特許第6239742号(P6239742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239742通信システム、ユーザ端末、プロセッサ、及びセルラ基地局
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239742
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】通信システム、ユーザ端末、プロセッサ、及びセルラ基地局
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20171120BHJP
   H04W 48/18 20090101ALI20171120BHJP
   H04W 28/08 20090101ALI20171120BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20171120BHJP
【FI】
   H04W28/04 110
   H04W48/18 113
   H04W28/08
   H04W88/06
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-517926(P2016-517926)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(86)【国際出願番号】JP2015063239
(87)【国際公開番号】WO2015170722
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2017年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-97178(P2014-97178)
(32)【優先日】2014年5月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】キュリーズ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
(72)【発明者】
【氏名】長坂 優志
【審査官】 田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2704481(EP,A1)
【文献】 国際公開第2013/086410(WO,A2)
【文献】 特表2010−502037(JP,A)
【文献】 特開2004−129163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04B 7/24− 7/26
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムであって、
ユーザ端末と、
セルラ基地局と、を備え、
前記ユーザ端末は、Wireless Local Area Network(WLAN)を介さずに前記セルラ基地局を介する第1のデータベアラと、前記WLAN及び前記セルラ基地局を介する第2のデータベアラと、を用いた通信を制御し、
前記セルラ基地局は、前記第1のデータベアラと前記第2のデータベアラとを用いた前記ユーザ端末との通信を制御し、
前記ユーザ端末は、前記WLANを介して受信したデータと前記セルラ基地局から直接受信したデータとに関する送達状況を示す状況報告を前記セルラ基地局へ送信し、
前記セルラ基地局は、前記状況報告を前記ユーザ端末から受信し、
前記状況報告は、最初の欠落したPacket Data Convergence Protocol Service Data Unit(PDCP SDU)のシーケンス番号の情報を含む、通信システム。
【請求項2】
前記ユーザ端末は、PDCPエンティティにおいて、前記データとして受信したPDCPパケットの順序制御を実行する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記セルラ基地局は、前記状況報告を送信させるための情報を前記ユーザ端末へ送信し、
前記ユーザ端末は、前記状況報告を送信させるための情報に基づいて、前記状況報告を前記セルラ基地局へ送信する請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記状況報告は、前記最初の欠落したPDCP SDU以降のPDCP SDUが受信済みであるか否かを示す情報をさらに含む請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
ユーザ端末であって、
Wireless Local Area Network(WLAN)を介さずにセルラ基地局を介する第1のデータベアラと、前記WLAN及び前記セルラ基地局を介する第2のデータベアラと、を用いた通信を制御する制御部と、
前記WLANを介して受信したデータと前記セルラ基地局から直接受信したデータとに関する送達状況を示す状況報告を前記セルラ基地局へ送信する送信部と、を備え、
前記状況報告は、最初の欠落したPacket Data Convergence Protocol Service Data Unit(PDCP SDU)のシーケンス番号の情報を含む、ユーザ端末。
【請求項6】
ユーザ端末を制御するためのプロセッサであって、
Wireless Local Area Network(WLAN)を介さずにセルラ基地局を介する第1のデータベアラと、前記WLAN及び前記セルラ基地局を介する第2のデータベアラと、を用いた通信を制御する処理と、
前記WLANを介して受信したデータと前記セルラ基地局から直接受信したデータとに関する送達状況を示す状況報告を前記セルラ基地局へ送信する処理と、を実行し、
前記状況報告は、最初の欠落したPacket Data Convergence Protocol Service Data Unit(PDCP SDU)のシーケンス番号の情報を含む、プロセッサ。
【請求項7】
セルラ基地局であって、
Wireless Local Area Network(WLAN)を介さずに前記セルラ基地局を介する第1のデータベアラと、前記WLAN及び前記セルラ基地局を介する第2のデータベアラと、を用いたユーザ端末との通信を制御する制御部と、
前記WLANを介して受信したデータと前記セルラ基地局から直接受信したデータとに関する送達状況を示す状況報告を前記ユーザ端末から受信する受信部と、を備え、
前記状況報告は、最初の欠落したPacket Data Convergence Protocol Service Data Unit(PDCP SDU)のシーケンス番号の情報を含む、セルラ基地局。
【請求項8】
セルラ基地局を制御するためのプロセッサであって、
Wireless Local Area Network(WLAN)を介さずに前記セルラ基地局を介する第1のデータベアラと、前記WLAN及び前記セルラ基地局を介する第2のデータベアラと、を用いたユーザ端末との通信を制御する処理と、
前記WLANを介して受信したデータと前記セルラ基地局から直接受信したデータとに関する送達状況を示す状況報告を前記ユーザ端末から受信する処理と、を実行し、
前記状況報告は、最初の欠落したPacket Data Convergence Protocol Service Data Unit(PDCP SDU)のシーケンス番号の情報を含む、プロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、セルラ基地局及びWLANアクセスポイントを有する通信システムにおける通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セルラ通信及び無線LAN(WLAN:Wireless Local Area Network)通信の両機能を有するユーザ端末の普及が進んでいる。また、セルラ通信ネットワークのオペレータにより管理されるWLANアクセスポイントが増加している。そこで、3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、セルラRAN(Radio Access Network)及びWLANの連携(Interworking)を強化できる技術が検討されている(非特許文献1参照)。
【0003】
一方、複数のベアラのデータを処理するセルラ基地局であるMeNB(Master eNodeB)が一部のベアラのデータを他のセルラ基地局であるSeNB(Secondary eNodeB)に経由させるDual Connectivityのアーキテクチャが検討されている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP技術報告書 「TR37.834 V12.0.0」 2013年12月
【非特許文献2】3GPP技術報告書 「TR36.842 V12.0.0」 2014年1月
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、現在検討されているInterworking方法や上述したアーキテクチャでは、セルラ基地局とWLANアクセスポイントとが別個独立に動作しており、セルラ基地局とWLANアクセスポイントとが連携した高度な通信制御を実現できない問題がある。
【0006】
そこで、本出願は、WLANアクセスポイントを介して行われるセルラ基地局とユーザ端末との間の通信における高度な通信制御を可能とする通信制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
第1の特徴における通信制御方法は、ユーザ端末の通信を制御するための通信制御方法であって、セルラ基地局が、所定のレイヤのデータを、WLANアクセスポイントを介して、前記ユーザ端末に送信するステップと、前記ユーザ端末が、受信した前記データに基づく送達確認情報を、前記WLANアクセスポイントを介して、前記セルラ基地局へ送信するステップとを有する。
【0008】
第2の特徴における通信制御方法は、ユーザ端末の通信を制御するための通信制御方法であって、前記ユーザ端末が、第1のセルラ基地局から第2のセルラ基地局へハンドオーバする場合、前記ユーザ端末が、前記第1のセルラ基地局から受信したデータの送達状況を示す送達状況報告を前記第1のセルラ基地局へ送信するステップを有する。
【0009】
第3の特徴における通信制御方法は、ユーザ端末の通信を制御するための通信制御方法であって、ユーザ端末が第1のセルラ基地局から第2のセルラ基地局へハンドオーバする場合、前記第1のセルラ基地局が、前記ユーザ端末により送信されたデータの送達状況を示す送達状況報告を、前記ユーザ端末に送信するステップを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における通信システムを示す図である。
図2】第1実施形態におけるUEのブロック図である。
図3】第1実施形態におけるeNBのブロック図である。
図4】第1実施形態におけるAPのブロック図である。
図5】第1実施形態におけるLTE無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。
図6】第1実施形態における通信制御方法を示す図である。
図7】第1実施形態におけるデータ伝送方式を示す図である。
図8】第1実施形態におけるeNB−UE間のシーケンス図である。
図9】第1実施形態の他の態様におけるeNB−UE間のシーケンス図である。
図10】第2実施形態における通信システムの動作概要を示す図である。
図11】第2実施形態の通信システムにおけるシーケンス図である。
図12】第3実施形態における通信システムの動作概要を示す図である。
図13】第3実施形態の通信システムにおけるシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、3GPP規格に基づくセルラ通信システムであるLTEシステムを無線LAN(WLAN)システムと連携させる場合の実施形態(以下、本実施形態という)を説明する。本実施形態は、第1〜第3実施形態に分けられ、各実施形態について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態における通信システムを示す図である。図1に示すように、通信システムは、複数のUE(User Equipment)100と、E−UTRAN(Evolved−UMTS Terrestrial Radio Access Network)10と、EPC(Evolved Packet Core)20とを有する。
【0013】
E−UTRAN10は、セルラRANに相当する。EPC20は、コアネットワークに相当する。E−UTRAN10及びEPC20は、LTEシステムのネットワークを構成する。
【0014】
UE100は、移動型の無線通信装置であり、ユーザ端末に相当する。UE100は、セルラ通信及びWLAN通信の両通信方式をサポートする端末(デュアル端末)である。
【0015】
E−UTRAN10は、複数のeNB200(evolved Node−B)を有する。eNB200はセルラ基地局に相当する。eNB200は、1又は複数のセルを管理しており、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。なお、「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として使用される他に、UE100との無線通信を行う機能を示す用語としても使用される。また、eNB200は、例えば、無線リソース管理(RRM)機能と、ユーザデータのルーティング機能と、モビリティ制御及びスケジューリングのための測定制御機能とを有する。
【0016】
eNB200は、X2インターフェイスを介して相互に接続される。また、eNB200は、S1インターフェイスを介して、EPC20に含まれるMME(Mobility Management Entity)/S−GW(Serving−Gateway)500と接続される。
【0017】
EPC20は、複数のMME/S−GW500を有する。MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行うネットワークノードであり、制御局に相当する。S−GWは、ユーザデータの転送制御を行うネットワークノードであり、交換局に相当する。
【0018】
WLAN30は、WLANアクセスポイント(以下「AP」という)300を有する。AP300は、例えばLTEネットワークのオペレータ配下のAP(Operator controlled AP)である。
【0019】
WLAN30は、例えばIEEE 802.11諸規格に準拠して構成される。AP300は、セルラ周波数帯とは異なる周波数帯(WLAN周波数帯)でUE100との通信を行う。AP300は、ルータ等を介してEPC20に接続される。
【0020】
また、eNB200及びAP300が個別に配置される場合に限らず、eNB200及びAP300が同じ場所に配置(Collocated)されていてもよい。或いは、eNB200及びAP300がオペレータの任意のインターフェイスで直接的に接続されていてもよい。eNB200及びAP300との間のインターフェイスの詳細については後述する。
【0021】
次に、UE100、eNB200及びAP300の構成を説明する。
【0022】
図2は、UE100のブロック図である。図2に示すように、UE100は、アンテナ101及び102と、セルラ通信部111と、WLAN通信部112と、ユーザインターフェイス120と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機130と、バッテリ140と、メモリ150と、プロセッサ160と、を有する。メモリ150及びプロセッサ160は、制御部を構成する。UE100は、GNSS受信機130を有していなくてもよい。また、メモリ150をプロセッサ160と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサ160’としてもよい。
【0023】
アンテナ101及びセルラ通信部111は、セルラ無線信号の送受信に用いられる。セルラ通信部111は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号をセルラ無線信号に変換してアンテナ101から送信する。また、セルラ通信部111は、アンテナ101が受信するセルラ無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ160に出力する。
【0024】
アンテナ102及びWLAN通信部112は、WLAN無線信号の送受信に用いられる。WLAN通信部112は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号をWLAN無線信号に変換してアンテナ102から送信する。また、WLAN通信部112は、アンテナ102が受信するWLAN無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ160に出力する。
【0025】
ユーザインターフェイス120は、UE100を所持するユーザとのインターフェイスであり、例えば、ディスプレイ、マイク、スピーカ及び各種ボタン等を有する。ユーザインターフェイス120は、ユーザからの入力を受け付けて、該入力の内容を示す信号をプロセッサ160に出力する。GNSS受信機130は、UE100の地理的位置を示す位置情報を得るために、GNSS信号を受信して、受信した信号をプロセッサ160に出力する。バッテリ140は、UE100の各ブロックに供給すべき電力を蓄える。
【0026】
メモリ150は、プロセッサ160によって実行されるプログラムと、プロセッサ160による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ160は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行うベースバンドプロセッサと、メモリ150に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を有する。プロセッサ160は、さらに、音声・映像信号の符号化・復号を行うコーデックを含んでもよい。プロセッサ160は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0027】
図3は、eNB200のブロック図である。図3に示すように、eNB200は、アンテナ201と、セルラ通信部210と、ネットワークインターフェイス220と、メモリ230と、プロセッサ240と、を有する。メモリ230及びプロセッサ240は、制御部を構成する。また、メモリ230をプロセッサ240と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサとしてもよい。
【0028】
アンテナ201及びセルラ通信部210は、セルラ無線信号の送受信に用いられる。セルラ通信部210は、プロセッサ240が出力するベースバンド信号をセルラ無線信号に変換してアンテナ201から送信する。また、セルラ通信部210は、アンテナ201が受信するセルラ無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ240に出力する。
【0029】
ネットワークインターフェイス220は、バックホールネットワーク(バックホールNW)と接続される。
【0030】
メモリ230は、プロセッサ240によって実行されるプログラムと、プロセッサ240による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ240は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行うベースバンドプロセッサと、メモリ230に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を有する。プロセッサ240は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0031】
図4は、AP300のブロック図である。図4に示すように、AP300は、アンテナ301と、WLAN通信部311と、ネットワークインターフェイス320と、メモリ330と、プロセッサ340と、を有する。
【0032】
アンテナ301及びWLAN通信部311は、WLAN無線信号の送受信に用いられる。WLAN通信部311は、プロセッサ340が出力するベースバンド信号をWLAN無線信号に変換してアンテナ301から送信する。また、WLAN通信部311は、アンテナ301が受信するWLAN無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ340に出力する。
【0033】
ネットワークインターフェイス320は、バックホールネットワーク(バックホールNW)と接続される。
【0034】
メモリ330は、プロセッサ340によって実行されるプログラムと、プロセッサ340による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ340は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行うベースバンドプロセッサと、メモリ330に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を有する。プロセッサ340は、後述する各種の処理を実行する。
【0035】
図5は、LTE無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。図5に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルの第1レイヤ(層)〜第3レイヤに区分されており、第1レイヤは物理(PHY)レイヤである。第2レイヤは、MAC(Medium Access Control)レイヤ、RLC(Radio Link Control)レイヤ及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤを有する。第3レイヤは、RRC(Radio Resource Control)レイヤを有する。
【0036】
物理レイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100の物理レイヤとeNB200の物理レイヤとの間では、物理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
【0037】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理などを行う。UE100のMACレイヤとeNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。eNB200のMACレイヤは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式)及びUE100への割当リソースブロックを決定するスケジューラを有する。
【0038】
RLCレイヤは、MACレイヤ及び物理レイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。RLCレイヤは、データの送達確認を行い、再送制御機能を有する。UE100のRLCレイヤとeNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
【0039】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張及び暗号化・復号化を行う。
【0040】
RRCレイヤは、制御信号を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRCレイヤとeNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のための制御信号(RRCメッセージ)が伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRC接続状態(接続状態)であり、そうでない場合、UE100はRRCアイドル状態(アイドル状態)である。
【0041】
RRCレイヤの上位に位置するNAS(Non−Access Stratum)レイヤは、セッション管理及びモビリティ管理などを行う。
【0042】
図6は、第1実施形態における通信制御方法を示す図である。
【0043】
図6に示すように、第1実施形態では、UE100は、eNB200との無線接続及びAP300との無線接続を有する。すなわち、UE100は、eNB200及びAP300と同時に接続を確立する。すなわち、UE100には、eNB200及びAP300のそれぞれから無線リソースが割り当てられる。
【0044】
eNB200は、eNB200との無線接続及びAP300との無線接続を有するUE100に対するRRC接続を維持する。よって、eNB200は、UE100に対して各種の通信制御を行うことができる。
【0045】
第1実施形態では、eNB200は、UE100と直接的にデータを送受信するとともに、AP300(及びWLAN GW600)を介してUE100と間接的にデータを送受信する。具体的には、UE100とS−GW500(EPC20)との間には、AP300を介さずにeNB200を介するデータベアラ#1(第1のデータベアラ)と、AP300及びeNB200を介するデータベアラ#2(第2のデータベアラ)と、が確立される。eNB200のRRCレイヤは、データベアラ#1及びデータベアラ#2を管理する。
【0046】
このように、UE100は、eNB200及びAP300を介して複数のデータベアラを確立する。また、UE100には、eNB200及びAP300のそれぞれから無線リソースが割り当てられる。よって、大きな通信容量が確保された状態で、複数データ(複数ユーザデータ)を並列的に伝送できるため、スループットを大幅に向上させることができる。
【0047】
第1実施形態では、eNB200とAP300との間のデータベアラ#2において、IPパケットの状態でデータが送受信される。或いは、eNB200とAP300との間のデータベアラ#2において、IPパケットでカプセル化されたPDCPパケットの状態でデータが送受信される。また、データベアラ#2は、eNB200において2つに分割(split)されていてもよい。分割された一方は、AP300を介してUE100で終端しており、分割された他方は、AP300を介さずにUE100で終端する。
【0048】
なお、第1実施形態において、図6に示すデータベアラ#1を用いた通信は任意である。すなわち、第1実施形態の通信システムは、少なくともAP300を介したデータベアラ#2を用いた通信が行われている場合、適用可能である。
【0049】
図7は、第1実施形態におけるデータ伝送方式を示す図である。第1実施形態におけるデータ伝送方式では、eNB200とAP300との間のデータベアラ#2において、IPパケットにカプセル化されたPDCPパケットの状態でデータが送受信される。
【0050】
図7に示すように、eNB200は、データベアラ#1用のPDCPエンティティ241#1、データベアラ#2用のPDCPエンティティ241#2、データベアラ#1用のRLCエンティティ242#1、データベアラ#2用のRLCエンティティ242#2及びMACエンティティ243を有する。また、図7に示すカプセル化エンティティ244(所定のエンティティ)は、eNB200又はWLAN GW600のいずれかに含まれる機能である。
【0051】
AP300は、LLCエンティティ341、MAC LMEエンティティ342及びPHY LMEエンティティ343を有する。
【0052】
UE100は、MACエンティティ161、データベアラ#1用のRLCエンティティ162#1、データベアラ#1用のPDCPエンティティ163#1、データベアラ#2用のRLCエンティティ162#2、データベアラ#2用のPDCPエンティティ163#2、WLANのPHY/MACエンティティ164、LLCエンティティ165及びデカプセル化エンティティ166(第2のエンティティ)を有する。
【0053】
eNB200は、PDCPエンティティ241において、データベアラ#2に属するデータ(PDCPパケット)をRLCエンティティ242#2及びカプセル化エンティティ244に振り分ける。RLCエンティティ242#2に振り分けられたデータは、RLCエンティティ242#2及びMACエンティティ243を通じて、UE100に送信される。UE100は、データベアラ#2に属するデータをMACエンティティ161、RLCエンティティ162#2、PDCPエンティティ163#2の順に処理する。
【0054】
カプセル化エンティティ244に振り分けられたデータ(PDCPパケット)は、カプセル化エンティティ244によりIPパケットにカプセル化されて、AP300に転送される。AP300は、当該IPパケットを、LLCエンティティ341、MAC LMEエンティティ342及びPHY LMEエンティティ343を通じて、UE100に送信する。UE100は、データベアラ#2に属するデータをPHY/MACエンティティ164、LLCエンティティ165及びデカプセル化エンティティ166の順に処理し、IPパケットをデカプセル化することにより、PDCPパケットを取得する。当該PDCPパケットは、PDCPエンティティ163#2において、RLCエンティティ162#2からのPDCPパケットとの順序制御(reordering)が行われる。このように、PDCPパケットをカプセル化/デカプセル化することにより、WLAN区間にIPトンネリングが設定されている。ここで、PDCPは暗号化・認証等のセキュリティ処理を行っているので、PDCPパケットをWLAN側に渡すことにより、WLAN側の通信においてLTEレベルのセキュリティが実現される。また、WLAN側では、暗号化・認証等のセキュリティ処理を省略してもよい。
【0055】
一方で、データベアラ#1に属するデータについては、PDCPエンティティ241#1、RLCエンティティ242#1及びMACエンティティ243を通じて、UE100に送信される。UE100は、データベアラ#1に属するデータをMACエンティティ161、RLCエンティティ162#1、PDCPエンティティ163#1の順に処理する。
【0056】
次に、第1実施形態における通信システムの適用シナリオを説明する。
【0057】
図7に示したように、eNB200からAP300を介してデータベアラ#2を用いて送信されるデータ(PDCPパケット)は、eNB200が備えるRLCエンティティ242を経由しない。そのため、AP300を介するデータベアラ#2を用いて送信されるデータ(PDCPパケット)は、RLCレイヤにより行われるデータの送達確認及び送達確認に基づく再送制御が行われない。そこで、第1実施形態では、以下の構成により、AP300を介して行われるeNB200とUE100との間の高度な通信制御を可能とする。
【0058】
図8は、第1実施形態におけるeNB200−UE100間のシーケンス図である。
【0059】
ステップS101において、eNB200のPDCPエンティティ241は、PDCPレイヤのデータ(PDCPパケット)を、eNB200のカプセル化エンティティ244に出力する。
【0060】
ステップS102において、カプセル化エンティティ244は、入力されたPDCPパケットをIPレイヤでカプセル化する。
【0061】
ステップS103において、カプセル化エンティティ244は、カプセル化されたPDCPパケット、すなわちIPパケットをAP300に送信する。
【0062】
ステップS104において、AP300は、IPパケットをUE100に送信する。
【0063】
ステップS105において、UE100のデカプセル化エンティティ166は、受信したIPパケットに基づき、受信データの送達確認情報(ACK/NACK)をAP300に送信する。
【0064】
ステップS106において、デカプセル化エンティティ166は、受信したIPパケットのデカプセル化を行う。
【0065】
ステップS107において、AP300は、受信した送達確認情報をeNB200に送信する。eNB200のカプセル化エンティティ244が、送達確認情報を受け付ける。
【0066】
ステップS108において、カプセル化エンティティ244は、送達確認情報に基づき、PDCPパケットの送達確認の状況を示すSuccessful delivery indicationをPDCPエンティティ241に通知する。
【0067】
このように、AP300を介した通信において、カプセル化エンティティ244とデカプセル化エンティティ166との間でデータの送達確認を行うことができる。また、言い換えると、カプセル化エンティティ244とデカプセル化エンティティ166とは、AM(Acknowledge Mode)のRLCエンティティのように、仮想的なRLCエンティティとして動作する。
【0068】
なお、図8に示す通信システムの構成において、WLAN GW600がeNB200とAP300との間に設置されていてもよい。
【0069】
図9は、第1実施形態の他の態様におけるeNB200−UE100間のシーケンス図である。図9に示すシーケンス図において、図8に示した動作と同じ動作には同一のステップ番号を付与している。
【0070】
図9に示すように、第1実施形態の他の態様では、WLAN GW600がカプセル化エンティティ244を備える点を除き、図8の動作と同じである。
【0071】
上述したように、第1実施形態の通信システムによればWLANアクセスポイントを介して行われるセルラ基地局とユーザ端末との間の高度な通信制御を可能とする。具体的には、第1実施形態の通信システムによれば、AP300を介してeNB200とUE100とが通信を行う場合であっても、データの受信側が送達確認情報を送信し、データの送信側がデータの送達確認を行うことができる。このとき、カプセル化エンティティ244とデカプセル化エンティティ166とが、仮想的なRLCエンティティとして動作する。
【0072】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態における通信システムを説明する。第2実施形態におけるネットワーク構成や機能ブロックは、図1図7に示した第1実施形態におけるネットワーク構成や機能ブロック図と同じである。
【0073】
図10は、第2実施形態における通信システムの動作概要を示す図である。
【0074】
図10に示すように、第2実施形態における通信システムは、AP300を介して下りリンクデータを受信するUE100がSource eNB200−1からTarget eNB200−2にハンドオーバするシナリオに適用される。
【0075】
ステップS21において、Source eNB200−1は、S−GW500からの下りリンク(Downlink(DL))データを、AP300を介して、UE100に送信する。
【0076】
ステップS22において、UE100は、AP300を介して受信した下りリンクデータに対する送達確認情報(ACK/NACK)を応答しない。そのため、Source eNB200−1は、送信した下りリンクデータの送達確認ができていない状態である。
【0077】
ステップS23において、Source eNB200−1は、ハンドオーバを決定する(Handover(HO) decision)。
【0078】
ここで、通常のハンドオーバ処理において、Source eNB200−1は、UE100に送信した下りリンクデータの送達確認ができていない場合、送達確認ができていないデータの全てをTarget eNB200−2に転送する。しかしながら、Source eNB200−1は、UE100が正常に受信できている下りリンクデータ、すなわち転送が不要であるデータをTarget eNB200−2に転送してしまい、無駄なトラフィックを増加させてしまっている。そこで第2実施形態における通信システムでは、ハンドオーバを行う場合、次のステップS24及びS25の処理を実施する。
【0079】
ステップS24において、Source eNB200−1は、UE100に対して、PDCP Status Report Request(送達状況報告要求)を送信する。
【0080】
ステップS25において、UE100は、当該UE100が受信した下りリンクデータの送達状況を示すPDCP Status Report(送達状況報告)を、Source eNB200−1に対して送信する。PDCP Status Reportには、受信側(UE100)のPDCPエンティティ163で未受信であるPDCP SDU(Service Data Unit)のシーケンス番号(Sequence Number(SN))を示すFMS(First Missing PDCP SN)及び受信側のPDCPエンティティでFMS以降のPDCP SDUが受信済みであるか否かを示すビットマップが含まれる。なお、PDCP Status Reportには、AP300を介して受信したデータとSource eNB200−1から直接受信したデータとに関する送達状況を示す情報が含まれる。
【0081】
ステップS26において、Source eNB200−1は、UE100に対して、HO Command(RRCConnectionReconfiguration)を送信する。UE100は、HO Commandを受信すると、PDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)を実施する。
【0082】
ステップS27において、Source eNB200−1は、ステップS25で受信したPDCP Status Reportに基づく受信側(UE100)において未送達であった下りリンクデータを、ハンドオーバ先のTarget eNB200−2に転送する。
【0083】
上記動作により、第2実施形態における通信システムは、AP300を介した下りリンクデータ通信が行われる場合であってもハンドオーバを行うとき、Source eNB200−1がTarget eNB200−2に対して未送達のデータのみを転送できる。
【0084】
図11は、第2実施形態の通信システムにおけるシーケンス図である。
【0085】
図11に示すステップS201は、図10に示すステップS23に対応する。すなわち、ステップS201の前に、図10に示すステップS23以前の処理が実施されている。
【0086】
ステップS201において、Source eNB200−1は、HO decisionを行う。
【0087】
ステップS202において、Source eNB200−1は、UE100に対して、PDCP Status Report Requestを送信する。
【0088】
ステップS203において、UE100は、PDCP Status Report Requestの受信後、当該UE100が受信した下りリンクデータの送達状況を示すPDCP Status Reportを、Source eNB200−1に対して送信する。上述したように、PDCP Status Reportには、AP300を介して受信したデータとSource eNB200−1から直接受信したデータとに関する送達状況を示す情報が含まれる。
【0089】
ステップS204において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2に対して、HO Requestを送信する。
【0090】
ステップS205において、Target eNB200−2は、Source eNB200−1に対して、HO Request Ackを送信する。
【0091】
ステップS206において、Source eNB200−1は、UE100に対して、HO Commandを送信する。UE100は、HO Command(RRCConnectionReconfiguration)を受信すると、PDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)を実施する。
【0092】
ステップS207において、Source eNB200−1は、ステップS203において受信したPDCP Status Reportに基づき、未送達の下りリンクデータの有無を判定する。
【0093】
ステップS208において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2に対して、ステップS207において未送達であると判定された下りリンクデータを転送する。
【0094】
なお、ステップS202及びS203の処理は、ステップS205の後に実施されてもよい。
【0095】
なお、ステップS202及びS203の処理は、UE100においてPDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)が実施される場合、実行されてもよい。
【0096】
上述したように、第2実施形態の通信システムによれば、WLANアクセスポイントを介して行われるセルラ基地局とユーザ端末との間の通信における高度な通信制御を可能とする。具体的には、第2実施形態によれば、Source eNB200−1は、受信側(UE100)からの送達確認情報(ACK/NACK)を取得できない(又は取得しない)ときであっても、ハンドオーバが行われる場合、受信側から送達状況報告(PDCP Status Report)を受信できる。そして、Source eNB200−1は、送達状況報告に基づき未送達のデータのみをTarget eNB200−2に転送できるため、不要なデータ転送によるトラフィック増加を抑止できる。
【0097】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態における通信システムを説明する。第3実施形態におけるネットワーク構成や機能ブロックは、図1図7に示した第1実施形態におけるネットワーク構成や機能ブロック図と同じである。また、第2実施形態では下りリンクデータの送達状況に基づく処理を対象としたのに対して、第3実施形態では上りリンクデータの送達状況に基づく処理を対象とする。
【0098】
図12は、第3実施形態における通信システムの動作概要を示す図である。
【0099】
図12に示すように、第3実施形態における通信システムは、AP300を介して上りリンクデータを送信するUE100がSource eNB200−1からTarget eNB200−2にハンドオーバするシナリオに適用される。
【0100】
ステップS31において、UE100は、上りリンク(Uplink(UL))データを、AP300を介して、Source eNB200−1に送信する。
【0101】
ステップS32において、Source eNB200−1は、AP300を介して受信した上りリンクデータに対する送達確認情報(ACK/NACK)を応答しない。そのため、UE100は、送信した上りリンクデータの送達確認ができていない状態である。
【0102】
ステップS33において、Source eNB200−1は、ハンドオーバの決定後、Target eNB200−2に対して、HO Requestを送信する。
【0103】
ステップS34において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2からのHO Request Ackを受信する。
【0104】
ここで、通常のハンドオーバ処理において、Source eNB200−1からUE100へのHO Command送信後、UE100が送信した上りリンクデータの送達確認ができていない場合、送達確認ができていないデータの全てをTarget eNB200−2に再送する。しかしながら、UE100は、Source eNB200−1が正常に受信できている上りリンクデータ、すなわち転送が不要であるデータをTarget eNB200−2に再送してしまい、無駄なトラフィックを増加させてしまっている。そこで第3実施形態における通信システムでは、ハンドオーバを実施する場合、次のステップS35及びS36の処理を実施する。
【0105】
ステップS35において、Source eNB200−1は、UE100に対して、UE100から送信された上りリンクデータの送達状況を示すPDCP Status Reportを送信する。なお、PDCP Status Reportには、AP300を介して受信したデータとUE100から直接受信したデータとに関する送達状況を示す情報が含まれる。
【0106】
ステップS36において、Source eNB200−1は、UE100に対して、HO Commandを送信する。UE100は、HO Command(RRCConnectionReconfiguration)を受信すると、PDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)を実施する。
【0107】
ステップS37において、UE100は、ステップS35で受信したPDCP Status Reportに基づく受信側(Source eNB200−1)において未送達であった上りリンクデータを、ハンドオーバ先のTarget eNB200−2に再送する。
【0108】
上記動作により、第3実施形態における通信システムは、AP300を介した上りリンクデータ通信が行われる場合であってもハンドオーバを行うとき、UE100がTarget eNB200−2に対して未送達のデータのみを再送できる。
【0109】
図13は、第3実施形態の通信システムにおけるシーケンス図である。
【0110】
図13に示すステップS302は、図10に示すステップS33に対応する。すなわち、ステップS302の前に、図10に示すステップS33以前の処理が実施されている。
【0111】
ステップS301において、Source eNB200−1は、HO decisionを行う。
【0112】
ステップS302において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2に対して、HO Requestを送信する。
【0113】
ステップS303において、Target eNB200−2は、Source eNB200−1に対して、HO Request Ackを送信する。
【0114】
ステップS304において、Source eNB200−1は、当該Source eNB200−1が受信した上りリンクデータの送達状況を示すPDCP Status Reportを、UE100に対して送信する。上述したように、PDCP Status Reportには、AP300を介して受信したデータとUE100から直接受信したデータとに関する送達状況を示す情報が含まれる。
【0115】
ステップS305において、Source eNB200−1は、UE100に対して、HO Commandを送信する。UE100は、HO Command(RRCConnectionReconfiguration)を受信すると、PDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)を実施する。
【0116】
ステップS306において、UE100は、ステップS304において受信したPDCP Status Reportに基づき、未送達の上りリンクデータの有無を判定する。
【0117】
ステップS307において、Source eNB200−1は、Target eNB200−2に対して、ステップS307において未送達であると判定された上りリンクデータを再送する(UL Data re−transmission)。
【0118】
なお、ステップS304の処理は、UE100においてPDCPレイヤにおける再接続(re−establishment)が実施される場合、実行されてもよい。
【0119】
上述したように、第3実施形態の通信システムによれば、WLANアクセスポイントを介して行われるセルラ基地局とユーザ端末との間の通信における高度な通信制御を可能とする。具体的には、第3実施形態によれば、UE100は、受信側(Source eNB200−1)からの送達確認情報(ACK/NACK)を取得できない(又は取得しない)ときであっても、ハンドオーバが行われる場合、受信側から送達状況報告(PDCP Status Report)を受信できる。そして、UE100は、送達状況報告に基づき未送達のデータのみをTarget eNB200−2に転送できるため、不要なデータ転送によるトラフィック増加を抑止できる。
【0120】
なお、第2実施形態における通信システムと第3実施形態における通信システムとは、同時に適用可能である。
【0121】
[その他の実施形態]
上述した第1実施形態では、PDCPパケットを例に挙げて説明したが、これに限られない。PDCPパケットの代わりに、GTP−Uパケットが用いられてもよい。すなわち、カプセル化エンティティ166及びカプセル化エンティティ244は、GTP−Uエンティティとしての機能を有していてもよい。
【0122】
上述した各実施形態では、ハンドオーバを契機として送達確認情報報告を行っていたが、この限りではなく、ハンドオーバ要求を含まない所定レイヤ再設定要求(RRC connection reconfiguration)を契機として送達確認情報報告を行ってもよい。
【0123】
上述した各実施形態では、セルラ通信システムの一例としてLTEシステムを説明したが、LTEシステムに限らず、LTEシステム以外のセルラ通信システムであってもよい。
【0124】
なお、日本国特許出願第2014−097178号(2014年5月8日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上のように、本実施形態に係る通信制御方法によれば、WLANアクセスポイントを介して行われるセルラ基地局とユーザ端末との間の通信における高度な通信制御をできるため、移動通信分野において有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13