(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
而して、近年、電子写真装置の開発が進んでおり、より高画質でより高速に印刷できるようにするため、感光体層を基体の外表面に薄く均一に塗工することが望まれている。特に、感光体層が機能分離型有機感光体層である場合には、電荷発生層を薄く均一に塗工する必要がある。電荷発生層を安定して薄く均一に塗工するには、一般に、基体の外表面における画像形成面を表面粗さRy1.0μm以下といった鏡面状態にしなければならないと言われている。
【0016】
基体が切削管から形成される場合には、確かに、基体の画像形成面をRy1.0μm以下の表面粗さにすれば高品質の画像を得ることができる。これに対して、基体が無切削管から形成される場合には、基体の画像形成面をRy1.0μm以下の表面粗さにしても、レーザー光の多重反射による干渉縞が発生するなどして高品質の画像を得ることができないことがあったし、これとは逆に、基体の画像形成面がRy1.0μmを超えた表面粗さであっても、高品質の画像を得ることができることがあった。そこで、その原因について本発明者らが調査したところ、以下のような知見を得た。
【0017】
一般に、基体の画像形成面の表面粗さは、JIS(日本工業規格)に準拠した、先端半径Rが5μmのプローブを用いた触針式の表面粗さ計により測定される。基体が切削管から形成される場合、基体の画像形成面は切削機械により切削加工されてなる規則的な表面形態であるため、画像形成面の表面粗さRyは触針式表面粗さ計による測定箇所によらずその値は略一定である。したがって、基体が切削管から形成される場合には、触針式表面粗さ計で測定された表面粗さRyは、画質についての良否判断の指標になり得る。
【0018】
一方、基体が切削管ではなく無切削管から形成される場合、
図6に示すように、基体の画像形成面は引抜加工等により形成された比較的不規則な表面形態であるため、画像形成面の表面粗さRyは触針式表面粗さ計による測定箇所A、Bによってその値が大きく異なる。例えば、測定箇所Aで測定した表面粗さRyは、測定箇所Bで測定した表面粗さRyよりも大きくなる。さらに、触針式表面粗さ計で表面粗さを測定する場合には、プローブの先端が入らない部分について測定精度に欠けるという欠点もある。したがって、基体が無切削管から形成される場合には、触針式表面粗さ計で測定された表面粗さRyを画質についての良否判断の指標とするのは適切ではない。
【0019】
以上のような知見を本発明者らは得ることができた。
【0020】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、無切削金属管から形成された感光ドラム用基体について、画質の良否を判断するための新たな指標を提供することにより、高品質の画像を得ることができる感光ドラム用基体、該基体を用いた感光ドラム、及び、該基体の製造方法を提供することにある。
【0021】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の好ましい実施形態から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は以下の手段を提供する。
【0023】
[1] 無切削金属管から形成された感光ドラム用基体であって、
画像形成面を任意の大きさの視野で観察した観察視野において、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率が2%よりも大きく、且つ、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積が8μm
2よりも大きいことを特徴とする感光ドラム用基体。
【0024】
[2] 観察視野において、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率が15%以下であり、且つ、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積が20μm
2以下であり、且つ、面積300μm
2以上の粗大ピットがない前項1記載の感光ドラム用基体。
【0025】
[3] アルミニウム製である前項1又は2記載の感光ドラム用基体。
【0026】
[4] 前項1〜3のいずれかに記載の感光ドラム用基体の製造方法であって、
押出金属管を、押出金属管の外表面を加工する引抜ダイスと、押出金属管の内表面を加工する引抜プラグとを具備する引抜加工装置を用いて引抜加工することにより、無切削金属管を得る引抜加工工程を含み、
前記引抜ダイスは、
前記押出金属管が縮径加工されながら離れる第1曲面部と、
前記第1曲面部における押出金属管離れ位置よりも内側且つ下流側に配置されたダイスベアリング部と、
前記ダイスベアリング部の上流端に滑らかに連なる第2曲面部を有するとともに前記第1曲面部から離れた押出金属管と再接触して該押出金属管を縮径加工しながら前記ダイスベアリング部へ案内する案内部と、
を備えており、
前記引抜プラグは、前記ダイスベアリング部の長さよりも短いプラグベアリング部を備えていることを特徴とする感光ドラム用基体の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明は以下の効果を奏する。
【0028】
前項[1]の基体は、その画像形成面の観察視野において、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率が2%よりも大きく、且つ、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積が8μm
2よりも大きい。このような基体を用いて感光ドラムを製造することにより、露光源から発せられた光(例:レーザー光)の多重反射による干渉縞の発生を防止することができ、もって高品質の画像を得ることができる。
【0029】
前項[2]の基体は、その画像形成面の観察視野において、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率が15%以下であり、且つ、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積が20μm
2以下であり、且つ、面積300μm
2以上の粗大ピットがない。このような基体を用いて感光ドラムを製造することにより、印刷面に黒点が発生するのを防止することができ、もって高品質の画像を確実に得ることができる。
【0030】
前項[3]の基体は、アルミニウム製であることにより、感光ドラムの軽量化が図られ、もって感光ドラムの回転に要する駆動力を減少させることができる。
【0031】
前項[4]の感光ドラム用基体の製造方法は、引抜加工工程において押出金属管を所定の引抜加工装置を用いて引抜加工するので、次の効果を奏する。
【0032】
引抜加工工程では、押出金属管は、引抜加工装置の引抜ダイスの第1曲面部により縮径加工されながら、案内部に向かって誘導されるように第1曲面部から離れる。そして、該管は案内部に再接触して案内部により縮径加工されながら案内部からダイスベアリング部へ案内されて、管がダイスベアリング部とプラグベアリング部との間を通過する。
【0033】
以上のような押出金属管の材料流動において、ダイスベアリング部は第1曲面部における押出金属管離れ位置よりも内側に配置されているので、管が第1曲面部からダイスベアリング部へと移動する間に管が過度に縮径されるのを防止することができる。
【0034】
さらに、ダイスベアリング部の上流端に案内部の第2曲面部が滑らかに連なっているので、案内部に再接触した管はこの第2曲面部を通ってダイスベアリング部に向かって円滑に移動することができる。
【0035】
さらに、引抜プラグのプラグベアリング部の長さが引抜ダイスのダイスベアリング部の長さよりも短く設定されることにより、プラグベアリング部とダイスベアリング部との両部位から押出金属管にその外表面を適度な高平滑面に加工するのに必要な圧力を確実に与えることができる。
【0036】
以上のような効果が相乗的に作用することにより、押出金属管の外表面を確実に適度な高平滑面に加工することができる。これにより、前項[1]〜[3]のいずれかの基体を高い歩留まり率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0039】
図1において、41は、本発明の一実施形態に係る感光ドラム用基体である。
図2に示すように、感光ドラム47は、この基体41の外表面41aの画像形成面41aa上に、その周方向の全周に亘って、積層型感光体層としての機能分離型有機感光体層45がアンダーコート層(下引き層、UCL)42を介して塗工される。すなわち、アンダーコート層42は、基体41の画像形成面41aaと感光体層45との間に配置される。感光体層45は、アンダーコート層42上に形成された電荷発生層(CGL)43と、該電荷発生層43上に形成された電荷輸送層(CTL)44とから構成されている。
【0040】
なお、基体41の外表面41aのうち両端近傍領域は、一般に、画像形成に供されない領域であるため、画像形成面41aaに該当しない。すなわち、本明細書及び特許請求の範囲では、基体41の画像形成面41aaとは、基体41の外表面41aのうち画像形成に供されない両端近傍領域を除いた、軸方向中央領域をいう。
【0041】
感光ドラム47は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置に用いられるものである。
【0042】
基体41は、無切削金属管から形成されたものであり、詳述すると無切削アルミニウム管からなるものである。本実施形態では、無切削アルミニウム管は、詳述すると、押出金属管としての押出アルミニウム管40を引抜加工して得られた管、即ちアルミニウム押出−引抜管であり、またその断面形状は円環状である。
【0043】
基体41の材質は、Al−Mn系合金、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金、純Al等である。このように基体41がアルミニウム製であることにより、感光ドラム47の軽量化が図られ、もって感光ドラム47の回転に要する駆動力を減少させることができる。
【0044】
基体41の長さ、直径(外径)及び肉厚は、限定されるものではないが、具体的に例示すると、基体41の長さは200〜400mm、その外径は15〜50mm、その肉厚は0.5〜2mmである。
【0045】
基体41は上述したように押出−引抜管から形成されたものなので、基体41の画像形成面41aaには、
図6に示すように、微小な凹状部の一種であるオイルピットが多数発生している。オイルピットとは、引抜加工用潤滑油の押込みに起因する微小な凹状部であり、詳述すると、引抜加工時に管の外表面と引抜ダイスとの間に浸入した潤滑油が管の外表面に押し込まれることにより管の外表面に形成された微小な凹状部である。さらに、画像形成面41aaには、オイルピットとは異なる微小な凹状部が発生していることもある。そこで、本明細書及び特許請求の範囲では、オイルピットと、オイルピットとは異なる微小な凹状部とをまとめて「ピット」と呼ぶ。なお
図6において、黒く見える箇所(暗視野部)がピットである。
【0046】
本実施形態では、基体41は、その画像形成面41aaを任意の大きさの視野で観察した観察視野52において、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率が2%よりも大きいという要件(この要件を「第1要件」という)と、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積が8μm
2よりも大きいという要件(この要件を「第2要件」という)とを満足している必要がある。
【0047】
第1要件及び第2要件を満足した基体41を用いて感光ドラム47を製造することにより、露光源から発せられたレーザー光の多重反射による干渉縞の発生を防止することができ、これにより高品質の画像を確実に得ることができる。したがって、第1要件及び第2要件が、無切削金属管としての無切削アルミニウム管から形成された基体41について、画質の良否を正確に判断するための指標となる。
【0048】
第1要件において、特に望ましくは、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率は5%よりも大きいことである。
【0049】
第2要件において、特に望ましくは、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積が10μm
2以上であることである。
【0050】
さらに、基体41は、観察視野52において、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率が15%以下であるという要件(この要件を「第3要件」という)と、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積が20μm
2以下であるという要件(この要件を「第4要件」という)と、面積300μm
2以上の粗大ピットがないという要件(この要件を「第5要件」という)とを満足していることが望ましい。
【0051】
第1要件〜第5要件を全て満足した基体41を用いて感光ドラム47を製造することにより、レーザー光の多重反射による干渉縞の発生を防止することができることはもとより、更に、印刷面に感光体層45の塗工ムラによる黒点が発生するのを防止することができ、これにより高品質の画像を確実に得ることができる。したがって、第1要件〜第5要件が、無切削金属管としての無切削アルミニウム管から形成された基体41について、画質の良否をより一層正確に判断するための指標となる。
【0052】
観察視野52の面積(即ち観察視野52の大きさ)は、任意であるが、特に0.3mm
2〜1mm
2であることが望ましい。さらに、観察視野52の形状は、任意であるが、特に略正方形状や略円形状であることが望ましい。
【0053】
画像形成面41aaにおける観察箇所は、任意の箇所である。さらに、観察箇所の数は、1箇所以上であり、特に、指標の精度を高めるため複数箇所であることが望ましく、通常2〜5箇所である。
【0054】
本実施形態では、
図1に示すように、画像解析装置50に備えられた撮像部51により画像形成面41aaを撮像した画像を観察視野52とし、該画像を画像解析装置50により解析することにより、上記各要件を満足しているか否かを判定する。
【0055】
画像解析装置50の撮像部51は、CCDカメラを有しており、具体的にはデジタルマイクロスコープ等が用いられる。画像解析装置50は、撮像部51が撮像した画像を解析する画像解析ソフトウェアがインストールされたコンピュータ、画像を記憶する記憶部(例:ハードディスク)、画像を表示する表示部(例:液晶ディスプレイ)等を有している。
【0056】
画像解析は、画像解析装置50に備えられた2値化処理部により画像を2値化処理した2値化画像に基づいて行われるのが望ましい。
【0057】
ここで、面積1μm
2未満のピットは画質に与える悪影響が非常に少ない。したがって、面積1μm2以上のピットだけを画像解析の対象にして上記各要件の判定を行う。
【0058】
さらに、基体41は、その軸方向にできる限り真直であることが特に望ましい。具体的には、基体41は、両端部が回転可能に支持された基体41がその両端部の軸を中心に回転された場合における基体41の軸方向中間部の外周面の径方向の回転振れ量が15μm以下(特に望ましくは12μm以下)に設定されることが良い。
【0059】
図2に示すように、アンダーコート層42は、基体41の画像形成面41aa上に塗工されたものである。アンダーコート層42用材料としては、限定されるものではなく公知のものを用いることができ、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ポリアミド、共重合ナイロン、ニカワ、ゼラチン等が用いられる。
【0060】
アンダーコート層42の厚さt1は、限定されるものではないが、20μm未満であることが望ましい。その理由は次のとおりである。即ち、アンダーコート層42の厚さt1が20μm以上である場合、画像形成面41aaに存在するピットが厚いアンダーコート層42で被覆されることとなるため、ピットが存在する部分とピットが存在しない部分との間の層厚差が相対的に小さくなり、そのためピットによる画質差は見えにくくなる反面、アンダーコート層42が湿気を吸収するので、環境変化による画質の低下を招く虞がある。これに対して、アンダーコート層42の厚さt1が20μm未満である場合には、高品質の画像を確実に得ることができる。
【0061】
電荷発生層43は、アンダーコート層42上に塗工されたものである。電荷発生層43中に含有される電荷発生材料(CGM)としては、限定されるものではなく公知のものを用いることができ、具体的には、アゾ顔料、ジスアゾ顔料、キノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピリリウム塩、アズレニウム塩等が用いられる。電荷発生層43は、これらの電荷発生材料がバインダー樹脂中に分散した状態で形成されている。バインダー樹脂としては、限定されるものではなく公知のものを用いることができ、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂等が用いられる。
【0062】
電荷輸送層44は、電荷発生層43上に塗工されたものである。電荷輸送層44中に含有される電荷輸送材料(CTM)としては、限定されるものではなく公知のものを用いることができ、具体的には、ピラゾリン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体等が用いられる。電荷輸送層44は、これらの電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散した状態で形成されている。バインダー樹脂としては、限定されるものではなく公知のものを用いることができ、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。
【0063】
電荷輸送層44の厚さは、限定されるものではなく、例えば10μm〜30μmの範囲内である。
【0064】
ここで本発明では、
図3に示すように、基体41の画像形成面41aaと感光体層45との間にアンダーコート層が配置されておらず、すなわち、基体41の画像形成面41aa上に感光体層45の電荷発生層43が直接形成されていても良い。
【0065】
次に、基体41の好ましい製造方法について以下に説明する。
【0066】
基体41は、上述したように、押出金属管としての押出アルミニウム管40を引抜加工して得られた管、即ち押出−引抜管から形成されている。この引抜加工において、押出アルミニウム管40を引抜加工する引抜加工装置は、公知の装置を用いることができるが、特に、
図4A〜4Cに示した構成の装置10を用いることが望ましい。
【0067】
この引抜加工装置10は、
図4Aに示すように、空引き方式ではなくプラグ引き方式を採用したものである。したがって、この引抜加工装置10は、引抜ダイス20と引抜プラグ30とを含む引抜加工工具11を具備しており、更に、牽引装置12、潤滑油供給装置13などを具備している。
【0068】
この引抜加工装置10では、例えば、押出管40の縮径率が10%〜20%の範囲内になるように押出管40が引抜加工される。
【0069】
なお、押出管40の縮径率(詳述すると押出管40の外径の縮径率)Qは、引抜加工前の押出管40の外径をD0、引抜加工後の押出管40の外径をD1としたとき、次式(1)により算出される。
【0070】
Q={1−(D1/D0)}×100% …式(1)
【0071】
引抜ダイス20は、押出管40の外表面40aを加工するものであり、ダイスホルダ(図示せず)により固定状態に保持されている。引抜ダイス20の材質は、超硬、ダイス鋼、高速度工具鋼、セラミック等である。この引抜ダイス20の詳細な構成は後述する。
【0072】
引抜プラグ30は、押出管40の中空部40c内に配置されるとともに押出管40の内表面40bを加工するものであり、引抜プラグ30を支持する支持棒31の先端部に固定状態に設けられている。この引抜プラグ30は、引抜方向Nに延びたプラグベアリング部3Bを有する略玉芯型のものである。引抜プラグ30の材質は、超硬、ダイス鋼、高速度工具鋼、セラミック等である。この引抜プラグ30の詳細な構成は後述する。
【0073】
図4Aに示すように、牽引装置12は、押出管40を引抜方向Nに牽引するためのものであり、チャック部12aと、チャック部12aに引抜方向Nの牽引力を付与する駆動源12bとを備えている。チャック部12aは、押出管40の先端部に形成された口付け部40dをチャックするものである。駆動源12bとしては油圧シリンダ等が用いられる。なお、引抜方向Nは、引抜ダイス20のダイス軸Xに沿う方向である(
図4B参照)。
【0074】
潤滑油供給装置13は、押出管40の外表面40aに引抜加工用潤滑油14を供給付着するものであり、潤滑油14を押出管40の外表面40aに向けて噴出するノズル13aを備えている。ノズル13aは引抜ダイス20の上流側に配置されている。
【0075】
潤滑油14としては、限定されるものではないが、40℃での動粘度が200mm
2/s〜800mm
2/sである潤滑油を用いるのが特に望ましい。
【0076】
引抜ダイス20の構成は次のとおりである。
【0077】
引抜ダイス20は、
図4B及び4Cに示すように、そのダイス孔21の内側に配置される引抜プラグ30と組み合わされて用いられるものであり、ダイスアプローチ部1Aと第1曲面部1Cと繋ぎ部1Bと案内部2Dとダイスベアリング部2Bとリリーフ部2Eとを備えている。これらの部位(1A、1C、1B、2D、2B、2E)は、引抜ダイス20のダイス孔21の周面に、引抜方向Nに順に並んで設けられている。さらに、これらの部位は、個別に分割されているのではなく、一体形成されている。また、これらの部位の表面は全て鏡面状に研磨加工されている。
【0078】
ダイスアプローチ部1Aは、引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次減少するように形成されており、詳述すると円錐テーパ状に形成されている。
【0079】
ダイス軸Xに対するダイスアプローチ部1Aの傾斜角、すなわちダイスアプローチ半角θ1(
図4B参照)は、例えば5°〜40°に設定されている。
【0080】
第1曲面部1Cは、ダイスアプローチ部1Aの下流端にダイスアプローチ部1Aに対して滑らかに連なって形成されており、すなわち第1曲面部1Cはダイスアプローチ部1Aの下流端に段差及び角が生じないように連なって形成されている。さらに、第1曲面部1Cは、引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次減少するように形成されている。また、引抜ダイス20のダイス軸Xを含む断面において、ダイス軸Xに対する第1曲面部1Cの接線の傾きは、引抜方向Nに進むにつれて漸次小さくなっている。第1曲面部1Cの縦断面形状は円弧状である。なお本明細書では、縦断面とは引抜ダイス20のダイス軸Xを含む断面であり、即ち
図4B及び4Cに示した断面である。
【0081】
第1曲面部1Cの曲率半径R1は、例えば1mm〜10mmに設定されている。
【0082】
ダイスアプローチ部1Aと第1曲面部1Cは、最初に押出管40を縮径加工(詳述すると押出管40の外表面40aを縮径加工)する部位である。さらに、第1曲面部1Cは、押出管40が縮径加工されながら離れる部位である。
【0083】
ダイスアプローチ部1Aと第1曲面部1Cとを合計した、ダイス軸Xと平行な方向の長さL1は、例えば10mm〜50mmに設定されている。
【0084】
ここで、押出管40(詳述すると押出管40の外表面40a)がダイスアプローチ部1A又は第1曲面部1Cに最初に接触する位置を「J」とする。また、押出管40が縮径加工されながら第1曲面部1Cから離れる位置を「K」とする。本実施形態では、押出管40は、ダイスアプローチ部1Aではなく第1曲面部1Cに最初に接触している。なお本発明では、押出管40はダイスアプローチ部1Aに最初に接触しても良い。
【0085】
ダイスベアリング部2Bは、第1曲面部1Cにおける押出管離れ位置Kよりも内側(即ちダイス軸X側)且つ下流側に第1曲面部1Cに対して離間して配置されている。このダイスベアリング部2Bは、押出管40の外表面40a及び外径寸法を仕上げ加工する部位であり、ダイス軸Xと略平行に延びて形成されている。
【0086】
ダイスベアリング部2Bの長さL4、詳述するとダイスベアリング部2Bのダイス軸Xと平行な方向の長さL4は、例えば3mm〜15mmに設定されており、好ましくは5mm以上に設定されるのが良い。なお、ダイスベアリング部の長さL4とは、ダイスベアリング部2Bの上流端Fと下流端との間の長さである。
【0087】
引抜ダイス20の半径方向rにおいて、第1曲面部1Cにおける押出管離れ位置Kとダイスベアリング部2Bとの間の段差H1は、様々に設定されるものであるが、好ましくは0.3mm以上3mm未満に設定されるのが良い。
【0088】
案内部2Dは、第1曲面部1Cから離れた押出管40(詳述すると押出管40の外表面40a)と再接触して該押出管40を縮径加工しながらダイスベアリング部2Bへ案内する部位である。この案内部2Dは、引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次減少するように形成されている。ここで、押出管40が案内部2Dに再接触する位置を「M」とする。
【0089】
この案内部2Dは、ダイスベアリング部2Bの上流端Fにダイスベアリング部2Bに対して滑らかに連なる縦断面円弧状の第2曲面部2Cを有しており、更に、第2曲面部2Cの上流端に第2曲面部2Cに対して滑らかに連なる縦断面逆円弧状の補助曲面部2Aを有している。
【0090】
引抜ダイス20のダイス軸Xを含む断面において、ダイス軸Xに対する第2曲面部2Cの接線の傾きは、引抜方向Nに進むにつれて漸次小さくなっている。一方、補助曲面部2Aは、第2曲面部2Cの曲がり方向とは反対方向に曲がっている。すなわち、引抜ダイス20のダイス軸Xを含む断面において、ダイス軸Xに対する補助曲面部2Aの接線の傾きは、引抜方向Nに進むにつれて漸次大きくなっている。
【0091】
案内部2Dのダイス軸Xと平行な方向の長さL3は、例えば2mm〜5mmに設定されている。第2曲面部2Cの曲率半径R21は、例えば1mm〜10mmに設定されている。補助曲面部2Aの曲率半径R22は、例えば1mm〜10mmに設定されている。
【0092】
繋ぎ部1Bは、第1曲面部1Cと案内部2Dとの間に配置され、第1曲面部1Cと案内部Dとを繋ぐ部位である。本実施形態では、繋ぎ部1Bは、第1曲面部1Cと案内部2Dとを一体に繋いでいる。したがって、第1曲面部1Cと案内部2Dとは繋ぎ部1Bを介して一体形成されている。さらに、繋ぎ部1Bは、引抜加工時に押出管40と接触しないようにするため、ダイス軸Xと略平行に形成されている。さらに、繋ぎ部1Bの上流端が第1曲面部1Cの下流端に滑らかに連なっている。また、繋ぎ部1Bの下流端が案内部2D(詳述すると案内部2Dの補助曲面部2A)の上流端に滑らかに連なっている。
【0093】
繋ぎ部1Bのダイス軸Xと平行な方向の長さL2は、例えば3mm〜10mmに設定されている。
【0094】
引抜ダイス20の半径方向rにおいて、繋ぎ部1Bとダイスベアリング部2Bとの間の段差H2は、上記の段差H1と等しいか又は僅かに小さく設定されている(即ちH2≦H1)。しかるに、H2とH1との差は一般的に非常に小さい。したがって、H2とH1は、厳密には異なっているが、通常、等しいと捉えても良い。
【0095】
リリーフ部2Eは、引抜ダイス20の押出管出口部を形成する部位であり、押出管40(詳述すると引抜管)と接触しないようにするため、引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次増大するように形成されている。ダイス軸Xに対するリリーフ部2Eの傾斜角、すなわちリリーフ部2Eの逃げ半角θ2(
図4B参照)は、例えば10°〜40°に設定されている。したがって、このリリーフ部2Eは、ダイスベアリング部2Bの下流端に逃げ半角θ2の角度をなして連なっている。
【0096】
リリーフ部2Eのダイス軸Xと平行な方向の長さL5は、例えば2mm〜10mmに設定されている。
【0097】
引抜プラグ30の構成は次のとおりである。
【0098】
引抜プラグ30は、その軸が引抜ダイス20のダイス軸Xと一致して配置されており、プラグアプローチ部3Aと第3曲面部3Cとプラグベアリング部3Bとを備えている。これらの部位(3A、3C、3B)は、引抜プラグ30の周面に、引抜方向Nに順に並んで設けられている。さらに、これらの部位は、個別に分割されているのではなく、一体形成されている。また、これらの部位の表面は全て鏡面状に研磨加工されている。
【0099】
プラグベアリング部3Bは、押出管40の内表面40b及び内径寸法を仕上げ加工する部位であり、引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bに対応した位置に配置されており、詳述するとダイスベアリング部2Bに対向して且つダイス軸Xと略平行に配置されている。さらに、プラグベアリング部3Bの上流端Gの位置は、引抜方向Nにおいて、ダイスベアリング部2Bの上流端Fの位置に対して同じ位置か又は下流側に配置されている。
図4Cにおいて、Sは、ダイスベアリング部2Bの上流端Fの位置に対するプラグベアリング部3Bの上流端Gの位置の下流側へのずれ量を示している。したがって、
図4Cに示すように、ダイスベアリング部2Bの上流端Fの位置に対してプラグベアリング部3Bの上流端Gの位置が下流側にずれている場合、ずれ量Sの符号は「+(正)」である。これとは逆に、プラグベアリング部3Bの上流端Gの位置が上流側にずれている場合、ずれ量Sの符号は「−(負)」である。このずれ量Sは、例えば−5mm〜5mmの範囲に設定されており、好ましくは−1mm〜3mmの範囲に設定されるのが良く、特に0mm〜2mmの範囲に設定されるのが非常に良い。
【0100】
プラグベアリング部3Bの長さL6、詳述するとプラグベアリング部3Bのダイス軸Xと平行な方向の長さL6は、ダイスベアリング部2Bの長さL4よりも短く設定されている(即ち、L6<L4)。さらに、この長さL6は、ダイスベアリング部2Bの長さL4に対して5%〜70%の範囲に設定されるのが望ましく、特に6%〜30%の範囲に設定されるのが良い。なお、Dpは引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bの直径である。
【0101】
プラグアプローチ部3Aは、引抜方向Nの下流側に向かってその直径が漸次増大するように形成されており、詳述すると円錐テーパ状に形成されている。
【0102】
ダイス軸Xに対するプラグアプローチ部3Aの傾斜角、すなわちプラグアプローチ半角θ3は、例えば5°〜20°に設定されている(
図4B参照)。
【0103】
第3曲面部3Cは、プラグアプローチ部3Aとプラグベアリング部3Bとの間に配置されており、プラグアプローチ部3Aとプラグベアリング部3Bとを滑らかに繋いでいる。すなわち、この第3曲面部3Cは、プラグベアリング部3Bの上流端Gにプラグベアリング部3Bに対して滑らかに連なって形成されている。さらに、この第3曲面部3Cの上流端にプラグアプローチ部3Aが滑らかに連なって形成されている。引抜プラグ30のダイス軸Xを含む断面において、ダイス軸Xに対する第3曲面部3Cの接線の傾きは、引抜方向Nに進むにつれて漸次小さくなっている。詳述すると、第3曲面部3Cの縦断面形状は円弧状である。
【0104】
第3曲面部3Cの曲率半径R3は、例えば10mm〜60mmに設定されている。
【0105】
プラグアプローチ部3Aと第3曲面部3Cは、押出管40(詳述すると押出管40の内表面40b)と接触して該押出管40を減肉加工しながら第3曲面部3Cからプラグベアリング部3Bへ案内する部位である。本実施形態では、押出管40の内表面40bは、プラグアプローチ部3Aではなく第3曲面部3Cに最初に接触している。なお本発明では、押出管40の内表面40bはプラグアプローチ部3Aに最初に接触しても良い。
【0106】
上記引抜加工装置10を用いて押出管40を引抜加工する方法、即ち引抜加工工程は、従来の方法と略同じであり、これを簡単に説明すると次のとおりである。
【0107】
まず、押出管40の先端部にスエージング加工等によって押出管40よりも小径の口付け部40dを形成する。そして、押出管40の中空部40c内に引抜プラグ30を挿入配置するとともに、押出管40の先端部(即ち口付け部40d)を引抜ダイス20のダイス孔21内に挿入する。このとき、引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bは、引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bに対応する位置に配置されている。
【0108】
次いで、押出管40の先端部の口付け部40dを牽引装置12のチャック部12aによりチャックする。そして、
図4に示すように、潤滑油供給装置13のノズル13aから潤滑油14を押出管40の外表面40aに供給付着しながら、引抜速度が所定範囲(好ましくは10m/min〜100m/min)の範囲になるように押出管40を牽引装置12により引抜方向Nに牽引する。これにより、押出管40を引抜加工する。
【0109】
この引抜加工では、
図4B及び4Cに示すように、押出管40は引抜ダイス20の第1曲面部1Cに接触して第1曲面部1Cにより縮径加工されながら、案内部2Dに向かって誘導されるように第1曲面部1Cから離れる。次いで、該押出管40が引抜ダイス20の案内部2Dに再接触して案内部2Dにより縮径加工されながら案内部2Dからその第2曲面部2Cを通ってダイスベアリング部2Bへ案内される。このとき、押出管40の内表面40bは、引抜プラグ30の第3曲面部3Cに接触して第3曲面部3Cからプラグベアリング部3Bへ案内される。
【0110】
そして、該押出管40がダイスベアリング部2Bとプラグベアリング部3Bとの間を通過することにより、押出管40の肉厚が減少するように押出管40の外表面40a及び内表面40bがそれぞれダイスベアリング部2B及びプラグベアリング部3Bにより加圧される。その結果、押出管40の外径寸法がダイスベアリング部2Bにより目標寸法に仕上げ加工されると同時に、押出管40の外表面40aがダイスベアリング部2Bにより高平滑面に仕上げ加工され、さらに、押出管40の内径寸法がプラグベアリング部3Bにより目標寸法に仕上げ加工されると同時に、押出管40の内表面40bがプラグベアリング部3Bにより目標面粗さに仕上げ加工される。
【0111】
以上の引抜加工工程により、適度に高平滑な外表面41aを有する押出−引抜管を得ることができる。次いで、この押出−引抜管について、所定長さ切断、切断端部の面取り加工及び洗浄を順次行うことにより、基体41が得られる。
【0112】
次いで、得られた基体41の外表面41aの画像形成面41aaが上記所定要件(第1要件〜第5要件のうち少なくとも第1要件及び第2要件)を満足しているか否か検査する。この工程を検査工程という。そして、上記所定要件を満足している基体41を感光ドラム用基体として用いる。
【0113】
すなわち、上記引抜加工装置10を用いて押出管40を引抜加工して得られた押出−引抜管から形成された複数の基体41は、外表面41aの画像形成面41aaが上記所定要件を満足していないものを含んでいる。そこで、こうして得られた複数の基体41の中から、外表面41aの画像形成面41aaが上記所定要件を満足しているものを選択する。そして、この選択された基体41を用いて感光ドラム47を製造する。これにより、高品質の画像を確実に得ることができる。
【0114】
したがって、感光ドラム用基体の製造方法は、上記引抜加工装置10を用いて行う引抜加工工程と、この引抜加工工程で得られた無切削アルミニウム管(押出−引抜管)から形成された基体41の外表面41aの画像形成面41aaが上記所定要件(第1要件〜第5要件のうち少なくとも第1要件及び第2要件)を満足しているか否かを検査する検査工程と、を含んでいることが特に望ましい。
【0115】
而して、上記引抜加工装置10を用いて押出管40を引抜加工する場合には、次の利点がある。
【0116】
引抜加工装置10では、引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bは第1曲面部1Cにおける押出管離れ位置Kよりも内側に配置されているので、押出管40が第1曲面部1Cからダイスベアリング部2Bへと移動する間に押出管40が過度に縮径加工されるのを防止することができる。これにより、押出管40の外表面40aに、潤滑油14が溜まる激しい凹凸が生じ難くなる[効果1]。
【0117】
さらに、ダイスベアリング部2Bの上流端Fに案内部2Dの第2曲面部2Cが滑らかに連なっているので、案内部2Dに再接触した押出管40はこの第2曲面部2Cを通ってダイスベアリング部2Bに向かって円滑に移動することができる[効果2]。
【0118】
さらに、引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bの長さL6が引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bの長さL4よりも短く設定されることにより、プラグベアリング部3Bとダイスベアリング部2Bとの両部位から押出管40にその外表面40aを適度な高平滑面に加工するのに必要な圧力を確実に与えることができる[効果3]。
【0119】
以上の効果1〜3が相乗的に作用することにより、押出管40の外表面40aを確実に適度な高平滑面に加工することができる。これにより、所望する基体41を高い歩留まり率で得ることができる。
【0120】
さらに、引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bの上流端Gの位置は、ダイスベアリング部2Bの上流端Fの位置に対して同じ位置か又は下流側に配置している。これにより、引抜ダイス20の案内部2Dに再接触した押出管40が案内部2Dからダイスベアリング部2Bへと移動する間に押出管40が過度に縮径加工されるのを確実に防止できるとともに、プラグベアリング部3Bとダイスベアリング部2Bとの両部位から押出管40にその外表面40aを適度な高平滑面に加工するのに必要な圧力を更に確実に与えることができる。これにより、押出管40の外表面40aを更に確実に適度な高平滑面に加工することができる。
【0121】
さらに、引抜ダイス20のダイス軸Xを含む断面において、引抜ダイス20のダイス軸Xに対する第1曲面部1Cの接線の傾きと第2曲面部2Cの接線の傾きとは、それぞれ、引抜方向Nに進むにつれて漸次小さくなっている。これにより、押出管40を第1曲面部1Cによって確実に縮径加工することができるし、案内部2Dに再接触した押出管40を第2曲面部2Cによってダイスベアリング部2Bへ確実に案内することができる。
【0122】
さらに、引抜ダイス20の第2曲面部2Cの曲率半径R21は、第1曲面部1Cの曲率半径R1に対して等しいか又は小さく設定されている。これにより、押出管40の外表面40aを更に確実に高平滑面に加工することができる。その理由は、次のとおりである。すなわち、第1曲面部1Cの曲率半径R1を大きくすることにより、押出管40の外表面40aと引抜ダイス20との間に引き込まれる潤滑油14の引込み量を十分に確保することができる。さらに、第2曲面部2Cの曲率半径R21を小さくすることにより、第2曲面部2Cから押出管40の外表面40aに与える面圧を高めることができる。これによりオイルピットの発生を更に抑制することができる。その結果、押出管40の外表面40aを更に確実に適度な高平滑面に加工することができる。
【0123】
さらに、案内部2Dは、第2曲面部2Cの上流端に滑らかに連なり且つ第2曲面部2Cの曲がり方向とは反対方向に曲がった補助曲面部2Aを有しているので、第1曲面部1Cから離れた押出管40を案内部2Dで確実に受けることができ、もって押出管40を案内部2Dからダイスベアリング部2Bへ確実に案内することができる。
【0124】
さらに、引抜プラグ30のプラグベアリング部3Bの長さL6が、ダイスベアリング部2Bの長さL4に対して5%以上に設定されることにより、プラグベアリング部3Bとダイスベアリング部2Bとの両部位から押出管40にその外表面40aを適度な高平滑面に加工するのに必要な圧力を更に確実に与えることができる。これにより、押出管40の外表面40aを更に確実に適度な高平滑面に加工することができる。また、プラグベアリング部3Bの長さL6がダイスベアリング部2Bの長さL4に対して70%以下に設定されることにより、押出管40とプラグベアリング部3Bとの間の接触摩擦力に起因して生じる押出管40の断管を確実に防止することができる。
【0125】
さらに、引抜ダイス20のダイスベアリング部2Bの長さL4が5mm以上であることにより、押出管40の外表面40aを更に確実に適度な高平滑面に加工することができる。
【0126】
さらに、引抜ダイス20の半径方向rにおいて、引抜ダイス20の第1曲面部1Cにおける押出管離れ位置Kとダイスベアリング部2Bとの間の段差H1が、0.3mm以上に設定されることにより、押出管40が第1曲面部1Cからダイスベアリング部2Bへと移動する間に押出管40が過度に縮径加工されるのを確実に防止することができる。また、この段差が3mm未満に設定されることにより、案内部2Dに再接触した押出管40がダイスベアリング部2Bに案内される際に押出管40がダイスベアリング部2Bから離れるのを確実に防止することができる。これにより、押出管40の外表面40aを更に確実に適度な高平滑面に加工することができる。
【0127】
さらに、引抜ダイス20の第1曲面部1Cと案内部2Dとダイスベアリング部2Bとが一体形成されているので、第1曲面部1Cの軸とダイスベアリング部2Bの軸との間の軸ずれを防止することができる。これにより、引抜ダイス20の同軸度が高められている。したがって、この引抜ダイス20を用いて押出管40を引抜加工することにより、基体41の外径及び内径の寸法精度を確実に向上させることができる。
【0128】
さらに、引抜プラグ30は、プラグベアリング部3Bの上流端Gに滑らかに連なる第3曲面部3Cを備えているので、第3曲面部3Cに接触した押出管40はプラグベアリング部3Bに向かって円滑に移動することができる。これにより、押出管40の外表面40aを更に確実に適度な高平滑面に加工することができる。
【0129】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に示したものであることに限定されるものではない。
【0130】
また本発明では、押出管を引抜加工する引抜加工装置は、上記実施形態で示した構成の装置10であることが特に望ましいが、必ずしもそれであることを要せず、その他の引抜加工装置(例:コニカルダイス)を排除するものではない。
【実施例】
【0131】
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を以下に示す。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の説明文では、実施例及び比較例を理解し易くするため、上記実施形態と同じ符号を用いて説明をしている。
【0132】
【表1】
【0133】
<実施例1〜7、参考例1〜6、比較例1〜3>
実施例1〜7及び比較例1〜3では
図4A〜4Cに示した上記実施形態の引抜加工装置10を用いて、参考例1〜6では
図5A及び5Bに示した引抜加工装置110を用いて、押出アルミニウム管40を1回引抜加工し、これにより、無切削アルミニウム管としての押出−引抜管を得た。そして、この押出−引抜管について、所定長さ切断、切断端部の面取り加工及び洗浄を順次行うことにより、感光ドラム用基体41を製作した。基体41の長さは260mmである。
【0134】
次いで、
図1に示すように基体41の外表面41aの画像形成面41aaを評価した。
【0135】
次いで、
図2に示すように、基体41の画像形成面41aa上に、アンダーコート層42を介して機能分離型有機感光体層45(即ち、電荷発生層43及び電荷輸送層44)を塗工することにより、感光ドラム47を製造した。次いで、この感光ドラム47を使って実際に印刷をし、その画質の評価として、干渉縞の発生率と黒点の発生の有無とを調べた。
【0136】
[引抜加工条件]
実施例1〜7及び比較例1〜3において、押出アルミニウム管40の引抜加工条件は以下のとおりである。
【0137】
押出アルミニウム管40の材質は、感光ドラム用基体によく用いられるA3003相当のアルミニウム合金である。押出管40のサイズは2種類(A、B)である。種類Aの押出管40は、外径28mm、内径25.6mm、肉厚1.2mmである。種類Bの押出管40は、外径27mm、内径24.5mm、肉厚1.25mmである。表1中の「押出管の種類」欄に各実施例及び各比較例で用いた押出管40の種類を記した。各押出管40を引抜加工して得られた押出−引抜管は、いずれも、外径24mm、内径22.6mm、肉厚0.7mmである。引抜加工時に使用した潤滑油14は、40℃での動粘度が表1中の「潤滑油の動粘度」欄に記したとおりのものである。潤滑油14の押出管40への供給量は1000g/minである。引抜速度は20m/minである。
【0138】
[引抜加工装置]
実施例1〜7及び比較例1〜3で用いた上記実施形態の引抜加工装置10の各部位の寸法は、以下のとおりである。なお、実施例1〜7及び比較例1〜3では、表1中の「引抜加工装置の種類」欄に上記実施形態の引抜加工装置10を意味する「10」の符号が記載されている。
【0139】
引抜ダイス20において、θ1=25°、θ2=15°、L1=10mm、L2=5mm、L3=4mm、L4=9mm、L5=2mm、R1=10mm、R21=2mm、R22=4mm、H2=0.5mmである。
【0140】
引抜プラグ30において、θ3=20°、L6=1mm、R3=50mm、S=1mm、Dp=22.6mmである。
【0141】
参考例1〜6で用いた引抜加工装置110は、
図5A及び5Bに示すように超硬製コニカルダイスを具備するものであり、その構成は以下のとおりである。なお、参考例1〜6では、表1中の「引抜加工装置の種類」欄に
図5A及び5Bに示した引抜加工装置110を意味する「110」の符号が記載されている。
【0142】
引抜加工装置110の引抜ダイス120では、ダイス孔121の周面にダイスアプローチ部101Aが形成されるとともに、ダイスアプローチ部101Aの下流端に縦断面円弧状の曲面部101Cが滑らかに連なって形成されており、更に、ダイスベアリング部101Bの上流端Fにこの曲面部101Cが滑らかに連なって形成されている。すなわち、ダイスアプローチ部101Aとダイスベアリング部101Bとはこの曲面部101Cを介して互いに滑らかに連なっている。ダイスベアリング部101Bの下流端にはリリーフ部102Eが形成されている。ダイスベアリング部101Bは、ダイス軸Xと略平行に形成されている。θ1はダイスアプローチ半角である。θ2はリリーフ部102Eの逃げ半角である。L1は、ダイスアプローチ部101Aと曲面部101Cとを合計した、ダイス軸Xと平行な方向の長さである。L4は、ダイスベアリング部101Bの長さである。L5は、リリーフ部102Eのダイス軸Xと平行な方向の長さである。R1は曲面部101Cの曲率半径である。
【0143】
引抜加工装置110の引抜プラグ130は、略玉芯型であり、引抜プラグ130を支持する支持棒131の先端部に設けられるとともに、押出管40の中空部40c内に配置されている。引抜プラグ130の周面には、プラグアプローチ部103Aと曲面部103Cとプラグベアリング部103Bとが形成されている。プラグベアリング部103Bは、ダイス軸Xと略平行に形成されるとともに、ダイスベアリング部101Bに対向して配置されている。プラグベアリング部103Bの上流端Gには曲面部103Cが滑らかに連なって形成されてとともに、プラグアプローチ部103Aの下流端に曲面部103Cが滑らかに連なって形成されている。すなわち、プラグアプローチ部103Aとプラグベアリング部103Bとはこの曲面部103Cを介して互いに滑らかに連なっている。θ3はプラグアプローチ半角である。L6はプラグベアリング部103Bの長さである。R3は曲面部103Cの曲率半径である。Sは、ダイスベアリング部101Bの上流端Fの位置に対するプラグベアリング部103Bの上流端Gの位置の下流側へのずれ量を示している。プラグベアリング部103Bの長さL6はダイスベアリング部101Bの長さL4よりも短く設定されている。Dpは、引抜プラグ130のプラグベアリング部103Bの直径である。
【0144】
図5Bに示すように、引抜加工装置110を用いて押出管を引抜加工する場合においては、押出管40は曲面部101Cからダイスベアリング部101Bへ案内される途中で、押出管40が曲面部101Cから一旦離れ、そしてダイスベアリング部101Bに再接触する。そのため、押出管40が曲面部101Cからダイスベアリング部101Bへ移動する途中で、押出管40が過度に縮径加工される。これにより、押出管40の外表面40aが縦断面円弧状に凹んで該外表面40aに激しい微細な凹凸(図示せず)が多数発生する。この激しい微細な凹凸に引抜加工用潤滑油が溜まる。そしてこの状態のままで押出管40がダイスベアリング部101Bとプラグベアリング部103Bとの間を通過することにより、押出管40の外表面40aが加圧され、その結果、得られる押出−引抜管の外表面に微細なオイルピットが、上記実施形態の引抜加工装置10により得られた押出−引抜管よりも多く発生する。
【0145】
引抜ダイス120において、θ1=25°、θ2=15°、L1=10mm、L4=20mm、L5=2mm、R1=10mmである。
【0146】
引抜プラグ130において、θ3=20°、L6=1mm、R3=50mm、S=7mm、Dp=22.6mmである。
【0147】
[画像形成面41aaの評価方法(検査方法)]
基体41の画像形成面41aaの評価方法(検査方法)は以下のとおりである。
【0148】
基体41の画像形成面41aaを、画像解析装置50の撮像部51であるデジタルマイクロスコープにより0.6mm
2の大きさの視野で2箇所観察してその各観察視野52を撮像した。そして、撮像した2つの画像を画像解析装置50によって解析することにより、画像形成面41aaを評価した。その画像解析は、画像解析装置50に予めインストールされている画像解析ソフトウェアを用いて、画像を2値化処理した白黒2値化画像に基づいて行った。その2値化処理は、撮像した画像を256階調のグレースケール画像に変換した後、明るさ130を閾値として行った。すなわちこの2値化処理では、256階調のクレースケース画像において明るさが0以上130までの範囲を暗視野部とし、明るさが130を超え255までの範囲を明視野部とし、そして暗視野部をピットとした。画像形成面41aaの評価項目は、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積、面積300μm
2以上の粗大ピットの個数、ピットの形状等である。画像解析に使用したデジタルマイクロスコープは商品名(型番)「VHX−500」(販売元:KEYENCE)であり、デジタルマイクロスコープに装着したズームレンズは「VH−Z100」である。デジタルマイクロスコープで撮像した撮像倍率は300倍である。撮像は、水平に配置した基体41の画像形成面41aaの頂部の上方にズームレンズを配置して行った。撮像時の照明形態は同軸落射照明である。撮像する画像が明るすぎると2値化処理の際に凹凸の認識が困難になるため、照明の明るさは50%に設定した。また、撮像時にはレンズに各種フィルターを用いなかった。この撮像では曲面を撮像することとなるため、厳密に画像解析をする場合には、本来ならば画像全体が平均的に一様な明るさとなるように画像についてシェーディング補正等をする必要があるが、撮像倍率が300倍といった高倍率であるため、曲面による上下の明るさの不均一は無視できるものとし、補正や画像強調処理は行わなかった。画像解析ソフトウェアは商品名「WinROOF」(販売元:三谷商事)であり、画像解析時の画像解像度は0.63μm/ピクセルである。この画像解析ソフトウェアで認識できる最小ピット面積は0.4μm
2である。ここで、上述したように、面積1μm
2未満のピットは画質に与える悪影響が非常に少ない。したがって、この画像解析では、面積1μm
2以上のピットだけを対象にして解析を行っている。画像の外周境界上に跨って存在しているピットについては、当該ピットのうち画像の外周境界の内側に存在する部分の面積を計測した。ピット内側に明視野部が点在している場合には、2値化処理時にピット内側について黒で穴埋め処理を行うことでピット内側全体を暗視野部にし、ピット内側全体をピットの面積とした。
【0149】
因みに、実施例1〜7と参考例1〜6と比較例1〜3について、基体41の画像形成面41aaの表面粗さ(最大高さ)Ryを、従来から広く用いられているJIS B 0601:1994に準拠して触針式表面粗さ計により測定した。その結果は以下のとおりである。なお、この測定に使用した表面粗さ計のプローブの先端半径Rは5μm、測定長さは4mmである。
【0150】
比較例1:Ry=0.33μm、比較例2:Ry=0.32μm、比較例3:Ry=0.41μm、実施例1:Ry=0.43μm、実施例2:Ry=0.36μm、実施例3:Ry=0.42μm、実施例4:Ry=0.41μm、実施例5:Ry=0.49μm、実施例6:Ry=0.59μm、実施例7:Ry=0.63μm、参考例1:Ry=0.54μm、参考例2:Ry=0.68μm、参考例3:Ry=0.75μm、参考例4:Ry=0.88μm、参考例5:Ry=0.98μm、参考例6:Ry=1.21μm。
【0151】
[アンダーコート層42]
アンダーコート層42の塗工方法は以下のとおりである。
【0152】
ポリアミド樹脂10質量部とメタノール3質量部とが混合された塗液を基体41の画像形成面41aa上に塗布し、その後80℃で30分間加熱することにより、アンダーコート層42を形成した。アンダーコート層42の厚さt1は15μmである。
【0153】
[電荷発生層43]
電荷発生層43の塗工方法は以下のとおりである。
【0154】
無金属フタロシアニン顔料(電荷発生材料)をテトラヒドロフランで分散・希釈した液中に基体41を浸漬し、そして基体41を引き上げ、その後乾燥することにより、電荷発生層43を形成した。電荷発生層43の厚さt2は0.5μmである。
【0155】
[電荷輸送層44]
電荷輸送層44の塗工方法は以下のとおりである。
【0156】
ヒドラゾン化合物(電荷輸送材料)とポリカーボネート樹脂(バインダー樹脂)とを塩化メチレンに溶解した塗液を電荷発生層43上に塗布し、その後乾燥することにより、電荷輸送層44を形成した。電荷輸送層44の厚さは約20μmである。
【0157】
[画質の評価方法]
画質の評価方法は以下のとおりである。
【0158】
感光ドラム47を組み込んだレーザービームプリンタによって、ドットパターンによる中間色のベタ焼き画像をA4版(寸法:横210mm×縦297mm)の紙に20枚印刷した。そして、1枚の印刷面に干渉縞模様が発生した確率を調べた。その確率が5%未満である場合は「干渉縞発生率」欄に「○」を記し、5%以上である場合は同欄に「×」を記した。なおこの干渉縞は、レーザー光が感光体層45内の界面や基体41の外表面41aで多重反射することで発生した模様である。さらに、1枚の印刷面に存在する微小黒点の個数を目視により調べた。そして、黒点の個数が2個以上である場合は「黒点発生」欄に「×」を記し、2個未満(即ち0又は1個)である場合は同欄に「○」を記した。
【0159】
[総合評価]
表1に示すように、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率が2%よりも大きいという第1要件と、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積が8μm
2よりも大きいという第2要件とを両方満足した場合(即ち実施例1〜7、参考例1〜6)では、干渉縞の発生を防止することができた。
【0160】
さらに、観察視野面積に対する面積1μm
2以上のピットの総占有面積率が15%以下であるという第3要件と、面積1μm
2以上のピット1個当たりの平均面積が20μm
2以下であるという第4要件と、面積300μm
2以上の粗大ピットがないという第5要件とを全て満足した場合(即ち実施例1〜7)では、黒点の発生も防止することができた。
【0161】
したがって、これらの要件が、押出−引抜管等の無切削管から形成された基体41について、画質の良否を正確に判断するための、従来の指標である表面粗さRyよりも優れた指標であることを確認し得た。
【0162】
本願は、2011年8月19日付で出願された日本国特許出願の特願2011−179867号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
【0163】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではなく、ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、この発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
【0164】
本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものであるが、この開示は本発明の原理の実施例を提供するものと見なされるべきであって、それら実施例は、本発明をここに記載しかつ/または図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。
【0165】
本発明の図示実施形態を幾つかここに記載したが、本発明は、ここに記載した各種の好ましい実施形態に限定されるものではなく、この開示に基づいていわゆる当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良及び/又は変更を有するありとあらゆる実施形態をも包含するものである。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施例に限定されるべきではなく、そのような実施例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、この開示において、「preferably」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味するものである。この開示および本願のプロセキューション中において、ミーンズ・プラス・ファンクションあるいはステップ・プラス・ファンクションの限定事項は、特定クレームの限定事項に関し、a)「means for」あるいは「step for」と明確に記載されており、かつb)それに対応する機能が明確に記載されており、かつc)その構成を裏付ける構成、材料あるいは行為が言及されていない、という条件の全てがその限定事項に存在する場合にのみ適用される。この開示および本願のプロセキューション中において、「present invention」または「invention」という用語は、この開示範囲内における1または複数の側面に言及するものとして使用されている場合がある。このpresent inventionまたはinventionという用語は、臨界を識別するものとして不適切に解釈されるべきではなく、全ての側面すなわち全ての実施形態に亘って適用するものとして不適切に解釈されるべきではなく(すなわち、本発明は多数の側面および実施形態を有していると理解されなければならない)、本願ないしはクレームの範囲を限定するように不適切に解釈されるべきではない。この開示および本願のプロセキューション中において、「embodiment」という用語は、任意の側面、特徴、プロセスあるいはステップ、それらの任意の組み合わせ、及び/又はそれらの任意の部分等を記載する場合にも用いられる。幾つかの実施例においては、各種実施形態は重複する特徴を含む場合がある。この開示および本願のプロセキューション中において、「e.g.,」、「NB」という略字を用いることがあり、それぞれ「たとえば」、「注意せよ」を意味するものである。