の形状である。反応防止膜7は、電解質5を介して、燃料極活性部42と対応する位置に配置されている。反応防止膜7は、電解質5内のYSZと空気極6内のSrとが反応して電解質5と空気極6との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0029】
空気極6は、反応防止膜7上に配置されている。空気極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極6は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極6は、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極6は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極6の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0030】
[電気的接続部]
電気的接続部30は、支持基板20の長手方向に隣り合う発電素子部10を電気的に接続するように構成されている。また、後述する集電部材302と発電素子部10との間に配置された電気的接続部30は、集電部材302と発電素子部10とを電気的に接続する。電気的接続部30は、インターコネクタ31及び空気極集電膜32を有する。
【0031】
[インターコネクタ]
インターコネクタ31は、第3凹部41b内に配置されている。詳細には、インターコネクタ31は、第3凹部41b内に埋設(充填)されている。インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ31は、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0032】
図6に示すように、各インターコネクタ31は、各発電素子部10と電気的に接続されている。隣り合う各発電素子部10の間に配置されたインターコネクタ31は、隣り合う各発電素子部10を互いに電気的に接続する。詳細には、インターコネクタ31は、空気極集電膜32とともに、隣り合う各発電素子部10を互いに電気的に接続する。
【0033】
最もガス供給側(図6の一番左側)に配置された発電素子部10よりもガス供給側に配置されたインターコネクタ31は、その発電素子部10と、後述する集電部材302とを電気的に接続する。詳細には、インターコネクタ31は、空気極集電膜32とともに、発電素子部10と集電部材302とを電気的に接続する。
【0034】
なお、各インターコネクタ31のうち、最もガス供給側(図6の一番左側)に配置されたインターコネクタ31を基端側インターコネクタ31aとする。ガス供給側とは、ガスが供給される側、すなわち、燃料マニホールド200側を言う。最もガス供給側に配置されたインターコネクタ31とは、最も燃料マニホールド200に近いインターコネクタ31と同義である。
【0035】
最もガス排出側(図6の一番右側)に配置された発電素子部10よりもガス排出側に配置されたインターコネクタ31は、その発電素子部10と後述する表裏間接続部材303とを電気的に接続する。
【0036】
基端側インターコネクタ31aの面積は、他のインターコネクタ31の面積の平均値よりも大きい。なお、インターコネクタ31の面積は、インターコネクタ31の厚さ方向に沿って見た状態(z軸方向視)の面積を言う。基端側インターコネクタ31aは、他のインターコネクタ31と比べて、幅方向(y軸方向)の寸法を同じにして、長手方向(x軸方向)の寸法を変えることによって、面積を大きくすることが好ましい。
【0037】
各インターコネクタ31の面積の比較は、各インターコネクタ31が形成された支持基板20の面毎に行う。例えば、支持基板20の両面に各インターコネクタ31が形成されている場合、支持基板20の一方面に形成された基端側インターコネクタ31aの面積は、支持基板20の一方面に形成された他の各インターコネクタ31の面積の平均値よりも大きくなるように設計される。また、支持基板20の他方面に形成された基端側インターコネクタ31aの面積は、支持基板20の他方面に形成された他の各インターコネクタ31の面積の平均値よりも大きくなるように設計される。
【0038】
基端側インターコネクタ31aは、各インターコネクタ31のうちで最も大きい面積を有することが好ましい。例えば、基端側インターコネクタ31aは、他の全てのインターコネクタ31の面積よりも大きい。なお、他のインターコネクタ31のうち、基端側インターコネクタ31aと同じ面積を有するものがあってもよい。例えば、各インターコネクタ31のうち最もガス排出側に配置されたインターコネクタ31、すなわち、各インターコネクタ31のうち最も燃料マニホールド200から遠い位置に配置されたインターコネクタ31の面積が、基端側インターコネクタ31aの面積と同じであってもよい。
【0039】
また、基端側インターコネクタ31aの面積は、各インターコネクタ31のうち、長手方向の中央部に配置された中央インターコネクタ31の面積よりも大きい。なお、支持基板20上に配置されるインターコネクタ31の数が偶数の場合、長手方向の中央部には2つのインターコネクタ31が配置されることになる。そして、基端側インターコネクタ31aの面積は、この2つのインターコネクタ31の各面積よりも大きい。
【0040】
好ましくは、他の各インターコネクタ31の面積の平均値S0に対する、基端側インターコネクタ31aの面積Saの割合Sa/S0は、1.1以上とすることが好ましい。また、上記割合Sa/S0は、2.5以下とすることが好ましい。
【0041】
[空気極集電膜]
空気極集電膜32は、隣り合う発電素子部10のインターコネクタ31と空気極6との間を延びるように配置される。例えば、図5の左側に配置された発電素子部10の空気極6と、図5の右側に配置された発電素子部10のインターコネクタ31とを電気的に接続するように、空気極集電膜32が配置されている。空気極集電膜32は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。
【0042】
空気極集電膜32は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電膜32は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電膜32は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜32の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0043】
[集電部材]
以上のように構成された燃料電池セル301は、隣り合う燃料電池セル301と、集電部材302によって電気的に接続されている。図2に示すように、集電部材302は、一対の燃料電池セル301間に配置されている。そして、集電部材302は、厚さ方向(z軸方向)において隣り合う燃料電池セル301同士を電気的に接続するよう、導電性を有している。詳細には、集電部材302は、燃料電池セル301のガス供給側において、隣り合う燃料電池セル301同士を接続している。集電部材302は、基端側インターコネクタ31aよりもガス供給側に配置されている。詳細には、図7に示すように、集電部材302は、基端側インターコネクタ31aから延びる空気極集電膜32上に配置されている。
【0044】
集電部材302は、ブロック状である。例えば、集電部材302は、直方体状又は円柱状である。集電部材302は、例えば、酸化物セラミックスの焼成体で構成されている。このような酸化物セラミックスとしては、例えば、ペロブスカイト酸化物、又はスピネル酸化物などが挙げられる。ペロブスカイト酸化物としては、例えば、(La,Sr)MnO、又は(La,Sr)(Co,Fe)O等が挙げられる。スピネル酸化物としては、例えば、(Mn,Co)、又は(Mn,Fe)等が挙げられる。この集電部材302は、例えば、可撓性を有していない。
【0045】
集電部材302は、第1接合材101によって、各燃料電池セル301に接合されている。すなわち、第1接合材101は、各集電部材302と各燃料電池セル301とを接合している。第1接合材101は、例えば、(Mn,Co)、(La,Sr)MnO又は(La,Sr)(Co,Fe)O等よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0046】
[表裏間接続部材]
図6に示すように、燃料電池セル301は、表裏間接続部材303を有している。表裏間接続部材303は、支持基板20の一方面において最もガス排出側に配置された発電素子部10と、支持基板20の他方面において最もガス排出側に配置された発電素子部10とを、電気的に接続している。表裏間接続部材303は、例えば、上述した空気極集電膜32において説明した材料によって形成することができる。
【0047】
図2に示すように、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200に支持されている。詳細には、各燃料電池セル301は、第2接合材102によって、燃料マニホールド200の天板203に固定されている。より詳細には、図9に示すように、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200の貫通孔202に挿入されている。燃料電池セル301は、貫通孔202に挿入された状態で、第2接合材102によって燃料マニホールド200に固定されている。
【0048】
第2接合材102は、燃料電池セル301が挿入された状態の貫通孔202内に充填される。すなわち、第2接合材102は、燃料電池セル301の外周面と、貫通孔202を画定する壁面との隙間に充填される。第2接合材102は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−B系、SiO−CaO系、又はSiO−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、第2接合材102の材料として、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第2接合材102は、SiO−MgO−B−Al系及びSiO−MgO−Al−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0049】
燃料マニホールド200から突出している各燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)の長さは、100〜300mm程度とすることができる。また、各燃料電池セル301は、燃料電池セル301の厚さ方向(z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。この燃料電池セル301同士の間隔は、1〜5mm程度とすることができる。
【0050】
[発電方法]
以上のように構成された燃料電池スタック100は、次のようにして発電する。燃料マニホールド200を介して各燃料電池セル301のガス流路21内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板20の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝す。
【0051】
酸素を含むガスは、例えば、図9に示すように、幅方向(y軸方向)に沿って流れるように、燃料マニホールド200の天板203に沿って流れる。詳細には、燃料電池スタック100は、ガス供給部材400をさらに有している。ガス供給部材400は、各燃料電池セル301の間において、空気などのガスを供給するように構成されている。なお、ガス供給部材400から供給されたガスが効率的に上方へ流れるよう、案内板401がガス供給部材400と反対側に設置されていてもよい。案内板401は、平板状であって、燃料電池セル301の長手方向に延びるとともに、燃料電池セル301の厚さ方向に延びている。
【0052】
以上のように、燃料ガス、及び酸素を含むガスを供給された各発電素子部10において、電解質5の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。この燃料電池スタック100を外部の負荷に接続すると、空気極6において下記(1)式に示す電気化学反応が起こり、燃料極4において下記(2)式に示す電気化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O+2e→O …(1)
+O→HO+2e …(2)
発電状態においては、電流は、図10において矢印で示すように流れる。インターコネクタ31、及び発電素子部10において、電流は厚さ方向に流れる。
【0053】
[製造方法]
次に、上述したように構成された燃料電池スタックの製造方法について説明する。
【0054】
まず、燃料マニホールド200と複数の燃料電池セル301とを準備する。そして、図11に示すように、各燃料電池セル301を集電部材302及び第1接合材101によって接続し、セル集合体300を作製する。なお、この段階では第1接合材101は焼成されておらず、各燃料電池セル301は互いに仮止めの状態である。
【0055】
次に、図12に示すように、セル集合体300の各燃料電池セル301の端部を燃料マニホールド200の各貫通孔202に挿入する。なお、各燃料電池セル301が第1方向に沿って所定の間隔を保持するための治具を用いてもよい。
【0056】
次に、燃料電池セル301が挿入された状態の貫通孔202内に第2接合材102を充填する。なお、第2接合材102は、支持板の表面から上方に向けてはみ出す程度まで充填することが好ましい。
【0057】
次に、第1接合材101及び第2接合材102に対して熱処理が加えられる。この熱処理によって、第1接合材101及び第2接合材102が固化され、燃料電池スタック100が完成する。詳細には、第1接合材101は、熱処理を施されることによって焼成される。この結果、各燃料電池セル301と集電部材302とが固定される。また、第2接合材102は、熱処理を施されることによって、非晶質材料の温度が結晶化温度まで到達する。そして、結晶化温度下にて材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される第2接合材102が機能を発揮し、各燃料電池セル301の近位端部が燃料マニホールド200に固定される。その後、所定の治具が燃料電池スタック100から取り外される。
【0058】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0059】
変形例1
上記実施形態では、支持基板20は平板状であったが、円筒状であってもよい。すなわち、燃料電池セル301は、円筒型であってもよい。
【0060】
変形例2
複数の燃料電池セル301のうち、少なくとも1つの燃料電池セル301において、基端側インターコネクタ31aの面積が、他のインターコネクタ31の面積の平均値よりも大きくなっていればよい。例えば、複数の燃料電池セル301のうち、いくつかの燃料電池セル301において、基端側インターコネクタ31aの面積が、他のインターコネクタ31の面積と同じ、又は他のインターコネクタ31の面積よりも小さくてもよい。
【実施例】
【0061】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0062】
No.1〜9に係る燃料電池セル301を以下のように作製した。
【0063】
上述したように構成された燃料電池セル301を作製した。各燃料電池セル301は、長手方向に間隔をあけて配置された8個の発電素子部10を有する。各発電素子部10は、電気的接続部30によって直列に接続した。なお、各発電素子部10の間のそれぞれに電気的接続部30が配置されるとともに、最もガス供給側の発電素子部10よりもガス供給側にも1つの電気的接続部30が配置されている。電気的接続部30の数は、発電素子部10の数と同じである。各発電素子部10及び電気的接続部30は、支持基板20の一方の面のみに形成した。
【0064】
各燃料電池セル301において、各インターコネクタ31の面積Sa〜Shを表1の通りとした。なお、各インターコネクタ31の面積Sa〜Shは、最もガス供給側から順に並んでいる(図13参照)。また、各インターコネクタ31の幅方向の寸法は同じであり、長手方向の寸法を調整することによって各インターコネクタ31の面積を調整した。また、各燃料電池セル301において、各インターコネクタ31の面積以外の構成は同じである。表1のS0は、各燃料電池セル301における、基端側インターコネクタ31a以外の他のインターコネクタ31の面積の平均値である。
【0065】
(評価方法)
以上のようにして作製した各燃料電池セル301を1つの燃料マニホールド200に挿入して、燃料マニホールド200を介して各燃料電池セル301のガス流路21に燃料ガスを供給した。また、幅方向に沿って、基端側インターコネクタ31aの下方から空気を供給した。そして、各燃料電池セル301の起電力を測定し、各サンプルを評価した。この評価結果を表1に示す。なお、評価条件は、温度が750℃、電流密度が0.2A/cm、燃料利用率が80%、空気利用率が40%であった。
【0066】
【表1】
【0067】
表1より、基端側インターコネクタ31aの面積を、他のインターコネクタ31の面積の平均値S0よりも大きくすることによって、起電力が大きくなることが分かった。また、他のインターコネクタ31aの面積の平均値S0に対する、基端側インターコネクタ31aの割合(Sa/S0)を1.1以上とすることで、より起電力が大きくなっていることが分かった。
【符号の説明】
【0068】
200 燃料マニホールド
301 燃料電池セル
10 発電素子部
20 支持基板
21 ガス流路
31 インターコネクタ
31a 基端側インターコネクタ
【要約】
【課題】発電効率を向上させる。
【解決手段】燃料電池セル301は、支持基板20、複数の発電素子部10、及び複数のインターコネクタ31を有する。支持基板20は、長手方向に沿って延びるガス流路21を含む。各発電素子部10は、支持基板20上において、長手方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。各インターコネクタ31は、各発電素子部10と電気的に接続されている。各インターコネクタ31のうち、最もガス供給側に配置された基端側インターコネクタ31aの面積は、他のインターコネクタ31の面積の平均値よりも大きい。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13