(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、3GPP規格に基づくセルラ通信システムであるLTEシステムを無線LAN(WLAN)システムと連携させる場合の実施形態(以下、本実施形態という)を説明する。本実施形態は、第1〜第3実施形態に分けられ、各実施形態について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態における通信システムを示す図である。
図1に示すように、通信システムは、複数のUE(User Equipment)100と、E−UTRAN(Evolved−UMTS Terrestrial Radio Access Network)10と、EPC(Evolved Packet Core)20とを有する。
【0013】
E−UTRAN10は、セルラRANに相当する。EPC20は、コアネットワークに相当する。E−UTRAN10及びEPC20は、LTEシステムのネットワークを構成する。
【0014】
UE100は、移動型の無線通信装置であり、ユーザ端末に相当する。UE100は、セルラ通信及びWLAN通信の両通信方式をサポートする端末(デュアル端末)である。
【0015】
E−UTRAN10は、複数のeNB200(evolved Node−B)を有する。eNB200はセルラ基地局に相当する。eNB200は、1又は複数のセルを管理しており、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。なお、「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として使用される他に、UE100との無線通信を行う機能を示す用語としても使用される。また、eNB200は、例えば、無線リソース管理(RRM)機能と、ユーザデータのルーティング機能と、モビリティ制御及びスケジューリングのための測定制御機能とを有する。
【0016】
eNB200は、X2インターフェイスを介して相互に接続される。また、eNB200は、S1インターフェイスを介して、EPC20に含まれるMME(Mobility Management Entity)/S−GW(Serving−Gateway)500と接続される。
【0017】
EPC20は、複数のMME/S−GW500を有する。MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行うネットワークノードであり、制御局に相当する。S−GWは、ユーザデータの転送制御を行うネットワークノードであり、交換局に相当する。
【0018】
WLAN30は、WLANアクセスポイント(以下「AP」という)300を有する。AP300は、例えばLTEネットワークのオペレータ配下のAP(Operator controlled AP)である。
【0019】
WLAN30は、例えばIEEE 802.11諸規格に準拠して構成される。AP300は、セルラ周波数帯とは異なる周波数帯(WLAN周波数帯)でUE100との通信を行う。AP300は、ルータ等を介してEPC20に接続される。
【0020】
また、eNB200及びAP300が個別に配置される場合に限らず、eNB200及びAP300が同じ場所に配置(Collocated)されていてもよい。或いは、eNB200及びAP300がオペレータの任意のインターフェイスで直接的に接続されていてもよい。eNB200及びAP300との間のインターフェイスの詳細については後述する。
【0021】
次に、UE100、eNB200及びAP300の構成を説明する。
【0022】
図2は、UE100のブロック図である。
図2に示すように、UE100は、アンテナ101及び102と、セルラ通信部111と、WLAN通信部112と、ユーザインターフェイス120と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機130と、バッテリ140と、メモリ150と、プロセッサ160と、を有する。メモリ150及びプロセッサ160は、制御部を構成する。UE100は、GNSS受信機130を有していなくてもよい。また、メモリ150をプロセッサ160と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサ160’としてもよい。
【0023】
アンテナ101及びセルラ通信部111は、セルラ無線信号の送受信に用いられる。セルラ通信部111は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号をセルラ無線信号に変換してアンテナ101から送信する。また、セルラ通信部111は、アンテナ101が受信するセルラ無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ160に出力する。
【0024】
アンテナ102及びWLAN通信部112は、WLAN無線信号の送受信に用いられる。WLAN通信部112は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号をWLAN無線信号に変換してアンテナ102から送信する。また、WLAN通信部112は、アンテナ102が受信するWLAN無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ160に出力する。
【0025】
ユーザインターフェイス120は、UE100を所持するユーザとのインターフェイスであり、例えば、ディスプレイ、マイク、スピーカ及び各種ボタン等を有する。ユーザインターフェイス120は、ユーザからの入力を受け付けて、該入力の内容を示す信号をプロセッサ160に出力する。GNSS受信機130は、UE100の地理的位置を示す位置情報を得るために、GNSS信号を受信して、受信した信号をプロセッサ160に出力する。バッテリ140は、UE100の各ブロックに供給すべき電力を蓄える。
【0026】
メモリ150は、プロセッサ160によって実行されるプログラムと、プロセッサ160による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ160は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行うベースバンドプロセッサと、メモリ150に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を有する。プロセッサ160は、さらに、音声・映像信号の符号化・復号を行うコーデックを含んでもよい。プロセッサ160は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0027】
図3は、eNB200のブロック図である。
図3に示すように、eNB200は、アンテナ201と、セルラ通信部210と、ネットワークインターフェイス220と、メモリ230と、プロセッサ240と、を有する。メモリ230及びプロセッサ240は、制御部を構成する。また、メモリ230をプロセッサ240と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサとしてもよい。
【0028】
アンテナ201及びセルラ通信部210は、セルラ無線信号の送受信に用いられる。セルラ通信部210は、プロセッサ240が出力するベースバンド信号をセルラ無線信号に変換してアンテナ201から送信する。また、セルラ通信部210は、アンテナ201が受信するセルラ無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ240に出力する。
【0029】
ネットワークインターフェイス220は、バックホールネットワーク(バックホールNW)と接続される。
【0030】
メモリ230は、プロセッサ240によって実行されるプログラムと、プロセッサ240による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ240は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行うベースバンドプロセッサと、メモリ230に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を有する。プロセッサ240は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0031】
図4は、AP300のブロック図である。
図4に示すように、AP300は、アンテナ301と、WLAN通信部311と、ネットワークインターフェイス320と、メモリ330と、プロセッサ340と、を有する。
【0032】
アンテナ301及びWLAN通信部311は、WLAN無線信号の送受信に用いられる。WLAN通信部311は、プロセッサ340が出力するベースバンド信号をWLAN無線信号に変換してアンテナ301から送信する。また、WLAN通信部311は、アンテナ301が受信するWLAN無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ340に出力する。
【0033】
ネットワークインターフェイス320は、バックホールネットワーク(バックホールNW)と接続される。
【0034】
メモリ330は、プロセッサ340によって実行されるプログラムと、プロセッサ340による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ340は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行うベースバンドプロセッサと、メモリ330に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を有する。プロセッサ340は、後述する各種の処理を実行する。
【0035】
図5は、LTE無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。
図5に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルの第1レイヤ(層)〜第3レイヤに区分されており、第1レイヤは物理(PHY)レイヤである。第2レイヤは、MAC(Medium Access Control)レイヤ、RLC(Radio Link Control)レイヤ及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤを有する。第3レイヤは、RRC(Radio Resource Control)レイヤを有する。
【0036】
物理レイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100の物理レイヤとeNB200の物理レイヤとの間では、物理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
【0037】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理などを行う。UE100のMACレイヤとeNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。eNB200のMACレイヤは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式)及びUE100への割当リソースブロックを決定するスケジューラを有する。
【0038】
RLCレイヤは、MACレイヤ及び物理レイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。RLCレイヤは、データの送達確認を行い、再送制御機能を有する。UE100のRLCレイヤとeNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
【0039】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張及び暗号化・復号化を行う。
【0040】
RRCレイヤは、制御信号を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRCレイヤとeNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のための制御信号(RRCメッセージ)が伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRC接続状態(接続状態)であり、そうでない場合、UE100はRRCアイドル状態(アイドル状態)である。
【0041】
RRCレイヤの上位に位置するNAS(Non−Access Stratum)レイヤは、セッション管理及びモビリティ管理などを行う。
【0042】
図6は、第1実施形態における通信制御方法を示す図である。
【0043】
図6に示すように、第1実施形態では、UE100は、eNB200との無線接続及びAP300との無線接続を有する。すなわち、UE100は、eNB200及びAP300と同時に接続を確立する。すなわち、UE100には、eNB200及びAP300のそれぞれから無線リソースが割り当てられる。
【0044】
eNB200は、eNB200との無線接続及びAP300との無線接続を有するUE100に対するRRC接続を維持する。よって、eNB200は、UE100に対して各種の通信制御を行うことができる。
【0045】
第1実施形態では、eNB200は、UE100と直接的にデータを送受信するとともに、AP300(及びWLAN GW600)を介してUE100と間接的にデータを送受信する。具体的には、UE100とS−GW500(EPC20)との間には、AP300を介さずにeNB200を介するデータベアラ#1(第1のデータベアラ)と、AP300及びeNB200を介するデータベアラ#2(第2のデータベアラ)と、が確立される。eNB200のRRCレイヤは、データベアラ#1及びデータベアラ#2を管理する。
【0046】
このように、UE100は、eNB200及びAP300を介して複数のデータベアラを確立する。また、UE100には、eNB200及びAP300のそれぞれから無線リソースが割り当てられる。よって、大きな通信容量が確保された状態で、複数データ(複数ユーザデータ)を並列的に伝送できるため、スループットを大幅に向上させることができる。
【0047】
第1実施形態では、eNB200とAP300との間のデータベアラ#2において、IPパケットの状態でデータが送受信される。或いは、eNB200とAP300との間のデータベアラ#2において、IPパケットでカプセル化されたPDCPパケットの状態でデータが送受信される。また、データベアラ#2は、eNB200において2つに分割(split)されていてもよい。分割された一方は、AP300を介してUE100で終端しており、分割された他方は、AP300を介さずにUE100で終端する。
【0048】
なお、第1実施形態において、
図6に示すデータベアラ#1を用いた通信は任意である。すなわち、第1実施形態の通信システムは、少なくともAP300を介したデータベアラ#2を用いた通信が行われている場合、適用可能である。
【0049】
図7は、第1実施形態におけるデータ伝送方式を示す図である。第1実施形態におけるデータ伝送方式では、eNB200とAP300との間のデータベアラ#2において、IPパケットにカプセル化されたPDCPパケットの状態でデータが送受信される。
【0050】
図7に示すように、eNB200は、データベアラ#1用のPDCPエンティティ241#1、データベアラ#2用のPDCPエンティティ241#2、データベアラ#1用のRLCエンティティ242#1、データベアラ#2用のRLCエンティティ242#2及びMACエンティティ243を有する。また、
図7に示すカプセル化エンティティ244(所定のエンティティ)は、eNB200又はWLAN GW600のいずれかに含まれる機能である。
【0051】
AP300は、LLCエンティティ341、MAC LMEエンティティ342及びPHY LMEエンティティ343を有する。
【0052】
UE100は、MACエンティティ161、データベアラ#1用のRLCエンティティ162#1、データベアラ#1用のPDCPエンティティ163#1、データベアラ#2用のRLCエンティティ162#2、データベアラ#2用のPDCPエンティティ163#2、WLANのPHY/MACエンティティ164、LLCエンティティ165及びデカプセル化エンティティ166(第2のエンティティ)を有する。
【0053】
eNB200は、PDCPエンティティ241において、データベアラ#2に属するデータ(PDCPパケット)をRLCエンティティ242#2及びカプセル化エンティティ244に振り分ける。RLCエンティティ242#2に振り分けられたデータは、RLCエンティティ242#2及びMACエンティティ243を通じて、UE100に送信される。UE100は、データベアラ#2に属するデータをMACエンティティ161、RLCエンティティ162#2、PDCPエンティティ163#2の順に処理する。
【0054】
カプセル化エンティティ244に振り分けられたデータ(PDCPパケット)は、カプセル化エンティティ244によりIPパケットにカプセル化されて、AP300に転送される。AP300は、当該IPパケットを、LLCエンティティ341、MAC LMEエンティティ342及びPHY LMEエンティティ343を通じて、UE100に送信する。UE100は、データベアラ#2に属するデータをPHY/MACエンティティ164、LLCエンティティ165及びデカプセル化エンティティ166の順に処理し、IPパケットをデカプセル化することにより、PDCPパケットを取得する。当該PDCPパケットは、PDCPエンティティ163#2において、RLCエンティティ162#2からのPDCPパケットとの順序制御(reordering)が行われる。このように、PDCPパケットをカプセル化/デカプセル化することにより、WLAN区間にIPトンネリングが設定されている。ここで、PDCPは暗号化・認証等のセキュリティ処理を行っているので、PDCPパケットをWLAN側に渡すことにより、WLAN側の通信においてLTEレベルのセキュリティが実現される。また、WLAN側では、暗号化・認証等のセキュリティ処理を省略してもよい。
【0055】
一方で、データベアラ#1に属するデータについては、PDCPエンティティ241#1、RLCエンティティ242#1及びMACエンティティ243を通じて、UE100に送信される。UE100は、データベアラ#1に属するデータをMACエンティティ161、RLCエンティティ162#1、PDCPエンティティ163#1の順に処理する。
【0056】
次に、第1実施形態における通信システムの適用シナリオを説明する。
【0057】
図7に示したように、eNB200からAP300を介してデータベアラ#2を用いて送信されるデータ(PDCPパケット)は、eNB200が備えるRLCエンティティ242を経由しない。そのため、AP300を介するデータベアラ#2を用いて送信されるデータ(PDCPパケット)は、RLCレイヤにより行われるデータの送達確認及び送達確認に基づく再送制御が行われない。そこで、第1実施形態では、以下の構成により、AP300を介して行われるeNB200とUE100との間の高度な通信制御を可能とする。
【0058】
図8は、第1実施形態におけるeNB200−UE100間のシーケンス図である。
【0059】
ステップS101において、eNB200のPDCPエンティティ241は、PDCPレイヤのデータ(PDCPパケット)を、eNB200のカプセル化エンティティ244に出力する。
【0060】
ステップS102において、カプセル化エンティティ244は、入力されたPDCPパケットをIPレイヤでカプセル化する。
【0061】
ステップS103において、カプセル化エンティティ244は、カプセル化されたPDCPパケット、すなわちIPパケットをAP300に送信する。
【0062】
ステップS104において、AP300は、IPパケットをUE100に送信する。
【0063】
ステップS105において、UE100のデカプセル化エンティティ166は、受信したIPパケットに基づき、受信データの送達確認情報(ACK/NACK)をAP300に送信する。
【0064】
ステップS106において、デカプセル化エンティティ166は、受信したIPパケットのデカプセル化を行う。
【0065】
ステップS107において、AP300は、受信した送達確認情報をeNB200に送信する。eNB200のカプセル化エンティティ244が、送達確認情報を受け付ける。
【0066】
ステップS108において、カプセル化エンティティ244は、送達確認情報に基づき、PDCPパケットの送達確認の状況を示すSuccessful delivery indicationをPDCPエンティティ241に通知する。
【0067】
このように、AP300を介した通信において、カプセル化エンティティ244とデカプセル化エンティティ166との間でデータの送達確認を行うことができる。また、言い換えると、カプセル化エンティティ244とデカプセル化エンティティ166とは、AM(Acknowledge Mode)のRLCエンティティのように、仮想的なRLCエンティティとして動作する。
【0068】
なお、
図8に示す通信システムの構成において、WLAN GW600がeNB200とAP300との間に設置されていてもよい。
【0069】
図9は、第1実施形態の他の態様におけるeNB200−UE100間のシーケンス図である。
図9に示すシーケンス図において、
図8に示した動作と同じ動作には同一のステップ番号を付与している。
【0070】
図9に示すように、第1実施形態の他の態様では、WLAN GW600がカプセル化エンティティ244を備える点を除き、
図8の動作と同じである。
【0071】
上述したように、第1実施形態の通信システムによればWLANアクセスポイントを介して行われるセルラ基地局とユーザ端末との間の高度な通信制御を可能とする。具体的には、第1実施形態の通信システムによれば、AP300を介してeNB200とUE100とが通信を行う場合であっても、データの受信側が送達確認情報を送信し、データの送信側がデータの送達確認を行うことができる。このとき、カプセル化エンティティ244とデカプセル化エンティティ166とが、仮想的なRLCエンティティとして動作する。
【0072】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態における通信システムを説明する。第2実施形態におけるネットワーク構成や機能ブロックは、
図1〜
図7に示した第1実施形態におけるネットワーク構成や機能ブロック図と同じである。
【0073】
図10は、第2実施形態における通信システムの動作概要を示す図である。
【0074】
図10に示すように、第2実施形態における通信システムは、AP300を介して下りリンクデータを受信するUE100がSource eNB200−1からTarget eNB200−2にハンドオーバするシナリオに適用される。
【0075】
ステップS21において、Source eNB200−1は、S−GW500からの下りリンク(Downlink(DL))データを、AP300を介して、UE100に送信する。
【0076】
ステップS22において、UE100は、AP300を介して受信した下りリンクデータに対する送達確認情報(ACK/NACK)を応答しない。そのため、Source eNB200−1は、送信した下りリンクデータの送達確認ができていない状態である。
【0077】
ステップS23において、Source eNB200−1は、ハンドオーバを決定する(Handover(HO) decision)。
【0078】
ここで、通常のハンドオーバ処理において、Source eNB200−1は、UE100に送信した下りリンクデータの送達確認ができていない場合、送達確認ができていないデータの全てをTarget eNB200−2に転送する。しかしながら、Source eNB200−1は、UE100が正常に受信できている下りリンクデータ、すなわち転送が不要であるデータをTarget eNB200−2に転送してしまい、無駄なトラフィックを増加させてしまっている。そこで第2実施形態における通信システムでは、ハンドオーバを行う場合、次のステップS24及びS25の処理を実施する。
【0079】
ステップS24において、Source eNB200−1は、UE100に対して、PDCP Status Report Request(送達状況報告要求)を送信する。
【0080】
ステップS25において、UE100は、当該UE100が受信した下りリンクデータの送達状況を示すPDCP Status Report(送達状況報告)を、Source eNB200−1に対して送信する。PDCP Status Reportには、受信側(UE100)のPDCPエンティティ163で未受信であるPDCP SDU(Service Data Unit)のシーケンス番号(Sequence Number(SN))を示すFMS(First Missing PDCP SN)及び受信側のPDCPエンティティでFMS以降のPDCP SDUが受信済みであるか否かを示すビットマップが含まれる。なお、PDCP Status Reportには、AP300を介して受信したデータとSource eNB200−1から直接受信したデータとに関する送達状況を示す情報が含まれる。
【0081】
ステップS26において、Source eNB200−1は、UE100に対して、HO Command(RRCConnectionReconfiguration)を送信する。UE100は、HO Commandを受信すると、PDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)を実施する。
【0082】
ステップS27において、Source eNB200−1は、ステップS25で受信したPDCP Status Reportに基づく受信側(UE100)において未送達であった下りリンクデータを、ハンドオーバ先のTarget eNB200−2に転送する。
【0083】
上記動作により、第2実施形態における通信システムは、AP300を介した下りリンクデータ通信が行われる場合であってもハンドオーバを行うとき、Source eNB200−1がTarget eNB200−2に対して未送達のデータのみを転送できる。
【0084】
図11は、第2実施形態の通信システムにおけるシーケンス図である。
【0085】
図11に示すステップS201は、
図10に示すステップS23に対応する。すなわち、ステップS201の前に、
図10に示すステップS23以前の処理が実施されている。
【0086】
ステップS201において、Source eNB200−1は、HO decisionを行う。
【0087】
ステップS202において、Source eNB200−1は、UE100に対して、PDCP Status Report Requestを送信する。
【0088】
ステップS203において、UE100は、PDCP Status Report Requestの受信後、当該UE100が受信した下りリンクデータの送達状況を示すPDCP Status Reportを、Source eNB200−1に対して送信する。上述したように、PDCP Status Reportには、AP300を介して受信したデータとSource eNB200−1から直接受信したデータとに関する送達状況を示す情報が含まれる。
【0089】
ステップS204において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2に対して、HO Requestを送信する。
【0090】
ステップS205において、Target eNB200−2は、Source eNB200−1に対して、HO Request Ackを送信する。
【0091】
ステップS206において、Source eNB200−1は、UE100に対して、HO Commandを送信する。UE100は、HO Command(RRCConnectionReconfiguration)を受信すると、PDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)を実施する。
【0092】
ステップS207において、Source eNB200−1は、ステップS203において受信したPDCP Status Reportに基づき、未送達の下りリンクデータの有無を判定する。
【0093】
ステップS208において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2に対して、ステップS207において未送達であると判定された下りリンクデータを転送する。
【0094】
なお、ステップS202及びS203の処理は、ステップS205の後に実施されてもよい。
【0095】
なお、ステップS202及びS203の処理は、UE100においてPDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)が実施される場合、実行されてもよい。
【0096】
上述したように、第2実施形態の通信システムによれば、WLANアクセスポイントを介して行われるセルラ基地局とユーザ端末との間の通信における高度な通信制御を可能とする。具体的には、第2実施形態によれば、Source eNB200−1は、受信側(UE100)からの送達確認情報(ACK/NACK)を取得できない(又は取得しない)ときであっても、ハンドオーバが行われる場合、受信側から送達状況報告(PDCP Status Report)を受信できる。そして、Source eNB200−1は、送達状況報告に基づき未送達のデータのみをTarget eNB200−2に転送できるため、不要なデータ転送によるトラフィック増加を抑止できる。
【0097】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態における通信システムを説明する。第3実施形態におけるネットワーク構成や機能ブロックは、
図1〜
図7に示した第1実施形態におけるネットワーク構成や機能ブロック図と同じである。また、第2実施形態では下りリンクデータの送達状況に基づく処理を対象としたのに対して、第3実施形態では上りリンクデータの送達状況に基づく処理を対象とする。
【0098】
図12は、第3実施形態における通信システムの動作概要を示す図である。
【0099】
図12に示すように、第3実施形態における通信システムは、AP300を介して上りリンクデータを送信するUE100がSource eNB200−1からTarget eNB200−2にハンドオーバするシナリオに適用される。
【0100】
ステップS31において、UE100は、上りリンク(Uplink(UL))データを、AP300を介して、Source eNB200−1に送信する。
【0101】
ステップS32において、Source eNB200−1は、AP300を介して受信した上りリンクデータに対する送達確認情報(ACK/NACK)を応答しない。そのため、UE100は、送信した上りリンクデータの送達確認ができていない状態である。
【0102】
ステップS33において、Source eNB200−1は、ハンドオーバの決定後、Target eNB200−2に対して、HO Requestを送信する。
【0103】
ステップS34において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2からのHO Request Ackを受信する。
【0104】
ここで、通常のハンドオーバ処理において、Source eNB200−1からUE100へのHO Command送信後、UE100が送信した上りリンクデータの送達確認ができていない場合、送達確認ができていないデータの全てをTarget eNB200−2に再送する。しかしながら、UE100は、Source eNB200−1が正常に受信できている上りリンクデータ、すなわち転送が不要であるデータをTarget eNB200−2に再送してしまい、無駄なトラフィックを増加させてしまっている。そこで第3実施形態における通信システムでは、ハンドオーバを実施する場合、次のステップS35及びS36の処理を実施する。
【0105】
ステップS35において、Source eNB200−1は、UE100に対して、UE100から送信された上りリンクデータの送達状況を示すPDCP Status Reportを送信する。なお、PDCP Status Reportには、AP300を介して受信したデータとUE100から直接受信したデータとに関する送達状況を示す情報が含まれる。
【0106】
ステップS36において、Source eNB200−1は、UE100に対して、HO Commandを送信する。UE100は、HO Command(RRCConnectionReconfiguration)を受信すると、PDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)を実施する。
【0107】
ステップS37において、UE100は、ステップS35で受信したPDCP Status Reportに基づく受信側(Source eNB200−1)において未送達であった上りリンクデータを、ハンドオーバ先のTarget eNB200−2に再送する。
【0108】
上記動作により、第3実施形態における通信システムは、AP300を介した上りリンクデータ通信が行われる場合であってもハンドオーバを行うとき、UE100がTarget eNB200−2に対して未送達のデータのみを再送できる。
【0109】
図13は、第3実施形態の通信システムにおけるシーケンス図である。
【0110】
図13に示すステップS302は、
図10に示すステップS33に対応する。すなわち、ステップS302の前に、
図10に示すステップS33以前の処理が実施されている。
【0111】
ステップS301において、Source eNB200−1は、HO decisionを行う。
【0112】
ステップS302において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2に対して、HO Requestを送信する。
【0113】
ステップS303において、Target eNB200−2は、Source eNB200−1に対して、HO Request Ackを送信する。
【0114】
ステップS304において、Source eNB200−1は、当該Source eNB200−1が受信した上りリンクデータの送達状況を示すPDCP Status Reportを、UE100に対して送信する。上述したように、PDCP Status Reportには、AP300を介して受信したデータとUE100から直接受信したデータとに関する送達状況を示す情報が含まれる。
【0115】
ステップS305において、Source eNB200−1は、UE100に対して、HO Commandを送信する。UE100は、HO Command(RRCConnectionReconfiguration)を受信すると、PDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)を実施する。
【0116】
ステップS306において、UE100は、ステップS304において受信したPDCP Status Reportに基づき、未送達の上りリンクデータの有無を判定する。
【0117】
ステップS307において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2に対して、ステップS307において未送達であると判定された上りリンクデータを再送する(UL Data re−transmission)。
【0118】
なお、ステップS304の処理は、UE100においてPDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)が実施される場合、実行されてもよい。
【0119】
上述したように、第3実施形態の通信システムによれば、WLANアクセスポイントを介して行われるセルラ基地局とユーザ端末との間の通信における高度な通信制御を可能とする。具体的には、第3実施形態によれば、UE100は、受信側(Source eNB200−1)からの送達確認情報(ACK/NACK)を取得できない(又は取得しない)ときであっても、ハンドオーバが行われる場合、受信側から送達状況報告(PDCP Status Report)を受信できる。そして、UE100は、送達状況報告に基づき未送達のデータのみをTarget eNB200−2に転送できるため、不要なデータ転送によるトラフィック増加を抑止できる。
【0120】
なお、第2実施形態における通信システムと第3実施形態における通信システムとは、同時に適用可能である。
【0121】
[その他の実施形態]
上述した第1実施形態では、PDCPパケットを例に挙げて説明したが、これに限られない。PDCPパケットの代わりに、GTP−Uパケットが用いられてもよい。すなわち、カプセル化エンティティ166及びカプセル化エンティティ244は、GTP−Uエンティティとしての機能を有していてもよい。
【0122】
上述した各実施形態では、ハンドオーバを契機として送達確認情報報告を行っていたが、この限りではなく、ハンドオーバ要求を含まない所定レイヤ再設定要求(RRC connection reconfiguration)を契機として送達確認情報報告を行ってもよい。
【0123】
上述した各実施形態では、セルラ通信システムの一例としてLTEシステムを説明したが、LTEシステムに限らず、LTEシステム以外のセルラ通信システムであってもよい。
【0124】
なお、日本国特許出願第2014−097178号(2014年5月8日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。