(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を用いて詳しく説明する。
【0042】
<末端分岐型ポリオレフィン系共重合体>
まず、下記一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体について詳細に説明する。
【0044】
(式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。R
1およびR
2は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。X
1およびX
2は、同一または相異なり、4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコールを含む基、ハロゲン化ポリアルキレングリコールを含む基、アルキルスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコールを含む基またはアリールスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコールを含む基を表す。)
【0045】
一般式(1)のAであるポリオレフィン鎖は、炭素数2〜20のオレフィンを重合したものである。炭素数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられる。本実施形態においては、これらのオレフィンの単独重合体又は共重合体であってもよく、特性を損なわない範囲で他の重合性の不飽和化合物と共重合したものであってもよい。これらのオレフィンの中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0046】
一般式(1)中、Aで表されるポリオレフィン鎖の、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)により測定された数平均分子量は、400〜8000であり、好ましくは500〜4000、さらに好ましくは500〜2000である。ここで数平均分子量はポリスチレン換算の値である。
【0047】
Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量が上記範囲にあると、ポリオレフィン部分の結晶性が高く、分散液の安定性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散液の調製が容易になる傾向があるため好ましい。
【0048】
一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、通常1.0〜数十であるが、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
【0049】
一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲にあると、分散液中の粒子の形状や粒子径の均一性などの点で好ましい。
【0050】
GPCによる、Aで表されるポリオレフィン鎖の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用い以下の条件の下で測定できる。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計
【0051】
なお、Aで表されるポリオレフィン鎖の分子量は、後述の、一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し、末端の分子量相当を差し引くことで測定できる。
【0052】
R
1,R
2としては、Aを構成するポリオレフィンの2重結合に結合した置換基である水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0053】
一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の数平均分子量は好ましくは2.5×10
4以下、より好ましくは1.5×10
4以下、より好ましくは4.0×10
3以下である。また、好ましくは5.5×10
2以上、より好ましくは8×10
2以上である。その数平均分子量は、Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量とX
1およびX
2で表される基の数平均分子量とR
1,R
2およびC
2H分の分子量の和で表される。
【0054】
数平均分子量が上記範囲にあると、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の粒子を分散質とした際の分散液中の粒子の安定性、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒への分散性が良好となる傾向があり、かつ分散液の調製が容易になるため好ましい。
【0055】
一般式(1)において、「4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコールを含む基」は以下の化学式(10a)で表される官能基を含む基を挙げることができる。
【0057】
(式中、R"はアルキレン基であり、nは2以上の整数を表す。R
12、R
13およびR
14はアルキル基、アルカノール基、アリール基またはアリールアルキル基であるか、あるいはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、1または2以上のヘテロ原子を含む飽和または不飽和環を形成してもよい。X
−は4級アンモニウム基に配位した対イオンを表す。)
【0058】
式(10a)においてアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数2または3のアルキレン基がより好ましい。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。アルカノール基としては、炭素数1〜10のアルカノール基が好ましく、炭素数1〜4のアルカノール基がより好ましい。アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜11のアリール基がより好ましい。アリールアルキル基としては炭素数7〜20のアリールアルキル基が好ましく、ベンジル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基がより好ましい。
前記の1または2以上のヘテロ原子を含む飽和または不飽和環としては、例えばピリジニウム塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩等を挙げることができる。
【0059】
なお、X
−で表される対イオンは、例えばOH
−、HCO
3−、CO
32−、Cl
−、Br
−、TsO
―、SO
42−、CH
3COO
−等が挙げられる。
【0060】
一般式(1)のハロゲン化ポリアルキレングリコールを含む基、アルキルスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコールを含む基またはアリールスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコールを含む基としては、以下の化学式(10b)で表される官能基を含む基を挙げることができる。
【0062】
(式中R"はアルキレン基であり、nは2以上の整数を表す。Zはハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を表す。)
【0063】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。これらの中でも取り扱いの容易性から、塩素原子が好ましい。
アルキルスルホニルオキシ基としては、たとえば、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、メシルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
また、アリールスルホニルオキシ基としては、たとえば、ベンゼンスルホニルオキシ基、トシルオキシ基、p−クロロベンゼンスルホニルオキシ基等が挙げられる。その中でも、トシルオキシ基が好ましい。
また、式(10b)におけるアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数2または3のアルキレン基がより好ましい。
【0064】
一般式(1)の共重合体としては、前記一般式(1)において、X
1およびX
2が、同一または相異なり、少なくとも一方が下記一般式(2)または下記一般式(4)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が好ましい。
【0066】
(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、X
3は4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコール基、ハロゲン化ポリアルキレングリコール基、アルキルスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコール基、アリールスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコール基、または、一般式(3)
【0068】
(式中、R
3はm+1価の炭化水素基を表す。Gは同一または相異なり、−OX
4、−NX
5X
6(X
4〜X
6は4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコール基、ハロゲン化ポリアルキレングリコール基、アルキルスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコール基、アリールスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコール基から選ばれる基を表す。)で表される基を表す。mは、R
3とGとの結合数であり1〜10の整数を表す。)で表される基を表す。)
【0070】
(式中、X
7,X
8は同一または相異なり、4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコール基、ハロゲン化ポリアルキレングリコール基、アルキルスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコール基、アリールスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す。)
【0071】
本実施形態で用いられる共重合体は、以下に示す一般式(1a)、(1b)、(1c)または(1d)で表される共重合体であることがより好ましく、一般式(1c)または(1d)で表される4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコール基を含む共重合体であることが特に好ましい。
【0073】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。Zはハロゲン原子またはアルキルスルホニルオキシ基もしくはアリールスルホニルオキシ基である。l+mは2以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
【0075】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
10およびR
11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。Zはハロゲン原子またはアルキルスルホニルオキシ基もしくはアリールスルホニルオキシ基である。l+m+oは3以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
【0077】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
12、R
13およびR
14はアルキル基、アルカノール基、アリール基またはアリールアルキル基であるか、あるいはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、1または2以上のヘテロ原子を含む飽和または不飽和環を形成していてもよい。X
-は4級アンモニウム基に配位した対イオンを表す。l+mは2以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
【0079】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
10およびR
11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
12、R
13およびR
14はアルキル基、アルカノール基、アリール基またはアリールアルキル基であるか、あるいはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、1または2以上のヘテロ原子を含む飽和または不飽和環を形成していてもよい。X
-は4級アンモニウム基に配位した対イオンを表す。l+m+oは3以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
【0080】
一般式(1d)の中でも、以下の構造式(1g)、(1h)、(1i)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が特に好ましい。
また、同様に、前記化学式(1a)または(1b)のZの一部が4級アンモニウム塩に置換された化合物も好ましく用いられる。
なお、式(1g)、(1h)、(1i)の共重合体においては、対イオンがCl
−として記載されているが、適宜、OH
−、HCO
3−、CO
32−、Br
−、TsO
−、SO
42−、CH
3COO
−等に変換することができる。
【0081】
【化21】
(式中、l+m+o、nは一般式(1d)と同様である。)
【0082】
【化22】
(式中、l+m+o、nは一般式(1d)と同様である。)
【0083】
【化23】
(式中、l+m+o、nは一般式(1d)と同様である。)
【0084】
以下、本実施形態に用いられる重合体の製造方法について説明する。
【0085】
<一般式(1)の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の製造方法>
一般式(1)の共重合体は下記一般式(1A)で表される、末端にポリアルキレングリコール基を有する末端分岐型ポリオレフィン系共重合体を原料として用いて調製することができる。
【0087】
(式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。R
1およびR
2は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。X
11およびX
21は、同一または相異なり、ポリアルキレングリコールを含む基を表す。)
【0088】
より具体的には、下記(1e)、(1f)の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体を用いて調製できる。
【0090】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+mは2以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
【0092】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
10およびR
11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+m+oは3以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
【0093】
末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(1A)はWO2005/073282号、WO2010/103856号に記載されている方法により製造することができる。
【0094】
前記一般式(1)において、X
1およびX
2が、同一または相異なり、ハロゲン化ポリアルキレングリコールを含む基である末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(1H)は、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(1A)で表される共重合体をハロゲン化することにより得られる。
【0095】
より具体的には、例えば、ハロゲン化剤を前記式(1e)または(1f)で表される共重合体の末端ヒドロキシ基と反応させることにより、下記一般式(1a)または(1b)において、Zがハロゲン原子である共重合体を製造することができる。ハロゲン化剤としては、三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄、塩化チオニル(SOCl
2)、塩化スルフリル(SO
2Cl)、三塩化リン(PCl
3)、五塩化リン(PCl
5)、リン酸トリクロリド(POCl
3)、三臭化リン(PBr
3)、五臭化リン(PBr
5)、臭化水素(HBr)、ヨウ化水素(HI)などを挙げることができる。
【0096】
一般式(1)においてX
1およびX
2が、同一または相異なり、アルキルスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコール基もしくはアリールスルホニルオキシ化ポリアルキレングリコール基を有する基である末端分岐型共重合体(1S)は、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(1A)をアルキルスルホニルオキシ化またはアリールスルホニルオキシ化することにより得られる。
より具体的には、例えば、前記一般式(1e)または(1f)で表される共重合体の末端ヒドロキシ基をピリジン等の塩基存在下、塩化スルホニル等のハロゲン化スルホニルを反応させることにより下記一般式(1a)または(1b)において、Zがアルキルスルホニルオキシ基もしくはアリールスルホニルオキシ基である共重合体を製造することができる。
【0098】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。Zはハロゲン原子またはアルキルスルホニルオキシ基もしくはアリールスルホニルオキシ基である。l+mは2以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
【0100】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R
10およびR
11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。Zはハロゲン原子またはアルキルスルホニルオキシ基もしくはアリールスルホニルオキシ基である。l+m+oは3以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)
【0101】
一般式(1)においてX
1およびX
2が4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコールを含む基である末端分岐型共重合体(1Z)は、たとえば、前述の(1H)または(1S)で表される末端分岐型共重合体に3級アミン、その他、含窒素複素環式化合物を反応させ、必要に応じてイオン交換することにより変換することができる。3級アミンとしてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類を、含窒素複素環式化合物としてはピリジン、キノリン、イソキノリン等を用いることができる。
対イオンの変換は公知の方法、たとえばイオン交換樹脂に接触させる等の方法により行うことができる。
【0102】
本実施形態において、前記(1Z)で表される共重合体の粒子は、後述する金属酸化物中空粒子を製造するための鋳型として特に好ましく用いられる。
当該4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコールを含む基を有する重合体粒子の表面には4級アンモニウム塩に由来する極性基を有しており、そのため、金属酸化物前駆体(たとえばシラノールアニオン等)を引き付け、粒子表面上に金属酸化物層構造の形成を補助するため、非水溶性ポリマー(コア)−金属酸化物(シェル)によるコア−シェル構造の形成を比較的穏やかな条件で行うことができると考えられる。
【0103】
<一般式(1)の共重合体粒子>
一般式(1)の共重合体粒子は、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下であることが好ましい。このような共重合体粒子から得られた金属酸化物中空粒子を用いることにより、高断熱で透明なフィルム、塗膜を実現することもできる。体積50%平均粒子径は粒度分布計(DLS)を用いて測定できる。
【0104】
一般式(1)の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体からなる本実施形態の重合体粒子は、一般式(1)のAで表されるポリオレフィン鎖部分が、内方向に配向した構造を有し、このポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するリジッドな粒子である。
【0105】
末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、ポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するため、当該共重合体粒子を液体に分散した分散液を乾燥して粒子を取り出し後も再度溶媒等の液体中に分散することが可能である。本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、粒子が含むポリオレフィン鎖部分の融点が好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上のリジッドな粒子である。
【0106】
ポリオレフィン鎖部分の融点が上記の温度以上にあると、結晶性が良好なリジッドな粒子になり、より高温で加熱した場合においても粒子の崩壊が抑制される。
このため、後述する各種用途における製造工程や使用場面において、粒子の崩壊が抑制されるので、本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子が有する特性を失うことがなく、製品の歩留まりや製品の品質がより安定する。
【0107】
末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、溶媒等に分散させたとしても、希釈濃度によらず粒子径が一定である。つまり、再分散性および均一な分散粒子径を有することから、液体中に分散しているミセル粒子とは異なるものである。
水中に分散した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は凍結乾燥、スプレードライ等の方法により粉体として回収することが可能である。一旦回収した粉体は水に再分散させることが出来る。また特定の有機溶媒に分散することが出来る。
【0108】
一般式(1)の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子の製造方法は特に限定されるものではない。
例えば、WO2010/103856に記載の方法により前記一般式(1A)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子を製造し、得られた粒子を前記したように、ハロゲン化剤またはハロゲン化スルホニルと反応させることにより、あるいはさらに3級アミンと反応させることにより製造することができる。
また、一般式(1)の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体を、WO2010/103856に記載の方法に準じて水に分散させ、次いで凍結乾燥、スプレードライ等の方法により粉体として回収することにより製造することもできる。
【0109】
<金属酸化物中空粒子>
本実施形態の金属酸化物中空粒子は、大きさが略均一で、かつ分散性が高い、いわゆる単分散粒子である。
図2は本実施形態に係る中空粒子を示す模式断面図である。
図2に示すように、金属酸化物中空粒子は内部に略均一な空孔を有している。本実施形態の金属酸化物中空粒子の体積50%平均粒子径は10nm以上50nm以下の範囲にあり、好ましくは20nm以上40nm以下の範囲にある。
また、本実施形態の金属酸化物中空粒子の内径は、外径に応じて変化するが、例えば5nm以上30nm以下の範囲にあり、好ましくは10nm以上25nm以下の範囲にある。
金属酸化物中空粒子の外径が、この範囲であると粒子の光散乱が小さく、かつ、様々な用途に用いることができ、所望の特性を効果的に発現することができる。例えば、後述する樹脂組成物として用いる場合、バインダー樹脂中に均一に分散させることができ、透明性が高い樹脂組成物を得ることができる。
【0110】
また、本実施形態の金属酸化物中空粒子の体積90%平均粒子径と体積50%平均粒子径との比(D90/D50)は1.5以下とすることが好ましく、さらに好ましくは1.0以上1.4以下である。この範囲であると、粒子径分布が狭く、粗大粒子が少ないため、取扱性に優れ、所望の特性を効果的に発現することができる。例えば、後述する樹脂組成物として用いる場合、バインダー樹脂への均一分散性、得られる樹脂の透明性の点で好ましい。
【0111】
また、本実施形態の金属酸化物中空粒子は内部に空孔を有し、BET比表面積は、たとえば300m
2/g以上であり、好ましくは400m
2/g以上である。
このBET比表面積は、たとえば窒素吸着法にて測定することができる。
金属酸化物中空粒子の外径は、水に分散したサンプルを動的光散乱による粒度分布計(DLS)で確認することができる。また、内径はTEMの画像写真から観察できる。
また本実施形態において、金属とは、典型的な金属だけでなく、Siなどの半金属をも意味する。
【0112】
本実施形態の金属酸化物としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ハフニウム(Hf)、コバルト(Co)、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)から選ばれる金属の酸化物が好ましく、物質自身の屈折率、熱伝導率が金属酸化物の中で比較的低いという観点から、ケイ素酸化物(シリカ)が特に好ましい。
また金属酸化物は複数の金属を含む複合酸化物であってもよい。
【0113】
本実施形態により得られる金属酸化物中空粒子の形状は、製造の際、鋳型として用いる前記一般式(1)で示される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体中のポリアルキレングリコール鎖の重量割合が大きくなると楕円体形状の金属酸化物中空粒子が得られやすくなる。ポリオレフィン鎖/ポリアルキレングリコール鎖の重量割合の比が1以下(後述の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(1e)、(1f)製造時、ジエタノールアミン変性末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(I)の仕込み重量/エチレンオキシドの仕込み重量割合の比が1以下)の時、楕円体形状を帯びる。本実施形態で得られる楕円体状の金属酸化物中空粒子はたとえば、体積50%平均粒子径が10nm以上50nm以下の範囲にある。また、長軸方向の内径がたとえば、5nm以上30nm以下の範囲にある。外径の長軸方向の長さd1と短軸方向の長さd2の関係が例えば0.5<d2/d1<0.8であり、好ましくは0.5<d2/d1<0.7である。
このような楕円形状の金属酸化物中空粒子の体積50%平均粒子径、内径については、前述の方法で測定することができる。
【0114】
<金属酸化物中空粒子の製造方法>
本実施形態の金属酸化物中空粒子の製造方法は、一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の粒子(以下、「一般式(1)の共重合体粒子」ともいう。)の存在下に、金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行い、有機無機複合体粒子を得る工程(1)と、有機無機複合体粒子から前記共重合体の粒子を除去して、金属酸化物中空粒子を得る工程(2)と、を含む。
【0115】
工程(1)で得られる有機無機複合体粒子は、金属酸化物体からなる粒子中に前記一般式(1)の共重合体粒子を内包しており、工程(2)でテンプレートである一般式(1)の共重合体粒子を除去することにより本実施形態の金属酸化物中空粒子が製造される。
【0116】
前記工程(1)としては、例えば工程(1−1)と工程(1−2)を含むのが好ましい。
【0117】
工程(1−1)
水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒と、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下である一般式(1)の共重合体粒子(X)との混合物を得る工程。
【0118】
工程(1−2)
前記工程(1−1)で得られた混合物と金属酸化物前駆体を混合し、該金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行って有機無機複合体粒子を得る工程。
【0119】
このように、本実施形態においては、一般式(1)の共重合体粒子(X)存在下で、金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行う必要がある。ここで、酸性触媒(V)を添加することにより、ゾル−ゲル反応が早く進行し、さらに共重合体粒子を内包するように金属酸化物前駆体が3次元的に緻密なゲルを形成するため、有機無機複合体粒子を好適に得ることができる。また、超音波処理によりゾルーゲル反応の進行を早めることもできる。
以下、各工程を順に説明する。
【0120】
[工程(1−1)]
工程(1−1)においては、具体的に、一般式(1)の共重合体粒子(X)(以下、適宜「成分(X)」とする)、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)(以下、適宜「成分(Y)」とする)、必要に応じて酸性触媒(V)(以下、適宜「成分(V)」とする)を混合して混合物を調製する。
工程(1−1)において、一般式(1)の共重合体粒子(X)の水分散体、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)、必要に応じて酸性触媒(V)を混合することにより混合物を得るのが好ましい。
【0121】
[酸性触媒(V)]
本実施形態で用いる混合組成物において、金属酸化物前駆体の縮合速度を制御し、球状体の金属酸化物中空粒子を形成させる点において、必要に応じて酸性触媒(V)が使用される。具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、トルエンスルホン酸等の無機および有機酸類などが挙げられる。反応性の観点から、比較的穏やかに反応が進行する塩酸、硝酸等の酸触媒を使用することが好ましい。
【0122】
[工程(1−2)]
工程(1−2)においては前記工程(1−1)において得られた混合物中に、金属酸化物前駆体(W)(以下、適宜「成分(W)」とする)を混合しゾル−ゲル反応を行い、有機無機複合体粒子を得る。
【0123】
[金属酸化物前駆体(W)]
金属酸化物前駆体としては、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物、金属ハロゲン化物、金属アセテート、金属硝酸塩、金属硫酸塩等が挙げられる。
【0124】
本実施形態における金属アルコキシドは、下記式(12)で表されるものを指す。
(R
12)x
1M(OR
13)y
1 (12)
【0125】
式中、R
12は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。R
13は、炭素数1以上6以下、好ましくは炭素数1以上4以下の低級アルキル基を表す。x
1およびy
1は、x
1+y
1=4かつ、x
1は2以下となる整数を表す。Mとしては、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi、希土類金属等が挙げられ、光学材料等、幅広い用途に利用できる観点から、Si、Al、Zn、Zr、In、Sn、Ti、Pb、Hfなどゾル−ゲル反応で無色の金属酸化物となる金属(アルコキシド)が好ましい。それらの中でも珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。中でも珪素化合物は、比較的安価で入手しやすく、反応が緩やかに進行するため、工業的な利用価値が高い。また、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物は、水および触媒の添加により、ゾル−ゲル反応することで、後述する金属酸化物となる化合物であってもよい。
【0126】
具体例を挙げると、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、これらに対応するアルコキシアルミニウム、アルコキシジルコニウム、アルコキシチタンが挙げられる。
【0127】
さらに、これらの金属アルコキシドに加えて、以下1)〜4)に示すようなR
12に各種官能基をもつ金属アルコキシドを使用することもできる。
1)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物
2)3−グリシドキシプロピルプロピルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルプロピルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基とアルコキシシリル基とを有する化合物
3)3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基とアルコキシシリル基とを有する化合物
4)3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等のウレイド基とアルコキシシリル基とを有する化合物
【0128】
本実施形態において、金属アルコキシドとしては、上記式(12)において、Mが珪素(Si)であるアルコキシシラン、Mがジルコニウム(Zr)であるアルコキシジルコニウム、Mがアルミニウム(Al)であるアルコキシアルミニウムおよびMがチタン(Ti)であるアルコキシチタンが好ましい。
【0129】
金属アルコキシドの部分加水分解縮合物は、これらの1種以上の金属アルコキシドに酸性触媒(V)を用いて部分的に加水分解されたものが、重縮合することにより得られる化合物であり、たとえば金属アルコキシドの部分加水分解重縮合化合物である。
本実施形態において、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物としては、アルコキシシランの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物、アルコキシアルミニウムの縮合物、およびアルコキシチタンの縮合物が好ましい。
【0130】
本実施形態における金属ハロゲン化物としては、下記式(13)で表されるものを用いることができる。
(R
14)x
2MZy
2 (13)
【0131】
式中、R
14は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。ZはF、Cl、Br、Iを表す。x
2およびy
2は、x
2+y
2≦4かつ、x
2は2以下となる整数を表す。Mとしては、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi、希土類金属等が挙げられ、光学材料等の幅広い用途に利用できる観点から、Si、Al、Zn、Zr、In、Sn、Ti、Pb、Hfなどゾル−ゲル反応で無色の金属酸化物となる金属(アルコキシド)が好ましい。それらの中でも珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。
【0132】
具体例を挙げると、テトラクロロ−ジメチルジシラン、クロロプロピルジクロロメチルシラン、クロロメチル(ジクロロ)メチルシラン、ジ−tert−ブチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジクロロ(メチル)−n−オクチルシラン、ジクロロ(メチル)フェニルシラン、ジクロロシクロヘキシルメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジクロロジヘキシルシラン、ジクロロジイソプロピルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ジクロロエチルシラン、ジクロロヘキシルメチルシラン、ジクロロメチルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、テトラクロロシラン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、フェニルトリクロロシラン、テキシルトリクロロシラン、トリクロロ(メチル)シラン、トリクロロ(プロピル)シラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロシラン、トリクロロビニルシラン、これらに対応するフロロシラン類、ブロモシラン類、ヨードシラン類、および、これらに対応するハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化バリウム、ハロゲン化鉄、ハロゲン化マンガン及びそれらの水和物が挙げられる。
【0133】
本実施形態において、金属アセテートとしては、酢酸コバルト、アセト酢酸コバルト、酢酸リチウム、アセト酢酸リチウム、酢酸鉄、アセト酢酸鉄、酢酸マンガン、アセト酢酸マンガン、あるいはそれらの水和物が挙げられる。金属硝酸塩としては、硝酸コバルト、硝酸リチウム、硝酸鉄、硝酸マンガン、あるいはそれらの水和物が挙げられる。金属硫酸塩としては、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、硫酸インジウム、硫酸亜鉛、硫酸セレン、硫酸アンチモン、硫酸スズ、硫酸イットリウムあるいはそれらの水和物が挙げられる。
【0134】
成分(W)として、本実施形態の用途において金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物が好ましく、金属アルコキシドとしてはアルコキシシランがより好ましく、特に取り扱いが容易であることから、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)が特に好ましい。
【0135】
[成分(X)〜成分(W)の混合割合]
一般式(1)の共重合体粒子(X)と金属酸化物前駆体(W)の混合比率は特に制限されるものでは無いが、1:10〜10:1が好ましい。成分(X)と成分(W)との混合比率をこのような範囲に設定することで、適度な壁の厚さを有し、機械的強度に優れ、かつ表面積の大きく空孔率の高い中空粒子が得られやすくなる。水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)は金属酸化物前駆体(W)100重量部に対して30重量部以上100,000重量部以下が好ましく、より好ましくは50重量部以上50,000重量部以下である。成分(Y)の割合をこの範囲に制御することで、適度に粒子が分散するため、金属酸化物中空粒子の生産効率を向上させることができる。なお、成分(Y)中の水と溶媒の割合は特に制限されるものでは無いが水の割合が10〜100%が好ましい。このように水の量を調整することで、十分な金属酸化物前駆体縮合物のゾル−ゲル反応速度を担保することができる。
【0136】
酸性触媒(V)を用いる場合は、酸の強度(酸解離定数pKa)に応じて変動するが、概ね金属酸化物前駆体(W)100重量部に対して10重量部以上1000重量部以下が好ましい。成分(V)の割合をこの範囲に制御することで、有機無機複合体粒子の粒径を過度に増大させることなく、ゾル−ゲル反応を円滑に行うことができる。
【0137】
なお、超音波(US)処理などの物理的処理によりゾルーゲル反応速度を促進することが出来る。
その場合、成分(V)は必ずしも添加する必要はない。超音波がゾルーゲル反応を促進させる機構は必ずしも明確ではないが超音波により生成するキャビテーション(空洞化現象)が関与しているものと思われる。なお、超音波の好ましい周波数範囲は20〜10,000kHzである。
照射時間としては好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上である。
【0138】
成分(W)のゾル−ゲル反応の好ましい反応温度は、たとえば1℃以上200℃以下であり、好ましくは10℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは20℃以上100℃以下である。反応温度をこの範囲に設定することにより、適度な反応速度を担保することができ、粒子径や形状にばらつきをもたらすことなく、有機無機複合体粒子へと導くことができる。反応時間は収率、生産効率の点から10分以上72時間以下が好ましく、より好ましくは1時間以上24時間以下である。成分(W)のゾル−ゲル反応は大気圧下で進行するが、オートクレーブなどを用いて高圧下で行っても構わない。
【0139】
金属酸化物前駆体縮合物のゾル−ゲル反応が進行することにより有機無機複合体粒子が形成される。
図1は、実施の形態に係るコア−シェル型有機無機複合体粒子を示す模式断面図である。
得られた有機無機複合体粒子は遠心分離、限外濾過による濃縮などの方法により反応液中から取り出される。取り出された有機無機複合体粒子はゾル−ゲル反応を完結させるため、ゾル−ゲル反応用触媒、水分を有機溶媒により洗浄除去し、その後充分に乾燥する。なお、ゾル−ゲル反応が完結した状態とは、理想的には全てがM−O−Mの結合を形成した状態であるが、一部アルコキシル基(M−OR
2)、M−OH基を残すものの、固体(ゲル)の状態に移行した状態を含むものである。
【0140】
[工程(2)]
工程(2)では有機無機複合体粒子から前記重合体粒子を除去し、金属酸化物中空粒子を調製する。
【0141】
重合体粒子を除去する方法としては、焼成により分解除去する方法、VUV光(真空紫外光)、遠赤外線、マイクロ波、プラズマを照射して分解除去する方法、溶剤や水を用いて抽出除去する方法などが挙げられる。焼成により分解除去する場合、好ましい温度は200℃〜1000℃、より好ましくは300℃〜700℃である。焼成温度が低すぎる場合、重合体粒子が除去されず、一方高すぎる場合、金属酸化物の融点に近くなるため細孔が崩れる場合がある。焼成は、一定温度で行っても良いし、室温から除々に昇温しても構わない。焼成の時間は、温度に応じて変えられるが、1時間から24時間の範囲で行うのが好ましい。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。また、減圧下、または真空中で行っても構わない。VUV光を照射して分解除去する場合、VUVランプ、エキシマレーザー、エキシマランプを使用することができる。空気中でVUV光を照射する際に発生するオゾン(O
3)の酸化作用を併用しても構わない。マイクロ波としては、2.45GHzまたは28GHzの周波数いずれでも構わない。マイクロ波の出力は特に制限されず重合体粒子が除去される条件が選ばれる。
【0142】
溶剤や水を用いて抽出を行う場合、例えば、溶剤としてはエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、キシレン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどを使用することができる。抽出の操作は、加温下で行っても良い。また超音波(US)処理を併用しても良い。なお、抽出操作を行った後は細孔に残存する水分、溶剤を取り除くため減圧下で、熱処理を行うのが好ましい。
【0143】
金属酸化物中空粒子は、溶剤、水への分散安定性を向上させるため、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを共存させても良い。
【0144】
金属酸化物中空粒子は、溶剤、水への分散安定性を向上させるため、あるいはバインダー樹脂との馴染みを良くし機械的強度や耐水性を向上させるために、シランカップリング剤に代表される有機珪素化合物(表面処理剤)で表面処理しても良い。
【0145】
表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。特に重合性単量体がカチオン重合性単量体である場合、カチオン重合性の官能基を有するシランカップリング剤である3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン等が望ましい。上記シランカップリング剤は1種類あるいは2種類以上を合わせて用いることができる。
【0146】
[金属酸化物中空粒子の評価方法]
本実施形態で得られる金属酸化物中空粒子の粒子径および粒子径分布は水中に分散させた粒子を動的光散乱法(粒度分布計/ナノトラックWAVE)にて粒子径の体積分布を測定することができる。
金属酸化物中空粒子の内径はTEM観察により決定することができ、TEM画像から任意に50個の粒子を抽出し実測した内径の平均値として求めることができる。
金属酸化物中空粒子の比表面積は窒素吸着法で測定でき、具体的には日本ベル社製表面積測定装置BELSORP−maxを用いて測定することができる。
【0147】
<樹脂組成物>
本実施形態の金属酸化物中空粒子は、後述する様々な用途にそのまま用いることができ、さらに金属酸化物中空粒子とバインダー樹脂とを含む樹脂組成物として用いることもできる。以下、樹脂組成物について説明する。
【0148】
<バインダー樹脂>
本実施形態においてバインダー樹脂は、金属酸化物中空粒子間を結合しうる、あるいは金属酸化物中空粒子を均一に分散させる媒体となりうるものをいう。
本実施形態で使用しうるバインダー樹脂に特に制限はない。例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂、紫外線等の光の照射により硬化する光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。なかでも造膜性を有するポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセタール系の樹脂が好ましい。
【0149】
熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0150】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、環状脂肪族型、ノボラック型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型等の各種のエポキシ樹脂が挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂としては、オルソフタル酸系、イソフタル酸系、テレフタル酸系、脂環式不飽和酸系、脂肪式飽和酸系、ビスフェノール系、含ハロゲン酸系、含ハロゲンビスフェノール系の各種の不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。フェノール樹脂としては、レゾール型、ノボラック型等のフェノール樹脂が挙げられる。
【0151】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロックコポリマー樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリビニルアセタール樹脂(PVB)、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリサルホン樹脂、非晶アリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、シンジオ系ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
【0152】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、α−オレフィンコポリマー樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
【0153】
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0154】
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリ乳酸樹脂等が挙げられる。
【0155】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン樹脂、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、エチレン・クロロトリフルオロエチレンコポリマー樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロジオキソールコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0156】
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体等が挙げられる。
【0157】
造膜性を有するポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系の樹脂としては、粒子径10〜300μmのポリマー粒子であり、乾燥後、室温または100℃以下の加熱により透明な塗膜を形成するものが好ましい。
【0158】
上記のバインダー樹脂の中では、金属酸化物中空粒子の分散性や汎用性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、水溶性樹脂、及び前記の造膜性を有する樹脂が好ましい。バインダー樹脂は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0159】
バインダー樹脂の重量平均分子量は、200〜100,000が好ましく、500〜80,000がより好ましい。
断熱性の性能発現の観点から、バインダー樹脂の含有量は、30〜99重量%が好ましく、40〜97重量%がより好ましく、本実施形態の金属酸化物中空粒子の含有量は70〜1重量%が好ましく、60〜3重量%がより好ましい。
【0160】
金属酸化物中空粒子のバインダー樹脂への分散方法は特に限定されず、公知の方法が適用でき、例えば以下のような分散方法を用いることができる。
なおバインダー樹脂と有機溶媒、水等の分散媒を混合してエマルジョンにして用いてもよい。
(1)バインダー樹脂(またはそのエマルジョン)、金属酸化物中空粒子を、必要に応じ溶剤及び/又は分散剤の存在下で混練機により溶融混練し、バインダー樹脂中に金属酸化物中空粒子(軽量化充填剤)が分散したマスターバッチを得る方法。
混練機としては、ビーズミル混合機、3本ロールミル混合機、ホモジナイザー混合機、ラボプラストミル混合機などが使用できる。
(2)水中に分散している金属酸化物中空粒子を、処理剤を添加して湿式処理を行なった後、溶剤置換した金属酸化物中空粒子オルガノゾルをバインダー樹脂(またはそのエマルジョン)に添加・混合する方法。
処理剤としては、前記のシランカップリング剤に代表される有機珪素化合物(表面処理剤)あるいはアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
【0161】
<フィルム、塗膜>
本実施形態の樹脂組成物からフィルムまたは塗膜を得ることができる。このフィルムまたは塗膜の熱伝導率は、0.1W/mK以下であることが好ましく、より好ましくは0.05W/mK以下である。これにより、断熱効率が向上できる。また、このフィルムまたは塗膜の乾燥時厚みが10μmの時のHAZE値は、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。これにより、透明性の高いフィルム、または塗膜が得られる。
【0162】
フィルムまたは塗膜の作成方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができるが、例えば、以下のようにして形成される。
金属酸化物中空粒子を含む塗料を、ガラス基盤上にバーコーターを用い厚みを調節しコートする。オーブンにより50℃〜100℃の温度で1時間〜24時間乾燥させた後、形成されたフィルムをガラス基盤から剥がし取り、金属酸化物中空粒子含有フィルムまたは塗膜を得る。
【0163】
本実施形態のフィルムまたは塗膜の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により測定することができる。また、本実施形態のフィルムまたは塗膜のHAZE値は、フィルムまたは塗膜の乾燥時の厚みを10μmとし、日本電色工業社製 NDH4000により測定することができる。フィルムの屈折率はアッベ屈折計により、また薄い塗膜の屈折率はエリプソメーターにより測定することができる。
【0164】
<用途>
本実施形態の一般式(1)の共重合体粒子(X)は金属酸化物中空粒子の形成に有用である。
また、本実施形態によって得ることのできる金属酸化物中空粒子は、医薬(DDS:ドラッグデリバリーシステム)、分子プローブ、触媒、吸着材料、センサー、塗料、インク等に用いることができる。
本実施形態によって得ることのできる金属酸化物中空粒子を含む樹脂組成物は、プリント基板等の低誘電率材料、機能性分子を内包した特殊塗料またはインク等に用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物から得られるフィルムまたは塗膜は、自動車、住宅、ビル等の窓ガラス断熱フィルムまたは断熱塗料等の断熱材料、ディスプレー、タッチパネル等の反射防止フィルム等に用いることができる。
また、本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体、または当該重合体から構成される粒子は適度に水に分散するため、界面活性剤、抗菌剤、防腐剤、帯電防止剤等に用いることが出来る。
【0165】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0166】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0167】
(末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の合成例)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSC(示差走査熱量測定)を用い、測定して得られたピークトップ温度を採用した。なお、測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。
1H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。分散液中の粒子の粒子径はマイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)にて、体積50%平均粒子径を測定した。分散液中の粒子の形状観察は、試料を200倍から500倍に希釈し、リンタングステン酸によりネガティブ染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)で100kVの条件にて行なった。
【0168】
(末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)の合成例)
以下の手順(例えば、特開2006−131870号公報の合成例2参照)に従って、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)を合成した。
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cm
2G加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記一般式(14)で示される化合物のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)を得た。
【0169】
【化29】
【0170】
500mlセパラブルフラスコに上記片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)100g(Mn850として,ビニル基108mmol)、トルエン300g、Na
2WO
40.85g(2.6mmol)、CH
3(nC
8H
17)
3NHSO
40.60g(1.3mmol)、およびリン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)の白色固体96.3gを得た(収率99%,ポリオレフィン転化率100%)。
得られた末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)は、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)であった(末端エポキシ基含有率:90mol%)。
1H−NMR:δ(C
2D
2Cl
4)0.88(t,3H,J=6.92Hz),1.18−1.66(m),2.38(dd,1H,J=2.64,5.28Hz),2.66(dd,1H,)J=4.29,5.28Hz),2.80−2.87(m,1H)
融点(Tm)121℃
【0171】
1000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)84重量部、ジエタノールアミン39.4重量部、トルエン150重量部を仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体を濾取した。得られた固体をアセトン水溶液で1回、更にアセトンで3回撹拌洗浄した後、固体を濾取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、重合体(I)(Mn=1223、下記一般式(9)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R
1=R
2=水素原子、Y
1、Y
2の一方が水酸基、他方がビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基)を得た。
1H−NMR:δ(C
2D
2Cl
4)0.88(t,3H,J=6.6Hz),0.95−1.92(m),2.38−2.85(m,6H),3.54−3.71(m,5H)
融点(Tm)121℃
【0172】
【化30】
【0173】
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに、重合体(I)20.0重量部、トルエン100重量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0重量部の水に溶解した0.323重量部の85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水及びトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、4時間保ち、フラスコ内の水及びトルエンをさらに留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
【0174】
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0重量部及び脱水トルエン200重量部を仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド9.0重量部を加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−33)(Mn=1835、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075))を得た。
また、上述の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−33)の調製方法のエチレンオキシドの添加量を18.0重量部に変更することで、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)(Mn=2446、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075))を得た。
T−33、T−50共に、R
1=R
2=水素原子、X
1、X
2の一方が下記一般式(6)で示される基(X
11=ポリエチレングリコール基)、他方が下記一般式(5)で示される基(Q
1=Q
2=エチレン基、X
9=X
10=ポリエチレングリコール基)である。
1H−NMR:δ(C
2D
2Cl
4)0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.06−1.50(m),2.80−3.20(m),3.33−3.72(m)
融点(Tm;T−33)−16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
融点(Tm;T−50)−16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
【0175】
【化31】
【0176】
【化32】
【0177】
<末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液の調製例>
(20重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液の調製)
前記合成例で得られた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−33)10重量部と溶媒(C)の蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却した。得られた分散系を動的光散乱式ナノトラック粒度分析計「マイクロトラックUPA-EX150(日機装株式会社製)」にて粒子径を測定した結果、体積50%平均粒子径は0.018μmであった(体積10%平均粒子径0.014μm、体積90%平均粒子径0.022μm)。得られた分散系の透過型電子顕微鏡観察結果から測定した粒子径は0.015−0.030μmであった。
また、前記合成例で得られた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)もT−33と同様に水分散液を調製した。得られた分散系を上記と同様の条件にて粒子径を測定した結果、50%平均粒子径は0.017μmであった(体積10%平均粒子径0.013μm、体積90%平均粒子径0.024μm)。得られた分散系の透過型電子顕微鏡観察結果から測定した粒子径は0.015−0.030μmであった。
【0178】
(実施例1)
<4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコールを含む基含有末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液の調製1>
前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)粒子水分散液の調製例で得られた水分散液を凍結乾燥し粉体を得た。粉体1gをピリジン3ml中に分散させた。p−トルエンスルホニルクロリド0.180重量部を0℃の条件下で滴下した。その後室温で一昼夜撹拌した。その後、液をエバポレーターにより濃縮した。結果、式(15)の構造を有するトシル化ポリアルキレングリコール基を有する末端分岐型ポリオレフィン系共重合体を得た。
1H−NMR:δ(MeOH−d
4、400MHz、ピリジニウム塩を含む。)2.38(s、3H)、3.64(wide s、54H)、7.25(d、J=8.1Hz、2H)、7.72(d、J=8.1Hz、2H)、7.92(m、ピリジニウム塩)、8.42(m、ピリジニウム塩)、8.80(m、ピリジニウム塩)
【0179】
【化33】
【0180】
上記の濃縮物にトリエタノールアミン12mlを加え、110℃に昇温し濃縮物を分散させた。その後3時間反応を継続した。室温まで冷却し反応液を20mlのジエチルエーテルで洗浄し、10mlのアセトンを加え沈殿物を得た。沈殿物を濾紙により回収し充分乾燥させた。固形物をイオン交換水6mlに分散させ強塩基ゲル型樹脂(アンバーライトIRA−400)を加えて撹拌し、対イオンをOTs
-からCl
-に変換した。固形分濃度15重量%の、式(16)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の粒子水分散液を得た。
得られた分散系について動的光散乱式ナノトラック粒度分析計「Nanotrack wave(Microtrack/日機装株式会社製)」にて粒子径の体積分布を測定した。結果、体積50%平均粒子径は20.5nmであった。
1H−NMR:δ(MeOH−d
4/CDCl
3、400MHz)0.90、1.29(PE)、3.58(CH
2N
+),3.65(PEG),4.02(CH
2OH)、4.90(CH
2N
+)
13C−NMR:δ(MeOH−d
4/CDCl
3、100MHz)29.4(PE)、61.1(CH
2N
+)、68.8(CH
2OH)、43.5(CH
2Cl)、71.2(PEG)
【0181】
【化34】
【0182】
(実施例2)
<4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコールを含む基含有末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液の調製2>
前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)粒子水分散液の調製例で得られた水分散液を凍結乾燥し粉体を得た。粉体1gを乾燥ジクロロエタン5ml中に分散させた。この分散液にピリジン0.2ml、さらに塩化チオニル:SOCl
2(乾燥ジクロロエタン2mlに予め1ml溶解)を0℃の条件下で滴下した。次第に液がゲル化したため、強力に撹拌し液状の状態を保ちながら16hr反応を継続し、その後、液をエバポレーターにより濃縮した。結果、式(17)の構造を有する塩素化ポリアルキレングリコール基を有する末端分岐型ポリオレフィン系共重合体を得た。
1H−NMR:δ(CDCl
3、400MHz)1.22(PE)、3.61(PEG),3.71(CH
2Cl)、
13C−NMR:δ(CDCl
3、100MHz)29.6(PE)、43.5(CH
2Cl)、70.5、70.6、71.3(PEG)
【0183】
【化35】
【0184】
上記の濃縮物約1gにジメチルエタノールアミン5mlを加え、90℃に昇温し濃縮物を分散させた。その後3時間反応を継続した。室温まで冷却し反応液を濃縮し、蒸留水に分散させた。20mlのジエチルエーテルで洗浄し、10mlのアセトンを加え沈殿物を得た。沈殿物を濾紙により回収し充分乾燥させた。結果、固形分濃度15重量%の、式(18)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の粒子水分散液を得た。この得られた分散系について動的光散乱式ナノトラック粒度分析計「Nanotrack wave(Microtrack/日機装株式会社製)」にて粒子径の体積分布を測定した。結果、体積50%平均粒子径は20.0nmであった。
1H−NMR:δ(MeOH−d
4、400MHz、ジメチルエタノールアミンを含む。)1.31(PE)、3.28−3.26(NMe
2),3.58(CH
2N
+)、3.65(PEG)、3.89(CH
2OH)、4.68(CH
2N
+)、
13C−NMR:δ(MeOH−d
4、100MHz、ジメチルアミノエタノールを含む。)29.4(PE)、52.0(NMe
2)、55.8、64.3、66.8(CH
2CH
2NCH
2CH
2OH)、70.0、70.3、71.2(PEG)
【0185】
【化36】
【0186】
(実施例3)
<4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコールを含む基含有末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液の調製3>
アミンとしてトリエタノールアミンの代わりにジメチルエタノールアミンを用いる以外実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%の、式(18)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の粒子水分散液を得た。
得られた分散系について動的光散乱式ナノトラック粒度分析計「Nanotrack wave(Microtrack/日機装株式会社製)」にて粒子径の体積分布を測定した。結果、体積50%平均粒子径は21.7nmであった。
【0187】
【化37】
【0188】
(実施例4)
<4級アンモニウム塩型ポリアルキレングリコールを含む基含有末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液の調製4>
前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)粒子水分散液の代わりに、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−33)粒子水分散液を用いる以外実施例3と同様の方法で固形分濃度20重量%の、式(18)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の粒子水分散液を得た。
【0189】
【化38】
【0190】
(実施例5)
<中空シリカ粒子の合成1>
実施例1で得られた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液0.42mlを20mlのイオン交換水で希釈した。液に塩酸を加えpHを3に調整した。テトラエトキシシラン(TEOS)を1.5g加えた。混合液を24時間撹拌後、液を遠心分離し、得られた固形物を水とエタノールで3回洗浄し、オーブンにて充分乾燥させた。得られた粉体を、電気炉を用い600℃、4時間の条件で焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体粒子を除去することにより目的とする中空シリカ粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が32nm、D90/D50が1.38であり、TEM観察(
図3)から長軸方向が平均41nm、短軸方向が平均25nm、内部に長軸方向が平均27nm、短軸方向が平均14nmの空孔を有する中空シリカ粒子が得られていることが分かった。窒素吸着法にて細孔構造を調べたところ、BET比表面積696m
2/g、空孔率が1.01cm
3/gであることがわかった。
【0191】
(実施例6)
<中空シリカ粒子の合成2>
実施例4で得られた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液を用いる以外実施例5と同様の方法で中空シリカ粒子を得た。DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が20nm、D90/D50が1.36であり、TEM観察(
図4)から長軸方向が平均22nm、短軸方向が平均19nm、内部に長軸方向が平均15nm、短軸方向が平均10nmの空孔を有する中空シリカ粒子が得られていることが分かった。
【0192】
(実施例7)
<抗菌性試験>
大腸菌を一晩培養して多数の細胞を作り上げた。次に、細胞を遠心分離にかけ、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液に細胞を懸濁させて、細胞を生かしたまま増殖を止めた。
ついで、少量の細胞懸濁液を等量ずつ分注して各々を以下に示す(1)〜(3)と混合しサンプルを作製した。
(1) 0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(コントロール)
(2) 水溶液全体に対して前述の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T−50)を1重量%含む、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(コントロール)
(3) 水溶液全体に対して前述の式(16)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体を1重量%含む、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液
なお、それぞれのサンプルは、試験開始直後は同数の大腸菌細胞を含んでいるものである。
【0193】
ついで、上記の各サンプルについて、24時間振とう培養を行った。
その後、各サンプルについて希釈し、寒天培地に広げた。この結果を示す写真を
図5として示す。なお、培地上の各コロニー(白色スポット)は、培養後の液体サンプル中の、1つの生存大腸菌細胞を表す。
この
図5に示されるように、(3)のサンプルにおいては、(1)、(2)よりも細胞数が減少しており、大腸菌が殺菌されていることがわかる。