(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1によるインバータの構成を示す回路ブロック図である。
図1において、このインバータは、入力端子T1〜T3、出力端子T4、トランジスタQ1〜Q4、およびダイオードD1〜D4を備える。
【0010】
入力端子T1,T3には、それぞれ直流電源PS1の正極および負極が接続される。入力端子T3,T2には、それぞれ直流電源PS2の正極および負極が接続される。直流電源PS1,PS2の各々は直流電圧を出力する。直流電源PS1の出力電圧と直流電源PS2の出力電圧は等しい。したがって、入力端子T1,T2,T3には、それぞれ直流電圧V1,V2,V3が印加され、V1>V3>V2となり、V3=(V1+V2)/2となる。このインバータは、入力端子T1〜T3に印加された直流電圧V1〜V3を3レベルの交流電圧V4に変換して出力端子T4に出力するものである。なお、入力端子T3を接地すれば、直流電圧V1〜V3はそれぞれ正電圧、負電圧、および0Vとなる。
【0011】
トランジスタQ1,Q2の各々は、ワイドバンドギャップ半導体であるSiC(シリコンカーバイド)を用いて形成されたNチャネルMOSトランジスタである。トランジスタQ1,Q2の各々の定格電流は、たとえば600Aであり、トランジスタQ3,Q4およびダイオードD1〜D4の各々の定格電流よりも大きい。
【0012】
トランジスタQ3,Q4の各々は、ワイドバンドギャップ半導体以外の半導体であるSi(シリコン)を用いて形成されたIGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor:絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)である。トランジスタQ3,Q4の各々の定格電流は、たとえば450Aである。
【0013】
ダイオードD1,D2の各々は、ワイドバンドギャップ半導体以外の半導体であるSi(シリコン)を用いて形成されている。ダイオードD1,D2の各々の定格電流は、たとえば300Aである。
【0014】
ダイオードD3,D4の各々は、ワイドバンドギャップ半導体であるSiC(シリコンカーバイド)を用いて形成されたショットキーバリアダイオードである。ダイオードD3,D4の各々の定格電流は、たとえば500Aである。
【0015】
このようにトランジスタQ1,Q2の仕様とトランジスタQ3,Q4の仕様が異なり、ダイオードD1,D2の仕様とダイオードD3,D4の仕様が異なる理由については後述する。
【0016】
トランジスタQ1のドレイン(第1の電極)は入力端子T1に接続され、そのソース(第2の電極)は出力端子T4に接続される。ダイオードD1のアノードは出力端子T4に接続され、そのカソードは入力端子T1に接続されている。
【0017】
トランジスタQ2のドレインは出力端子T4に接続され、そのソースは入力端子T2に接続される。ダイオードD2のアノードは入力端子T2に接続され、そのカソードは出力端子T4に接続されている。すなわち、ダイオードD1,D2は、それぞれトランジスタQ1,Q2に逆並列に接続されている。
【0018】
トランジスタQ3,Q4のコレクタ(第1の電極)は互いに接続され、トランジスタQ3,Q4のエミッタ(第2の電極)はそれぞれ入力端子T3および出力端子T4に接続される。ダイオードD3,D4のカソードはともにトランジスタQ3,Q4のコレクタに接続され、それらのアノードはそれぞれ入力端子T3および出力端子T4に接続されている。すなわち、ダイオードD3,D4は、それぞれトランジスタQ3,Q4に逆並列に接続されている。トランジスタQ3,Q4およびダイオードD3,D4は、双方向スイッチを構成する。
【0019】
次に、このインバータの動作について説明する。トランジスタQ1〜Q4のゲートには、それぞれPWM信号φ1〜φ4が与えられる。
図2(a)〜(e)はPWM信号φ1〜φ4の作成方法および波形を示す図である。特に、
図2(a)は正弦波指令値信号CM、正側三角波キャリア信号CA1、および負側三角波キャリア信号CA2の波形を示し、
図2(b)〜(e)はそれぞれPWM信号φ1,φ4,φ3,φ2の波形を示している。
【0020】
図2(a)〜(e)において、正弦波指令値信号CMの周波数は、たとえば商用周波数である。キャリア信号CA1,CA2の周期および位相は同じである。キャリア信号CA1,CA2の周期は、正弦波指令値信号CMの周期よりも十分に小さい。
【0021】
正弦波指令値信号CMのレベルと正側三角波キャリア信号CA1のレベルの高低が比較される。正弦波指令値信号CMのレベルが正側三角波キャリア信号CA1のレベルよりも高い場合は、PWM信号φ1,φ3がそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルにされる。正弦波指令値信号CMのレベルが正側三角波キャリア信号CA1のレベルよりも低い場合は、PWM信号φ1,φ3がそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされる。
【0022】
したがって、正弦波指令値信号CMのレベルが正である期間では、PWM信号φ1とφ3がキャリア信号CA1に同期して交互に「H」レベルにされ、トランジスタQ1とQ3が交互にオンされる。また、正弦波指令値信号CMのレベルが負である期間では、PWM信号φ1,φ3はそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルに固定され、トランジスタQ1がオフ状態に固定されるとともにトランジスタQ3がオン状態に固定される。
【0023】
正弦波指令値信号CMのレベルと負側三角波キャリア信号CA2のレベルの高低が比較される。正弦波指令値信号CMのレベルが正側三角波キャリア信号CA2のレベルよりも高い場合は、PWM信号φ2,φ4がそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされる。正弦波指令値信号CMのレベルが正側三角波キャリア信号CA2のレベルよりも低い場合は、PWM信号φ2,φ4がそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルにされる。
【0024】
したがって、正弦波指令値信号CMのレベルが正である期間では、PWM信号φ2,φ4はそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルに固定され、トランジスタQ2がオフ状態に固定されるとともにトランジスタQ4がオン状態に固定される。また、正弦波指令値信号CMのレベルが負である期間では、PWM信号φ2とφ4がキャリア信号CA2に同期して交互に「H」レベルにされ、トランジスタQ2とQ4が交互にオンされる。
【0025】
PWM信号が1周期内において「H」レベルにされる時間と、PWM信号の1周期の時間との比はデューティ比と呼ばれる。PWM信号φ1のデューティ比は、正弦波指令値信号CMのレベルが正である期間では、正弦波指令値信号CMの正のピーク(90度)付近で最大になり、ピークから外れるに従って減少し、0度付近と180度付近で0となる。PWM信号φ1のデューティ比は、正弦波指令値信号CMのレベルが負である期間では0に固定される。PWM信号φ3は、PWM信号φ1の相補信号である。
【0026】
PWM信号φ2のデューティ比は、正弦波指令値信号CMのレベルが正である期間では0に固定される。PWM信号φ2のデューティ比は、正弦波指令値信号CMの負のピーク(270度)付近で最大になり、ピークから外れるに従って減少し、180度付近と360度付近で0となる。PWM信号φ4は、PWM信号φ2の相補信号である。
【0027】
次に、インバータの動作時にトランジスタQ1〜Q4およびダイオードD1〜D4の各々に流れる電流について説明する。
図3に示すように、入力端子T1から出力端子T4に流れる電流をI1とし、出力端子T4から入力端子T2に流れる電流をI2とし、入力端子T3から出力端子T4に流れる電流をI3とし、出力端子T4から入力端子T3に流れる電流をI4とする。
【0028】
図4(a)〜(i)は、インバータの動作を示すタイムチャートである。特に、
図4(a)は正弦波指令値信号CM、正側三角波キャリア信号CA1、および負側三角波キャリア信号CA2の波形を示し、
図4(b)(d)(f)(h)はそれぞれPWM信号φ1,φ4,φ3,φ2の波形を示し、
図4(c)(e)(g)(i)はそれぞれ電流I1,I4,I3,I2の波形を示している。電流I1〜I4のうちの正の電流はトランジスタQに流れる電流を示し、負の電流はダイオードDに流れる電流を示している。また、力率が1.0の場合が示されている。
【0029】
図4(a)〜(i)において、正弦波指令値信号CMのレベルが正である期間では、PWM信号φ4,φ2がそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルに固定され、PWM信号φ1とφ3が交互に「H」レベルにされる。したがって、トランジスタQ4,Q2がそれぞれオン状態およびオフ状態に固定され、トランジスタQ1とQ3が交互にオンされ、出力端子T4に直流電圧V1とV3が交互に現れる。
【0030】
この期間では、トランジスタQ1がオンされたときにトランジスタQ1のオン時間に応じたレベルの電流I1が流れ、トランジスタQ1がオフされたときにダイオードD3およびトランジスタQ4の経路で電流I1を補完するレベルの電流I3が流れる。
【0031】
トランジスタQ2はオフ状態に固定されているので、トランジスタQ2に電流は流れず、トランジスタQ2でスイッチング損失は発生しない。トランジスタQ3はオン/オフされるが、ダイオードD3に電流が流れ、トランジスタQ3に電流は流れないので、トランジスタQ3においてスイッチング損失は発生しない。トランジスタQ4はオン状態に固定されるので、トランジスタQ4に電流が流れるが、トランジスタQ4でスイッチング損失は発生しない。したがって、この期間では、トランジスタQ1〜Q4のうちでトランジスタQ1に流れる電流の実効値が最も大きくなり、トランジスタQ1におけるスイッチング損失が最も大きくなる。
【0032】
トランジスタQ1がオフ状態からオン状態に変化する毎にダイオードD3に逆バイアス電圧が印加され、ダイオードD3が逆回復動作をする。この期間では、他のダイオードD1,D2,D4に電流は流れない。
【0033】
正弦波指令値信号CMのレベルが負である期間では、PWM信号φ3,φ1がそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルに固定され、PWM信号φ2とφ4が交互に「H」レベルにされる。したがって、トランジスタQ3,Q1がそれぞれオン状態およびオフ状態に固定され、トランジスタQ2とQ4が交互にオンされ、出力端子T4に直流電圧V2とV3が交互に現れる。
【0034】
この期間では、トランジスタQ2がオンされたときにトランジスタQ2のオン時間に応じたレベルの電流I2が流れ、トランジスタQ2がオフされたときにダイオードD4およびトランジスタQ3の経路で電流I3が流れる。
【0035】
トランジスタQ1はオフ状態に固定されているので、トランジスタQ1に電流は流れず、トランジスタQ1でスイッチング損失は発生しない。トランジスタQ4はオン/オフされるが、ダイオードD4に電流が流れ、トランジスタQ4に電流は流れないので、トランジスタQ4でスイッチング損失は発生しない。トランジスタQ3はオン状態に固定されるので、トランジスタQ3に電流が流れるが、トランジスタQ3でスイッチング損失は発生しない。したがって、この期間では、トランジスタQ1〜Q4のうちでトランジスタQ2に流れる電流の実効値が最も大きくなり、トランジスタQ2におけるスイッチング損失が最も大きくなる。
【0036】
また、トランジスタQ2がオフ状態からオン状態に変化する毎にダイオードD4に逆バイアス電圧が印加され、ダイオードD4が逆回復動作をする。また、この期間では、他のダイオードD1,D2,D3に電流は流れない。
【0037】
まとめると、トランジスタQ1,Q2には大きな電流が流れ、トランジスタQ1,Q2においてスイッチング損失が発生する。トランジスタQ3,Q4にはトランジスタQ1,Q2よりも小さな電流が流れ、トランジスタQ3,Q4においてスイッチング損失は発生しない。
【0038】
このため上記のように、トランジスタQ1,Q2として、ワイドバンドギャップ半導体であるSiCを用いて形成され、定格電流が大きな値(たとえば600A)のNチャネルMOSトランジスタを使用することにより、スイッチング損失の低減化を図っている。また、トランジスタQ3,Q4としては、ワイドバンドギャップ半導体以外の半導体であるSiを用いて形成され、定格電流が小さな値(たとえば450A)のIGBTを使用し、低コスト化を図っている。
【0039】
ダイオードD3,D4にはトランジスタQ3,Q4と同程度の電流が流れ、ダイオードD3,D4は逆回復動作をする。ダイオードD1,D2には電流は流れない。なお、ダイオードD1,D2は、周知のように、負荷としてインダクタが使用された場合に、インダクタで発生した電圧からトランジスタQ1,Q2を保護するために設けられている。
【0040】
このため上記のように、ダイオードD3,D4として、ワイドバンドギャップ半導体であるSiCを用いて形成され、定格電流がトランジスタQ3,Q4と同程度の値(たとえば500A)のショットキーバリアダイオードを使用することにより、逆回復動作時におけるリカバリ損失の低減化を図っている。ダイオードD1,D2としては、ワイドバンドギャップ半導体以外の半導体であるSiを用いて形成され、定格電流が小さな値(たとえば300A)のダイオードを使用し、低コスト化を図っている。
【0041】
図5(a)はSiを用いて形成されたNチャネルMOSトランジスタ(Siトランジスタと称する)のスイッチング動作を示すタイムチャートであり、
図5(b)はSiCを用いて形成されたNチャネルMOSトランジスタ(SiCトランジスタと称する)のスイッチング動作を示すタイムチャートである。
【0042】
図5(a)(b)において、初期状態ではゲート信号(図示せず)が「H」レベルにされてトランジスタがオンし、トランジスタに一定の電流Iが流れ、ドレイン−ソース間電圧Vdsは0Vであるものとする。ある時刻にゲート信号を「H」レベルから「L」レベルに立ち下げてトランジスタをオフさせると、電流Iが減少し、電圧Vdsが増大する。
【0043】
図5(a)(b)から分かるように、Siトランジスタにおいて電流Iが下降を開始してから0Aになるまでの時間Taは、SiCトランジスタにおいて電流Iが下降を開始してから0Aになるまでの時間Tbよりも長くなる。Siトランジスタでは、電流Iがある値までは速く低下するが、その値から0Aになるまでの時間が長くかかる。ある値から0Aになるまでに流れる電流はテール電流と呼ばれる。
【0044】
これに対してSiCトランジスタでは、電流Iは速やかに低下し、若干のオーバーシュートが発生する。トランジスタのスイッチング損失は、電流Iと電圧Vdsの積であり、図中の斜線を施した部分の面積に対応する。したがって、SiCトランジスタのスイッチング損失は、Siトランジスタのスイッチング損失よりも小さい。
【0045】
図6は、
図1に示したインバータの外観を示す図である。
図6において、インバータは、1つの半導体モジュールM1を備える。半導体モジュールM1の内部には、トランジスタQ1〜Q4とダイオードD1〜D4が設けられている。半導体モジュールM1の外部には、入力端子T1〜T3と出力端子T4が設けられている。さらに、半導体モジュールM1の外部には、トランジスタQ1〜Q4のゲートにPWM信号φ1〜φ4を与えるための4つの信号端子が設けられているが、図面の簡単化のため、4つの信号端子の図示は省略されている。
【0046】
図7は、
図1に示したインバータを備えた無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図7において、無停電電源装置は、入力フィルタ1、コンバータ2、直流正母線L1、直流負母線L2、直流中性点母線L3、コンデンサC1,C2、インバータ3、出力フィルタ4、および制御装置5を備える。
【0047】
入力フィルタ1は、低域通過フィルタであり、商用交流電源10からの商用周波数の交流電力をコンバータ2に通過させるとともに、コンバータ2で発生するキャリア周波数の信号が商用交流電源10側に通過するのを防止する。
【0048】
直流正母線L1、直流負母線L2、および直流中性点母線L3の一方端はコンバータ2に接続され、それらの他方端はそれぞれインバータ3の入力端子T1〜T3に接続される。コンデンサC1は母線L1,L3間に接続され、コンデンサC2は母線L3,L2間に接続される。母線L1,L3はそれぞれバッテリB1の正極および負極に接続され、母線L3,L2はそれぞれバッテリB2の正極および負極に接続される。
【0049】
コンバータ2は、商用交流電源10から交流電力が正常に供給されている通常時は、商用交流電源10から入力フィルタ1を介して供給される交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をバッテリB1,B2の各々に供給するとともに、インバータ3に供給する。バッテリB1,B2の各々は、直流電力を蓄える。
【0050】
換言すると、コンバータ2は、制御装置5から与えられるPWM信号によって制御され、商用交流電源10から入力フィルタ1を介して供給される交流電圧に基づいて直流電圧V1〜V3を生成し、生成した直流電圧V1〜V3をそれぞれ直流正母線L1、直流負母線L2、および直流中性点母線L3に与える。なお、入力端子T3を接地すれば、直流電圧V1〜V3はそれぞれ正電圧、0V、負電圧となる。直流電圧V1〜V3は、コンデンサC1,C2によって平滑化される。直流電圧V1〜V3は、バッテリB1,B2とインバータ3に供給される。商用交流電源10からの交流電力の供給が停止された停電時は、コンバータ2は停止される。
【0051】
インバータ3は、
図1で示したように、入力端子T1〜T3、出力端子T4、トランジスタQ1〜Q4、およびダイオードD1〜D4を含み、制御装置5からのPWM信号φ1〜φ4によって制御される。
【0052】
インバータ3は、商用交流電源10から交流電力が正常に供給されている通常時は、コンバータ2で生成された直流電力を交流電力に変換し、商用交流電源10からの交流電力の供給が停止された停電時は、バッテリB1,B2の直流電力を交流電力に変換する。
【0053】
換言すると、インバータ3は、通常時はコンバータ2から母線L1〜L3を介して供給される直流電圧V1〜V3に基づいて3レベルの交流電圧を生成し、停電時はバッテリB1,B2から母線L1〜L3を介して供給される直流電圧V1〜V3に基づいて3レベルの交流電圧を生成する。
【0054】
出力フィルタ4は、インバータ3の出力端子T4と負荷11の間に接続される。出力フィルタ4は、低域通過フィルタであり、インバータ3から出力される交流電力のうちの商用周波数の交流電力を負荷11に通過させるとともに、インバータ3で発生するキャリア周波数の信号が負荷11側に通過するのを防止する。換言すると、出力フィルタ4は、インバータ3の出力電圧を商用周波数の正弦波に変換して負荷11に供給する。
【0055】
制御装置5は、商用交流電源10からの交流電圧、負荷11に出力される交流電圧、直流電圧V1〜V3などをモニタしながら、PWM信号を供給することにより、コンバータ2およびインバータ3を制御する。
【0056】
次に、この無停電電源装置の動作について説明する。商用交流電源10から交流電力が正常に供給されている通常時は、商用交流電源10からの交流電力が入力フィルタ1を介してコンバータ2に供給され、コンバータ2によって直流電力に変換される。コンバータ2で生成された直流電力は、バッテリB1,B2に蓄えられるとともにインバータ3に供給され、インバータ3によって商用周波数の交流電力に変換される。インバータ3で生成された交流電力は、出力フィルタ4を介して負荷11に供給され、負荷11が運転される。
【0057】
商用交流電源10からの交流電力の供給が停止された停電時は、コンバータ2の運転が停止されるとともに、バッテリB1,B2の直流電力がインバータ3に供給され、インバータ3によって商用周波数の交流電力に変換される。インバータ3で生成された交流電力は、出力フィルタ4を介して負荷11に供給され、負荷11の運転が継続される。
【0058】
したがって、停電が発生した場合でも、バッテリB1,B2に直流電力が蓄えられている限りは負荷11の運転が継続される。商用交流電源10からの交流電力の供給が再開された場合は、コンバータ2の運転が再開され、コンバータ2で生成された直流電力がバッテリB1,B2およびインバータ3に供給され、元の状態に戻る。
【0059】
以上のように、この実施の形態1では、電流をオン/オフするトランジスタQ1,Q2としてワイドバンドギャップ半導体で形成されたNチャネルMOSトランジスタを使用し、電流をオン/オフしないトランジスタQ3,Q4としてワイドバンドギャップ半導体以外の半導体で形成されたIGBTを使用したので、スイッチング損失の低減化と低コスト化を図ることができる。
【0060】
さらに、逆回復動作をするダイオードD3,D4としてワイドバンドギャップ半導体で形成されたショットキーバリアダイオードを使用し、逆回復動作をしないダイオードD1,D2としてワイドバンドギャップ半導体以外の半導体で形成されたダイオードを使用したので、リカバリ損失の低減化と低コスト化を図ることができる。
【0061】
なお、この実施の形態1では、ワイドバンドギャップ半導体としてSiCを使用したが、これに限るものではなく、ワイドバンドギャップ半導体であれば他のどのような半導体を使用しても構わない。たとえば、ワイドバンドギャップ半導体としてGaN(ガリウム・ナイトライド)を使用してもよい。
【0062】
図8は、実施の形態1の変更例を示すブロック図であって、
図6と対比される図である。
図8において、この変更例では、インバータは、基板BP1と、その表面に搭載された2つの半導体モジュールM2,M3を備える。半導体モジュールM2の内部にはトランジスタQ1,Q2とダイオードD1,D2が設けられ、半導体モジュールM2の外部には入力端子T1,T2と出力端子T4が設けられている。また、半導体モジュールM2の外部にはトランジスタQ1,Q2のゲートにPWM信号φ1,φ2を与えるための2つの信号端子(図示せず)が設けられている。
【0063】
半導体モジュールM3の内部にはトランジスタQ3,Q4とダイオードD3,D4が設けられ、半導体モジュールM3の外部には入力端子T3と出力端子T4が設けられている。半導体モジュールM3の外部にはトランジスタQ3,Q4のゲートにPWM信号φ3,φ4を与えるための2つの信号端子(図示せず)が設けられている。半導体モジュールM2の出力端子T4と半導体モジュールM3の出力端子T4とは互いに接続されている。この変更例でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0064】
図9は、実施の形態1の他の変更例を示すブロック図であって、
図6と対比される図である。
図9において、この変更例では、インバータは、基板BP2と、その表面に搭載された2つの半導体モジュールM4,M5を備える。半導体モジュールM4の内部にはトランジスタQ1〜Q4が設けられ、半導体モジュールM4の外部には入力端子T1〜T3と出力端子T4と中間端子T5が設けられている。中間端子T5は、トランジスタQ3,Q4のエミッタに接続されている。半導体モジュールM4の外部にはトランジスタQ1〜Q4のゲートにPWM信号φ1〜φ4を与えるための4つの信号端子(図示せず)が設けられている。
【0065】
半導体モジュールM5の内部にはダイオードD1〜D4が設けられ、半導体モジュールM5の外部には入力端子T1〜T3と出力端子T4と中間端子T5が設けられている。中間端子T5は、ダイオードD3,D4のアノードに接続されている。半導体モジュールM4の端子T1〜T5は、それぞれ半導体モジュールM5の端子T1〜T5に接続されている。この変更例でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0066】
図10は、実施の形態1のさらに他の変更例を示すブロック図であって、
図6と対比される図である。
図10において、この変更例では、インバータは、基板BP3と、その表面に搭載された8個の半導体モジュールM11〜M18を備える。半導体モジュールM11〜M14の内部にはそれぞれトランジスタQ1〜Q4が設けられ、半導体モジュールM15〜M18の内部にはそれぞれダイオードD1〜D4が設けられている。半導体モジュールM11,M15の各々は端子T1,T4を含み、半導体モジュールM12,M16の各々は端子T2,T4を含む。半導体モジュールM11,M15の端子T1は互いに接続され、半導体モジュールM12,M16の端子T2は互いに接続されている。
【0067】
半導体モジュールM13,M17の各々は端子T3,T5を含み、半導体モジュールM14,M18の各々は端子T4,T5を含む。半導体モジュールM13,M14の端子T5はトランジスタQ3,Q4のコレクタに接続され、半導体モジュールM17,M18の端子T5はダイオードD3,D4のカソードに接続されている。半導体モジュールM13,M17の端子T3は互いに接続され、半導体モジュールM13,M14,M17,M18の端子T5は互いに接続され、半導体モジュールM11,M12,M14〜M16,M18の端子T4は互いに接続されている。さらに、半導体モジュールM11〜M14の外部には、トランジスタQ1〜Q4のゲートにPWM信号φ1〜φ4を与えるための4つの信号端子(図示せず)がそれぞれ設けられている。この変更例でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0068】
[実施の形態2]
図11は、この発明の実施の形態2によるインバータの構成を示す回路図であって、
図1と対比される図である。
図11を参照して、このインバータが
図1のインバータと異なる点は、トランジスタQ3およびダイオードD3の並列接続体とトランジスタQ4およびダイオードD4の並列接続体とが置換されている点である。
【0069】
トランジスタQ3,Q4のエミッタは互いに接続され、それらのコレクタはそれぞれ入力端子T3および出力端子T4に接続されている。トランジスタQ1〜Q4は、それぞれPWM信号φ1〜φ4によって制御される。出力端子T4に直流電圧V1,V3を交互に出力する場合は、トランジスタQ4がオンされるとともにトランジスタQ1,Q3が交互にオンされる。また、出力端子T4に直流電圧V2,V3を交互に出力する場合は、トランジスタQ3がオンされるとともにトランジスタQ2,Q4が交互にオンされる。
【0070】
他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態2でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0071】
[実施の形態3]
図12は、この発明の実施の形態3によるインバータの構成を示す回路図であって、
図1と対比される図である。
図12を参照して、このインバータが
図1のインバータと異なる点は、トランジスタQ3,Q4のコレクタとダイオードD3,D4のカソードが切り離され、トランジスタQ3のコレクタとダイオードD4のカソードが接続され、トランジスタQ4のコレクタとダイオードD3のカソードが接続されている点である。
【0072】
トランジスタQ1〜Q4は、それぞれPWM信号φ1〜φ4によって制御される。出力端子T4に直流電圧V1,V3を交互に出力する場合は、トランジスタQ4がオンされるとともにトランジスタQ1,Q3が交互にオンされる。また、出力端子T4に直流電圧V2,V3を交互に出力する場合は、トランジスタQ3がオンされるとともにトランジスタQ2,Q4が交互にオンされる。
【0073】
他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態3でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明でなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。