特許第6239722号(P6239722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

特許6239722ヒドロキシル基含有メチルスチレン及び該ヒドロキシル基含有メチルスチレンを組み込んだポリマー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239722
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ヒドロキシル基含有メチルスチレン及び該ヒドロキシル基含有メチルスチレンを組み込んだポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/00 20060101AFI20171120BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20171120BHJP
   B60C 1/00 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   C08F8/00
   C08L15/00
   C08K5/00
   C08K3/04
   C08K3/36
   !B60C1/00 A
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-228250(P2016-228250)
(22)【出願日】2016年11月24日
(62)【分割の表示】特願2015-221342(P2015-221342)の分割
【原出願日】2011年5月28日
(65)【公開番号】特開2017-95710(P2017-95710A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年12月22日
(31)【優先権主張番号】61/349,947
(32)【優先日】2010年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ツェンチュアン チン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユアン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ−ドン パン
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−337616(JP,A)
【文献】 特開2003−107704(JP,A)
【文献】 特開平06−032820(JP,A)
【文献】 特開平05−134412(JP,A)
【文献】 特開平10−310609(JP,A)
【文献】 特開2010−107992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08C 19/00 − 19/44
C08F 6/00 − 246/00
C08F 301/00
B60C 1/00 − 19/12
C07F 7/00 − 7/30
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式:
【化1】

[式中、mは、2〜5の整数であり;nは、1〜10の整数であり;πは、1以上のポリエンの組み込みにより生ずるAマー単位を含むポリマー鎖であり;Zは、水素原子、終端化合物のラジカルまたはAマー単位を含むポリマー鎖である]を有する官能化ポリマー。
【請求項2】
mが2である、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項3】
少なくとも1種類の粒子状充填剤と、請求項1に記載の官能化ポリマーと、を含むゴム組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種類の粒子状充填剤が、カーボンブラックを含む、請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種類の粒子状充填剤が、シリカを含む、請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
加硫剤を更に含む、請求項4または5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のゴム組成物から提供される加硫物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際出願は、2010年5月31日出願の米国仮特許出願第61/349,947号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
例えばタイヤトレッド等のゴム商品は、往々にして、1以上の補強性材料、例えば粒子状カーボンブラック及びシリカ等を含むエラストマー組成物から作製される(ヴァンダービルトゴムハンドブック、第13版(1990年)、第603〜604頁を参照のこと)。
【0003】
良好なトラクション及び耐摩耗性は、タイヤトレッドに関する主要な検討事項であるが、自動車の燃料効率に関する懸念事項から、タイヤ操作中のヒステリシス及び発熱の低減と相関性のある転がり抵抗の最小化が議論される。これらの検討事項は、かなりの程度競合し、いくらか相反するものであり、特に湿潤条件では、優れた道路トラクションを提供するよう設計された組成物から作製したトレッドが増加した転がり抵抗を示す傾向がある一方で、転がり抵抗を最小化するよう設計されたトレッドは許容可能なトラクション性能のみを提供することがある。
【0004】
これらの性質の許容可能な均衡を提供するべく、典型的には、充填剤、ポリマー及び添加物を選択する。補強性充填剤がポリマー材料全体に亘って十分に分散することを確実にすることで、双方が、加工性を増進し、且つ、物理的性質を改善するよう作用する。充填剤の分散は、充填剤とポリマーとの相互作用を増大させること、及び/又は、充填剤同士の相互作用を低下させることによって改善することができる。この種の試みとしては、例えば、選択的反応性促進剤の存在下での高温混合、配合材料の表面酸化、表面グラフト、(典型的には末端における)ポリマーの化学修飾が挙げられる。
【0005】
例えばタイヤ構成部品等の加硫物の製造に使用されるポリマーの多くは、エラストマー性である。最も一般的に使用されるものの一部としては、天然ゴムに加え、高シスポリブタジエン(往々にしてチーグラー−ナッタ触媒を使用したプロセスにより作製される)、及び、相当ランダムなスチレン/ブタジエンインターポリマー(往々にしてアニオン開始剤を使用したプロセスにより作製される)が挙げられる。カルバニオンポリマーを使用して行われ得る化学修飾は、触媒プロセスにより作製したポリマーには作用しないことが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の包括的態様において、下記一般式:
【化1】

[式中、各々のGは、独立して(以下で規定する)保護基であり、mは、包括的に1〜5の整数である]を有する化合物が提供される。
【0007】
別の態様において、式I型化合物の製造方法が提供される。該方法は、下記一般式:
【化2】

[式中、G及びmは、先に定義した通りである]を有するアセトフェノンのカルボニル基に対する、アルキレン基、通常はメチレン基の求核付加を含む。該求核付加は、アセトフェノンを使用した、イリド、典型的にはアルキルトリフェニルホスホニウムイリド(例えばメチルトリフェニルホスホニウムイリド等)を含むウィッティッヒ反応によって達成することができる。(イリドは、例えば、アルキルトリフェニルホスホニウムハライドとアルカリ金属ヒドロカルビルとの反応によって生じ得る。)
【0008】
更に別の態様では、式I型化合物を重合に使用する方法が提供される。該方法は、式I化合物のアニオン型を開始剤として使用すること、又は、式I化合物をモノマーとして使用することを含んでよい。実質的に全ての他のモノマーが変換された後で式I化合物が重合される場合、式I化合物から得られるマーは、ポリマー鎖の1以上の末端単位を構成することができる。リビングの(活性な)ままである、任意のかかる末端単位は、更に官能化されることなく失活されるか、又は、該単位自体から得ることのできるものの補助的又は相補的な微粒子の相互作用性を提供する可能性のある終端化合物と反応し得る。
【0009】
更なる態様では、ポリエンマーと、下記一般式:
【化3】

[式中、mは、先に定義した通りである]を有する少なくとも1つの単位と、を含む官能化ポリマーが提供される。該単位は、ポリマー鎖の初期単位であり得る(即ち、官能性開始剤として作用する式I化合物のリチオ化型に由来する)か、又は、かかる単位の1以上がポリマー鎖に沿って存在し、任意にポリマー鎖の末端に位置し、任意に官能基に直接結合していてもよい。ヒドロキシル基は、式I化合物の保護基を加水分解することによって提供されてもよい。
【0010】
実質的に全ての他のマーの後に、即ち、重合の終わり又は終わり付近で、1以上の式III単位が組み込まれる場合、ポリマーは、下記一般式:
【化4】

[式中、πは、ポリエンマーを含むポリマーであり、各々のG及びmは、先に定義した通りであり、nは、包括的に1〜10、或いは1〜5、或いは1〜3であり、Zは、水素原子又は終端化合物(以下で定義する)のラジカル(以下で定義する)である]を有していてもよい。カルバニオンポリマーが式Iの化合物と反応する場合、式IIIaのポリマーは、失活によって提供され、水素原子であるZをもたらすか、又は、終端化合物との反応によって提供され、終端化合物のラジカルであるZをもたらしてもよい。
【0011】
また、式Iの化合物は、下記一般式:
【化5】

[式中、Mは、アルカリ金属原子であり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール等のヒドロカルビル基である]を有するイオン化合物を提供するべく、ヒドロカルビルアルカリ金属化合物と反応してもよく、式IV化合物を使用して、式IVのアニオン性炭素原子において開始する鎖成長によって、種々のエチレン性不飽和マーのいずれかの重合を開始し、重合初期に(即ち、ポリマーの開始末端に)、式III単位の組み込みをもたらしてもよい。
【0012】
他の態様において、式IVの化合物の製造方法、エチレン性不飽和モノマーの重合を開始するための式IVの化合物の使用方法、式IIIaのポリマーの製造方法、及び、式III単位、特には式IIIで表されるものを含むポリマーの提供方法及び使用方法が提供される。
【0013】
先述の態様のうちのいずれかにおいて、フェニル基に直接結合した1以上の水酸置換基を提供すべく、保護基が、典型的には加水分解によって、水素原子により置き換えられてもよい。これは、フェニル基に直接結合したm個(先に定義した)の水酸置換基をもたらすことができる。
【0014】
カルバニオンポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合をアニオン的に開始することによって提供することができ、エチレン性不飽和モノマーとしては、典型的には1種類以上のポリエン、特には共役ジエンが挙げられる。ポリエンが、使用されるモノマーのうちの1種類である場合、ポリマーは、ポリマー鎖内の及び/又はポリマー鎖に懸垂した不飽和を含んでもよく、この不飽和は好ましくは、ポリマー鎖に沿って相当ランダムである。得られるポリマーは、アルケン(A単位)及び一般式IIIによって定義される1以上のマー(B単位)の組み込みによってもたらされる多数のマーを含んでいてもよい。特定の実施形態において、ポリマーは、直接結合した芳香族懸垂基(C単位)を含んでいてもよい。これらの及び/又は他の実施形態において、ポリマーは実質的に直鎖状であってよい。
【0015】
どのように特徴付けられるかに関わらず、ポリマーは、粒子状充填剤(例えばカーボンブラック及びシリカ等)と相互作用し得る。粒子状充填剤とかかるポリマーとを含む組成物(加硫物を含む)、かかる組成物の提供方法及び使用方法が提供される。
【0016】
本発明の他の態様については、以下に記載する実例となる実施形態の説明から当業者に明らかであろう。説明の理解を助けるべく、直後に一定の定義を提供する。これらは、周囲の文章が反対の意図を明確に示さない限り、全体に適用することが意図される:
「ポリマー」は、1以上のモノマーの重合生成物を意味し、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー等を含む;
「マー」及び「マー単位」は、単一の反応物分子に由来するポリマーの一部を意味する(例えば、エチレンマーは、一般式−CHCH−を有する);
「コポリマー」は、2つの反応物、典型的にはモノマーに由来するマー単位を含むポリマーを意味し、ランダム、ブロック、セグメント化、グラフト等のコポリマーを含む;
「インターポリマー」は、少なくとも2つの反応物、典型的にはモノマーに由来するマー単位を含むポリマーを意味し、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー等を含む;
「ランダムインターポリマー」は、実質的に非反復方式で組み込まれた、各種類の構成モノマー由来のマー単位を有し、実質的にブロック、即ち3以上の当該マーからなるセグメント、を含まないインターポリマーを意味する;
「カルバニオン」及び「リビング」は、互換可能に使用される;
「ガムムーニー粘度」は、任意の充填剤の添加前の、未硬化ポリマーのムーニー粘度である;
「コンパウンドムーニー粘度」は、とりわけ、未硬化又は部分硬化ポリマー及び粒子状充填剤を含む組成物のムーニー粘度である;
「置換された」は、当該基の意図された目的を妨げないヘテロ原子又は官能基(例えば、ヒドロカルビル基)を含むものを意味する;
「直接結合」は、介在する又は間に入る原子若しくは基を含まず、共有結合的に結合することを意味する;
「ポリエン」は、最も長い部分又はその鎖に位置する少なくとも2つの二重結合を含む分子を意味し、具体的には、ジエン、トリエン等を含む;
「ポリジエン」は、1以上のジエンからのマー単位を含むポリマーを意味する;
「phr」は、ゴム100重量部当たりの重量部(pbw)を意味する;
「保護基」は、(1)第1セットの反応条件の下、その基のH原子を置き換えることができるヒドロキシル官能基の酸素原子に対して十分に反応性であり、(2)カルバニオンポリマー及びそれらを提供するために使用される開始剤に対して非反応性であり、任意に(3)第1セットとは異なる第2セットの反応条件下、H原子によって置き換えられることができる基を意味する;
「ラジカル」は、反応の結果、任意の原子が得られるか又は失われるかに関わらず、別の分子と反応した後に残る分子の一部を意味する;
「終端化合物」は、限定するものではないが、N、Si、O又はSを含む、少なくとも1つのヘテロ原子を含み、且つ、少なくとも1種類の粒子状充填剤との増強した相互作用性を提供する基又は部分を提供すべく、カルバニオンポリマーと反応することができる化学化合物を意味する。
「末端」は、ポリマー鎖の終端を意味する;
「末端部分」は、末端に位置する、基又は官能基を意味する。
【0017】
本明細書中において、割合の形式の値は全て、周囲の文章が明確に反対の意図を示さない限り、重量割合である。具体的に参照する任意の特許及び/又は公開された特許出願の関連部分は、引用によって本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
式Iで定義された化合物は、アルキルトリフェニルホスホニウムイリド、典型的にはメチルトリフェニルホスホニウムイリドを使用するウィッティッヒ反応によって、対応する式II型化合物から提供することができる。(メチル以外のアルキル基は、すなわち、ビニル炭素原子がその水素原子のうちの1つがアルキル基で置換されたビニル炭素原子を有する式I化合物を提供する。)スチレン性化合物をもたらすべく、カルボニル酸素原子がメチレン基によって置き換えられるこの種の求核付加は、下記の例で具体的に例示され、説明には、当業者が多数の変更及び代替手段を想定することができる具体的な反応条件が含まれる。
【0019】
式I型化合物は、官能化ポリマーを提供する多くの方法で使用することができる。概して、かかるポリマーは、1以上のポリエン、特にはジエン由来のマーと、末端官能基及び/又は式Iの化合物の(直接的又は間接的な)組み込みにより生ずる1以上のマー単位とを含むことができる。少なくとも特定の実施形態では、ポリマーは、直接結合した懸垂芳香族基を含むことができる。
【0020】
B単位を有するポリマーは、鎖成長の間又はその終わりに、式Iの化合物を、活性な鎖末端を有するポリマーと反応させることによって提供することができる。或いは又は更に、エチレン性不飽和モノマーの重合を開始することのできるイオン化合物、即ち式IVの開始剤を提供するべく、式Iの化合物を、ヒドロカルビルアルカリ金属化合物と反応させてもよい。従って、1以上のB単位は、ポリマー鎖に沿って位置してもよく、任意に、小さい(1〜5単位の)ブロックで又は末端に位置してもよく、及び/又は、式IVの開始剤のラジカルは末端に位置してもよい。少なくとも1つのB単位がポリマー鎖末端に位置する場合、式IIIa型官能化ポリマーをもたらし、Zの個性(identity)は、ポリマーが終端化合物との反応によって更なる官能化に供されるか否かによって決まる。
【0021】
以下では、多数のAマー、即ちアルケン単位と;任意の多数のC単位、即ち懸垂アリール基、特にはフェニル基を含む単位と;少なくとも1つのBマーと;を含むポリマーの製造及び使用について説明する。A、B及びCマーの各々は、エチレン性不飽和モノマーの組み込みによって生じてもよい。
【0022】
Aマーは、ポリエン、特にはトリエン(例えばミルセン)と、ジエン、特にはC〜C12ジエンと、更に特には共役ジエン(例えば1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン等)との組み込みによって典型的には生ずる。Aマーの一部又は全ては、1種類以上のジエン、特には1種類以上の共役ジエン、例えば1,3−ブタジエンから得ることができる。いくつかの実施形態において、実質的に全て(即ち少なくとも95%)のポリエンが、ジエン、特には共役ジエンであってもよい。かかるポリマーは典型的には、エラストマーの性質を示す。
【0023】
ポリエンは、ポリマー鎖に2以上の方法で組み込むことができる。特にタイヤトレッド用途では、この組み込み方法を制御することが望ましい。ポリエン単位の総数に基づいて数値割合として示される〜10から〜80%、任意に〜25から〜65%の1,2−ミクロ構造全体を有するポリマー鎖が、特定の最終用途に望ましいことがある。総ポリエン含有率に基づき〜50%以下、好ましくは〜45%以下、より好ましくは〜40%以下、更により好ましくは〜35%以下、最も好ましくは〜30%以下の1,2−ミクロ構造の全体を有するポリマーは、実質的に直鎖状であると考えられる。特定の最終用途には、1,2−結合の含有率を、更に低く、例えば〜7%未満、5%未満、2%未満又は1%未満に保つことが望ましいことがある。
【0024】
意図する最終用途に応じて、1以上のポリマー鎖が、懸垂芳香族基を含んでいてよく、該懸垂芳香族基は、Cマー、即ちビニル芳香族化合物、特にはC〜C20のビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン及びビニルナフタレン等に由来するマーによって提供され得る。1以上のポリエンと組み合わせて使用される場合、Cマーは、ポリマー鎖の〜1から〜50%、〜10から〜45%又は〜20から〜40%を構成してもよく、ランダムミクロ構造は、いくつかの最終用途、例えばタイヤトレッド製造で使用されるゴム組成物において特定の利益を提供することができる。ブロックインターポリマーが望まれる場合、C単位は、ポリマー鎖の〜1から〜90%、概して〜2から〜80%、通常〜3から〜75%、典型的には〜5から〜70%を構成し得る。(この段落中の全ての割合は、モル割合である。)
【0025】
典型的なインターポリマーとしては、1以上の共役ジエンが、A単位、即ちポリジエンを提供するものが挙げられ、これらの中でも1,3−ブタジエンは、使用されるポリエンのいくつかのうちの一つ又は使用される唯一のポリエンであってよい。C単位が望まれる場合、例えばSBRを提供すべく、スチレンから提供されてもよい。上述した種類の典型的なインターポリマーの各々には、1以上のB単位も組み込まれる。
【0026】
通常、式IIIにより定義されるB単位としては、1以上の直接結合したヒドロキシル基を含む懸垂フェニル基が挙げられる。ヒドロキシル基のH原子が活性であり、特定の重合プロセスを妨げる(即ち、カルバニオンポリマーを失活させる)ことがあるため、B単位は典型的には、Gとして先に定義された保護基を含む化合物から提供される。各々のG部分が同一である必要はないが、容易さ及び簡潔さのため、典型的には、所定の化合物に1種類のG部分がもたらされる。
【0027】
特定のGが、ポリマーの、粒子状充填剤との相互作用性(例えば、50℃での低減したtanδ値によって証明される通り)を増強することのできる部分を構成しない限り、A単位の存在によって生ずるポリマー中のエチレン性不飽和を破壊あるいはエチレン性不飽和と反応することのないプロセスによって加水分解されることが好ましい。トリヒドロカルビルシリル基は、これら二重の目的を果たすことのできるG部分のタイプの非限定的な例であり、かかる部分は、フェニル基のヒドロキシル置換基を、トリヒドロカルビルシリルハライド、好ましくはトリアルキルシリルハライドと反応させることによって提供することができる。トリヒドロカルビルシリル部分に加え、他の潜在的に有用なG部分としては、限定するものではないが、ベンジル、t−ブチル、アルコキシアルキル(例えばCHOCH−)、テトラヒドロピラニル、アリル、スルホンアミド及び嵩高いエステル(例えばピバレート)が挙げられる。
【0028】
1つのB単位中のフェニル基は、加水分解前に、1(m=1)又は2以上(2≦m≦5)のOG部分を含む。フェニル基がポリマー鎖に結合する位置に関連して、1つのOG部分が、フェニル環のオルト、メタ又はパラに位置することができる一方、多数のOG部分が、フェニル環上の2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−、3,6−、2,3,4−、2,3,5−等に提供され得る。更には、ポリマーが2以上のB単位を含む場合、各々の単位は、異なる数のOG部分を有し、及び/又は、フェニル基上の異なる位置にOG部分を有してよい。
【0029】
B単位は、mが包括的に1〜5の整数である式Iの化合物、即ち、フェニル基が、少なくとも1つのOG部分と最高で5つのかかる部分とを含むα−メチルスチレン化合物、から典型的には提供される。一実施形態において、2つのOG部分が存在してもよく、フェニル基の隣接する環C原子、例えば3及び4位に任意に結合してもよい。
【0030】
1以上の式I型化合物が重合される場合、それ/それらは、B単位を提供する。B単位の数は、典型的にはA単位及び存在する場合にはC単位の数よりも小さく、比較的少数のB単位が十分なレベルの望ましい性質を提供し、これらの性質の更なる改善は、存在するB単位の数に必ずしも比例するわけではないことが見出された。この比較的少ない数は、いくつかの方法によって表現することができる。例えば、B単位に起因する最終的なポリマーの重量割合は、一般的には2%未満、より一般的には〜0.05又は〜0.1から〜1.5%、典型的には〜0.1又は〜0.2から〜1.0%である。ポリマー中のマーの総数と比較したBマーの割合は、一般的には1%未満、より一般的には〜0.01から〜0.75%、典型的には〜0.05から〜0.5%である。所定のポリマー中のB単位の総数は通常1から〜30、一般的には1〜12、より一般的には1〜10、最も一般的には1〜5である。
【0031】
B単位は、重合で使用される他の種類のエチレン性不飽和化合物の反応性と比較した式I化合物の相対反応性を考慮して、重合の開始付近、重合の終わり付近、又は、任意の1以上の中間地点で組み込むことができ、先に示した可能性のうちの初めの2つでは、B単位は、ポリマーの末端の6つ以内の鎖原子に、ポリマーの末端の2つ以内の単位に、末端に隣接して、又は、末端単位として提供され得る。2以上のB単位が存在する場合、それらは典型的には、ポリマー鎖の末端又は末端付近で互いに隣接している。
【0032】
先述のタイプのポリマーは、エマルション重合又は溶液重合によって作製することができ、溶液重合は、ランダムさ、ミクロ構造等の性質をより大きく制御することができる。溶液重合が何十年にも亘って行われてきたため、溶液重合の一般的側面が当業者に既知であり、よって、参照の便宜のため、本明細書では特定の一般的態様のみが提供される。
【0033】
溶液重合では、THF等の極性溶媒と非極性溶媒との双方を使用することができ、産業的実施においては後者のタイプがより一般的である。非極性溶媒の例としては、種々のC〜C12環式及び非環式アルカン、並びに、それらのアルキル化誘導体、特定の液体芳香族化合物、並びに、それらの混合物が挙げられる。当業者は、他の有用な溶媒の選択肢及び組み合わせを認識する。
【0034】
望まれるポリマーの性質に応じて、溶液重合の特定の条件は著しく変化し得る。カチオン重合もまた可能であるが、以下の説明は、アニオン重合に関する。これらの説明の後、そのようにして作製されたポリマーの任意の官能化及び処理について説明する。
【0035】
アニオン重合は典型的には、例えば触媒とは対照的に開始剤を含む。典型的な開始剤としては、有機リチウム化合物、特にはアルキルリチウム化合物が挙げられる。有機リチウム開始剤の例としては、N−リチオ−ヘキサメチレンイミン;n−ブチルリチウム;トリブチルスズリチウム;ジアルキルアミノリチウム化合物(例えばジメチルアミノリチウム、ジエチルアミノリチウム、ジプロピルアミノリチウム、ジブチルアミノリチウム等);ジアルキルアミノアルキルリチウム化合物(例えばジエチルアミノプロピルリチウム等);及び、C−C12、好ましくはC−Cアルキル基を含むトリアルキルスタニルリチウム化合物が挙げられる。
【0036】
多官能性開始剤、即ち、2以上のリビング末端を有するポリマーを形成することのできる開始剤が使用されてもよい。多官能性開始剤の例としては、限定するものではないが、1,4−ジリチオブタン、1,10−ジリチオデカン、1,20−ジリチオエイコサン、1,4−ジリチオベンゼン、1,4−ジリチオナフタレン、1,10−ジリチオアントラセン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,3,5−トリリチオペンタン、1,5,15−トリリチオエイコサン、1,3,5−トリリチオシクロヘキサン、1,3,5,8−テトラリチオデカン、1,5,10,20−テトラリチオエイコサン、1,2,4,6−テトラリチオシクロヘキサン及び4,4’−ジリチオビフェニルが挙げられる。
【0037】
有機リチウム開始剤に加え、所謂、官能化開始剤が有用なこともある。これらはポリマー鎖に組み込まれ、故に、鎖の開始末端に官能基を提供する。かかる物質の例としては、リチオ化アリールチオアセタール(例えば、米国特許第7,153,919号明細書を参照のこと);有機リチウム化合物と、ジイソプロペニルベンゼン等の化合物と任意に予じめ反応させた置換アルジミン、ケチミン、第2級アミン等のN含有有機化合物との反応生成物(例えば、米国特許第5,153,159号明細書及び第5,567,815号明細書を参照のこと);及び、米国特許出願公開第2010/0286348号に記載されるもの等のヒドロキシアリール含有開始剤が挙げられる。
【0038】
式IVの化合物が開始剤として使用されてもよい。かかる化合物は、式Iの化合物とヒドロカルビルアルカリ金属化合物(特には上述のタイプの有機リチウム化合物等)とを反応させることによって提供されてもよい。式Iの化合物において(従って、式IVの開始剤においても)、mは、包括的に1〜5の整数であってよい。特定の実施形態において、2つのOG部分が存在していてもよく、式IVの開始剤のフェニル基の、隣接する、例えば3及び4位のC原子と任意に結合していてもよい。上述の通り、式IVの開始剤中のMは、アルカリ金属原子、好ましくはK、Na又はLi原子、最も好ましくはLi原子であってよい。
【0039】
式IVの開始剤が重合を開始する場合、そのラジカルは、ポリマー鎖の一方の終端を形成する。次いで、ヒドロキシル置換基を提供すべく、このラジカルのG部分を加水分解してもよい。式IVの開始剤中のOG官能基のG部分の個性及び取扱いは、モノマーB単位に関して上述したものと同様である。
【0040】
式IV開始剤は、開始剤として作用する場合、重合反応容器の外で製造されてもよく、その場合、モノマーと溶媒との混合物が、反応器に装填され、次いで、溶液または混合物(即ち溶媒担体中に)の一部として往々にして添加される開始剤を添加してもよい。便宜上の理由から、式IV型は、以下で説明するように、その場で合成されることが多い。
【0041】
当業者は、溶液重合に典型的に使用される条件を理解するが、参照の容易さのために代表的な説明が提供される。以下はバッチプロセスに基づくが、当業者は、この説明を、半バッチ、連続又は他のプロセスに適合させることができる。
【0042】
溶液重合は典型的には、モノマーと溶媒との混合物を適当な反応容器に装填し、その後、(使用する場合には)配位剤と開始剤(これらは、往々にして溶液又は混合物の一部として添加される)とを添加することによって開始されるが、代わりに、モノマーと配位剤とが、開始剤に添加されてもよい。ランダム化及びビニル含有率(即ち1,2−ミクロ構造)の双方は、配位剤、通常は極性化合物を含ませることによって増加させることができる。開始剤1当量当たり、最高で90当量以上の配位剤を使用することができ、量は、例えば、望まれるビニル含有率の量、使用される非ポリエンモノマーの濃度、反応温度、及び、使用する具体的な配位剤の性質によって決まる。配位剤として有用な化合物としては、非結合電子対を有するヘテロ原子(例えば、O又はN)を含む有機化合物が挙げられる。例えば、モノ−及びオリゴ−アルキレングリコールのジアルキルエーテル;クラウンエーテル;テトラメチルエチレンジアミン等の第3級アミン;THF;THFオリゴマー;2,2’−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、ジ−ピペリジルエタン、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N’−ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン、ジエチルエーテル、トリブチルアミン等の直鎖状及び環状オリゴマーオキソラニルアルカン(例えば、米国特許第4,429,091号明細書を参照のこと)が挙げられる。
【0043】
典型的には、重合溶媒とモノマーとの溶液は、約−80℃から+100℃まで、より一般的には約−40℃から+50℃まで、典型的には〜0℃から+30℃までの温度で提供される。この溶液に添加されるのは、開始化合物、又は、官能化単位が開始剤から提供される場合には、式IVの開始剤(又は、有機リチウム、典型的にはアルキルリチウムを含む式Iの前駆体)である。溶液は、約−70℃から〜150℃、より一般的には約−20℃から〜120℃、典型的には〜10℃から〜100℃の温度を有していてもよい。重合は、望まれるポリマーの形成をもたらすのに充分な時間、通常は〜0.01から〜100時間、より一般的には〜0.08から〜48時間、典型的には〜0.15から〜2時間、無水の嫌気的条件で進められる。
【0044】
変換率が望ましいレベルに達した後、(使用される場合には)熱源を除去してもよく、重合のために反応容器のみが用意される場合には、反応混合物を、官能化及び/又は失活のために後重合容器へと移動させる。どのように処理されるかに関わらず、比較的高濃度のポリマーのため、この反応混合物は通常、「ポリマーセメント」と称される。アニオン技術に従って作製されたポリマーは、一般的には、最高で〜500,000ダルトンの数平均分子量(M)を有する。特定の実施形態において、Mは、〜2,000ダルトンであってもよく、これらの及び/又は他の態様において、Mは、有利には、少なくとも〜10,000ダルトンであってもよいか、又は、〜50,000から〜250,000ダルトン、若しくは、〜75,000から〜150,000ダルトンの範囲であってもよい。往々にして、Mは、失活した試料が、〜2から〜150まで、より一般的には〜2.5から〜125まで、更により一般的には〜5から〜100まで、最も一般的には〜10から〜75までのガムムーニー粘度(ML/100℃)を示すものである。
【0045】
ポリマーセメントが、リビング末端を有する少なくとも一部のポリマーを保存するための方法で保持されるとき、式IIIa型のポリマーを、有利には、上記ポリマーセメント状態にある場合には、1以上の式Iの化合物をポリマーセメントに導入すること及びかかる化合物を反応性ポリマー鎖の末端で反応させることによって、失活前に提供することができる。以下、この種類の化合物を終端化合物と称する。終端化合物の好ましい基としては、フェニル環上の少なくとも2つのOG置換基を含むものが挙げられる。
【0046】
式I化合物と末端反応性ポリマーとの反応は、穏やかな温度(例えば、0℃〜75℃)で、比較的迅速に(数分〜数時間)行うことができる。ポリマーに添加され、反応するかかる化合物の量は、望まれる効果のレベル、使用する非慣習的な充填剤の量、慣習的な充填剤粒子と非慣習的な充填剤粒子との比等に大きく依存して広範囲に亘って変化してよい。反応性ポリマー鎖の量(一般的には、開始剤又は触媒の当量に基づいて決定される)に基づき、式I型化合物の量は、〜1:4から〜5:4、一般的には〜1:3から〜9:8、典型的には〜1:2から〜1:1の範囲であってよい。特定の実施形態では、上述の化合物の前、後又は共に添加され得る他の官能化剤との反応のために反応性ポリマー末端の一部を保存するべく、より少ない量が使用されてもよく、この種の多官能化は、先述の官能性開始剤の種類の代わりに又はそれに加えて行われてよい。このリビングポリマーと、種々の失活剤(以下で説明する)のいずれかとの反応は、水素原子である(式IIIの)Zをもたらすのに対し、終端化合物との反応は、当該化合物のラジカル(上で定義した)であるZをもたらす。
【0047】
ポリマーがリビング性の間、ポリマーは、1以上のヘテロ原子を含む化合物、即ち、終端化合物、カップリング剤及び/又は連結剤との反応によって更に官能化され得る。当業者は、この種類の重合後官能化によって提供され得る末端官能基の多数の例を熟知している。更なる詳細について、興味のある読者には、米国特許第3,109,871号明細書、第4,015,061号明細書、第4,616,069号明細書、第4,647,625号明細書、第4,677,153号明細書、第4,935,471号明細書、第5,109,907号明細書、第5,153,159号明細書、第5,149,457号明細書、第5,196,138号明細書、第5,329,005号明細書、第5,496,940号明細書、第5,502,131号明細書、第5,567,815号明細書、第5,610,227号明細書、第5,663,398号明細書、第5,786,441号明細書、第6,812,295号明細書、第6,977,281号明細書、第7,153,919号明細書、第7,816,483号明細書等のうちのいずれか、並びに、これらの特許明細書で引用される文献、及び、これらの特許明細書を引用する後の文献が案内され、米国特許出願公開第2007/0149744号、第2007/0078232号、第2008/0027171号等も参照されたい。特定の典型的な終端化合物としては、SnCl、RSnCl、RSnCl、RSnCl、カルボジイミド、N−環状アミド、N,N’−二置換環状尿素、環状アミド、環状尿素、イソシアネート、シッフ塩基、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アルキルチオチアゾリン、アルコキシシラン(例えば、Si(OR、RSi(OR、RSi(OR等)、環状シロキサン及びこれらの混合物が挙げられる。(上記式中、各々のRは独立して、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20アリール基又はC〜C20アラルキル基である。)好ましい終端化合物の特定の例としては、SnCl、トリブチルスズクロリド、ジブチルスズジクロリド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及び3−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル−メチルジエトキシシランが挙げられる。
【0048】
望まれる場合には、末端官能基が、リビングポリマーに提供されてもよいが、重合反応容器中に残存するか、又は、望まれる場合には、ポリマーセメントが、反応前に別の容器に移されてもよい。
【0049】
この時点では、得られるポリマーは、1種類以上のポリエンマーと、フェニル環に結合した少なくとも1つのOG置換基を有するα−メチルスチレン基を含む少なくとも1つの官能化単位とを含む。官能化単位は、開始化合物、モノマー又は終端化合物から得ることができる。特定の態様において、2以上の官能化単位が組み込まれてもよく、これらは、多数のマーから、開始剤と1以上のマーとから、末端官能基と1以上のマーとから、又は、開始剤と末端官能基とから得ることができる。
【0050】
フェニル環に結合する置換基の特定の形態は、一部である単位の由来によって決まり、開始剤及び/又はモノマーに由来する単位は、OG置換基を有するであろうが、終端化合物に由来する単位は、いずれかのタイプ(OG又はOH)を有していてよい。(ポリマーをゴム組成物の一部として使用する場合には)充填剤粒子との最大の相互作用性を促進すべく、最も好ましくは、全てのG部分がH原子に変換されることを確実にすることが一般的に望ましい。以下で説明する処理工程(失活を含む)は、G部分の少なくとも一部を加水分解するのに十分であることがあり、それによって、ポリマー内の1以上のアリール基に1以上のヒドロキシル置換基を提供する。或いは、広範囲の、好ましくは完全な加水分解を促進するよう設計された別個の反応工程が使用されてもよく、当業者は、以下の例のうちのいくつかで使用される典型的な技術から、潜在的に効果的な他の反応を想定することができる。更には、当業者は、OG又はOH基が、ポリマー鎖中の位置に関わらず、この処理及び/又は(以下に記載する)1種類以上の粒子状充填剤との配合の間に、更に反応してもよいことを理解する。
【0051】
望まれる場合、失活は、ポリマーと、活性水素含有化合物、例えばアルコール、水又は酸等とを、最長で約120分、約25℃〜約150℃の温度で攪拌することによって行われてもよい。
【0052】
溶媒は、ドラム乾燥、押出乾燥、真空乾燥等の慣習的な技術によって、(失活した)ポリマーセメントから除去することができ、水、アルコール又は蒸気による凝固、熱脱溶媒と組み合わせてもよい。凝固が行われる場合には、オーブン乾燥が望ましいこともある。
【0053】
上述したようなポリマーは、とりわけ、カーボンブラック及びシリカ等の補強性充填剤と配合される場合に特に有利な性質を示し得る。ポリマーは、トレッドストック化合物に使用するか、又は、慣習的に使用される任意のトレッドストックゴムと配合することができ、該トレッドストックゴムは、天然ゴム及び/又は非官能化合成ゴムを含み、該非官能化合成ゴムは、例えば、ポリエン由来のマー単位のみを含む1以上のホモ及びインターポリマー(例えば、ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、及び、ブタジエン、イソプレン等を組み込んだコポリマー)、SBR、ブチルゴム、ネオプレン、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、シリコンゴム、フルオロエラストマー、エチレン/アクリル酸ゴム、エチレン/ビニルアセテートインターポリマー、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレンゴム等である。官能化ポリマーが慣習的なゴムと配合される場合、量は、ゴム全体の約5〜約99%まで変化してよく、慣習的なゴムがゴム全体の残りを構成する。最少量は、望まれるヒステリシスの低減の程度に、大きく左右される。
【0054】
エラストマー化合物は典型的には、添加された充填剤の総体積をエラストマー性ストックの総体積で割った体積分率まで充填され、往々にして〜25%であり、補強性充填剤の典型的な(組み合わせた)量は、〜30から100phrであり、範囲の上限は、概して、充填剤を使用する場合に付与される増加した粘度を、加工装置がいかに効率的に処理することができるかによって定められる。
【0055】
有用な充填剤としては、種々の形態のカーボンブラックが挙げられ、限定するものではないが、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びランプブラックが挙げられる。より具体的には、カーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネスブラック(super abrasion furnace black)、高耐摩耗性ファーネスブラック(high abrasion furnace black)、高速押出ファーネスブラック(fast extrusion furnace black)、微細ファーネスブラック(fine furnace black)、準超耐摩耗性ファーネスブラック(intermediate super abrasion furnace black)、半補強性ファーネスブラック(semi-reinforcing furnace black)、中級加工チャンネルブラック(medium processing channel black)、ハード加工チャンネルブラック(hard processing channel black)、導電性チャンネルブラック(conducting channel black)及びアセチレンブラックが挙げられ、これらのうちの2以上の混合物が使用されてもよい。少なくとも20m/g、好ましくは少なくとも〜35m/gの表面積(EMSA)を有するカーボンブラックが好ましく、カーボンブラックの表面積の決定方法については、ASTMD−1765を参照されたい。ペレット化されていないカーボンブラックが特定の混合機中での使用に好ましいことがあるが、カーボンブラックは、ペレット化形態又はペレット化されていない綿状塊であってもよい。
【0056】
カーボンブラックの量は、最高で約50phr、典型的には約5〜約40phrであってよい。
【0057】
充填剤として、アモルファスシリカ(SiO)が使用されてもよい。シリカは一般的には、それらが超微細な球状粒子として沈殿する水中における化学反応によって製造されるため、湿式処理ケイ酸に分類される。これらの一次粒子は、強固に結合して凝集体となり、弱く結集して塊を形成する。「高分散性シリカ」は、薄片顕微鏡法によって観察することのできるエラストマー性のマトリックス中で、解凝集及び分散することのできる相当な能力を有する任意のシリカである。
【0058】
表面積は、様々なシリカの補強性の信頼性ある尺度を提供し、表面積を決定する方法としては、ブルナウアー・エメット・テラー(“BET”)法(J.Am.Chem.Soc,第60巻,第309頁以降に記載される)が認められている。シリカのBET表面積は一般的には、450m/mg未満、通常〜32から〜400m/g、又は〜100から〜250m/g、又は〜150から〜220m/mgである。
【0059】
(使用される場合には)シリカ充填剤のpHは、一般的には約5〜約7又はわずかに大きく、好ましくは約5.5〜約6.8である。
【0060】
市販のシリカとしては、様々な等級のHi−Sil(商標)粉末及び顆粒シリカ(PPGインダストリーズ株式会社、ピッツバーグ、ペンシルベニア)が挙げられる。市販シリカの他の供給業者としては、グレースデビソン(ボルチモア、メリーランド)、デグサコーポレーション(パーシッパニー、ニュージャージー)、ロディアシリカシステムズ(クランベリー、ニュージャージー)及びJ.M.フーバーコーポレーション(エジソン、ニュージャージー)が挙げられる。
【0061】
シリカが使用される場合、エラストマー中の良好な混合及びエラストマーとの相互作用を確実にするべく、往々にしてシラン等のカップリング剤が添加される。一般的には、添加されるシリカの量は、エラストマー化合物中に存在するシリカ充填剤の重量に基づき、〜4から〜20%である。カップリング剤は、一般式A−T−Gを有していてもよく、式中、Aは、シリカ充填剤表面の基(例えば表面シラノール基)と物理的及び/又は化学的に結合することのできる官能基を表し;Tは、炭化水素基連結を表し;Gは、エラストマーと(例えば、硫黄含有連結を介して)結合することのできる官能基を表す。かかるカップリング剤としては、オルガノシラン、特には多硫化アルコキシシラン(例えば、米国特許第3,873,489号明細書、第3,978,103号明細書、第3,997,581号明細書、第4,002,594号明細書、第5,580,919号明細書、第5,583,245号明細書、第5,663,396号明細書、第5,684,171号明細書、第5,684,172号明細書、第5,696,197号明細書等を参照のこと)又は上述のG及びA官能基を有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。加工助剤の添加が、使用されるシランの量を低減するために用いられてもよい。加工助剤として使用される糖の脂肪酸エステルの説明については、例えば米国特許第6,525,118号明細書を参照されたい。加工助剤として有用な更なる充填剤としては、限定するものではないが、鉱物充填剤、例えば、粘土(含水アルミニウムシリケート)、タルク(含水マグネシウムシリケート)及びマイカ等、並びに、非鉱物充填剤(例えば、尿素及び硫酸ナトリウム等)が挙げられる。他の変異体が使用されてもよいが、典型的なマイカは、主にアルミナ、シリカ及び炭酸カリウムを含む。更なる充填剤は、最高で〜40phr、典型的には最高で〜20phrの量で使用することができる。
【0062】
シリカは一般的には、最高で〜100phrの量、典型的には〜5から〜80phrの量で使用される。カーボンブラックも存在する場合、シリカの量は〜1phrまで低減されてよく、シリカの量が減少するにつれ、より少量の加工助剤と、もしあればシランとを使用してもよい。
【0063】
比較的高い界面自由エネルギー、即ち、水中の表面自由エネルギーの値(γρ1)を有する1以上の非慣習的な充填剤が、カーボンブラック及び/又はシリカと併せて、若しくは、代わりに使用されてもよい。「比較的高い」の語は、種々の方法で定義又は特徴付けられてよく、例えば、水−空気界面の界面自由エネルギーよりも高く、好ましくはこの値の数倍(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は、更には少なくとも4倍)、アモルファスシリカのγρ1値の少なくとも数倍(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、又は更には少なくとも10倍)であり、絶対量では、例えば、少なくとも〜300、少なくとも〜400、少なくとも〜500、少なくとも〜600、少なくとも〜700、少なくとも〜750、少なくとも〜1000、少なくとも〜1500、及び、少なくとも〜2000mJ/m等、例えば、〜300から〜5000mJ/m、〜350から〜4000mJ/m、〜400から〜5000mJ/m、〜450から〜4000mJ/m、〜500から〜5000mJ/m、及び、先述の範囲の部分的な範囲、及び/又は上限値及び下限値の他の組み合わせ等である。
【0064】
比較的高い界面自由エネルギーを有する、天然に存在する物質の非限定的な例としては、F−アパタイト、針鉄鉱、ヘマタイト、紅亜鉛鉱、黒銅鉱、ギブサイト、石英、カオリナイト、あらゆる形態の黄鉄鉱等が挙げられる。特定の合成複合酸化物が、この種の高い界面自由エネルギーを示してもよい。
【0065】
先述の種類の物質は、典型的には、カーボンブラック又はアモルファスシリカよりも密度が高く、故に、等質量の非慣習的な充填剤による特定質量のカーボンブラック又はシリカの置き換えは典型的に、所定の化合物中に存在するかなり少ない体積の全充填剤をもたらすであろう。従って、置き換えは典型的には、等重量ではなく等体積基準で行われる。
【0066】
一般的には、〜5から〜60%の慣習的な粒子状充填剤材料を、ほぼ等しい(〜0.8倍から〜1.2倍の)体積の非慣習的な充填剤粒子によって置き換えることができる。特定の実施形態では、〜10から〜58%の慣習的な粒子状充填剤材料を、ほぼ等しい(〜0.85倍から〜1.15倍の)体積の他の充填剤粒子で置き換えることが充分であり、他の実施形態では、〜15から〜55%の慣習的な粒子状充填剤材料を、ほぼ等しい(〜0.9倍から〜1.1倍の)体積の他の充填剤粒子で置き換えることが適当であり、更に他の実施形態では、〜18から〜53%の慣習的な粒子状充填剤材料を、ほぼ等しい(〜0.95倍から〜1.05倍の)体積の他の充填剤粒子で置き換えることが好ましいこともある。
【0067】
重量不同の問題は、非標準的な粒子を使用することによって、克服又は改善することができる可能性がある。例えば、1種類以上の非慣習的な充填剤の実質的に中空の粒子、及び、1種類以上の非慣習的な充填剤化合物を含む表面を有するように被覆された比較的軽量の粒子を想定してもよい。
【0068】
非慣習的な充填剤粒子は一般的には、化合物中で使用される慣習的な充填剤とほぼ同じサイズであってもよい。言い換えれば、前記米国特許第5,066,702号明細書で使用されるもの等の非常に大きな粒子も、前記米国特許第6,972,307号明細書で使用されるもの等の非常に小さな粒子も必要とされない。一般的には、補強目的と、多数の粒子をトレッド表面で使用できるようにすることを確実にすることとの両方の目的には、比較的小さい粒子が好ましい。
【0069】
他の慣習的なゴム添加物が添加されてもよい。例えば、これらには、プロセス油、可塑剤、劣化防止剤(例えば、抗酸化剤及びオゾン劣化防止剤等)、硬化剤等が含まれる。
【0070】
成分は全て、標準的な装置、例えばバンバリー型又はブラベンダー型混合機を使用して混合することができる。典型的には、混合は、2以上の段階で行われる。第1段階(往々にしてマスターバッチ段階と称される)の間、混合は、典型的には〜120から〜130℃の温度で開始され、所謂、落下温度、典型的には〜165℃に達するまで上昇する。
【0071】
処方に、カーボンブラック以外の又はカーボンブラックに加えて充填剤が含まれる場合、シラン成分を別々に添加するために別個のリミル段階が使用されることが多い。この段階は、マスターバッチ段階で採用される温度と同様の(往々にしてわずかに低い)温度で行われることが多く、即ち、〜90℃から落下温度〜150℃まで上昇する。
【0072】
補強されたゴム化合物は慣習的には、約0.2〜約5phrの1以上の既知の加硫剤(例えば硫黄又は過酸化物系硬化系等)を使用して硬化される。適当な加硫剤の一般的開示について興味のある読者には、カーク−オスマー,化学技術百科事典、第3版(ウィリーインターサイエンス,ニューヨーク,1982年),第20巻,第365−468頁に提供されるような概説が案内される。加硫剤、硬化促進剤等は、最終混合段階で添加される。望まれないスコーチング及び/又は尚早な加硫の開始の可能性を低減するため、この混合段階は、より低い温度で行われることが多く、例えば〜60から〜65℃で始まり、〜105℃から〜110℃を超えない。
【0073】
次いで、配合された混合物は、種々の構成部品のいずれかへと成形された後で加硫される前に、シートに加工(例えば粉砕)され、典型的には、混合段階で採用される最高温度(最も一般的には〜170℃)よりも〜5から〜15℃高い温度で行われる。特定の成分及び条件に応じて、加硫は典型的には、〜140℃から〜170℃の温度で行われる。
【0074】
特定の試験により、加硫物の特定の物理的性質と、加硫物から作製される製品、特にはタイヤトレッドの性能とが相関を有することが認識されるようになってきた。例えば、ヒステリシス(操作中の発熱性)の低下は、高温におけるより高い回復値及びより低い損失正接値(tanδ)と相関があり、より良好な取扱性は、往々にして高温且つ高歪みにおけるより高い弾性率値と相関があり、アイストラクションは、低温におけるより低い弾性率値と相関があること等が見出された(先の記載において、「高温」は、典型的には〜50から65℃と考えられ、「低温」は、〜0から−25℃と考えられる。)。
【0075】
加硫物の多くの望ましい性質(及び、加硫物を調製するゴム組成物の増強した加工性)は、充填剤粒子が充分に分散し、且つ、構成ポリマーと優れた相互作用性を示す場合に達成される。最後の架橋部位からポリマー鎖の末端までのポリマーのセクションは、ヒステリシスロスの主要な発生源であり、この自由末端が高分子網目に結合しないため、効率的な弾性回復プロセスに関与することができず、結果としてポリマーのこのセクション(及び、かかるポリマーが組み込まれる加硫物)へと伝達するエネルギーが熱として失われる。これらのポリマー鎖末端が、補強性粒子状充填剤と結合すること又は充分に相互作用することを確実にすることは、加硫剤の多くの物理的性質、例えば低下したヒステリシス等にとって重要である。
【0076】
以下の非限定的且つ説明的な例は、読者に、本発明の実施に有用な可能性のある詳細な条件及び物質を提供する。
【実施例】
【0077】
例では、正圧のNパージの下、回収した(extracted)セプタムライナーと穿孔したキャップとによって予め密閉した乾燥ガラス容器を全ての調製に使用した。(ヘキサン中の)ブタジエン溶液、スチレン(ヘキサン中34.5重量%)、ヘキサン、n−ブチルリチウム(ヘキサン中1.68M)、2,2−ビス(2’−テトラヒドロフリル)プロパン溶液(ヘキサン中1.6M溶液、CaH上で保存)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)のヘキサン溶液を使用した。
シグマアルドリッチ(セントルイス、ミズーリ)−トリエチルアミン(99.5%)、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(3,4−DOBA,97%)、3,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド(3,5−DOBA,98%)、3’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン(3’,5’−DOAP,97%)、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(98%)、及び、4−ジ(メチルアミノ)ピリジン(DMAP,99%);並びに
アクロスオーガニック(ゲール、ベルギー)−tert−ブチルジメチルシリルクロリド(98%)及びテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF,〜5%の水を含んだTHF中1.0M)。
【0078】
例1−3:ケトン及びアルデヒドの合成
窒素下、乾燥したフラスコに、〜10.00gの3’,5’−DOAPと0.32gのDMAPとを添加した後、〜180mLのDMFを添加し、薄黄色溶液を提供した。20.2mLのトリエチルアミンを添加した後、〜20.2mLのtert−ブチルジメチルシリルクロリドの溶液(THF中3.0M)を滴下した。得られた懸濁液を〜1時間室温で混合し、その後、ヘキサン〜150mLとNHClの飽和水溶液〜50mLとを添加した。有機相を塩水〜50mLで3回洗浄した。揮発性物質を有機相から除去した後、薄茶色のオイルを得た。このオイルを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(フィッシャーサイエンティフィックの230〜400メッシュ)によって、ヘキサン/エチルアセテート(95:5,v/v)を溶出液として使用して精製した。溶媒を除去した後、無色のオイルを得た(収率98%)。プロトンと13CNMR分光分析(バリアン(商標) 300MHz 分光光度計)によって、生成物が3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)アセトフェノン[3’,5’−(TBDMSO)AP,例1]であることを確認した。
【0079】
同様の手順を用いて、3,4−DOBAから3,4−ビス(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンズアルデヒド[3,4−(TBDMSO)BA,例2](98%,オフホワイトの固体)を、3,5−DOBAから3,5−ビス(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンズアルデヒド[3,5−(TBDMSO)BA,例3](90%,無色のオイル)を作製した。
【0080】
これらの化合物の構造を下記の表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
例4:α−メチルスチレンの合成
THF130mL中のメチルトリフェニルホスホニウムブロミド25.4gに、0℃で、1.6Mn−ブチルリチウム溶液41.9mLを添加し、橙色の懸濁液を形成した。20分後、THF100mL中の3’,5’−(TBDMSO)AP(例1の)22.5gを、カニューレによって該懸濁液に緩徐に添加し、室温で一晩攪拌した黄色懸濁液を形成した。
【0083】
固体をろ過し、溶媒を除去した後、未加工の生成物をヘキサン/エチルアセテート(95:5,v:v)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、18.0gの無色のオイルを得た(収率80.5%)。プロトン及び13CNMR分光分析によって、生成物が3,5−ビス(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−α−メチルスチレン[3,5−(TBDMSO)AMS]であることを確認した。
【0084】
例5(コントロール):スチレン/ブタジエンコポリマー
攪拌子を具えたNパージした反応器に、1.57kgのヘキサン、0.39kgのスチレン溶液及び2.52kgのブタジエン溶液(ヘキサン中21.6重量%)を添加した。反応器に、n−ブチルリチウム溶液3.37mLを入れた後、2,2−ビス(2’−テトラヒドロフリル)プロパン溶液1.24mLを入れた。反応器カバーを50℃まで加熱し、重合を〜75分間進行させた。ポリマーセメントを室温まで冷却し、BHTを含むイソプロパノールに滴下し、ドラム乾燥した。この未変性コントロールポリマー(例5)について下記の表2にまとめた。
【0085】
例6−7:スチレン/ブタジエンコポリマー−官能性開始剤
攪拌子を具えた別のNパージした反応器に、ヘキサン1.53kg、スチレン溶液0.37kg及びブタジエン溶液2.32kg(ヘキサン中22.1重量%)を添加した。反応器に、別個に調製した開始剤溶液を入れ、該溶液は、ヘキサン中のブチルリチウム3.17mL、3,5−(TBDMSO)AMS(例4の)の1.0Mヘキサン溶液5.06mL、及び、2,2−ビス(2’−テトラヒドロフリル)プロパン溶液1.17mLを含んでいた。反応器カバーを50℃まで加熱し、重合を〜75分間進行させた。ポリマーセメントを室温まで冷却し、乾燥したボトルに一部を滴下し、以下の通り処理した:
例6 イソプロパノールで終端、
例7 イソプロパノールの添加後、TBAF溶液(開始剤に対して〜5:2のモル比)を添加し、保護基を加水分解。
これらの試料ボトルの各々を25℃の水浴で〜2時間回転させた後、各々のセメントを、BHTを含むイソプロパノールで凝固させ、ドラム乾燥した。これらの官能化ポリマーの性質を下記表2に示す。
【0086】
この同じポリマーセメントの一部を含む他のボトルを以下の例8−11で使用した。
【0087】
例8−11:スチレン/ブタジエンコポリマー−頭尾官能化
例6−7で調製したポリマーセメントの一部を含む2つのボトルに、ヘキサン中の1.0Mの3,5−(TBDMSO)AMS(例4の)を添加した。一方のボトル(以下で例8に指定された)には、α−メチレンスチレン対リチウムイオンを〜1:1の比で提供するべく、十分な3,5−(TBDMSO)AMSを添加し、他方のボトル(以下で例9に指定された)には、α−メチルスチレン対リチウムイオンを〜3:1の比で提供するべく、十分な3,5−(TBDMSO)AMSを添加した。これらの添加の結果、1つの末端(尾部)官能性単位を含む1つのポリマー(例8)と、3つの末端官能性単位を含んだ別のポリマー(例9)とをもたらす。
【0088】
例6−7で調製したポリマーセメントの一部を含む他方のボトルには、ベンズアルデヒド化合物対リチウムイオンを〜1:1の比で提供するべく、十分な、ヘキサン中の1.0M3,5−(TBDMSO)BA(例3の)を添加した。これは、以下で例10に指定される。
【0089】
例6−7で調製したポリマーセメントの一部を含む更に別のボトルに、ベンズアルデヒド化合物対リチウムイオンを〜1:1の比で提供するべく、十分な、ヘキサン中の1.0M3,4−(TBDMSO)BA(例2の)を添加した。これは、以下で例11に指定される。
【0090】
これらのボトルの各々を〜30分間、50℃で攪拌した。それぞれのポリマー中に存在する、算出された量のOG部分を脱保護するのに十分なTBAF溶液を、各々のボトルに添加し、その後、25℃の水浴中で〜120分間転倒した。各々のセメントは、BHTを含むイソプロパノールで凝固させ、ドラム乾燥した。全てのポリマーの性質を、下記表2に示す。
【0091】
スコット(商標)試験機を使用してコールドフロー試験を行った。予熱したプレス機を使用して、2.5gのポリマーを100℃で20分間、金型中で、溶融プレスすることによって試料を調製した。〜12mmの均一な厚さを有する、得られた円筒状試料を、金型から取り出す前に室温まで冷却させた。5kgの較正重量の重荷の下に、個々に試料を設置した。試料の厚さを、重量が解放された時間から測定した時間の関数として〜30分間記録し、下記表中の値は、試験の終わりにおける厚さである。
【0092】
【表2】
【0093】
例12−23:充填組成物
補強性充填剤を含む加硫性エラストマー化合物を、例5及び7−11のポリマーから作製した。表3aに示す処方に従って作製したもの(粒子状充填剤としてカーボンブラックのみを使用した)を、それぞれ例12−17に指定し、表3bに示す処方に従って作製したもの(粒子状充填剤としてシリカのみを使用した)を、それぞれ例18−23に指定した。
【0094】
これらの表中、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニルジアミンは、抗酸化剤として働き、2,2’−ジチオベンゾチアゾール、N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド及びN,N’−ジフェニルグアニジンは、加硫促進剤として働く。
【0095】
【表3-a】
【0096】
【表3-b】
【0097】
例24−35:加硫物の調製と試験
例12−23の化合物を、171℃で〜15分間硬化させ、それぞれ加硫物24−29(カーボンブラック)及び30−35(シリカ)を提供した。加硫物の物理試験の結果を、以下の表4及び5にまとめる。
【0098】
これらの表中の「温度掃引」の列について、データの上の行は、0℃での測定によるものであり、下の行は、60℃での測定によるものである。
【0099】
「60℃のダイナスタットtanδ」に対応するデータは、下記条件を使用して、ダイナスタット(商標)機械的分光計(ダイナスタティクスインストルメンツ コーポレーション、アルバニー、ニューヨーク)で行った試験から得られた:1Hz、2kgの静止質量及び1.25kgの動的負荷、円筒状(9.5mm直径×16mm高さ)の加硫ゴム試料、60℃。
【0100】
「結合ゴム」に対応するデータは、J.J.ブレナンら、ゴム化学及び技術,40,817(1967年)に記載される手順を用いて決定した。
【0101】
ムーニー粘度(ML1+4)値は、アルファテクノロジーズ(商標)ムーニー粘度計(大ロータ)によって、1分間のウォームアップ時間及び1分間の運転時間を使用して決定し、引張機械的性質は、ASTM−D412に記載される標準的手順を使用して決定し、ペイン効果(ΔG’、即ち、0.25%歪みにおけるG’と14%歪みにおけるG’との差)及びヒステリシス(tanδ)のデータは、60℃且つ10Hz(歪み掃引)、並びに、2%歪み且つ10Hz(温度掃引)で行われた動的試験から得られた。引張特性に関しては、Mは、X%の伸長における弾性率であり、Tは、破断時の引張強度であり、Eは、破断時の伸長割合である。
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
上記表のデータは、高温tanδ値の減少、ΔG’の低減、増加した低温tanδ等により証明される通り、ヒドロキシル基含有α−メチルスチレン官能性SBRインターポリマーが、カーボンブラック及びシリカ充填剤と優れた相互作用を示すことを説明する。
【0105】
歪み掃引試験の結果は、表6a〜6b(カーボンブラック)及び6c〜6d(シリカ)中に一覧にし、温度掃引tanδ試験の結果は、表7a及び7b中に一覧にする。
【0106】
【表6-a】
【0107】
【表6-b】
【0108】
【表6-c】
【0109】
【表6-d】
【0110】
【表7-a】
【0111】
【表7-b】