【文献】
British Journal of Pharmacology,2011年,Vol.164,No.1,p181−191
【文献】
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2007年,Vol.320,No.1,p323−330
【文献】
Biological & Pharmaceutical Bulletin,2006年,Vol.29,No.1,p114−118
【文献】
Diabetes,Obesity and Metabolism,2012年,Vol.14,No.1,p83−90
【文献】
Diabetes,Obesity and Metabolism,2012年,Vol.14,No.7,p601−607
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
代謝障害が、ケトアシドーシス、前糖尿病、インスリン依存性糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病、インスリン抵抗性、肥満症、高血糖、高血糖誘発性白内障形成、耐糖能障害、高インスリン血症、脂質異常症、脂質動態異常症、無症状炎症、全身性炎症、軽度の全身性炎症、肝リピドーシス、膵臓炎、代謝障害の結果、高血圧症、腎機能不全及び/又は筋骨格障害(muscoskeletal disorder)、及び/又はシンドロームX(メタボリックシンドローム)からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の医薬組成物。
臨床病態が、ケトアシドーシス、インスリン抵抗性、肥満症、高血糖、高血糖誘発性白内障形成、耐糖能障害、高インスリン血症、脂質異常症、脂質動態異常症、無症状炎症、全身性炎症、軽度の全身性炎症、肝リピドーシス、膵臓炎、代謝障害の結果、高血圧症、腎機能不全及び/又は筋骨格障害(muscoskeletal disorder)、及び/又はシンドロームX(メタボリックシンドローム)から選択される1つ以上の病態である、請求項3に記載の医薬組成物。
代謝障害が、ケトアシドーシス、インスリン抵抗性、肥満症、高血糖、高血糖誘発性白内障形成、耐糖能障害、高インスリン血症、脂質異常症、脂質動態異常症、無症状炎症、全身性炎症、軽度の全身性炎症、肝リピドーシス、膵臓炎、代謝障害の結果、高血圧症、腎機能不全及び/又は筋骨格障害(muscoskeletal disorder)、及び/又はシンドロームX(メタボリックシンドローム)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
1つ以上のSGLT2阻害薬又はその薬学的に許容可能な形態が、1日当たり0.01〜5.0mg/kg体重の用量で投与されることになる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、イヌ科動物の代謝障害の治療及び/又は予防における1つ以上のSGLT2阻害薬又はその薬学的に許容可能な形態の使用を提供し、ここで前記1つ以上のSGLT2阻害薬は、1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(以下では化合物Aと称する)又はその薬学的に許容可能な形態である。
【0013】
本発明のさらなる態様は、以下並びに特許請求の範囲に定義される。
1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの薬学的に許容可能な形態は、1つ以上のSGLT2阻害薬と1つ以上のアミノ酸、例えばプロリンとの結晶複合体であり得る。
本発明によれば、1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物A、又はその薬学的に許容可能な形態は、例えば経口又は非経口投与用、好ましくは経口投与用に提供され得る。
1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物A、又はその薬学的に許容可能な形態は、1日当たり0.1〜3.0mg/kg体重、好ましくは1日当たり0.2〜2.0mg/体重、より好ましくは1日当たり0.1〜1mg/体重の投薬量で投与され得る。従って、1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物A、又はその薬学的に許容可能な形態は、1日当たり0.1〜3.0mg/kg体重、好ましくは1日当たり0.2〜2.0mg/kg体重、より好ましくは1日当たり0.1〜1mg/kg体重の投与用に調製され得る。
1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物A、又はその薬学的に許容可能な形態は、好ましくは1日1回のみ投与される。
【0014】
本発明はまた、本明細書に開示されるとおりの本発明に係る使用のための1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物A、又はその薬学的に許容可能な形態を含む医薬組成物も提供する。
本明細書に提供される例において、本発明に係るSGLT2の阻害によって得られる治療上及び/又は予防上の利益は実験的に実証される。本明細書に開示される実験データは本発明を例示するものであり、本明細書において以下で特許請求の範囲によって定義される保護範囲に対して何ら限定する効果を及ぼさないことが意図される。
詳細には、本発明者らは、意外にも、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを使用することにより、有利には、高血糖(例えば糖尿病)イヌにおいて高血糖が軽減され、及び/又は加えて例えば9時間又は24時間血糖プロファイルが改善することを見出した。従ってこれにより、糖尿病イヌ科動物の治療に必要なインスリンを減量することができる。
吸収及び作用の発現(糖尿)が極めて速く、顕著であるため(実施例1及び2)、代謝障害が新たに診断されたイヌを治療して最適用量を短期間で(例えば7〜14日)確立することが可能である。
【0015】
本発明は、イヌ科動物において高血糖の大幅な改善及び最適化された治療を示し、従って高血糖に関連する合併症、詳細には糖尿病性白内障形成の進行を予防し若しくは遅延させ、又はその寛解を誘導し得る可能性をもたらす。
本発明のさらなる利点は、1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの使用が代謝障害に対してのみ有効であることであり、即ち所望であればイヌ科動物における1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの使用は単剤療法、即ちスタンドアロン療法を提供し;即ち、同じ代謝障害の治療又は予防のためイヌ科動物に他の薬物療法は投与されない(唯一の例外はインスリン依存性糖尿病)。
しかしながら、本発明はまた、インスリンとの併用療法の可能性ももたらす。かかる併用は、有利には、インスリンによるイヌ科動物の単剤療法と比較してインスリン投与の用量及び/又は頻度の低下につながる。
有利には、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの使用によって低血糖が起こることはない(実施例2)。
【0016】
さらなる利点は、特に、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを使用すると、治療下のインスリン抵抗性イヌ科動物におけるインスリン抵抗性が低下することである。即ち、等価には、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを使用すると、有利には治療下のインスリン抵抗性イヌ科動物におけるインスリン感受性が増加する。
従って、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの使用により、イヌ科動物において糖尿病を含めた本明細書に開示されるとおりの代謝障害の治療及び/又は予防の改善がもたらされる。
本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを使用する効果は、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの投与前の同じ又は同等のイヌ科動物と比べた相対的なもの、及び/又は前記治療を受けていない同等なイヌ科動物(例えばプラセボ群)と比べた相対的なものであり得る。いずれの場合にも、比較を行う場合、その比較は特定の治療期間、例えば、1、2、3、4、5、6又は7日;10日、14日;1、2、3、4、5、6、7又は8週間;1、2、3又は4ヵ月が経った後に行われ得る。好ましくは治療期間は4週間である。或いは、治療期間は6又は8週間であってもよい。或いは、治療期間は8週間又はそれ以上、例えば8〜16週間、即ち8、9、10、11、12、13、14、15又は16週間であってもよい。
【0017】
本発明のさらなる利点は、1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを経口的にイヌ科動物に有効に投与し得ることである。さらに、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aは、1日1回のみ投与することができる。これらの利点により、治療されるイヌ科動物及び飼い主の良好な服薬コンプライアンスが可能となる。これは、現在イヌ科動物がインスリンで治療されている障害(例えば糖尿病)の良好な血糖コントロールにつながる。概して、このように、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの使用は、イヌ科動物における代謝障害の進行を弱め(即ち遅延させ又は予防し)、代謝障害(例えば糖尿病)及びその合併症の発生を遅延させ又は予防する助けとなる。
本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを使用する効果(例えば高血糖に対する上述の有益な作用)は、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの投与前の同じ又は同等のイヌ科動物と比べた相対的なもの、及び/又は例えば標準的なインスリン治療を受けているか(例えば対照群)又は未治療の同等のイヌ科動物と比べた相対的なものであってもよい。
本発明のさらなる利点は、1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを、経口的に、例えば液体形態でイヌ科動物に有効に投与し得ることである。さらに、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aは1日1回のみ投与することができる。これらの利点により、最適な用量調製及び治療されるイヌ科動物及び飼い主の服薬コンプライアンスが可能となる。
【0018】
従って、本発明はまた、イヌ科動物における代謝障害の治療及び/又は予防に使用するための本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを含む医薬組成物も提供する。
本発明はまた、イヌ科動物における代謝障害を治療及び/又は予防する方法も提供し、この方法は、かかる治療及び/又は予防を必要としているイヌ科動物に対し、本明細書に記載されるとおりの1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの有効用量を投与するステップを含む。
概して、このように、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを使用することにより、イヌ科動物において代謝障害、例えば本明細書に開示される代謝障害の進行を弱め、遅延させ若しくは予防することができ、又は代謝障害及びその合併症の進行を遅延させ若しくは発生を予防することができ、例えば高血圧症、腎機能不全及び/又は筋骨格障害(muscoskeletal disorder)が予防され、又は進行が遅延し又は寛解が得られる。
【0019】
定義
本明細書に提示される全ての値及び濃度は、±10%の誤差の範囲内の生物科学において許容される固有のばらつきを受ける。用語「約」もまた、この許容されるばらつきを指す。
本明細書に開示される治療効果(障害、疾患又は病態の改善、低下又は発生遅延、或いは障害、疾患又は病態に関連する任意の効果、指標、マーカー値又は他のパラメータの改善、低下、増加又は遅延など)は、p<0.05、好ましくは<0.01の統計的有意性をもって観察され得る。
本明細書において偏差(例えば基準に対する増加、上昇、過剰、延長、高まり、低下、減少、改善、遅延、異常レベル、又は任意の他の変化、変移又は偏差)が言及される場合、その偏差は、特に指定されない限り、例えば、関連性のある基準値の5%以上、特に10%以上、より詳細には15%以上、より詳細には20%以上、より詳細には30%以上、より詳細には40%以上、又はより詳細には50%以上であり得る。典型的には、偏差は少なくとも10%、即ち10%以上であり得る。偏差はまた、20%であってもよい。偏差はまた、30%であってもよい。偏差はまた、40%であってもよい。関連性のある基準値は、1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの代わりにプラセボで治療されるか、又は未治療の基準動物群から作成されてもよい。
本明細書において、変動(excursion)、例えばインスリン変動又はグルコース変動は、時間の経過に伴う血中濃度又はレベルの変化を意味する。変動、例えばインスリン変動又はグルコース変動の大きさは、曲線下面積(AUC)値として表され得る。
【0020】
本明細書において、用語「活性物質」又は「活性成分」は、本発明に係る使用のための1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物A、又はその任意の薬学的に許容可能な形態(例えばプロドラッグ又は結晶形態)を包含する。1つの又は追加的な活性化合物と併用する場合、用語「活性成分」又は「活性物質」にはまた、その追加の活性化合物も含まれ得る。
本明細書において、表現「臨床病態」は、血液パラメータなど、認識可能、例えば視認可能及び/又は計測可能であって、且つ障害及び/又は疾患に関連付けられる及び/又はそれを定義する病理学的状態又は病態生理学的若しくは生理学的変化を指す。
本明細書において、表現「〜に関連する」は、特に、表現「〜によって引き起こされる」を包含する。
本明細書において、ivGTTは静脈内ブドウ糖負荷試験を指す。ivGTTでは、典型的には体重1kg当たり0.8gのデキストロースが用いられ得る。
本明細書において、ivITTは静脈内インスリン負荷試験を指す。ivITTでは、典型的には体重1kg当たり0.05Uのインスリンが用いられ得る。
【0021】
SGLT2阻害薬
本発明に係る使用のためのSGLT2阻害薬としては、限定はされないが、例えば国際公開第01/27128号パンフレット、国際公開第03/099836号パンフレット、国際公開第2005/092877号パンフレット、国際公開第2006/034489号パンフレット、国際公開第2006/064033号パンフレット、国際公開第2006/117359号パンフレット、国際公開第2006/117360号パンフレット、国際公開第2007/025943号パンフレット、国際公開第2007/028814号パンフレット、国際公開第2007/031548号パンフレット、国際公開第2007/093610号パンフレット、国際公開第2007/128749号パンフレット、国際公開第2008/049923号パンフレット、国際公開第2008/055870号パンフレット、国際公開第2008/055940号パンフレット、国際公開第2009/022020号パンフレット又は国際公開第2009/022008号パンフレットに記載されるとおりのグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体が挙げられる。
【0022】
さらに、本発明に係る使用のための1つ以上のSGLT2阻害薬は、以下の化合物又はその薬学的に許容可能な形態からなる群から選択され得る:
(1)式(1)
のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体
[式中、R
1は、シアノ、Cl又はメチル(最も好ましくはシアノ)を示し;
R
2は、H、メチル、メトキシ又はヒドロキシ(最も好ましくはH)を示し、及び
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、3−メチル−ブタ−1−イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ヒドロキシ−シクロプロピル、1−ヒドロキシ−シクロブチル、1−ヒドロキシ−シクロペンチル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2−ヒドロキシル−エチル、ヒドロキシメチル、3−ヒドロキシ−プロピル、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパ−1−イル、3−ヒドロキシ−3−メチル−ブタ−1−イル、1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−エチル、2−メトキシ−エチル、2−エトキシ−エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2−メチルオキシ−エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル(methlysulfonyl)、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ又は(S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ又はシアノを示し;
式中、R3は、好ましくは、シクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ又は(S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシから選択され;及び最も好ましくはR3はシクロプロピルである]、
又はその誘導体[式中、β−D−グルコピラノシル基の1つ以上のヒドロキシル基は、(C
1~18−アルキル)カルボニル、(C
1~18−アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル−(C
1~3−アルキル)−カルボニルから選択される基でアシル化されている];
【0023】
(2)式(2):
によって表される、1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン:
【0024】
(3)式(3):
によって表される、ダパグリフロジン:
【0025】
(4)式(4):
によって表される、カナグリフロジン:
【0026】
(5)式(5):
によって表される、エンパグリフロジン:
【0027】
(6)式(6):
によって表される、ルセオグリフロジン:
【0028】
(7)式(7):
によって表される、トホグリフロジン:
【0029】
(8)式(8):
によって表される、イプラグリフロジン:
【0030】
(9)式(9):
によって表される、エルツグリフロジン:
【0031】
(10)式(10):
によって表される、アチグリフロジン:
【0032】
(11)式(11):
によって表される、レモグリフロジン:
【0033】
(12)式(12):
(7−1)
のチオフェン誘導体
[式中、Rは、メトキシ又はトリフルオロメトキシを示す];
【0034】
(13)式(13):
によって表される、国際公開第2005/012326号パンフレットに記載されるとおりの1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン;
【0035】
(14)式(14):
(9−1)
のスピロケタール誘導体:
[式中、Rは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピル又はtert−ブチルを示す];
【0036】
(15)式(15):
のピラゾール−O−グルコシド誘導体
[式中、
R
1はC
1~3−アルコキシを示し、
L
1、L
2は、互いに独立してH又はFを示し、
R
6は、H、(C
1~3−アルキル)カルボニル、(C
1~6−アルキル)オキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル又はベンジルカルボニルを示す];
【0038】
及び(17)式(17):
によって表される、セルグリフロジン。
【0039】
用語「ダパグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のダパグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えば国際公開第03/099836号パンフレットに記載される。好ましい水和物、溶媒和物及び結晶形態は、例えば国際公開第2008/116179号パンフレット及び国際公開第2008/002824号パンフレットに記載される。
【0040】
用語「カナグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のカナグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えば国際公開第2005/012326号パンフレット及び国際公開第2009/035969号パンフレットに記載される。好ましい水和物、溶媒和物及び結晶形態は、例えば国際公開第2008/069327号パンフレットに記載される。
【0041】
用語「エンパグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のエンパグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えば国際公開第2005/092877号パンフレット、国際公開第2006/120208号パンフレット及び国際公開第2011/039108号パンフレットに記載される。好ましい結晶形態は、例えば国際公開第2006/117359号パンフレット及び国際公開第2011/039107号パンフレットに記載される。
【0042】
用語「アチグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のアチグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えば国際公開第2004/007517号パンフレットに記載される。
【0043】
用語「イプラグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のイプラグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えば国際公開第2004/080990号パンフレット、国際公開第2005/012326号パンフレット及び国際公開第2007/114475号パンフレットに記載される。
【0044】
用語「トホグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のトホグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えば国際公開第2007/140191号パンフレット及び国際公開第2008/013280号パンフレットに記載される。
【0045】
用語「ルセオグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のルセオグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。
【0046】
用語「エルツグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のエルツグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。化合物は、例えば国際公開第2010/023594号パンフレットに記載される。
【0047】
用語「レモグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のレモグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばレモグリフロジンのプロドラッグ、詳細にはエタボン酸レモグリフロジン、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。その合成方法は、例えば欧州特許第1 213 296号明細書及び欧州特許第1 354 888号明細書に記載される。
【0048】
用語「セルグリフロジン」は、本明細書で用いられるとき、上記の構造のセルグリフロジン並びにその薬学的に許容可能な形態、例えばセルグリフロジンのプロドラッグ、詳細にはエタボン酸セルグリフロジン、例えばその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を指す。その製造方法は、例えば欧州特許第1 344 780号明細書及び欧州特許第1 489 089号明細書に記載される。
【0049】
上記の式(16)の化合物及びその製造は、例えば国際公開第2008/042688号パンフレット又は国際公開第2009/014970号パンフレットに記載される。
好ましいSGLT2阻害薬はグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体である。任意選択で、かかる1つ以上のSGLT2阻害薬中のグルコピラノシル基の1つ以上のヒドロキシル基は、(C
1~18−アルキル)カルボニル、(C
1~18−アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル−(C
1~3−アルキル)−カルボニルから選択される基でアシル化されていてもよい。
より好ましくは、本明細書において上記に開示されるとおりの式(1)のグルコピラノシル置換ベンゾニトリル誘導体である。さらにより好ましくは、式(18):
のグルコピラノシル置換ベンゾニトリル誘導体
[式中、
R3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、3−メチル−ブタ−1−イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ヒドロキシ−シクロプロピル、1−ヒドロキシ−シクロブチル、1−ヒドロキシ−シクロペンチル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2−ヒドロキシル−エチル、ヒドロキシメチル、3−ヒドロキシ−プロピル、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパ−1−イル、3−ヒドロキシ−3−メチル−ブタ−1−イル、1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−エチル、2−メトキシ−エチル、2−エトキシ−エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2−メチルオキシ−エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル(methlysulfonyl)、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ又は(S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ又はシアノを示し(式中、R3は、好ましくは、シクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ又は(S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシから選択され;及びR3は最も好ましくはシクロプロピルである)]、
又はその誘導体[式中、β−D−グルコピラノシル基の1つ以上のヒドロキシル基は、(C
1~18−アルキル)カルボニル、(C
1~18−アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル−(C
1~3−アルキル)−カルボニルから選択される基でアシル化されている]である。
【0050】
好ましくは、かかるSGLT2阻害薬は、式(2)に示されるとおりの1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(本明細書では「化合物A」とも称される)である。任意選択で、化合物Aのβ−D−グルコピラノシル基の1つ以上のヒドロキシル基は、(C
1~18−アルキル)カルボニル、(C
1~18−アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル−(C
1~3−アルキル)−カルボニルから選択される基でアシル化されていてもよい。
従って、好ましい実施形態において、本発明に係るSGLT2阻害薬は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体SGLT2阻害薬、好ましくは式(1)、より好ましくは式(18)、又はさらにより好ましくは式(2)(即ち化合物A)のSGLT2阻害薬(いずれの場合も本明細書において上記に定義するとおり)である。
【0051】
代謝障害
代謝障害は、糖尿病、前糖尿病、肥満症及び/又はそれらの障害の1つ以上に関連する任意の障害、疾患、病態又は症状であり得る。詳細には、代謝障害は、高血糖、耐糖能障害、インスリン抵抗性、インスリン依存性糖尿病及び/又は肝リピドーシスであり得る。さらに関連性のある代謝障害には、高インスリン血症、耐糖能障害、ケトーシス(詳細にはケトアシドーシス)、高脂血症、脂質異常症、血中脂肪酸濃度及び/又はグリセロール濃度の上昇、シンドロームX(メタボリックシンドローム)、及び/又は膵臓炎、軽度の全身性炎症、脂肪組織炎が含まれる。
一部の実施形態では、代謝障害は糖尿病である。本明細書において、糖尿病は、前糖尿病、インスリン依存性糖尿病又はインスリン抵抗性糖尿病であり得る。詳細には、糖尿病はインスリン依存性糖尿病であり得る。
一部の実施形態において、代謝障害は高血糖である。本明細書において、高血糖は、糖尿病、例えばインスリン依存性糖尿病又はインスリン抵抗性糖尿病に関連し得る。一部の実施形態において、高血糖は肥満症に関連し得る。高血糖は慢性であり得る。
一部の実施形態において、代謝障害はインスリン抵抗性である。本明細書において、インスリン抵抗性は、糖尿病、例えばインスリン抵抗性糖尿病に関連し得る。一部の実施形態において、インスリン抵抗性は肥満症に関連し得る。
【0052】
一部の実施形態において、代謝障害は耐糖能障害(IGT)である。本明細書において、耐糖能障害は、糖尿病、例えばインスリン依存性糖尿病又はインスリン抵抗性糖尿病に関連し得る。一部の実施形態において、耐糖能障害は肥満症に関連し得る。
一部の実施形態において、代謝障害は高インスリン血症である。本明細書において、高インスリン血症は、糖尿病、例えばインスリン抵抗性糖尿病に関連し得る。一部の実施形態において、高インスリン血症は肥満症に関連し得る。
一部の実施形態において、代謝障害は、高血糖、インスリン抵抗性、及び肝リピドーシスの1つ以上である。一部の実施形態において、代謝障害は、高血糖及びインスリン抵抗性から選択される。
一部の実施形態において、代謝障害は、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖及びインスリン抵抗性の1つ以上である。
特定の実施形態において、イヌ科動物は肥満である。例えば、本発明によれば、高血糖、インスリン抵抗性及び肝リピドーシスから選択される1つ以上の代謝障害が、肥満イヌ科動物において治療及び/又は予防され得る。さらに、例えば、高インスリン血症及び/又は耐糖能障害が、肥満イヌ科動物において治療及び/又は予防され得る。さらに、ケトーシス(詳細にはケトアシドーシス)、高脂血症、血中脂肪酸濃度及び/又はグリセロール濃度の上昇、シンドロームX(メタボリックシンドローム)、膵臓炎、脂肪組織炎から選択される1つ以上の障害が、肥満イヌ科動物において治療及び/又は予防され得る。
【0053】
特定の実施形態において、イヌ科動物は肥満でない。代謝障害は、例えば甲状腺機能低下症又は亢進症、高コルチゾール血症(副腎皮質機能亢進症、クッシング病)及び/又は成長ホルモン過剰(growth−hormone access)(先端巨大症)に関連し及び/又はそれによって引き起こされ得る。例えば、本発明によれば、高血糖、インスリン抵抗性及び肝リピドーシスから選択される1つ以上の代謝障害が、非肥満イヌ科動物において治療及び/又は予防され得る。さらに、例えば、高インスリン血症及び/又は耐糖能障害が、非肥満イヌ科動物において治療及び/又は予防され得る。さらに、ケトーシス(詳細にはケトアシドーシス)、高脂血症、血中脂肪酸濃度及び/又はグリセロール濃度の上昇、シンドロームX(メタボリックシンドローム)、膵臓炎及び/又は脂肪組織炎から選択される1つ以上の障害が、非肥満イヌ科動物において治療及び/又は予防され得る。
特定の実施形態において、イヌ科動物は、糖尿病、例えばインスリン依存性糖尿病又はインスリン抵抗性糖尿病に罹患している。例えば、本発明によれば、高血糖、耐糖能障害及び肝リピドーシスの群から選択される1つ以上の代謝障害が、糖尿病、例えばインスリン依存性糖尿病又はインスリン抵抗性糖尿病に罹患しているイヌ科動物において治療及び/又は予防され得る。さらに、例えば、高インスリン血症及び/又はインスリン抵抗性が、糖尿病、例えばインスリン抵抗性糖尿病に罹患しているイヌ科動物において治療及び/又は予防され得る。さらに、ケトーシス(詳細にはケトアシドーシス)、高脂血症、血中脂肪酸濃度及び/又はグリセロール濃度の上昇、シンドロームX(メタボリックシンドローム)、膵臓炎、脂肪組織炎から選択される1つ以上の障害が、糖尿病、例えばインスリン依存性糖尿病又はインスリン抵抗性糖尿病に罹患しているイヌ科動物において治療及び/又は予防され得る。
一部の実施形態において、イヌ科動物は肥満であり、且つ糖尿病に罹患していない。
一部の実施形態において、イヌ科動物は肥満でなく、且つ糖尿病に罹患している。
【0054】
本発明はまた、例えば日内血糖コントロールを改善し、それによってイヌ科動物における白内障形成の発症若しくは進行を遅延させ若しくは予防し、又はその後退を誘導することにより高血糖関連合併症を治療及び/又は予防するための、1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aの使用も提供する。
ケトーシスは、体内のケトン体レベルが上昇した状態である。ケトアシドーシスは、脂肪酸の分解及びアミノ酸の脱アミノ化によって形成されるケトン体が高濃度になって引き起こされる代謝性アシドーシスの一種として記載することができる。ヒトにおいて産生される2つの一般的なケトンは、アセト酢酸及びβ−ヒドロキシ酪酸塩である。イヌには主に3つのケトン、即ち、アセト酢酸、β−ヒドロキシ酪酸塩及びピルビン酸が見られる。ケトアシドーシスは対象の口臭に現れ得る。これは、アセト酢酸の自然分解の直接的な副産物であるアセトンによるものである。
【0055】
ケトアシドーシスは、ケトーシスの極度な且つ無制御の形態である。ケトーシスはまた、長時間の絶食に対する正常な反応でもある。ケトアシドーシスでは、特にアセチル−CoAの産生によるケトン産生を体が適切に調節することができず、重度のケト酸蓄積を引き起こすため血液のpHが実質的に低下し、即ち過剰のケトン体が血液を著しく酸性化し得る。極端な場合にはケトアシドーシスは致死的であり得る。
ケトアシドーシスは、体が脂肪酸の代謝によって高レベルのケトン体を産生していて(ケトーシス)、且つインスリンによるこの産生の減速が(例えばインスリン抵抗性/インスリン感受性低下又はインスリン欠乏に起因して)不十分であるときに起こり得る。インスリン欠乏によって引き起こされる高い血糖値の存在(高血糖)により、血中はさらに酸性化し得る。健常な個体では、ケトン/血糖値の上昇に応答して膵臓がインスリンを産生するため、これは通常起こらない。
ケトアシドーシスは、未治療の糖尿病において、肝臓が呼吸基質に対する知覚される要求に応答して脂肪及びタンパク質を分解するときに最もよく見られる。
【0056】
イヌ科動物における前糖尿病は、例えばストレスによっても例えば誘導される、例えば血糖刺激に対するインスリン反応の変化を含め、高インスリン血症、標的臓器におけるインスリン抵抗性、耐糖能障害を特徴とする。前糖尿病はまた、多くの場合に肥満症にも関連する。前糖尿病はまた、間欠性高血糖症にも関連し得る。
イヌ科動物におけるインスリン抵抗性糖尿病は、インスリンの産生増加及び標的臓器におけるインスリン抵抗性の両方、及び結果としての高血糖を特徴とする。これは未避妊雌糖尿病イヌに高頻度で見られ、主に内因性インスリン拮抗物質として働くプロゲステロンが原因とされる。従って、これは大部分が、月経周期、即ち発情間期に関連するか、或いは妊娠に関連するか(妊娠性)のいずれかである。遺伝学的要因、グルコステロイド、運動不足、及び肥満症が、インスリン抵抗性の考えられ得るさらなる理由である。
イヌ科動物で観察される糖尿病の臨床徴候としては、煩渇多飲症、多尿、体重減少、及び/又は過食が挙げられる。対照的に、ネコなどの他の種では、過食よりも食欲不振が報告されることの方が多い。
さらに、本発明の文脈の中でイヌ科動物における糖尿病の特に関連性のある臨床徴候は、高血糖及び糖尿である。イヌ科動物(例えばイヌ)における高血糖は、正常値(3.5〜7mmol/l又は60〜120mg/dl)を超える血漿グルコース値、例えば8mmol/l以上又は150mg/dl以上の血漿グルコースとして定義される。イヌ科動物(例えばイヌ)における糖尿は、正常値(0〜2mmol/L、又は36mg/dl)を超える尿中グルコース値として定義される。約8〜11mmol/l又は150〜200mg/dlの血糖濃度で腎閾値に達する。
【0057】
或いは、イヌ科動物における糖尿病の診断は、例えば以下のとおりの3つの基準に基づいてもよい:
(1)空腹時血糖濃度測定値>250mg/dl;
(2)上記に定義するとおりの糖尿;及び
(3)以下の1つ以上:多尿、煩渇多飲症、過食、食欲良好にも関わらず体重が減少する、又はケトン尿症(重度のケトアシドーシスの徴候を伴わない)。
上述の診断に加えた、及びそれらの診断を裏付けるためのさらなる検査として、血液学、血液化学、X線及び/又は腹部超音波検査が含まれ得る。
好ましくは、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aを使用することにより、正常な又はほぼ正常な血糖濃度を維持及び/又は確立することが可能となる。しかしながら、−ヒトの治療とは異なり−これが必ずしも糖尿病動物に必要とは思われず、従って必ずしも本発明に係る治療の目標というわけではない。本発明によれば、血糖濃度はまた、例えば5.5〜16.6mmol/l又は100〜300mg/dlに維持されてもよい。イヌ科動物については、多くの場合にこれで十分であろう。
【0058】
高血糖は白内障を誘発し、これは概して急性発症型、急速進行型、且つ両側対称性である。眼内の水晶体混濁により視力が低下し、又は最終的には視力喪失に至る。
インスリン抵抗性は、正常なインスリン量が脂肪細胞、筋細胞及び肝細胞からの正常なインスリン反応を生じさせるのに不十分な状態として説明することができる。脂肪細胞におけるインスリン抵抗性がインスリンの効果を低減し、インスリン感受性を増加させる手段又は追加のインスリンを提供する手段のいずれもない場合、貯蔵トリグリセリドの加水分解が高まる。これらの細胞中の貯蔵脂質の動員が増加すると、血漿中の遊離脂肪酸が上昇する。筋細胞におけるインスリン抵抗性はグルコース取込み(及びそのためグリコーゲンとしてのグルコースの局所的貯蔵)を低下させ、一方、肝細胞におけるインスリン抵抗性はグリコーゲン合成を障害し、グルコース産生が抑制不能となる。血中脂肪酸値の上昇、筋グルコース取込みの低下、及び肝グルコース産生の増加の全てが、血糖値の上昇(高血糖)に寄与し得る。肥満イヌでは、インスリン抵抗性、即ち脂肪のない体のイヌの5分の1のインスリン感受性が認められる。
インスリン抵抗性は、トリグリセリド上昇、スモールデンス低密度リポタンパク質(sdLDL)粒子、及びHDLコレステロール値の低下が関わる肥満症、内臓脂肪症、高血圧症及び脂質異常症に関連して存在し得る。内臓脂肪症に関しては、ヒトにおける多数のエビデンスから、インスリン抵抗性との2つの強い関連性が示唆される。第一に、皮下脂肪組織と異なり、内臓脂肪細胞は、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、及びインターロイキン−1及び−6等の炎症誘発性サイトカインを多量に産生する。多くの実験モデルにおいてこれらの炎症誘発性サイトカインは脂肪細胞及び筋細胞における正常なインスリン作用を深刻に破壊し、内臓脂肪症のヒト患者で観察される全身インスリン抵抗性を引き起こす主因であり得る。同様に、イヌにおいても過剰な脂肪貯蔵物が軽度の全身性炎症に寄与する。インスリン抵抗性の大多数の症例の原因は依然として不明である。遺伝性の要素があることは明らかである。しかしながら、インスリン抵抗性が高炭水化物食に関係することを疑わせる根拠が幾つかある。炎症もまた、インスリン抵抗性の誘発に関与しているように思われる。
【0059】
高インスリン血症は、血中を循環しているインスリンが過剰なレベルである、即ち基礎時に約35pmol/Lを上回るか、又は例えば血糖刺激時(例えばivGTT又はストレス)に約200pmol/Lを上回る状態として記載することができる。記載のとおり、これはイヌ科動物においてインスリン抵抗性の症例によく認められ、及びインスリン抵抗性の帰結であり得る。
耐糖能障害は、血糖刺激後、例えば食事後又は負荷試験(ブドウ糖負荷試験)後、又はストレス誘導後の血糖濃度上昇に対する応答において、グルコース変動の血糖ピークが高くなり、及び/又はグルコース変動の持続時間が長くなる状態として記載することができる。
脂質異常症又は高脂血症は、血中の上昇した又は異常なレベルの脂質及び/又はリポタンパク質の存在である。脂質及びリポタンパク質の異常は、コレステロールの影響に起因する極めて修正可能性の高い心血管疾患リスク要因と考えられる。グリセロールは、肝臓及び脂肪組織におけるトリアシルグリセロール(トリグリセリド)の合成及びリン脂質の合成の前駆体である。体が貯蔵された脂肪をエネルギー源として使うとき、トリグリセリドの加水分解後にグリセロール及び脂肪酸が血流中に放出される。グリセロール成分は肝臓でグルコースに変換され、細胞代謝のためのエネルギーを提供することができる。伴侶動物(イヌ科動物など)の正常な血中遊離脂肪酸値は、50〜150mg/dlのトリグリセリド濃度である。正常な血中コレステロール値は、例えばイヌについて130〜300mg/dlである。
脂質動態異常症は、オートクリン/パラクリン又はエンドクリン様式で作用する脂肪組織で産生される生物活性物質の循環血漿濃度が逸脱する状態、例えばレプチンの上昇及び/又はアディポネクチンの減少として記載することができる。
【0060】
無症状炎症又は全身性炎症、詳細には軽度の全身性炎症は、腫瘍壊死因子−αなどの炎症誘発性サイトカインの発現及び分泌の増加及び/又は抗炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン−10及び/又はそれらのそれぞれの受容体の発現及び分泌の低下を特徴とする。
肥満症は、過剰な体脂肪が健康に有害作用を及ぼし得る程度まで蓄積している医学的状態として記載することができ、平均余命の低下につながる。肥満イヌ科動物においては、例えば(9のうち)7より大きいボディコンディションスコア(BCS)が見られる。
本発明により治療及び/又は予防される代謝障害には、シンドロームX(メタボリックシンドローム)が含まれる。この障害は、イヌ科動物において顕性の臨床的帰結−例えば高血圧症、心筋症、腎機能不全及び/又は筋骨格障害(muscoskeletal disorder)を発症するリスクが増加する医学的障害の組み合わせとして記載することができる。
メタボリックシンドロームは、メタボリックシンドロームX(メタボリックシンドローム)、シンドロームX(メタボリックシンドローム)、インスリン抵抗性症候群、リーブン(Reaven)症候群、及びCHAOS(冠動脈疾患、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、肥満症、及び脳卒中の略称として)としても知られる。
メタボリックシンドロームの複雑な経路の正確な機序は未だ完全には分かっていない。病態生理学は極めて複雑であり、部分的に解明されているに過ぎない。患者の多くは年齢が高く、肥満で、座っていることが多く、及びある程度のインスリン抵抗性を有する。最も重要な要因は、順番に、(1)過体重及び肥満、(2)遺伝、(3)加齢、及び(4)座っていることが多く体を動かさない生活、即ち、低い身体活動及び過剰なカロリー摂取である。
【0061】
病態生理は、一般に内臓脂肪の増大によって特徴付けられ、その後内臓脂肪の脂肪細胞(adipocyte)(脂肪細胞(fat cell))によって血漿TNF−α値が増加し、幾つもの他の物質(例えば、アディポネクチン、レジスチン、PAI−1)のレベルが変化する。TNF−αは炎症性サイトカインの産生を引き起こすのみならず、TNF−α受容体との相互作用によってインスリン抵抗性につながり得る細胞シグナル伝達を惹起する可能性があることが示されている。
現在の一次治療は生活様式の変更(即ち、カロリー制限及び運動)である。しかしながら、高頻度で薬物治療が必要となる。従って、本発明はまた、イヌ科動物における代謝障害の臨床的に関連性のある帰結、例えば高血圧症、心筋症、腎機能不全及び/又は筋骨格障害(muscoskeletal disorder)の予防も提供する。
本発明により治療及び/又は予防される代謝障害には、膵臓炎(膵炎)が含まれる。この障害は急性型又は慢性型のいずれかとして起こり得る。慢性膵炎は脂肪便及び/又は糖尿病を伴い起こることも又は伴わず起こることもある。
膵炎は、高トリグリセリド血症(特にトリグリセリド値が1500mg/dl(16mmol/l)を超えるとき)、高カルシウム血症、ウイルス感染症、外傷、脈管炎(即ち膵臓内の微小血管の炎症)、及び自己免疫性膵炎によって引き起こされ得る。
【0062】
代謝障害、特に脂質異常症及び血清トリグリセリド値の上昇は、膵炎発症のリスク要因であり、従って膵炎との関連における本発明により治療され得る。従って、本発明はまた、膵炎の予防も提供する。
【0063】
本発明により治療及び/又は予防される代謝障害には、脂肪組織炎(脂肪織炎)が含まれ、これは、皮下脂肪組織の炎症を特徴とする一群の障害である。
脂肪織炎はいかなる脂肪組織(皮膚及び/又は内臓)にも起こり得る。脂肪織炎は深部皮膚生検に基づき診断されてもよく、炎症細胞の位置(脂肪小葉内又はそれらを分ける隔壁)及び脈管炎の有無に基づく組織学的特徴によってさらに分類することができる。脂肪織炎はまた、全身症状の有無に基づき分類することもできる。
代謝障害、特に膵炎は、脂肪織炎発症のリスク要因であり、従って脂肪織炎との関連における本発明により治療され得る。従って、本発明はまた、脂肪織炎の予防も提供する。
【0064】
イヌ科動物
本明細書において、イヌ科動物は、イヌ科(Canidae)のメンバー(即ちカニド(canid))であり得る。従ってイヌ科動物は、イヌ亜科(Canini)(オオカミに関係する)又はキツネ亜科(Vulpini)(キツネに関係する)のいずれかに属し得る。イヌ科動物という用語は、用語のイヌ、例えば家庭犬を包含する。家庭犬という用語は、用語カニス・ルプス・ファミリアリス(Canis lupus familiaris)及びカニス・ルプス・ディンゴ(Canis lupus dingo)を包含する。
【0065】
薬学的に許容可能な形態
本明細書において、本発明に係るSGLT2阻害薬及び/又はその使用と言うとき、特に指定されない限り、それにはSGLT2阻害薬の薬学的に許容可能な形態が包含される。
本発明によれば、SGLT2阻害薬、例えば式(1)、好ましくは式(18)、より好ましくは式(2)の任意の薬学的に許容可能な形態が用いられ得る。例えば結晶形態が用いられてもよい。プロドラッグ形態もまた本発明に包含される。
プロドラッグ形態には、例えばエステル及び/又は水和物が含まれ得る。用語のプロドラッグはまた、プロドラッグが哺乳類対象に投薬されたとき生体内で本発明の活性な化合物を放出する任意の共有結合的に結合した担体を含むことも意味される。本発明の化合物のプロドラッグは、本発明の化合物中に存在する官能基を修飾して、その修飾が本発明の親化合に対して常法の操作で、或いは生体内で、切断されるようにすることによって調製し得る。
本発明に係る使用のための結晶形態は、SGLT2阻害薬と1つ以上のアミノ酸との複合体を含む(例えば、国際公開第2014/016381号パンフレットを参照)。そのように使用されるアミノ酸は、天然アミノ酸であってもよい。アミノ酸は、タンパク質新生アミノ酸(L−ヒドロキシプロリンを含む)であっても、又は非タンパク質新生アミノ酸であってもよい。アミノ酸はD−アミノ酸又はL−アミノ酸であってもよい。一部の好ましい実施形態において、アミノ酸はプロリン(L−プロリン及び/又はD−プロリン、好ましくはL−プロリン)である。例えば、1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(式(2);化合物A)とプロリン(例えばL−プロリン)との結晶複合体が好ましい。
【0066】
従って、本明細書には、1つ以上の天然アミノ酸とSGLT2阻害薬との結晶複合体、例えば1つ以上の天然アミノ酸とグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体SGLT2阻害薬、好ましくは式(1)、より好ましくは式(18)又はさらにより好ましくは式(2)(化合物A)のSGLT2阻害薬との結晶複合体が開示される。従って、本明細書には、1つ以上の天然アミノ酸と1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(化合物A)との結晶複合体が開示される。
さらに、本明細書には、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT、好ましくはSGLT2の阻害によって影響を受け得る疾患又は病態の治療又は予防に好適な医薬組成物を調製するための、以上又は以下に定義するとおりの1つ以上の結晶複合体の使用が開示される。さらに、本明細書には、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT2を阻害する医薬組成物を調製するための、以上又は以下に定義するとおりの1つ以上の結晶複合体の使用が開示される。
1つ以上の天然アミノ酸(例えばプロリン、好ましくはL−プロリン)とSGLT2阻害薬との結晶複合体は、本発明に係る使用のためのSGLT2阻害薬の好ましい薬学的に許容可能な形態である。詳細には、1つ以上の天然アミノ酸(例えばプロリン、好ましくはL−プロリン)とグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体SGLT2阻害薬、好ましくは式(1)、より好ましくは式(18)又はさらにより好ましくは式(2)(化合物A)のSGLT2阻害薬との結晶複合体は、本発明に係る使用のためのSGLT2阻害薬の好ましい薬学的に許容可能な形態である。1つ以上の天然アミノ酸(例えばプロリン、好ましくはL−プロリン)と1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(化合物A)との結晶複合体が、本発明に係る使用のためのSGLT2阻害薬の薬学的に許容可能な形態として特に好ましい。
【0067】
本明細書にはまた、以上及び以下に定義するとおりの1つ以上の結晶複合体の作製方法も開示され、前記方法は以下のステップを含む:
(a)溶媒又は溶媒混合物中にSGLT2阻害薬(例えばグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、又は式(1)、好ましくは式(18)又はより好ましくは式(2)、即ち化合物AのSGLT2阻害薬)と1つ以上の天然アミノ酸との溶液を調製するステップ;
(b)溶液を貯蔵して溶液から結晶複合体を沈殿させるステップ;
(c)溶液から沈殿物を取り出すステップ;及び
(d)殿物を乾燥させるステップ、任意選択で過剰の前記溶媒又は溶媒混合物が全て除去されるまで、沈殿物を乾燥させるステップ。
当然ながら、特定の薬学的活性は、それが市販の薬剤として承認を受ける前に薬学的に活性な薬剤が満たすべき基本的な前提条件である。しかしながら、薬学的に活性な薬剤が従うべき種々のさらなる要件がある。これらの要件は、活性物質それ自体の性質に関係する様々なパラメータに基づく。限定的なものではないが、これらのパラメータの例は、様々な環境条件下における活性薬剤の安定性、医薬製剤製造中のその安定性及び最終的な医薬組成物中での活性薬剤の安定性である。医薬組成物の調製に使用される薬学的に活性な物質は、可能な限り純粋であるべきで、且つ様々な環境条件下での長期貯蔵におけるその安定性が保証されなければならない。これは、実際の活性物質に加えて例えばその分解生成物が含まれる医薬組成物の使用を防止するために不可欠である。分解生成物が含まれる場合、薬剤中の活性物質の含有量が指示される量より少なくなり得る。
【0068】
製剤中の薬剤の一様な分布は、特にその薬剤が低用量で投与されなければならない場合に決定的因子である。一様な分布を確実にするため、活性物質の粒度を例えば粉砕することにより好適なレベルまで低減し得る。そのプロセスで要求される条件が厳しいにも関わらず、粉砕(又は微粒子化)の副作用として薬学的に活性な物質が分解することは可能な限り回避しなければならないため、粉砕を通じて活性物質が高度に安定しているべきであるという点は不可欠である。粉砕プロセスの間に活性物質が十分に安定している場合に限り、常に指定された量の活性物質を含有する均一な医薬製剤を再現性のある形で製造することが可能である。
所望の医薬製剤を調製するための粉砕プロセスで生じ得る別の問題は、このプロセスによって引き起こされるエネルギー入力及び結晶の表面に対する応力である。これは、場合によっては多形性の変化、アモルファス化又は結晶格子の変化をもたらし得る。医薬製剤の製剤品質には、活性物質が常に同じ結晶形態を有しなければならないことが要求されるため、結晶性活性物質の安定性及び特性には、この観点からもまた厳しい要件が課される。
薬学的に活性な物質の安定性はまた、医薬組成物においては、特定の薬剤の有効期間を決定する際にも重要である;有効期間は、その間には一切のリスクなしに薬剤を投与し得る時間の長さである。従って様々な貯蔵条件下における上述の医薬組成物中の薬剤の高い安定性は、患者及び製造者の両方にとってさらなる利点である。
【0069】
水分の吸収は、水の取込みによって起こる質量増加の結果として薬学的に活性な物質の含有量を低下させる。水分を吸収する傾向のある医薬組成物は、例えば好適な乾燥剤を添加することによるか、又は薬物を水分から保護された環境に貯蔵することにより、貯蔵中に水分から保護されなければならない。従って、好ましくは薬学的に活性な物質は、良くてもやや吸湿性があるという程度でなければならない。
さらに、十分に定義付けられた結晶形態を利用可能であることにより、再結晶による薬物物質の精製が可能となる。
上記に指摘した要件は別として、一般に、その物理的及び化学的安定性を改善することが可能な固体の医薬組成物に対するいかなる変更も、安定性の低い形態の同じ薬剤と比べて大幅に有利となることは心に留めておくべきである。
【0070】
天然アミノ酸とSGLT2阻害薬(例えばグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体又は式(1)、又は式(18)、又は特に式(2)、即ち化合物AのSGLT2阻害薬)との結晶複合体は、前述の重要な要件を満たす。
好ましくは天然アミノ酸は、その(D)又は(L)エナンチオマー型のいずれかで、最も好ましくは(L)エナンチオマーとして存在する。
さらに、本発明に係る結晶複合体は、SGLT2阻害薬(例えば式(1)、好ましくは式(18)又は特に式(2)、即ち化合物Aのもの)と1つの天然アミノ酸との間、最も好ましくは化合物Aと天然アミノ酸の(L)エナンチオマーとの間に形成されるものが好ましい。
本発明に係る好ましいアミノ酸は、フェニルアラニン及びプロリン、詳細には(L)−プロリン及び(L)−フェニルアラニンからなる群から選択される。
好ましい実施形態によれば、本結晶複合体は、天然アミノ酸がプロリン、詳細には(L)−プロリンであることを特徴とする。
好ましくはSGLT2阻害薬(例えば式(1)、好ましくは式(18)又は特に式(2)、即ち化合物Aのもの)と天然アミノ酸とのモル比は、約2:1〜約1:3;より好ましくは約1.5:1〜約1:1.5、さらにより好ましくは約1.2:1〜約1:1.2の範囲であり、最も好ましくは約1:1である。以下では、かかる実施形態は「複合体(1:1)」又は「1:1複合体」と称する。
【0071】
従って、本発明に係る好ましい結晶複合体は、前記SGLT2阻害薬(例えば式(1)、好ましくは式(18)又は特に式(2)、即ち化合物Aのもの)とプロリンとの;詳細には前記SGLT2阻害薬とL−プロリンとの複合体(1:1)である。
好ましい実施形態によれば、結晶複合体、特に前記SGLT2阻害薬とL−プロリンの1:1複合体は水和物である。
好ましくは結晶複合体と水とのモル比は、約1:0〜1:3;より好ましくは約1:0〜1:2、さらにより好ましくは約1:0.5〜1:1.5、最も好ましくは約1:0.8〜1:1.2の範囲、特に約1:1である。
【0072】
前記SGLT2阻害薬とプロリン、詳細にはL−プロリン及び水の結晶複合体は、その特徴的な粉末X線回折(XRPD)パターンを用いて同定され、及び他の結晶形態と区別され得る。
例えば、化合物AとL−プロリンの結晶複合体は、好ましくは、20.28、21.14及び21.64度2Θ(±0.1度2Θ)のピークを含む粉末X線回折パターン(ここで前記粉末X線回折パターンはCuK
α1線を使用して作られる)によって特徴付けられる。
詳細には前記粉末X線回折パターンは、4.99、20.28、21.14、21.64及び23.23度2Θ(±0.1度2Θ)のピーク(ここで前記粉末X線回折パターンはCuK
α1線を使用して作られる)を含む。
より具体的には前記粉末X線回折パターンは、4.99、17.61、17.77、20.28、21.14、21.64、23.23及び27.66度2Θ(±0.1度2Θ)のピーク(ここで前記粉末X線回折パターンはCuK
α1線を使用して作られる)を含む。
【0073】
さらにより具体的には前記粉末X線回折パターンは、4.99、15.12、17.61、17.77、18.17、20.28、21.14、21.64、23.23及び27.66度2Θ(±0.1度2Θ)のピーク(ここで前記粉末X線回折パターンはCuK
α1線を使用して作られる)を含む。
さらにより具体的には、化合物AとL−プロリンとの結晶複合体は、CuK
α1線を使用して作られる、表1に掲載するとおりの度2Θ(±0.1度2Θ)のピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
【0074】
表1:化合物AとL−プロリンとの結晶複合体の粉末X線回折パターン(2Θで30°までのピークのみを掲載する):
【0075】
さらにより具体的には、前記結晶複合体は、CuK
α1線を使用して作られる、
図3に示すとおりの度2Θ(±0.1度2Θ)のピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
さらに、化合物AとL−プロリンの前記結晶複合体は、89℃を上回る融点、詳細には約89℃〜約115℃の範囲、より好ましくは約89℃〜約110℃の範囲の融点(DSCによって測定する;開始温度として評価する;加熱速度10K/分)によって特徴付けられる。この結晶複合体は脱水下で融解することが観察され得る。得られるDSC曲線を
図4に示す。
化合物AとL−プロリンの前記結晶複合体は、熱重量測定(TG)によって質量損失を示す。観察される質量損失は、結晶形態が水を含有する(吸着によって結合していてもよく、及び/又は結晶格子の一部であってもよい)、即ち結晶形態が結晶性水和物として存在し得ることを示している。結晶形態中の含水量は、0〜約10質量%、詳細には0〜約5質量%、さらにより好ましくは約1.5〜約5質量%の範囲にある。
図2の点線は、2.8〜3.8%の水の質量損失を示す。観察される質量損失から、化学量論上一水和物に近いと推定することができる。
前記結晶複合体は、医薬組成物の調製に有益となる有利な物理化学的特性を有する。詳細には、本結晶複合体は、様々な環境条件下及び薬剤の製造中における高い物理的及び化学的安定性を有する。例えば本結晶は、固体医薬製剤の製造方法において特に好適な形状及び粒度で得ることができる。加えて、本結晶は、結晶の粉砕を可能にする高い機械的安定性を示す。さらに、本結晶複合体は、水分を吸収する強い傾向を示さず、化学的に安定しており、即ち本結晶複合体は長い有効期間の固体医薬製剤の製造を可能にする。他方で本結晶複合体は、有利には広いpH範囲にわたって溶解度が高く、これは経口投与用の固体医薬製剤において有利である。
【0076】
粉末X線回折パターンは、位置感受性検出器(OED)及びX線源としてのCuアノード(CuK
α1線、λ=1.54056Å、40kV、40mA)を備えたSTOE−STADI P回折計を透過モードで使用して記録し得る。表1において、値「2Θ[°]」は度数単位の回折角を示し、値「d[Å]」は格子面間におけるÅ単位の規定の距離を示す。
図3に示す強度は、cps(毎秒カウント数)単位で提供する。
実験誤差を許容するため、上述の2Θ値は、±0.1度2Θ、詳細には±0.05度2Θまで正確であると見なされるべきである。即ち、化合物Aの結晶の所与のサンプルが上述の2Θ値に従う結晶形態であるかどうかを評価するとき、そのサンプルについて実験的に観察される2Θ値は、それが特性値の±0.1度2Θ以内にある場合、詳細にはそれが特性値の±0.05度2Θ以内にある場合には、上記に記載される特性値と同じであると見なされるべきである。
【0077】
融点は、DSC 821(Mettler Toledo)を使用したDSC(示差走査熱量測定)によって決定する。質量損失は、TGA 851(Mettler Toledo)を使用した熱重量測定(TG)によって決定する。
【0078】
また、本明細書には、以上及び以下に定義するとおりの結晶複合体を作製する方法も開示され、前記方法は、以下のステップを含む:
(a)溶媒又は溶媒混合物中に本明細書に記載されるとおりのSGLT2阻害薬(例えば化合物A又は本明細書に記載される別のSGLT2阻害薬)と1つ以上の天然アミノ酸との溶液を調製するステップ;
(b)溶液を貯蔵して溶液から結晶複合体を沈殿させるステップ;
(c)溶液から沈殿物を取り出すステップ;及び
(d)任意選択で過剰の前記溶媒又は溶媒混合物が全て除去されるまで沈殿物を乾燥させるステップ。
ステップ(a)によれば、溶媒又は溶媒混合物中のSGLT2阻害薬(例えば化合物A又は本明細書に記載される別のSGLT2阻害薬)と1つ以上の天然アミノ酸との溶液が調製される。好ましくは、この溶液は結晶複合体に関して飽和しているか、又は少なくともほぼ飽和しているか、又はさらには過飽和である。ステップ(a)では、1つ以上の天然アミノ酸を含む溶液中にSGLT2阻害薬が溶解されてもよく、又はSGLT2阻害薬を含む溶液中に1つ以上の天然アミノ酸が溶解されてもよい。代替的な手順によれば、SGLT2阻害薬が溶媒又は溶媒混合物中に溶解されて第1の溶液が作られ、及び1つ以上の天然アミノ酸が溶媒又は溶媒混合物中に溶解されて第2の溶液が作られる。その後、前記第1の溶液と前記第2の溶液とが合わされて、ステップ(a)に係る溶液が形成される。
【0079】
好ましくは、溶液中の天然アミノ酸とSGLT2阻害薬(例えば化合物A又は本明細書に記載される任意の他のSGLT2阻害薬)とのモル比は、得ようとする結晶複合体中の天然アミノ酸とSGLT2阻害薬とのモル比に対応する。従って好ましいモル比は約1:2〜3:1の範囲;最も好ましくは約1:1である。
好適な溶媒は、好ましくは、C
1~4−アルカノール、水、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びこれらの溶媒の2つ以上の混合物からなる群から選択される。
より好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水及びこれらの溶媒の2つ以上の混合物、詳細には前記有機溶媒の1つ以上と水の混合物からなる群から選択される。
特に好ましい溶媒は、エタノール、イソプロパノール、水並びにエタノール及び/又はイソプロパノールと水の混合物からなる群から選択される。
水と1つ以上のC
1~4−アルカノール、詳細にはメタノール、エタノール及び/又はイソプロパノール、最も好ましくはエタノールの混合物が選択される場合、水:アルカノールの好ましい容積比は約99:1〜1:99;より好ましくは約50:1〜1:80;さらにより好ましくは約10:1〜1:60の範囲である。
【0080】
好ましくはステップ(a)は、ほぼ室温(約20℃)で、又は使用される溶媒又は溶媒混合物のほぼ沸点に至る高温で実施される。
好ましい実施形態によれば、SGLT2阻害薬(例えば化合物A又は本明細書に記載される任意の他のSGLT2阻害薬)及び/又は1つ以上の天然アミノ酸及び/又は溶媒及び溶媒混合物の出発物質は、少なくともSGLT2阻害薬の水和物を形成するのに必要な分量である量のH
2O;詳細にはSGLT2阻害薬1mol当たり少なくとも1mol、好ましくは少なくとも1.5molの水を含有する。さらにより好ましくは水の量は、SGLT2阻害薬1mol当たり少なくとも2molの水である。これは、出発物質としてのSGLT2阻害薬(例えば化合物A)又は1つ以上の天然アミノ酸又は前記溶媒若しくは溶媒混合物、又は組み合わせとしての前記化合物及び/又は溶媒のいずれかが、上記に指定したとおりの量のH
2Oを含有することを意味する。例えばステップ(a)においてSGLT2阻害薬(例えば化合物A)又は天然アミノ酸の出発物質が実に上記に指定したとおりの十分な水を含有する場合、溶媒の含水量は必須ではない。
溶液中の本発明に係る結晶複合体の溶解度を低減するため、ステップ(a)及び/又はステップ(b)において1つ以上の逆溶剤を、好ましくはステップ(a)の間に又はステップ(b)の初めに添加してもよい。水は、好適な逆溶剤の一例である。逆溶剤の量は、好ましくは結晶複合体に関して過飽和溶液又は飽和溶液が得られるように選択される。
ステップ(b)において、溶液は、沈殿物、即ち結晶複合体が得られるのに十分な時間にわたって貯蔵される。ステップ(b)において溶液の温度はステップ(a)とほぼ同じか、又はそれより低い。貯蔵中、溶液の温度は、好ましくは20℃〜0℃の範囲の温度又はさらに低い温度まで好ましくは下げられる。ステップ(b)は撹拌しながら実施しても、又は撹拌なしに実施してもよい。当業者には公知のとおり、得られる結晶のサイズ、形状及び品質はステップ(b)における時間及び温度差によって制御することができる。さらに、当該技術分野において公知のとおりの方法、例えば、反応槽の接触面を例えばガラスロッドで引っ掻いたり又はこすったりするなどの機械的手段により、結晶化を誘導し得る。任意選択で(ほぼ)飽和した又は過飽和の溶液にシード結晶を播いてもよい。
【0081】
ステップ(c)において、溶媒は、例えばろ過、吸引ろ過、デカンテーション又は遠心などの公知の方法によって沈殿物から除去することができる。
ステップ(d)において、過剰の溶媒は、当業者に公知の方法、例えば溶媒の分圧を好ましくは真空下で低下させたり、及び/又は約20℃超に、好ましくは100℃未満、さらにより好ましくは85℃未満の温度範囲で加熱したりすることにより、沈殿物から除去される。
【0082】
化合物Aは、国際公開第2007/128749号パンフレット(全体として参照により本明細書に援用される)及び/又は本明細書において以下に開示する実施例に具体的に及び/又は概略的に記載又は引用されるとおりの方法によって合成し得る。化合物Aの生物学的特性もまた、国際公開第2007/128749号パンフレットに記載されるとおり調べることができる。
本明細書に記載されるとおりの結晶複合体は、好ましくは実質的に純粋な形態の、即ち、他の結晶形態のSGLT2阻害薬(例えば化合物A)を本質的に含まない薬物活性物質として用いられる。それでもなお、本発明は別の1つ又は複数の結晶形態との混合物としての結晶複合体もまた包含する。薬物活性物質が結晶形態の混合物である場合、その物質が本明細書に記載されるとおりの結晶複合体を少なくとも50質量%、さらにより好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは少なくとも95質量%含むことが好ましい。
SGLT活性を阻害するその能力を考えると、本発明に係る結晶複合体は、SGLT活性、特にSGLT−2活性の阻害によって影響を受け得る病態又は疾患、詳細には本明細書に記載されるとおりの代謝障害の治療及び/又は予防的治療における使用に好適である。本発明に係る結晶複合体はまた、SGLT活性、特にSGLT−2活性の阻害によって影響を受け得る病態又は疾患、詳細には本明細書に記載されるとおりの代謝障害の治療用及び/又は予防的治療用医薬組成物の調製にも好適である。本明細書に記載されるとおりの(詳細には化合物Aと天然アミノ酸、例えばプロリン、特にL−プロリンの)結晶複合体はまた、イヌの治療における使用にも好適である。
【0083】
医薬組成物及び製剤
本発明に係る使用のための1つ以上のSGLTS阻害薬、好ましくは化合物Aは、医薬組成物として調製され得る。これは固形製剤として又は液体製剤として調製され得る。いずれの場合にも、これは好ましくは経口投与用に、好ましくは経口投与用の液体形態で調製される。しかしながら1つ以上のSGLTS阻害薬、好ましくは化合物Aはまた、例えば非経口投与用に調節されてもよい。
固形製剤には、錠剤、顆粒形態、及び他の固形形態、例えば坐薬が含まれる。固形製剤の中では、錠剤及び顆粒形態が好ましい。
本発明の意味の範囲内における医薬組成物は、本発明に係る1つ以上のSGLT2阻害薬、好ましくは化合物Aと1つ以上の賦形剤とを含み得る。意図される医学的効果を実現する、又はそれを補助する任意の賦形剤が用いられ得る。かかる賦形剤は当業者に利用可能である。有用な賦形剤は、例えば、粘着防止剤(粉末(顆粒)と杵面との間の粘着を低減し、それにより打錠杵への付着を防止するために使用される)、バインダー(成分を一体に保つ溶液バインダー又はドライバインダー)、コーティング(空気中の水分による劣化から錠剤成分を保護し、大型の又は不快な味の錠剤を嚥下し易くする)、崩壊剤(希釈時に錠剤を砕けさせる)、充填剤、希釈剤、香料、着色料、滑剤(流動調節剤−粒子間摩擦及び凝集性を低減することにより粉末流動を促進する)、潤滑剤(成分が凝集したり、打錠杵又はカプセル充填機に付着したりすることを防止する)、保存剤、吸着剤、甘味料等である。
本発明に係る製剤、例えば固形製剤は、糖類及び糖アルコール類、例えばマンニトール、ラクトース、デンプン、セルロース、微結晶性セルロース及びセルロース誘導体の群から選択される担体及び/又は崩壊剤、例えばメチルセルロースなどを含み得る。
【0084】
イヌ科動物に好適な製剤の製造手順は当業者に公知であり、固形製剤については、例えば、直接圧縮、乾式造粒及び湿式造粒が含まれる。直接圧縮プロセスでは、活性成分及び他の全ての賦形剤が圧縮器具に一緒に置かれ、圧縮器具が直接適用されることでこの材料から錠剤が押し出される。得られる錠剤は、任意選択で、物理的及び/又は化学的に保護するため、例えば当該分野の技術水準から公知の材料によって後にコーティングされてもよい。
投与単位、例えば単回液体用量又は固形製剤の単位、例えば錠剤は、本発明に係る使用のため0.01mg〜10mg、又は例えば0.3mg〜1mg、1mg〜3mg、3mg〜10mg;又は5〜2500mg、又は例えば5〜2000mg、5mg〜1500mg、10mg〜1500mg、10mg〜1000mg、又は10〜500mgのSGLT2阻害薬を含み得る。当業者は理解するであろうとおり、イヌ科動物に投与される固形製剤中、又は本明細書に開示されるとおりの任意の製剤中のSGLT2阻害薬の含有量は、治療されるイヌ科動物の体重に比例して適宜増加又は減少させることができる。
一実施形態において、本発明に係る使用のための医薬組成物は、経口又は非経口投与用、好ましくは経口投与用に設計される。特に経口投与は、例えば記載されるとおりの意図される患者向けに医薬組成物のにおい及び/又は触感特性を改良する賦形剤によって改善される。
【0085】
本発明に係る使用のためのSGLT2阻害薬が経口投与用に製剤化される場合、賦形剤が、製剤をイヌ科動物に対する投与に好適なものにする特性、例えば美味性及び/又は咀嚼性を付与することが好ましい。
また、液体製剤も好ましい。液体製剤は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液であり得る。液体製剤はイヌ科動物に直接投与してもよく、又はイヌ科動物の餌及び/又は飲み物(例えば飲用水など)と混ぜてもよい。液体製剤の一つの利点は(顆粒形態の製剤と同様に)、かかる剤形が正確な用量調製を可能にすることである。例えば、SGLT2阻害薬をイヌ科動物の体重に比例して正確に用量調製し得る。液体製剤の典型的な組成は当業者に公知である。
【0086】
用量調製及び投与
当業者は、本発明の使用に好適な用量を決定することができる。好ましい単位の用量調製単位には、mg/kg、即ちイヌ科動物の体重当たりのmgSGLT2阻害薬が含まれる。本発明のSGLT2阻害薬は、例えば、1日当たり0.01〜5.0mg/kg体重、例えば1日当たり0.01〜4.0mg/kg体重、例えば1日当たり0.01〜3.0mg/kg体重、例えば1日当たり0.01〜2.0mg/kg体重、例えば1日当たり0.01〜1.5mg/kg体重、例えば、1日当たり0.01〜1.0mg/kg体重、例えば1日当たり0.01〜0.75mg/kg体重、例えば1日当たり0.01〜0.5mg/kg体重、例えば1日当たり0.01〜0.4mg/kg体重、例えば1日当たり0.01〜0.3mg/kg体重;又は1日当たり0.1〜3.0mg/kg体重、好ましくは1日当たり0.2〜2.0mg/kg体重、より好ましくは1日当たり0.1〜1mg/kg体重の用量で投与され得る。別の好ましい実施形態において、用量は、1日当たり0.02〜0.5mg/kg体重、より好ましくは1日当たり0.03〜0.4mg/kg体重、例えば1日当たり0.03〜0.3mg/kg体重である。
【0087】
当業者は、所望の用量に従う投与用に本発明のSGLT2阻害薬を調製することができる。
好ましくは、本発明によれば、SGLT2阻害薬は、1日3回以下、より好ましくは1日2回以下、最も好ましくは1日1回のみ投与される。投与頻度はイヌ科動物の典型的な摂餌速度に適合させることができる。
本発明によれば、SGLT2阻害薬は、SGLT2阻害薬の適切な血漿濃度(例えば最高血漿濃度、又は所与の経口投与後時間後、例えば4、8、12又は24時間後、好ましくは経口投与後約8時間後の血漿濃度)が達成されるように投与され得る。例えば、化合物Aについては、血漿濃度(例えば最高血漿濃度又は前記所与の経口投与後時間後の血漿濃度)は2〜4000nM、例えば20〜3000nM、又は例えば40〜2000nMの範囲内であり得る。
好ましくは、投与及びSGLT2阻害薬が血流中に達するために必要な時間の後、血中でかかるレベルが少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも18時間、最も好ましくは少なくとも24時間の時間間隔にわたり維持される。
好ましくは、本発明によれば、SGLT2阻害薬は液体形態又は固形形態で経口投与される。SGLT2阻害薬は動物の口に直接(例えばシリンジ、好ましくは体重目盛り付きシリンジを使用して)、又は動物の餌若しくは飲み物と共に(例えばその飲用水などと共に)、いずれの場合も好ましくは液体形態で投与され得る。しかしながら、SGLT2阻害薬はまた、例えば非経口的に、又は任意の他の投与経路によって、例えば経直腸的に投与されてもよい。
【0088】
SGLT2阻害薬は単独で用いられてもよく、又は別の薬物と併用されてもよい。一部の実施形態では、1つ以上のSGLTS阻害薬、好ましくは化合物Aは、1つ以上のさらなる経口血糖降下薬と併用される。SGLT2阻害薬がさらなる薬物と併用される場合、SGLT2阻害薬及び任意のさらなる薬物は、同時に、逐次的に(任意の順序)、及び/又は時間的にずらした投薬レジームに従い投与され得る。かかる実施形態において、SGLT2阻害薬と併用投与されるさらなる薬物がSGLT2阻害薬と同時には投与されない場合、SGLT2阻害薬及び任意のさらなる薬物は、好ましくは、少なくとも2週間、1ヵ月、2ヵ月、4ヵ月、6ヵ月又はそれ以上、例えば12ヵ月以上の期間内に投与される。
一部の実施形態において、1つ以上のSGLTS阻害薬、好ましくは化合物Aは、インスリンとの共投与、好ましくはインスリンとの同時の、逐次的な及び/又は時間的にずらした共投与で用いられる。かかる共投与はまた、多剤混合薬(fixed−dose combination:FDC)の形態、例えば、それぞれが特定の一定用量で製造され及び流通する単一の剤形に組み合わされた1つ以上のSGLTS阻害薬、好ましくは化合物Aとインスリンとを含む製剤であってもよい。一部の実施形態において、SGLT2阻害薬(単独で用いられるか、それとも別の薬物と併用されるかに関わらず)は、1−[(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−[3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル]−キサンチン又はその薬学的に許容可能な塩とは併用されず、即ちイヌ科動物は前記化合物によっては治療されない。一部の実施形態では、SGLT2阻害薬はDPP−IV阻害薬とは併用されず、即ちイヌ科動物はDPP−IV阻害薬によっては治療されない。
【0089】
一部の実施形態において、SGLT2阻害薬は単剤療法、即ちスタンドアロン療法として用いられ、即ち同じ代謝障害、即ちSGLT2阻害薬の投与が対象とする代謝障害を治療又は予防するためイヌ科動物に他の薬物療法が投与されることはない。例えば、SGLT2阻害薬の投与前及び投与後少なくとも2、3、又は4週間の期間内に同じ代謝障害を治療又は予防するためイヌ科動物に他の薬物療法が投与されることはない。
以下の例は、本発明に係るイヌ科動物における1つ以上のSGLT2阻害薬の使用が血糖コントロール及び/又はインスリン抵抗性等に及ぼす有益な治療効果を示す。これらの例は、特許請求の範囲を何ら限定することなしに本発明をさらに詳細に例示することを意図するものである。
【実施例1】
【0090】
実施例1 イヌにおける化合物A単回経口投与の薬物動態(PK)
一晩絶食させたイヌに化合物Aを投与した。この群(群当たりn=4匹)は、1mg/kg及び10mg/kgの用量のSGLT2阻害薬化合物Aを含有する経口媒体(DI水)か、又は1mg/kgの用量のSGLT2阻害薬化合物Aを含有する静脈内媒体(生理食塩水)のいずれかの単回投与を受けた。PK計測値は、化合物A又はその媒体の単回投与後3日目まで取った。
【0091】
表2: 薬物動態データ、単回投与 (静脈内1mg/kg、経口1及び10mg/kg)
【実施例2】
【0092】
実施例2 イヌにおける単回投与後の尿中及び血中グルコースに対する化合物Aの効果
ビーグル犬は一晩絶食とし、0mg/kg体重、0.01mg/kg体重、0.1mg/kg体重、又は1mg/kg体重の用量の化合物Aを単回経口投与した後(群当たりn=3匹)、続いて水(1mL/kg体重)ですすいだ。
化合物Aを少量の1%(質量/体積%)ポリソルベート80(Tween80、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ICN Biomedicals)水溶液で湿らせ、次に多量の0.5%(質量/体積%)ヒドロキシエチルセルロース(Natrosol 250 HX、Boehringer Ingelheim)水溶液をゆっくりと加えて室温で約15分間撹拌することにより溶解させた。ポリソルベート80の終濃度は0.015%であった。化合物Aを2mL/kg体重の容積で加えた。
動物は代謝ケージで個別に飼育し、投与2時間後に餌を与えた。実験中、動物は水を自由に摂取できた。投与後、時間間隔0〜8時間、8〜24時間、24〜32時間、及び32〜48時間に尿を採取した。膀胱にカテーテル(Eickemeyer)を挿入して24時間尿を全て採取した。この尿を、8〜24時間の期間に排泄された尿と合わせた。試料採取前、各採尿管には5mL容積の生理食塩水中10%ナトリウムアジド溶液が加えてあった。尿の容積を決定し、試料を続くグルコース濃度の決定用に凍結した。
【0093】
実験中、血液試料は前腕静脈から採取した。血液は、媒体又は化合物Aの投与前、続いて投与後0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、32時間、及び48時間の時点でEDTA管に収集した。採血後に血漿を調製し、グルコース濃度の決定用に凍結した。
・2つの高用量で投与8時間後に既に尿中グルコース濃度及び容積の顕著な増加が明らかであった(
図1)。
・化合物Aのいずれの用量も、イヌにおいて正常基準値と比較して低血糖を誘発せず、また血糖値を変化させることもなかった。
従って尿中グルコース排泄量に関して、ED
50は0.1mg/kgであると推定される(
図2)。
【実施例3】
【0094】
実施例3 イヌにおけるインスリン依存性糖尿病の治療
インスリン依存性糖尿病のイヌを治療する
本発明に係る化合物A又は本発明に係る活性物質の組み合わせを伴うインスリンは、グルコース代謝状況の急激な改善を生じることに加えて、長期的な代謝状況の悪化を防止し、糖尿病イヌの治療に必要なインスリン用量を低減する。これは、イヌをより短期間又はより長期間、例えば2〜4週間又は3ヵ月間〜1年間にわたり本発明に係る医薬組成物で治療し、治療前又は例えばインスリン単独で治療されたイヌの代謝状況と比較する場合に観察することができる。1日平均血糖値及び血中フルクトサミン値が治療前の値と比較して低下する場合、治療奏効のエビデンスとなる。本発明に係る医薬組成物で治療されるイヌにおいて、グルコース代謝ポジション(glucose metabolic position)の一過性の悪化(例えば高血糖又は低血糖)を起こす割合が他の薬物療法で治療されたイヌと比較して著しく低い場合、治療奏効のさらなるエビデンスが得られる。
【実施例4】
【0095】
実施例4 発情間期/妊娠糖尿病の雌イヌにおけるインスリン抵抗性糖尿病の改善
インスリン抵抗性糖尿病は、未避妊雌イヌ科動物において頻繁に見られる形態の糖尿病である。化合物Aによる治療は、顕性糖尿病への移行を防ぐ目的で提供され得る。より短期間又は長期間(例えば2〜4週間又は1〜2年)にわたる研究において、治療の奏効は、研究中、月経周期の種々の期間にわたり、及び/又は研究の治療期間の終了後に、空腹時血糖値及び/又は食後若しくは負荷試験後(静脈内ブドウ糖負荷試験又は規定食後の食物負荷試験後)の血糖値を決定し、且つそれらを研究開始前の値及び/又はプラセボ群の値と比較することにより調べられる。加えて、フルクトサミン値を治療前及び治療後に決定して初期値と比較し、及び/又は他の薬物療法又はプラセボで治療したイヌと比較することができる。空腹時又は非空腹時血糖値及び/又はフルクトサミン値の大幅な低下は、発情間期/妊娠糖尿病の病歴を有する雌イヌにおけるインスリン抵抗性糖尿病の治療の有効性及び顕性糖尿病の防止を実証する。
【実施例5】
【0096】
実施例5 高血糖の治療
種々の時間長さ(例えば2週間〜12ヵ月間)にわたり続く代謝障害を有するイヌの臨床研究において、治療の奏効は、ベースライン血糖及び/又は血中フルクトサミン計測値を用いて確かめられる。
さらに、血糖コントロールの改善は、薬物療法前から開始して投与後計測が繰り返される日内血糖曲線、例えば9時間又は24時間血糖曲線を作成して決定することができる。
初期値と比較した、又はプラセボ群若しくは別の治療を投与した群と比較した研究中又は研究終了時のこれらの値の有意な低下は、イヌにおける高血糖の低減における本発明に係る医薬組成物の有効性を証明する。
或いは、高血糖に対する化合物Aの効果は、グルコース持続注入(高血糖クランプ)に供したイヌにおいて明らかにすることができる。高血糖の正常化は、未治療及び/又はインスリンとの併用治療及び/又はインスリン単独での治療と比較して評価することができる。
【実施例6】
【0097】
実施例6 高血糖に関連する合併症の予防又は治療
本発明に係る化合物A又は本発明に係る活性物質の組み合わせによる高血糖又はインスリン依存性若しくはインスリン抵抗性糖尿病イヌの治療は、高血糖に関連する合併症、例えば白内障形成を予防又は低減する。
治療奏効のエビデンスは、他の抗糖尿薬剤又はプラセボで治療されたイヌと比較される。治療の奏効は、例えば白内障形成の発症又は進行又は後退を眼科学的に眼検診することによって決定される。及び/又は白内障の発症までの時間及び/又は白内障成熟の進行が決定され、他の抗糖尿薬剤又はプラセボで治療されたイヌと比較されてもよい。
【実施例7】
【0098】
実施例7 インスリン抵抗性の治療
種々の時間長さ(例えば4週間〜12ヵ月間)にわたり続くインスリン抵抗性イヌの臨床研究において、治療の奏効は、個々のイヌにおけるベースライン血糖値、血中フルクトサミン値及び血中インスリン値及び/又はC−ペプチド値の計測値及びパラメータ間の対応する関係を用いて確かめられる。
また、研究の治療期間中又はその終了後における食後又は負荷試験後(ブドウ糖負荷試験又はインスリン負荷試験後)の血糖値及び血中脂質値(例えばNEFA)及び/又はインスリン値を、研究開始前の値及び/又は他の薬物療法又はプラセボで治療されたインスリン抵抗性イヌの値と比較することができる。
【実施例8】
【0099】
実施例8 イヌにおける前糖尿病の治療
病的空腹時血糖及び/又は耐糖能障害及び/又はインスリン抵抗性によって特徴付けられる前糖尿病の治療における本発明に係るSGLT2阻害の有効性は、臨床研究を用いて試験することができる。より短期間又は長期間(例えば2〜4週間又は1〜2年間)にわたる研究において、治療の奏効は、研究の治療期間の終了後に空腹時血糖値及び/又は食後若しくは負荷試験後(静脈内ブドウ糖負荷試験又は規定食後の食物負荷試験又はインスリン負荷試験後)の血糖値を決定し、且つそれらを研究開始前の値及び/又はプラセボ群の値と比較することにより調べられる。加えて、フルクトサミン値を治療前及び治療後に決定して初期値及び/又はプラセボ値と比較することができる。空腹時又は非空腹時血糖値及び/又はフルクトサミン値の有意な低下は、前糖尿病の治療の有効性を実証する。
【実施例9】
【0100】
実施例9 体重、体組成、脂質異常症及び脂質動態異常症に対する効果
肥満症、脂質異常症、脂質動態異常症、肝リピドーシス、無症状炎症又は全身性炎症、詳細には軽度の全身性炎症(脂肪組織も含む)、及び関連障害、例えばシンドロームX(メタボリックシンドローム)、及び/又はインスリン抵抗性、高血糖、高インスリン血症、耐糖能障害の代謝障害のイヌの治療はまた、イヌ科動物における例えば代謝障害の臨床的に顕在化した帰結−例えば高血圧症、心筋症、腎機能不全及び/又は筋骨格障害(muscoskeletal disorder)への移行を防止し又はそれへの進行を遅延させるという目標を追い求めるものである。
治療の有効性は比較臨床研究において調べることができ、この研究では、イヌが化合物A若しくは活性物質の組み合わせのいずれか、又はプラセボ又は非薬物療法(例えば食餌)又は他の薬剤で長期間(例えば3〜12ヵ月間)にわたり治療される。治療前、治療中及び治療終了時にパラメータ:体重(スケール)及び体組成を例えば二重エネルギーX線吸収測定法によって決定することができる。血漿中又は血清中の脂質(例えばトリグリセリド、コレステロール、NEFA)及びアディポカイン(例えばアディポネクチン、レプチン)プロファイル並びに炎症マーカー(例えばC反応性タンパク質、単球走化性タンパク質−1)を計測することができる。インスリン値及び血糖値は基礎時並びに例えば負荷試験後に決定することができる。血液及び尿試料中の腎臓パラメータを決定することができる(例えば尿素、クレアチニン、尿中アルブミン)。加えて、血圧及び/又は心筋症のエビデンスもまた、超音波ドップラー心エコー測定によって調べることができる。筋骨格障害(muscoskeletal disorder)(例えば変形性関節症)の改善は、例えば活動、跛行、及び疼痛スコアによって定量化することができる。
【実施例10】
【0101】
実施例10 1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(化合物A)の調製
以下の合成例は、1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(化合物A)の調製方法を例示するために提供する。L−プロリンとのその結晶複合体の調製方法もまた記載される。これは、本発明の範囲を限定するものでなく、例として記載される可能な方法に過ぎないと見なされなければならない。用語「室温」と「周囲温度」とは同義的に使用され、約20℃の温度を示す。以下の略称を使用する。
DMF ジメチルホルムアミド
NMP N−メチル−2−ピロリドン
THF テトラヒドロフラン
【0102】
4−ブロモ−3−ヒドロキシメチル−1−ヨード−ベンゼンの調製
CH
2Cl
2(200mL)中2−ブロモ−5−ヨード−安息香酸(49.5g)の氷冷溶液に塩化オキサリル(13.0mL)を加える。DMF(0.2mL)を加え、溶液を室温で6時間撹拌する。次に、この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をTHF(100mL)に溶解する。得られた溶液を氷浴中で冷却し、LiBH
4(3.4g)を部分量ずつ加える。冷却浴を取り除き、混合物を室温で1時間撹拌する。反応混合物をTHFで希釈し、0.1M塩酸で処理する。次に、有機層を分離し、酢酸エチルで水層を抽出する。合わせた有機層を乾燥し(Na
2SO
4)、溶媒を減圧下で蒸発させて粗生成物を得る。
収量:47.0g(理論の99%)
【0103】
4−ブロモ−3−クロロメチル−1−ヨード−ベンゼンの調製
DMF(0.1mL)を含有するジクロロメタン(100mL)中4−ブロモ−3−ヒドロキシメチル−1−ヨード−ベンゼン(47.0g)の懸濁液に塩化チオニル(13mL)を加える。この混合物を周囲温度で3時間撹拌する。次に、溶媒及び過剰の試薬を減圧下で除去する。残渣をメタノールで粉砕し、乾燥させる。
収量:41.0g(理論の82%)
【0104】
4−ブロモ−1−ヨード−3−フェノキシメチル−ベンゼンの調製
アセトン(50mL)に溶解した4−ブロモ−3−クロロメチル−1−ヨード−ベンゼン(41.0g)に、4M KOH溶液(60mL)に溶解したフェノール(13g)を加える。NaI(0.5g)を加え、得られた混合物を50℃で一晩撹拌する。次に、水を加え、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた抽出物を乾燥させて(Na
2SO
4)、溶媒を減圧下で蒸発させる。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル19:1)によって精製する。
収量:38.0g(理論の79%)
【0105】
1−ブロモ−4−(1−メトキシ−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(フェノキシメチル)−ベンゼンの調製
THF(11mL)に懸濁した乾燥LiCl(0.47g)にTHF(11mL)中iPrMgClの2M溶液を加える。この混合物を、LiClが全て溶解するまで室温で撹拌する。この溶液を、アルゴン雰囲気下で−60℃に冷却したテトラヒドロフラン(40mL)中4−ブロモ−1−ヨード−3−フェノキシメチル−ベンゼン(8.0g)の溶液に滴下して加える。この溶液を−40℃に加温し、次にテトラヒドロフラン(5mL)中2,3,4,6−テトラキス−O−(トリメチルシリル)−D−グルコピラノン(10.7g、90%純度)を加える。得られた溶液を冷却浴で−5℃に加温し、この温度でさらに30分間撹拌する。NH
4Cl水溶液を加え、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を減圧下で除去する。残渣をメタノール(80mL)に溶解し、メタンスルホン酸(0.6mL)で処理してより安定したアノマーのみを生じさせる。反応液を35〜40℃で一晩撹拌した後、その溶液を固体NaHCO
3で中和し、メタノールを減圧下で除去する。残渣をNaHCO
3水溶液で希釈し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させて粗生成物を得て、それをさらなる精製なしに還元にかける。
収量:7.8g(理論の93%)
【0106】
1−ブロモ−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(フェノキシメチル)−ベンゼンの調製
−20℃に冷却したジクロロメタン(35mL)及びアセトニトリル(50mL)中1−ブロモ−4−(1−メトキシ−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(フェノキシメチル)−ベンゼン(8.7g)及びトリエチルシラン(9.1mL)の溶液に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテレート(4.9mL)を、温度が−10℃未満に維持される速度で加える。得られた溶液を1.5時間かけて0℃に加温し、次に炭酸水素ナトリウム水溶液で処理する。得られた混合物を0.5時間撹拌し、有機溶媒を除去し、残渣を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を除去する。残渣をジクロロメタン(50mL)及びピリジン(9.4mL)中に取り出し、この溶液に無水酢酸(9.3mL)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.5g)を順次加える。この溶液を周囲温度で1.5時間撹拌し、次にジクロロメタンで希釈する。この溶液を1M塩酸で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を除去した後、残渣をエタノールから再結晶化させると、生成物が無色の固体として得られる。
収量:6.78g(理論の60%)
質量スペクトル(ESI
+):m/z=610/612(Br)[M+NH
4]
+
【0107】
2−(フェノキシメチル)−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリルの調製
シアン化亜鉛(1.0g)、亜鉛(30mg)、Pd
2(ジベンジリデンアセトン)
3*CHCl
3(141mg)及びトリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(111mg)が入ったフラスコをアルゴンでフラッシュする。次にNMP(12mL)中1−ブロモ−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(フェノキシメチル)−ベンゼン(5.4g)の溶液を加え、得られた混合物を室温で18時間撹拌する。酢酸エチルで希釈した後、この混合物をろ過し、ろ液を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。有機相を乾燥させて(硫酸ナトリウム)、溶媒を除去する。残渣をエタノールから再結晶化させる。
収量:4.10g(理論の84%)
質量スペクトル(ESI
+):m/z=557[M+NH
4]
+
【0108】
或いは、上記に記載する化合物は、1−ブロモ−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノース−1−イル)−2−(フェノキシメチル)−ベンゼンから出発して、NMP中の銅(I)シアン化物(2当量)を使用して210℃で合成する。
【0109】
2−ブロモメチル−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリルの調製
酢酸(10ml)中2−フェニルオキシメチル−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル(0.71g)及び無水酢酸(0.12mL)の溶液に、酢酸(15mL)中臭化水素酸の33%溶液を加える。得られた溶液を55℃で6時間撹拌し、次に氷浴中で冷却する。反応混合物を冷炭酸カリウム水溶液で中和し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を減圧下で除去する。残渣を酢酸エチル/シクロヘキサン(1:5)で取り出し、ろ過によって沈殿物を分離し、50℃で乾燥させて純粋な生成物を得る。
収量:0.52g(理論の75%)
質量スペクトル(ESI
+):m/z=543/545(Br)[M+NH
4]
+
【0110】
4−シクロプロピル−フェニルボロン酸の調製
THF(14mL)及びトルエン(50mL)に溶解して−70℃に冷却した1−ブロモ−4−シクロプロピル−ベンゼン(5.92g)に、ヘキサン(14.5mL)中nブチルリチウムの2.5M溶液を滴下して加える。得られた溶液を−70℃で30分間撹拌した後、ホウ酸トリイソプロピル(8.5mL)を加える。この溶液を−20℃に加温し、次に4M塩酸水溶液(15.5mL)で処理する。反応混合物を室温にさらに加温し、次に有機相を分離する。水相を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相を乾燥させる(硫酸ナトリウム)。溶媒を蒸発させて、残渣をエーテルとシクロヘキサンとの混合物で洗浄すると、生成物が無色の固体として得られる。
収量:2.92g(理論の60%)
質量スペクトル(ESI
-):m/z=207(Cl)[M+HCOO]
-
【0111】
1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼンの調製
Ar充填フラスコに、2−ブロモメチル−4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゾニトリル(1.60g)、4−シクロプロピル−フェニルボロン酸(1.0g)、炭酸カリウム(1.85g)及びアセトンと水との脱気した3:1混合物(22mL)を入れる。この混合物を室温で5分間撹拌した後、それを氷浴中で冷却する。次に二塩化物パラジウム(30mg)を加え、反応混合物を周囲温度で16時間撹拌する。次にこの混合物をブラインで希釈し、酢酸エチルで抽出する。合わせた抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を減圧下で除去する。残渣をメタノール(20mL)に溶解し、4M水酸化カリウム水溶液(4mL)で処理する。得られた溶液を周囲温度で1時間撹拌し、次に1M塩酸で中和する。メタノールを蒸発させて、残渣をブラインで希釈し、酢酸エチルで抽出する。集めた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を除去する。残渣をシリカゲルでクロマトグラフ処理する(ジクロロメタン/メタノール1:0−>8:1)。
収量:0.91g(理論の76%)
質量スペクトル(ESI
+):m/z=413[M+NH
4]
+
【0112】
化合物AとL−プロリンの結晶複合体(1:1)の調製
2mLエタノールに溶解した1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼン(1.17g、上記に記載したとおり得られる)の溶液に、エタノールと水(容積比10:1)の混合物2.1mLに溶解したL−プロリン(0.34g)を加える。得られた溶液を周囲温度で放置しておく。約16時間後、ろ過によって結晶複合体を白色結晶として単離する。必要であれば、例えばガラスロッド又は金属製のへらで引っ掻くことによるか、又はシード結晶を接種することにより、結晶化を惹起してもよい。結晶を真空下でやや高い温度(30〜50℃)に約4時間貯蔵することにより残留溶媒を除去すると、1.27gのL−プロリンと1−シアノ−2−(4−シクロプロピル−ベンジル)−4−(β−D−グルコピラノース−1−イル)−ベンゼンとの結晶性1:1複合体が得られる。
上記の調製による結晶複合体の幾つかのバッチを得る。粉末X線回折パターンが一致する。DSCによって融点を測定し、開始温度として評価する。融点の例は、約89℃、90℃、92℃、101℃及び110℃である。表1に含まれ、且つ
図11に示されるとおりの粉末X線回折パターン並びに
図12のDSC及びTG図は、約90℃の融点を有するバッチに対応する。
上記の表1に、化合物AとL−プロリンとの結晶複合体の粉末X線回折パターン(2Θで30°までのピーク)を提供する。
【実施例11】
【0113】
実施例11 製剤化
製剤化の幾つかの例を記載し、ここで用語「活性物質」は、本発明に係る使用のためのSGLT2阻害薬又はその薬学的に許容可能な形態、例えばプロドラッグ又は結晶形態を意味する。1つの又は追加的な活性物質と併用する場合、用語「活性物質」にはその追加的な活性物質も含まれ得る。
【0114】
100mgの活性物質を含有する錠剤
組成:
【0115】
調製方法:
活性物質、ラクトース及びデンプンを共に混合し、ポリビニルピロリドンの水溶液で一様に湿らせる。湿った組成物を篩別し(2.0mmメッシュサイズ)、50℃のラック式乾燥機で乾燥させた後、それを再び篩別し(1.5mmメッシュサイズ)、潤滑剤を加える。完成した混合物を圧縮して錠剤を形成する。
錠剤質量:220mg
直径:10mm、2平面、両面ファセット、片面割線付き。
【0116】
150mgの活性物質を含有する錠剤
組成:
1錠の含有物:
【0117】
調製:
ラクトース、コーンスターチ及びシリカと混合した活性物質を20%ポリビニルピロリドン水溶液で湿らせ、1.5mmのメッシュサイズの篩に通す。45℃で乾燥させた顆粒を同じ篩に再び通し、指定量のステアリン酸マグネシウムと混合する。この混合物から錠剤を圧縮する。
錠剤質量:300mg
ダイ:10mm、フラット
【0118】
150mgの活性物質を含有するハードゼラチンカプセル
組成:
1カプセルの含有物:
【0119】
調製:
活性物質を賦形剤と混合し、0.75mmのメッシュサイズの篩に通し、好適な装置を使用して均一に混合する。完成した混合物をサイズ1ハードゼラチンカプセルに充填する。
カプセル充填物:約320mg
カプセルシェル:サイズ1ハードゼラチンカプセル
【0120】
150mgの活性物質を含有する坐薬
組成:
1坐薬の含有物:
【0121】
調製:
ひと塊の坐薬を融解した後、その中に活性物質を均一に分散させて、その融解物を冷却した型に注ぎ入れる。
【0122】
10mg活性物質を含有するアンプル
組成:
【0123】
調製:
必要量の0.01N HClに活性物質を溶解し、食塩と等張にし、滅菌ろ過して、2mlアンプルに移し入れる。
【0124】
50mgの活性物質を含有するアンプル
組成:
【0125】
調製:
必要量の0.01N HClに活性物質を溶解し、食塩と等張にし、滅菌ろ過して、10mlアンプルに移し入れる。
【0126】
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