(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239727
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】複数のセンサを備えた流量計の主構成要素
(51)【国際特許分類】
G01F 1/46 20060101AFI20171120BHJP
G01F 1/32 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
G01F1/46
G01F1/32 D
【請求項の数】33
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-500201(P2016-500201)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公表番号】特表2016-514268(P2016-514268A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】US2014014567
(87)【国際公開番号】WO2014149203
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】13/834,613
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】ストローム,グレゴリー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヘドケ,ロバート,カール
(72)【発明者】
【氏名】ヴィークルンド,デイヴィッド,ユージーン
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−530951(JP,A)
【文献】
特表2002−538420(JP,A)
【文献】
特表平4−505056(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0191481(US,A1)
【文献】
米国特許第7308832(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0034535(US,A1)
【文献】
国際公開第2001/11327(WO,A1)
【文献】
米国特許第3775673(US,A)
【文献】
特表昭60−501972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00−15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管を通るプロセス流体の流量を測定するための流量計であって、
導管内に延び、プロセス流体中に、プロセス流体の流れによる差圧を生起させるピトー管と、
前記ピトー管の側部上に搭載され、プロセス流体の流れによって生成された圧力にさらされて、プロセス流体の上流側プロセス変数を感知するように構成された上流側プロセス変数センサと、
前記ピトー管の側部上に搭載された前記上流側プロセス変数センサの下流側で、前記ピトー管の側部上に搭載され、プロセス流体の流れによって生成された圧力にさらされて、プロセス流体の下流側プロセス変数を感知するように構成された下流側プロセス変数センサと、
前記上流側プロセス変数と前記下流側プロセス変数に基づいてプロセス流体の流量を決定するように構成された測定回路を具備した流量計。
【請求項2】
前記上流側および下流側プロセス変数センサは、圧力センサである請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
さらに、前記ピトー管によって生起された差圧を感知するように構成された差圧センサを含む請求項1に記載の流量計。
【請求項4】
前記測定回路は、前記差圧センサにより測定された差圧と前記上流側および下流側プロセス変数センサにより測定された第1および第2圧力間の差に基づいて出力を提供する請求項3に記載の流量計。
【請求項5】
前記上流側および下流側のプロセス変数センサは、加えられた圧力に応答して変形する空洞が中に形成された非圧縮性の材料から成る請求項1に記載の流量計
【請求項6】
前記上流側および下流側プロセス変数センサの少なくとも1つは、温度センサである請求項1に記載の流量計。
【請求項7】
前記測定回路は、前記上流側および下流側プロセス変数に基づいて診断出力を提供する請求項1に記載の流量計。
【請求項8】
前記診断出力は、前記ピトー管の劣化に関連する請求項7に記載の流量計。
【請求項9】
前記診断出力は、前記ピトー管を圧力センサに結合するインパルス管の詰まりの指示を含む請求項7に記載の流量計。
【請求項10】
前記測定回路は、前記上流側および下流側プロセス変数に基づいてプロセス流体の流れプロフィルを決定する請求項1に記載の流量計。
【請求項11】
前記測定回路は、前記上流側および下流側プロセス変数の少なくとも1つの出力に基づいて前記ピトー管と前記導管の間の接触を検出する請求項1に記載の流量計。
【請求項12】
前記測定回路は、前記上流側および下流側プロセス変数の少なくとも1つに基づいてプロセス流体の密度を計算する請求項1に記載の流量計。
【請求項13】
前記測定回路は、前記上流側および下流側プロセス変数の少なくとも1つに基づいて質量流量を計算する請求項1に記載の流量計。
【請求項14】
前記質量流量は、プロセス変数の振幅に基づいて計算される請求項13に記載の流量計。
【請求項15】
前記上流側および下流側プロセス変数センサの少なくとも1つは、前記ピトー管の外側表面に搭載されている請求項1に記載の流量計。
【請求項16】
さらに、第2の下流側プロセス変数センサを含む請求項1に記載の流量計。
【請求項17】
前記上流側および下流側プロセス変数センサの少なくとも1つは、前記ピトー管のプレナムに搭載されている請求項1に記載の流量計
【請求項18】
導管を通って流れているプロセス流体の流量を測定する方法であって、
上流側および下流側圧力を生成するピトー管を、導管を通るプロセス流体の流れ中に配置すること、
上流側プロセス変数を感知するため、前記ピトー管の上流側側部に上流側プロセス変数センサを配置すること、
下流側プロセス変数を感知するため、前記ピトー管の下流側側部に下流側プロセス変数センサを配置すること、
感知された上流側プロセス変数と感知された下流側プロセス変数に基づいてプロセス流体の流量を決定すること、
から成る方法。
【請求項19】
前記上流側および下流側プロセス変数センサは、圧力センサである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに、差圧センサを使用して前記上流側と下流側の間の差圧を感知することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記差圧センサにより測定された差圧と前記上流側および下流側プロセス変数センサにより測定された第1および第2圧力間の差に基づく出力を提供することを含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
補償することを含み、そこでは、前記差圧センサにより測定された差圧が前記上流側および下流側プロセス変数に基づいて補償される請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記上流側および下流側プロセス変数の少なくとも1つは、温度である請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記上流側および下流側プロセス変数に基づいて診断出力を提供することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記診断出力は、前記ピトー管の劣化に関連する請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記診断出力は、前記ピトー管を圧力センサに結合するインパルス管の詰まりの指示を含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記上流側および下流側プロセス変数に基づいてプロセス流体の流れプロフィルを決定することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記上流側および下流側プロセス変数の少なくとも1つに基づいてプロセス流体の密度を計算することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記上流側および下流側プロセス変数の少なくとも1つに基づいて質量流量を計算することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記上流側および下流側プロセス変数センサの少なくとも1つは、前記ピトー管の外側表面に搭載されている請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記上流側および下流側プロセス変数センサの少なくとも1つは、前記ピトー管のプレナムに搭載されている請求項18に記載の方法。
【請求項32】
導管を通るプロセス流体の流量を測定するための流量計であって、
導管内に延び、プロセス流体中に、プロセス流体の流れによる差圧を生起させるピトー管と、
前記ピトー管の側部上に搭載され、プロセス流体の流れによって生成された圧力にさらされて、プロセス流体の上流側プロセス変数を感知するように構成された上流側プロセス変数センサと、
前記ピトー管の側部上に搭載された前記上流側プロセス変数センサの下流側で、前記ピトー管の側部上に搭載され、プロセス流体の流れによって生成された圧力にさらされて、プロセス流体の下流側プロセス変数を感知するように構成された下流側プロセス変数センサと、
プロセス流体の流れによって生成された上流側圧力を伝える、前記ピトー管内の上流側プレナムと、
プロセス流体の流れによって生成された下流側圧力を伝える、前記ピトー管内の下流側プレナムと、
前記上流側および下流側プレナムの間に結合されて、上流側と下流側の圧力の間の差圧を測定するように構成された差圧センサと、
前記差圧センサにより測定された差圧に基づいてプロセス流体の流量を決定するように構成された測定回路を具備した流量計。
【請求項33】
導管を通るプロセス流体の流量を測定するための流量計であって、
導管内に延び、プロセス流体中に、プロセス流体の流れによる差圧を生起させるピトー管と、
前記ピトー管の側部上に搭載され、プロセス流体の流れによって生成された圧力にさらされて、プロセス流体の第1の横方向プロセス変数を感知するように構成された第1の横方向プロセス変数センサと、
前記ピトー管の側部上に搭載された前記上流側プロセス変数センサの下流側で、前記ピトー管の側部上に搭載され、プロセス流体の流れによって生成された圧力にさらされて、プロセス流体の第2の横方向プロセス変数を感知するように構成された第2の横方向プロセス変数センサと、
前記測定された第1および第2の横方向プロセス変数に基づいてプロセス流体の流量を決定するように構成された測定回路を具備した流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業プロセスにおけるプロセス流体の流量の測定に関する。より詳細には、本発明は、流量送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
差圧測定に基づいて流量を測定することは、この分野において一般的であり、数多くのタイプの流体流量計が存在する。例えば、ピトー管は、流れている流体の上流側(つまり「よどみ」)圧力と下流側(「静的」または「吸引」を含む)圧力を感知して、ピトー管にぶつかっている流体の流量に関連する差圧値を生起する。平均ピトー管は、ピトー管ボディ内の流体プレナムに通じる圧力ポートを含む。それから、インパルスラインが、流体圧力を工業プロセス変数送信機などの流量計算装置へ伝える。
【0003】
プロセス変数送信機は、差圧を受ける少なくとも一つのセンサを含む。例えば、差圧センサが使用され、この差圧センサは、ピトー管型のブラフボディから上流側および下流側圧力を受け、これに応答して、これら二つの圧力間の差圧に関連する電気的出力を提供する。送信機内の回路は、感知された差圧に基づき、それに応答して、流量を計算するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平均ピトー管と差圧センサからなる現存の流量計の機能性は、多くの用途で有効なことが立証されており、かつ評価されている。しかし、多数の圧力を測定することによって機能性を増大させることができる。さらに、追加の測定により、プレナムの詰まり、パイプの詰まり、設置時の問題、センサの故障、その他の診断が可能となる。
【0005】
背景の項で述べたように、ピトー管型の流量センサは、典型的には、差圧を生成することによって動作する。ピトー管を通過するプロセス流体の流量に相関する差圧を感知するために、差圧センサを使用することができる。典型的には、圧力は、ピトー管内のプレナムを通して差圧センサに転送される。ピトー管から得られる上流側および下流側の圧力が、流管の直径を横切って得られる平均圧力である場合、より正確な流量測定値が得られることが知られている。これにより、より正確な流量測定値が提供されるが、流管内の特定位置の圧力に関連する情報は失われる。このような追加の情報は、流量測定装置に追加の機能性を与えるのに有用である。例えば、流れプロフィルの異常を感知して、詰まり、プロセス流体の密度に関する情報、流管内の構成要素の劣化または腐食、差圧センサの故障または劣化などを検知することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導管内に延びるピトー管またはその他のブラフボディを使って、導管を通るプロセス流体の流量を測定する流量計を提供する。少なくとも一つのセンサが、ピトー管/ブラフボディの上流側および/または下流側に配置されて、流量計の情報を提供する。この情報は、流量の決定および/または流量計に追加の機能性を与えるために使用することができる。本発明の例の実施形態の動作は、後で説明される。
【0007】
プロセス変数送信機は、導管を通るプロセス流体の流量を測定するための流量計として構成される。送信機は、導管内に延び、プロセス流体中に、プロセス流体の流れによる差圧を生起させるピトー管を含む。上流側プロセス変数センサは、ピトー管上に搭載され、プロセス流体の流れに結合してプロセス流体の上流側プロセス変数を感知する。下流側プロセス変数センサは、上流側プロセス変数センサの下流側でピトー管上に搭載され、プロセス流体の流れに結合してプロセス流体の下流側プロセス変数を感知する。測定回路は、上流側プロセス変数と下流側プロセス変数に基づいてプロセス流体の流量を決定し、および/または診断を実行する。他の形態では、プロセス変数センサは、ピトー管の両側面上に横方向に配置され、流量を決定するために、および/または診断を実行するために使用される。
【発明の効果】
【0008】
冗長な流量測定を提供することにより、測定の信頼の程度が高められ、結果における信頼度が改善され、予防的なメンテナンスが容易になる。また、ピトー管上に保持される圧力センサは、従来技術の形態の差圧センサに代えて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の流量測定システムとプロセス配管の断面を示す図である。
【
図2】本発明の一例の実施形態に従う流量測定システムと流量送信機の簡略化ブロック図である。
【
図3】プロセス変数センサを含む本発明に従う流量計におけるプローブの断面図である。
【
図4】本発明の一例の実施形態に従うプロセス変数センサを備えたピトー管の部分図である。
【
図5】本発明の他の例の実施形態に従うプロセス変数センサを備えたピトー管の部分図である。
【
図6】空洞内にプロセス変数センサを備え、隔離ダイアフラムを使用してプロセス流体から隔離されたピトー管の部分図である。
【
図7】本発明の一例の実施形態に従うプロセス変数センサを備えたピトー管の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態における一環境の一例を示すプロセス制御システム10の概略図である。流量測定システム12は、プロセス制御ループ16により制御室14(電圧源と抵抗としてモデル化されている)に接続されている。ループ16では、流量送信機12と制御室14の間で流量情報を通信するために適当なプロトコルを使用することができる。例えば、プロセス制御ループ16は、Highway Addressable Remote Transducer(HART「登録商標」)、FOUNDATION(商標)Fieldbus、または、他の適当なプロトコルなどの、プロセス工業標準プロトコルに従って動作する。また、プロセス制御ループ16は、例えば、IEC62591標準に従う無線HART(登録商標)通信プロトコルを使って情報を無線通信する無線プロセス制御ループから成ってもよい。イーサネット(登録商標)または光ファイバ結合を含む他の技術を、その他の通信技術と同様に、使用することができる。
【0011】
一形態では、プロセス流体の流れ中に挿入されたピトー管型のプローブの上流側および下流側で感知された圧力差に基づいてプロセス流体の流量を決定するために差圧が使用される。別の例の形態では、圧力は、プローブの両側面で横方向に、流れの方向に対して略直角に、感知される。これらの横方向の圧力は、渦離脱(vortex shedding)の関数として変化する。この変化の周波数および/または振幅は、以下に説明するように、プロセス流体の流量を決定するために使用することができる。
【0012】
図1は、さらに、内部に差圧測定プローブ20が配設された管すなわち閉じた導管18などのプロセス流体容器の切除部分を示している。プローブ20は、管18の内側で直径方向に架かるピトー管型のブラフボディ22を備える。
図1における方向指示矢24は、管18内の流体の流れの方向を示している。流体多岐管(マニホルド)26および流量送信機ハウジング13は、図示されているように、ピトー管20の外側端部に装着される。送信機ハウジング13は、通路を通ってプローブ20に流体的に結合された随意(optional)の圧力センサ28を含むことができる。さらに、
図1は、ブラフボディ22によって担持されているプロセス変数センサを流量送信機ハウジング13内の回路に結合するために使用される補助センサ結合部27を示している。プロセス変数センサの動作を、以下に、より詳細に説明する。
【0013】
図2は、流量送信機12のシステムブロック図である。流量送信機12は、流量送信機ハウジング13および差圧測定プローブ20を含む。流量送信機12は、ループ16のようなプロセス制御ループに結合可能であり、管18内を流れるプロセス流体の流量に関連するプロセス変数出力を通信するように適合される。送信機12は、ループ通信機32、随意の差圧センサ28、測定回路34、およびコントローラ36を含む。
【0014】
ループ通信機32は、ループ16のようなプロセス制御ループに接続可能であり、プロセス制御ループ上で通信するように適合される。このような通信は、上述したプロトコルのような適当なプロセス工業標準プロトコルに従うものとすることができる。
【0015】
随意の圧力センサ28が使われる場合、第1および第2のポート38、40が、通路30を通して、プローブ20の随意の第1および第2のプレナム42,44にそれぞれ接続される。センサ28は、加えられた圧力の変化に応答して変化する電気的特性を有するものであれば、どのような装置でもよい。例えば、センサ28は、ポート38と40との間に加えられた差圧に応答して容量が変化する容量型圧力センサであることができる。
【0016】
測定回路34は、センサ28に接続されており、ポート38と40との間の差圧に関連するセンサ出力を提供するように構成される。測定回路34は、差圧に関連する適当な信号を提供すればよく、どのような電子回路でもよい。例えば、測定回路は、アナログ/デジタル変換器、容量/デジタル変換器、またはその他の適当な回路でよい。
【0017】
コントローラ36は、測定回路34およびループ通信機32に接続される。コントローラ36は、ループ通信機32にプロセス変数出力を提供するように適合され、このプロセス変数出力は、測定回路34によって提供されるセンサ出力に関連する。コントローラ36は、マイクロプロセッサまたはその他の適当な装置でよい。通常、コントローラ36は、差圧を、プロセス流体の流量に関連する出力に変換する。このコントローラでは、例えば、差圧と流量との間の関係における非直線性を調節ための曲線適合技術などを使って補償を実行することができる。温度、感知されているプロセス流体、絶対圧などに起因する変化に対する補償を含む、流量測定値の補償のために、追加のファクタを使用することができる。
【0018】
ループ通信機32、測定回路34、およびコントローラ36は、個別のモジュールとして説明されたが、これらを、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)として結合してもよい。同様に、マイクロプロセッサをベースとしたシステムにおける種々のソフトウェア構成要素により、測定回路34、コントローラ36およびループ通信機32としての機能を実現することができる。
【0019】
差圧測定プローブ20は、通路30によって送信機ハウジング13に結合される。これにより、センサ28のポート38が第1のプレナム42に結合され、他方、センサ28のポート40が第2のプレナム44に結合される。「プレナム」は、通路、導管、管などであり、その中に特定の特性または圧力の流体が向けられ、または収容され、そこを通して流体の圧力が案内または搬送される。
【0020】
例示された実施形態では、第1の(上流側の)プレナム42は、少なくとも一つのインパクト開口48を含み、プローブのインパクト(つまり上流側)面46からの圧力をセンサ28のポート38へ伝達するように配置される。開口48は、適当な形状でよく、この開口48は、縦長の構成要素を含み、ある実施形態では、ブラフボディ22の縦軸に実質的に整列した十分な長さである。第2の(下流側の)プレナム44は、インパクト面46から下流側に間隔を置いた非インパクト(つまり下流側)面50を含む。非インパクト面50は、この非インパクト面からの圧力を、プレナム44を介してセンサ28のポート40へ伝えるように配置された少なくとも一つの非インパクト開口52を含む。第2のプレナムが使用されない場合、圧力タップが提供される。測定される圧力の位置は、説明のためのものであり、本発明は、この形態に限定されない。
【0021】
一面では、本発明は、流量計のプローブ20に保持された少なくとも一つのプロセス変数センサ60を備える。プロセス変数センサ60は、送信機12により使用されて、追加の機能性を提供する。例えば、追加の圧力測定値を得て、温度測定値などを得ることができる。複数のセンサが設けられた場合、プローブ20の種々の位置を横切る追加の情報を得ることができる。
図2では、プロセス変数センサ60Lおよび60Tが示されており、これらは、図示のように、測定回路34に結合される。センサ60Lは、プローブ20の前縁上に位置し、センサ60Tは、プローブ20の後縁上に位置する。プロセス変数センサ60によって使用される詳細技術は、適当な手法に従えばよい。さらに、どのような数のプロセス変数センサ60でも使用することができる。これらの追加のプロセス変数センサを、例えば、診断の実施において使用するようにして、流量測定用の冗長技術を提供することができる。この診断は、例えば、プレナム開口の詰まり、つまり流れ管の詰まりを検証すること、プロセス変数構成要素上の堆積物の形成を検証すること、プロセス流体を通るノイズを監視したりすること、などを含む。幾つかの形態が以下に説明される。また、本発明は、プレナムおよび/または別々の圧力センサを必要とする実施形態に限定されない。ある実施形態では、センサはプローブ自体の上に位置さられるだけである。例えば、二つの絶対圧センサが使用され、その差が計算されて差圧が決定される。
【0022】
上述したように、プローブ20からの流量は、ブラフボディの主要素の高圧側と低圧側との間の差圧信号から決定される。
【0023】
差圧を生成するのに加えて、流体の流れ中のブラフボディは、流体の速度に比例した周波数の渦を離脱する。渦離脱の周波数に関する式は次のとおりである。
【0025】
ここで、Sは、ストルーハル数、Vは、流体速度、d
pは、プローブ幅、fは、渦離脱周波数である。
【0026】
ピトー管型の流量計のプローブ20は、プロセス流体の流れ中に置かれた物体として機能し、したがって、プロセス流体の流量に比例する渦を離脱する。プローブに接続されたセンサ60は、差圧を測定するために使用でき、また、渦離脱の間に引き起こされる圧力を感知するために使用され、それによって、渦離脱の周波数を決定する。
図3は、例えば、ミネソタ州チャンハッセン(Chanhassen, Minnesota)のRosemount Inc.から入手できるアニュバ(ANNUBAR「登録商標」)平均ピトー管によって提供されているようなT形状に形成されたプローブ20の上部断面図である。
【0027】
測定された渦離脱の周波数から得られる流量は、主要素の高圧側と低圧側との間の差圧信号から決定される流量と比較される。これらの流量測定結果における差は、センササービスのための警報を起動するために使用することができる。流量測定の一方のモードが信頼できないと分かった場合、他方を使用することができる。また、複数センサを使用して、パフォーマンスを最適化し、冗長性を拡大し、そしてターンダウン(turndown)を強化することができる。
【0028】
図3に示されている場所に配置されたセンサ60は、変動圧を測定するために使用でき、また、抗力(drag force)の変動要素を感知する。この抗力の変動は、渦離脱の周波数の2倍で生じる。同様に、渦離脱の後部(直後方)にある二つのセンサの一方を、他方から減算することによって、揚力(lift force)の変動要素を得ることができる。これは、渦離脱の周波数で存在する。通常、変動している揚力要素は、変動している抗力要素より振幅が大きい。
【0029】
流れ媒体の密度は、渦離脱の式から算出される速度を、主要素の式から算出される速度と比較することによって決定できる。
【0031】
ここで、Q
aは、気体としての体積流量、F
naは、単位変換係数、Kは、主要素の流れ係数、Dは、管の内径、Yは、主要素の気体膨脹係数(液体のような非圧縮性流体ではY=1)、F
aaは、熱膨張係数、ρ
fは、流れ密度、h
wは、差圧である。
【0032】
流体の体積流量は、管の内側面積を流体速度倍したものに等しい。したがって、平均ピトーの式における仮の密度の値は、次の渦の式を通して算出される流体速度(V)を使って確定または修正できる。
【0037】
式4に主要素の式2の右辺を代入すると、次の式が得られる。
【0039】
これを直径との関係で表すと、次の式が得られる。
【0043】
式6の右辺が式7の右辺に等しいとすると、式8が得られる。
【0045】
これを簡単化して書き直すと、式9および式10が得られる。
【0048】
この関係は、式2における流体密度ρ
fとして使用でき、体積流量のための次の式が得られる。
【0050】
ここで、丸括弧内の項は、測定値であり、角括弧内の項は、製造プロセス中に決定される定数すなわち値である。センサ60を使用して種々の項を計算する多数の手段があり、そこでは、式2におけるように、従来の差圧(DP)流量計算で使用されているものとは流れ方向に関して異なる方向で差圧を測定し、そして、ピトー管の両側面で、式7で使用する渦離脱の周波数を感知して流体速度を求め、それから体積流量を直ちに計算する。これらに代わる方法では、計測器の性能を実証することができる。
【0051】
本発明のセンサを使えば体積流量を計算することが可能になるのに加えて、質量流量を計算することも可能になる。渦離脱に関連する測定値から、質量流量を直接的に算出することができる。渦離脱の周波数に関連する上記式1を、流体速度を与えるように書き直すと、次の式が得られる。
【0053】
また、本発明では、渦離脱の振幅を使用して、質量流量を決定することができる。質量流量は、次のように定義される。
【0055】
さらに、渦信号の振幅は、次の関係に従って動的圧力に比例する。
【0057】
ここで、Ampvは、渦信号の振幅、ρ
fは、流体の流れ密度、Cは、比例係数(流体に依存しないと推測されるが、較正を必要とする場合がある)、Vは、流体の速度である。
【0058】
式14を書き直すと、式15が得られる。
【0060】
次に、式12の流体速度Vの表現を式15に代入すると、式16が得られる。
【0062】
ρf・Vの値を式13に代入すると、質量流量を表す次の式が得られる。
【0064】
ここで、丸括弧内の項は、測定値であり、角括弧内の項は、製造プロセス中に決定することができる定数すなわち値である。また、いくつかの項は、定数(例えば、SおよびC)と見なすことができ、実際、それらは、レイノルズ数の関数である。その補正は、当該分野で知られている手段を用いて行うことができる。
【0065】
したがって、渦離脱の周波数を検出するために十分な周波数バンド幅を有するが、渦の振幅の定量測定が可能でない典型的な従来技術の渦流離脱センサと異なり、本発明のセンサ60は、質量流量を決定するための、十分に正確な振幅および周波数情報をもたらす。
【0066】
質量流量のようなプロセス変数を決定するのに加えて、本発明の追加のプロセス変数センサは、診断を実行するために使用できる。例えば、インパルス管30は、管から圧力センサへ圧力信号を伝える小さい内径のパイプである。流量測定において、インパルス管は、主構成要素の上流側からのインパクト圧力、および主構成要素の下流側からの静的圧力を差圧(DP)センサ28に伝える。主構成要素を横切って引き起こされるDPの値の二乗根は、管内の流量に比例する。
【0067】
不適切に設計されたインパルス管は、流量測定システム内に、詰まり、漏れ、気体流量測定での液体トラップ、液体流量測定での気体トラップなどを含む問題を引き起こすことがある。追加のプロセス変数センサ60を使えば、ピトー管の上流側と下流側との間の差圧を測定することができる。これらの測定値と感知された差圧との間の関係を使って、インパルス管による潜在的な問題を検証できる。これにより、決定的な故障に先立って、オペレータによるサービスまたは管の交換が可能となる。同様に、追加のプロセス変数センサを使って、管における劣化を検証でき、それにより、差圧測定値を補償できる。同様に、これらの管で検出された詰まり、閉塞、または、他の劣化に従って、感知された差圧を補償できる。これは、流量計の精度が低下したとしても、インパルス管を交換、封止、または、修理するまで、流量計を継続して動作させることを可能にする。補償は、例えば、コントローラ36内のメモリ内に格納された補償係数に基づいて行うことができる。
【0068】
さらに別の例の実施形態では、追加のプロセス変数センサ60を、圧力センサとして構成して、インパルス管自体を完全に削除するために使用することができる。差圧流量の用途におけるインパルス管を削除すれば、インパルス管に共通に関連する問題が無くなる。このような形態では、ピトー管の下流側からの圧力測定値が、上流側における圧力測定値から減算されて、差圧が求められる。この減算は、アナログ電子回路により行うか、または、例えば、コントローラ36または測定回路34内で、デジタル的に実行するかして行うことができる。上述したように、センサ60を使用して、渦離脱の周波数を測定することもできる。
【0069】
上流側および下流側面の外部に配置された複数のプロセス変数センサ60を備えるピトー管は、管内の速度流れプロフィルを直接的に測定できる。この情報を測定回路34で使用することにより、診断の実行と同じく、流れプロフィルの変動によって引き起こされるエラーを修正することができる。プロセス流体が渦巻いているか、二次元のプロフィル歪みを有している用途では、流れプロフィルの変化をより良く検出するために、それぞれが分散プロセス変数センサを有する二以上のピトー管型のプローブを、管内の障害物のようなものとして使用でき、それによって、流量測定値における誤差を修正するかプロセス中の潜在的問題を特定することができる。流れプロフィルの修正の正確さは、プローブに沿って配置されるセンサの数に関係する。多数のセンサは、流れプロフィルの変化に関連するより多くの情報を提供することができ、それによって、より正確な流量測定値を得ることができる。
【0070】
ピトー管を、活動中の流体流れ(ホット・タッピング:hot tapping)の中に配設する際には、ピトー管の先端が、導管の反対側の壁に接触しているかどうかの判断が困難である。これは、片持ちされた主要素は、反対側の壁に接触して支持されたものよりも、実質的に弱いことから、重大な問題になり得る。長い間、流体流れに対してさらされている部分的に挿入されたデバイスは、故障しがちである。さらに、過剰に締め付けられると構成要素を壊すことがある挿入機構には、機械的に大きな利点がある。片持ちされたピトー管は、センサ60によって検出することができる共振周波数を生起する。別の実施形態では、プローブの先端に配置されたセンサ60は、プローブが着座したときに反対側の管壁を感知することができる。この測定は、支持された先端と支持されていない先端の識別を可能にする。送信機上の表示器を使用して、一旦先端が着座したことの指示をオペレータに提供することができる。
【0071】
図4は、その上に支持されたプロセス変数センサ60を含むピトー管20の部分図である。
図4では、プロセス変数センサ60は、圧力センサとして配設されている。この形態では、センサ60は、プロセス流体に長期間さらされることに適する特性を持つ、脆性で、実質的に非圧縮性の材料で構成される。例えば、センサ60は、二つのサファイヤ片を、例えば、溶融接合により一緒に結合して構成される。空洞104が二つのサファイヤの間に形成され、例えば、容量性の板(図示しない)をその中に支持している。流体からの圧力がセンサ60に加わると、空洞104は僅かに変形する。この変形は、二つの容量性の板の間の容量の変化に基づいて感知される。
図4には、容量性の板から
図2に示されている測定回路34へ延びる電気接続が示されている。このような形態では、センサ60は、例えば、ローズマウント社に譲渡されている、ロジャー・ティ、フリック他による、「圧力送信機用の細長圧力センサ」と題された200年7月18日発行の米国特許6,089,097号に示され、かつ説明されている圧力センサと同様に動作する。
【0072】
図4に図示された形態では、センサ60は、プロセス流体に直接さらされる。センサ60を配置するための十分な空間を提供するため、センサ60は、ピトー管20の長さに沿って縦方向に(紙面に垂直に)偏倚させることができる。センサ60は、管20の孔を通して取り付けることができ、ろう付け105などを使って固定することができる。ピトー管20の下流側に配置された二つのセンサ60Tは、ピトー管の両側面上に位置し、これによって、渦離脱を検出することができる。上流側センサ60Lは、より正確な感知のために、ピトー管20の中央に配置される。
【0073】
図5は、
図4と同様の形態を示すが、そこでは、保護片106が上流側センサ60Lの回りに配置されている。保護片106は、胴型、有孔胴、またはその他の形状でよく、圧力検出を妨げることなく、プロセス流体の流れから上流側センサ60Lを保護するように働く。
図6は、管状構造に形成された油充満空洞110内にセンサ60Lが保持された別の実施形態を示す。
図6では、管状構造114に形成された空洞110は、隔離ダイアフラム112を使ってプロセス流体から隔離されている。空洞110は、実質的に非圧縮性の流体によって満たされており、これによって、隔離ダイアフラムに加えられた圧力は、隔離流体を介してセンサ60Lに伝えられる。センサ60Lは、ろう付け手法などを使用して管114内に固定される。ダイアフラム112、管114およびセンサ60Lは、別途組み立てられて、要求されるように、ピトー管20に取り付けられる。例えば、そのアセンブリが、ピトー管20に溶接される。
図6には示されていないが、ピトー管は、追加のアセンブリを保持することができる。この形態は、センサ60をプロセス流体から隔離することを可能にし、これによって、センサ60が損傷から保護される。別の実施形態では、センサ60は、プレナム42または44内に支持される。この形態では、センサ60は、プロセス流体中を搬送されるあらゆる小片の衝撃からも保護される。ここでは、特定の型の圧力センサの形態が説明されたが、どのような適当な圧力感知技術でも実現することができる。
【0074】
図7に示されたさらに別の形態の例では、差圧センサ60は、プレナム42と44との間に配置されており、これによって、インパルス管30が除去される。ある形態では、差圧を直接測定するプロセス変数センサは、二つの絶対圧センサを使用して二つのセンサ間の測定値の減算による差によって差圧を決定するよりも、正確な差圧決定値を提供する。このような形態では、差圧センサ60は、プレナム42および44内のプロセス流体に直接さらされる。別の形態では、隔離ダイアフラム43がプレナム42および44の壁内に配置され、これによって、差圧センサ60は、プロセス流体から隔離される。隔離流体は、プレナム42、44内の圧力をダイアフラムから差圧センサへ伝えるために使用される。
【0075】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細を変更することができることを認識するであろう。本発明は、プロセス流体の流れ中に挿入されたプローブの長さに沿って一以上のセンサを配置することを含む。プローブは、プロセス流体の流れからの圧力を、外部の圧力センサに伝えるピトー管として構成することができる。このような構成では、プローブ上に支持されたプロセス変数センサを診断目的用に使用して、精度およびセンサ測定値を改善でき、また、校正目的用に使用して、流れプロフィルを決定する、などすることができる。しかし、本発明は、この形態に限定されない。本発明は、何の外部センサも使用せず、全てのセンサがプローブ自体に保持された形態でもよい。このような形態では、典型的なピトー管が使用される内部プレナムを必要としない。ここで使用されたように、「ピトー管」という用語は、一般的に、流体流れ中に挿入されるプローブを意味する。「ピトー管」は、プロセス流体の流れ内から外部圧力センサへ圧力を導く内部通路を必要としない。ある形態では、プロセス変数センサ60は、温度センサを含む圧力センサからなる。
【符号の説明】
【0076】
10・・・プロセス制御システム、12・・・流量送信機、13・・・流量送信機ハウジング、14・・・制御室、16・・・プロセス制御ループ、18・・・導管、20・・・ピトー管(プローブ)、22・・・ブラフボディ、24・・・方向指示矢、26・・・流体多岐管(マニホルド)、27・・・補助センサ結合部、28・・・圧力センサ(差圧センサ)、30・・・通路、32・・・ループ通信機、34・・・測定回路、36・・・コントローラ、38,40・・・ポート,42,44・・・プレナム、43,112・・・隔離ダイアフラム、46・・・インパクト面、48・・・インパクト開口、50・・・非インパクト面、52・・・非インパクト開口、60,60L,60T・・・プロセス変数センサ、104・・・空洞、105・・・ろう付け、106・・・保護片、110・・・油充満空洞、114・・・管状構造